2017 年も終わりに近づくころ,Uber は 傾く貸借対照表をテコ入れするための投資をまたもや確保した。SoftBank の公開買い付けは,初期投資家の投資に 360,000% [=3600 倍] もの莫大な利益確定選択を許すと同時に,同社に新たな資本 $12.5 億 を注入した。
SoftBank の Masayoshi Son CEO は,Yahoo, Vodafone, Alibaba, Sprint, Nvidia などへのこれまでの大きな賭けから財を成した。Son は Uber (
あるいは ,その代りにこれまで SoftBank が手厚く投資してきた 他の配車企業 滴滴出行, Ola, Grab, 99) に,会社のこれまでのぶざまな (dismal) 業績を俯瞰する何を見ているのか?
私の 過去の
Forbes 記事 "Uber は なぜ黒字になれないか?" は,如何なるスタートアップ企業よりも急速に赤字に到った Uber の事業モデルの根本的弱みを特定した。ちょうど終わったばかりの1年の ── Uber 創業後7年目の年間予想赤字 $50 憶は,前例のない巨額であり,持続不可能なことは明らかである。しかも,今のままの路線では,Uber が 近い将来に出血を止めると考える理由は ほとんど無い。その理由は簡単である:
事業モデルが根本的に破綻しているからである。
Uber が破壊しようとしているタクシー業界は,
[Uber のように?] 規制の無い市場へ拡大を許されたとしても, 黒字には絶対にならない;この業界は参入の障壁が低く,変動費用
[=固定費以外の費用] は高く,規模の利益が少なく,料金競争が激しい。しかも,Uber の現在の事業モデルは,これら業界の構造特性に根本的にチャレンジしようとしない。
Uber の事業モデルは,乗客にとって べらぼうな価値を創出し,会社の急成長につながったが,極めて猛烈な料金設定は,運転手に魅力的な報酬を与えるだけの売り上げを生むことはできず,株主への大きな利益も生んでいない。同等なタクシー料金の ざっと 30% 引きにサービス料金を設定することにより, そして水揚げの 25% を Uber が取ることにより,(実際に労働, 車, 保守費用, 保険費用, ガソリン代を負担する) 運転手に与えるべき売り上げを切り詰めた。Uber の現在の事業モデルには,ライドシェア・サービスの 切り詰め可能なコスト要因がほとんど無いし,事業規模を大きくしたところで, それによって営業コストを切り詰められる内在要因は無い。 このように,Uber はタクシー業界を破壊しようとして,本質的に低収益の
[注:つまり どうやっても低収益を免れない] サービスを提供するコストを減らそうとしてきたのである。
これと同じ罠 ── 消費者は少ししか払いたがらず;変動費用は高く;規模の利益は小さい ── は,(山のようにある 赤字企業 Postmates,
[注:SoftBank が出資する] DoorDash, Instacart と競合する) UberEats, UberRush のような "最後の1マイル" 配達サービスからも 利益の可能性を奪う。
過去 10 年にわたって,投資家は 次の "Uber for X" ユニコーンを探して $90 憶以上を 125 のオンデマンド配達企業に注入した。しかし,新しい資本の注入は干上がっており,多くのベンチャー資本家は損を重ね,破産するセクタに信頼を置かない。たとえば 過去2年,DoorDash は 16% 評価減の (厳しい条件付きの) 資金調達を強いられたし,SpoonRocket, Sprig, Maple は営業を停止した。
この苦しい状況を,新しい価値を生み, 業界を破壊しつつある 他のスタートアップ企業と比較してみよう。
その場合 ── 眼鏡,ファッション衣類,マットレス,企業用ビジネス・システム では ── Warby Parker, Rent The Runway, Casper, Amazon Web Service のような企業は 革新的な事業モデルを開発し,バリュー・チェーンに沿った かなりの低コストで 優れたサービスを提供し,これにより業界の経済を根本的に変革する。たとえば,Warby Parker と Casper は,業界の非効率なバリュー・チェーンを それぞれの業界で 小売価格に
対して製造コストから 10 倍 中抜きし,大幅な低価格で 優れた顧客体験を与え,しかも維持可能な営業マージンに余裕を残している。
Uber の場合は,そうではない。インターネットの夜明け以来 我々は,面白そうな価値命題を持ちながら未検証の事業モデルの企業が 利益はそっちのけで 狂ったように急拡大を目指し,挙句の果てに燃え尽きる … という醒めた事例を数多く目撃している。Kozmo と UrbanFetch は,都市部での最後の1マイル配達業の 初期の犠牲者であった;2001 年に破産を宣言するまで,$3 億以上のベンチャー資本を燃焼させた。
その同じ年,もう1つの叙事詩的 事業モデルが メルトダウンした;Webvan は オンライン食品配達分野を開拓した企業であった。ベンチャー資本 $8 憶と,E-コマース・バブル最高の時代に IPO で調達した資本により,Webvan は 先行者利益を確立し,高度に自動化された倉庫を 全米 26 都市に建設した。しかし,Webvan は低マージンのこの業界で利益を挙げて営業するために必要な経営規律をマスターすることができず,新しい
