Sprint は 月曜日,Shawn "Jay Z" Carter が 2015 年に買収した 音楽ストリーミング・サービス Tidal の所有権の 33% を取得したと発表した。
|
Kanye West (L) and Shawn Carter (R) at the 2012 BET Awards.
(©Reuters)
|
音楽チャート
Billboard は 情報源を挙げて,この
取り引きに $2 億の値打ちがあると言う。そうなれば, Tidal を $6 億に評価することになり, Jay Z がスウェーデンのテック企業 Aspiro から 2015 年に Tidal を (WiMP と呼ばれるサービスを含めて) $0.56 億で買収したのから うまいこと べらぼうなリターンを得たことになる。
Tidal に沢山の問題があることを考えれば,この評価は とくに驚くべきものである:最初の年だけでも CEO が3人
[つまり2人辞任?] ;ラッパー Drake の歌の所有権をめぐる混乱;Drake は 最初は Tidal と契約したが,Apple Music と契約するイベントを立ち上げる2日前に手を引いた;訴訟がたっぷり (キャッシュ・マネー・レコード の Birdman CEO が Tidal を ラッパー Lil Wayne のアルバムの件で訴えたのから始まって;Shawn Carter が Tidal の創業者オーナーを 利用者数を水増しした廉で訴え;Kanye West のアルバムを Tidal の永久独占としたことについて Tidal に対する集団訴訟; Prince
[1958/6/7~2016/4/21] のカタログを Tidal がストリームすることに対して Prince の遺産管理会社がロック・ネイションを訴えた)。だが最も重要なのは,契約数に関する猛烈な論争である。
Tidal の契約者が何人いるかは,誰も知らない。
昨年4月,Tidal は 有料契約者が 3,000,000 人で,そのうち 45% が料金の高い $20 のスーパー・プレミアム HiFi 版であると発表した。昨年5月,Tidal は,Beyoncé の6枚目の音楽アルバム "レモネード" を出した最初の週に 1,200,000 の申し込み (signup) を得たと
New York Times に語った;多くの人は そこから,Tidal が 4,200,000 の有料契約者を得たと発表したものだと思った。ところが 今月のノルウェイ紙 DN.no は,Jay Z と Tidal がこの数字を3倍水増ししたと非難した;同紙によれば,Tidal の実際の契約数は,Tidal が 3,000,000 を唱えた時点で,僅か 850,000 であった。
これらすべてのことは,SoftBank を大株主とする Sprint がなぜ この取り引きを価値あるものと見るのか疑問を投げ掛ける。1,000,000 しか有料契約者がいない音楽サービスの 1/3 を取得するのに,なぜ $2 億ドルも注ぎ込むのか? これに比べて,Spotify は 43,000,000 の有料契約者を持つし,Apple Music は 20,000,000 である。
その答は,Tidal の 20 人の "アーティスト・オーナー"
ならびに ストリーミング音楽サービスの急成長にある。
Sprint は,20+ 人の ビッグネーム・アーティストへのアクセスを得る。
Jay Z とその妻 Beyoncé に加えて,20 人のその他のアーティストが Tidal の所有権を持つ:Alicia Keys; Arcade Fire; Calvin Harris; Claudia Leitte; Coldplay; Daft Punk; Damian Marley; Deadmau5; Indochine; Jack White; Jason Aldean; J. Cole; Kanye West; Lil Wayne; Madonna; Nicki Minaj; Prince (遺産管理人); Rihanna; Cliff "TIP" Harris; Usher である。
これら 20 人のアーティストは,報道によれば めいめい 3% の権益を持っており (Tidal はこれを認めないだろう),Carter
[=Jay Z] と Beyoncé の2人を抜きで 合計 60% に達する。したがって,Sprint が獲得しなかった 67% は,これら アーティストに帰属する。Sprint がプレス発表で認めたように,"Jay Z とアーティスト・オーナーは,Tidal のアーティスト中心のサービスを運営し続ける。"
しかし,"他所では得られない 独占的アーティスト・コンテンツへの無制限のアクセス" を得るのに加えて,Sprint は これらのスターを ある意味で その家族に加えた。これは,メディア
または テック企業とセレブなクリエイターとの間の長期契約でよく見られることである。たとえば,Netflix と Jerry Seinfelt の新しい契約,
