Uber 関連報道 (started 2014/01/06)
  1. Uber の自動運転技術,信頼しがたい
    日経 XTECH,2018/04/04
    中田 敦 (シリコンバレー支局)
    自動運転車として初めて歩行者の死亡事故を引き起こした Uber Technologies に対する批判の声が高まっている。自動運転技術や運用体制に不備があったにも関わらず,長距離の公道テストを強行した疑いがあるためだ。公道テストを許可したアリゾナ州政府への批判も起こっている。
     Uber の自動運転車がアリゾナ州テンピ市での公道テスト走行中に歩行者をはねて死亡させる事故を起こしたのは,2018年3月18日午後10時ごろ。当初は亡くなった49歳の女性が横断歩道の無い場所で車道を渡っていたことから,"人間のドライバーでも避けられない事故" とする報道も出ていた。しかし,テンピ市警察が自動運転車の車載カメラが撮影したビデオを公開したことをきっかけに,Uber の自動運転技術を疑問視する向きが多くなってきた。
    車載カメラが捉えた事故直前の様子,出典:テンピ市警察
     テンピ市警が公表したビデオからは,被害者の女性が自転車を押しながら,中央分離帯から歩道に向けて車道を渡っていたことが分かる。被害者の女性が歩道から「飛び出し」ていたわけではなかった。ビデオでは道路が暗く映っているが,グーグル・マップのストリートビューで確認すると,事故現場には街灯が整備されていたことが分かる。車道は緩やかな右カーブを描いており,見通しも良い。人間のドライバーなら離れた場所から十分に歩行者を視認できた可能性がある。
    グーグル・マップのストリートビューで確認した事故現場周辺,出典:グーグル
     自動運転車であっても事故を回避できたという主張も出てきている。インテル傘下で自動ブレーキ用画像認識技術を開発するイスラエルのモービルアイ (Mobileye) の Amnon Shashua CEO は3月26日に声明を発表し,同社のソフトウエアであればテンピ市警が公表したビデオの画質であっても, 1秒前に歩行者を検出できたと述べた。 ["1秒" の意味は重大である。下の Bloomberg 記事へ注記した]
    モービルアイによる歩行者検出結果,出典:モービルアイ
    そもそも Uber の自動運転車には, 3次元レーザー・レーダー (LiDAR) を搭載している。LiDAR があれば,暗闇でも障害物を発見できるはずであった。実際にグーグル系の自動運転技術開発会社 Waymo は,2018年2月に公表した安全レポートで,LiDAR やレーダーなどを搭載する同社の自動運転車が全方向に対して 300 m 先まで障害物を検出できると主張している。しかも,検出した障害物に関しては,それが車両なのか自転車なのか歩行者なのかを識別し,今後どのような行動をするかまで予測できるとする。
     技術レベルが劣っていたとの報道
     なぜ Uber の自動運転車は,歩行者を検出できなかったのか?事故原因は現在,国家運輸安全委員会 (NTSB) などが調査中であり,真相は未だ明らかになっていない。しかし New York Times は 2018年3月23日の時点で,Uber の自動運転技術の水準が Waymo などの競合に比べてかなり劣っていたと報じている。
     自動運転技術の水準を示す数値に, 「人間のドライバーによる AI からの運転の引き継ぎ (Disengagement) が発生した頻度」がある。カリフォルニア州は,州内で自動運転車の公道テストを実施するメーカーに対して,走行距離だけでなく,引き継ぎが発生した回数などを毎年1回報告するよう義務づけている。本誌が各社のレポートを集計したところ,引き継ぎの頻度はメーカーによって大きな差があることが分かっている。
     前述の New York Times の報道によれば,Uber は3月に事故を起こす以前,"13 マイルにつき1回" の引き継ぎ頻度目標を達成するのにすら苦労していたのだという。Uber の頻度は,Waymo の "5,596 マイルにつき1回" やゼネラルモーターズ (GM) の "1,254 マイルにつき1回" を大きく下回る。Uber の技術レベルは,Waymo や GM に比べて文字通り "桁違い' に低かった可能性がある。
     安全運転手が単独で乗車
    事故直前の車内の様子,出典:テンピ市警察
     Uber の技術レベルが実際に低かった場合,同社の公道テストの運用体制も批判を集めそうだ。テンピ市警が公表した車載カメラのビデオからは,事故を起こした車両には緊急時に AI から運転を引き継ぐ運転手がが単独で乗車しており,しかも事故発生直前まで "下を向き", "ハンドルから手を離していた" ことが明らかになっている。自動運転技術のレベルが低いのであれば,運転手だけでなく助手席にも人間を乗せ,運転の緊張感を保たせるべきだった。
     実際に Waymo もかつては,自動運転車に人間を2人乗せてテスト走行を実施していた。Waymo は2017年11月から,人間のドライバーが乗らない完全無人運転車の公道テストを開始したが,それは自動運転技術の水準が十分に高まってからの話だ。
    2017年1月に撮影した Waymo の自動運転車
     Uber が実施した公道テストの走行距離に関しても 疑念が生じそうだ。同社は 2017年12月,公道テストの走行距離が累計200万マイルを突破したことと明らかにしている。2017年9月までの走行距離は累計100万マイルであり,僅か3ヵ月で 100万マイルもの走行テストを実施したことになる。
     Uber の公道テストの走行距離は,Waymo の累計 500万マイルと比べて半分以下。だが,Waymo 以外のメーカー,特に AI からの運転の引き継ぎ頻度が高く,技術レベルが低いメーカーと比較すると,かなり多い。技術レベルの低い自動運転車が長距離を走行すれば,事故を起こす確率もそれだけ高まる。Uber の自動運転車による死亡事故は "必然" だった可能性すらある。
     Uber の問題点を早期にあぶり出せた可能性もあった
     そもそも筆者が Uber に対して最も疑問に感じるのは,同社がカリフォルニア州での公道テストを実施しなかったことだ。単に実施しなかっただけではない。同社は 2016年12月に,カリフォルニア州の交通当局に届け出をしないまま,サンフランシスコ市内での自動運転車の公道テストを強行したほどだった。
     カリフォルニア州の交通当局が激怒したため,Uber はカリフォルニア州における無届けの公道テストを短期間で中止した。同社は公道テストを強行した理由について,交通当局が完全無人運転車の公道テストを認めていないことを挙げていた。
     もしも Uber がカリフォルニア州に届出をした上で公道テストを実施していれば,もっと早くに同社の技術レベルが白日の下に晒されていただろう。前述したようにカリフォルニア州は,公道テストを実施するメーカーに対して,AI からの運転の引き継ぎ回数や走行距離などを報告するよう義務づけているからだ。
     そして,Uber の技術レベルが報道されているように低かったとすれば,カリフォルニア州が情報を公表した2018年1月時点で,同社が技術レベルの低い自動運転車で長距離の公道テストを強行している実態が明らかとなっていたはずだ。結果,同社への批判も高まり,公道テストが終了に追い込まれたり,運用体制が改善されたりした可能性がある。
     Uber は,カリフォルニア州での無届けの公道テストを中止した後,当てつけるように 2017年2月から,規制の緩いアリゾナ州での公道テストを開始した。アリゾナ州ではテスト成績の提出などが義務づけられていないため,引き継ぎ頻度が高かったり,技術レベルが低かったりしても,それらが明るみに出ることは無い。
     同社は 2018年1月から,カリフォルニア州でも正式に届出をして公道テストを開始した。しかし,そのテスト成績が明らかになる前の2018年3月にアリゾナ州で死亡事故を引き起こした。Uber がもっと早く,2017年からカリフォルニア州で正式な公道テストを実施していれば,今回の事故を防げたのではないか。筆者にはそう思えてならない。
     安全性の議論には情報公開が不可欠
     Guardian は 2018年3月28日,自動運転車に関する緩い規制を設けたアリゾナ州の Doug Ducey 知事が,Uber と親密な関係にあったという疑惑を報じている。批判の矛先は,規制を緩和した行政当局にも向いている。
     カリフォルニア州の規制があったお蔭で,各社の自動運転技術にかなりの格差があることが分かった。自動運転車が安全なのか,それとも危険なのか。公開された情報があれば議論できる。しかし Uber は,情報公開する道を選ばなかった。筆者が Uber の自動運転技術を信頼できない最大の理由は,これに尽きる。
    Uber が酷評されているが,これで正しい評価だろう。
     昼間に見ればこのように見通しの良い道路で 歩行者を発見できなかったのは致命的である。
     しかし,ほとんど報道されていないが,1年前の同じくアリゾナ州テンピで起こした事故から学んでいないことが決定的に悪い。事故の様子は 下の Business Insider の記事に詳しく書かれているが,要するに タクシー会社ともあろうものが, 黄色信号の交差点に減速せずに突っ込み, 左折車に衝突して 自分は横転し,交通信号柱にぶつかってようやく止まった … というお笑いの自演劇であった。タクシーがなぜ減速しないのか? 怖くて乗れないよ。
     上場のために商用の無人タクシーを急いで マイル数の数さえ稼げば ごまかせると考えたフシがある。マイル数を目的にしているようでは 救いようが無い。
     本来は,人工知能を賢くするために さまざまの場合を経験をさせる必要があり,その結果としてマイル数が積み上がるのだ。ここを考え違いしているらしい。
     さて これからどうするか。
     (1) 自動運転をやめる。今でも 人がどんどん流出中 (Recode 報道) の スキャンダルまみれで死者まで出した Uber に入ってくる有能な自動運転技術者はいないだろうし,反対に出ていく人は多いだろう。技術を支えられる人がどれだけいるかが問題である。自動運転をやめるのがよい。やめなければ,事故再発の危険が 他社に比べて一番高いだろう。
     (2) けれども それはできないだろう。SoftBank から資本を入れちゃったのが一因であるが,この会社は 自動運転タクシーという夢なしには,将来の希望が無い。事故を覚悟でやるっきゃない。賠償金は SoftBank が出してくれるだろう (笑)。いずれにせよ,世界中のタクシー営業に 乗客から不安が出るだろう。
     (3) 一番良いのは,無人タクシー以外に希望の持てる事業に夢を託することである。それも 技術者がいなくては叶わない。全体として,孫社長は 技術を持っている人を軽く見る傾向があるように思う。 役員の構成から明らかである。無いものは何でも買える … という文化だからやむを得ない。
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    『警察の調査:Arizona州で衝突事故を起こした Uber の自動運転車は,信号が黄色のときに交差点を渡っていた』(Business Insider, 2017/03/31)

  2. India one of our healthiest markets: Uber CEO Dara Khosrowshahi
    インドは 当社の最も健全な市場の1つである:Uber CEO Dara Khosrowshahi
    Live Mint,2018/04/01 @07:38 pm IST
    PTI = Press Trust of India (ニューデリー)
    Uber の Dara Khosrowshahi CEO は,インドは Uber にとってトップ3市場の1つであり, 全世界の乗車数の 10% を占めると言う。
    “I can tell you that India is a key component of our growth plan.
    In fact, it is one of our healthiest markets in terms of growth rates",
    Uber CEO Dara Khosrowshahi says.
    Reuters)
    Uber CEO Dara Khosrowshahi は,インド市場へさらに投資すると公約した。ただし,アメリカに拠点を置くタクシー・アグリゲータがインドでの営業を拡大する中で,"最終的な収益性" にも目を光らせると言う。
     PTI とのインタビューに答えた CEO は,インドが既に アメリカとラテンアメリカに次ぐトップ3市場の中に数えられ,全世界の乗車数の 10% を占めると言う。
     "インドは 当社の成長計画の重要な一部であることを申し上げたい。事実,成長率の点で,インドは当社の最も健全な市場の1つである。300,000 人を超えるアクティブな運転手を持ち,毎週 1,000 万の乗車がある。当社はこれを 10 年後には 5倍 や 10 倍に増やせるものと考える。" … と彼は言った。
     Khosrowshahi は,この拡大が投資を必要とすると強調したが,"成熟するにつれて,最終的収益性を備えた投資とこれを結びつけたくなる。"
     "当社は インドで 良い路線上にあると考える。当社は,黒字になるまでの具体的な時間軸を想定していない。だが 何か言うとすれば,当社は インドに前がかりである。" … と彼は言い,インドで競争上 優位な立場に立つことを確信していると言った。
     Uber はインドでの成長の燃料として,かなりの資金を投下してきた。2015 年,Uber は インドでのサービスを拡大するため,$10 億を投資すると発表した。
     $0.50 億の投資で,Hyderabad に応答・サポートセンターを設立した。
     Ola との合併がカードにあるかと質問されると,同社は "パートナーと株主のための価値を増やす如何なる取り引きにも注目する" つもりだと答えたが,"インドでの当社自身の運命は,当社が握っていると考える。" … と言った。
     Uber とそのライバル Ola については,この2強を結合するという報道が行われている。Ola の投資家である SoftBank が Uber の投資家として加わったことにより,この憶測は強まった。
     インドに加えて,この両者は 今やオーストラリア市場でも競合している;Ola は最近,パースとシドニーで サービスを立ち上げた。
     内情に詳しい複数の関係者によれば,両社は何度も協議を重ね,その中の1回は Khosrowshahi が今年2月にインドを訪問する直前であった。しかし,双方は 未だ契約を結ぶに到っていない。
     Ola も Uber も 両社が合併協議に係わっているかについて コメントを拒んだ。Ola の広報担当者は,わが社は常に足型の拡大の機会を積極的に探している … と語った。
     "Ola は 来たる数十年にわたって,常に積極的である。SoftBank とその他のすべての投資家は,当社の野心の実現を約束している。" … と 広報担当者は続けた。
     Uber は先週,東南アジア営業をライバルの Grab に売却し,引き換えに合併後の会社の 27.5% の権益を受け取る契約を発表した。Grab の前に Uber は, 2つの市場 ── 中国とロシア ── から撤退した。
     インド市場の難しさに触れた Khosrowshahi は,Uber が すべてのインド人にアプリを使ってもらえるようにする必要があると言った。
     "アメリカ以外では,多くの乗客の端末は性能が低く,ネットワークも貧弱である。歴史的には,我々はこのような乗客の需要に応える仕事を ちゃんとやってこなかった。ここが難問である。やるべきことは多い。" … と彼は続けた。
     昨年8月に Uber の手綱を引き受けたトップ経営者は,Uber が インド市場へ研究と資源に手厚い投資を行なっていると言った。
     その例として彼は,"Call to Ride (電話で配車)" を挙げた。これは,[デカン高原の] マハーラーシュトラ州プネー (Pune) で行なっているパイロット事業であり,アプリにより配車を予約するという通常の慣行の代りに,音声通話により配車を予約する。
     Uber は,インドのプラットフォーム上で電気自動車の利用を積極的に検討しているとも言った。"インドは Uber にとってトップ3市場の1つであり, 全世界の乗車数の 10% を占める。私にとって,インドは中核市場であり,その前進に力を入れている。私は,来たる数年のインドでの Uber の未来に実に興奮している。" … と彼は言った。
    はじめは タイトルだけを読んで,中身を読まなかったので 騙されそうになった (笑)
     しかし,買収する側の発言が控え目で,買収される側の発言が強気 ── このままでも独立でやれるんだ! ── と言うのは,当たり前のことである。
     どうやら 中国, ロシアに続いて 東南アジア, インドからも Uber は撤退するらしい。
     ただし シンガポールの規制当局がストップを掛けていると 日経が伝えている (↓ TechCrunch)。
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     企業というものは 一般に事業を広げることにより伸びていこうとするものだが,こんなに次々に撤退するのはなぜか? 事業規模を拡大すると,一般に 矛盾や欠点が 同時に解消することが多い。
     その反対に事業規模を縮小すると,思わぬ欠陥を露呈して こんなことではなかった … となることも多いだろう。Travis Kalanick が CEO だったころの路線を引き継いで縮小しているわけだが,どういうことになるのだろうか?

  3. The co-founder of self-driving trucking startup Otto has left Uber
    自動運転トラックのスタートアップ Otto の共同創業家が Uber を退社した
    Recode,2018/03/28 @06:00 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    Lior Ron は,Anthony Levandowski と共同で Otto を創立し,Otto を Uber に売却した。
     Uber の自動運転のトップ技術幹部が退社した。
     自動運転トラックのスタートアップ企業 Otto を Levandowski と2年足らず前に共同創立し,Uber に売却した Lior Ron が退社した。
     Ron は Uber のトラック事業 Uber Freight の開発面を率いた。Uber Freight は,運んでもらう必要がある積み荷を抱える企業 または 人と長距離トラックとをつなぐ物流プラットフォームである。それと同時に,将来はこのプラットフォームの役に立つようにと,自動運転トラックにも取り組んでいる。
     "当社は,Uber Freight の将来に興奮しており,これにフルに投資している。" … と Uber の広報担当者が声明で言った。"テキサス州で立ち上げた後,当社は Freight をアメリカ大陸のすべての州に導入した。当社は トラック業界を変換するために当社のネットワークと技術を利用する中,Freight が成長を続けるものと信じる。"
     しかしながら,この退社は Uber にとって 間の悪い時期に起こった;アリゾナ州テンピでの車の死亡衝突の後,Uber は今 その余波と自動運転技術への疑問に晒されている。
     とは言え,昨年は Ron を取り巻くゴタゴタが ちょっぴりあった;彼は Otto の前は,グーグル地図で働いていた。
     Ron は,以前の雇用主の Uber に対する最近の訴訟で中心的人物であった。Uber が Otto を買収後,アルファベットは Uber を企業秘密横領の廉で提訴した。アルファベットは,Ron の共同創業者 Anthony Levandowski が自動運転センサーに関する非公開のファイルを盗んで Uber に持ち込んだ … と訴えた。
     そして,アルファベットと Uber はこの訴訟に和議で決着をつけることに合意した。和議の一環として,Uber の新任の CEO Dara Khosrowshahi は,Uber が Otto の買収を適切に行なうこともできたと認めたが,盗まれたファイルが Uber にあることは否定した。
     この訴訟を通じて,Levandowski と Ron の両者が それぞれの個人的な機器に 非公開のファイルを持っていることが明らかになった。しかし,Ron も Levandowski も,訴訟の中で名前を挙げられることは無かった。
     しかし,Otto を Uber に売りたいという Ron の願望は,自動運転トラックを商用化したいという希望により火を点けられた … と裁判で彼は証言した。だから 自分は アルファベットに留まるよりも,Lyft に売るよりも,Uber に売りたかったのだ … と彼は言った。
     Otto 買収について アルファベットが Uber を相手取って訴訟を起こす前にも,この買収は 社内の自動運転部門内部で 緊張を生んでいた。その一因は,Uber の開発の取り組みが トラックと車のどちらを優先すべきかの混乱にあった。
     この緊張は,部分的には,自動運転技術の進歩の停滞につながった … と何人もの情報筋が 2017 年3月に Recode に語った。
     Uber は 見かけの上では進歩していた ── 少なくともトラック部門では。Uber の自動運転トラックは,今月初めに アリゾナ州で運送を始めた。しかし テンピでの衝突死亡の余波で,Uber のすべての自動運転走行は,アリゾナ州では中断されている。
    この記事は 2018/03/28。
     衝突死亡事故が起こったのは 2018/03/18 @10:00 pm と伝えられているから,事故の後に この人は退社した。なぜ こんな微妙な時期に辞めたのか?

  4. Singapore says Uber-Grab deal may violate competition laws
    シンガポールが,Uber-Grab 取り引きは独占禁止法に違反の可能性ありと言う
    TechCrunch,2018/03/31 (土) @01:20 am
    By Jon Russel
    Uber の東南アジアからの撤退は,アメリカ企業の現地営業を Grab が買い取るのは 独占禁止法に違反の可能性があると考えるシンガポールの規制当局により審査中である。
     シンガポールに拠点を置く Grab は,最大のライバル Uber の東南アジア事業を買収したと月曜日に発表した。引き換えに,Uber は $60 億に評価される Grab の権益の 27.5% を受け取る。この取り引きは 両者にとって Win-Win と見られる。
     Grab は, 2週間以内に Uber のアプリを閉鎖し,Uber の乗客と運転手を 自社のサービスに移行する計画である。UberEats も自社の誕生したばかりの出前配達サービスと統合する。
     この統合は, 2社が正面衝突の競争をやめれば 料金が上がるのではないかとの懸念を 消費者の間に既に呼んでいた。そして シンガポール競争委員会 (CCS) は,この取り引きを調査すると発表した。
     SCC は,この取り引きが シンガポールの競争法 第54 条に違反すると疑うに足る "合理的理由" があると言う
    CCS は合併の状況において,以下の場合を除き 競争の懸念は発生しづらいとの一般的見解を有する:
    合併された法人が 40% 以上のシェアを持つ または 持つであろう場合, または
    合併された法人が 20~40% のシェアを持ち, 合併後の業界上位3社のシェアの合計が 70% 以上の場合。
    この基準は,Grab の取り引きを いささか際どいものにする。Grab は,アプリのダウンロード数が 9,000 万を超え,登録運転手は 50万を超え,フィンテク・サービスを行なっている。
     シンガポールでは初めてのことだが,CCS は 暫定措置命令 (IMD) を提案したと発表した;これは Grab と Uber の両方に "取り引き前の独立な料金,料金政策 ならびに 製品に関する選択肢を維持する" ことを要求する。 CCS は また Grab に,Uber からの機密情報を使ってはならず,Uber の運転手を Grab に取り込んではならないと命令した。
     CCS は,この空間を (Uber 買収により Grab が大きな地位を占めると思われる) 配車事業ではなく,"運転手付きの2地点間 顧客輸送サービス および 予約サービス" と定義する。
     その点で,シンガポールのタクシー会社 (複数) は,SMS と電話呼び出しによる予約を受け付け,場合によっては配車アプリを提供するので,Grab のシェアを弱める競争相手と考えられる。同様に,シンガポールの相乗りサービス Ryde が (Uber 撤退後の穴を埋めるために) 私有車によるサービスを加えようとしている計画も Grab にとって助けになるだろう。
     シンガポールの Grab のトップ Lim Kell Jay は声明で,Uber との協定は,消費者に "既存のタクシー業界" と 料金の凍結を公約している Grab との間の選択を許すと言う。Grab は CCS および その他 当局とこの取り引きに関し 必要に応じて協力する … と彼は言う:
    Grab は,取り引きに入り 取り引きを結ぶ前に,顧問らと包括的デューディリ および 法的分析を実施した。 当社は署名に先立って CCS と係わりを持ち,その後も係わりを持ち続けている。当社は CCS, LTA および その他の関連当局と協力を続けるつもりである。法律により要求されない場合であっても,当社は CCS との協力 および 係わりを続けるために CCS に 自発的通知を行なうことを知らせた。
    CCS は,もしも この協定の完了が実質的に競争を弱めると認めた場合には,これを巻き戻す または 修正する力を持つと言う。ただし,Grab のような地域事業にとって これが何を意味するかは不明である。
     Grab と Uber は,東南アジアの8市場で営業している。しかし,Grab が本社を置き 会社を登録しているシンガポールは,競争判定機関が取り引きに割り込んだ最初の国である。
    いろいろ 不透明である。
     一番 分からないのは,上のような基準は 事前に分かっているはずなのに,なぜ両者とも契約を結んだのか?
     少なくとも Grab は CCS と十分な事前協議をしていたらしい。
     微妙な話であるが,契約がもしも潰れた場合に どちらがいくらの違約金を払うことになっているのか?
     なんか,Uber が嵌められたような感じ ・・・ 。
     Uber は 27.5 % を受け取るのだが,その評価額が Uber のもともとの投資額を大きく上回るので,Uber は撤退しても ぼろ儲けになる … というような記事があった。Anthony Tan, Ming Maa と有能な経営陣を抱える Grab としては,面白くなかろう。

  5. Uber Isolated by Partners and Competitors in Aftermath of Crash
    Uber は,衝突の余波で 仲間からも競争相手からも 孤立する
    Bloomberg,2018/03/29
    By Ryan Beene & Alan Levin
      専門家は,自律運転業界にとって "重大な正念場" を見る。
      Uber は 安全に注力し,調査に協力すると言う。
     Uber Technoloties は, 自動運転 SUV がアリゾナ州で歩行者を轢き殺した後, 1週間前よりも 自分が孤立していることを見出した。
     Uber の供給業者も競合相手も,以前は支持してくれた政府関係者も,配車巨人から素早く距離を取り,技術的セーフガードも 人によるセーフガードも,晴れた日の夜に自転車を押して道路を渡る女性を明らかに 検出し損ねたとして 批判を始めた。
    テンピで女性を轢いて死なせた Uber の SUV を
    調査員が調べる。 (©NTSB)
    この事故は, 自動運転技術に手厚い投資を行なってきた Uber が, データ漏洩や中毒性の労働文化など スキャンダルまみれの評判を再構築しようとする中で起こった。
     自動運転のライバル Waymo の CEO は,彼の会社の車なら 3月18日の事故を回避しただろうと言う。自律運転技術を供給する複数の企業の幹部らは,自分のシステムならば歩行者を検出できると あからさまに言う。
     そして アリゾナ州の Doug Ducey 知事は,── 厳しい規制を受けているこの業界のために 事実上 アリゾナ州全体をテスト場に変えた人であるが ── Uber の CEO に書簡を送り,自動運転技術を開発する会社は 安全を最優先にするものと期待していた … と言った。Uber の事故は, "この期待に副わない問題外の失敗である。" … と彼は言った。
     これらのコメントは,航空業界での有名な事故の場合と好対照を成す。航空機事故の場合,競争相手の企業は 調査が行なわれている間,公式には互いにコメントをほとんど出さない。
     これらの発言は,ダッシュボードの動画に生々しく記録された事故が,世論を (これまで各州からも連邦政府からも規制が比較的緩かった) 揺籃期の技術に対する反対に向かわせるとの広範な懸念に基づく。
     "先週のような事故がさらにあれば,既に脆くなっている消費者の信頼をさらに傷つけかねず,それに反応して 規制は強化されるかもしれず,そうなれば 自動運転そのものを窒息させかねない。" … とインテル傘下のモービルアイ CEO Shashua が会社のブログに書いた。
     衝突回避システムで使われるチップとセンサーを製造するモービルアイは,Uber 事故の警察からの動画をテレビ・モニターからソフトウェアにより読み込んだと言う。Shashua は,画像の品質が悪かったにも拘わらず,彼の会社の技術が内部テストにより ぶつかる1秒前に歩行者を検出したと書いている。
     Uber および その他多くの自動運転開発会社が使っているレーザー利用のセンサーを製造しているVelodyne Lidar Inc のトップ経営者は,同社の技術は 歩行者を捉えることができると言う。Velodyne の Lidar は "ブレーキを掛けよとか 歩行者の邪魔をしてはいけないと判定するものではありません。" … と Velodyne の Marta Thoma Hall 総裁が言う。"それは,自律運転ソフトウェアがしなければならないことです。"
     自動運転コミュニティは 長い間 自動運転車で "ヒンデンブルグ" の危険の可能性を議論してきた … とサイスカロライナ大学の Bryant Walker Smith 法学教授が言う。教授は自動運転車を研究しており,1937 年に水素を詰めた飛行船が悲劇的爆発を遂げた事故に触れた E-メールを寄せた。
     "誰もが Uber から距離を置こうとしているのは,驚くにはあたらない。" … と Smith 教授は言う。"実際には,2つの別の問題がある:Uber の行為を弁護できるか? そして,Uber を弁護することにより 誰かが利益を得るか? 今回の事例では,この両方の問いに対する答は どちらも「No」だと思われる。"
     "これは,この業界にとって重大な正念場であると私は言いたい。" … と彼は言う。
      [Uber を孤立させるように] 流れが変わったのは,Uber の車のダッシュボードから得られた動画を警察が発表したときだったらしい。この動画は,道路を渡る Elaine Herzberg (49) を時速 64 km で ボルボ SUV が轢く直前の状況を示していた。この事故は,Uber が自動運転技術に手厚い投資をして,データ漏洩や中毒的作業文化のようなスキャンダルにまみれた 評判を再建しようとしている中で起こった。
     この動画を閲覧した専門家は,Herzberg は SUV の一連の自動運転用センサー群により検出されるべきだったと言う。また,注意深い人間運転手なら 衝突を回避できたはずだと言う。警察が発表した車内動画によれば,Uber のバックアップ運転車は,注意を逸らせているようで,衝突時まで顔を上げなかった。
     "これらの会社が「我々なら もっとうまくできただろう」と言っているという事実は,[Uber に] もっと良い内部基準 または もっと良いテスト方法があったという証拠 あるいは 少なくとも証拠と感じてもおかしくない何かがあることを意味する。" … と Advocates for Highway and Auto Safety (ハイウェイと車の安全の擁護者たち) のリサーチ・ディレクタ Shaun Kildare が言う。"この事故は,公的規制に対して我々がなぜパフォーマンス基準を要求するかを示す … と我々は考える。"
     ワシントンに拠点を置き,自動運転車メーカーのためのロビー活動を行なう (Uber, Waymo, Lyft, Volvo を含む) 団体「安全な道路のための自動運転連盟」のスポークスマンは,今回の衝突によるこの技術への広範な反発のリスクを軽視した。
     "この技術が安全であることを確実にするまでは 長い道のりであることを 最終的には 我々は認識する。また, 公共の信頼を得なければならないことも認識する。そして当連盟のすべての会員は この事実にコミットしている。" … と連盟のスポークスマンで,元 NHTSA のトップ David Strickland がインタビューで言った。
     Uber は自動運転のテストをアメリカ全部で自発的に中断したにも拘わらず,アリゾナ州の Ducey 知事は月曜日,Uber にアリゾナ州で無期限にテストを止めるよう命令した。ツイッターで知事は,衝突の動画で "非常に迷惑を受けた" と書いた。このコメントは,自動運転開発企業を招致してきたアリゾナ州のこれまでの政策と正反対である。
     テストの中断  Uber の死亡事故と直接には係わりの無い一部の企業も,テストを一時中止して,埃が納まるのを待つ反応を見せた。自動運転のスタートアップ企業 Nutonomy Inc は,ボストンの公道での自動運転テストを市当局の要請により1週間見合わせた。Toyota Motor Corp も同様に "Chauffeur" 手放し運転システムの公道でのテストを一時中止し,その理由として Uber の衝突が Toyota のテスト運転手に "感情的効果を及ぼす" 懸念を挙げた。
     北米トヨタの Jim Lentz CEO は,Uber のアリゾナ州での事故について,Toyota の技術なら防げただろうと請け合えるほど詳しいことは知らないと言う。ただし,この事故が Toyota と Uber との関係に影響しないだろうと言った。日本の自動車メーカーは Uber の権益を所有している;ただし その大きさを開示していない。Toyota は さらに Uber および その他 アマゾンを含む提携先と 自動運転配送バンを 2020 年にデビューさせる計画である。
     "これは 全く新しい技術であり,天国もあれば地獄もあるだろう。" … と Toyota の Lentz が言う。"今回は 明らかに地獄だ。しかし 最後には,この技術は何万もの命を救う。"
     Uber は,3月18日の衝突で他社のシステムならどう対応したかについて,他社による言明にコメント拒んだ。火曜日,Uber はカリフォルニア州陸運局に,カリフォルニア州での自動運転車の運行の免許を再申請しないと通知した。
     "当社は,この技術が輸送を従来より安全にする力を持つと信じ,我々のコミュニティにおいて安全に貢献する責任を認識している。それゆえ,自動運転技術を開発する中,安全は すべての面で 当社の主たる関心事である。" … と Uber のスポークスマン Matt Kallman が言った。"当社は今週起こったことに悲しみにくれており, 当社の車は外出禁止 (grounded) のままである。当社は,できることなら 何でも調査員に協力を続ける。"
      — With assistance by Gabrielle Coppola, Mark Bergen, Keith Naughton, Eric Newcomer, and John Lippert
     これ,断然 面白いですね。
     でも,テスラの初回の事故の時には こんなことは無かったと思う。
      ・・・ とすれば,Uber に固有の現象か?
      ・・・ とすれば,あんなスキャンダル絡みの Uber なら事故を起こして当然と 多くの人が思っている。
     「競争相手からも」孤立する って 意味が最初は分かりませんでした。
      ・・・ とすれば,そこまでの読みができなかった社長さんは ・・・ ? 50 手先を読むと自称するが。
     3件目なので 業界が苛立っている?
     結局,テスラのフロリダの死亡事故の時には,"技術の発展のためには事故もやむなし" というシリコンバレー哲学が優勢だった。Uber の1年前の事故 (黄色の交差点に減速せずに突入し, 見事に他車と衝突・横転した) も,Uber は3日後に運転を再開した。
     今回は テスラとのダブルだから 様変わりなのかもしれない。
     車の製造販売では経験の深い "デトロイト哲学" の方が優勢になるのだろうか?
     有能な経営者は,こういう空気を敏感につかんで発言する。
     今のところは Waymo, Intel (+モービルアイ) が脚光を浴びている。
      [時速 60 km/h なら1秒間に 17 m 走る。自動運転なら空走距離ゼロ, 制動距離は この時速なら 20 m らしい (摩擦係数を 0.7 として)。つまり自動システムが1秒前に発見できたなら,この速度の場合 間に合わなかったが,衝撃は大幅に小さかった可能性がある (実際には,ブレーキを掛けた形跡は見つかっていない)。Amnon Shashua (57) は MIT で博士の学位を取り,ヘブライ大学教授をしていた技術者だから,全部 "計算" した上での発言だろう。恐ろしい業界だ。筆者ぐらいでもこの程度の計算 [と言っても,日本では高校 (アメリカでは大学) 初級物理のレベル] をやるのだから,業界のエンジニアなら同じ計算をすぐさまやるだろう。社長さんの野望, 大丈夫?(笑) Shashua が "1秒" から何を言いたいのか すぐに分かりますか? "1秒" なら どうせ死んだことに変わりは無いなんて,根拠も無しに考えていませんか?]
     Waymo はテストを中断していないらしい。
     Nvidia CEO は,同社のシステムを Uber が使用していない … と防戦に回る。
    Velodyne の Lidar は "ブレーキをかけよとか 歩行者の邪魔をしてはいけないと判定するものではありません。" … と Velodyne の Marta Thoma Hall 総裁が言う。"それは,自律運転ソフトウェアがしなければならないことです。"
     ここを 翻訳しているとき,おなかが笑って 涙が出た!(笑)
     各社とも Uber の火の粉を振り払うのに必死だね (笑)。自分のせいじゃない。Uber の責任だ!
     アリゾナ州知事だって,州の利益のために ほとんど野放しの自動運転を認めていたのに,事故が起こると手のひらを返したよう。

  6. Uber Agrees on Southeast Asian Sale to Grab
    Uber が東南アジア部門の Grab への売却に合意する
    Bloomberg,2018/03/25 @15:45 JST?
    By Eric Newcomer & Yoolim Lee
      Uber は 間もなく発表する。
      Uber は 25%~30% の権益を取得する。
      この取り引きは,Uber の大型市場からの更なる撤退を画する。
     Uber Technologies は,東南アジアの配車事業をライバルの Grab に売却することで合意に達した。早くも月曜日の朝にシンガポールで発表があるかもしれない … と事情に詳しい複数の人が言う。
     今回の合意は,Uber の東南アジア営業全てを (UberEats を含めて) 売却するものであり,Uber は合併後の新会社の 25~30% を取得する … と彼らは言う。ただし,正式発表前なので匿名を求めた。Bloombergこの取り引きの概要を既に報道したが,これで Uber はさらにもう1つの大型市場から営業を撤退することになり,(地元の競争相手 Go-Jek と戦う) Grab に勝利を渡す。
     Grab と Uber の両方を支援しており,さらに中国の滴滴出行を支援している SoftBank Group Corp は,毎年数十億ドルもの赤字を垂れ流す世界の配車事業の収益改善のため 再編を進めてきた。しかし,アメリカの Lyft のような 新規参入者や 地域の強力な2番手業者のために,このような取り組みは複雑になっている。
     Grab と Uber の広報担当者は コメントを拒んだ。
     この取り引きは,Uber にとって,外国市場からの大きな撤退である。Uber の前 CEO Travis Kalanick は,Uber の中国事業を 2016 年に 滴滴出行に売却し,17.5% の権益を得た。2017 年には,Dara Khosrowshahi が CEO を引き受ける直前に,ロシア営業を Yandex に売ることに合意した。
     Khosrowshahi は,来年の IPO の準備として,会社の財務のお掃除を推進してきた。東南アジアのような市場からの撤退は,創立から9年で $107 億の現金を燃焼させた会社の利益を押し上げるだろう。Khosrowshahi は 先月のアジア旅行で,日本とインドのような要の市場にはコミットすると言った。
     モバイル・アプリのダウンロード数が 8,600 万を超える Grab は,現在 シンガポール, インドネシア, フィリピン, マレーシア, ミャンマー, カンボジアの 190 以上の都市で営業を行なっている。
    赤字を減らすのは結構だが,同時に売り上げも減る。
     財務を見ると,この両者がきれいにトントンである。
     つまり,売り上げが増えれば,それに見合うように経費をふやしている (笑)
     あまりに 見事なので そのように操作していると感じられる。
     こんな財務のやり方では,東南アジア部門を売却しても,"縮小均衡" に終わる可能性が高い。
     それに インドはどうするのか? インド営業を Ola に売却して初めて,再編構想が閉じる。