都市で営業を始めるごとにマイナスのキャッシュフローをさらに拡大した。その結果,Webvan は IPO から
僅か 18ヵ月で破産した;上場会社が最も速く倒産した記録となった。
Webvan 伝説は,利益を後回しにして 狂ったように急成長に走るすべての企業 ── 特に 基盤経済に挑戦するカテゴリの企業 ── に教訓を与える。確かに Uber は,21 世紀への変わり目の頃に先行企業が欠いていたいくつもの有利な点を持つ ── 計算が低コストでできる;バンド幅;GPS;地図ツール;ソフトウェア;携帯とオンライン取り引きが消費者から広く受容された;深い (減りつつあるが) 現金貯蓄。そににも拘わらず Webvan 同様,Uber は 主要な大都市市場で 黒字営業が一貫してできることを まだ示していない。反対に,$90 憶を超える負のキャッシュフローを計上している。
以上を背景として,Uber の権益 15% に $77 憶の投資を最近完了した Masayoshi Son は,Uber に何を見ているのか? その答は,Son が 2つの異なる時間軸で Uber の財務が改善すると期待しているからであろう。
短期-中期では,Uber は もはや現実的には 世界中の大都市市場で "最後の生き残り" になると期待すべくもないが,ライドシェアの激しい競争が収まって,破滅的な運賃戦争を避けるという望みはある (ちょうど アメリカの航空業界のように)。もしも,ライドシェア・セクターと最後の1マイル配達セクターでの競争が (低い参入障壁にも拘わらず) 弱まれば,生き残ったプレイヤーは 料金決定力を持ち,運転手をリクルートする費用を下げることができる。SoftBank は,Uber 以外のライドシェア企業にも多額の投資を行なっている。したがって,世界市場で Uber, 滴滴出行, Ola, Grab, 99 のあいだの "好ましい競争" を SoftBank は促進するはずだ。とは言え,ライドシェア業界は,これまで 自分自身の中に深い穴を掘った。拠って立つ事業モデルの弱さは,業界の収益見通しを急激に改善する見込みは無い。
それより長期では,Uber は財務の改善の可能性を 自動運転車 (空飛ぶタクシー・ドローンを含む) に常に置いてきた;自動運転になれば,カネのかかる運転手も,信頼できない運転手も不要になる。理論的には,無人運転車は 生産性を上げ,サービス品質を上げ,同時に営業経費を大幅に減らす ── だが,これには3つの重大な
注意を必要とする。
(1) 自動運転技術の経済性は 未だ証明されておらず,労賃の節約と業界の変革とのトレードオフを我々は未だフルに理解していない。いかなる状況であれ,自動運転車の広範な採用は,最終的に 数十億ドルの新しい投資を必要とする。そして Uber にはそれだけの資金を手当てする力は無かろう。
(2) Uber は,完全無人車への競争で,単独と言うには程遠い。グーグル (Waymo),既存の自動車会社,
あるいは 他のライドシェア企業が,無人ライドシェア・サービスを最も上手に配備する位置につけるかは 未だ不明である。仮に,都市交通セクターでの持続可能な黒字へのカギが,大都市ごとのライドシェア・プラットフォームの営業 (これは 参入障壁が低め) ではなく,優れた自動運転技術へのアクセス (これは参入障壁が高い) により押し上げられるとすれば,無人運転車は Uber の収益追求の救いにはならないだろう。
(3) 最も好条件の下でも,混雑した都会での "レベル5" 自動運転車の広範な配備の時間軸は,年を単位ではなく 10 年を単位として計算されるだろう。これは,如何なる投資家も 素早いリターンを求めて投資するような賭けではない。そして,この現実は 最終的に Masayoshi Son の Uber et al に対する (ライドシェア業界のキングメーカーたらんとする) 大きな賭けを説明するかも知れない。
Son は,一貫して 例外的に忍耐強い夢想家であることを証明してきた。彼は,(やがては巨額のリターンを生む) 生まれたばかりの技術に大金を投資したがる。Son は,インターネット 1.0 (Yahoo), E-コマース (Alibaba), 通信 (Vodafone, Sprint), マイクロプロセッサ (ARM, Nvidia), ロボット (iRobot, Boston Dynamics), 共有経済 (WeWork), ソーラー (SBG Cleantech) の爆発的成長の初期投資家であり,最終的勝者である。ライドシェアでの Son の賭けが 元を取れるかどうかは,時間が経てば分かる。
ただし,黒字の無人運転という未来への移行まで生存できるためには,Uber は 短期の猛烈なアクションにより,営業成績を改善する必要がある。Dara Khosrowshahi CEO の優先リストにおいて,2つの命令を 最優先にすべきである。
運転手との関係の改善
