大富豪 Masayoshi Son が振れやすい世界市場の中で Sprint を挽回しようと苦戦する中で,投資家は,SoftBank Group の債務の重荷に ますます不安を募らせている。
SoftBank の債務をデフォルトに対して保証するコストは,データ提供会社 CMA によると,2月9日には,年初から 140 bp 上がって 395 bp となった。これは,Markit iTraxx Japan CDS 指数の増加の5倍を超える上げ幅である。同時に SoftBank としては 2010 年6月の 395 bp に並ぶ。
Son の会社は,今でも (金融機関を除き) 日本第2位の債務を持っている。投資家は,この上さらに 金食い虫のアメリカ・キャリアを支援するためにこの債務を増やさねばならぬかと案じている。 SoftBank の株価は
"債券市場に関する限り,Sprint は SoftBank のナンバーワンの問題である。" … と東京の BNP パリバ SA の投資調査本部長 中空麻奈が言う。"私の印象では,挽回は Son が (我々にうまく行っていると思って欲しいと) 考えるほどうまくは行っていない。"
Sprint は, SoftBank の持ち株の中で時価総額第2位である (1位はアリババ)。Sprint の株価は今年 火曜日までに 25% 下がり,アリババは 24% 下がった。
2013 年, SoftBank は $220 億を払って Sprint の支配株を取得し,後に買い増した。Sprint は赤字が増えるにつれて アメリカ第3位の座を T-Mobile に明け渡した。 SoftBank のウェブサイトによれば, SoftBank への投資の価値は $88 億にまで減った。
SoftBank の株価は 先月,アメリカのキャリアの進歩の兆候から,ほとんど2年ぶりの安値からリバウンドした。Sprint は,人員整理を行ない コールセンターを閉鎖して $25 億もの経費を削減し,利益予想を上方修正し,現金と同等物を増やした。
2012 年に破産の瀬戸際に追い込まれたシャープは,2月29日までに 鴻海のオファーを受けるか,国が後ろ盾の革新機構のビッドを受けるかの判断を迫られている。
"シャープが破産しないだろうということは ハッキリした。" … と BNP パリバの中空は言う。"SoftBank のスプレッドの広がりは,ファンダメンタルズから乖離を始めている。"
・・・ とここまで書いたのであるが,肝心のこと ── ソフトバンクの CDS が この1ヵ月でこんなに
急騰した理由 ── が皆目分からない。確かに負債額は多い。しかし,デフォルトなどは ほとんど
起こらないはずである。
そういう兆候は,報道に全く見られない。実に不思議である。この1ヵ月で 100 bp (=1%) の暴騰ですよ。ソフトバンクの債券の金利を 2% くらいとして,そこへ 1% の保険を払うというのはよほどのことです。
スプリントの債務償還は,2017年8月15日までの合計が $37 億くらいある。いざとなれば,ソフトバンクが全部現金でも払えます。
国内の営業が 急転悪化はしていないから,考えられるとすれば,海外投資の大きな失敗が伏せられている ・・・ これくらいしかありませんね。
ソフトバンクは とにかく隠す体質で,いつどこにいくら投資したかも発表しない。
インドネシアの Trikomsel だけは,外国通信がその前にデフォルトを報道したから,償却を発表せざるを得なかった。しかし,これも いつ いくら どういう動機で投資したかについては 何も言わない。 決算発表会でも,質問は無く,口封じされているような印象だった。
Quartz の記事は ソフトバンクのインド投資を扱っているが,Ola と Snapdeal は うまく行っているらしいが,それ以外は かなり評判が悪い。安宿ホテルチェーン Oyo Rooms の 22 歳の創立者兼 CEO Ritesh Agarwal のことを孫さんは褒めていたが,実際には 履歴書捏造で,Oyo のシステムは
自分が考案したように見せかけているが,実は他人から買い取ったものだとか ・・・ 。
本当のことは 分からないが,インドで (インドネシアと同様に) 嵌められて金を巻き上げられたんでしょうかね。あるいは, インドネシアの件が 相当にドロドロ
[これ以上は書けないくらい] していたとか。 何しろデフォルトしたと言われてソフトバンクが減損償却した Trikomsel が 2016 年に入っても,ジャカルタ証券取引所で 史上最高値をつけて,倒産どころか ピンシャンしているんですからね。
いずれにしても,日経は全部を把握していると思う。なぜなら,日経電子版には アジア記事を掲載し,英文記事をアジアに配信している。インドネシアの例の Trikomsel の大物 Sugiono さんには,2015 年5月にインタビューして,「E-コマースに進出する」との談話を取っている。そういう日経が 追及しない筈がない。でも「映倫さん」との関係で 今は出せないのでしょう。その結果,知る人ぞ知る ・・・ で CDS にこれが顕われた。
というのが,現時点で考えられることです。とにかく,この CDS が急騰した理由が早く分かって