  7. Uber drivers call off stir after talks with MNS transport wing
    3月19日,Uber と Ola の運転手が 低収入に抗議して無期限ストライキに入った。
    PTI)
    Uber の運転手たちが, MNS の交通部門との協議を受けてストライキを取り止める
    LiveMint,2018/03/22 @08:03 pm IST
    PTI = Press Trust of India (ムンバイ)
    Uber の運転手らは 4日間のストライキを取り止めた … と この運動の先頭に立っていた Raj Thackeray が率いる Maharashtra Navnirman Sena (MNS) の交通部門が発表した。
     Ola の運転手らによる同様のストライキは,水曜日に中止された。
     ムンバイなどで Uber のタクシーの "オーナー・オペレーターの勝利" であると叫んだ MNS は,木曜晩のムンバイでの声明で,Uber 経営陣が その日の警察を交えた MNS 代表者との協議で, さまざまの要求を満たす公約を文書で与えた … と言った。
     その中には,タクシー・アグリゲーターがブラックリストに挙げた運転手を見直し,Uber のタクシーにマラータ語のステッカーをつけるなどが含まれる … と声明は言う。
     Uber の広報担当者は これとは別の声明で,ストライキは中止され,直ちに効力を持つことを確認した。MNS の交通部門総裁 Sanjay Naik は PTI に,"Ola と同様に,Uber も運転パートナーの収入をふやす方法を検討することを請け合った。" … 語った。
     3月19日,Uber と Ola の運転手が 低収入に抗議して無期限ストライキに入った。インドの金融都市だけでも 45,000 台を越える アプリ利用のタクシーが営業していると推定される。
    Maharashtra Navnirman Sena: (MNS)
     The Maharashtra Navnirman Sena (Mahārāṣṭra Navanirmāṇa Sēnā) は,マハーラーシュトラ州 (州都はムンバイ [旧名:ボンベイ] ) に拠点を置くインドの地域政党である。2006年9月にムンバイで Raj Thackeray により設立された。この州の公用語がマラータ語である。

  8. Who's competing with Uber?
    Uber と競合するのは誰か?
    CNBC,2017/03/18
    By Uptin Saiidi
    Uber は 世界中で猛烈な競争に晒されている。
     問題含みのテック企業は,過去数年間わたって顧客獲得と市場浸透の努力の中,数十億ドルの赤字を出した:2017年の赤字は $46 億に達し,2016 年の $28 億よりふえた。
     ライドシェア・アプリに何十億ドルも投資した Softbank は,最近 Uber に投資することにより,Uber の敵と味方の間の線を曖昧にした。
     以下に示すのは,Uber の注目すべき競争相手と CB Insights による評価額である。なお Uber の評価額は $680 億である。
      滴滴出行 (Didi Chuxing),中国,$520 億の評価。
     滴滴出行は Uber の中国営業部門を買い取った。両社が 世界で最も人口の多い国で競争した結果であった。Uber は 滴滴出行の 18% の権益を得た。
      Ola,インド,$37 億の評価。
     この地域で,Uber は Ola に対抗して手厚い投資を行なっている。Softbank は,2017年10月 Ola に $20 億を投資した。
      Lyft,アメリカ,$115 億の評価。
     さまざまのスキャンダルの結果 Uber に #DeleteUber キャンペーンが起こった 2017 年に,Lyft は乗車数が倍増したことを最近報告した。Uber の Dara Khosrowshahi CEO は昨年,Lyft との競合のためにアメリカ営業が赤字になったことを認めた。
      Grab,シンガポール,$60 億の評価。
     Uber は,少なくとも東南アジア営業の一部を Grab に売却する準備中と伝えられている。
     Grab は 2012 年 僅か 10 人の従業員で始まったが,今ではシンガポールに本社を置き,全従業員は 3,000 人を超える。
      GoJek,インドネシア,$18 億の評価。
     GoJek は,インドネシア国産のテック企業であり,400,000 台を越える車とモーターバイクを持つ。

  9. Uber will not reapply for its permit to test self-driving cars in California
    Uber は,カリフォルニア州での自動運転車のテストに許可を再申請するつもりが無い
    Recode,2018/03/27 @04:59 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    許可は,来週 期限切れになる。
     Uber は,アリゾナ州で同社の車が衝突死亡事故に巻き込まれたことを受けて,自動運転技術のカリフォルニア州公道でのテストの再申請をしないことを決定した。
     ということは,カリフォルニア州で 20 台以上の車でテストを行なってきた Uber は,現在の許可が期限切れとなる来週以降 カリフォルニア州の公道で自律運転車を運転できないことになる。Uber は アリゾナ州での衝突の後,すべての自動運転車のテストを停止している。Uber は,カリフォルニア州での再申請がいつになるかは分からないと言う。
     "当社は カリフォルニア州を含めて,テンピの事故の直後から 予防措置として自動運転を取り止めている。" … と Uber の広報担当者 Sarah Abboud が声明で言った。"この状況で 当社は,ごく近い将来に (in the immediate future) 自動運転車を運行しないという了解の下に,カリフォルニア陸運局に許可を再申請しないことを決定した。"
     もしも Uber が許可を更新したい場合には,アリゾナ州での衝突について現在進められている調査の結果に対応する必要がある … とカリフォルニア陸運局の Brian Soublet 次長が Uber に書簡で伝えた。
     配車企業と カリフォルニア陸運局との関係は,Uber が 2016 年にカリフォルニア州で本来の許可を申請せずに自律運転をロールアウトした時に前途多難なスタートを切った。カリフォルニア陸運局は,結局 Uber がテストしていた車両の登録を無効にし,その結果 Uber は自動運転車をアリゾナ州に送ることを強いられた (↓)。
     そのとき,アリゾナ州の Doug Ducey 知事は Uber を歓迎して迎え入れた。
     けれども 月曜日の夕方,Ducey 知事は アリゾナ州での Uber の自動運転を無期停止した。
     "わが州の人々の最高の利益に鑑み,Uber がアリゾナ州の公道で自律運転車をテスト・運用する能力を留保するよう アリゾナ運輸局に私は命令した。" … と Ducey 知事は Uber への書簡に書いた。"アリゾナ州は 公共の安全に異議無くコミットしないものを容赦するつもりは無い。"
     知事のオフィスは,"これ以上の決定をする前に,衝突事故の調査結果がどうなるかを見守っている" … と Recode に語った。
     NTSB と NHTSA は アリゾナ州テンピの警察と合同で,衝突の原因を調査している。この調査の結果に基づき,Uber は刑事責任を問われることもあり得る。テンピ警察は その結果をマリコパ郡の司法長官のオフィスに提出し,刑事責任があるかどうかが決定される。
     配車企業は,調査に協力していると言う。
    当然のこととは言え,アリゾナ州でもカリフォルニア州でも 事実上 テストを禁止されたことになる。
     年末までに無人運転タクシー … という夢は空しく潰えた。
     事故の調査が終わるまで,テスラの例から考えて,半年以上は掛かるだろう。

  10. Chipmaker Nvidia is suspending its self-driving testing after Uber’s fatal crash
    チップ・メーカー Nvidia は,Uber の衝突死亡事故を受けて,同社の自動運転テストを見合わせている
    Recode,2018/03/27 @01:46 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    Uber の事故について もっと学ぶ必要があると会社は言う。
     Uber の自律運転車が係わった死亡衝突事故からの余波は続く。
     Uber の自動運転車にチップを供給している Nvidia は,アリゾナ州での先週の衝突について もっと学ぶために,公道での自動運転テストを一時 見合わせている … と広報担当者が Recode に語った。
     "今回の事故は悲劇的である。" … と Nvidia の広報 Fazel Adabi が声明で言った。"この事故は,自動運転車技術が如何に難しいか;そして 極度の注意と最高の安全技術が必要なことを暗示する。"
     Toyota, nuTomy を含めて,他の自動運転車企業も テスト運行を一時 見合わせた。Uber は,衝突後直ちにすべてのテストを取り止めた。
     アリゾナ州知事 Doug Ducey は昨日,アリゾナ州での Uber の自動運転テストを無期停止した。知事は Uber に書簡を送り,アリゾナ州の公道で自動運転車を運行する企業が公共の安全を最優先するという期待を Uber が満たしそこなった … と言った。
     "わが州の人々の最高の利益に鑑み,Uber がアリゾナ州の公道で自律運転車をテスト・運用する能力を留保するよう アリゾナ運輸局に私は命令した。" … と Ducey 知事は書簡に書いた。"アリゾナ州は 公共の安全に異議無くコミットしないものを容赦するつもりは無い。"
     この事故は,Ducey 知事にとって 180° の方向転換である;知事は,カリフォルニア州陸運局が 配車企業の登録を停止するや,アリゾナ州へ Uber を諸手を挙げて歓迎した;カリフォルニア州陸運局は,Uber が車を自律運転車として きちんと登録しなかったと言った (↓)。
     アリゾナ州では,Waymo が 安全運転手を乗せた場合と乗せない場合の両方について テスト運行を続けている。Ducey 知事は 長年にわたり 自律運転技術に好意的であり,2015 年には 自動運転車監視委員会を設立する知事命令を発布した。
     ボストン市当局も,テストを一時停止した。
     関連企業と規制当局が 自動運転車による歩行者の死亡事故に対応する中,NTSB および NHTSA と地元警察が,調査を続けている。責任の所在は いまだに決定されていないが,事故の余波は活発である。
     Waymo の John Krafcik CEO は,アリゾナ州警察が公表した動画に基づき,同社の技術なら この状況に対応できただろうと自信を示した。
     "当社が言えることは,これまでに見た知識 ・・・ および 当社システムで我々が設計した堅牢性について我々自身が知っていることに 基づく。 ・・・ 今回のような状況では ・・・ 歩行者 または 自転車を押す歩行者の場合には ── 当社は かなりの自信をもって 我々の技術は堅牢であり,このような状況を処理することができる。" … と Krafcik は全国自動車ディーラー協会の会議で述べた。
     これについて 我々は Uber にコメントを求めている。
     Consumer Watchdog のような消費者団体は,既に 自動運転テストの全国モラトリアムを呼び掛けており,自律運転車テストのための連邦政府のガイドラインに変更を加える前に,この技術に関するデータを更に多く収集するよう NHTSA に要求している。
     Richard Blumenthal 上院議員 (民主) は,目下 上院に掛けられている自動運転法案に以前から疑義の声を挙げているが,この事故は,自動運転技術が 用意万端には遥かに遠いことを示す … と言った。
     "国会は「自動運転スタート法」を (将来の死亡事故を防ぐセーフガードなどにより) 強化する具体的なステップを踏まねばならない。" … と議員は月曜日の声明で言った。"革新の実現を急ぐあまり,安全という基本を忘れてはならない。"
     自動運転への消費者の信頼が徐々に悪化する中,連邦政府と地方政府の規制当局者は,この技術をどのように規制するかについて 多くの問題に直面を強いられる状況が続くだろう。
    Waymo の自信は,先駆者としての実績,何より膨大なデータの蓄積に支えられているのだろう。
    ──────
     これまで 自動運転業界は,各社とも 提携できる相手なら "どことでも" 組む … という傾向があった。1つの典型は Toyota である。Uber の事故の直前に,Toyota がスキャンダルまみれの Uber からソフトウェアを購入するという信じられないニュースがごく最近あった (日経)。
     何が何でも できる限り情報を広く集め,勢力を広げたいと考えているのだろう。
     今後は おそらく 安全性を提携の1つの重要な判断基準として "どことでも" という流れにブレーキが掛かるだろう。そして当然ながら,スキャンダルまみれの Uber は 取り残されるに違いない。さもないと,自動運転そのものが世論 (消費者) の支持を失いかねない。
    ──────
     社長さんは,下のような記事 (↓) を読んでいたのか? 読んでいなかったでしょうね。

  11. Uber Disabled Volvo SUV's Safety System Before Fatality
    Uber は,死亡事故の前に ボルボ SUV の安全システムを切っていた
    Bloomberg,2018/03/27 @09:35 JST
      供給業者 Aptiv は,Uber が自社の自動運転システムを使っていたと言う。
      インテルのモービルアイ ソフトウェアならば,女性を検出できただろう … と CEO が言う。
      Uber の自律運転車は,死亡衝突事故の後アリゾナ州で禁止された。
     レーダーとカメラを供給している自動車部品メーカーによれば,Uber Technologies Inc は,先週アリゾナ州で女性を轢き殺したボルボ SUV の標準衝突回避技術を オフにしていた。
     "当社は,人々に誤解しないでもらいたい;当社が ボルボに供給する技術の欠陥だったとは考えないでもらいたい;なぜなら それは事実ではないからだ。" … と Aptiv Plc のスポークスマン Zach Peterson が電話で言った。ボルボ XC90 の標準先進運転支援システムは,Uber の自律運転システムのテスト車とは "全く関係ない" … と彼は言った。
     Aptiv は,Uber を巻き込んだ死亡事故によりこの技術が貶められるのを避けようと声を挙げている;おそらく Uber は自社の自律運転システムを開発・テストする中で,他の技術をオフにすることにより標準的慣行を試したのかもしれない。49 歳の犠牲者 Elaine Herzberg が自転車を押して道路を横断するところへ,Uber のシステムは減速を怠った。アリゾナ州テンピ警察と NTSB は,この事故を調査中である。
     Uber は コメントを拒んだ。ボルボのスポークスマンは,同社は 事故の原因について憶測できないと言い,完全な調査報告を待つと言った。
     Intel Corp 傘下のモービルアイは,衝突回避システムに使われるチップとセンサーを製造し,Aptiv の供給業者であるが,月曜日 Uber の事故の動画を TV モニターでプレイバックすることにより 自社のソフトウェアをテストしたと言う。モービルアイは,カメラが車に直接に据え付けられているために画像の質が悪かったにも拘わらず,同社の内部テストで 衝突の1秒前に Herzberg を検出できたと言う。 [つまり 減速できたはず?] ‘Challenging Task’
     "警察が発表した動画は,自律運転システムの最も基本的な構成要素である "物体を検出して分類する能力" が一筋縄では行かない作業であることを証明するようだ。" … と モービルアイの Amnon Shashua がインテルのウェブサイトに書いた。"さらに厳しい挑戦に取り組む前に,未来のフル自律運転車の根本的要素として 必要とされているのは まさにこの技術である。"
     モービルアイのチップとセンサーを使うレーダーとカメラのシステムは,ボルボ XC90 の (衝突回避, 車線維持 および その他の安全機能を提供する) 運転支援システムを助ける。
     昨年 11 月,Uber は 24,000 台のボルボ SUV を購入する契約を結んだ。これに 自社のセンサーとソフトウェアを搭載し,無人運転の許可を取る予定だった。
    ひどい話は,たいていは 上塗りされる。まだまだ 後に続くかもしれない。

  12. Uber’s Self-Driving Cars Were Struggling Before Arizona Crash
    NTSB の調査員が,アリゾナ州テンピで日曜日の夜に死亡事故に巻き込まれた Uber の自動運転車を調べる。
    Uber は全国で 自律運転車のテストを取り止めた。(©Reuters)
    Uber の自動運転車は,アリゾナの衝突事故の前から苦戦していた
    New York Times,2018/03/23 (3月24日,ニューヨーク版 B1 面に掲載)
    By Daisuke Wakabayashi (サンフランシスコ)
    Uber のロボット車プロジェクトは,同社が運行する自動運転車がアリゾナ州テンピで女性を轢き殺す前, 何ヵ月もの間 期待に応えていなかった。
     Uber の車は,工事区間を通り抜けるのに難儀していた;次に大きなトラックのような 高い車が苦手だった。しかも,Uber の人間運転手は Waymo の車などと比べて 頻繁に運転に介入を強いられた。
     グーグルの自動運転車プロジェクトが分離した Waymo は,昨年 カリフォルニア州の公道でのテストで,トラブル時にコンピュータから制御を取り戻さざるを得なかった回数が 平均して 約 8,960 km に1回だったと言う。これに対し,今年3月の時点で Uber は 目標 21 km の目標を満たすのに四苦八苦していた ── New York Times が入手した 100 ページの会社資料 ならびに フェニックス地域での Uber の運行に詳しい2人が匿名で語った。
      [注:Recode の記事によれば,Uber の広報担当者は この数字を認めた上で,どういう場合に人間が運転を引き受けるかの基準は会社により異なり,この数字は安全性を判断する直接の基準ではない … と答えている。その他の点には触れていない。]
     その上,Uber のテスト運転手たちは それ以上のことをするよう要求されていた ── それまで2人で組んでいたのが ソロの運行になった。
     しかも,年末までに無人運転車のサービスを始めるという目標を満たすよう圧力がかかっていた。Uber の Dara Khosrowshahi CEO は, 4月にアリゾナ州のテストを見に来る予定だった。フェニックス地域の Uber 開発グループのリーダーらは,自律運転車で glicth-free な [故障を起こさない] 運転を披露したかった。Khosrowshahi の訪問は "マイルストーン 1:信頼" と会社資料で呼ばれていた。
     Uber, Waymo, Lyft のようなテック企業も,GM, Toyota のような自動車メーカーも,自動運転車の開発に数十億ドルを投じてきた;このマーケットが いつかは 数兆ドルになると信じるからである。
     日曜の夜に起こった衝突は,Khosrowshahi が Travis Kalanick に代わってから,会社のイメージを改善しようとしてきた Uber にとって大きな挫折である。2月に,Uber は Waymo との長期法廷闘争を和解した。
     月曜日,Uber は,アリゾナ,ピッツバーグ,サンフランシスコ,トロントでの自律運転車テストを停止した。いつ再開するかは不明である。
     テンピ警察署は,この衝突を調査中であり,車の責任であるかどうかの判断をまだ下していない … と発表した。Uber のセンシング技術を備えたボルボの XC90 スポーツ多目的車は,制限速度 72 km/h のゾーンを 64 km/h で走っているときに,Elaine Herzberg (49) を はねた。警察によれば,車へ 安全運転手1人を乗せて 自律モードで走行しており,衝突の前に減速しなかった。
     車のダッシュボード・カメラが捉えた動画映像は,安全運転手が [ときどき?] 下を向き,道路を見ていなかったことを示す。また,車の制御を素早く取り戻すために指示されているはずの運転手の手はハンドルの上に置かれていなかった。
     "自動運転技術を開発する中,安全は すべての面で 当社の主たる関心事である。" … と Uber のスポークスマン Matt Kallman が言った。"当社は 今週起こったことに 悲しみにくれており,当社の車は外出禁止 (grounded) のままである。当社は,できることなら 何でも調査員に協力を続ける。"
     Uber は,規制が真空のアリゾナ州で自動運転車のテストを行なってきた。自律運転車のテストに対しては,これを取り締まる連邦の法律がほとんど無い。2017 年の春から Uber がテストを行なっていたカリフォルニア州とは異なり,アリゾナ州当局は自律運転車に手放し運転を容認しており,車がどのように動作するかについて開示を要求していない。
     Waymo と (GM が所有する自動運転車企業) Cruise は,"介入" 回数をカリフォルニア当局に報告している。アリゾナ州での Uber の目標は 内部資料に書かれている ── "アリゾナ州では 報告義務が無い" と ── しかも,Uber は 報告義務のあるカリフォルニア州では 自動運転車のテストを 長いこと していなかった。
     Uber のコードネーム "プロジェクト ロードランナー" [懐かしいゲームの名前だね(笑)] の最初の路上テストは,2016 年9月 ピッツバーグで始まった。フェニックス地域は, 1年前に加わった。そして その後すぐ ここが Uber の主要なテスト地になった。従業員 400 名で 150 台を超える自律運転車が,地元の道路を走った。なぜなら 会社資料によれば,"ここの規制 [が無いという?] 環境が好ましく,気象条件も好ましい" からである。
     Khosrowshahi が CEO を引き受けたとき,彼は 自動運転事業の閉鎖を検討した … と Khosrowshahi の考えに詳しい2人が言う。
     けれども,自動運転が Uber の長期的見通しに重要であることを彼は確信した。彼のフェニックス訪問を アリゾナのチームは,自分たちの進歩をデモするための絶好の機会だととらえていた … とフェニックス地域の Uber の事業に詳しい複数の人が言う。彼らは,人の介入が全く無い車に Khosrowshahi を乗せて,いわゆる境界事例 (edge cases) ── 予想困難な トリッキーな道路状況 ── にも車が対応できることをデモしたかった。
     "自動の場合には, 境界事例があなたを殺す。だから, あなたは全ての境界事例に対してビルドアウトしなければならない。" … と昨年11月の会議で Khosrowshahi が言った。"このため非常に非常に困難な問題になる。"
     2017 年9月までの1年に,Uber の自律運転車は全国 160 万 km を走った。Uber は,その次の 160 万 km を 100 日で達成した。そのまた次の 160 万 km は さらに短い時間で達成した … と会社資料は言う。
     フェニックスでは 初期の頃,テスト運転手のグループが2つあった。小さな方のグループは,車を ── 人間が介入しなければ衝突するかもしれないような ── 厄介な状況にわざと置いて "いじめた"。
     大きい方の運転手グループは,自律運転車で客を拾うことに集中した。彼らは 細かいことには気を配らず,急ブレーキのような "悪い経験" が起こらないよう頻繁に運転を引き受けることを期待されていた … と会社文書は言う。
     昨年 10 月頃 Uber は,"できるだけ早く" 真の無人運転サービスを顧客に提供できるようにするため,この2つのグループを合体させた。客を拾うサービスを取り止め,運転手がキロ数を稼ぎ,データ収集に集中できるようにした;この数字が大きくなれば システムの信頼性が上がるからである。
     同じ頃,Uber は乗員の数を 1台につき2名にしていたのを1名にした。2人のときは, その2人が仕事を分け合っていた ── 1人は自律システムがうまく動作しない場合に運転を直ちに引き受ける;もう1人は コンピュータが何を検出しているか システムの目を追っていた。Uber のスポークスマン Kallman は,2番目の人は 純粋にデータ関連の作業に係わっており,安全とは無関係だったと言う。
     Waymo も同じく常時2人体制から 2015 年末には状況によって1人に切り替えた … と Waymo のスポークスマン Johnny Luu が言う。ただし Waymo は,新しいシステムを追加するとか,新しい場所へ動くときには,テスト運転手を今でも2人にしている。
     けれども,Uber の自律運転車は,競争相手ほどには うまく行っていなかった。Cruise は,カリフォルニア州規制当局に,1回の介入当たり 1,920 km を走ると報告した。Waymo は,カリフォルニア州での強い結果を受けて,今では フェニックス郊外のアリゾナ州チャンドラーで 安全運転手無しでテストを行なっている。
     Kallman は,1回の介入当たりの走行キロ数は 安全の目安ではなく,システム改善の早さを測るものであり,車をどこでどう運転するかに依存し得る … と言う。
     Uber が1人体制に切り替えたとき,一部の従業員は安全への懸念を マネージャらに表明した … と Uber の営業に詳しい2人が言う。彼らは,単調な運転が何時間も続くと,ソロの運転手がアラート状態を保つのは困難になると言った。Kallman は,訓練のために1人体制の開始を遅らせて,運転手が 新しい役目に安心を感じられるようにしたと言う。
     Uber はまた,車の中央のコンソールに取り付けた iPad 用にアプリを開発している。これは,何か問題があったときに 運転手がエンジニアにアラートするためである。運転手は このアプリをいつでも,自律モードのままで,使うことができる。多くの場合,交通信号のところや 停止しているときにデータを送るのだが,多くの運転手は 移動中に送信する … と Uber の運行に詳しい2人が言う。Kallman は,車内ソフトウェアが運転手の注意を逸らさないよう,政府の安全ガイドラインを満たすように このアプリを設計したと言う。
     Waymo は, 1人体制に移行するとき,これとは異なる解決法を用意した。ハンドルにボタンを1つ追加し,これを押せば,自律モードを外すときに運転手が音声で状況を説明できるようにした。
     Uber の訓練にすべての運転手が従ったわけではない。1人は ハンドルの上で眠り,仲間がこれを知らせたために解雇された。別の1人は,車が交差点を通過する最中に エア・ドラミング [つまり両手放し] しているのを見つかった … と Uber の営業に詳しい2人が言う。
     Uber は,アリゾナ州で自動運転車によるサービスを始める認可を今年の 12 月までに申請する計画だった … と会社文書は言う。商用化するまでには Uber の車は 人間運転手より安全になっているに違いない … と Uber は言う。しかし,車は 予定通りには動かず,悪天候や 渋滞のときには止まる。しかも このサービスは "長期的な財政的実行可能性" を証明する必要がない。
     既に,1つのマイルストーンを Uber は外した。Khosrowshahi は 衝突の前に起きた日程問題のために,来月 予定通りフェニックスへは行かないだろう … と Kallman は言う。だが,この衝突が最終的に Uber の自律運転計画にどんな影響を与えるかは不明である。
     "Uber の周りに集まる悪いニュースの集積は,人々の心に評判を生む。" … と Gartner の自動車アナリスト Michael Ramsey が言う。"他のどの会社も,黒い目を得る [=評判を落とす] だろう。だが彼らは許される。Uber にとって,振り払うのは難しいだろう。"
      Follow Daisuke Wakabayashi on Twitter: @daiwaka
     Mike Isaac and Cade Metz contributed reporting.
    ここまでひどいとは! Waymo の格がこれで ぐ~んと上がる。
     社長の テック音痴ぶりが際立つ。どうして こんな "ボロテク" 企業にカネをぶち込んだのか?
     前にも書いたが,Uber が生きる道は,無人自動運転タクシーしかない。
     だから突っ走るしかなかったのだ。自動運転が Uber の長期的見通しに重要であることを彼は確信した。 うちの社長さんも,同じ確信を抱いている。
     だが,これで それもオワだろう。
     そもそも Uber のタクシーの人気だって落ちる。
     今年の年末までに無人タクシーなんて "凶器の沙汰" だ。殺人タクシーになる。
    ──────
     自動運転の企業秘密を Waymo から盗んだような会社で,人材無しで トップが「何が何でもやれ」と命令すると,こうならざるを得ない。必然と言えるだろう。何しろスキャンダルのために有能な人材は嫌気がさして出て行った。セクハラレイプで騒がれるような会社のために頑張ろうというエンジニアがいるはずがない。自動運転のエンジニアなら引っ張りだこだろう。
     興味を持ってくれるのは 日本のアホ社長くらいのものだ (出資に競合相手は1社も無かった)。
     こんなところに出資したら,自分のところも 企業秘密を盗んだりセクハラレイプをやっているかと風評被害を立てられるリスクがある。
     ほんとに孫社長は バカと言うしかない。1年前の事故の記録を読んだのか?
     2人も乗っていて,黄色の交差点で減速せず,左折してくる車にぶつけて見事に横転した。
     その3日後に運転を再開した。← 事故から学ぼうとしていない。
    ──────
     結局,… 技術の裏付けを自分で持たずに大きいことをやろうとする … と言う点で Uber と SoftBank はよく似ている。テック企業をテク知らずが運営すれば,失敗する。
     おまけに,この環境で 中国企業に投資などは,国際感覚が丸で無いことの証明である。
      ま,アメリカさんは こういう赤字企業を選別してドバっとカネを注ぎ込んでくれる SoftBank,SVF, ドアホの大金持ちカネカネ社長さんに "感謝している" から,文句を言うことは まず無いだろう。
    冒頭の写真を見てまず驚いたのだが,車の凹み方はこんなものか?
     ここは ボルボの守備範囲だが,凹み方がこんなに少なければ,人は死ぬだろう。
     人にぶつかったときに もっとグシャッと車が潰れれば,車の運動エネルギーが吸収されて,人への衝撃は弱まる。このあたりは,トランプ大統領が誤解しているというので 最近 話題になった。

  13. Uber’s Financials: An Inside Look
    Uber の財務:その内幕
    Wall Street Journal,2018/02/14 @04:00 pm ET
    By Greg Bensinger, Rolfe Winkler & Varyna Serkez
    Uber Technologies は,非上場企業なので財務を公表する義務が無い。The Wall Street Journal は,アメリカのこの非上場テック企業が どのくらい急成長しているか ── どの程度赤字であるか ── を示す最近の数四半期の決算を閲覧した。
    (億ドル)1Q 20172Q 20173Q 20174Q 2017合計
    水揚げ74.7787.4197.05110.55369.78
    運賃値引き3.524.264.525.2217.52
    運転手取り分51.9660.4165.8975.00253.26
    売り上げ14.9616.5820.1322.5974.26
    営業経費14.4616.4320.1619.7970.84
    研究開発2.622.843.143.1311.73
    販管費7.849.2912.0411.6140.78
    株式報酬 0.250.230.290.561.33
    純利益−8.47−10.61−14.59−10.99−44.66
    WSJ によるコメント:
       水揚げは,Uber が運賃などから差し引く前の全売り上げ高である。この数字は,タクシー配車, 出前配達, 運賃引き換え払い配達などのサービスの全体的需要の目安である。3Q までは鈍化していたのが,4Q で成長を取り戻した。
       Uber の売り上げは, 8年目に入って増え続けた。3ヵ月ごとに少なくとも +10% 増えている。これに比べて フェイスブックは 9年で 四半期の売り上げが $20 億を超えた;2013 年には四半期ごとに売り上げが +11% ふえた。
       Uber は 長年にわたって 成長を優先してきたため,2017 年の年間損失は $40 億を超える。新任の Dara Khosrowshahi CEO は,赤字を抑えるためにコストを削減してきた。この数ヵ月,Uber は ロシア営業をライバルの Yandex に合併させ,アジアのレンタカー事業の支配株を売却し,アメリカの車リース営業を売りに出した。
    Uber は非上場なので決算を公表していないが,Wall Street Journal がつかんだ 2017 年の財務データをウェブで公表しているので,その一部を上に抜き出した再録する (億ドル)。
      今年に入って,Waymo の訴訟を $2.54 億で和解したので,この分の赤字は 2018 年に記帳される。
      この程度の赤字が続くと仮定すれば,SoftBank が負担する赤字は $9億/年となる。
      ただし,SoftBank は金利のつくカネを投資しているから,金利を含めれば $15 億/年だろう。
      自動運転を研究開発している Uber の R&D が この程度で適切なのかどうかは 分からない。
      赤字でも "Stock-based Incentive" は,ちゃっかり 1.33 億ドル。
      "売り上げ" と "営業経費" が微妙にバランスしているところが面白い (笑)。見方によっては,作為を感じられる;赤字を適当に出して,ど~せ 外部投資家におっ被せられる … なんて気持ちが仄見える (?)