Uber は,その両面市場で,乗客と運転手の両方の参加者の経験と経済とをうまくバランスさせることが肝要である。Uber はこれまで,運転手の処遇と給与より,乗客の満足を一貫して重視してきた。この偏りが 運転手の満足度を下げ,他社への流出増 ── 絶対数においても,競争相手の Lyft と比べても ── を招いた。これを戻そうとする最近の取り組みは正しい方向への1歩であるが,依然としてイライラするほど不十分である。たとえば,長年の懸案だった アプリ内のチップ支払いの動作が (わざとやってるの?) お粗末であるし,前払い料金制は 戦略としては健全であるが,その通信動作が これもお粗末である。ミッション・クリティカル
[~不可欠業務] を事実上の従業員が不満足な形で実行するサービス事業は,高くつき 損を招く。
Shrink-to-grow (改革と成長)
Uber は当初から,世界制覇を達成し,既存のタクシー企業と 競争相手のライドシェア企業の両方を薙ぎ
倒し,料金決定に独占的なパワーを握ることを目指してきた。しかし,歴史的に低い利益の可能性と 低い参入障壁のために,Uber がこの賭けに負けたことは明らかである。しかし世界のライドシェア市場の中で,黒字の営業を現在でも維持できるような 地理的に防衛可能な市場と 利用者セグメントがあることは間違いない。Khosrowshahi は,すべての市場を 何が何でも取ろうとこだわる Uber の野心を 頭を冷やして考え直す必要があろう。これは,短期的に利益を挙げる可能性が低い営業を放棄し,一方で 競争上優位にある特定の市場では 業界をリードするチャンスを生かし続けることを意味する。
過度に拡大した企業が 防衛的な中核事業に篭り,そのあと 前よりも強力になって再登場するケース・スタディはいろいろある,Uber の現在の現金燃焼の速さでは,何が何でも守るべき中核をどこにすべきか,そして 他日の戦いを期して どこに一時的に撤退すべきか … を ゼロベース予算により明確化する必要がある。
SoftBank は,Uber の営業と財務を支配下に置くことにより Uber に 追加の滑走路を与えた。しかし,Uber は,Webvan とは違って,意気上がる野心が 忘却への気違いじみた突進という結果に終らないことを保証するよう,厳しい選択を迫られている。
Follow me @lenshermanCBS. More ideas and contact info on book site: If You're In A Dogfight, Become A Cat! - Strategies For Long-Term Growth
配車事業の難しさは,実務を 本当に知る人でなければ 分からないらしい。
問題は,SoftBank にそういう人が 1人もいないことだろう。
Masa, Rajeev, Marcelo ・・・ いずれも失格である。Dara Khosrowshahi も知らないだろう。
結局 Travis がいなければ何もできない。
こういう「投資ごっこ」を 何十とやる Masa が (SoftBank が) 愚かである。
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そうだった (笑)。SoftBank が $3憶 出資する DoorDash (Recode,2017/12/07) が Uber の子会社 UberDash と競合するね。社長さん,あれこれ考えずに出資すると,子会社が あちこちでぶつかるんじゃないの。配車企業同士だけじゃ無い (笑)。
やはり,こういう気違いじみた買収は 全面的に辞めるべきだ。
目が見えなくなってるんじゃないか?重症だよ。世界の笑いもの (笑)。
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短期-中期では,SoftBank のお声掛かりで 競争を抑える … とか,お手並み拝見ですね (笑)。
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やっぱり 長期では,自動運転に賭けているのか (笑)
この著者も 長い年数が掛かると言っている。
無人の自動運転タクシーが実現するのと Uber が破産するのと,どちらが先か?
「それだけの資金手当てをする力は,Uber には無かろう」という部分は,著者の完全な間違いである(笑)。SoftBank は,$100 億でも $200 億でも いくらでも喜んで出すだろう。沽券に関わるから。
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「撤退」は,もうやってると思う ・・・ 中国とロシア。
結局これは,Uber, 滴滴出行, Ola, Grab, 99 の経営統合をどう進めて,グループとしての無駄 ── 毎年 数十億ドルに上るらしい ── をなくする問題である。これをやらなければ,SoftBank に巨額の赤字が発生する。
根本的に解決するには (笑),合計 10 兆円くらいを用意して,これらすべての企業の 過半数の株式を取得するしかない。
けれども 仮にそれだけの金を掛けたとして,統合グループのトップに立つ人材を 東京本社は出せない。
要するに 何をするにも 人材が ゼロであることが祟る。カネだけは借金で賄えても,人材はどうしようもない。結局,世界中の配車企業の 巨額の赤字を SoftBank が負担する … という状況が続くものと予想される。