欲しいですね。知っている人 (日本の大手金融機関) は,知っているんですから (でなけりゃ こんなに上がるハズが無い)。基本的には,孫さんの隠ぺい体質が問題なのです。決算説明会を オープンにやることによって,一見 全ての情報を開示しているように見せるのですが,実際には 隠したいことを必死に隠している。
「孫正義個人商店」の感覚です。だから,株主は私を信じて付いて来ればよい。余計なことを知る
必要は無い。最終的には,私がやるのだから,すべてはうまく行く。 ・・・ ということです。
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なお,久しぶりに EDINET へ行って調べたところ,
2012年12月にはソフトバンク株の持ち高が 10.41% に達して,孫さんに次ぐ第2の株主と騒がれた Capital Reseach というアメリカの投資会社が 2015/09/30, 2015/12/31, 2016/01/29 の3回にわたって,ソフトバンク持ち株を 8.77% ⇒ 5.05% に減らしたことが分かった。
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気になる方は, 『ソフトバンク, CDS」で検索してみるとよいでしょう。
CDS が急上昇している理由は,ほとんど見つからないが,スプリントの減損償却を理由に挙げているウェブサイトがあった。確かにその可能性はあるのだが,スプリントは電波を4兆円くらいに評価している
[2.5 GHz という高い周波数の電波が主力なので (低周波電波に比べて設備投資を2倍くらい多く必要とするらしい),イザというときに,キャリア各社にこの値段で買ってもらえるかという問題 … つまり 水増ししているという懸念 … は かなりある(笑)] 。これのお蔭で持ち堪えている。みなさん記憶しておられる 2014年12月の決算で $21.33 億の減損償却をしたのに,2015年12月の決算ではその必要が無かった。これは,(2015年1月に終わった AWS-3 電波オークションでの)「棚ぼた」とも言えるような電波の大幅な値上がり
[~+50%] が利いたのだろう。決算が一般に良好だったと受け止められているのは大きな間違いであり
[スジはそのように正しく認識している(笑),筆者もその1人(笑)] ,かなり悪い決算だったというのが事実ではあるが,それも急速に悪化しているというわけではなく,3月期の決算が山場だから,それを見てからのことだと思う。
「今や世界の金融機関同士が資金回収に入っており,ましてやソフトバンクのような超借金企業は
格付けも低く世界中の金融機関から借金返済を求められた場合,数兆円単位で返済を求められることもあり得る」
という主張なのだが,19 銀行団から借りた2兆円を別にすれば,ソフトバンクは,ホークス応援ボンドという巧みな方法で多額の資金調達をしているから,満期までこれが取り立てられることはない。銀行融資ではないのである。ここが,孫社長をして「現金は手元に2兆円ある。流動性の心配は全く
ない」(ロイターなど報道) と強気で答えることを可能にしている。この説明は,100% 正しい。何もごまかしてはいない。
問題があるとすれば,スプリント買収の際に 19 銀行団から借りた 2兆円である。
スプリント買収のために銀行団から借りた金のうち,1.1 兆円が 2018 年9月13日に返済期限を
迎える。
これの契約がどうなっているか ── たとえば 「スプリントの赤字が○○四半期継続した場合には, 銀行団が返済を要求できる」というような類の条項 (covenant) が融資条件に入っていれば,事情は大きく変わる。しかし,一般投資家にはそこまで知る術が無い
[covenant の1つに,ソフトバンクがこれ以上スプリントに投資することは禁じられているらしい (WSJ, 例の内幕記事で,日本語訳では映倫カットされた部分にある)] 。銀行団だけが知っている秘密である。日本の生保,投資信託などは,当然 知っている
ハズである。けれども,これが当たっているとすれば,それには,2015年11月から数えて少なくとも2年の余裕があるはずだ。孫さんが 立て直しの期限を あのとき2年と切ったのだから。まさかにそんな秘密条項があれば,それを無視して大胆に「2年」などとは,いくらホラ吹きの孫さんでも言える
筈が無い。
ますます 分からなくなってきた
(笑)。
結局,この推論は 初めに戻り,CDS の大幅な急上昇の原因は,アメリカに滞在中の SIMI 社長さんが何か どでかいヘマをやらかして,その情報が 筋の間に出回っているということになる。はっきり
言えば,知らぬは 日本の○○ばかりなり ・・・ 。
Quartz India にしても,記事を書く以上は,火の
無い所に煙は立たぬ … 。
そもそも,ご本人が 1月16日に「2016 年は,きっと ちょっとまずいことがある見込み」とインド政府が開いたイベントで語った … と
Quartz India は 伝えている。経営者が「ちょっとまずい」と
言う場合,「ちょっと程度のまずさ」だったことは,どのくらいあるだろうか? 東芝だって,シャープだって「ちょっとまずった」ってな経営者感覚ではなかろうか?