  14. Uber Suspends Driverless-Car Program After Pedestrian Is Killed
    歩行者を死なせたことを受けて,Uber は 無人運転車プログラムを一時停止する
    Wall Street Journal,2018/03/20
    By Greg Bensinger & Tim Higgins
    アリゾナ州テンピの事故は,自律運転車による初の死亡事故と考えられる。
    A still image shows investigators at the scene of a fatal accident
    involving a self-driving Uber car on a street in Tempe, Ariz.
    ABC-15 | AP)
    [読者コメント 812 件]
     Uber Technologies の自動運転車が アリゾナ州で歩行者をはねて死なせた。これは,自律運転車に係わる初の死亡事故であり,規制当局にアクションを取らせ,若い業界に対する公共の認識にダメージを与える可能性がある。
     Uber は月曜日,4つの都市でテストを行なってきた自動運転車を路上から一時的に撤退した。Uber のスポークスウーマンは,同社が この事故を調査中であり,当局に協力していると言った。
     アリゾナ州テンピの警察は,Uber の車が日曜日の夜に横断歩道以外のところを歩いていた Elaine Herzberg (49) をはねたとき,自律モードにあり,ハンドルには安全オペレーターが座っていたと言う。警察の発表によれば,この女性は 負傷によりその後 死んだ。
     Uber の車が事故の原因であったかどうかは まだ不明であるが,この死亡事故は,無人運転車により結局は誰かが死ぬと 長年にわたって警告してきた人たちの恐れを確認する結果となった。月曜日の記者会見でテンピ警察は,衝突時に 制限速度 56 km/h の地域を Uber の車が ほぼ 64 km/h で走っており,現在のところ 減速した様子は全く無い … と言った。乗車していた Uber のオペレーターは 無傷であった … と彼らは言う。
     自動車メーカーとテック巨人らは,これを不可避なものと受け入れてきたが,この技術は最終的には ヒューマン・エラーを取り除くことにより 何千もの命を救うと断言する (contend)。
     ゼネラルモーターズ, トヨタ・モーター を含む大手の自動車メーカーは,Uber, アルファベットのようなテック巨人団とともに,合わせて数十億ドルを投じて 人間運転手を 基本的には "車に乗ったコンピュータ" で置き換えようとしてきた。彼らは 安全による利益を自慢するが,その導入は自動車製造事業そのものを打ち負かす兆しがあり,新しい交通の巨人たちを玉座に就ける可能性がある。
     Uber は,同社の自動運転の取り組みを "会社の存立に係わる (existential)" と呼び,ライバルの (アルファベットの自動運転部門) Waymo からの (企業秘密を盗んだとの) 高くつく訴訟に $2.50 億を支払う和議により決着をつけたばかりだった;Uber は盗用を否定している。480 万 km のテスト走行を記録した Uber は,Waymo に追いつこうと競争してきた。対して Waymo は 800 万 km 以上の公道試験を実施し, コンピュータ・シミュレーションでは さらに 数十億 km を行なった。
     今回の事故は,業界にとって枢要な時期に発生した。主流の自動車メーカーは,一定の時間 手放し運転ができる 半自動運転システムを 既に各社の車に取り付けている。Waymo は フェニックスのメトロ地区で ハンドルのところに人を置かずにテストを行なっており,今年 アリゾナ州フェニックスで 商用のロボット・タクシー・サービスを始める計画である。
     フル自律運転技術は まだ 実証されていないが,連邦政府と州政府の当局は これらの会社に公道でロボット車をテストすることを認めた。50 以上の会社が,人間オペレーターが同乗することを条件に,カリフォルニア州で自動運転車をテストする免許を得ている。
     NTSB と NHTSA の両方が,テンピにチームを派遣してこの事故を調査中と言っている。NHTSA は,Uber, 州当局, 郡当局 ならびに (Uber に自動運転車両を提供している) ボルボとコンタクトを取っていると言った。
     中国の浙江吉利控股集団の傘下にあるボルボは,声明で言った:"当社は この事故の件を承知しており,巻き込まれた女性の家族のご心痛をお察し申し上げる。"
     業界のオブザーバーらは この死亡事故を,揺籃期にある この技術が公道に配備されるより前に,もっと多くの時間をかけて フルに開発する必要がある証拠と捉えた。
     デューク大学の 機械工学と物質科学の Missy Cummings 教授は 2016 年に国会で,システムを広範な配備に投入しようと急ぐ企業に警告し,1回の死亡事故が 命を救うはずの技術の発展を阻害しかねないと述べた。
     "この技術のために 誰かが死ぬことになるのは 疑い無い。" … と教授は 2016 年に国会で証言した。"問題は それがいつか? そして 死亡を最小にするために何ができるか? … である。"
     月曜日,Cummings 教授は 同じメッセージを繰り返して,"この日が来ることを我々は知っていた。" … と述べた。
     規制は,州により大きく異なり,連邦のレベルでは曖昧である。世論がコンピューターの支配に身を委ねる気があるかどうかは不明であり,把握しがたい環境では 予想外の安全問題が発生する可能性もある。
     国会は,自律運転車開発に関する規制問題を解決する法案を検討中だった。その作業は円滑に進んでいるように見えたが,今年に入って,この技術の安全性に関する懸念から 上院で停滞している。
     Edward J. Markey 上院議員 (民主, マサチューセッツ州) は,公道でテストが行われる前に,一定の安全とプライバシー保護が保証される連邦法を制定せよと国会への呼びかけを繰り返した。
     "消費者ユニオン" は,今回の死亡事故を "安全であることを知らずに 公道にどんどん自動運転車の投入を急ぐために発生するリスク" を確認するものだ … と言った。
     自動運転技術の開発会社たちは,現実世界の状況で車をテストしなければ 安全性を確保できない … とこれまで言ってきた。
     モデルS EV を Autopilot システムで運転していた人が 2016 年5月に フロリダ州のハイウェイでトラックに衝突して死亡した時,テスラは 半自動運転システムについて 政府の大掛かりな調査を受ける初の自動車メーカーとなった。
     最終的に NHTSA は,テスラの技術に安全性欠陥は無いと結論したが,NTSB は,十分なセーフガード [予防措置] を含めることを怠ったことにより,衝突の責任を会社は [運転者と?] 共有すると決定した。
     テスラは,Autopilot システムが 車を安全にしており,同社は このシステムがフル自動運転を意味しないことをドライバーに周知するよう努め,この技術が進化する中で 勧告を評価し続けると言った。
     政府発表の数字によれば,衝突事故の 94% がヒューマン・エラーによる。さらに最新の政府発表によれば,アメリカで路上で命を落とす人の数は,2016 年に ほゞ +6% 急増して 37,461 人となった。最近の NPO の調査は,自動車による死亡が 2017 年にも 10 年続きで高止まりしていることを示す。
     アメリカのハイウェイ安全規制当局は, [連邦レベルで?] 法文化された規則が無い中で,自動運転車に対するガイドラインを更新する作業を行なっている;これは Obama 政権下で始まった。Trump 政権は,会社が 安全性評価の結果を ガイダンスの勧奨に従って規制当局に送るのは [強制的なものでなく] 自発的なものであることを わざわざ強調した。
     規制当局は,自動化された運転システムの安全性を監視する役割を担うが,"トップダウンではない。我々は, 命令とか支配する立場にはない。我々は テック-中立である。" … と Elaine Chao 運輸長官は 今年1月デトロイトの年次オート・ショーで述べた。長官は,無人運転システムが安全であることを消費者に説得し,信頼を失わせない義務を 自動車メーカーとシリコンバレーの企業に課した。
     ロボット車は 交通規則に従うように作られているが,人間との相互作用は ハードルであり続ける。とくに歩行者は,予想しがたいので システムを混乱させる。
     人間運転手でさえ,歩行者への対応には四苦八苦する。デューク大学の Cummings 教授の研究によれば,歩行者の死亡の約 50% は,道路に走り込むとか 優先権を車に渡すことを怠ったなど 不適切な横断により発生する。州知事幹線道路安全協会 (GHSA) は,昨年 アメリカで 6,000 人弱の歩行者が亡くなったと推定する。これは 自動車事故による死亡全体の 約 16% を占める。
     自律運転車は,しばしば カメラ, レーダー, レーザー・センサーから来るデータの複雑な融合を利用して,人工知能により 他の車, 歩行者, 障害物を識別する。
     "これらの車のコンピュータ視認システムは,信じがたいほど脆弱であり," 歩行者の検出に問題を課する … と Cummings 教授は月曜日に言った。
     たとえば,2016 年のテスラの衝突事故では,左折してきた [アメリカは右側通行] トレーラー・トラクターに対して モデルSが直進してぶつかった。テスラは,車のシステムがトラックの白い大きな側面を 明るい空と区別できなかった … と言った。Uber のレーザー・センサーが 歩行者の検出に失敗したかどうかは不明である。
     今回の衝突は,Uber のテンピでの2度目の衝突事故である。テンピは,アリゾナ州立大学がある 人口 約 180,000 の都市であり,Uber は昨年自律運転プログラムを始めた。ほとんど きっちり1年前,ボルボ SUV が交差点で衝突事故を起こした後 [↓ Business Insider の記事が詳しい] ,Uber は 短期間テストを停止した。この時には,Uber の方の車が横転した。重傷を負った人は1人もおらず,警察は Uber の車のせいではないと結論した。3日後に Uber は運転を再開した。
     Uber は,昨年 カリフォルニア州の規制当局が 車の登録を差し止めたことを受けて,テンピで自律運転車のテストを始めた。差し止めの理由は,Uber がカリフォルニア州で営業の許可を取るのを怠ったためであった。Uber は そこで $150 を払って カリフォルニア州の許可を得た。これは 乗客を乗せずにテストを行なうものである。Uber は 2016 年9月 ピッツバーグでもテストを始めた。昨年 自律運転車をトロントに投入した。
      —Mike Spector contributed to this article.
     Write to Greg Bensinger at greg.bensinger@wsj.com and Tim Higgins at Tim.Higgins@WSJ.com

  15. The Uber Crash Is the Nightmare the Driverless World Feared But Expected
    Uber の衝突事故は,無人運転世界が恐れていたが,予期していた悪夢だった
    Bloomberg,2018/03/20 @07:54 JST
    By Dana Hull, Mark Bergen & Polly Mosendz
      歩行者の死は,業界にとって 微妙な境目の時に発生した。
      Waymo は,アリゾナ州で安全運転手なしの商用自動運転を計画している。
     先週,Waymo は自動運転するミニバンに乗った人たちの動画を流した。彼らは携帯電話をサミングし,あくびし,1人は居眠りした。メッセージ:無人運転車は まことに安全なので,退屈である。このクリップは,Waymo が今年 これからアリゾナ州の州都フェニックスで予定する フル無人運転タクシーの支援を鳴り物入りで宣伝する意味であった。
     ところが 今回の悲劇は,アルファベットの部門 Waymo の取り組み ならびに 幅広い業界の商用化への進みを遅らせるだろう。Uber Technologies の自動運転テスト車が 日曜日の夜,フェニックス近くのテンピで歩行者を はねて死なせた。規制当局は調査を急いでおり,一部の消費者安全運動家からは激しい反発を呼んだ。
     "この事故は,自動運転技術に対する消費者の信頼を 何十年とは言わないまでも,何年も逆戻りさせた。" … と ワシントンに拠点を置く権利擁護団体 "自動車安全センター" の執行役員所長 Jason Levine が言う。"減速させる必要がある。"
     自律運転テスト車が絡む 最初の死亡事故は,揺籃期にある業界にとって微妙な時期に起こった。アルファベット, ゼネラルモーターズ, Uber, テスラを含む会社は,この技術を開発するために何十億ドルものカネを投資している。公道でのテストは概ねトラブル無し,稀に大型衝突事故が起こるものの,この技術のせいと認められるものでは無かった。
     とは言え,自律運転車は 複合的な都会環境 および 郊外環境でますますテストされるにつれて,重大事故の可能性が高まっていた。アルファベットのリーダーらは 長年にわたって,衝突による死亡や競争相手による向こう見ずな公道でのテストが規則の無視に火を点けかねないと恐れていた。Bloomberg が 或る 元無人運転車エンジニアに月曜日電話して この業界について話を聞くと,その人の最初のコメントは:"とうとう 起こった" … であった。このような敏感な問題で話すので その人は匿名を求めた。
     テスラの Autopilot システムを使う運転者が 2016 年に衝突事故で死んだとき,最初の反応は 月曜日の Uber の事故の場合と同様であった。ただし,2つのエピソードは異なる。
     2016 年5月,テスラのモデルSを Autopilot モードで運転していた Joshua Brown は,フロリダ州のハイウェイでセミ・トラックに突っ込んで,亡くなった。NHTSA と NTSB がこの事故を調査した;システムの供給業者 モービルアイは,テスラとの提携を打ち切り,テスラは Autopilot 技術を 何度も更新した。しかし,この事故の余波は,概ね テスラ内部に留まった。
     "私を含めて多くの人が,テスラの死亡事故が あれ以上の展開を見せなかったことに驚いた。Uber の死亡事故は,一般大衆に疑念を抱かせても おかしくないことである。" … と南カロライナ大学 ロースクールで 無人運転車の規制を研究する Bryant Walker Smith 教授が言う。
     フロリダ州でのテスラ車の衝突の場合,車を買ったのは犠牲者であり,あの車を使っていたのも犠牲者だった。アリゾナ州の衝突の場合,車は あらゆる意味で Uber がコントロールしていたテスト車だった;犠牲者は 普通の人だった。" … と Smith は続けた。
     テスラのエピソードは,無人運転車業界の他企業からは 比較的容易に忘れ去られた。Autopilot は "運転支援" システムであり,運転者はコントロールを維持するものと想定されている。Autopilot はレーダー, カメラ, および コンピュータ視認技術を使って 周りの状況を把握する。Waymo, Uber, GM の Cruise が設計したシステムは,レーダーなどのセンサーに加えて, LiDAR という名前の方法を使い,これは フル自律運転に適していると彼らは言う。
     フル無人運転システムは,人間運転手より 注意深く かつ 有能であるため,多くの人命を救うことができ,車を操縦する負担を軽減する … と彼らの言い分は続く。NHTSA によれば,2016 年にアメリカの路上で亡くなった人は 37,000 人を超え,歩行者の死は +9% ふえた。
     "現在 1日に何百人もの人が自動車衝突事故で亡くなっていることを知らない人たちでも,今回の死亡事故,今回の悲劇は 多くの人が知るだろう。" … と Smith 教授は言う。
     これまでのところ,Uber の事故が 他社のアリゾナ州での計画を変更するかどうかは不明である。Waymo が今月 初めにリリースした動画は,テンピから約 22 km 離れたチャンドラーでのテスト運転車から収集したものである。昨年夏以来,Waymo は 自動運転ミニバンに 安全運転手なしに ボランティアを乗せてシャトル運行している ── これは Waymo の技術的堅牢さを誇示するための前例の無い離れ技 (feat) である (↓)。
     Waymo の関係者は,コメントの要請に応答しなかった。
     チャンドラー市の広報担当者は,Waymo との取り決めを変更する計画は無いと言った。
     人間運転者は,月曜日のような事故で 稀に 刑事上の罪に問われることがあるが,自律運転車の係わりは 新しい領域である … とフェニックスに拠点を置くZachar 法務会社の人身傷害担当弁護士 Chris Zachar が言う。
     "アリゾナ州のような事故は これまでに 全く無かった。" … と彼は言う。
     テンピ警察署のスポークスウーマンは,何らかの訴追があったかに関するコメントの要請に応答しなかった。
     警察によれば,Elaine Herzberg (49) は Uber の車に轢かれたとき,歩道の外を歩いていた。アリゾナ州法は,歩行者が 横断歩道ではないところを渡るときには,車を優先すると定めている。
     しかしながら,今の場合,この区別は当てはまらないかもしれないと Zachar は言う。"もしも これらの車両のレーダーが 会社が主張するように立派なものならば,なぜ横断歩道が存在する必要があるだろうか?"
      『Waymo の自動運転マイルポスト:人類が後部座席に座る』 (Wall Street Journal, 2017/11/07)
     ↑ グーグルの自動運転がどこまで進んでいるかを伝える記事である。まさに前例の無い離れ技!

  16. Uber's Self-Driving Car Just Killed Somebody. Now What?
    Uber の自動運転車は 誰かを殺した。それで?
    Wired,2018/03/19 @04:24 pm ET
    By Aarian Marshall
    日曜の晩 午後 10 時頃,自動運転中の Uber が アリゾナ州テンピで道路を渡っていた女性を轢いて殺した。この衝突は自動運転車が誰かを殺した初めてのことらしい ── だから,これまでほとんど規制されてこなかった ほとんど理解されていない (人命を救い 富を生み出す力を持つ) 技術の道筋を変える可能性がある。
     テンピの警察は,衝突が起こった時 ボルボの XC90 SUV が自律運転モードにあったと報告する。ただし,この車のハンドルには安全運転手が座って この技術のモニターしており,緊急の場合や 衝突が差し迫ったときには コントロールを取り戻すことになっていた。被害者の女性 Elaine Herzberg は 地元の病院に運ばれ,そこで負傷のため死んだ。警察は 今日 全体の報告をすることになっている。
     これに応じて Uber は,自動運転車を フェニックス (テンピを含む), サンフランシスコ, トロント, ピッツバーグ (ここでは自動運転タクシーの営業を行なっている) の公道から引き揚げた。スポークスウーマンは,会社が地元当局に協力していると言う。NTSB と NHTSA は,テンピに調査チームを派遣している。
     規制がほとんど無い
     今回の死亡衝突事故は,人が運転する今日の車より安全で効率的だと見込まれる技術の研究・開発に数十億ドルを投じて,数ヵ月後 あるいは 数年後に商用サービスの配備が見込まれる 自動運転セクターが誕生しようとする微妙な時期に発生した。だが今は その中間の時期であり,公道で大量に走ってはいるものの,自動運転車は完全とは言えない。したがって,今回の最初の衝突事故 ── 最後でもなかろう ── は,安全 vs 進歩の計算を狂わせるのではないか?
     Uber,Waymo など 自律運転の開発会社は アリゾナ州を好む。これは,日光に恵まれた穏やかな条件というだけではない。テストをどう実施するかについて ほとんど 全く制限が無いからだ:自動運転車は,特別な許可を全く必要としない。通常の車の登録で十分である。しかも,同乗するオペレーターは,当局とどんな関係にあるかを全く知る必要が無い。
     "他の州の場合には,自律運転車が州内で行なったテストについて報告する義務があるが,アリゾナ州は 報告義務の必要があるとは考えない。" … と アリゾナ州の陸運局は昨年 Wired に語った。
     今月はじめ,アリゾナ州の Doug Ducey 知事は,フル無人運転車の州内でのテスト または 営業を許可する行政命令改正に署名した。したがって,Waymo が 完全無人タクシーのサービスを今年フェニックス地域で開業しようと計画していることは,不思議ではない (グーグルの子会社は,この記事にコメントを求めたが 応答が無い)。
     これまでのところ,カリフォルニア州だけが 開発会社に 運転データ (衝突事故の詳細,毎年の運行キロ数,人間安全オペレーターがロボットから制御を引き受けた回数を含む) を公表するよう要求している。とは言え このような数字も,開発のペースや どれだけうまくやっているかをつかむには役立たない。カリフォルニア州は,公道での完全無人運転車 ── バックアップする人間安全運転手のいない ── のテストの許可を来月始める。
     他方,この空間の企業は,[州政府ごとにではなく] 連邦政府が一括して すべての自動運転車の設計, 製造, 性能を確実に引き受け,その結果 アメリカ全土でさらに多くの ── 各メーカーごとに 100,000 台もの車の ── テストが可能になる法令を待ち焦がれている。この法案は "自動運転法 (Self Drive Act)" と呼ばれ,秋に下院を通った。しかし,これと対を成す上院の法案 "AV 開始法 (AV Start Act)" は,この若い技術が もっと厳しい監視を必要とするのではないかと疑問視する少数の上院議員の反対に遭っている。
     今回の衝突は,開発会社らの主張の助けにならない;傍観者は,開発者がこの技術に内在するかなりの皺にアイロンがけをするまで,自律運転車を もっと厳しく拘束すべきだと求める。
     "今回の悲劇的事件は,アメリカの道路を共有する 乗客, 歩行者, 運転者のすべてにとって自律運転技術が真に安全になるまでには,この先 長い道のりがあることを実証した" … と Richard Blumenthal 上院議員 (民主,コネチカット州) が声明で言った。"革新を可能にするために急ぐあまり,安全という基本を忘れてはならない。"
     知識と権力
     日曜日の気象は暖かで,風はほとんど無く,湿度は 20% だった ── 車のセンサーにトラブルを起こすような状況では全くなかった。グーグルの StreetView は,日曜日に死亡事故が発生した場所が,4, 5, 6 車線の道路が出会う場所であることを示す ── 歩行者を想定して作られたところとは言い難い。テンピ警察は,その女性が交差点以外のところで轢かれて死んだと報告する。
     この死亡事故は,重大な疑問を提起する。歩行者がモルモットになることに同意していない状況で,公道での自動運転車のテストを許可するには,どの程度安全ならば "十分に安全" と言えるのか? これらの車が衝突を回避すると保証できるのか ── 携帯電話を見ながらとか,酔っ払ってとか,あるいは くたびれ果てた人は回避しないかもしれない。人間は 偉大な記録を持っていない:昨年 40,000 人のアメリカ人が路上で死んだ。そのうちの 6,000 人強が歩行者だった ── 1日当たり 16 人強である。
     多くの州政府が,この技術を開発する会社に 恐るべき大量の信頼 または 信用を置きつつある。
     しかし,人間運転手は 1.6 億 km 運転するごとに 1.16 人を殺す。Waymo と Uber および 残りのすべてを合算しても,1.6 億 km には遥かに及ばない。それでも 既に1回 殺したのだ。
     これは,我々が議論する技術が 時間をかけて進化するものであり,必ずしも 直ちに広く配備できるものではないということの 例証である。" … と MIT で 人間行動と無人運転車を研究する Bryan Reimer が言う。
     安全運転手 [を乗せる] システムは 機能するか?
     開発業者は,従業員が十分に訓練されているので,おかしなことがあった場合に,自動運転ソフトウェアから引き継ぎできると言い張る。だが 研究者は,不完全な技術をモニターするために,不完全な人類に依存することを懸念する。特に,緊急事態が発生した場合,プレッシャーの下で 完全無欠な振る舞いを人類がすると考えるのは 無謀である。Uber の衝突は,"システム" が 常時 正常に動作するとは限らないことを明らかにした。
     開発会社は,この技術について 不透明性を下げる必要があるか?
     今日,開発会社は 公共セクターに 多くのデータを渡すことを 忌み嫌う。これは,沢山のカネを掛けた企業秘密を州政府が競争相手に開示することを恐れるからである。だが,これらの会社は 自分の技術とその欠点について 透明にする必要があろう。
     自分たちがどこまで達成できたかの詳しい情報を手渡すとしても,地方政府の あるいは 連邦政府の当局者は それを理解するだけの識見があるだろうか? "実際には,ほとんどの政府は この技術を開発する会社に満腹の信頼と信用を置いている。" … と 南カロライナ大学の ロースクールで 自律運転の規制を研究する弁護士 Bryant Walker Smith が言う。
     "この技術の将来の可能性は膨大である。" … と Reimer は言う。"だが,これは 進化であって,革命ではない" 言い換えると:おそらく 今はブレーキを掛ける時だ。
    かなり "激烈" な主張も見られるが,いろいろな 主張を知ることが大切と思い 翻訳しました。
     なお,自動運転については,文科系の学問を総動員しなければ (理系頭脳だけでは) 世の中に受け入れられない … というのが,当サイトの以前からの主張です。人間の研究が欠かせない。

  17. Uber self-driving prototype involved in a fatal crash investigated by police
    Uber の自動運転原型車が 衝突死亡事故に巻き込まれ,警察の調査を受けている
    electrek,2018/03/19 @01:33 pm ET
    Fred Lambert
    アリゾナ州テンピの地元ニュースは,Uber の自動運転原型車が サイクリストとの死亡衝突事故に巻き込まれたと伝えている。地元の警察が捜査中である。
     報道によれば,この事故は 昨夜 10時頃,Mill Avenue と Curry Road のコーナーで発生した。テンピ警察によれば,自転車を持った女性 [a woman with a bicycle] が横断歩道で通りを横切っていたが,そのとき自律モード中の Uber の自動運転原型車に はねられた。中には,Uber 従業員がハンドルのところに座っていた。
     彼女は病院に運ばれたが,その後 負傷が原因で死亡した … と ABC15 は伝える。
     警察が 現在この事故を捜査しており,Uber は当局に協力していると言う。
     『更新』: Uber は,この事故を受けて 同社のテスト・プログラムを停止中であると言った。
     冒頭の写真は ABC15 が伝えるものである。[ここをクリックすると ABC15 の YouTube 動画が始まる]
     この悲劇的事故は,自動運転車が絡んだ 初めての死亡であろう。
     テスラのモデルSの持ち主が Autopilot モードの車内で死亡した事故は非常に有名であり,メディアは自動運転車による初の死亡事故だと伝えているが,その場合 テスラの自動運転レベルは 2 であり,運転者が車の運転に対して常に責任を負っていたので,自動運転ではなかった。
     しかし,Uber の車両は,無人配車サービスを想定して自律運転原型車としてテストされていた。
     Uber の 問題含みの自律運転プログラムについてのコンテキストを下にいくつか挙げる:
     Uber は,Otto の買収によりキックスタートした 自動運転の取り組みについて,厳しく非難を浴びてきた。この買収は,グーグルの Waymo により この技術を盗んだという訴訟につながった ── この訴訟は,Uber が $2.50 億を Waymo に払うことにより [つい最近] 和解した。
     Uber がカリフォルニア州で最初に 同社の車をテストした時,当局との間にいくつかの揉め事があり,そのためカリフォルニア州陸運局は 原型車が歩行者の前に赤い光を走らせる映像に反応して Uber の無免許の自動運転プログラムを却下した。
     車が赤い光を出して走る時にはエンジニアが運転しているのだと Uber は主張したが,他の報告は Uber の言明に矛盾した。
     Uber は,その努力の大部分をアリゾナ州に向けた。そこで 原型車の1つが 見る間に [2017年3月に↓] 事故に巻き込まれた … ただし,警察は Uber に落ち度は無いと言った。
     そして今回の悲劇的な死亡事故が,Uber の自動運転プログラムの長い問題リストに加わった。
    "electrek" は,電気自動車のウェブサイトである。
    そうだったのか! Uber 従業員がハンドルのところに座っていたのに 歩行者を死なせた。
     もしもレベル2だったら,人間の責任だから前方を絶えず注意して もしかしたらブレーキを踏んだだろう。
     でも今回はレベル3だったから,運転は車任せ。安心しきっている。YouTube で記者会見している警察は,"車は減速しなかった" と言っている。仮に危険だとなっても 急に人間は動けない。ここはグーグルが主張するところで,レベル5 [=フル自動運転] を実現しなければ, 自動運転は却って危険である … といつも強硬に言う。グーグルの主張を裏付けるような事故になった。 ソフトバンクは,グーグルから感謝されるかもしれない (笑)
     結局,レベル3の危険性を Uber のソフトウェアが実証したことになった。だから,これは Uber の問題であるけれども,同時に自動運転業界全体に大きな影響を及ぼすわけだ。
     Uber は,技術水準が低いし (Waymo から盗用),スキャンダルで人材大量流出だから,カネだけは外部からの注入により支えられても,自動運転なんて手懸けるのは無理だろう。実際 今でも 人材流出して 貸自転車のスタートアップ企業を作っている人が何人もいるらしい (Recode 報道)。Uber のニュースで 表に出るのは,ほとんど Dara Khosrowshahi CEO だけであり,この人が八面六臂の大活躍である。CFO すら 3年も欠員である。スキャンダルまみれの企業の "文化" の立て直しに飛び込むような人は どれだけいるのか? 能力のあるエンジニアが好き好んで飛び込むとは到底思えない。
     東京から大量に派遣できるのであれば,別である (笑)

  18. A self-driving Uber car has killed a pedestrian in Arizona
    自動運転中の Uber の車がアリゾナ州で歩行者を死なせた
    Recode,2018/03/19 @01:42 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    車は,女性をはねたとき,自律モードで運転していた。
     テンピ警察によれば,現地時間月曜日の 午後10時頃,アリゾナ州テンピで Uber の自動運転車が Elaine Herzberg という女性をはねて死なせた。
     これは,自動運転車が歩行者を殺した初の事故である。衝突時に車は 自律モードで運転していた。
     テンピ警察の発表によれば,Herzberg は 衝突後 病院へ運ばれたが,負傷のため亡くなった。
     日曜日の夕方,衝突時に Uber 車にいた唯一の人は,ハンドルに座っていた車のオペレーターだった。Uber の広報担当者は,この人が無傷だったと言う。
     Uber は,サンフランシスコ, ピッツバーグ, テンピ, トロントの路上から自律運転車を撤去し,テンピ警察とフルに協力している。
     テスラの 2016 年の死亡事故を調査した政府機関 NTSB は,この事故の調査を実施することを 広報担当者が Recode に認めた。
     テンピ警察署は車を押収しており,衝突中に多くのセンサーがキャプチャーしたデータに,Uber はアクセスして分析することができない。このような事故では,会社は 管轄の当局に通知し,当該マーケットでの自動運転車事業を統括する人を犯行現場に派遣し,エンジニアリング部門から人を集めて小さなチームを結成し,衝突で何がおかしかったかを明らかにする。
     そのデータは,オペレーターが誤ったのか システムが誤ったのかを決めることを助ける。この情報に基づき, 会社は 次のステップが何であるかを決める ── たとえば,システムの故障であったのか。おそらく Uber はソフトウェアを調べ,長期にわたって運転を停止するだろう。もしもオペレーターの誤りであれば,現在テスト中の4都市での運行の再開を決めることができる。
     Uber がテンピで事故を起こしたのは,これが初めてではない。2017 年3月にも 自動運転車が起こした事故のために, 路上から自動運転車を引き上げた。当時, テンピ警察は Uber が運行する車の責任ではないと言った。
     事故の調査が完了すると,Uber の車は路上に戻された。
     しかし,我々が最初に報道したように,Uber の自動運転部門は,自律運転システムの全体的信頼性に 当時 [2017/03] と 2016 年12月のアリゾナ州での立ち上げの間で,ほとんど進歩は見られなかった。2017 年3月の初めの時点で,安全な運転手は,平均 1.3 km 走るごとに ハンドルを握らざるを得なかった。
     しかし,2017年末までに Uber は 自律運転モードで 320 万キロを走らせた;これは 自律運転技術の進歩を意味する。しかし,自律システムから 制御を運転手が取り戻さざるを得なかった頻度のようなデータや 複合的環境で車がどのように振舞うかを知らずに,ソフトウェアがどれだけ進歩したかを決めるのは難しい。
     Uber は,許可を取得するまでカリフォルニア州での運行停止をカリフォルニア州陸運局に命じられた後,2016 年12 月に アリゾナ州でボルボの自動運転車によるテストを始めた。
     自動運転企業は 世界中の都市で小規模の無人運転車隊の立ち上げを準備する中で ── 1つには運輸省の Elaine Chao 長官からの この技術の知名度を挙げよとの要求に応じて,その多くは消費者の信頼を勝ち得てきたと言う。
     今回のような死亡事故は ── 特にもしも Uber のソフトウェアの欠陥によるものであることが判明すれば,これら多くの企業が 過去数ヵ月の間に積み重ねた進歩を壊滅する効果を持つ。
     今回は自律運転車の衝突で歩行者が殺された初の事故であるが,初の死者ではない。最もよく知られているのは,自律運転モードで動いていたテスラ車の運転者が 2016 年6月に 衝突により命を落とした。
     改訂:テンピの Mark Mitchell 市長は 声明を発表し,Uber が市内でテストを辞める決定を支持すると言った。
    テンピというのは,Uber の自動運転車が1年前に衝突した所なんだけど,どうして 同じところで今度は人を はねたのか?
     1年前は,2人も車に乗っていたのに,黄色信号の交差点に スピードを落とさずに直進して突っ込んだ。
     そこへ 右折してきた 対向車と衝突し,Uber の車が見事に横転した (↓ 写真)。
     ソフトウェアと2名の乗員の両方が "不良" だった。
     今回も1人 乗っていたのだから,やはり 人災であろう。システムに頼り切っていたに違いない。
     おそらく … あの強烈なスキャンダルの嵐で 人材は流出し,自動運転をやれるだけの体制ではないのだろう。でも,Uber の将来は,自動運転しかない;人件費をなくすことによりガッポリ儲かる夢 ・・・ 。この夢が無ければ,Uber は赤字が累積するだけである。結局は 自力の自動運転を諦めて,トヨタとの提携に頼るしかない。うまみは大幅に減るが仕方ない。「トヨタにシステムを外販」というのは お笑いで,トヨタが開発した車とシステムの両方を Uber はタクシーでテストする … くらいがせいぜいだろう。
     もちろん,SoftBank に利益はない。もともと,世界の配車企業の赤字補填係として名乗りを上げたのだから,それに徹するしかない (Uber への "投資" に競合相手が無かったことを思い出そう)。
     Waymo から盗んだ技術を頼りにしていたんだし。
    ──────
     データ分析ができていないらしいが,テスラの場合は オンラインでリアルタイムにデータを把握していた。
     したがって,Elon Musk は,事故の状況を把握していると言っていた (ウソかもしれないが)。
     信じがたいが,オフラインで自動運転しているのか? だったら 遅れていると言わざるを得ない。
    ──────
      『Uber の自動運転車が,アメリカでのテスト中に衝突事故を起こす』(Financial Times,2017/03/24)
      『警察の調査:アリゾナ州で衝突事故を起こした Uber の自動運転車は,信号が黄色の時に交差点を渡っていた』(Business Insider, 2017/03/31)
      『自動運転車の実用化は間近 … の大いなる錯覚』(日経電子版 ITpro, 2017/03/31)
    こういうときに,日本のソフトバンクから 自動運転チームを派遣して 問題の解決に当たれるのであれば 素晴らしい。日本でも「自動運転の野望」をやっているのだから,高いレベルでの協力が可能なはずである。
    Police have released the first video from inside the Uber self-driving car that killed a pedestrian
    警察は,歩行者を死なせた Uber の自動運転車内からの最初の動画を公表した。
    Recode,2018/03/21 @07:23 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    これが 車と オペレーターが見たものである。
     Uber の自動運転車が アリゾナ州テンピで歩行者を轢き殺した3日後,警察は,車が女性を轢く直前にカメラで撮った動画映像と車内でオペレーターがハンドルに座っているときの画像を初めて公表した。
     Uber の車は,日曜日の晩 Elaine Herzberg (49) を轢いたとき,自律モードで動いていた。Herzberg は 病院へ運ばれ,その後 負傷が原因で死亡した。これは,自動運転車の衝突により歩行者が死亡した初の事故である。
     動画映像は,誰の責任であるかを 決定的に示してはいない。テンピ警察は 当初,Herzberg が突然現れたと言った;しかし 動画映像では,衝突の何秒も前に (a number of seconds before) 彼女が画面に現れる。さらに 映像では,車が自動運転する間,ハンドルに座っている車のオペレーターが 間欠的に何度も下を見る。
    Warning: This video shows a woman about to be hit by a car — and a driver about to hit someone on the road. Viewer discretion is advised.
    [元の記事では 車外と車内の動画を見ることができる]
     テンピ警察には,月曜日の事故を調査するために,NTSB と NHTSA が加わった。連邦機関と地元の機関がこの動画, ならびに 車, 事故現場, 調査の一環として車が記録したすべてのデータを調べている。
     Uber は 調査に協力している。
     "この動画は 見るに耐えない。我々の思いは Elaine の愛する家族と共にある。" … と Uber の広報担当者は声明で言った。"当社の試験車両は 止まったままであり,当社は 地方,州,連邦の当局にできる限りの支援を行なっている。"
     テンピ警察は火曜日,責任の所在は 未だ不明であると言った。しかしながら,Sylvia Moir 警察署長は 以前 San Francisco Chronicls に,暫定的としながらも,Herzberg が横断歩道ではないところで道路を渡っていたことを主たる理由に,"Uber のせいではなさそうだ。" … と語った。
     "この種の横断の仕方では,衝突の回避が難しかったことは非常に明らかだ。" ── 自動運転であっても 人が運転していても ── "暗がりから道路へ突然彼女が現れたことを考えれば。" … と Moir は Chronicle に語った。
     調査の結果によっては,Uber が 刑法の罪を負うこともあり得る。テンピ警察は,発見した材料を マリコパ郡司法長官のオフィスに提出し,刑法犯罪にあたるかどうかが判断される。
     Uber は,現在テストを行なっている4都市の自動運転車両を全て停止した。Toyota や (ボストンの自動運転スタートアップ企業) nuTomy など数社も自動運転の実験を停止した。
     この事故に対する 世論の反響は,自律運転の開発全体を遅らせる可能性がある。 あるいは ,少なくとも Uber の自動運転への取り組みを遅らせるかもしれない。
     もしも この事故が Uber の技術の責任によるものと判明すれば,同社は 提携する自動車メーカーからの抵抗に直面するだろう。この技術そのものに欠陥が無い場合であっても,そうなる可能性がある。自動車メーカーが Uber と公然と協力するのをためらうには,世論の認識と反応だけで充分である。2019 年の IPO の前に,このような関係を結び,世論のイメージを維持することは,同社の急務である。
    動画映像は,元の記事で見ることができる。
     乗員が何度も下を見るのは,何やら 携帯電話を使っているような感じである。
     衝突した途端 ハッと驚いて顔を上げるところで動画は終わる。これでは ブレーキを踏めるはずが無い。
      遺族の印象は悪いだろう。
     何をしていたのかは,いずれ分かるだろう。
    ──────
     最後の段落は,Uber がスキャンダルまみれであるために,もともと 世論の同情を引きにくい事情に根差している。

  19. Uber Gets Bogged Down in a Land War in Asia
    Uber が,アジアの地上戦に嵌って動きが取れない
      Bloomberg Gadfly,2018/03/15 @21:32 JST
      By Shira Ovide
    戦略的撤退は赤字を減らすが,世界展開を制約する
    ここから学ぶ大切な教訓 :「CEO の言うことを信じるな;CEO がすることだけを信じよ」
    Brent Lewin | Bloomberg)
     Dara Khosrowshahi のニューデリーでの記者会見の記録によれば,Uber のトップ経営者は3週間前にこう言った:"当社は, 東南アジアで損をすると同時に, 猛烈な投資をするつもりだ。目下 当社の東南アジア計画は,前へ進むことである;前がかりに投資することである。"
     "目下" は,明らかに 重要なキーワードであった。Bloomberg News は先週,Uber が その東南アジア営業の大部分を (その地域のオンデマンド配車の大手プロバイダ) Grab に売却する取り引きの最終段階にあると伝えた。Uber は,東南アジアでの "猛烈な投資" の公約からから降伏へと 2週間で宗旨替えした。
     取り引きを交渉中の CEO が 荷物をまとめて東南アジアからさっさと出ていくつもりだったとは,誰も予想しなかった。Khosrowshahi が基本的に信頼に足る人物であると考えてよいものか かなりの柔軟性が残る。それでも,Uber のボスは,世界展開の取り組みを先頭に立って計画すると繰り返し言っている。そして 東南アジアに関する彼の言葉を現実と比べると,世界展開の中でどこに Uber の譲れない一線を引こうとしているのか不明である。
    さよなら 東南アジア
    Bloomberg News の報道によれば,Uber は 東南アジア市場を
    Grab に売り,引き換えに Grab の最大 20% の権益を受け取る。
    Grab は 東南アジア No. 1 の配車アプリを自称する。
     Uber は,インド および 地球のその他の部分で戦いを続けると公約しているが,それらの熱烈な言葉を 今や 本気だと考えるのは難しくなった。もしも Grab との交渉が実を結べば,それは Uber の第3次の大規模撤退となる。Uber は中国での営業を 2016 年に滴滴出行に売却し,引き換えに 滴滴出行の権益を取得した。さらにロシアでも同様の条件で昨年 店じまいをした。Uber の決定は,中国とロシアでは賢明だった。これらの国では 政府規制が国内企業を優遇するので,競争が厳しかったのである。
     前回の2つの撤退と同様に,GrabTaxi Holdings Pte に対して 高くつく打撃戦を辞することは,Uber の巨額の損失を回避するのに役立ち,来年の IPO を目指す Khosrowshahi の計画にとって具合が良い。 東南アジアは, Uber にとって特に へとへとにくたびれる市場だった。そして,諦めるのが明らかに賢明な市場は,他にもいくつかある。けれども その一方で,巨大な市場から撤退するのは, Uber にとってリスクである。Uber の評価額は 現在 $540 億であるが,それは,複数の国で Uber が "脱出速度" を達成し,従来の交通を越えることが既に織り込まれているからである。もしも世界を股にする Uber の展開が縮小すれば,Uber の成長の可能性も 縮小する。
     Uber の東南アジアでの取り引きには,一服の面白みが加わる。同社の筆頭株主である日本のコングロマリット SoftBank Corp Group は,Uber がアジアでカネを使うことやめて,アメリカ, 欧州, ラテンアメリカ, オーストラリアのような中核市場に集中せよとの願いを隠そうとしない。SoftBank の関心は,複雑なんてものじゃありません。
     同社は 他の投資家と共に,最近 Uber の $92.5 億相当の株を購入したが,Grab を含む Uber のライバル 何社にも数十億ドルを投資した。これにより,Uber に対する SoftBank の戦略助言が Uber の最大利益を想定したものか,あるいは SoftBank の Grab への投資を念頭に置いたのかを読むことが難しくなっている。
    ライバルたちのチーム
    Uber の筆頭株主である日本のコングロマリット SoftBank は,世界中のいくつものライバル企業の株主でもある。
     しかも,数ヵ月前に SoftBank が Uber 株式の買い付け交渉を始めると,対立の可能性が高まった。SoftBank が支援する2社 ── 中国の滴滴出行とインドの Ola ── が ブラジル, 日本, オーストラリアへの拡大を発表した。これらの国は,いずれも Uber も影響を与えたかった国である。ラテンアメリカとオーストラリアは,現在の Uber にとって健全な市場のように見えるが,いずれは SoftBank が支援するライバルたちが さらに猛烈な戦いを挑んでくるのだろうか?
     公平を期すると,Uber の CEO は少なくとも表向きは,Uber がどこで営業するかについて SoftBank の強い感情に実務的な見解を取っている。"当社の株主の多くは,何をするのが正しいかについて 様々の意見を持つ。" … と Khosrowshahi は 今年1月の Bloomberg News インタビューで述べた。"最終的には,会社の統治は 取締役会に掛けられる。"
     先月の別のイベントでは,SoftBank と共同で事業をする企業は,"SoftBank があなたの競争相手と共同事業をするやり方に慣れる必要がある。" … Khosrowshahi は言った。彼はまた,Uber が 自分を支える SoftBank の "資本の大砲" を持つことを (狙い撃ちされるよりは) 喜んでいる … と言った。SoftBank に関する こういう発言は正しいけれど,人前での Khosrowshahi の動じない態度が 心の底からそう感じているのかを疑わせる。Uber がこれ以上ドラマを必要としないことは ハッキリしている。
     いずれにせよ,Uber にとって SoftBank は重要な同盟者であると同時に,騒動を起こす火種でもある。もしも SoftBank の要求に応じて 世界の他の部分から撤退するならば,損失を抑えることにはなるが,将来の売り上げの可能性も抑制することになる。とは言え,アマゾンもフェイスブックも中国からの売り上げ無しでも困ることは無い。同様に,すべての国でパワーハウスにならないとしても,Uber は偉大な会社である。だが,世界を股にする活動を減らす Uber は,投資家を残念がらせるだろう。
      This column does not necessarily reflect the opinion of Bloomberg LP and its owners.
     著者 Shira Ovide は 元 Wall Street Journal の記者である。
    Khosrowshahi が Uber の CEO に招聘された時のメディア報道には,人柄の良さが強調されていた。
     だから,Kalanick と比べて,社内をうまくまとめていける人だろうと思った。
     しかし,振り返ってみれば 経営者としての能力に触れた記述は あまり記憶が無い。
     Shira Ovide は Wall Street Journal の記者をしたことのある人らしいから 一応 信頼のおける記事なのだろう。
     こうまで独断で物事を進めるとは,SoftBank の社長に似ている。これでは うまく行くはずが無い。
     SoftBank が投じた 1兆円弱はムダ金だった。
    ──────
     こういう事態が発生する理由は,SoftBank と同様に Uber でも人材不足が考えられる。
     とにかく表に出て会社を代表してきちんと発言できる幹部が CEO の他にいない。
     外部とのやりとりで 表に出るのは すべて CEO の仕事になっている。
     最近漸く COO を埋めることができたが,それも Dara さんが CEO をしていた Expedia から引き抜いた人である。まぁ これほどスキャンダルまみれの会社に飛び込んで,"企業文化" の是正に取り組もうというまともな人材はいないだろう。そんな仕事は,誰が考えても後ろ向きであり,引き合わない。
     いつも言うことだが,東京本社から 10 人くらいトップ級の人材を投入せずに (用意できずに),カネだけ投入するのを「投資」だと思い込んでいる社長は,世界標準から外れたアホと言うしかない。