あるいは アディダスと Kanye West との長期契約,インテルの Will.i.am との契約を見ればよい。
Tidal の所有権のおすそ分けを得ることは,Sprint が Tidal のアーティスト・オーナーにお近づきを得ることを意味し,これらの巨星たちをマーケティングやプロモーションのコンテンツに使うことを ほとんど確実に意味するだろう。まもなく Rihanna
[リアーナ] を起用した Sprint + Tidal の広告が見られるかもしれない。
Sprint は,俄かに音楽ストリーミングに飛び込む。
音楽業界リサーチ会社 MIDiA からの先週の報告によれば,有料音楽ストリーミングの全契約者数は,昨年12月に 1億を超えた。メディアがすぐにとらえたように,この数字は Netflix が持っている契約者の数 0.86 億を
超える。
MIDiA は Spotify を 4,300 万,アップル 2,000 万,Deezer 700 万,Tidal を僅か 100 万とした。ただし 重要なのは,Spotify と アップルのような巨人が支配しているとはいえ,契約数は まだ 伸びており,伸びしろがまだ大きいということだ。つまり,新しいサービスを出して競争する余地がある (アップルは Tidal を買収しようと Jay Z に会ったというウワサがあるが,Apple Music の CEO Jimmy Iovine は昨年9月 このウワサに冷や水をぶっかけ,BuzzFeed に "我々は,ストリーミング・サービスを買うつもりは無い" と言った。)
アップルは,ストリーミング・サービスを 今ではアンドロイド上で提供している;Verizon は,ビデオと音楽のサービス go90 を持っている;通信のライバルたちとの競争に熱心な Sprint が,ここへ参入を望んだ。Tidal に一口
加わることにより,Sprint は 俄かに この世界のプレイヤーになった (Jay Z と現在支援関係にあるサムスンが Tidal に なぜ働きかけなかったのか不思議に思う)。
"いまの音楽市場は,契約者数が 6,750 万だった1年前とは 様変わりである。" … と MIDiA がブログに書いている。"売り上げは伸びており,アーティストと作詞・作曲家の不満は弱まりつつあり,レーベルの事業モデルは変わりつつある。"
Sprint の 4,500 万人の顧客は,Tidal に参加したければ,金を払わねばならないだろうが,Tidal の初日以来のピッチのコーナーストーンであった初期の独占作品を手に入れられるだろう。そして 昨年 T-Mobile にアメリカのモバイル・キャリア第3位の座を奪われた Sprint は,若者 ── モバイル電話に張り付いて,もしも T-Mobile の独占的な Beyoncé, Rihanna, Kanye の歌やビデオであれば T-Mobile におそらくは乗り換えるような ── 若者たちの増加を必要とする。
Sprint は,"無制限のアクセス" が顧客にとって Tidal 上で何を意味するのか 沈黙を守っている。"独占提供に関して これ以上のニュースは,現在と新規の Sprint 顧客にとって何を意味するかは,Sprint と TIDAL からのこれからのプロモーションは,まもなく発表いたします。" … と広報担当者は言う。しかし,Sprint の Marcelo Claure CEO は,Tidal の取締役会に加わるのであるから,Tidal の営業に密接に関わるのだろう,
おそらく いま Sprint が至急に必要とされる努力の中にあってさえ,Tidal のマーケティングを改善しようと。
批評家は,Tidal が $6 億の値打ちは無いという。そして あの小さな契約者基盤を考えれば,これは もっともな指摘である。しかし,公平に言うならば,Tidal は たったの 2歳であり,Spotify は約 10 歳である。「Sprint が小さな音楽サービスの 1/3 に $2 億を払った」… と言うのは,誤りである;21 人のビッグ・スターへのアクセス
ならびに ストリーミング音楽戦争への俄かの参戦に $2 億を払ったのである。
──────
著者 ダニエル・ロバーツは,Yahoo Finance のライターであり,主としてスポーツ事業とテクノロジーを
カバーする。
関連記事:
「Tidal, Jay Z, Kanye は 訴えられることに大忙し,でもそれは Kanye が悪い」 (Yahoo Finance, 2016/04/19)
なるほど,なるほど。やっぱり ・・・ 。音楽ストリーミングに俄かに飛び込んだワケは …
ソフトバンクの決算発表会に マドンナ呼んで 孫さんと一緒に ラップのパフォーマンス!
そのための宣伝費用と思えば $2億とか 毎年 $0.75 億のサポートなんて 安いもの!
これなら Legere さんも何も言えない。さすが 孫さん 目の付けどころが違います。
決算発表もラップに乗せて 調子よく!