"I am sure in 2016 we are going to see some mishaps and it is going to be the year of execution,” Arora reportedly said at the Indian government’s Startup India event on Jan.16.
どんな記事も読み方によるが,2月11日の 日経電子版 繁田奈歩さんの記事を
疑心暗鬼で読めば「ソフトバンクは インドでちょっとおかしいんじゃないの?」と
言っているようにも読めないことは無い?(笑) あれは,日経から 日本の投資家向けの最後の警告か?(笑)
日経からは,ソフトバンクの決算の甘さを衝く恒例の記事が,今回はまだ出ていませんよね?
分析に手間取っているのかな?(笑)
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[2016/02/13]
鴻海からシャープへの出資要請とかで,その余裕が無いか (笑)
「出資要請」というのは 曖昧な表現ですが,要するに「共同買収」である。
ソフトバンクさんも,堺工場や亀山工場の持ち主になって下さい ・・・ という要請である。
シャープ救済にソフトバンクの資産を充てるという誰かさんの狙いが,偶然か
はたまた 読み筋通りか 当たり始めたようだ。
[流動性が しかも ゲンナマで 国家予算の 2% も余っている … と豪語すれば そりゃ 狙われるよね (笑)]
官邸としては,「シャープの赤字をなるべく多くソフトバンクに負担させたい」というのが基本線であろう。国会答弁をテレビで見れば分かるように,いったん 唱えた自説は撤回しない執念深いお方ですからね。
こうまで憎まれてしまったのは,孫さんの不徳の致すところ。抗弁のしようがありません。
携帯電話料金値下げの口火を切る大切なお役目を買わされて それを見事に果たし,次は シャープの赤字も背負わされる。
鴻海のオファーは 棚ぼたか? (誰にとって?)
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本当のところ,この執念の先には もっと怖い話が待ち受けていると思うのだが ・・・ 。
孫さんは 人を見る目が無いとつくづく思わされる (そういう人には,適切な助言をする人もいない)。
有名人に顔をつなぐだけではダメなんですよね。
アメリカの大学で留学していたんなら,その時の仲間に,親身になって (ゼニカネ抜きで) 助言してくれる人が 何人いるんでしょうか? そういう人から助言をもらえれば,アメリカでの事業で失敗することは防げたはずだと思う。そもそも T-Mo 買収が可能なのか,Sprint の従業員のモラルがどのくらい低いのか … などなど。
普通の会社では,フトコロガタナがいて トップを助けるんだけど,そういう人がいるんでしょうか?