  20. Uber,自動運転システムを外販 トヨタも搭載検討
    日経電子版,2018/03/15 @18:00
    兼松 雄一郎 (シリコンバレー)
    ライドシェア最大手の Uber Technologies は,自動運転システムの外部販売を始める。自動運転の普及をにらんで開発していたシステムを幅広いメーカーへ供給する。提携するトヨタ自動車とも交渉している。自動運転技術の開発競争が激しくなる中,実験車両を増やし先行するグーグル系の Waymo などに対抗する。
     Uber 自動運転部門の責任者 Eric Meyhofer は「新事業としてシステムの外販を始める。Lidar, カメラ, センサーなどの情報を統合して処理するシステムで,車体や電池などは含まない」と語った。通常の市販車に後付けでき,緊急時以外は自動での運転が可能になる。
     トヨタとは同社のミニバンに自動運転システムを搭載する方向で協議が進んでいる。今週,ペンシルベニア州ピッツバーグにある Uber の自動運転開発拠点をトヨタの友山茂樹副社長やシリコンバレーの人工知能開発拠点を率いる Gill A. Pratt [TRI CEO] らが訪れ,Uber の Dara Khosrowshahi CEO と会談している。
     トヨタは,自動運転の中核技術の開発は自社で手がけている。一方でライドシェアなど移動サービス向けの専用車については,Uber や中国の滴滴出行など外部の技術も活用し開発を進める方針を表明している。
     自動運転の開発では,先頭を行くグーグル系の Waymo と Uber が激しく競い合っている。Uber はボルボと自動運転車を共同開発をしているほか,ダイムラーが開発する自動運転車を Uber のシェア・サービスに組み込むことで合意している。
    "自動運転システムの外販" と書いてあったのでびっくりした。
     商用の自動運転車向けに 大規模にシステムを販売するのかと思った。
     実験車両を増やし先行するグーグル系の Waymo などに対抗する … と書いてある。実験用車両にシステムを "外販" するわけだ。
     しかし,"システムを幅広いメーカーへ供給する" となると,事故があった場合の責任をどうするかが問題になる。
     仮にシステムが原因で人身事故が起こった場合,Toyota / Uber の責任をどうするかを事前に細かく取り決めておく必要がある。さもないと,事故による風評被害を Toyota / Uber のどちらが負うかが不明になる。案外にこれは厄介であろう。たとえば,Uber のシステムに欠陥があって事故が発生した場合,Toyota の世界中の車の売れ行きに影響を及ぼす可能性がある。さらに,この提携が大規模に発展した場合には,リコールの責任をどちらが負うかという問題もある。異なる資本系列の間の協力は,まことに厄介である。
     もう1つおかしいのは,Uber は Waymo から特許訴訟を起こされていた。何をどの程度盗んだかは別にして,このことは Uber の技術水準に疑問を投げかける。Lidar を自社開発できているのか? もっとも,和議が整った Waymo から基本技術の提供を受けているのなら 納得できる。しかし,その程度の技術では この先 破綻するのは目に見えている。
     さらに (笑) この1年の混乱により退職が相次いだ Uber に,"売り物" になるような技術を支える技術者が残っているとは考えにくい。CFO さえ3年間 欠員である。
     この記事に対応する外国メディアの記事を探したが,現在のところ1つも見つからない。
     Toyota は 以前から Uber と提携しているから,目新しいことは何も無い可能性がある。

  21. Lyft says it passed $1 billion in revenue last year — and is growing faster than Uber
    Lyft が,昨年の売り上げが $10 億を超え ── しかも Uber より遥かに速く増えていると言う
    Recode,2018/03/12 @04:00 pm ET
    By Dan Frommer
    それでも Uber は遥かに大きい ── だが Lyft はまだ生きている。
     アメリカでの Uber の主たるライバル Lyft は今日,2017 年の売り上げが $10 億を超えたと発表した。2017 年の第4四半期の増加率は +168% であり,Uber が報告済みの +61% の3倍近い。
     もちろん,Uber は Lyft より遥かに大きく,昨年の売り上げは $75 億だった。営業している都市も国も Lyft より多い。第4四半期の伸び率 (%) は Lyft より小さいが,金額で比べれば 何倍も大きい。両社とも まだ 赤字である。
     しかし 大まかに言えば,Uber が先頭を切ってスタートし, 最初に市場を支配し, 巨額の資金を集める力, 猛烈な (時には 違法と非難される) 成長戦術, 自動運転への速い動き … などで恵まれていたにも拘わらず,Lyft を滅亡させることはできなかった。
     それどころか,Lyft は Uber の過ちと芳しくない評判に乗じて 昨年 $20 億を調達し,シェアを奪い,外国市場 (カナダのトロント) を初めて立ち上げ,見通しうる将来も生き残れそうである。
    Lyft は滴滴出行の支援を受けている。

  22. Underpaying drivers is 'essential' to Uber's business model, according to a new study on low wages
    低賃金に関する新しい調査によれば,運転手への支払いを低く抑えることは,Uber の事業モデルに "不可欠" である
     Business Insider,2018/03/05
      By Shona Gosh
      オーストラリアでの運転手への支払いは,平均して 最低賃金を下回る ── 経済学者 Jim Stanford の調査による。
      Stanford は,オーストラリアの6都市にわたって Uber の運賃を調べ,経費を差し引いた後の運転手の平均時給を $11.42 とした。これは,最低賃金 $14.29 を下回る。
      Stanford は,Uber の運転手が 実質的に会社に助成金を払っており,このため同業他社より収入が少ないと結論した。
    今年2月,Uber の運転手が運賃の引き下げに抗議して ニューヨークの
    Uber オフィスの前でストライキする。 (©Spencer Platt | Getty Images)
     Uber は,運転手への支払いが如何に少ないかを批判する学術調査から逃れることはできない。
     オーストラリアでの新しい調査は,Uber の事業全体が 運転手に払う低い報酬により助けられており,その総額は1年につき "数億 AUD" に達すると主張する。
     シンクタンク Australia Institute の Centre for Future Work の経済学者 Jim Stanford が行なったこの調査は,オーストラリアでの Uber の平均時給が AUD 14.62 ($11.42) であることを見出した。これは オーストラリアの最低賃金 AUD 18.29 ($14.29) を遥かに下回る。
     Stanford によれば,これは,運転手が 水揚げから Uber に払う手数料, 税金, 車両維持費などを差し引いた後の収入の推定額であるである。
     この数字は,Uber の最も安くて最も人気のあるサービス UberX だけに当てはまり,調査はオーストラリアの6都市の運賃をシミュレートした。
     Stanford は,タクシー運転手の平均時給が $30 を越えると計算した。"このベンチマークと比べると,UberX の運転手は 時給が AUD 15.50 ($12.12) 少ない。" … と彼は書いた。
     "この差額が 運転手から おそらく知らないうちに差し引かれており,会社の (既存のタクシー会社を下回る運賃構造に依存する) 猛烈な成長戦略の基礎を成している。" … と彼は続けた。"事実,運転手が Uber に提供する助成金は,ライバルであるタクシー会社に対する優位を保つために不可欠な要素であることが分かる。"
     Stanford によれば,オーストラリアの通常のタクシーのコストは UberX を 27%~60% 上回る。もしも Uber が運転手に適正な支払いを行なえば,同じくらいの経費が掛かるだろう。
     Stanford は,オーストラリアの政治家に Uber の運賃を調査し,運転手を守るために新しい規制を成立するよう呼びかけた。
     コメントの要請に対して,Uber から回答は無い。
     Uber は,運転手の収入が少ないとの別の調査に反論している。
     オーストラリアの調査の前に,アメリカの MIT から同様の論文が出た。これは Uber と Lyft で働く運転手の 3/4 の収入が最低賃金未満だというものだった。 Uber has already argued against another study about how little drivers earn The Australian study follows a similar paper from MIT in the US which found almost three-quarters of drivers working for Uber and its rival Lyft earned less than minimum wage.
     MIT の調査は,1,100 名以上の配車運転手を対象として,税込みのメディアン収入を 時給 $3.37 としていた。 The MIT study relied on data from a survey of more than 1,100 ride-hailing drivers, and found their median pre-tax profit was $3.37 (£2.43) per hour.
     しかし,Uber のお抱えのエコノミストがこの調査に穴を指摘した ── Uber は自分の支払っているデータを公表しなかったが ── MIT に再調査を要求した。すると MIT の研究者 Staphen Zoepf は再調査を行い,再計算の結果,メディアン時給が $8.55~$10 の間にあることを見出した。 But Uber brought out its in-house economist to pick holes in the study — though the firm didn't openly volunteer its own pay data — and asked that MIT revisit the study. The researcher, Stephen Zoepf, agreed and recalculated median profit at between $8.55 and $10 (£6.16 and £7.21) an hour. -->
     運転手が 低賃金に不満を言うのは,Uber が設立されてからずっと続いている。
     学者は,運転手が長年不満を唱えていることを後付けしているに過ぎない:すなわち,ライバルのタクシーを出し抜くために,運賃をわざと低くしているのである。
     去る2月,英国の Uber 運転手 David Dunn は 英国の政治家らに苦情を言った:Uber の値段の高い "Exec" サービスで運転しているが,£37,000 [~\5,500,000] の Mercedes の費用を回収できない … と。
     "私は E-Class で £2.25 で仕事をしている ── こんなことは 聞いたことが無い。" … と彼は そのとき言った。"ブラック・キャブなら 料金は £6 か £7 だ。"
     別の運転手は,トントンになるまでには 1週間当たり 90 時間働かねばならないと苦情を言った。
    運転手の収入が低すぎることは ずっと前から指摘されている。
     この記事には 誇張があるように感じられるが,それでも ・・・ 。
     1つ重要なことがある。"最低賃金" が何度も出てくるが, Uber の運転手は "従業員" ではないので, 最低賃金制が適用されない。問題点は,下の FT の記事に詳しい。
     こんな "事業モデル" が長続きするはずがありません。
     社長さんは 何に期待して 世界中のこういう ひどい事業にカネをぶち込み続けるのか?
    『Uber:運転手の目に映る不快感』(Financial Times,2017/10/04)

  23. Uber Places Bet on India in Deal With Cricket Celebrity Kohli
    Uber が,クリケットのセレブ Virat Kohli との契約でインドに賭けを張る
    Bloomberg,2018/03/09 @19:07 JST
    By Saritha Rai
      会社は,バンガロールに拠点を置くライバル Ola と競合する。
      Uber は,東南アジアのライバル Grab と協議中と伝えられる。
     Uber Technologies は,インドのクリケット ── 世界の金持ち有名人のスポーツの1つ ── の主将をブランド大使に任命した。これは,東南アジアの地盤を Grab に譲るものの,インドでは成長を目指すことの表れである。
     Virat Kohli は,"アジア太平洋地域での当社の優しいイニシアティブの一環として",インドでの Uber の初のブランド大使となる … と Uber は金曜日の午後に声明で言った。
    Virat Kohli (©Scott Barbour | Getty Images)
     Uber は,バンガロールに拠点を置く (SoftBank Group Corp から同じく支援を受けている) ライバル Ola と正面衝突している。Uber は 31 都市で営業しているが,Ola は 100 都市以上である。
     Uber に約 $90 億を投資した SoftBank は,Uber に アメリカと欧州地域に的を絞って欲しいと言った。この助言は,Dara Khosrowshahi CEO により反駁された;先月の初のアジア旅行で,配車企業は インドへの投資を続けると Khosrowshahi は言った。
     ただし,東南アジアで覇権を握る配車サービス Grab は (こちらも また SoftBank から支援を受けている) は,Uber の東南アジア事業を取得する取り引きが最終段階に近く,今週 または 来週に調印だろうと事情を知る複数の人が言う。
     Bloomberg の2月の報道によれば,Uber と Ola も同様の取り引きの協議を始めた。しかし,インドには配車事業の強力なライバルが存在しないため,規制当局から反対に遭うらしい。
    "Looking forward to a successful innings with @Uber_India."
     Kohli との契約は,Uber ブランドの強力な押し上げ効果を生む模様である;29 歳の クリケット選手のアピールは ,クリケットのスターが神と見なされる国にあっては,世代を越え,言語を越え,地域文化を越える。グローバル評価顧問会社 Duff & Phelps の 昨年12月のレポートによれば,Kohli は ブランド価値 $1.44 億を持つインドで最高のセレブである。
     Kohli の "Uber India との大成功のイニング" に期待するとのツイートは,数分間で 何千もの いいね を集めた。Kohli はツイッターで 2350 万人のフォロワーを持つ。
     今回の新しいマーケティング提携は,"今後の我が国の十数億の人たちにサービスを続けるとの当社の公約を裏付けるものである。" … と Uber は言った。
    結局,"同志的結合" も "群戦略" も形無しである。
     独占禁止を通るか通らないかが 決め手になる。通れば,Uber は撤退したいらしい。
    ──────
     配車事業の最終的な勝者は,資本力で決まるだろう。
     とすると 騰訊控股-滴滴出行 連合に勝つものはいない。最終的に借金頼みのソフトバンクは負ける。
     既に アリババを越えている騰訊控股の力は ますます強大になる。
     大規模な "敗者凍死" (?) に踏み込んだ 2017 年が SoftBank の運命の岐路だった。
    ──────
     それにしても分からないのは,"自動運転タクシーの時代になれば,運転手不要で 人件費が減ってボロ儲け" に釣られてなぜ 騰訊控股までが力を入れるのか?
     そうなれば 参入障壁がいよいよ低くなり,トヨタ, GM が参入するのは必至だろう。

  24. How Didi Chuxing plans to beat Uber in ride-hailing race
    滴滴出行が 配車レースで Uber を負かす計画
    Financial Times,2018/03/09
    By Yuan Yang & Sherry Fei Ju (北京)
    中国企業は,本国市場からアメリカのライバルを追い払い,今や 国境の向こうを見る。
    滴滴出行は最近 Uber に追いつき,世界で最も評価の高い
    スタートアップ企業となった。今では 世界への拡大を見据える。
    FT montage | Bloomberg)
    北京のタクシー運転手 Su Donghu は,現在 滴滴出行と呼ばれている中国の配車企業が 2012 年に始まった頃を思い出す。
     当時 滴滴打車 と呼ばれていた会社は,運転手を猛烈にリクルートすることで知られていた。会社のスタッフは タクシー乗り場で客待ちをする彼らのところへやってきて,温かい飲み物などをタダで与え,彼らにアプリをダウンロードさせ,プラットフォームから客を奪い始めた。
     Su は,タクシーを巡って 客同士が争うのをよく見た ── タクシー運転手の力がとても強かった。あれから まだ6年なのに,滴滴出行のアプリは強力になり,会社は Su の労働日まで 指図するようになった。"今では,路肩でタクシーを呼び止める人は誰もいない。スマートフォンを使っていない年寄りだけだ。" … と彼は言う。
     滴滴出行は,中国で独占的地位を確立した。同社は,4.50 億人の登録利用者を持ち ── この数字は,中国のモバイル・インターネット利用者数の半分を超える ── 2,100 万人の運転手をかかえ, 1日当たり 2,500 万回の乗車があると言う。これに比べると,中国全土の免許を持つタクシー運転手の数は,ざっと 260 万人だと政府は言う。
    "今では 路肩でタクシーを呼び止める人は
    誰もいない。スマートフォンを使わない
    年寄りだけだ。"

     Su Donghu, 北京のタクシー運転手
    いま 滴滴出行は,Goldman Sachs が 2030 年までに8倍増の $2,850 億に伸びると推定する世界の配車市場を征服しようと,アメリカのライバル Uberとレース中である;一連の揉め事の後でイメージの修復を図るシリコンバレーの会社の一時の弱さに 付け込むチャンスを感じている。
     滴滴出行がこの作戦で動くのを支える大きな支援者は,日本のテック・コングロマリット SoftBank である。SoftBank は Uber の筆頭株主でもあり,その他 シンガポールの Grab とインドの Ola を含めて,世界中の わんさかある配車企業の権益を握る。
    滴滴出行が Uber を抜く
    両社の推定時価総額 (10 億ドル単位)
     滴滴出行は,世界で最も評価の高いスタートアップ企業 Uber を既に超えた。昨年12月時点の評価額は $560 億だったが,Uber は最近の資金調達ラウンドで $480 億に評価された。
     ところが,そのリーチの広さと豊かな軍資金にも拘わらず,滴滴出行は 収益が "非常に低い" と言う;しかも 中期的にこの方針を変える計画は無いと言う。
     同社は,未来の自律タクシー部隊を創設することを長期計画として賭けている:既に 数ヵ月間 公道での自動運転車のテストを行なっており,木曜日には 北京の自動車メーカー BAIC に車の設計の支援を行なうと発表した。
     "当社の主たる競争相手の Uber が,非常に活発に外国へ進出していることは誰もが知っている。" … と滴滴出行の Bob Zhang CTO が Financial Times のインタビューで言った。"もしも当社が 急いで進まなければ,機会の窓が閉じかねない。"
     滴滴出行は,既に1回 Uber を負かしている:2016 年には,シリコンバレーの会社の中国部門を買収し,引き換えに 17.7% の権益を Uber に渡した。これにより,配車巨人同士の間のカネ喰い虫だった争いに決着をつけた。
     アメリカの会社は,東南アジアの配車アプリ Grab とも同様の取り引きを結ぼうとしている;Grab も滴滴出行と SoftBank が支援している。
     ただし,Uber が欧州, アメリカ, ラテンアメリカに引きこもろうとするのに対して,滴滴出行はこれらの地域での活動を強化しつつある。
     中国企業は,そのため 4面戦略を用意している:有機的成長, 買収, 現地企業との提携 ── そして 多額のカネの絶えざる調達である。
    "当社の主たる競争相手の Uber が,
    非常に活発に外国へ進出していることは
    誰もが知っている。
    もしも当社が 急いで進まなければ,
    機会の窓が閉じかねない。"

    ── Bob Zhang,滴滴出行 最高技術責任者
    "もしも現地で適当なパートナーがあれば,当社は 資本, 技術, 製品, 経験を投入してその成功を助けるつもりだ。しかし 適当なパートナーが無ければ,当社 自身が参入する。" … と Zhang CTO は言う。
     滴滴出行は,(1) ラテンアメリカの新しい市場に注目している。同社は メキシコにオフィスを開設中であり,LinkedIn で営業マネージャ募集の広告をしている。これは,中国以外で滴滴出行が自社サービスを行なう初の事例であろう。
     "滴滴出行は,メキシコの Uber 幹部らに給料を2倍以上にすると声を掛けている。" … と北京大学の投資経営担当の Jeffrey Towson 教授が言う。教授は,滴滴出行の国際拡大計画を研究テーマにしている。"滴滴出行は, メキシコでの Uber との戦いに勝つためにカネを惜しまないように見える。"
     滴滴出行は,メキシコ計画について コメントを拒んだ。
     次に (2) 滴滴出行は,現地の配車アプリを買収するための軍資金づくりを行なっている;そのために 昨年12月に $40 億の資金を調達した。その上で,今年1月に初の外国買収を行なった:ブラジルで Uber 最大のライバル 99 を買収した。少数株式を取得してから間もなくのことだった。
     "滴滴出行の M&A 戦略を論じる際,グローバル化は重要なテーマである。" … とテック専門の投資銀行 華興資本 (China Renaissance Holdings) のトップ Jeremy Choy が言う。少数株式を買収に変える典型的な中国の戦略を説明して,Choy は "滴滴出行がほかでも同じことをやろうとしている可能性がある。" … と言う。
     (3) 同社は,世界 反-Uber 連合を結成しようと,世界5大陸にわたる配車企業との少数株式投資と提携により 世界ネットワークを既に建設した。滴滴出行は,北米では Lyft,インドでは Ola,東南アジアでは Grab,中東と北アフリカでは Careem,東欧では Taxify にそれぞれ投資した。
     滴滴出行の利用者は,滴滴出行のアプリから Lyft の配車を要求することができ,その反対も可能である。ただし この相互サービスは,一時停止している。滴滴出行は,Lyft と "さらに深い提携を探っている" と言うが,その計画を明らかにしなかった。
     滴滴出行は,現地のタクシー会社との提携が,規制当局から支援を勝ち取る有用な方法だと考える。特に,ブラジルのように規制のテンションが高い重要な市場では なおさらである。
     滴滴出行は,香港と台湾でも現地のフランチャイズを通じてタクシー配車を提供している。さらに先月,日本でも SoftBank との JV を立ち上げ,地元のタクシー会社が 滴滴出行の技術を利用する配車サービスを試行している。
     (4) 滴滴出行は,過去2年間に $170 億超を調達し,更なる買収のために ざっと $120 億の現金を手許に残している。これに対し Uber は今年1月に SoftBank が率いる取り引きの後 約 $57.5 億を所有する。
     それでも,滴滴出行は大きな苦難に晒されている。まず,資金のたっぷりある中国のライバルが 立ち上げにギアを上げている。出前配達とレストラン予約で知られた [アリババのライバル騰訊控股をバックに持つ] 美団-大衆点評 (Meituan-Dianping) が,独自の配車サービスを立ち上げ間近である。同社は 中国のテック巨人 騰訊控股から昨年 10 月に $40 億を調達した。市場リサーチ会社 CB Insights によれば,その評価は $300 億である。
     美団-大衆点評の戦略は,同社プラットフォームを利用する運転手への課金が少ないことである。北京の運転手たちは,滴滴出行 が運賃の 20% をカットすると言う。美団-大衆点評は,同社に参加する最初の 50,000 人の運転手については,最初の3ヵ月間 水揚げをそのまま運転手に取らせる。
     滴滴出行の初回の大型資金調達ラウンドに投資しない選択をした ベンチャー資本会社 Gobi Partners の Ken Xu は,リーチ [勢力範囲] を確立するために利益を犠牲にする決断は 危ないと言う。
     "滴滴出行の収益性の問題は,依然として 競合の脅威による。" … と彼は言う。"今の中国では,常に 多くの人が市場に参入したがる。滴滴出行の料金では利益が出ない。その上 新規参入者が料金を引き下げる。"
     滴滴出行の運転手は,おそらく 競合を歓迎するだろう:多くの人が,Uber との合併以後,会社の払う助成金の減少と 運転手への課金が増えたことに不平を唱える。
     北京のタクシー運転手は,かつて かなりの助成金を受け取っていたが,今では 助成金がほとんど焼失した。相乗りの運転手は かつて 30 回の運行で 600 元をもらえたが,今では 100 元である。収入の低下は ── 政府が大都市で 滴滴出行の中核である出稼ぎ労働者に取り締まりをしていることも相俟って ── プラットフォームから運転手の流出を招いた。
     巨額の預金があるとは言え,滴滴出行の配車戦争は,とんでもなく高くつく。Uber は,同社の中国営業が1年に $10 億を喰うと言った。
     "SoftBank は,Uber と 滴滴出行に取締役を送り込むことにより,価値を滅ぼす競合を防ごうと試みるだろう。" … と リサーチ会社 Bernstein のアナリスト Chris Lane が言う。
     だが タクシー運転手 Su にとって,未来は自明である:彼は,バス運転手として再教育を受ける計画である ── 滴滴出行がまだ破壊していない業界である。
    SoftBank:配車のキングメーカーとなるか
     配車の2巨人の背後には,共通の投資家2人がいる:日本の SoftBank と中国の騰訊控股である。
     SoftBank は,Ola と Grab のような広汎な配車企業の権益を多年にわたり握っている。SoftBank の Masayoshi Son CEO は 最近,"当社グループは,世界最大の交通システムを握る" … と豪語し, "広範な交通システムの「プラットフォーマー」になりたい" … と言った。
     騰訊控股は,滴滴出行の長期的支援者であり,SoftBank が率いて最近 Uber に投資したグループの一員である。
     だが 両社は,ゼロ・サム助成金戦争への資金供給に嵌っているようだ。SoftBank が世界市場を再編したいと望んでいる印として,SoftBank の Rajeev Misra 取締役は Financial Times に 今年1月,Uber が本質的でない市場で赤字を減らし,アメリカ, 欧州, ラテンアメリカのような重要な地域に的を絞ることを望む … と言った。
     短い時間の間に SoftBank が 配車企業の 先導的投資家になったので,このセクターのキングメーカーになり,プラットフォーム間の親密な協力をふやし,最終的には 滴滴出行とその最大のライバルの間の合併を手配することになるだろう。
     "世界の配車事業の統合は,絶えざる競合より 投資家たちにとって好ましい。" … と 北京に拠点を置く投資銀行 Chanson & Co の支配人 Shen Meng が言う。
      『中国配車巨人 滴滴出行が,ブラジルでの Uber のライバル 99 を買収することで合意』 (New York Times,2018/01/03)
      ── このとき,SoftBank は 99 の持ち株 $1億相当を手放した (利益確定した) らしい。
      『中国 タクシー呼び出し大手 滴滴出行が $40 億を調達する』 (Recode,2017/12/20)
      ── この $40 億の名目は AI などのため (自動運転を含む) とされていたが,実はそのうちの $6 億は 99 への投資で SoftBank を追い出すためだった?
    滴滴出行は, ・・・ 2,100 万人の運転手をかかえ, 1日当たり 2,500 万回の乗車がある
      ・・・ つまり 職業的運転手は ほとんどいない?(笑) 平均すると 1人が1日に1回だけ稼ぐ。
    ──────
     これを読むと,苦笑を禁じ得ない (笑)。
     社長さんが言う「同志的結合」とか「群戦略」なんていう思想はカケラも無い。
      おまけに4面戦略の1つが 多額のカネの絶えざる調達 … なんだからね。
     これからも "絶えざる調達" を期待され続けるだろう。2年ごとに1兆円くらい。
     もちろん,まだまだ赤字。赤字を埋めるためには SoftBank という金蔓を手放せない。
     ほんとに ばかばかしいよね (笑)。何のために両社にカネを貢いでいるんだか ・・・ 。
     考えられる理由は,たった1つ。(それは ? ここには到底 死んでも書けない)
     (4) 滴滴出行は,過去2年間に $170 億超を調達し,更なる買収のために ざっと $120 億の現金を手許に残している。これに対し Uber は今年1月に SoftBank が率いる取り引きの後 約 $57.5 億を所有する。
     こんなカネ余り企業に,わざわざ 金利のつくカネを振り込むバカは,世界中で SoftBank だけだろう。
    ──────
     やっぱり,配車事業は利益が出ないんだ。SoftBank は 世界中の配車企業の赤字請負係になった。
     設備投資はゼロ。人件費もゼロ。極端なことを言えば,インタネット接続さえできれば,個人でも開業できる。
     今の中国では,常に 多くの人が市場に参入したがる。滴滴出行の料金では利益が出ない。
     巨額の預金があるとは言え,滴滴出行の配車戦争は,とんでもなく高くつく。Uber は,同社の中国営業が1年に $10 億を喰うと言った。

    ──────
     そうなんですよね。騰訊控股について ほとんどの報道が触れていない。
     アリババの宿敵と SoftBank が協力して問題は無いのか?
     騰訊控股は,滴滴出行の長期的支援者であり,SoftBank が率いて最近 Uber に投資したグループの一員である。

  25. SoftBank's Got a Ticket to Ride. Uber's Stranded
    SoftBank は 乗車切符を手に入れる;Uber は座礁する。
    Bloomberg,2018/03/08 @15:58 JST
    By Andy Mukherjee
    鍵を握る投資家が市場の支配を動かしたことにより,めでたしめでたしとは行かなかった。
    あなたの会社の筆頭株主が もしもライバル企業を支援して,しかも あなたに市場の一部を引き渡すよう助言した場合,あなたは その意図を疑うに違いない。
     追放された 創業家 Travis Kalanick の Benchmark Capital とのトラブルが漸く終わったばかりのとき,Uber Technologies にとって絶対にいやなのは,経営陣と投資家との間の新たな火種である。
     だが,東南アジア市場の一部営業を Grab に売却して それと引き換えにライバルの 20% の権益を受け取ることは,戦略的撤退とは言えない。これは,ヒマラヤ山脈級の大失敗である (Y. Lee と E. Newcom による Bloomberg News [↓] は木曜日,Grab と Uber が今週か来週に この協定を結ぶと伝えた)
    さよなら,東南アジア
    Uber は,東南アジアの一部の市場を Grab に売却中であり,
    引き換えに Grab の 20% を受け取る (Bloomberg News)。
    Grab は,東南アジア No. 1 の配車アプリである。
     新任の Dara Khosrowshahi CEO の下で Uber は, 15% の持ち主 SoftBank の (アメリカ, 欧州, ラテンアメリカ, オーストラリアという重要な市場に集中せよとの) 助言をきっぱりと断るべきであった。中国を既に滴滴出行に引き渡してしまった上に,東南アジアまで放棄すれば,おそらく インドでも日本でも 負ける前兆となろう ── この打撃から配車のパイオニアは,絶対に回復できないだろう。
     SoftBank が率いるコンソーシアムは,今年 $93 億の取り引きで Uber の権益を取得した。その一部 $12.5 億は Uber に直接に注入され,残りが株主に払われた。 この取り決めは 眉を上げた;なぜなら ほんの数ヵ月前に Grab が $20 億を SoftBank と 滴滴出行から調達し, 反-Uber 連合を固めていたからである (SoftBank は, Grab のそれ以前の資金調達ラウンドにも参加している)。
     SoftBank の Uber 投資の背後の論理は,今や 明白になりつつある。アメリカの Uber がシェアの低下により赤字の垂れ流しをふやす前に撤退させることにより,SoftBank の Masayoshi Son は,結局は勝者総取りとなる配車事業のチャンピオンとして なるべく早く誕生後6歳の Grab が浮上するよう確保したのである。Uber にとって 黒字への早道は,来年に予定されている IPO のためにカンフル注射を受けることであった。
     この両方の結果 ["カンフル注射" と東南アジア撤退の受け入れ?] は,Son を喜ばせたであろう。1つには,東南アジアにタオルを投げ入れるという Son の決定は,インドでの Uber のライバル Ola を勇気づけるだろう ── インドでも SoftBank は Ola の筆頭株主である。
     つい先月,Uber の CEO はインドに行き,自分の目標は 両社が正面衝突の争いを続けている アジア最大の市場に留まり,覇権を求めることだと言った。ところが ニューデリーでの同じ記者会見で Khosrowshahi は,東南アジアに "積極的に" 投資して,赤字の見込みだと言った。片方の約束を破った以上,他方もどうなるかは分からない。
     こういう状況の下で,ComfortDelgro Corp はどうなるだろうか? シンガポールの No. 1 タクシー会社は,昨年 12 月に Uber のレンタカー部門の 51% を 資産価値の 10% 割り引きで取得した。この取り引きにより,Comfort タクシーは Uber のアプリに載るようになった。まだ始まったばかりであるが,地元メディアの報道は,タクシー運転手が タクシーのメーター料金に比べて Uber の運賃を少しも喜んでいないことを示す。ComfortDelgro の株価は, Uber との提携協議が発表された 8月から −13% 下がった。
    Uber Discomfort (Uber は不愉快)
    Uber と提携したシンガポールのタクシー会社 ComfortDelgro の株価
     このような落胆は,増大すると予想される。ただし, 東南アジア部門を売却・整理する決定が都市国家からの退場を意味するのかどうかは,依然として不明である。シンガポールには Uber のアジア本社があるにも拘わらず,Khosrowshahi は 最初のアジア訪問で ここをパスした。
     金融と観光の重要なセンターをパスしたことは, 最初のエラーを増幅する。インドネシアから 300 万人, タイから 50 万人のシンガポールへの訪問客は,決まって Grab の利用者であり,Uber のアプリは 彼らの電話には乗っていない。
     したがって,シンガポールでの没落は近い。そして それは,筆者がこれまで書いてきたように,Uber 世界帝国の終わりの始まりであろう。Ola は,オーストラリアで Uber と戦う;日本の $160 億タクシー市場さえ ── Uber はタクシー会社と提携することにより大きくなろうとしているが ── 出資者が同じであることは言うに及ばず,似たような考えを持つ滴滴出行との戦いのもう1つの劇場になりかねない。
     Masa Son の乗車は,間違いなく 快適であろう。しかし,世界で最も人口の多い急成長する地域 アジアにそもそも縁の無い Uber は,結局のところ 挫折を知るだろう。
      This column does not necessarily reflect the opinion of Bloomberg LP and its owners. SoftBank had participated in Grab's previous funding rounds, too.
     ComfortDelGro
     ComfortDelGro は,世界で2番目に大きなシンガポールの交通会社であり,バス, 鉄道, タクシー, レンタカーを営業する。2003年にシンガポールの Confort Group と DelGro Corporation が統合し誕生した。
     本部はシンガポールにあり,シンガポールの他に中国, イギリス, アイルランド, オーストラリア, ベトナム, マレーシアでも企業活動を行なっている。
    当然のことながら,ここには "群戦略", "同志的結合", "情報革命" などのキーワードは出てこない。
     あれは,株主を欺くための "日替わりメニュー" である。5月の決算では,また新しいキーワードが登場するだろう。
     配車王になったものの,何かの方針を行きわたらせることはできない。
     それには 人材が必要だ。東京本社から1人も派遣できなければ,"群戦略" も "同志的結合" も実現のしようが無い。空虚な言葉である。
     現実は,SoftBank から注入された軍資金を 激しい競争に投入する。
     結局,配車で 毎年 数千億円の赤字要因が発生すると思われる。

  26. Grab Close to Deal for Uber’s Southeast Asia Business
    Grab が,Uber の東南アジア事業を買収まぢかである。
    Bloomberg,2018/03/08 @16:36 JST
    By Yoolim Lee & Eric Newcomer
    事情に詳しい複数の人によれば,東南アジアで主力の配車サービス企業 Grab は, Uber Technologies の東南アジア事業を買収する取り引きの最終決定が間近い。
    提案されている合意条件によれば,Grab は東南アジアの一部市場での Uber の営業を買い取り,Uber は Grab の権益を受け取る … と 取り引きが公表されていないことを理由に匿名を条件に上記の人たちが語った。この取り引きパターンは,Uber が 2016 年に中国で滴滴出行と結んだものと似ており,そのときには サンフランシスコに拠点を置く会社が 現地の営業を売却し,引き換えに 滴滴出行の株式を受け取った。現在検討されているシナリオでは,Uber が受け取る Grab の権益は,10% 台の高い数字 あるいは 20% に乗る … と1人が言う。
     この協議に詳しい複数の人によれば,SoftBank を含む現在の支援者 ならびに 新たに資本を追加する新規投資家と Grab は個別に協議を行なってきた。CBInsights によれば,Grab は 最近 $60 億に評価されている。現在の協議は 依然として瓦解することもあり得るし,条件もタイミングも変わり得る。Grab と Uber は,コメントを拒んだ。
    Anthony Tan (© Ore Huiying | Bloomberg)
     Grab の共同創業家 Anthony Tan CEO は,"東南アジアで急成長する配車市場で覇権を握ろうと互いに傷つけあう戦いに,この講和条約が終止符を打つ" … と述べた。両社はこれまで,人口 6.4 億人の郷土である東南アジアで できるだけ多くの都市の支配を奪おうと,激しい争いに嵌っている。
     Uber の新しい CEO Dara Khosrowshahi は,来年の株式上場を控えて 同社の財務のお化粧に力を入れている。東南アジアのような市場からの撤退は, 9年前に設立して以来 $107 億ものカネを燃焼させてきた会社にとって 利益の底上げになるだろう。Khosrowshahi は 先月のアジア旅行を通じて,日本とインドのような重要な市場にコミットするとの合図を出した。
     "私は,Grab がうまくやるだろうと 大いに信頼している。" … とシンガポールの Nanyang Technological University の Zafar Momin 准教授が言う。"彼らは,現地の事情をよく理解している。Uber は,世界の他の地域でやっていることを何でも コピーしているだけだ。ほんの少し手を加えているが。"
     日本の SoftBank は,今年1月に Uber の筆頭株主になった。そして SoftBank は ポートフォリオの中の配車スタートアップ企業を互いに競争させて その数を減らす … という 憶測に火を点けた。SoftBank は,中国の 滴滴出行と インドで Uber と覇権を争っている Ola の権益も持っている。
     今年1月,Uber 取締役でもある SoftBank 幹部 Rajeev Misra は Financial Times とのインタビューで,Uber は アメリカ, 欧州, ラテンアメリカ, オーストラリアのような中核市場に集中することを示唆した。しかし,Khosrowshahi は,アジアから完全撤退するという考えを却下した。
     彼は 2月の旅行の最初の訪問地日本で,タクシー企業と提携することにより シェアをリダブル [4倍増] すると述べた。
     "私は 日本に信じがたいほどの機会を見た。日本のチームに なぜ 当社の日本事業をもっと大きくできないのかと訊ねて初めて,日本へのアプローチの当社の歴史を学んだ。はっきり言って それは うまく行かないアプローチだった。" … と Khosrowshahi は先月 東京で言った。"提携を考える必要があることは,私の目には明らかだ。特に 日本のタクシー業界との提携だ。"
     これまで モバイルでのアプリを 8,100 万回ダウンロードした Grab は,シンガポール, インドネシア, フィリピン, マレーシア, タイ, ベトナム, ミャンマー, カンボジアの 178 都市でサービスを提供する。
    そぅでしたか。Uber が設立以来 累積赤字が $107 億 (1.1 兆円)!
     これを埋めるために 外部投資家が継続して資金注入する必要がある。そのおカネで生き延びている。
     銀行にはおカネがたっぷりあるらしい。
     今後は SoftBank が毎年 カンフル注射する必要があるだろう。
       だって,SoftBank が支援しちゃったから,他の企業はもうカネを出さないだろう。
     だから,上場を急ぐわけ。SoftBank の言いなりになって,SoftBank に頼らないために。
    ──────
    彼らは,現地の事情をよく理解している。Uber は,世界の他の地域でやっていることを何でも コピーしているだけだ。ほんの少し手を加えているが。"
     これは 面白い!
     これを敷衍すると,Uber は北米でしか成功できない。
     配車事業は,世界の各地でそれぞれの企業が成功するもので,全体をまとめることはあり得ない。
     おそらく,タクシー事業が 文化と絡んでいるからだろう。
     Grab の場合は 自動三輪車が成功しているが,アメリカではそんなものは (みっともなくて?) はやらない。
     少なくとも,"自動運転タクシーが始まれば,運転手不要で 大儲け" というのは,単純なストーリーだろう。
    ──────
     "提携を考える必要があることは,私の目には明らかだ。特に 日本のタクシー業界との提携だ。"
     ここは,まったく理解できない。実際,日本のタクシー業界と提携しているらしい。でも これは Uber にとって "自滅の道" である。白タクこそが利益を上げる道である (それでも アメリカでは赤字である)。既存のタクシー業界を破壊して その利益を奪うことこそ Uber の哲学である。

  27. Uber founder Travis Kalanick started his own fund to invest in companies that focus on ‘large-scale job creation’
    Uber 創業家 Travis Kalanick が,"大規模な雇用創出" に力を入れる企業に投資する基金を 自分で始めた。
    Recode,2018/03/07 @07:17 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    中国とインドの 不動産, E-コマース, 技術革新に投資する予定である。
     Travis Kalanick は水曜日,自分の投資基金を立ち上げていると発表した。Uber の前 CEO は,2017 年6月の追放以来 最近になって漸く公に姿を見せるようになったが,この数ヵ月間 自分の次の仕事を何にしようか探していた … と書いた。
     そのために,営利 および 非営利の両方の企業に個人的投資をしてきたが,この新しい基金を作り,これらのベンチャー企業を運営することにした。Kalanick によれば,この基金の名前は "10100" であり,中国とインドの E-コマース, 不動産, および 新興テック企業に投資を集中する。
     言い換えると Kalanick は,少なくとも次のフルタイムの仕事が見つかるまで,複数の企業に出資して取締役の座に座ることにより忙しさを保つ。Uber の持ち株の 1/3 弱を SoftBank Capital に売却した Kalanick は確かに金銭的余裕がある;この売却は,$14 億弱を Kalanick に もたらした。
     悪名高い喧嘩好きの 前 Uber 経営者は,既に 少なくとも2つの取締役会にポストを持つ;Uber のほかに,自分がエンジェル投資家をしている 医療スタートアップ Kareo である。
     多くの人は,Kalanick が Uber CEO を辞職した後も復権できるのではないかとか,取締役として実質的に会社を切り回し続けるのではないかと疑念を抱く。しかし,SoftBank との取り引きは 企業統治の改革を伴うので,彼の投票権は削減された。現在では,持ち株の数が直接に 発言権に結び付く。
     この記事の掲載時に Kalanick に連絡を取ったが,返事は無かった。
     投票権が減ったから,復権はあり得ない
      ・・・ そうですかね?(笑) 甘いんじゃないの?
     じゃぁ,SoftBank の代表として派遣された2名の "へっぽこ取締役さんたち" は,実質的にどれだけ発言権があるんでしょうか?
     Rajeev Misra 取締役は,東南アジアとインドの事業をそれぞれ Grab と Ola に売却する意向を発言して,Dara CEO に迷惑を掛けている。
     取締役会での発言権は確かに 株数が重要だが,その知識・見識・履歴 などによっても大きく変わる。配車事業について全く無知の2人に ほとんど発言権は無いだろう。特に Rajeev Misra は味噌をつけちゃったしね。
     やはり,今の Uber のような事業形態を考案して世界的事業に育てた Kalanick の発言権は大きいはずだし,従業員にも "信者" さんが多いはずである。さもなければ ここまでの規模にはできなかったはずである。
     創業者の発言権は,何と言ってもべらぼ~~~~に 大きいのである。これは 洋の東西を問わない。

  28. Pennsylvania is suing Uber for up to $13.5 million in penalties for failing to disclose its data breach quickly enough
    ペンシルベニア州が,データ漏洩を速やかに開示することを怠った Uber に最大 $0.135 億の罰金を求めて提訴する。
    Recode,2018/03/05 @01:59 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    ペンシルベニア州の Josh Shapiro 司法長官は,同社が ペンシルベニア州の個人情報漏洩通知法に違反したと言う。
     ペンシルベニア州の Josh Shapiro 司法長官は,世界中の 600,000 人の運転手に影響を与えたデータ漏洩から同社が被害を被ったことを 合理的時間内に開示しなかった Uber を提訴している。
     Shapiro 長官は,したがって,データ・ハッキングにより影響を受けた消費者に合理的時間内 ── いくらであるかは正確には不明であるが ── に会社が通知することを求める州法に Uber が違反したと申し立てる。 2016 年に 13,500 人のペンシルベニア州の運転手の姓と名と運転免許証番号がハッカーによりアクセスされた … と Shapiro 長官は言う。Uber は,この漏洩を 2017 年11月まで開示しなかった。
     ハッキングにより影響された消費者に通知を怠ったことに対する罰金は,消費者1人当たり $1,000 であり,Uber は 最大 $0.135 億の罰金を科される。これは 配車企業にとって 大した金額ではない。しかしながら これは,同社の過去のトップの亡霊が 新しい経営チームの周りにいまだに出没していることの明白な証拠である。
     アルファベットから訴えられた自動運転に関する訴訟を漸く和解したものの,Uber の新任の 最高法務責任者 Tony West は,相続した数多くの法律問題と格闘を続ける。Uber が今後2年での上場を準備する中,同社に向けられた多くの訴訟にボタンを掛けることは,これまでにも増して重要である。
     "Uber はペンシルベニア州の法律に違反して,この大量データ漏洩を当州の住民にタイムリーに通知することを怠った。" … と Shapiro 長官は声明で言った。"影響を受けた消費者に合理的時間内に通知する代りに,Uber はこの事件を1年以上 隠蔽した ── しかも 実際には,ハッカーらにカネを払って,盗んだデータを消去させ, 口封じをした。これは,まさに著しく正義に反する 会社ぐるみの不正行為であり,私は 彼らに責任を取らせ,ペンシルベニア州民のために回復させるため訴えを起こす。"
     West は,この提訴に驚いたと言い,Shapiro 長官とは "数週間前" に 個人的に連絡を取ったと言う。
     Uber は,2016 年に約 5,700 万人の利用者に ハッカーが個人データ ── 氏名, メール・アドレス, 電話番号, 運転免許証番号を含む ── にアクセスして攻撃されたことを通知しなかった。2017 年11月に Dara Khosrowshahi CEO が公表した。
     データ漏洩を知った Khosrowshahi は,会社がこの事件をどう処理したかを調査し,この処理に係わった Uber の最高セキュリティ責任者 Joe Sullivan を含む2名を解雇した。
     2016 年に漏洩を知った会社は,これを利用者に通知する代りに,ハッカーらに $100,000 を払い,彼らが取得したデータを削除させ,口を封じた。
     今回の訴訟で ペンシルベニア州は,同社の 最高情報責任者 John Flynn の最近の上院通商科学運輸委員会での証言に基づき,カネの支払いが バグ・バウンティ [ソフトウェアのバグを見つけると報奨金を支払う] ・プログラムの一環だったという Uber の説明を疑問視している。
     Uber には,この訴訟で何について特に反論しようとしているかを質問したが,いまだに返事が無い。
     Recode が最初にお伝えしたように,Khosrowshahi がこれまでに起こったことを利用者に通知し,公表してから数日以内に,少なくとも5つの州が Uber のデータ漏洩処理について調査を立ち上げた。当時,ペンシルベニア州は コメントの要請に応じなかった。
     シカゴ市も,2017 年11月に,データ漏洩の開示を怠ったことに対し Uber に訴訟を提起した。シカゴは,公開情報開示条例に1日違反するごとに Uber に $10,000 の罰金を科するよう判事に要求した。
      Uber は ペンシルバニア州で,最大 $0.135 億の罰金を科される。これは 配車企業にとって 大した金額ではない。しかしながら これは,同社の過去のトップの亡霊が 新しい経営チームの周りにいまだに出没していることの明白な証拠である。
     アメリカには 50 州あるからね。その中にも沢山の都市がある。
     イリノイ州のシカゴ市は 1年分なら $0.0365 億。
     ペンシルベニア州の司法長官が訴訟を起こせば,他の州の司法長官も黙っていられないだろう。
     仮に,罰金が最大 $10 億になっても,SoftBank に泣きつけば 払ってもらえるだろう (笑)。だから 支払い能力の問題は無い。
     しかし,この訴訟がいくつもの州に広がれば どうなるか?
     これを鎮めるだけの力量が経営者に求められる。SoftBank が派遣した2名の取締役とは無縁の話である。

  29. Uber Battles Ride-Sharing Startups in SoftBank ‘Family’
    Uber は,"SoftBank ファミリー" のライドシェア・スタートアップ企業と戦う
    The Wall Street Journal,2018/03/04
    By Newley Purnell & Mamumi Negishi
    世界最大のテック投資家 SoftBank Group Corp は,約 $200 億を世界中のライドシェア企業に注ぎ込んだ。
    その中には,Uber Technologies も含まれる。
    今や これらの企業は,少なくとも SoftBank のカネの一部を,互いに戦うために使っている。
     日本では,SoftBank から約 $100 億の投資を受け入れて 日本市場に参入を計画中の滴滴出行との戦いに Uber がギアを上げている。
     インドでは,SoftBank が約 30% の権益を握り,取締役1名を派遣する地元のチャンピオン ANI Technologies の Ola の攻勢を Uber は防戦中である。
     SoftBank は 今年,Uber の 15% の権益に $77 億を投資した。
     Uber と Ola は,今年2月に Ola が営業を始めたオーストラリアでも白兵戦を繰り広げている。
     東南アジアでは,Uber はシンガポールの Grab Inc に後れを取っている。Grab は,2016 年に SoftBank が $7.50 億を投資した後,SoftBank から総裁を受け入れた。
     "もしも SoftBank と共同で事業をするつもりなら,ときには 彼らが [自分の] 競争相手と事業をすることに慣れなければいけない。" … と Uber の Dara Khosrowshahi CEO は 2月の東京訪問中に提携相手との会談で語った。SoftBank の目標は,Khosrowshahi が "SoftBank ファミリー" と呼ぶものの中で これら投資先のスタートアップ企業が互いに協力してくれることである。
     SoftBank 創業家 Masayoshi Son の考えに詳しい複数の人によれば,この考えは,世界が自動運転車へと動く中,これらの企業が 研究・開発で協力し,JV を作ることである。
     もしも Uber, 滴滴出行, Grab が互いに話し合い,合意に到るならば,そして それにより株主価値を上げるならば,我々は それを検討するつもりだ。" … と Son は最近のニュース会見で言った。"ただし,我々は どんなことについても強制するつもりはない。"
     ベンチャー資本家は通常,投資先の企業が互いに競合しないよう注意を払うものである;さもないと互いの不信や利益相反の懸念を引き起こすからである。さらに,互いに売り上げを喰い合うような企業同士に投資するのは 無意味なことだ … というのが伝統的な考えである。
     SoftBank は これらの規則を破っている。その一因は,SoftBank が余りにも沢山のカネを持っているために,"市場の再編を狙う 非上場企業買収会社 (private-equity buyout firm)" のようだからである … とシンガポールに拠点を置くベンチャー資本会社 Golden Gate Ventures の創業家 Vinnie Lauria が言う。
       1981 年に Son が創立した SoftBank は,ソフトウェア配給業者として出発し,1,300 以上の会社に投資した。同社の最も有名な投資は,2000 年の中国 E-コマース アリババ集団への $0.02 億の賭けであり,今では約 $1,400 億に評価されている。
     アメリカの無線キャリア Sprint Corp と英国のチップ設計会社 ARM Holdings の大型買収で大きな負債を SoftBank が抱えた状況で,Son は昨年 外部投資家を頼り,$920 億 Vision Fund を立ち上げた。これは世界最大のテック基金である。
     この巨大な軍資金は SoftBank に,オンデマンド輸送のような業界へ長期の世界的な賭けを張る柔軟性を与えた。SoftBank 幹部らは,配車投資先企業の間の内部対立の期間を (一時的であると見なせるならば) 許容するつもりであり,大型の買収については 10 年以上待つ用意があると言う。
     最終的には,配車企業は各地域で1社だけが支配する … と SoftBank 幹部らは言う。そして,各市場の大きさを考えれば,これらの企業がさらに拡大する必要を感じることは無いだろう … と言う。もちろん,さらに協力してくれるなら,それでもよいと言う。
     けれども,SoftBank が投資先の企業の戦略に及ぼす影響は限られている:SoftBank が所有するのは少数株式であり。取締役会で押さえているのは 1または 2ポストに過ぎない。Uber, 滴滴出行, および その他のスタートアップ企業にとっては,SoftBank からもらった余分のカネは,世界への成長を探る中で 戦いを続行するための火力の増強を意味する。
     "SoftBank には それなりの意見があるだろうが,彼らの意見が 唯一の意見ではない。" … と Uber の Khosrowshahi が最近,ニューデリーで記者団との会見で言った。ただし,SoftBank が Uber を競争相手と合併させようとしているかにについては,コメントを拒んだ。
     世界全体を覆う配車の波が 厳しい規制のために未だ押し寄せていない数少ない大規模市場の1つである日本では,SoftBank が望む家族的連帯は 既に擦り切れつつある。SoftBank が支援する滴滴出行と Uber は,日本市場を奪おうと似たような戦略を思いつき,戦いの場を設定した。
     Uber は 目下 日本で UberEats とタクシー配車サービスを行なっている。今年2月,滴滴出行は SoftBank と JV を設立して 市場に参入し,(普通車ではなく) 免許を持つタクシーと乗客とをつなぐアプリを導入すると発表した。この動きは,日本の取り締まり当局が (日本を訪問する年間何百万人もの中国人観光客を運ぶために浮上した中国語を話す運転手のグレイ・マーケットに) 抱く懸念に対応するものである。
     他方 Khosrowshahi は,日本の $160 億タクシー業界で良い機会を求めるために 方針を変更するつもりだと言った。"明らかに,我々は 異なる事業のやり方を必要とする" ── すなわち ── "タクシー業界との提携だ" … と 彼は2月に東京のイベントで言った。
     インドでは,SoftBank が Ola を独立企業として存続させるのではなく,Uber との事業統合を押し付けるのではないかと Ola が憂慮している … と事情に詳しい複数の人が言う。Ola は,Uber がインドに上陸する2年前の 2011 年に創立された。SoftBank は 昨年,中国の騰訊控股が率いる Ola への $11 億 資金調達に参加した。
     他方 東南アジアで Uber は,SoftBank が支援する別の敵 Grab Inc と覇権を争っている。Grab は昨年,SoftBank と滴滴出行が率いる投資ラウンドで $25 億を調達したと発表した。2012 年に設立された Grab は東南アジアの 178 都市で営業を行なっている。Uber は 2013 年に東南アジアに参入し,60 以上の都市で営業を行なっていると Uber のスポークスマンが言う。
     "競合を抑制するのは 難しいことが分かり始めている。" … と 自動運転技術に特化したイスラエルのベンチャー資本 Maniv Mobility のパートナー Olaf Sakkers が言う。"料金戦争をしている双方に資金提供するのは,高くつくだろう。"
      Phred Dvorak in Tokyo contributed to this article.
      Write to Newley Purnell at newley.purnell @wsj.com and Mayumi Negishi at mayumi.negishi@wsj.com
    SoftBank の投資の方針について書かれた長編記事である。
     投資戦略が 明確に定まっていないことは明らかである。
     社長の そのときどきの思い付き・(直観ではなくて) 直感により巨額の投資がなされている (ご本人が そう 明言している)。
     特に,SoftBank はアリババ無しには生きていけない (笑) にも拘わらず騰訊控股の率いる Ola への $11 億投資に参加した などは,僅かな利益に目が眩んでいることの証拠であり,危険である。
     二兎を追う者は一兎をも得ず。
     SoftBank の失敗は,インドの E-コマースがハッキリしている。
     最初に,鳴り物入りで (Nikesh Arora に唆されて) Snapdeal に投資した。
     今では Snapdeal のニュースはほとんど無い。倒産寸前だろう。なにしろ SoftBank に資金供給を絶たれたので,生き残りのために資産の切り売りを始めた。資産の一部を 取得価格の 10% で (90% ディスカウントで) 売却というニュースもある [こういう企業は,赤字を外部資金に埋めてもらわないと,途端に行き詰まる]
     この Snapdeal を Flipkart に合併させようとしたが Snapdeal 経営陣に拒否された。"少数株式" のためである。
     そこで Snapdel を放置して (こともあろうに アリババの宿敵 騰訊控股が投資していた) Flipkart に 投資した。今では,この Flipkart が Amazon India に追い上げられている。
     最終的には,配車企業は各地域で1社だけが支配する … と SoftBank 幹部らは言う。
     最終的には インドの E-コマースも 1社だけ (Amazon India) が支配するだろう (笑)
     結局 インドの E-コマースへの SoftBank の投資は全滅になり,巨額の減損処理を 将来迫られるだろう。
     そもそも 当初の計画は何だったのか?「直感」投資なんてやめて,直観投資が必要だ。

  30. Uber CEO Touts ‘Great’ Talks With Toyota CEO on Autonomous Cars
    Uber CEO は,自律運転車で Toyota CEO との "偉大な" 協議を自慢する
    Bloomberg,2018/02/22 (木) @18:20 JST
    By Yuji Nakamura & Saritha Rai
      Khosrowshahi は1年以内に自律運転車の実現を期待する。
      Uber は,混乱の 2017 年の後に,自分の足を見つけよう [新しい状況に慣れよう] とする。
     世界最大の自動車メーカーと世界最大の配車企業は,技術革新が輸送業界を一新する中,自律運転でチームを組むことを計画する。
     Uber Technologies の Dara Khosrowshahi CEO は,ツイッターに自分と Toyota Motor Corp の豊田章男社長,友山茂樹副社長と Toyota 本社で撮影した写真を投稿した。Uber CEO は笑顔で地元のヒーロー イチローからもらった黒バットを握り,豊田は脇で笑っている。
     "@ToyotaMotorCorp 本社で Akio サン, Tomoyama サンと一緒で楽しかった。" … と彼は書いた。"我々の #自立運転 提携を育てることについての偉大な議論と偉大な文化を建設する私のための教訓 [をもらった]。そして これがイチローのバット。"
     この嬉しそうなスナップショットは,Khosrowshahi が他の自動車メーカーに拡大したいと考える提携を大切に保護する。これは,Uber のネットワークで1年以内に実際の街路で 自律運転車を走らせる計画の一環である … と彼は (日本で始まったアジア旅行の現在の訪問地である) ニューデリーで 囲み取材する記者団に語った。
     Uber と Toyota は,どちらも自律運転技術の分野で それぞれ活発であるが,コラボの詳細をほとんど発表しない。Toyota は 2016 年に Uber の権益を取得したが,その規模も 投資の理由も開示していない。Khosrowshahi も,Uber が 商業利益のための自動運転車に係わっていると言う以外,詳しい話をしようとしなかった。
     "1年以内に,自律運転車は当社ネットワークで路上を走る。" … と彼はデリーで言った。"皆さんが想像しておられるより遙かに早い。"
     Khosrowshahi は,Uber が自律運転の企業秘密を盗んだと訴えるアルファベットとの恥ずべき法廷闘争を早く終わらせようとしてきた。今月 約 $2.45 億をアルファベットに払って この訴訟を和解で済ませた Khosrowshahi の Toyota との会合は,この技術をパートナーと共同開発し続けるとの彼の公約を示すものである。Toyota にとっては,Uber との緊密な連携は,独自に自律運転を開発している Nissan Motor のようなライバルに追いつくために役立つ
     "当社と Toyota との提携は,まだ 出芽の段階にある。" … とKhosrowshahi は投資家向けのイベントで火曜日に言った。"当社は,先端的自律運転技術に確実なアクセスを持たねばならない。しかも それが時宜を得ていなければならない。当社は 当社独自の自律運転技術を開発できると私は信じる。同時に,自律運転技術の他のプレイヤーと提携できると信じる。"
     アジアへの旅行で Khosrowshahi は,配車企業がその野心を いくつかの地域市場で (撤退するだろうとの思惑にも拘わらず) 規模を縮小することは無いと明言した。例えば インドのライバル Ola に対して No. 1 になるために投資を続ける。日本では,シェアが 1% に満たず,限られた地域にしかサービスを提供していないが,成功のために 日本のタクシー企業と提携を結ぼうとしている。
     "心の提携を結ぶ必要があることが,私の目には明らかだ。" … と Khosrowshahi は今週 言った。
     Uber 最大の株主 SoftBank Group Corp から 中核市場に専念せよとの圧力の中にあって,日本の $160 億タクシー市場に割り込むために,配車企業が その努力をリダブルすることは 明瞭な印である。大きな営業赤字の中で,Uber は 中国とロシアを含む一部の市場から撤退した。東南アジア事業の売却も検討中と伝えられている。木曜日 Khosrowshahi は,Uber の戦略を指揮する (dictate) のは Uber 取締役会であって,日本企業の意見は,その他大勢の1つ (one of many) に過ぎない … と言った。
     Uber は 依然として SoftBank の母国で 上り坂の戦いに直面している。東京最大のタクシー会社 日本交通のような地元のライバルが既に 人気のタクシー配車アプリをリリース済みである。Uber の中国でのライバル 滴滴出行は,昨年 SoftBank の仲介を得て,第一交通産業と提携交渉を始めた … と事情に詳しい1人が Bloomberg に昨年10月 語った。Uber は,第一交通とも JV を協議中であると報道されている。
    いったい どうなっているんだろう?

     SoftBank の「群戦略」の中に トヨタは入っているんだろうか?
     Uber CEO が来日すると聞いたとき,真っ先に思ったのは 2月7日の決算発表会に Dara さんがサプライズ登場することだった (当然でしょ?)。ところが,なぜか 来日はそれより2週間近く遅れた。まさか,この来日が トヨタ社長と会うためだったとは!
     おまけに あの忙しい 安部首相とも会っていた。日本の規制を緩めてもらうためである。
     Dara さんのツイッター・アカウントにはいろんな写真があるが,孫社長とのツーショットは無い。
     いったい どうなっているんだろう?
     1兆円近いカネを振り込んであげたんだよ。
     
     

  31. Uber CEO’s whirlwind trip to India shows not all is well
    Uber CEO のインドへの駆け足旅行は,すべてが順調ではないことを示す
    Quartz,2018/02/23
    インド営業に関する数ヵ月間の憶測を断ち切って,Uber は インドから立ち退くつもりは無いと明言した。
     "インドは,当社の成長計画の重要な一部である。" … と Dara Khosrowshahi CEO は 2月22日,テレビ・チャネル ETNow で語った。"市場を見れば, 成長率に関する限り インドは当社の最も健全な市場の1つである。 ・・・ 私が Uber について今から 5~10 年後にどこへ行こうとしているかを考えると,インドでの当社の成功は 当社の成長に必須の役割を演じる。"
     Khosrowshahi は 48 時間のインド訪問で,政府官僚に会い,Uber の地元チームとメディアと交流する予定である。
     Uber の情報筋によれば,Narendra Modi 首相,Arun Jaitley 財務相,Suresh Prabhut 商務相との会見が 2月23日に予定されている。
     "今回の訪問の目的は,橋を架けること,Uber がインドに積極的であることを理解してもらうこと,ならびに インド政府との関係を改善することである。" … と Uber India の高位の情報筋が Quartz に匿名で語った。 "Khosrowshahi は,Uber がインド投資を続け,雇用をさらに増やす意向を政府に伝えたい。"
     インドは Uber にとって最急速成長市場であり,乗車件数で世界の 10% を占める。同社は 300,000 人の運転手を抱え,毎週 1,000 万を超える乗車がある。
     ただし サンフランシスコに拠点を置く会社は,2013 年にインドで事業を始めたものの,市場調査会社 KalaGato によれば,地元のライバル Ola に 営業都市の数, アプリのダウンロード数, 運転手の数, さらにはシェアなど,いくつもの数字で負けている。
     両社が何年も猛烈な戦いを続ける中で,Uber がインドを退場するか,あるいは 何らかの形で Ola と合併合意をするのではないかとの憶測が はびこっている。
     合併の憶測
     Ola 最大の投資家 SoftBank がアメリカの会社への投資計画を発表した後も,そのようなウワサが昨年末に浮上した。
     今年1月,Uber は中核市場 (アメリカ, 欧州, ラテンアメリカ, オーストラリア) に集中しなければならないと SoftBank の Rajeev Misra 取締役が言うと,この騒ぎはさらにひどくなった。
     Ola が Uber のインド事業を買い取るとの憶測は,Uber の中国での歴史に基づく。2016 年,Uber は それまで中国に約 $20 億を投資していたが,中国事業をライバルの滴滴出行に売却して中国を撤退した。
     ただし,Khosrowshahi によれば,Uber は同じことをインドで考えてはいない。
     2月22日,Ola との合併の可能性を質問されると,彼は言った:"何かを言うには 早すぎると思うが,これについて憶測するのは確かに面白い。今の私の関心は,当社の営業とチームの品質に集中している。だからこそ 私がいま ここにいる。ここに私がいるのは,当社のチームを見て, 閣僚らに会って,インド市場を理解することだ。今のところ M&A には関心が無い。"
     SoftBank を共有する
     Uber と Ola が投資家として SoftBank を共有することの含意をアナリストは汲み取ろうとするが,この両者を SoftBank が支援することは Masayoshi Son が率いる会社にとって 偉大な命題なのだと Khosrowshahi は 言う。
     "SoftBank は 莫大な量の資本を持ち,さまざまの分野に投資する。 ・・・ 思うに,彼らが行なっている賭けは, 長い時間が経てば Uber が車所有の代替になり得るということだ。つまり,この空間に参加する者の関係が 勝ち-負けということではなく,勝ち-勝ちとなるのだ。" … と彼は言う。
     血で血を洗う戦いの相手と 投資家を共有することは,"まだ" 厄介な問題にはなっていない … と彼は言い,Uber は Ola に対決を続ける … と言い添えた。
     "当社は Ola と競合を続けるつもりだ。" … と Khosrowshahi は言う。"あちらは強力な競争相手であるが,当社の運転手の心理,当社の乗客の心理, そして当社の品質は 市場の先頭を走り続ける。当社は,これが更に続くことを確実にしたい。そして いずれにせよ SoftBank は勝つことができる。"
    "両者が SoftBank を投資家として共有すること" について「群戦略」というような説明は全く見られない。
     あれは 社長の 有効期限1時間程度の (?) 取ってつけた言い訳に過ぎないことがバレバレである。
     反対に,SoftBank のアホ取締役 Rajeev Misra の無能ぶりが際立っている。
     当社の運転手の心理,当社の乗客の心理, そして当社の品質は 市場の先頭を走り
      ・・・ などと 苦しい言い訳をするが,タクシーである以上 乗客は 全社共通であり,白タクである以上 運転手も共通である。
     要するに カネだけは SoftBank から欲しかった。
     でもその使い方は Uber も Ola も自由に使って 互いに競争する。SoftBank のための「群戦略」などという共通の利益は一切 顧みない。ましてや,14 兆円の借金返済に協力するつもりなど 微塵も無い。これだけはハッキリした。つまり,社長の「群戦略」という説明はウソである。

  32. Uber will aggressively invest in South East Asia, won't let SoftBank rule it - CEO
    東南アジアに Uber は積極的に投資するつもりだ;SoftBank に東南アジアを支配させるつもりは無い ── CEO が言う
    Reuters,2018/02/22
    By Aditi Shah (ニューデリー)
    Uber Technologies の CEO は,Grab のようなライバルとのカネの掛かる戦いのために赤字を見込むにも拘わらず,東南アジアに積極的に投資を続けると公約した。
     SoftBank が Uber の 15% の権益を先月買った結果,日本のグループがアジアに持つ他の配車資産と Uber とを結合させる可能性が開かれた。SoftBank は,シンガポールに拠点を置く Grab とインドの Ora の権益を所有する。
     投資の時点で SoftBank は,Uber にアメリカ, 欧州, ラテンアメリカ, オーストラリアでの成長に力を入れてほしいが,アジアはダメ;なぜなら Uber にとって あそこは競争が激しく カネが掛かる地域だからと言った … と1人の情報源がロイターに語った。
     Uber は,Grab のかなりの権益を受け取るのと引き換えに,同社の東南アジア事業を売却準備中であると CNBC が,事情に詳しい複数の情報筋を引用して 今月伝えた。
     しかし,Dara Khosrowshahi は 木曜日,Uber CEO に昨年就任して以来 初めてのアジア公式訪問で,この戦略を却下したようである。
     "当社は 東南アジアで 赤字の見込みであるが,マーケティング, 助成金 などに関しては 積極的に投資する見込みである。" … と Khosrowshahi はニューデリーで記者団に語った。そして,あの地域には 人口が大きく,インターネットの利用者が急増しているので,膨大な可能性がある … と補足した。
     "競争の観点では,当社は 改善の余地があると考える。" … と彼は言った。
     Khosrowshahi は,今から 10 年で Uber は買収を通じて 80% 程度の成長を見込むと言った。
     "我々は何でも検討する ・・・ しかし いま,東南アジア計画は 前へ進むこと,前掛かりになって投資することだ。"
     インド政策
     SoftBank は投資家であるが,約 $680 億の評価を持つ Uber は,合併と提携に関しては 取締役会で最終決定を行なう … と Khosrowshahi は言った。SoftBank との取り引きの後でも Uber のインド営業の方針に如何なる変更も予想しない … と彼は言った。
     インドは Uber にとって 最急成長市場の1つであり,Uber の世界でのシェアの 10% 以上を占める;ただし 目下 赤字である … と Khosrowshahi は言った。
     Uber とインド市場のリーダー Ola は 激烈な戦いに嵌っており,$120 億 タクシー市場の奪い合いで 何百万ドルものカネを Uber は注ぎ込んでいる。
     "我々が当地で生み出すことのできる最大の価値は,投資を続け, 当社事業をインドで成長させることだ。インドのためだけではなく,世界全体のために当社製品を普及させるという役割のためにも。" … と彼は言った。
     インドでの具体的な投資については明言を避けたが,"沢山" と言い,増やし続けるつもりだと言った。
     "企業として我々は,成長と投資のバランスを取る必要がある。発展済みの市場では,投資を続け 利益を増やす ・・・ インドやラテンアメリカのように 巨大な成長が目の前に見える市場には 積極的に投資する。"
     前 CEO Travis Kalanick が数々のスキャンダルで辞職させられた後,昨年8月に Uber の指揮を取った Khosrowshahi は,中毒性の企業文化に対する非難につながった 過去の慣行とは きっぱり縁を絶つと公約した。
     Uber は 従来のタクシー・サービスを破壊する中,世界中で 営業の禁止, 制限, 抗議デモなどに直面しており, Khosrowshahi は これらに真正面から取り組み,彼が受け継いだ take-no-prisoners [敵は捕虜にせず, 皆殺しせよ] 文化に終止符を打とうとしている。
     彼はまた,Uber が地元の政府と規制当局に対して責任を持って 会話を行なうことが必要だ … と言った。
     Uber は 東南アジアでは Grab と争い,インドでは Ola と争う。3社とも SoftBank のカネがその軍資金になっている。結局のところ SoftBank は 何のために世界中の配車企業にカネをバラまいているのか?
     SoftBank の意向に従って 再編が行なわれる … というような現象は発生していない。
     注ぎ込んだカネは,いわば 身内同士の争いを勇気づけている。
     $10 億くれと言えば,黙って3倍の $30 億をくれる気前良い「大金持ち」として重宝されているが,そこですべてが終わっている。『群戦略』というが それが 投資先に全く理解されていない … と言うか,名前は良いが「群戦略」の中身が無い。要するに 群戦略=単にカネをばらまくこと?
     まぁ 賞味期限が1ヵ月くらいの「群戦略」であり, 5月には別のキーワードを考えるのでしょう。
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     やはり,CNBC の記事はあてにならない。
     Sprint と T-Mobile が合併しそうな記事を David Faber がリークに踊らされて (?) 書き続けていたが,結局は外れだった。この頃 Faber さん 恥ずかしくて (?) 姿を現す回数が激減した。