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ここで,絶対に大外れする大予想をここに書き留めておこう。
いいですか,大当たりではありませんよ(笑)
この大予想は,これまでに起きたことが全て,誰かさんの仕組んだものであるという仮定から始まる。その仮定により,現実に起こったことをどの程度説明できるか,将来においても その時点でうまく
説明できたか … がポイントです。
全てが仕組まれているとすると,革新機構の線はすべて陽動作戦である。ソフトバンクに とにかく
全てをおっ被せようという大きな力が働いている。携帯電話料金で値下げの口火を切ったのもソフトバンクだった。
10 月29 日のシャープとの合弁会社設立は,今回の鴻海からの話の糸口だった。この糸口は小さなものであるが,これに踏み込んだソフトバンクは,鴻海の提案を断りにくい。つまり,10月の時点で 大きな力に 嵌められた。これにより,ソフトバンクは「シャープ救援企業」と 日本の産業界では
認定されたわけだからね。
鴻海がシャープを買収することに拒否反応を示しているのは,報道によれば 経済産業省が後ろで糸を引いている革新機構である。大きな力さんの方は,どうなのか。これは不明である。もともと,外資の導入を掲げて法人税の引き下げをやった人が,鴻海によるシャープ買収を肯定こそすれ,否定できるはずがない。
というわけで,鴻海がシャープを買収し,同時にソフトバンクを巻き込むという大作戦は,1月半ばには まとまったと断定できる。このように大きな力で決まったとすれば,ソフトバンクの孫社長といえども抗えない。
抗えない理由はいくつもあるが,最大の理由は「スプリント買収ができたのは 誰さまのお蔭か?
財務省所管の JBIC, DBJ が融資しなかったらどうなったかは,分かっておろう。ことに JBIC については,お前のためにわざわざ 融資規則まで変えてやったんだからな」と言われたら,孫さん 返す言葉は 1つもありません。だから,鴻海の提案は 断れない。せいぜい,出資比率を下げてもらう交渉くらいです。
では,ソフトバンクがシャープの株主になるとどうなるか? これは,孫さんの「遠い」発言から分かるように
[Nikkei Asian Review は, これを "Son responded that it is well outside SoftBank's territory." つまり SoftBank の縄張りのかなり外にあると答えた … と英訳している] ,ソフトバンクにとって,まさにコペルニクス的転回ですね。だって,製造会社を ー 製造工場を 傘下に持つんですから。こういう固定資産には投資せず,逃げやすい投資にこれまで集中してきた。先日の決算説明会では「ソフトバンクは 30% 以上の戦略的投資を行なっている」
[ホントは大ウソ,Regendary は 10%] との発言がありました。シャープのような工場に投資すれば,リスクは遥かに増える。スプリント, インド, 東南アジアの投資で,ただでさえ大きなリスクを抱えるソフトバンクが,さらにリスクを増やせば ・・・ ここで 漸く話がつながって,CDS が急騰して 張り付いた状態になっていることを理解できます。
というわけで,CDS が急騰を開始した 1月半ばから,金融業界では この話はよく知られるようになり,いまだに下火になっていない。したがって,ソフトバンクはこれを受けざるを得ない … という結論になる。
いずれ,ソフトバンクから「シャープに○○% の戦略的投資を行なうことを決定した」との発表があるでしょう。逃げられないことだから,意外に早いかもしれません。
以上が,たぶん 大外れする大予想である。
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[2016/02/15] ソフトバンク株価が上がっているね。前場で +4.84%。日経平均株価は +5.12%.
鴻海を材料にして買われたとは言えないが,問題は,これで CDS が下がるかどうか。
つまり,ソフトバンクのリスクが増えると見るか / 減ると見るか が問題。
常識的には,シャープの液晶工場みたいのに ソフトバンクが金を注ぎ込むのは破天荒!
そういうことが分かる技術者も幹部もいないしね。
まじめな話,買収となれば,数ヵ月を掛けて
デューディリをやるんだけど,シャープみたいな業態で しかも大きな会社で,それを責任持ってやれる人がどれだけ 社内にいるのか? まぁ鴻海の査定をそのまま呑むしかないだろか? 損だろうけど仕方ない。人がいないんだから。
とにかく,これは やらざるを得ないのが孫さんの辛いところ。
堺工場 (3,800 億円) は 総額1兆円の投資とか。
孫さんの堺工場の評価は,いくらなの? 電気のことは皆目分からない社長さん (笑)
日本の株式市場は,孫さんの苦衷を全く理解していない (笑)
ここで買収発表となれば,ますます ソフトバンク株価は上がるのか?