  33. Uber Launches Express Pool to Conquer the Commute
    With Express Pool, Uber launches a service that could draw riders away from public transit.
    Cameron Davidson | Getty Images)
    Uberが "通勤客" を狙い始めた── 低価格の相乗りサービス "Express Pool" で何を目指すのか
    Wired,2018/02/21 @06:00 am ET [日本語:2018/03/01 @08:00]
    By Aarian Marshall (日本語訳 Asuka Kawanabe)
    Uber がアメリカの8都市で開始した新しい相乗りサービス "Express Pool"。
    乗車地点まで少し歩く代りに,従来よりも格段に安い値段で利用できるこの新サービスのターゲットは通勤客だ。Express Pool の開始によって,公共交通機関の代替を狙い始めた Uber は,その先に何を見ているのか?
     Uber は,このほど1年掛けて準備したライドシェアにおける最新の革新的なサービスを発表した。技術的に新しいアーキテクチャーや新型のユーザ・インターフェースが採用され,アプリがユーザに新しいサービスの使い方を教えてくれるようになった。
     しかし,その革新的なサービスはスマートフォンの中にあるわけではない。ユーザの "足元" にあるのだ。
     Uber の新しい相乗りサービス "Express Pool" は,ドア・ツー・ドアではなく,ユーザに車との待ち合わせ場所まで歩いてもらおうというものだ。ユーザは下車するときも,目的地から1ブロックほど離れた場所で車から降ろされる可能性があるという。その狙いは,利用客が乗降する場所まで車を移動させる時間を無くし,運転手と乗客 双方の無駄を省いて時間短縮につなげることにある。
     狙うは通勤客
     Express Pool は,この3年半の Uber における最も目を引くサービスである。ボストンとサンフランシスコで3ヵ月前からテスト運用されたのに続いて,デンバー,ロサンゼルス,マイアミ,フィラデルフィア,サンディエゴ,ワシントン D.C. の6ヵ所で利用できるようになった。
     この新サービスによって,乗客は時間だけでなくお金も節約できるようになるだろう。Express Pool は,Uber Pool の最大 50%,Uber X の最大 75% の料金でサービスを利用できるからだ。料金をバス, 電車, 地下鉄と同じ価格帯にすることによって,Uber は自社サービスを通勤手段の選択肢に加えたのである。
     Express Pool の仕組みもまた,公共の交通機関に似ている。アプリで Express Pool を選んだユーザは,車に迎えに来てもらう地点ではなく,エリアを選ぶことになる。その後,Uber は最大2分で移動に最も効率的な相乗り相手を探す。乗客や目的地が決まったら,ユーザは待ち合わせ場所を指示される (大抵は, ちょっと歩いたところだ)。
    Image Courtesy of Uber
     "お値頃感という意味では,大きなブレイクスルーです。サービスの利用が毎日の習慣になっていなかった従来のユーザや新規ユーザに,新しい使い方を提供できますから" ・・・ と,Uber でライドシェアのマネジメントを担当している Ethan Stock は言う。
     この "毎日の習慣" がキーワードだ。アメリカの大都市の多くでは,ライドシェア・アプリは夜間の外出に欠かせない移動手段である。飲みに行った帰りには,選べる交通手段の選択肢はほとんどない。
     シンクタンク Shared Use Mobility Center [共有利用モビリティ・センター] は最新の調査で,ある大規模なライドシェア・サービス (おそらく Uber か Lyft だろう) の主要6都市におけるデータを調べた。その調査結果によると,利用が急増する時間帯は金曜と土曜の午後7時から夜中にかけての数時間だった。
     しかし,ライドシェアの旧敵であるタクシーと同じように,こうした使い方が人々の日常と言うわけではない。我々の中で,毎晩のようにクラブに行く人がいったい何人いるだろう。
     2017年に $45億 の損失を出した Uber は,どこかへ行く度にアプリを開いてくれる忠実な固定客の獲得を切望する。そこで同社は,既に多くの人が利用している公共交通機関のシステムを真似したサービスによって,毎日 家と会社を往復する通勤客を狙うことにしたのだ。
     公共交通機関をもっと便利に
     通勤客が孤独な車通勤をやめ,同乗者3人 (今のところ Uber Express Pool では,これが最大人数である) と共にライドシェアで通勤すれば,それは皆にとって良いことである。排気ガスは削減され,1人あたりの道の専有面積は少なくなり,交通量も減る。
     彼らが同じ駅に向かうのであればなお良い。民間サービスと公共交通機関同士の対立をほとんど起こさずにつなぐ効率的な方法だ。皆にとって良い都市を作ることができる。
     これが Uber の計画なのだ。"(Uber Express Pool によって) 公共の交通機関はもっとうまく機能するようになると期待しています。これは,通勤客に車通勤の代りに公共交通機関を利用させるのに一役買うでしょう。Uber が今取り組んでいる大きな目標の1つです" と Stock は言う。
     しかし,もしも通勤客がバス,自転車,スケートボード,徒歩から Uber に乗り換えるのだとしたら,それは全体的に見れば街にとってマイナスかも知れない。Uber は,道を走る車を増やすことになるからだ。排気ガスは増え,車が道を更に占領し,交通量は増える。
     そして,料金が安くバスによく似た Express Pool は,後者のシナリオを引き起こす可能性のほうが高いように感じる。これは,Lyft が 2017年6月に類似のサービス "Lyft Shuttle" を開始したときに,皮肉屋なネット民たちの多くが指摘したことでもある。
     Uber Express Pool と Lyft Shuttle (サンフランシスコとシカゴでサービスを提供している) はどちらも,乗客に最寄りの集合場所で車輪つきの何かに乗る前に ちょっとした "散歩" を要求する。もちろん,バスとの重要な違いがいくつかある。ライドシェア・サービスでは,乗客が来て欲しいと思ったタイミングで車が来るし,途中停車する場所は少なく,確実に座ることができる。多くの人にとって,これは大きなメリットだ。
     Uber いわく,今のところ同社は,乗客がもともと通勤に何を使っていたかのデータを持ち合わせていない。しかし,乗客への調査を通じてそれも明らかにするつもりだと言う。"人々が Uber の代替として何を利用しているのか,継続的に調査しています" … と Stock は言う。
     Uber は公共交通の敵か味方か?
     地元の交通局は,状況をいまいち把握できていないようだ。サンフランシスコ市交通局 (SFMTA) で道路,交通状況,自転車,歩行者,駐車用インフラなどを管理する Tom Maguire はこう話す:
     "われわれ交通局の人間にはこう感じられるのです。こういったサービスが,環境に優しく省スペースな公共の交通機関を利用したであろう乗客たちを,いくつもの小さい車に乗せて運んでいるのであれば,それはわれわれのモビリティー政策の全体像に逆行している可能性が高い … と。ただ,もしも彼らがラスト1マイルの移動手段として公共交通機関へ行き来する乗客を乗せるのであれば,それは当然われわれの政策と合致します。"
     独自調査を行なった研究者たちの予備調査レポートからも,あまりはっきりしたことは分からない。
     昨年,カリフォルニア大学デービス校の研究者たちが行なった調査によると, 7都市で行なわれたライドシェアによる移動の 49〜61 %は,アプリが無ければそもそも起こらなかった外出だったという。この結果からは,ライドシェア・サービスが交通量を増やしたであろうことが示唆される。
     また研究者たちは,サービス利用客の 91% が,自分の車の利用をやめていないことも明らかにしている。車から公共交通機関への乗り換えは,Uber が公言した目標の1つだった。
     同時にこの調査結果からは,アメリカの都会人たちが交通手段の選択において新しい柔軟性を手にしたことがうかがえる。この国が車一筋となって以来,数十年も見ることが無かった自由である。
     公共交通への警鐘
     もし Uber (と Lyft) が思い通りにサービスを展開し,通勤客を獲得すれば,それは都市のバス・システムにとっては危機になりうる。ただ正直なところ,彼らは目を覚ますための何かが必要だったのだ。
     過去数年,ニューヨークやワシントン D.C.,ロサンゼルス,サンディエゴ,そしてボストンでは,公共交通機関の利用者数は低迷している (これらの都市名に見覚えがあるだろうか? 名前を挙げた中の4都市は, Uber Express Pool の利用可能地域だ)。
     ニューヨークを走るバスの平均走行速度は 時速約 12km。マンハッタンではたったの時速9kmだ。公共交通機関は,サービスの頻度や信頼度,混み具合,ルート,さらにはいままで交通局が時間も金も掛けたことのない快適さといった点を改善することによって,利用者を維持することができるのだろうか?
     そしてもし彼らがそれに失敗し,バスが姿を消すことになったら,それを恋しがるのは誰だろう? 民間企業は都市全体に十分な (そしてこれが一番重要だが) 公平なサービスを提供することができるのだろうか?
     Uber の最高経営責任者 (CEO) Dara Khosrowshahi は,それができるか試してみたいと思っているらしい。2月に開かれたゴールドマン・サックス主催のイベントで,彼は都市でバス・システムを運行させてみたいと語っている。
     いまのところ,この競争は不安定な停戦状態にある。都市は, Uber や Uber Pool,そして Uber Express Pool がどう彼らの交通エコシステムを変えるか研究中だからだ。
     "小さくてフレキシブルな車ならではの役割は,確実にあると思います" と,サンフランシスコ市交通局の Maguire は言う。しかし,今は目下の試練をクリアーするのが先決である。Uber は,待ち合わせ場所まで数ブロック歩いてくれる人がいることを願っているのだ。

  34. Uber is preparing to sell Southeast Asia unit to Grab in exchange for stake in company
    Uber は,東南アジア部門を Grab に売却して 引き換えに Grab 株式を受け取る交渉の準備中である。
    CNBC,2018/02/17 (土)
    By Alex Sherman
      Uber は,中国事業を滴滴出行に売却したのと同じ形の取り引きで,東南アジア事業を Grab に売却する準備中である。
      複数の情報源は,IPO のために財務のお化粧をすることが目的であると言う。
     Uber は 東南アジア事業を シンガポールの Grab に売却し,引き換えに Grab のかなりの権益を得る交渉の準備段階にある … と事情に詳しい2人の情報筋が言う。
     合意には まだ達しておらず,あるとしてもそのタイミングは不明である。
     Grab は,私有車 [白タク] , タクシー, 相乗りのサービスを東南アジアの 100 以上の都市で提供する。同社は,2017 年に SoftBank を含む投資家から $25 億を調達すると発表したとき,タクシー配車で 95% のシェアを握ると言った。
     今回の動きは,中国での Uber の戦略をマネしたものと言えよう;Uber が中国の配車事業を滴滴出行に売却し,滴滴出行の 所有権 20% を受け取った;さらにロシアでは,現地の Uber 事業を Yandex の配車事業と合併させて 37% の権益を受け取った。その目的は,コストを削減することにより 来年にも予定する IPO に備えるためである … と情報筋は言う。ただし,交渉が極秘であることを理由に匿名を求めた。
     昨年8月に 共同創業家 Travis Kalanick の後を引き継いで以来,Dara Khosrowshahi CEO は 会社の滅茶苦茶に壊れた評判を立て直し,黒字を目指して財務規律を回復することに専念してきた。今週発表された数字によれば,Uber の赤字は 2017 年に前年比 +61 % 急増して $45 億に達した。ただし,第4四半期の赤字幅は 前年より縮小した。
     Uber と Grab との提携は,世界の配車市場に支配を強めようとする SoftBank の取り組みを助けるだろう。今年1月,日本のテック・コングロマリットは Uber の約 15 % の権益を買った;ただし その大部分は現在の株主からであった。SoftBank は Grab,滴滴出行, Ola, 99 の株を所有しており,Uber のアメリカでの主たるライバル Lyft へも関心を公言した [注:SoftBank は 99 の全株を滴滴出行に売却した]
     今週 サンフランシスコでの Goldman Sachs 会議で,Khosrowshahi は 地元業者との競合が非常に厳しいと言った。
     ロイターは 昨年 11 月,業界の情報筋を引用して,SoftBank の Uber 投資が アジア全体にわたる配車資産の一部の統合を可能にするだろうと書いた。1人の Uber 投資家がロイターに 東南アジア部門を閉鎖することが "カネの印刷" と IPO を現実的なものにするだろうと語った。
     Uber と Grab はコメントを拒んだ。
    -- CNBC's Ari Levy contributed to this report.
    どうにも分からない (笑)
     (1) 東南アジアを撤退して 財務諸表にお化粧をすれば,Uber は 上場が有利になるらしい。
     でも 反対の考え方も ── 不利になるという考え方も ── あるんじゃないか?
     ここで削減するのは Uber の主力事業である配車事業である。これでは,配車事業を世界にどんどん拡大して業容を拡大する … という成長の逆路線である。アメリカ (とアフリカ) だけに業務を縮小する … のでは 魅力に乏しい株である。
     (2) IPO の1つの目的は資金集めである。アメリカ国内だけの配車事業を世界に広めるために資金が必要 … というのならまともな口実であるが,その反対に 事業を縮小するのなら 手持ちの資金は余るだろう。IPO で集めたカネを何に使うのか? おまけに,懐の温かい大金持ちが味方に付いたから,IPO の必要は無かろう … と言われて何と答えるのか?
     (3) 赤字が1年で $45 億である。その 約 20% を SoftBank が被るから 1年で ざっと 1,000 億円の減益要因である。そのほか,ぶち込んだカネの金利 7% があるから,1,600 億円くらいには達するだろう。
     (4) 世界の配車市場に支配を強めようとする SoftBank … 強めて何をするのか? 現在のところ "赤字の一手引き受け役" になっているだけである。

  35. As Uber sputters, Ola is really stepping on the gas in India
    Uber が失速する中,Ola はインドで独りアクセルを踏む
      Quartz India,2018/02/15
      By Ananya Bhattacharya
    何年もの間,インドのタクシー戦争は,Uber と Ola 2社の間に限られており,そのシェアの合計はほゞ 95% に達する。
    Ola が創立してから2年後の 2013 年に サンフランシスコに拠点を置く Uber がインドに進出して以来,両社は殴り合いの喧嘩をしてきた。
     しかし この数ヵ月の展開は,地元の Ola が Uber を突き放したことを示す。他方 Uber は社内の問題で苦しみ,力点の調整を行なっている。
     先頭を走る
     この非上場2社はどちらも データを極端に隠したがるが,入手可能なデータは,Ola が多くの面で Uber を凌ぐことを示す。
     1つには,Uber はインドの 31 都市で営業するのに対し,Ola は 110 都市である。このギャップは,今では 何年も続いており,Ola は Uber よりも遙かに多くの スマートフォンに普及している。
    インドのスマートフォン利用者のタクシー・アプリ普及率
    左から 第1級都市,第2級都市,第3級都市。
     この広がりを基に,Ola が抱える運転手の数は 1,000,000 を超える (Uber は 450,000 人)。
     Ola は3つの異なるカテゴリーのサービスにより利用者に対応する:プレミアム (prime, lux, rentals),低料金 (三輪タクシー), および 相乗り。"当社では,これら3つのバケツから多くの成長が見られる。" … と Ola の広報担当者が Quartz に語り,"三輪タクシーは,乗車距離が短い第2級都市で よく健闘している。" … と補足した。つながる車のプラットフォーム Ola Play の立ち上げ以後,優良顧客の乗車が伸びた。
    Autorickshaw
     Ola のこのような幅広いネットワークが,市場情報会社 KalaGato によれば,シェアを 2017 年7月の 53% から 2017年12月の 56.2% に伸ばすのに役立った。同じ期間内に,Uber のシェアは 42% から 39.6% に減った [グラフ]
     この2社以外は,大きく水を開けられている。
    インドの配車市場のシェア
    アプリをインストールしているスマートフォン利用者のシェア
    アプリをアンインストールする利用者の割合
     アプリのインストールに関しても,Ola は大きく先行している。KalaGato が 650,000 人のスマートフォン利用者を調査したうちで,40% をやや超える人が Ola のアプリをインストールしており,Uber は 28.7% だった [グラフ]
     Uber は また,ライバルの Ola に比べて アプリのアンインストール率が遙かに高い [グラフ]
     しかしながら Uber はインドでの機会に依然として強気である。"インドは アメリカを除けば Uber にとって最大の市場であり,当社事業は ますます強くなった ── 当社は インドで事業を開始して以来毎週 指数関数的に成長を続けてきた。" … と Uber の広報担当者は言う。
     確かに,Uber が Ola より得点を稼いでいるパラメタが1つある。Uber は,料金, サービス, および アプリの使い勝手で Ola より評価が上である。Uber の NPS (顧客満足度) ── Google Play Store での (5ツ星評価の数) − (1ツ星評価の数) ── は 56% であり,Ola の 45% より高い。
     ただし,Uber 最大 かつ 最新の投資家 Softbank の命令により Uber がインドから力点を 移す可能性が高まっている状況では,この人気は おそらく続かないだろう。
     負け戦さ
     今年 Softbank は Uber の巨大資金調達に参加し,Uber は約 $70 億を投資家集団から得た。日本の投資巨人は,これとは別に Uber に $12.5 億を直接に投入した。Softbank は 今では Uber の権益 15% を握る。Masayoshi Son が率いる会社は,既に Ola 最大の投資家であり,投資した両社の間の戦いを避けようとしていると広く認識されている。
     この投資家は, 2018 年1月にその立場を明らかにした;Softbank 取締役 Rajeev Misra は,その力点を中核市場 (アメリカ, ラテンアメリカ, オーストラリア) に置きたいと言った。
     Uber がインドで店を畳んで出ていくことは無さそうであるが,"2018 年後半 あるいは 2019 年はじめに,Ola と Uber の間で ある種の了解 または 戦略的取り引きを行ない,インド市場での競合による現金燃焼を減らすものと期待できる。" … と Forrester Research のデリーに拠点を置くアナリスト Satish Meena が言う。
     しかしながら,これを Uber は "根拠のない憶測" と呼ぶ。Uber の或る広報担当者は,"当社は,当地インドで ほんの上っ面を撫でただけである。Uber のインド事業の基盤は ますます強化されており,当社は,乗客, 運転手, 都市へのサービスに 最善 かつ 革新的な商品を提供するよう 自重し続ける。" … と言った。
     とは言え,Softbank が現れる前から既に,インドは Uber の優先リストから落ちていた。2016 年8月に中国から退場して 滴滴出行から得た $10 億の "かなりの部分" をインドに振り向けるつもりだと Uber は言った。これは Ola に対する重大な脅威と受け取られた。しかし,このカネが バンガロールに拠点を置く会社の事業に喰い込む前に,Uber 自身が逆風に突っ込んだ。
     2017 年2月,Uber の元技術者 Susan Fowler が,自分の上司によるセクシャル・ハラスメントを訴えるブログ投稿を書いた。それから間もなく Uber は,上級幹部 Amit Singhal を グーグル勤務の頃のセクシャル・ハラスメントを隠していたとして 解雇した。翌月,Uber の共同創業家 Travis Kalanick が運転手の処遇について 或る運転手に暴言を吐いたことが判明した。Kalanick は 2017年6月に CEO を辞職した。
     これらはすべて,インド事業を後部座席に押しやった。"Uber の力点は,今では 国内, 法務, 規制の問題 ならびに 2019 年の IPO に向かっている。" … と Forrester の Meena は言う。
     加えて,懐が深いからと言って,激しい金遣いが アメリカに拠点を置くユニコーンの取るべき選択肢とは限らない。"どちらも,銀行にたくさんのカネがある。Uber の方が (世界事業全体で見れば)多く,したがって金遣いも多い。" … と 経営コンサルティング会社 KPMG のパートナー Ankur Nigam が言う。"Ola が使っているのは 年間 $3~4億程度なので,Ola の方が長く続けられるだろう。"
     地元のスタートアップ企業
     Uber のソックリさんとよく言われる Ola は,何度も大胆な賭けを張り,うまく立ち回り,試練に耐えてきた。
     たとえば,Ola は開業時点から 現金による支払いを受け容れた。他方,この国では現金が王様であることを認識するのに,Uber はほゞ2年を要した。2016 年 10 月から,Ola は インターネットにアクセスできない場合に備えて,テキスト・メッセージによる予約を受け容れた。インドではデータ接続がまだ貧弱なので,この機能は重要である。Ola のアプリは, 9つの地域言語を運転手と乗客の両方にサポートする。インドで英語を話す人は 10% に過ぎない
     "このサービスそのものは Uber に触発されたとは言え,Ola は 独自のインド版教本を作ろうと,Uber の肩の先を絶えず見てきた。" … とペンシルバニア大学ウォートン校の技術 および ディジタル事業担当の Kartik Hosanagar 教授が言う。Ola は意思決定において大胆だった … と教授は補足した。
     2015 年,Ola は オンライン・ウォレット Ola Money でディジタル決済に参入した;今では ここは,ピザ・チェーン Domino's and PizzaHut,Café Coffee Day,オンライン・チケット・ポータル BookkMyShow, E-コマースウェブサイト eBay,ホテル予約サイト Oyo などと提携している。
     Ola は,技術の前線でも いくつもの動きを見せている。自動車メーカー Mahindra & Mahindra と "電気大量輸送プロジェクト" を立ち上げた。これは,インドの乱れた交通情事情に対し機械学習を利用して需要と供給の予測を行ない,インドの貧弱な道路配置の地図作成を行なう。
    少々身贔屓かもしれないが,インドの事情を知る上でありがたい記事である。
     これを読むと,SoftBank がなぜ Uber と Ola の両方にカネを ブチ込んでいるのかが ますます分からなくなる。ぶっちゃけて言うと (笑),SoftBank としては「身内の争い」をやめて,14 兆円にのぼる借金返済に協力してほしい (?) のが本音だろうが,そんな「協力要請」が通じるのだろうか?
     両社とも「カネさえ くれればそれでよい」と思っているだろう。なぜ SoftBank の借金返済に協力する必要があるのか?
     配車事業の ノウハウ, 特許, 技術, 人材を何1つ持たない SoftBank になぜ協力する必要があるのだろうか?
     他人のアイデアで始まった 配車事業に後からカネだけ (カネ以外の資源はなし) 出して「情報革命」を推進するなんて 普通の人なら恥ずかしくてとても言えたもんじゃない。自分のアイデアで始めたインタネット事業を声高に叫んで その事業で「情報革命」を世界に引き起こす! と叫ぶのが本来であろう。そういうモノが何1つ無い。

  36. Uber's fourth-quarter loss narrows to $1.1 billion: source
    Uber の第4四半期の赤字が $11 億に縮小する:情報筋
    Reuters,2018/02/14 @09:31 ET
    By Abinaya Vijayaraghavan
    配車企業の第4四半期の売り上げは,QoQ で +11.8% 増の $22 億となった … と同じ情報筋が言う。
     Uber は これまで $140 億を超える資金を調達しており,先月は SoftBank Group Corp と取り引きを結び, 日本のコングロマリットは Uber の 17.5% の権益を得た。
     シリコンバレーに拠点を置く Uber の総契約高は,前四半期から +14% 増の $111 億だった … とその人が言う。
     第3四半期の赤字は $14.6 億,売り上げは $20 億だった。Uber は 前四半期に $97 億の総販売高を記録した。
     Uber は先週,$2.45 億相当の同社株式を アルファベットの自動運転部門 Waymo に支払い,企業秘密に関する法廷闘争を和解したと発表した。
    数字がパラパラと分散して書かれていて分かりにくいので,表にまとめた。
    (億ドル) 2017-3Q 2017-4Q
    gross bookings97111+14%
    net revenue2022+10%
    net income−15−11−25%

  37. Uber needed to settle Alphabet’s lawsuit
    Uber は,アルファベットの訴訟を和解せざるを得なかった
    Recode,2018/02/09 @02:49 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    このみっともない法廷闘争を解決することが,上場を狙う Uber の最大の利益に適う。
     アルファベットの Uber に対する訴訟は,Uber にとってひどいものだった … というだけでは言い足りない。 既にスキャンダルまみれのこの1年中に,このみっともない提訴は Uber の内部メッセージと怪しげな競争慣行を白日の下に晒し,その結果 トップ経営陣の少なくとも1人の退任を招いた。
     それどころか,この訴訟は 自動運転への取り組みを 危機に陥れた。もしも Uber が Waymo の元エンジニアと共謀して企業秘密を盗んだとアルファベットが陪審を説得できたなら,Uber は アルファベットが企業秘密だと主張するすべての技術を使うことを禁止され,数十億ドルとは言わないまでも 数百万ドルの損害賠償を払わされただろう。
     これは,イメージを一新して 2019 年に上場しようという会社にとって,大変まずい状況であろう。言い換えると,Uber は和解する必要があった。
     だから,彼らは和解した。両社は,Uber の株式の 0.34% を Uber がアルファベットに与えることで合意した … と発表した。事情に詳しい複数の情報筋は,会社を $720 億に評価したものであると言う。したがって,$2.45 億相当の株式ということになる。
     この金額は,過去 10 年のアメリカでの 企業秘密陪審評決の何番目かに入る規模である。
     それでも この支払いは,アルファベットが Uber に企業秘密の代償として要求した損害賠償に比べれば,微々たるものである;アルファベットは,そのうちの1件について $10 億と評価していた。
     アルファベットが 今回 代りに得たものは,同社の自動運転技術 ── これを Uber が握っていると アルファベットは確信している ── を Uber が使わないという保証であった。
     両社は どちらもこの和解を自分の勝利であると言うが,確かにこれは,現在の状況下では Uber にとって最善のシナリオだったと言えるだろう。さまざまの文書の提出要請を通じて,元 CEO Travis Kalanick と従業員との間の E-メール および 私的メッセージ さらには Uber の怪しげな [取り締まりを逃れる?] 見張り戦術に関する書簡を公表させ,アルファベットは 公共の面前で Uber の評判に泥を塗った。
     だが,今回の和解は この出血をとめた。
     Uber が有罪であることを認めない和解をアルファベットが受け入れると考える理由は,ほとんど無かった。しかし,Levandowski が Uber のサーバーにファイルをダウンロードした点を激しく争う Uber としては,これは 絶対に認められなかった。
     代りに Khosrowshahi は,Levandowski のスタートアップ企業 Otto の買収に手違いがあったかもしれないと言った。
     "しかし,Waymo の従業員2名が 不適切にも 他者を唆して Otto に入社した。彼らはグーグルのファイルを持っていた可能性がある。振り返ってみれば,これが重大な疑問を引き起こしたのかもしれない。" … と Khosrowshahi は言った。
     けれども,今日の和解 [の発表] は 不思議なことに,企業秘密が Uber に持ち込まれたことを認めてはいない。 実際,Uber の Dara Khosrowshahi CEO は この点について激しく争っている。
     "ハッキリさせておきたいが,当社は 如何なる企業秘密も Waymo から Uber に渡っていないと考えるし,自動運転技術に関する Waymo の固有の情報を Uber が使用したことも無いと考える。当社は,当社の LiDar とソフトウェアが 当社の良い製品であることを Waymo に保証してもらうようステップを踏んでいるところである。" … と 彼は声明で言った。
     もしも万一 Uber が企業秘密を盗んだと陪審が評決すれば,配車企業はアルファベットのハードウェアとソフトウェアが組み込まれたすべての技術を使うことを禁止されたはずである。
     この和解の一環として,アルファベットの 自動運転部門 Waymo が開発した如何なるハードウェアもソフトウェアも Uber は使わないことに両社は合意した。
     この取り決めは重要である。なぜなら ソフトウェアの企業秘密に関して,Waymo が 2回目の訴訟を起こす可能性をカバーしているからだ。この訴訟の一環として Uber が盗んだと Waymo が考えるソフトウェア企業秘密 ── これは LiDar と呼ばれる自動運転用ハードウェアに関するものである ── を Waymo は取り上げたが,判事は この公判にそこまで含めるのは多すぎるとして,今回の訴訟が終わった後で 別のソフトウェア関連の訴訟を起こすよう Waymo に裁定したのである。
     今回 合意された和解は,そのような ソフトウェア部分も含んでいる。つまり,Uber は面倒な裁判をもうつ起こされなくて済んだ。
     アルファベットは,今日の公判で,Uber が盗んだという技術的証拠と 企業秘密を使ったという証拠を提示し, Levandowski を証人として要求するものと見られていた。Levandowski は黙秘権を行使したが,陪審が評決を行なう際にこれを彼に不利な判断に使うことを認めた。これも Uber にとっては 不利な要素だった。
     いずれにせよ,この問題での和解は,Uber の最高法務責任者 Tony West が率いる法務チームの肩にかかる 既に重すぎる重荷を1つだけ軽くする。今週 Uber は,昨年夏のデータ漏洩について 議会のヒアリングを受けた。そのほか,Uber は "greyball" ソフトウェアを使って 警察の取り締まりを逃れたなど,山のような (myriad) 訴訟をいまだに抱えている。
     アルファベットは 昨年 SoftBank の投資の公開買い付けに応じて Uber の株 $3.50 億を売却したが,今回 その 2/3 を手に入れた。したがって アルファベットは,Uber の成功に賭けて まだ投資を続けているという意味になる。
    でも これは明らかに遅すぎた。
     公判は始まってしまい,Kalanick の証言から Uber は技術を軽視する企業であることがバレてしまった。レーザー技術も無いらしい。
     これでは,技術に関して張り子の虎であることがバレちゃった。
     技術なしの単なるタクシー会社であることが判明しちゃったから,この代償は大きいだろう。
     カネを沢山払って 早期に Waymo と和議をすべきだった。
     そのためなら SoftBank の社長さんも追加で喜んでカネを払っただろう。
     技術のことはまるで分からない社長だから,1,000 億円くらい払わせて決着をつければよかった。
     惜しかった!(笑)
     この先 Uber は "テック企業" とは認定されないよ。ただの テクなしタクシー。
     まぁ 人材流出で 2015 年以来 CFO さえ空席という会社だから,テクなしは当然か。

  38. In Travis Kalanick’s first public appearance since resigning from Uber, his competitive nature was put on trial
    Uber の CEO を辞任してから 初めて姿を現した Travis Kalanick は,その競争心が裁判で浮かび上がる。
    Recode,2018/02/06 @09:42 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    アルファベットの Uber に対する訴訟で,Kalanick が証人席に立つ。
    「法を守るより,勝つことが大切だ」
    VCG | Getty)
     テック巨魁 アルファベットと Uber の間の法廷闘争伝説は, Uber の前 CEO に対する激しい非難で始まった。
     "この裁判は,何が何でも勝つ必要があると決定する1人の競争者に関するものです。" … と アルファベットの弁護士が 月曜日の最初の宣言で言った。
     "当時 Uber CEO だった Mr. Kalanick は,法に従うより勝つことが重要だという決定を下した。" … と 弁護士は続けた。
     火曜日,サンフランシスコのカリフォルニア北部地区裁判所の2日目の公判で,柄に無くソフトな語り口の Kalanick は証人席に立ち,向かってくるこれらの非難を受け止めた。
     2017 年大株主らにより CEO の座を追放されて以来,Uber の悪名高い好戦的な 前 CEO が公の場で話すのは,これが初めてである。
     ダークスーツとネクタイの Kalanick は,自動運転車競争に勝ちたいという自分の猛烈な野心について質問に答えたが,通常は感情的な話し方をする Uber の共同創業家は,グーグルが自動運転では先行していることを認めるかと尋ねられた時にさえ 抑制を保って答えた。
     弁護士は,グーグルが自動運転業界のリーダーであることに同意するかと訊ねた。
     "今は それが一般的な認識であると思う" … と彼は答えた。
     Kalanick の証言は,アルファベットの論点の中心となりそうである。アルファベットは,Uber が 元 グーグルの技術者 Anthony Levandowski と共謀して,Levandowski が (アルファベットの自動運転部門) Waymo を退社する前に自動運転の企業秘密を盗み,スタートアップ企業 Otto を設立し,最終的に Otto を Uber に売却した … と主張する。
     アルファベットは,Levandowski ではなく ── Levandowski は被告ではなく,憲法第5条により黙秘権を行使した ── Uber が Waymo の自動運転企業秘密を悪用したことを証明せねばならない。だからこそ,焦点を Kalanick と その略奪的性格に移すことが,Waymo の裁判では重要なのである。
     万一 Uber がこの裁判で負ければ,数百万ドルの損害賠償を払い,しかも自動運転の取り組みは停滞しかねな。他方 Waymo にとって,この裁判に負ければ 評判が大いに下がるリスクがある。アルファベットは,滅多に訴訟を起こさない。
     Waymo のこれまでの法廷戦略は,グーグルを負かして 何が何でも自動運転競争に勝つことに Kalanick が集中していたと証明することらしい。それができれば,Levandowski との共謀の動機を説明できる。
     Uber は,Waymo の主張が根拠に欠けると争い,Waymo のファイルが Uber に持ち込まれたことは全く無いと言う。
     しかし,Otto 買収の手続きは,全くのありふれたものではなかった。Kalanick が証言したように,Levandowski は Otto を創立する前に,Uber のために働くことを Kalanick と話していた。
     Kalanick は Levandowski との初期の会話について質問されると,"私は Anthony を雇いたかった;彼は会社を始めたかった;そこで 彼が会社を始めたくて 私が彼を雇いたいという状況を作ろうとした。" … と答えた。
     Uber の成長する自動運転チームをリードしてもらうために Levandowski を雇いたいという Kalanick の気持ちは, 2015 年に生まれた;これは,当時の Uber の自動運転開発のぺースへの不満から生じた。Recode が以前報道したように,2016 年8月には 自動運転のパイロット・プログラムを立ち上げるという当初の締め切りが守られないことが明らかになった Kalanick は,Uber の自動運転の進み方に不満だった。
     Kalanick は その証言を通じて,これまで公言している "無人運転車は Uber の成功に不可欠だ" という感覚を繰り返した。そして その成功を拡大するカギは 良いレーザーだと言った。
     証拠として提出された手書きのメモに,Kalanick は "レーザーはソースである" … と書いた。
     しかし,Waymo が明らかにしようとしているのは,Kalanick のレーザーへの拘りである。Waymo の弁護士らは,Levandowski が一定の期限までに非常に高い技術的野心を達成する高い動機を持っていたことを事実として確立させようとした。明らかに,彼は 企業秘密を盗用してでも,このようなマイルストーンの達成をやめようとはしなかっただろう。
     このような技術上のマイルストーンは,Levandowski のスタートアップ企業 Otto を買収する条件の一環として,Uber により設定された。当時の Uber の自動運転部門のトップだった John Bares の証言によれば,Bares 自身がこの買収に懸念を抱いていたと言う。このようなレーザー技術のマイルストーンには,金銭的インセンティブが付与されていた。
     たとえば,Kalanick の証言の間に作成された文書によれば,Levandowski のチームが視界 250 m の原型 LiDar (レーザーを利用した長距離レーダー) を車に取り付けることができれば,販売価格 $5.90 億の 6% を与えられる。
    「レーザーはソースである」
     意味不明ですが,原文は "Laser is the sauce" となっている。
     "the" がついているので,自動運転の味付けに掛ける "ソース" は,これが絶対ということ。
    ──────
     でもこれを逆に言ったら,Uber はレーザー技術なしで自動運転を実現しようとしているのかな?
     SoftBank さん,レーザーの No. 1 の会社を1兆円くらいで買収する必要があるんじゃないの?
     さもないと Uber に投じたおカネはムダ金になるよ。
    ──────
     いかにも カネカネで動いている会社であることがよく分かった。
       ・・・ この記事により 初めて明らかにされた事実である。
     こういう「企業文化」は簡単に変わるものじゃない。
     社員がカネで動く会社だ。それが,盗めばよい … という考えにつながった。
     いかにも 日本の 還暦カネカネ社長が資金を投じるにふさわしい (笑)。
     「弱ければ (強い企業を) 買えばいいし,それだけの話」と,孫氏の考えを読み解くのが多摩大学客員教授の嶋聡氏である。同氏は長年,ソフトバンクの社長室長として孫氏の下で働いてきた。(日経 Automotive,2017/03/28,孫氏 自動運転の野望) ← ほんとにお笑いの記事でした。
     カネを3倍にすれば,何でも 早くできると考える 単細胞社長。
     これが企業文化を破壊する。技術者を腐らせる。
     SoftBank にまともな技術が育たないのも同じ理由だろう。

  39. Uber has been trying desperately to win back drivers, so we asked an Uber driver if it’s working
    Uber は運転手を絶望的に取り戻そうとしている。そこで Recode は,それがうまく行っているのか Uber 運転手に訊ねてみた。
    Recode,2018/02/06 @02:13 pm ET
    By Meghann Farnsworth
    最近 Uber の運転手は厳しい。
    何年もの間,Uber は 運転手に投資する代りに 乗客を主要な顧客として重視してきた。ところが今では,Uber は 300 万の運転手との壊れた関係を修復しようとしている。
     それでは,Uber で日常 さまざまのトラブルに出会っている 運転手の実情はどんなものなのか?
     Recode の Johana Bhuiyan 記者が1人の運転手に同乗して,運転手だけが答えられる質問をしてみました。
     運転手さんの名前は Cameron Kruger。ニューヨーク市で 4.96-級の Uber 運転手であり,2年 Uber で運転している。Kruger は,Uber のプラットフォームで 運行回数は 3,000 回である。
     Kruger は乗客に良い経験を与えるよう運転することを誇りにしているが,自分を守るためにはいろいろのことを考えた。以下はその内容である:
    Photo by Jaap Arriens/NurPhoto via Getty Images
     Uber と運転手の関係は,いつ悪化し始めたか?
     ニュージャージー州の Uber 従業員だと名乗る誰かから電話をもらったと Cameron は言う。その人は Cameron に Uber が料金を引き下げると言った。
     その結果? Cameron は,毎月の収入が $1,000 ドル減ったと Cameron は言う。
     運転手の信頼を取り戻すには,Uber は何ができるか?
     何もできない … と Cameron は言う。"部屋の中の象だ" … と彼は言う。彼らは運賃を下げることにより,運転手の信頼をぶち壊した。
    運転手を宥めるために,Uber は 最近,アプリでチップを払えるようにした。実際にチップを払ってもらえますか?
     Cameron の答は いろいろだと言う。ただし,Uber のやり方では 適正なチップをもらうのが難しいと言う。
     Cameron によれば,運転手に直接に現金でチップを払う場合には問題が無い。しかし,Uber ではアプリを使って払う。Uber に1度でも乗ったことがあれば分かるが,アプリでは数ドルしかチップを払えない。でも普通のタクシーの場合には,運賃に対する割合でチップを払う。だから Uber のアプリのチップは 運転手にとって役に立たない … と Cameron は言う。
    「情報革命」とは 世界が違いすぎる。

  40. Uber is facing fresh, sharp rebukes from Congress for initially withholding details about a 2016 security breach
    Uber が,2016 年のセキュリティ漏洩について 当初 詳細を知らせなかったことで,議会から 新たな鋭い叱責に直面する
    Recode,2018/02/06 @03:30 pm ET
    By Tomy Romm
    "バグ・バウンティ" に関する火曜日のヒアリングは,Uber を政治の電気椅子に引き戻した。
     アメリカ議会の議員らは 火曜日,2016 年のセキュリティ漏洩を規制当局と顧客に初めから報告せず,5700 万人の運転手と乗客に被害を及ぼしたことで Uber を物笑いの種にした。
     "バグ・バウンティ" (セキュリティ・ホールを見つけたハッカーに報奨金を与えるプログラム) を調査していた上院通商科学運輸委員会でのヒアリングで, 民主党議員と共和党議員は同様に 配車企業がプライバシーとセキュリティ慣行について連邦政府の捜査を受けていたにも拘わらず,この情報を報告しなかったことをつついた。
    Dara Khosrowshahi (©Sergio Lima | AFP | Getty Images)
     "Uber がこのような ゆすりに,しかも消費者に重大な危機にあることを告げずに,カネを払うことは倫理的に誤りであり,法的非難に値することは 全く疑いない。" … と民主党上院議員 Richard Blumenthal が非難した。彼は,Uber の取った行為が "法に違反するだけでなく,期待されるべき標準に外れている。" … と言った。
     ここで問題になっているのは,2016 年にハッカーが ハッキングした事実を Uber に知らせたことである。当時 彼らは,Github 上のコード共有倉庫に見つかったログイン情報を使って アマゾンのサーバーに保存されている Uber のバックアップ・ファイルに何とかしてアクセスした。
     その結果,彼らは めいめいが Uber の世界中の約 5,700 万人の利用者 (そのうち 2,500 万人がアメリカに住む) と 約 400 万人の Uber 運転手のデータにアクセスできた。ほとんどすべての場合に,ハッカーは 名前, メール・アドレス, 電話番号にアクセスできた。そして 60 万人の運転手については,その免許証番号にもアクセスできた。
     当時 Uber は,このデータを取り戻して 確実に廃棄させるために $100,000 を払った。しかし,運転手にも乗客にも,州当局にも連邦当局にも ハッキングを知らせなかった。実際には,我が国ではほとんどすべての州が,大きなサイバー侵入について 顧客に通知するよう要求している。悪いことに,Uber は既に 別件のプライバシー問題とセキュリティ問題で 連邦政府の捜査を 受けているところだった。
     Uber は 2017 年12月末にこの漏洩の詳細を漸く公表し ── この発表は 新任の Dara Khosrowshahi CEO が着任すると同時になされた ── Uber は謝罪した。それか以来,州当局と連邦当局の新しい捜査が洪水のように始まった。火曜日のヒアリングで,Uber の最高情報セキュリティ責任者 John Flynn は,セキュリティ慣行を改善するとの Uber の公約を議員らに繰り返した。
     証言で Flynn は,"これは当社のバグ・バウンティ・プログラムの精神に合致しない" ことだった … と言った。 このプログラムは,Flynn によれば,800 件を超えるセキュリティ・バグに対して これまで合計 130 万ドルを払ったと言う。これを別にしても,"データ漏洩を早く開示しなかったことは誤りでした。" … と Flynn は強調した。
     しかし 議員らは,Uber の行ないに 極めて深い (immense) 不満を抱いており,さらにヒアリングを続けた。
     "影響を受けた利用者に通知するのにほゞ1年を Uber が要したという事実は,この委員会では レッドフラグに該当する。いかなる システム上の問題が,時間に敏感な情報を 無防備なままに放置された人たちに伝わることを阻んだのか。" … と このヒアリングを招集した共和党上院議員 Jerry Moran が言った。
     "Uber は 脅迫者たちと交渉すると同時に,FTC とも話し合っていた。" … と Blumenthal 議員は言った。彼は,沈黙を守るという Uber の最初の決定を "ほとんど 正義を妨害する1形態" であると呼んだ。
     上院通商科学運輸委員会のトップ民主党議員 Boll Nelson は,同様の不満を表明した。その際 彼は,議会が(企業にセキュリティ慣行を改善し,データ漏洩を開示するよう要求する) 新しい法律を通すよう提案した。

  41. Uber's Khosrowshahi to Make First Asia Visit as CEO in February
    Uber の Khosrowshahi が,CEO として初めて2月にアジアを訪問する
    Bloomberg,2018/01/25 @11:00 JST
    By Yoolim Lee
    Uber Technologies Inc の Dara Khosrowshahi は,アジア地域での配車巨人の未来について疑問の中,CEO を引き受けて以来 最初のアジア訪問の予定を立てた。
     Khosrowshahi は,2月19日(月) の週に,日本とインドを訪問して,実業界と政府の首脳と会見する … と Uber のスポークスマン Chris Brummitt が言った。CEO は,アメリカ企業が 乗客, 運転手 および 都市にサービスし得る方法を議論する予定である。
    Dara Khosrowshahi(©Simon Dawson | Bloomberg)
     前任者 Travis Kalanick の追放につながった一連の不祥事の後,CEO は昨年夏の就任以来,Uber のイメージ改善に魅力攻勢を掛けている。 前 CEO が取った闘争的手法ではなく,規制当局と密に協同すべきだと Khosrowshahi は言う。
     Uber は最近 日本の SoftBank Group Corp を筆頭株主にする取り引きを完了し,(インドでは Ola, 東南アジアでは Grab と正面から激突している) アジアで SoftBank が まとめ役になるのではないかとの憶測に火を点けた。
     Uber 取締役である SoftBank 幹部 Rajeev Misra は Financial Times の最近のインタビューで,Uber が アメリカ, 欧州, ラテンアメリカ, オーストラリアのような中核市場を重点にすると示唆した。今週のダボスでの会議で Khosrowshahi はこれに異議を唱え,Uber は "前懸かりで" 拡大するつもりだと言った。
    ほ~ら ご覧なさい (笑)。
     Rajeev Misra は デリバティブにだけは めっちゃ 強いが,会社経営の経験はゼロ。投資の経験も Fortress といういい加減なところに居ただけ。そういう人に 10 兆円を預けるアホ社長!
     SoftBank という虎の威を借る狐のように偉ぶった上から目線の物言いをする Misra が,おかしな口出しをして,Uber の経営をややこしくする。迷惑がられている。
    ──────
    2月19日というのは,何かの間違いか?(笑)
    常識的には ・・・ SoftBank の株主総会に顔を出すのでしょう。
     「ソフトバンクが投資してくれたことにワクワクしている」… そうだから。
    ──────
    スポークスマンの発言からは 「日本でも配車事業を認可して欲しい」ということになるのだろう。
     インドに行くのは どういうつもりなのか?
     モディ首相に会って,インドの女性乗客に対するレイプのお詫びか? これは 絶対に必要だ。
     インドの配車事業は ややこしい。
     Uber, Ola, Didi が三つ巴の争い。どういうわけか この三つ巴のすべてに SoftBank が出資している。
     しかも その持ち株が 過半数には全然届かない。いっそのこと 10 兆円くらいで全部の経営権を握れば,経営の大合同も可能だが,そこまでやる気は無いらしい。Didi の背後には大株主として 騰訊とアリババが控えているし。Uber の少数株主には 騰訊も サウジも控えている。
     要するに 小姑の目がウルサイのである。
     インドの E-コマースで起こったことから類推すれば,SoftBank としては,この3社を徹底的に争わせて,最後の勝ち馬に さらにカネをぶっ込む … ということだろう。そのための安全策として3社全部に あらかじめ投資した … と考えると分かりやすい。
     一部には SoftBank がまとめ役になって合同させるという説があるが,それをできる人材は 今の SoftBank には皆無である。実際 Snapdeal を説得して Flipkart に合併させるのだって,SoftBank は失敗した。

  42. Benchmark’s suit against Travis Kalanick is now over
    Benchmark の Travis Kalanick に対する訴訟が終わった。
    Recode,2018/01/25 @01:18 pm ET
    By Theodore Schleifer
    Uber の前 CEO は,心配事が1つ減った。
    Josiah Kamau | BuzzFoto via Getty Images)
     Benchmark の Travis Kalanick に対する問題含みの爆発的訴訟は,表向きは "済んだこと" である。
     訴訟を放棄するとの Benchmark の合意を受けて,判事は 木曜日, 前 Uber CEO に対するベンチャー企業の訴訟を永久に却下した。これで,Kalanick の影響力を狭めようとする 過去6ヵ月に及んだ Benchmark の試みの主要な部分であった みっともない法廷闘争が終わりになる。Uber の CEO の座から Kalanick を 先頭に立って追放したのは Benchmark だった。
     Benchmark は,Uber が (Kalanick と Benchmark 双方の力を弱める) 一連の企業統治改革を制定した暁には,この訴訟を取り下げるつもりであるとの合図を送っていた。その改革は1月18日に効力を持った ── Benchmark のファイリングによれば,ちょうどこの日に Benchmark は 初めて 訴状を取り下げた。
     デラウェア州衡平法裁判所 の Sam Glasscock III 判事は その裁定に "今回の訴訟とそれに係る主張は却下され,めいめいがその費用を負担すべきことが,Benchmark, Kalanick および Uber の間で合意され 各弁護士の署名により規定された。" … と書いた。
     Kalanick は 昨年夏,デラウェア州の裁判で調停に持ち込んで勝利を得たが,調停は カタツムリのように非常にのろかった。企業統治の改革は,双方の裁判争いの負担を軽くして Kalanick の後継者の足場を整えることを可能にした。
     それでも,疑問が残る:これらの企業統治改革は,もしも Benchmark が訴訟を起こさなければ どうなっていただろうか?
    もっと大きな疑問が残る:企業統治の改革は 取締役の数とかの変更だけで,実質的に何が改革されたのか?(笑)
     つい先日,Uber の運転手がカリフォルニア州で レイプ・強盗を働いて捕まったと AP が 容疑者の写真入りで伝えている。AP 以外は報道していない。なぜか?

  43. Uber to Be Profitable Within Three Years, CEO Says
    Uber は3年以内に黒字に ── CEO が言う
    Bloomberg,2018/01/24 @2:43 JST ?
    By Adam Satariano
      ダボスでのインタビューで,Dara Khosrowshahi は Uber の事業を自慢する。
      自分の目標は,混乱の後の会社を正常に戻すことだと CEO は言う。
     Uber Technologies Inc は 世界中で成長を求める中で 赤字の山が積み上がっているが,配車事業が成熟し,自動運転などの分野への投資から果実が得られるので,3年以内に黒字になるだろう … と Dara Khosrowshahi CEO が言う。
     会社の財務の軌跡を赤から曲げることは,毎年 何十億ドルもの赤字を出している 世界的配車サービスにとって 劇的なシフトであろう。ダボスの世界経済フォーラムで Bloomberg News の John Micklethwait 編集主幹に話し掛けた Khosrowshahi は,同社が 拡大に積極的であると同時に,効率を上げる方法を見つけていると言った。
     Khosrowshahi は 時間軸を具体的に示さなかったが,"2022 年より前に黒字になるだろう" … と言った。
     中核たる配車事業は,"3年以内に" 黒字になり得る … と彼は言う。ただし,"当社は 非常に猛烈な投資を続ける" とも言う。
     第3四半期,Uber は −$14.6 億の赤字を出し,第2四半期の赤字 −$10.6 億よりふえた。
     Uber を率いること 6か月弱,Khosrowshahi は 前例の無い混乱の時を逆転させようとしている。Uber は さまざまの政府捜査,セクシュアル・ハラスメントの訴訟,世界中のライバルからの競争の増大に直面している。Khosrowshahi は,2018 年の目標は 前 CEO Travis Kalanick が残した難問を受けて "正常に戻る" ことだと言う。
     "危険なほど速い成長は,文化の問題を隠すことがあり得る。" … と彼は言う。
     Uber は,自動運転技術に手厚い投資を行なっており,18ヵ月以内にいくつかの都市に車をふやし始めると言う。車は 当初 決められたルートだけで乗客を運ぶが,やがてはソフトウェアと地図システムが改善すれば,拡大する。
     Uber はまた,人を運ぶ "空飛ぶ車" を開発中である。Khosrowshahi は, 10 年以内に乗客を運べるだろうと予想する。
     Uber の IPO
     Khosrowshahi は,Uber を来年にも上場したいという。同社は 最近,日本の SoftBank Group Corp を筆頭株主にする取り引きを完了した。
     Uber 取締役である SoftBank 幹部 Rajeev Misra は Financial Times の最近のインタビューで,Uber が アメリカ, 欧州, ラテンアメリカ, オーストラリアのような中核市場を重点にすると示唆した。ダボスでのインタビューで Khosrowshahi はこれに異議を唱え,Uber は "前懸かりで" 拡大するつもりだと言った。
     昨年夏の就任以来,Khosrowshahi は Uber のイメージ改善に魅力攻勢を掛けている。 前 CEO が取った闘争的手法ではなく,規制当局と密に協同すべきだと Khosrowshahi は言う。
     テック業界は ── 特に 交通など 人の安全に影響を及ぼす分野での改革に関して ── 厳しい目に晒されている … と Khosrowshahi は言う。規制は "当然だ" … と彼は言う。
     Uber の CEO は,もともとは無人運転に懐疑的だったが,今では 白旗を揚げたと言う。技術の進歩は非常に早く,今日生まれる赤ん坊は 運転を学習する必要は 無いだろう … と彼は言う。さらに 一般大衆は,この技術の (特に 事故があった場合の) 影響と 手探りで格闘せねばならないとも言う。交通事故による死者は減るだろうが,Uber のような企業は 衝突事故があった場合 責任がある … という。
     Khosrowshahi は, Uber のガサツな企業文化を変えようとしてきたと言う。彼は Uber の元エンジニアで会社の性差別文化についてブログに投稿し, それが会社の捜査につながり, シリコンバレーの女性の処遇に関する議論を広めた Susan Fowler を褒めた。その余波を彼は,"困難ではあるが" (Uber に変革をもたらしたという意味で) Uber で起こった最善のことの1つであると呼んだ。
     Uber は 火曜日,Bo Young Lee を 保険のブローカー Marsh から最高多様性受容責任者として雇ったと発表した。これは,テック・ウェブサイト Recode が素っ破抜いた。ダボスで Dara Khosrowshahi は,女性をさらに歓迎する文化を作るために なすべき仕事がまだあると言った。
      — With assistance by Eric Newcomer
     CEO に就任して半年で これでは,かなり甘い。
      『配車事業が成熟し,自動運転などの分野への投資から果実が得られるので,3年以内に黒字になる』 … これは 大甘である。Dara さんは もっとまともな人かと思っていた。
     3年後に自動運転から利益なんか出るはずが無い。これだけでも CEO は失格である。
     配車事業が成熟すれば,参入はますます激しくなり,競争で赤字は増えるだろう。
     おまけに 配車事業に対する世界的規制は 厳しくなる。そこへ 空飛ぶタクシーのような「非常に猛烈な投資を続ける」のだから 赤字が増えるのは当然である。
     むしろ,そうなっても利益を上げられそうな新規事業を開発しなければ,会社は持たない。潰れる。
     ただし,日本の 大金持ちを自称するアホ社長が「非常に猛烈にカネを注ぎ込み続けて」くれる目途が立ったので,小康を得ているに過ぎない。
    ──────
     まぁ,ほとんど CEO 1人で会社を切り回している状況だから仕方ない。
     CFO は 2015 年以来空席である。ほかにも幹部職員は 続々退社していったのが埋まっていない。
     トランプ政権と同じである。実務をこなす部隊がいない。
     結局 Travis Kalanick とその忠実な部下のチームに経営を委ねるしかない。
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     赤字は 半年分で 10.6 (2Q) + 14.6 (3Q) = $25.2 億で,増加傾向にある。1年に換算すれば $50 億の赤字である。SoftBank は 金利負担を含めて,毎年 1500 億円程度の赤字負担を背負い込んだ勘定になる。しかも 会社としての SoftBank は,この赤字を積極的に減らす 人材・知的財産 を全く持たない。不思議な「投資」である。
     評価額 ~$500 億だから,SoftBank が今後 この赤字を支えなければ (笑), 10 年で破産する。その前に 評価額は急減するから,もっと早く破産する。
     SoftBank の「投資」は1兆円とも言われるが,Uber の金庫に入った真水は $12.5 億だから,Uber は赤字の穴埋めに使っても足りない。「これじゃ全然足りないよ。日本の大金持ちさん もっとくれ」
     来年も再来年も 数十億ドルの「投資」をお願いされるのは必至だろう。しかも それは 運転手への補助金や乗客へのプロモーションなどに使われる。到底「投資」とは呼べない。

  44. Uber has hired its first chief diversity officer
    Uber は 新設の最高多様性責任者を雇った
    ReCode,2018/01/23 @12:00 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    Bo Young Lee が,Holder レポートが Uber に新設するよう勧告した役割を埋める。
     Uber は, C-級幹部の採用に必死である。四面楚歌の配車企業は 今回,Lee Bo Young を 同社新設の最高多様性受容責任者として雇った … と情報筋が Recode に語った。
     Uber は,Lee が今年3月に新しい役職に就くことを認めた。
     Lee の採用は,新任の Dara Khosrowshahi CEO の下での,Tony West 最高法務責任者 および Barney Harford 最高執行責任者 に続く3番目の幹部人事であり,2017 年 Susan Fowler のエッセーにより初めて明るみに出た多くの問題に対応し,会社のイメージを一新しようとする Uber にとって,重要なものである。
     Fowler がエッセーを公表した後,Uber は 元司法長官 Eric Holder とそのパートナーである法務会社 Tammy Albarrán を雇って,会社の文化の調査を実施した。この調査の後,法務会社は ── 就中 ── 配車企業が 多様性担当の 現在の世界トップ Bernard Coleman を昇格させて,新設ポスト最高多様性受容責任者とするよう勧告した。Holder レポートは さらに,Coleman を Uber CEO と COO に直属とするよう勧告した。
     Holder の勧告は,次の通りである:
    “An empowered senior leader who is responsible for diversity and inclusion is key to the integrity of Uber’s efforts. Uber should elevate the visibility of the current Head of Diversity, Bernard Coleman, and emphasize the outreach component of Mr.Coleman’s position.” “In addition, the position should be renamed the “Chief Diversity and Inclusion Officer,” and the position should report directly to the CEO or the COO. This action is intended to reflect the elevated status of this role and demonstrate the company’s commitment to this issue.”
     『多様性と受容に責任を持つ強力な上級リーダーは,Uber の取り組みの完全性のカギを握る。Uber は 現在の 多様性のトップ Bernard Coleman の可視性を引き上げ,Coleman の地位がカバーする範囲を強調すべきである。
     加えて,この地位は "最高多様性受容責任者" と改名すべきであり,CEO または COO に直属とすべきである。この変更は,この職務の地位が格上げされたことを明示することを意図し,会社がこの問題にコミットしていることを実証するものである。』
    しかしながら 取締役会は,Holder の勧告を満場一致で実施すると決議したものの,Coleman を昇格させるか 外部から採用するかに関しては 未定のままとした。
     さらに,金融サービス企業 Marsh で最高多様性受容責任者であった Lee は,Khosrowshahi と Harford に直属しない;彼女は Uber の最高人材責任者 Liane Hornsey に 差し当たり直属する。
    Lee Bo Young
     Lee が就任すると,Uber のスポークスマン Momo Zhou は Recode に言った:Lee が Hornsey に直属のままとするか,あるいは Holder レポートが勧告するように Khosrowshahi に直属するかは会社が決める。Coleman は Lee に直属し,その職務は 明確に定義する必要がある。
     "我々は 数多くの仕事で 真のパートナーになるだろう。" … とニューヨークに拠点を置く Lee は言った。"Coleman の役割に関しては 少し彼と話した。"
     過去数年,Uber は多様性の数字の公表を拒んできた。しかし Fowler による Uber の性差別非難以来,Uber は 多様性を増し, 透明にする努力を公表してきた。例えば [計算機科学分野の女性をサポートする NPO] Girls Who Code に 120 万ドルの寄付を行なった。
     2019 年の上場を見据えて,Khosrowshahi は Uber の組織の立て直しを急いでいる。その1つが,絶対に必要な幹部のポストを埋めることである。しかし,最高財務責任者は 2015 年以来空席のままである。
    最高多様性受容責任者:(chief diversity and inclusion officer)
     耳慣れないポストであるが,ウェブで検索すると,この5年間に重要性が認められ,C-級の役員に格上げされた。現在,Fortune 500 社のうち 20% がこれを置いている。企業にあっては,人材資源運用と密接に関係し,高い教育を受けた担当者は,博士の学位を持つ。CEO に直属して 広範な権限を持つ。
     "inclusion" は "exclusion (排斥)" の反対であり,"社会的排斥をしないこと" を意味する。
     "diversity" は,民族,性差別,障害などあらゆる多様性を意味する。
    Uber が CDO を新設して,採用したらしい。
     セクハラレイプ問題を抱える Uber には 絶対に必要だろう。
     だがこの人は ニューヨークに住んでいるらしい。Uber の本社には勤務しないのか?
     しかも,CEO 直属ではないらしい。
     本気度が疑われる。おそらく実務について圧倒的なノウハウを誇る Travis Kalanick とその親衛隊のちからが大きいからだろう。
     そもそも 会社の文化を育てるのは人である (なぜこれを忘れるのか?)
     人を変えずに文化を 180° 変えるなんて不可能だ。
     たとえば SoftBank に住み着いている悪い文化は,社長を変えずに変えるなんて不可能だ。
      ── 胸にカンバンをぶら下げて 日本じゅうで笑いものされている『似非ロボットの父』であると自称するなど (笑) (朝日デジタル 2018年1月23日17時25分)
    ──────
     ところで ・・・ ,この記事の中に一番の大株主となったはずの SoftBank の名前が出てこない。
     CFO が 2015 年から欠員で困っているらしい。SoftBank の東京本社から 飛び切りの人材を派遣できないのか? どうしてもいないのなら,Masa を長期派遣せよ (笑)。
     日本の経営者の実力のほどを Uber に知らしめよ!(笑)

  45. SoftBank's Uber deal still faces regulatory review
    SoftBank の Uber 取り引きは,規制当局の審査がまだ 残っている。
      Axios,2018/01/20
      By Dan Primack
    SoftBank は 昨日,Uber への $93 億投資が完了したと発表したが, 完全に正しいことではない。
    Photo by Jaap Arriens/Getty Images
     結論:
     その通り。小切手は送られた;企業統治改革の変更は組み込まれた。だが複数の情報源は Axios に,この取り引きが 実は CFIUS の審査の対象であり,審査手続きが完了するまで SoftBank は取締役会で投票権を行使しない … と告げる。
     SoftBank は,少数株主であるので,必ずしも CFIUS に申請書を提出する必要は無かった。たとえば 騰訊 (Tencent) は,昨年 Snapchat の 12% の権益を取得したとき,申請しなかった。しかし,SoftBank は アメリカで今後とも 非常に活発にディールメーキングを続けるのであれば,規制当局の審査を受けるのが賢明だと言う考えであった。
       これが CFIUS を突破する (fly through) 確率は極めて高く,もしも押し戻されれば,SoftBank は何らかの 軽減合意を求めることもあり得るだろう。
       ただし 理論的には,裁判に訴えなければ $80 億以上のカネを取り戻せないこともあり得る。たとえば,Travis Kalanick は 昨日,自分の銀行口座に $10 億以上のカネを預金した。これを取り戻す見込みは無かろう。
     さらに注目すべきは,SoftBank Vision Fund の Rajeev Misra が ちょっとした誤りを犯した:Uber は アメリカ/欧州/ラテンアメリカという中核市場以外 ── すなわち アフリカ/中東/東南アジア ── から退場すべきだと Financial Times に 語った。
     深刻な問題:
     議会上院が CFIUS の規則の見直しを行なっている。
    Axios
     Axios は,このように短文で記事を構成するのが特徴らしい。
     Axios (stylized as AXIOS) is an American news and information website founded in 2016 by Politico co-founder Jim VandeHei, Politico's former Chief White House correspondent Mike Allen, and former Politico Chief Revenue Officer Roy Schwartz. The site's name, based on the term Greek: ἄξιος (áxios), "worthy", officially launched in 2017.The company had raised $30 million, as of November, 2017.
    当局の審査に半年くらいは掛かるだろうと思っていたが,それが CFIUS というのは意外である。
     CFIUS は,共産圏からアメリカへの投資に 目を光らせる機関である。
     SoftBank は,よほど 中国共産党との結びつきが強いと睨まれているのだろう。
     常識的には SoftBank が世界の配車王になるから,世界各国の独占禁止審査の対象になるのかと思っていました。

  46. Uber ,不採算地域の撤退加速 ソフトバンク出資完了
    日経電子版,2018/01/19 @13:05
    兼松雄一郎 (シリコンバレー)
    SoftBank Group Corp によるアメリカのライドシェア最大手 Uber Technologies の株式取得が完了した。SoftBank は,15%を保有する筆頭株主となり,2人の取締役を送り込む。2019年を目処とする上場に向け,不祥事が続く組織の引き締めと,不採算地域からの撤退を含む収益性改善へ圧力を強める可能性が高い。
    ■創業者と株主 対立緩和へ
     SoftBank は今回の出資で,創業者 Travis Kalanick 取締役と,同氏と激しく対立する主要株主の VC である Benchmark Capital の双方から一部の保有株を買い取った。創業者と主要株主の対立が Uber の経営混乱に拍車を掛けていたが,安定株主として SoftBank が加わることにより中立軸が生まれる。SoftBank からの出資受け入れには,社内対立の緩和と Dara Khosrowshahi 新 CEO の権力基盤を安定させる狙いがある。
     創業者 Kalanick は,セクハラ放置,規制当局の調査を掻い潜るソフトウェアの開発など,法令順守意識に欠ける組織文化の元凶となってきた。少なくとも資本の面では同氏の影響を薄めることには成功した。
     Uber は,グーグル系の Waymo から自動運転技術を盗んだ疑惑について裁判,個人情報流出の訴訟も抱えている。法廷でのやりとりや開示情報を見る限り 分が悪い。調達した資金の一部を使い,和解や課徴金の支払いで早期の幕引きを図ることになる。
    ■Uber は米欧に集中か
     SoftBank は,Uber と激しく競合する東南アジア最大手の Grab,インドの大手 Ola にも出資している。アジア市場では競争が激しく,Uber も利益は出ていない。上場に向け投資家は不採算地域から撤退するよう圧力を強めている。そこに SoftBank が加わり,比較的ブランドが強い米,欧,オーストラリアなどの市場に経営資源を集中する路線が固まりつつある。
     Uber は,既に中国では,SoftBank が出資する中国最大手 滴滴出行に事業を売却している。ロシアでも現地大手と合弁を設立し事実上事業から撤退した。ただ,中国やロシアでは撤退後も現地大手の関連企業に一部の持ち分は残しており,現地のサービスが成長すれば,一定の収益は得られる形になっている。今後,東南アジアやインドなどでもこうした撤退戦略を進める可能性が高い。関係者によれば既に Grab とは水面下では交渉している。
    ■グループ内で連携を模索  コスト競争力があるライドシェアは,先進国でもまだ市場の成長余地は大きい。上場に向け Uber が優先するのは黒字化への道筋をつけることだ。不採算のリース事業は昨年末に売却を決めた。
     収益性改善のための事業運営の効率化で SoftBank は一定の役割を果たしそうだ。SoftBank が出資する同業大手との間で,海外旅行客などの顧客の相互融通,一部のインフラ技術や地図データなどの共有,Uber が開発する自動運転車の導入といった連携の形を模索していくことになる。
    シリコンバレーの記者が書いたと思うと,読む人は 100% 信用するだろう。それが怖い。
     シリコンバレーというよりは,SoftBank からのリーク情報を記事にした感じである。
     (1) 「不祥事が続く組織の引き締め」とか「対立緩和」とかは,SoftBank が1兆円を出して,ボンクラの取締役2名を派遣すれば,魔法のように実現するのか?(笑)
     そんなものは,ボンクラ取締役2名にできるはずがない。そもそも 就任後4ヵ月半の Dara CEO にそれができるのであれば,SoftBank とは無関係に さっさと進行していなければならない。いまだに何もできていないということは,1兆円が入ってもできないということだし,実際 実質的な改革はほとんどできないだろう。
     (1a) 日経続報で 大物を派遣で トラブル一掃,経営立て直し … と書いてあるから誰かと思ったら,ボンクラ2名だった(笑)。Claure は Sprint の経営を預かって 何もできないボンクラ。もともと 社長経験が皆無の人を半年の特訓で無理に社長に仕立て上げた。
     Rajeev Misra はドイツ銀行で デリバティブを始めて ドイツ銀行を大儲けさせたが,経営の経験はゼロ。アリババ株を売却したときのデリバティブの組成の腕前に 社長さんは いたく感銘して重用している。
     そもそも取締役って 会社経営に腕をふるえるんだろうか? CFO はまだ決まっていないんだし,欧州の営業トップも空席だし ・・・ 。ほかにも C-級役員の空きポストは沢山あるらしい。最高レイプ禁止責任者も「トラブル一掃」には 絶対に必要だし。
     (2) 騰訊が加わっていることが厄介である。
     日経は書いていないが,コンソーシアムの少数株主に 騰訊 (Tencent) が加わっている。おそらく 取締役を指名する権限は無いだろうが,株主の中では (SoftBank より遥かに) 強大な企業であるだけに,その意向を無視して物事を決めることは難しいだろう。これが 案外に厄介になる可能性がある。
     (3) 米欧に集中ですか?
     欧州は,年末に欧州裁判所から判決が出て,配車事業はタクシー事業と同じ規制を受けることになった。事実上 Uber は営業禁止である。僅かに東欧で営業できるに過ぎない。なお,欧州の営業トップは 辞職して,後任が決まっていない。
     Uber のこれまでの合理化路線は,ロシアから撤退 (Yandex に売却),中国から撤退 (滴滴出行に売却) … と撤退続きである。
     これを そのまま延長するのであれば インドも東南アジアも撤退して 滴滴出行に売却するのが自然である。そうすると 滴滴出行と Ola, Grab の競争となる。(Ola, Grab に売却すると 滴滴出行を敵に回すことになる。それは 滴滴出行の大株主である騰訊が許さないだろう)
     (4) SoftBank グループ内の連携。そんなもんできるのか?
     誰が音頭を取るの? もちろん配車事業に詳しい人でなきゃね。
     そんな人材は東京に1人もいないでしょ。
     人材ゼロで1兆円を投じるという世界の歴史に残る初めての歴史的試みである。
     「当社には そういう音頭取りは いませんが,皆さん よろしく適当に連携して下さい?」… 世界の笑いもの!
     (5) Uber を安く買ったと言うけれど ・・・
     今年の 2Q と 3Q で Uber は合計 $25.2 億の赤字を出した。1年に換算すれば $50 億の赤字!
     SoftBank が1次で買い取った株はたったの $12.5 億だから,この赤字を埋めきれない。
     しかも $50 億という赤字は 評価額 ~$500 億の 10 % である。(ソフトバンクが仮に時価総額の 10% の赤字を垂れ流せば ~1兆円の赤字である)。いかに巨額であるかが分かる。Uber はこういうひどい会社だから「安く」しかも「競争相手なしに」出資できたのである。
     おそらく 来年も再来年も「赤字埋め合わせのための出資要請」が来るだろう。さもないと Uber は潰れてしまう。あるいは これまでの出資者から文句が出る … 自分たちの出資したカネが赤字に喰われる (笑)。気前の良い大金持ちに 赤字を負担させよ! 年率 +44% の運用で カネが余って困っているらしいから。

  47. Uber’s big SoftBank deal has officially closed
    Uber の大きな SoftBank 取り引きは正式に完了した
    TechCrunch,2018/01/18
    By Darrell Etherington
    Uber によれば,SoftBank の $12 億 1次直接投資は,正式に終了した。
    Uber は取り引きの完了を確認し,広報担当者を通じて 次の声明を TechCrunch に寄せた:
    We’re proud to have SoftBank, Dragoneer and the entire consortium in the Uber family. This is a great outcome for our shareholders, employees and customers, strengthening Uber’s governance as we double down on our technology investments and continue to bring our services to more people in more places around the world.
      [当社は SoftBank, Dragoneer, および コンソーシアム全部を Uber 一族に受け入れることを誇りに思う。これは,当社の株主, 従業員 および 顧客にとって偉大な結果であり,当社が当社の技術投資に倍賭けし,当社サービスを世界中のさらに多くの地域でさらに多くの人にもたらし続ける中で,Uber の企業統治を強化するものである。]
    Uber-SoftBank 取り引きは,2次売却による決済が木曜日までに処理され,この取り引き構造の一環として Uber が合意した企業統治の改革は 本日正式に発効することを Uber は 確認した。
     すなわち,Uber 創業家 Travis Kalanick は,30% の持ち株のお蔭で 紙の上でも現実にも 正式に億万長者となる。同時に,SoftBank は Uber の筆頭株主であり,新しく取締役のポストを得,Uber が 2019 年に予定する IPO に備えるのを助ける。
     SoftBank Investment Advisers の CEO と SoftBank Group の取締役を兼務する Rajeev Misra は,この取り引きの完了に関する次の声明を TechCrunch に寄せた:
    We are very pleased to have successfully closed the Uber investment and appreciate the support and professionalism of the Board, management team and shareholders who made this transaction possible.
     Uber has a very bright future under its new leadership. It is now part of a wider SoftBank network ranging from Sprint to WeWork. I look forward to SoftBank helping Uber become an even bigger global success.