さすれば,孫さんの苦衷は増すばかり(笑)
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[2016/02/15]
・・・ と思っていたら,Diamond Online に
「シャープ再建は,もう手遅れ」
という記事が出た。
「シャープは株主資本を1兆円以上も毀損し,生産設備を主力とする有形固定資産も 2/3 を手放した。その結果,時価総額は9割が吹き飛んでいる。国内社員の8割を温存しているが,企業価値は以前の1割しか残っていない。いまや 3,000億円 も出せば シャープが買えるのに,台湾の鴻海精密工業以外に買い手は現れない。」
と書かれている。ちなみに本日引け値 \149 での時価総額は \2,535 億。銀行からの借り入れは \7,000 億。
革新機構の提示額は \3,000 億,鴻海の提示額は \7,000 億と伝えられている。
シャープのように 業績がどんどん悪化していく企業の買収は難しい。評価をいくらにするかで揉める。
契約して,それが完了するのがいつになるか? その時点での評価を目安に契約するから売り手と
買い手の差がどうしても大きくなる。
その典型的な例がスプリント。孫さんは買い手が無いと言うが,買い手があったとしても,FCC の認可後までには (1~2年後),スプリントの赤字が増える。従業員が逃げていくし,質も悪化する。資産が劣化する。ネットワークが改善しないから客が逃げる。そこを全部 デューディリして買おうとすれば,かなり安くなって話がまとまらない。だから 結局,
経営が安定するまで,買い手は見つからない ・・・ というのがホントの理由だろう。そのための (売れるところまで持っていく) 努力を 仕方なく やっているのが「立て直し」という言葉の本当の意味である。
板では,Sprint を早く売ればいいのに ・・・ という意見がよく見られるが,そんなに簡単には売れないのである。通信会社の合併というのは,かなり大変なことである。誤解は無いと思うが(笑), 「撤退のための交渉」が難しいのである。だから,本来は「仮に撤退する羽目になったときに困らないか」を考えて,アメリカ進出を考えるべきだったのであり,ここが最も重要だったのである。今の Sprint は 撤退したくても撤退できずにダラダラとアメリカで営業を続けざるを得ないという,一番まずい状況にある。
世間の評価では,孫さんは こういう判断は正確に下せるということになっているらしい。確かに極く初期の頃には,数多くの失敗をして,上手に切り捨てることもなさったらしい。いずれも 小さな規模の事業である。しかし,2年近く アメリカ報道を中心にしてかなり詳しく観察してきたが,少なくとも最近の孫さんは,そういう評価とは 180° 違うと思う。独善的な直感に頼って判断している (もちろん,全部が外れていると言っているわけではない)。特に,T-Mo の買収に到っては,成功の確率がほとんど 0 であることを自分で知りながら,ドン・キホーテのようなことをやっていた。
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引け後に自社株買いが出ましたか。
\5,000 億。ちなみに今日の 引け値 \4,400 での時価総額= 52,830 億。今日 自社株買いしたとすると 5,000 ÷ 52,830 = 9.46% の買い付けです。明日以降
株価は上がるでしょうから,これより株数は減るが,かなりの多額です。Capital Research が最初に持っていた 10.41% を全部買い取っちゃうくらいの勢いです。
あぁ,PTS では,かなり上がっていますね。仮に \5,000 で買い付けるとするとどうなるのかな? えーっと時価総額が 52,830 ÷ 4,400 × 5,000 になるわけだから,5,000 が分子と分母で消えて,4,400 ÷ 52,830 = 8.33%,えっ,もうこんなに下がっちゃったの? 14.2% ってのは詐欺?
(笑)
では,この反対に,5,000 億円で 14.2% まで買えるためには,株価がどのくらい安くなければならないか?
ややこしいね(笑)。発行株式数 11.74 億株を使えば分かりやすい。
11.74 億株 × 14.2% = 1.667 億株。これだけの株数を 5,000 億円で買うと,1株の値段は 5,000 ÷ 1.667 = \3,000。 きっかり 3千円になった! ということは,ソフトバンクは,株価が \3,000 に下がることまで想定しているんだ! へ~~。
理由というのが,理解できません。
「経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため」
経営環境がどう変化したというのか? 会社として説明が必要です。
単純に,「今の株価は安すぎる」って言えばいいのにね?
この目的は? もちろん 株価を上げることなんだから。
問題は ・・・ これで CDS が下がるのか? こちらが,本命の問題のハズなんだけど。
まぁ 自社株買いが借入金によらない ・・・ と言っているところが,CDS に敬意を表した形です。
ガンホーを売った \800 億もその中に入るんでしょ。映画スタジオ レジェンダリの売却益も (30% 超の戦略的買収でなかったことがバレるから 恥ずかしくて(?) 売ったことさえ公表しないが) 当サイトの推定では 最低 $1億あるし。
しかし,手元資金のかなりは,ホークス応援ボンドのような社債なんだから,基本的には 借金して自社株買いしているのと同じですよね。無借金の会社が言うならともかく,借金じゃぶじゃぶの会社が「借入金によらない」って言ってもね。ホークス応援ボンド 最近の発行額 \3,700 億を買った人は,あれが全部自社株買いに回ったと思うんじゃないの? 「な~んだ,柳田, 松田のボーナスに回るのかと思って協力したのに,自社株買いに使われるんなら,次回からは やめとこ」ってことにならないか?(笑) 2.18% の金利のついた借金で自社株買いしたとも言えるのだ!よって,増配はしない。
本来,自社株買いというのは,発行株数を減らしたので,利益が変わらなくても配当金を増やせるからという理由で 株主に歓迎されている (少なくともアメリカでは)。でも,金利負担のある金で自社株買いすれば,この理屈が破れる。ど~考えてもおかしいような気がしませんか? 利払いの多い会社は, 余裕があるんだったら,借金返済がまず第1ですよね。そうやって利益を増やす。これが配当に回せるので株主が喜ぶ。
会社は「新たに借金するのではない」と強調するけれど,自慢の流動性 2兆円も,かなりは 社債発行によるものです。5,000 億円の借金を返せば,2%
[スプリントなら 6~7%] の利率として 毎年 100 億円。これを配当 \10 として株主を喜ばせることだってできる。それなのに,実質的に 毎年 100 億円の利払い負担で自社株買いをして,株主にとってありがたいことが,どれくらいあるんだろ? 増配は無いんだし。しばらく考えてみることにします (おそらく これだけ巨額の債務を持つ会社が これだけ巨額の自社株買いをしたのは珍しいことなので,会計学の専門家が博士論文の恰好のテーマとして飛びつくでしょう
(笑)) 。
CDS を本気で下げたければ,借金を返せばよい。
ただし,借金返済と言っても,どの借金を返すか ── ここが 孫さんにとって苦しいところです。
ロイターは,5,000 億円を SoftBank 株の買戻しではなく,Sprint の財務改善に振り向ければよい (香港発, 2016/02/16)「弥縫策 (symptomatic relief=
症状緩和) に過ぎないソフトバンクの自社株買い」と言うのだが,例の covenants が
それを禁止している。もしもできるんだったら,孫さん,とっくにやっているでしょ。現に,ブライトスターの借金を繰り上げ返済したばかり。Sprint には そういう直接の資金投入ができないから,MLS (端末のリース会社) を設立することにより,間接的に資金援助をしている。
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なお,自社株買いという選択を選んだ以上,鴻海からの提案に ソフトバンクは乗ることに決めたように感じます。
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[2016/02/15]
なになに,またニュースか? 「
ソフトバンクグループ,米再建に集中」
これ,もう聞き飽きた。読む気がしない。(笑) ほんとに読まないよ。馬鹿にしてる。
オオカミが来た ・・・ と同じです。本気でない。
もしも本気であれば,2年半前にスプリントを買収した時に,直ちに再建に着手したはずである。
逆に言うと,2年半前に買収した時点で,再建のつもりなんてまるで無かった。── そう言われて孫さん反論できるのか? 自分でカンザスシティに飛び込んで経営を直接に見ることもしなかった。幹部役員をソフトバンクから大量に送り込むこともしなかった。
それを今まで放置して,再建などとは戯言である。できるものなら タイムマシーンを使って,2年半前にやってみろ と言いたい。
Sprint, SoftBank の両方の株価を下げて,両方の株主に迷惑を掛けたことをどう思っているのか? 特に NISA に期待してソフトバンク株を ~\9,000 で購入した人に,どういう気持ちでいるのか?
本来なら その責任を取って社長をとっくの昔に辞任すべきである。(もちろん,この社長の無能を
見破って,(いゃ株価を半分に下げる超能力を有する素晴らしい社長であるという正しい判断により),空売りでガッポリ儲けさせていただいて喜んでいる方はいますが)
こういう社長をのさばらせておく日経にも 大いに問題がある。新聞記者は株の売買を禁じられているハズであるが,内緒で空売りをやってるんですかね?(笑) そう考えると,非常によく理解できますよ,日経さん。