     [当社は,Uber 投資を成功裡に完了したことを非常に喜び,この取り引きを可能ならしめた Uber 取締役会, 経営チーム および 株主の支援プロ精神を高く評価する。
     Uber は 同社の新しいリーダーシップの下で 非常に輝かしい未来を持つ。同社は今や,Sprint から WeWork に到る広範な SoftBank ネットワークの一部となった。私は,Uber がさらに大きな世界的成功となるよう SoftBank が助けることを期待する。]
    Rajeev Misra の発言は,どう見てもおかしいよ。
     自分が SoftBank+Uber 両方の取締役になって,助けるのがほんとでしょ。
     「ソフトバンクが助けることを期待する」ってのはどういうこと? 他人事みたいだ。
     自分は ソフトバンクの一員だと思っていないんだ!
     ついに化けの皮が剥がれた!(笑)
    Uber が こければ,SoftBank の "Vision Fund" は短命に終わるだろう。
      ・・・ この宣言 (↓) が成就するかどうか 注目したい (笑)
     たぶん そうなるにしても Uber こけるまでに 10 年は掛かるだろう。
     それとは別に,世界中の各国での独占禁止審査に半年くらい掛かるのではないか?
      ・・・ 何しろ SoftBank が世界の配車企業をほぼ独占的に手に入れるのだから。
     滴滴打車と快的打車が合併して滴滴快的 (後に 滴滴出行) が生まれた時も この審査があった。
     中国の2大配車企業の合併はこの懸念があったのだが,結果として問題は無かった。その理由は,参入があまりにも容易なために,2社の独占度はそれほどではなかったためということだった。
     今回も そういうことかもしれない。雨後のタケノコのように新規参入がある,競争の激烈な業界らしい。
    ──────
     日経『収益性改善のための事業運営の効率化でソフトバンクは一定の役割を果たしそうだ』
     だとさ。ソフトバンクの誰がやるの? 誰もいないでしょ?(笑)
     東京本社からトビっきりの幹部を派遣できればいいんだけど。いるの?
     Ola, Grab, 滴滴出行 と Uber の間の交渉を SoftBank の誰が助けられるの ?
     ちなみに 99 は SoftBank 株を滴滴出行に全部 売り渡して撤退した。
     米欧で ・・・ とかも おかしいよね。欧州は 裁判所でタクシーと同じ規制という判決が出た。
     むしろ 配車事業に限らず,SoftBank が頼る「ギグ経済」路線が厳しい目で見られるようになるから,ソフトバンクの世界戦略が圧迫される方向にあると思う。

  48. Build a Wall Between Uber and Travis Kalanick
    オピニオン:Uber と Travis Kalanick の間に壁を建てよ
      Bloomberg Businessweek,2018/01/13 @02:42 JST
      By Joe Nooera
    創業家の歪んだ倫理は,重役室を去った後も株主価値を減らし続ける。
     Uber の前 CEO で現在も取締役を務める Travis Kalanick について,最近の2つの記事が私の目にとまった。
     1つは 先週金曜日のもので,Kalanick が Uber の持ち株の 29% にあたる $14 億相当を SoftBank に売る … というものだった。これは 日本のテック投資家が Uber の 15% を取得せんとする動きの一環である。
     もう1つは,Bloomberg Businessweek による暴露記事であり,"Ripley" と呼ばれる秘密のツールに関するものだった。Ripley は 2015 年と 2016 年に使用され,サンフランシスコの Uber 経営陣は,これを用いて どの外国にある Uber オフィスのコンピュータも シャットダウンすることができた。記事によれば,Ripley の目的は "警察の摘発をかわす" ことだった。"少なくとも 2ダース回" 使用された。
     Businessweek の記事には Kalanick の名前は 全く出てこない;むしろ,この戦術は Uber のセキュリティと法務部門のそれぞれの 元トップだった Joe Sullivan と Salle Yoo のやったことだと示唆している。両名は昨年秋に Uber を退社した;Kalanick 自身が CEO を辞職してから 何ヵ月も後のことである。とは言え,Kalanick がこの歪んだ文化を涵養し,その文化が幹部らにこのようなツールを持つよう督励したことは疑い無かろう。
     2014 年,大富豪投資家 Peter Thiel は,Uber をシリコンバレーの中の "倫理的に最も問題のある" 企業と形容した。Uber は当時 伸び盛りであり,Kalanick は時代遅れの業界の古典的 "破壊者" として広く称賛されていた。このため Thiel の発言は,Lyft に投資している人間の "やっかみ" として却下された。
     だが Thiel は,真相の半分も知らなかったのである。彼は,Uber の Lyft に対する営業妨害工作をあげつらった (Lyft を呼び出しておいてキャンセルする;Lyft の運転手に Uber に乗り換えよと説得するなど)。今では 我々は知っている;Uber の Lyft に対する攻撃は,Kalanick の指導の下での Uber の反倫理的行為の 氷山の一角に過ぎない。
     たとえば 今年3月,New York Times は,Uber が "配車サービスを取り締まり中の警官を識別して避ける" 手段を開発したと報道した。たとえば 配車サービスが法律により禁止されているオレゴン州ポートランドで これが使われた。
     Uber は,別の狡猾なソフトウェア・ツールも使用した;こちらは Surfcam と呼ばれ,東南アジアでの主たる競争相手 Grab の運転手を監視するものだった。
     Kalanick はまた,Alphabet から スター技術者を雇った;この技術者が (Uber が開発しようとしていた) 自動運転車のために企業秘密を持ち込んだと非難されている。この技術者は最終的に解雇されたが,Alphabet は Uber に $27 億の損害賠償を訴えている。
     彼はまた,女嫌いの "bro" 文化を植え付け,これが2月に Susan Fowler が書いたブログ投稿により暴かれた。Fowler はこれを嫌って Uber を退職した [実際には Fowler はセクハラ被害を述べたと報道されている]。結局, Kalanick の Uber は,多くの企業を制約する法律と倫理基準の両方を軽蔑した。
     これらの 行ないは,重大な結果をもたらした。
     まずはじめに,Bloomberg News によれば,Uber は連邦政府による5件 ── 間違いなく5件である ── の捜査の対象になっている。アルファベットによる あの訴訟がある;これは Alphabet がほとんど勝ちそうだ。 自動運転で一番乗りをしたいという願いは,大きな金儲けをするためには 多分必要だが,ほとんど 今では潰れた。
     Uber には,女性の技術者が応募しない。有能な男性技術者は,行ないが不良との理由で解雇された。ロンドン市は,Uber を営業禁止にした ── 一時的なものか,そうでないのか。英国のその他の都市は,これに倣っている。Uber が浸透を希望していた国々も同様である。欧州最高裁判所は,Uber がテック企業ではなく輸送企業であると判決した。したがって,タクシー会社と同様に規制を受ける [例えば タクシー運転手の免許を持つ人だけが運転できる。白タク禁止である]
     要点は,Kalanick が CEO でなくなった今でも ── 新任の Dara Khosrowshahi CEO が "正しいことをする" と誓ったにも拘らず,Uber には味方がいない。参入を希望するどの市場でも,疑いの目で見られる。これは,Kalanick がしたことである。
     このような不正は,Uber の評価を傷つけている。ピーク時には $680 億の値打ちがあると言われた。しかし SoftBank が投資すると,それより 30% 安い評価で買った。Uber は 2019 年に上場を予定する。それまでには評判を回復する時間がたっぷりある。しかし IPO はかつて考えられていたようなスラム・ダンクではない。Kalanick の目線で考案された よこしまなスキームに取って代るものがそれまでの間に浮上するかもしれない。
     私の考えでは,Khosrowshahi がすべきことが1つある;それは 悪材料の前から外へ出ることだ。報道記者に 昔の Uber の戦術について記事を書かれる代りに,そういうニュースを自分から発表すべきだ。そうすれば 開示が与えるショックの程度は弱くなり,Uber が本当のコーナーを回ろうとしていることを示せる。
     ただし,Kalanick は依然として Uber 内部に多くの崇拝者を抱えており,これも変わらねばならない。今年の夏に CEO を辞任した後でも,彼は 取締役会に通知せずに,仲間を何人も取締役として連れ込んでトラブルを引き起こした。その結果,Uber を最初に支援したベンチャー資本 Benchmark が Kalanick に対し訴訟を起こした。SoftBank の投資は,Kalanick に対する訴訟と並んでその権力を削ることを目的としていた。有難いことに,この両方が達成された。
     新任の CEO は,会社の文化を変えると約束し,これまでに使われてきた いくつもの戦術について謝罪した。彼は,Kalanick との間に少なくともいくらか 距離を置いている。しかし,彼は 明確にしかも 公然と Kalanick を排斥すべきである。彼は,Kalanick をいまだに 偉大なリーダーと見なす Uber のスタッフに辞職を命じるべきである。さらに,Kalanick は取締役に留まっているものの Uber は彼に助言を求めないことを明言すべきである。
     Uber は,Kalanick を大富豪にした。Uber は,他の多くの人を金持ちにする可能性もある。しかし それは,前のボスに背を向けた 後に限る。
      This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.
      1つ下の記事と概ね似た感じであるが,Uber の不祥事を簡単にまとめているところが分かりやすい。
      こういう情報を知っていて,その上で1兆円もの株主のカネ (個人のカネではないよ) をぶち込もうという 社長さんは どう考えてもおかしい。おかしいことは,出資で競合する相手がいなかったことからも分かる。
      ここで著者が言いたいのは,タイトルにあるように,Kalanick の影響力を無くせということだろう。そんなことできるの? SoftBank 組から参加する2名の取締役に。
     Dara Khosrowshahi さんも手を焼いているらしい。
     Kalanick にしてみたら,Uber をここまで 自分が大きくした。この配車事業という形態も自分が考案した。いわば特許のようなものである。そのノウハウも全部自分が心得ている。そこへ 外部から旅行会社の社長さんが1株も持たずに落下傘で乗り込んで来て「企業文化を変える」とか言ったって,事業の細かいことを知らない人には何もできない。お手並み拝見。自分の優秀な部下に任せておけば,営業は問題ないでしょう … と言いたいだろう。
     乗り込んできた Dara Khosrowshahi さんが ご自分で配車企業をやってみればいい。SoftBank から乗り込んできた Claure と Misra が自分で配車経営をできるのか? なぜ 自分を追い出そうとするのか? … てな感じですね。SoftBank が乗り込んできても何もできない。カネさえ出してもらえば それで結構。 同志的結合なんて言われても,Kalanick に 笑われるだけ。じゃぁ,お2人の取締役さんで 世界全部にわたる「同志的結合」をやってください。
     結局 Kalanick が 実質的 CEO でないと,この会社はやっていけない。追い出すことはできない。
     何があろうと,当社の社長を追い出すことが不可能なのと同じである。
     どちらも 追い出せば潰れる。 ・・・ あるいは,潰れなければ 追い出せない (笑)。

  49. Uber Technologies Inc. Is a Massive Risk for Softbank
    Uber Technologies Inc は,SoftBank にとって ドッシリ重いリスクである。
    InvestorPlace,2018/01/09
    By Dana Blankenhorn
    Uber Technologies Inc は,SoftBank が 20% の買い付けを終えた後, $480 億に評価されている。
     前回の非公開投資ラウンドは,Uber が $680 億の値打ちがあると言った。したがって,今回の新しいラウンドは "ダウン・ラウンド" である。$680 億の評価で Uber の株を買った人は誰しも ── SoftBank に売ったとすれば ── 損をした。
     ただし,売却した人のほとんどは 初期投資家であるから,彼らは 巨額の利益を得た。創業家で元 CEO の Travis Kalanick は,自分の持ち株の 29% を SoftBank に売って 今では大富豪の仲間入りをした。Menlo Ventures, First Round Capital, Benchmark Capital は,いずれも Uber の初期支援者であり,利益を得た。
     Kalanick は,Uber を切りまわして,アプリをベースにする配車事業という新しい世界で スタートアップ企業を世界一の存在に押し上げた。しかし,Uber は 今では金持ちの競争相手 ならびに (規制しようとする, あるいは 禁止さえしようとする) 諸政府からの挑戦に直面している。
     Uber は 救済可能か?
     SoftBank との取り引きは,Uber の過去のトラブルに終止符を打ち,新たな $12.5 億の資本により会社を再立ち上げするよう設計された。
     Uber は1月7日に,Nvidia からの自動運転車用チップをテストしており,これを 自動運転車に使うと発表して,気を散らせて (distract) いる [?]
     Expedia の 元 CEO だった Dara Khosrowshahi が今では Uber を引き受けている。彼は,(セクシュアル・ハラスメントへの非難,政府規制当局による反発,"delete Uber" 運動,膨大なデータ漏洩に蓋をするためにカネを払ったこと … などに会社が晒された) 地獄の1年を 人々に忘れてもらいたい。
     アルファベットが 昨年2月に起こした訴訟は,Uber 最大の頭痛であろう。グーグルは,元従業員 Anthony Levandowski が Waymo の自動運転車部門から企業秘密を Uber [の自動運転トラック部門 Otto] へ持ち逃げしたと訴えている。
     この公判は,Uber の元従業員 Ric Jacobs から (Waymo の技術を盗み,競争相手をスパイせよとの Kalanick の個人的な指示を明らかにした) 書簡が発見されたことにより遅れている。
     Uber は救済に値するか?
     間違ってはいけない。2017 年に 40 億の乗車があった Uber で救うに値するものが無いわけではない。同社は巨大なインフラ,数千人の運転手,そして "uber" を動詞にして "ウーバーする" という使い方があるほどのブランド忠実度を持つ。
     Khosrowshahi は,(2013 年に Expedia が買収した) Orbitz の元 CEO Barney Harford を Uber の新設の COO に引き抜いた。Harford は コスト削減を任されており,2019 年に予定されている IPO までの黒字化を期待されている。同社は 2012 年の第2, 3四半期に合計 $25 億弱の赤字を出した。第4四半期の決算はこれからである。
     SoftBank は,株の買い付けと同時に,Sprint の CEO Marcelo Claure と SoftBank の $1,000 億 "Vision Fund" を動かしている Rajeev Misra を Uber 取締役会に送った。これで 定数は 17 になる。SoftBank は Sprint を支配している。かつて Sprint は,その電話に Uber のアプリをプリ-インストールしていた。
     結 論
     Uber のあらゆる問題の中で 一番大きな問題は,その支援者が強欲だということだ。
     彼らは,予定された IPO を延ばしに延ばし,そのため 昨年の乗車数が 73 億を記録する滴滴出行のような競争相手を育て,その結果 Uber は中国から追い出されてしまった。
     政府による反発の中を,Uber は非上場を通してきた。タクシー会社とリベラル系団体は,Uber が民間資本を使って 良い雇用 (しばしば 労働組合) の抹殺を援助すると言う。
     ロンドン・シティーは,Uber の営業免許の更新を拒み,Uber が禁止される場所のリストにロンドンを加えた。このリストは,今では アメリカ合衆国の一部の州,カナダ,オーストラリア および 西欧の諸国に加えて,ブルガリア, ハンガリーにまで広がっている。
     私の個人的見解は,Uber は勢いを失ったということだ。だから,SoftBank はこの事業に入るのが遅かったことが分かるだろう。グーグルの訴訟は,自動運転車市場から Uber を叩き出す;滴滴出行は アジアから Uber を追い出す;政治家は Uber と戦おうとしている。
     ここは,インする良い立ち位置ではない。ここは ベンチャー資本投資のあらゆるリスクを抱えた企業再建である。Uber が こければ,SoftBank の "Vision Fund" は短命に終わるだろう。

  50. Sprint’s Marcelo Claure will join Uber’s board, which is set to grow to 17 directors
    Sprint の Marcelo Claure が Uber の取締役に就任する;これで 取締役は 17 人に増える。
    Recode,2018/01/06 @07:21 pm ET
    By Kara Swisher
    一度は Uber の CEO のリストにのぼったが,Claure は SoftBank が確保している2つの取締役の1つを取る。もう1つは Vision Fund の Rajeev Misra に行く。
    Marcelo Claure to join the team at Uber
    John Sleezer | Kansas City Star | TNS)
    [カンザスシティ・ロイヤルズのユニフォーム]
    一度は Uber CEO の最終候補者名簿に残った Sprint の Marcelo Claure は,数週間後に Uber の取締役になることをいくつもの情報筋が認めた。
     世界を動き回る (globe-trotting) 通信の CEO は,これまでにも取り沙汰されていたが,SoftBank による (今月末に完了見込みの) 公開買い付けが成功したことを受けて,日本の投資巨人 SoftBank が獲得する 取締役2枠の1つを取る。
     もう1つは,配車企業の大量の株式を買う数十億ドルの取り引きを仕切った SoftBank Vision Fund のトップ Rajeev Misra に行く。
     Sprint のオーナーは SoftBank であり,Claure と Misra は SoftBank の取締役でもある。しかも Claure は Uber 取締役の何人かが CEO の候補リストの高位に置いていた1人である。
     2人は,現在 11 名の Uber 取締役会に加わる。現在の取締役は,Dara Khosrowshahi CEO,CEO を追放された共同創業家 Travis Kalanick,ならびに 多数の投資家と数名の独立取締役から成る。
     パン屋の1ダース [=13 を表す慣用句] だけでも 非上場会社にしては多すぎるのに,長年に亘り揉めた取締役会は,さらに3人の独立取締役と 独立議長を探している。
     はい,合計 17 人です ── ほとんど野球チームが2つできる。もしも これでは やりにくそうだとか,Uber の企業統治に混乱をもたらすだろうと考えるなら,その通り! (Uber にとって あまり良いことではなさそうだし,Uber を取材する全てのメディアに リークの贈り物をすることになる。何しろ 17 人の取締役にコメントを求めて 徹底取材することになるから)。
     Uber は,議長枠に集中して 取締役候補を探しており,Khosrowshahi が その選考過程で重要な役割を演じるだろう … と情報筋は言う。なぜなら 彼の元のボスである IAC と Expedia の議長 Barry Diller がその最有力候補として挙げられたからだ。ただし Diller は昨年 Recode に,そのつもりは無いと言った。
     昨年 10 月のテック会議で,Uber の議長職を引き受けるつもりかと質問されて,"No" と Diller は言った。 "少なくとも,私には なすべき仕事が 十分にある。"
     "suffer-no-fools [=愚人との係わりを拒否する]" Diller が,そういう大きな しかも間違いなく複合的な役目を引き受けることに関心が無いのは当然である。私の目には,猫の喧嘩に近い (実際 Diller は きっと,猫の皮を剥ぐ方法が1つだけではないことを知っているが,誰がそんなことをしたいだろう?)。
     このような メガ-取締役会は,Uber が長いこと 走ってきた 機能不全のハイウェイでダウンすることは確実であるが,多くの人は 長いこと 壁に衝突することのなかった トラブった会社の最後の一撃であると期待する。Uber は 依然として (政府による いくつもの大規模調査,規制違反,訴訟を含む) いくつもの争うべき大問題を抱えている。
     それから そうそう,Lyft が最近 アルファベットの投資基金 CapitalG から $10 億を調達した。Google Ventures (GV) も Uber に出資している。
     どれだけ面倒な仕事かを分かりやすく言うと ── 毎朝 引き出しを開けると,新しい死体が見つかる … というような。Khosrowshahi は 何人かの重要な人を雇った ── PepsiCo の幹部だった Tony West を法務顧問に,Orbitz の CEO Barney Hanford を COO に。彼は CFO も雇いたい ── Uber は長い間 CFO が欠員である。内部の多くの人は,女性の幹部も加えて欲しいと言う。
     Uber,SoftBank ── そして猫さんたちからも コメントは無い。
     1兆円ものカネをぶち込んで,東京本社から 幹部職員を1人も派遣しない / 派遣できないというのは, 世界中の笑いもの。投資先が 1000% 善意だと信頼しているのか?
     誰も派遣していなければ,関心の程度が低いと思われて当然であり,何が起こっても文句は言えない。
     実情が分からないから,訴訟も起こせない (インドネシアの 300 億円丸損は,訴訟を起こしたのか? 泣き寝入りか?)
     送るべき人が1人もいないのが実情だろうが,それなら 外国投資は危険だから,やる資格が無い。

  51. Uber powered four billion rides in 2017. It wants to do more — and cheaper — in 2018.
    Uber の 2017 年乗車数は 40 億を記録した。2018 年にはさらに多くしたい ── さらに安くも。
    Recode,2018/01/05 @04:09 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    "私は,ゼロ欠陥 文化を創りたい。" … と Barney Harford COO が Recode に語る。
     世界 78ヵ国の 600 都市で営業する Uber は,他の点では動乱のこの1年に,2017 年だけで 40 億の乗車を何とか達成した。2017 年5月に 会社設立以来 50 億の乗車を記録した Uber にとって,これは注目すべき数字である。
     しかし,Uber が初めて新設したポスト COO [最高執行責任者] に就いた Barney Harford にとって,十分良いとは言えない。彼は Uber を効率よくしたい。
     "私が 特に注目しているのは,営業効率と規律の達成に関することだ。" … と Harford は Recode とのインタビューで言う。
     しかも,それは 素早く実現する必要がある。[Expedia の子会社, 旅行ウェブサイト] Orbitz の元 CEO だった Harford は,2019 年の Uber の上場に備えて,大事な1年を目前にしている。その大きな部分は,Uber の赤字を削減することだ。配車会社は 昨年第3四半期に 赤字を −$14.6 億に拡大した(第2四半期は −$10.6 億の赤字だった)。[↓Wall Street Journal による決算データ]
     ケンブリッジ大学を卒業した Harford は,Dara Khosrowshahi CEO の長年の仲間であり,Expedia で共に働いていた時,マーケティングやカスタマー・サポートに体系的な方法を用いて,コスト削減に集中したと語る。
     Harford は,Uber のマーケティング用のカネを 従来のマーケティング・チャネルと 乗客 および 運転手へのプロモーション/補助金にどのように分配するのが最善かを計算する作業を託されている。
     "今後の 12ヵ月に,このような投資の配分を 我々がどうするかを見て欲しいと思う。" … と彼は言う。
    新任の Uber COO, Barney Harford
     だからと言って,Uber が補助金を全くやめるという意味ではない … と彼は言う。Uber は既に 運転手に対するインセンティブの支払いを 四半期ごとに減らしてきたが,補助金が (赤字の最大の原因ではあるものの) Uber が 乗客と運転手を惹きつけ/維持するための コスト効率の良い方法であることに変わりは無い。
     例えば,新しい都市や市場に参入するとき,新しい運転手と乗客を惹きつけるために,プロモーションを増やすのが普通である。しかし,Uber がライバルの滴滴出行に吸収合併を余儀なくされた 中国のようなところでは,長年に亘る 高価な補助金戦争に巻き込まれてしまった。
     その上で,Uber は また 歴史的に TV のスポット広告などの広告手段に投資してきた。Harford は,依然として 乗客を減らすことなしに マーケティング用のカネを うまく使うにはどうするかという困難な仕事を抱えている。
     コスト削減のもう1つのカギは,カスタマー・サポートを効率よくすることだ … と彼は言う。
     "私が注目したいのは,効率の文化 すなわち ゼロ欠陥文化 を産み出すことだ。" … と彼は言う。"なぜなら,これにより いくつもの問題が解決できる。(1) ゼロ欠陥文化は コストを削減する。 (2) ゼロ欠陥文化は 遥かに強化された体験を 顧客に ── 乗客に, 運転手に, レストランに [UberEats を想定?] ── 産み出す。"
     カスタマー・サポートは,どんな会社でも カネが掛かる 困難な問題である。しかし,Uber の規模なら,大問題ではあるが,会社を正すには欠くべからざる使命である。
    数字で見る Uber
       7,500 万の月間アクティブ利用者。
       300 万の全運転手 (先月に4乗車以上の運転手のみを数える)
       1日あたり 1,500 万乗車。
       2017 年1年で 40 億乗車。
    最近の記録
       2017年5月に 50 億乗車を達成。
       2016 年7月に 20 億乗車を達成。
       2015 年12月に 10 億乗車を達成。
     Uber のカスタマー・サポートの非効率は,長年にわたって,多くの運転手問題の前線にあり,Uber は 臨界質量の運転手を失うという立場にはない。この理由から,カスタマー・サービスは 運転手改善キャンペーンの間 Uber が解決しようとした最初の問題であった。
     だが,7,500 万人の月間アクティブ乗客と 300 万の全アクティブ運転手を抱えて,カスタマー・サポートを保証することは,効率的であり,拡大可能であり,資源の流出は大した問題ではない。Harford は,"欠陥" すなわち 問題の数を減らすことが,最初のステップであるべきだと言う。
     "1日の乗車数が 1,500 万ならば,比較的低い 接触率でも エージェントが処理しなければならない膨大な数の接触を生む。" … と Harford は言う。"ところで,エージェントとチャットがしたいとか 話しかけたいという人は1人もいない。彼らは とにかく問題が起こらないことを願う。"
     一般に Harford は,UberEverything 部門より従来のライドシェア事業に注力したい。COO として Harford は,(Rachel Holt, Andrew Macdonald, Pierre-Dimitri Gore-Coty, および UberEverything を担当する Jason Droege などの) ゼネラル・マネージャたちが率いる地域事業を統括する。
     "UberEats には,偉大なリーダー Jason がいる。" … と Harford が言う。"彼は 事業だけでなく製品とエンジニアリングの両方の責任をフルに負っている。私の目標は,いま 明らかに超成長モードにある あの事業の足を引っ張らないようにすることだ。"
    Uber は,幹部職員の退社が続出して,後任が埋まらない。
     それでも 漸く Dara Khosrowshahi CEO を Expedia で支えてきた Barney Hanford を COO として引っ張ってきました。今後は この人が実質的に Uber の切り盛りをするのでしょう。
     このインタビューを読んでどう思いますか?
       ケンブリッジ出の秀才だ。
       頼りになりそうだ。
       SoftBank の「情報革命を通じた 同志的結合により世界の人をしあわせにする」という看板にぴったりだ。
       大いに期待できる。

  52. Benchmark is selling $900 million of its holdings in Uber
    Benchmark は,Uber の持ち株 $9 億を売る。
    Recode,2018/01/05 01:23 pm ET
    By Theodore Schleifer
    Google Ventures も 数億ドルを売る。
    Benchmark のパートナー Bill Gurley
    Michael Dovac | Getty Images)
    Benchmark Capital は,Uber の持ち株 約9億を SoftBank および その他の買い手に売ることになる … と この取り引きに詳しい1人が言う。$9億は,Benchmark が持つ Uber 株の約 14.5% に当たる。
     Benchmark は 昨年,Uber の評価がやがて $1,000 億を超えると言っていたが,先月 その半分以下の評価で その持ち株の約 25% を売ろうとした。
     ところが,余りにも多くの投資家が Uber の持ち株を売りたいので,Benchmark は その他の全ての株主と同様に 申し込んだ株数の 58% ── 持ち株の約 14.5% ── しか売れなかったと彼らは言う。
     Uber の株式は $480 億という大幅割引で売られた。この価格では,Benchmark は 14.5% の売却に対して 約 $9億を現金で受け取ることになる。Benchmark は,Uber の約 13% を所有していた。
     アルファベットのベンチャー資本会社 GV も,アルファベットと Uber の関係が緊張を続ける中,いくらか現金を取り戻す … と情報筋は言う。GV は Benchmark と同程度の割合の持ち株を売る:GV は Uber の5% を持っていたが,その 14.5% を売ることに成功した。
     つまり,GV は,約 3.50 億を現金化したことになる。
     アルファベットの自動運転部門 Waymo は,最近 Uber に対して 企業秘密を盗んだとして訴訟を起こした。アルファベットの投資会社 CapitalG は,今年の秋に Lyft への資金調達を率いたばかりであり,Lyft の主たる競争相手である Uber への投資を引き上げるものと見られていた。
     Uber に対して これまで時折 腹を立てた投資家は GV だけではない。Benchmark は 2011 年に Uber の第1回資金調達ラウンドを率いて,Uber に巨額のカネをもたらしたが,それでも Benchmark と Travis Kalanick CEO との間の関係は酸っぱくなった。Benchmark の今回の売却決定は Uber の意思決定に対する発言力を弱めるだろうが,同時に 2019 年の不確かな IPO の前の勝利を確定する。
     しかし,もしも Uber の成長が爆発を続け,Benchmark がテーブルにカネを取り残したのであれば,Benchmark は愚かに見えるかもしれない;このベンチャー資本企業は 昨年8月,"当社の分析は,2年後に Uber の評価が楽に $1,000 を超えることを示す。" … と言った。
    SoftBank が率いるグループに Uber 株を売るその他の大口は,Kalanick の共同創業家 Garrett Camp, First Round Capital, および Menlo Ventures である。ただし,公開買い付けへの申し込みが募集枠を超えたので,いずれも 株数を大幅に減らされた … と彼らは言う。
     第2回の Uber 投資ラウンドを率いた Menlo Ventures は,持ち株の 46% を売る,Uber のシード・ラウンドを率いた First Round は,持ち株の 約 38% を手放す。これらの売却は,Uber が未だ若いリスクの多い企業だった頃に Uber に賭けたベンチャー企業たちに数億ドルの利益を生む。
     カナダの大富豪 Camp は,持ち株の 15% を売り,$4億の手取りとなる。ただし,Uber の内部関係者は,Camp がもっと多くの株数の売却に応じると予想していた。
     反対に,今回売らないのは,Lowercase Capital と Kleiner Perkins Caufield and Byers である。
     Kalanick 自身も かなりの利益を手に入れた。Uber 創業家は,全く売るつもりは無いとこれまで公言していたにも拘わらず,約 14 億を公開買い付けで売った。Benchmark は,Kalanick に不利な企業統治改革を推進し,将来 CEO の椅子に戻るのを防いでいる。

  53. Uber Co-Founder Travis Kalanick Plans to Sell 29% of Stake
    Uber の共同創業家 Travis Kalanick が,持ち株の 29% を売るつもりである。
    Bloomberg,2018/01/05 @10:41 am JST
    By Eric Newcomer
      前 CEO は,当初 持ち株の半分を申し込んだ。
      Kalanick は 約 $14 億相当の株を SoftBank に売る。
     Uber Technologies の前 CEO Travis Kalanick は,自分が共同創立した会社の株を1株たりとも売ったことはないと 長い間 豪語してきたが,事情に詳しい複数の人によれば,配車企業の持ち株の 29% を売るつもりである。
     Uber を $480 億に評価して株式を買うことに合意した SoftBank Group および 投資家コンソーシアムから Kalanick は 約 $14 億を手にする … と上記の人たちが匿名を条件に言った。現在 Uber の 10% を持つ Kalanick は,(Uber と買い手の間の合意に記された 取締役に許される上限である) その半分を売りたいと申し出ていた … と彼らは言う。
     これまで紙の上では 世界中の富豪の1人であった Kalanick は,この売却により 現実の大富豪になる。Kalanick は 昨年,会社が法廷闘争まみれになり,その事業のやり方に政府の調査が どっさり入る中,辞任を迫られた。彼はまた,(今回 売り手に回っている) 同社 最大の初期投資家 Benchmark とも衝突した。
     協定の条件により 当初申し出た株式の 58% を超えて売却することはできないので,Kalanick はそれより少ない株を売ることになる。Uber と Kalanick のスポークスマンは,コメントを拒んだ。
     アルファベットのベンチャー資本会社 GV は,その自動運転子会社 Waymo が Uber に対して企業秘密を盗んだと訴訟中であるにもかかわらず,Uber 持ち株の半分より大幅に少ない株を申し出た。2017 年 10 月,これとは別の アルファベットの投資会社 CapitalG は,Uber のアメリカでの主たるライバル Lyft Inc への投資を率いていると言った。
     SoftBank 取り引きは 今月遅くに完了の見込みである。いったん これが完了すれば,Kalanick の Uber での影響力を減らす たくさんの企業統治改革が 効力を持つであろう。
    最後のところはどうですかね (笑)
     Kalanick の影響力は むしろ強まるしかない … と思う。
     なんたって SoftBank からは 配車事業を 完全無知無能の取締役が3人も入る。
     この人たちが「企業統治」をあれこれ 言い出したら 却って混乱するだけ。
     持ち株を半分でも 影響力を保つには十分と判断した (?) とも考えられる (笑)
     何しろ 自分が 独創的なアイデアでここまでにした Uber ですからね。
     そういう意味では ウチの社長さんと似ている。
     死ぬまで「実質的経営権」を手放すことはあり得ない!
    ──────
     細かいことだが,2018年1月の完了は 本当に可能か?
     SoftBank が世界中の配車企業を独占しようとしているから,世界中の国で 独占禁止の判定を仰ぐ必要があると思う。半年は 必要か?

  54. Didi Chuxing, China’s Ride-Hailing Giant, Agrees to Buy Uber Rival in Brazil
    中国配車巨人 滴滴出行が,ブラジルでの Uber のライバル 99 を買収することで合意。
    New York Times,2018/01/03 (1月4日,ニューヨーク版 B4 面に掲載)
    By Vinod Sreeharsha & Mike Isaac (リオデジャネイロ, サンフランシスコ)
    事情に詳しい3人によれば,中国ライドシェア企業 滴滴出行が,Uber のブラジルでのライバルで滴滴出行が既に出資している 99 のフル経営権を約 $6 億で獲得することに合意した。
    滴滴出行と 99 のエンジニアが ブラジルの 99 のオフィスで作業する。
    全額現金によるこの取り引きは,配車企業にとって ── 特にこの業界の最大手の2社である Uber と 滴滴出行にとって ── 世界の競争風景を一変する。両社は 世界中のなるべく多くの地域 (特に 南米,とりわけ ブラジルのような急成長市場) で覇権を握ろうとする争いに嵌っている。
     1月4日(木),滴滴出行がこの取り引きを 財務の詳細を開示せずに 発表した。
     Uber と滴滴出行は これまで 中国を含むいくつかの国で提携してきたが,滴滴出行 の今回の買収決定は,両社をラテンアメリカで正面衝突させる。
     この取り引きはまた,滴滴出行が 中国の外へ世界的足型形成を加速しようという取り組みを反映する。昨年12月,滴滴出行は 日本のコングロマリット SoftBank を含む投資家から この拡大に燃料を供給するため,$40 億の資金を調達した。
     滴滴出行は これまで,99 の約 30% を所有していた … と事情に詳しい2人が匿名を条件に言う。滴滴出行の技術チームとエンジニア・チームは 既にブラジルで サンパウロに拠点を置く 99 の従業員と作業を行っている … と彼らは言う。
     この取り引きで 滴滴出行は 約 $6 億を払って 99 の株式を引き受け,ブラジル企業の完全な経営権を握る … と彼らは言う。滴滴出行はその他に追加の資本を注入することに合意した。この買収は 99 のこれまでの投資家 (SoftBank, Riverwood Capital, Qualcom Ventuers, Monashees を含む) に現金化を助ける ── ブラジルのインターネット・スタートアップ企業の投資家にとって,成功裏に退場 (exit) する珍しい例である。
     99 の CEO Peter Fernandez および その他のトップ経営陣は,そのまま会社に留まるものとみられる … と彼らは言う。ブラジルは 99 が最も注力する国であるが,ラテンアメリカの他の国への拡大もありうる。
     "グローバル化は,滴滴出行にとって 最上位の優先戦略である。" … と 滴滴出行の創業家で CEO の 程維 (Cheng Wei) が声明で言った。
     両社の協議は,以前 テック業界のニュース・ウェブサイト The Information が報道した。
     人口 約 2.1 億人で 公共交通のネットワークが未発達の国 ブラジルは,配車企業にとって,カネになる市場である。だが,国が 配車サービスに障害を儲ける動きを見せている;運転手が免許証を表示するとか車の所有を証明を要求するなどを法律で定める。ただし,これらの規則は最終的には 修正された。
     99 は,もともと 99Taxis と言う名前で 2012 年に創立され,当初は 免許を有するタクシー運転手とタクシー組合と 営業を行なっていた。Uber は その2年後にブラジルに参入した。それ以来,両社は戦っている。リサーチ会社 7Park Data のデータによれば,2015 年の終わりには,99 は ブラジルの利用者の大部分をそのアプリで獲得し手織り,Easy Taxi が No.2,Uber が No. 3 である。
     2016 年,ブラジルの経済/政治危機の中,99 は追加の資金の確保にトラブった。その年,同社の共同創業家で当時の CEO Paulo Veras が Fernandez と連れてきて 最高製品責任者に据えた。Fernandez は後に Veras を引き継ぎ,99 の世界戦略のパートナーを見つける仕事を託された。
     New York Times との昨年5月のインタビューで,Fernandez は "私がこの会社に入ったとき,私のトップ優先事項は,滴滴出行に手を伸ばすことだった。私は,滴滴出行が交通でやっていることに感銘を受けた。" … と語った。
     水曜日の声明で Fernandez は,"99 が滴滴出行の一部であることは,当社サービスをブラジル中に拡大し,利用者,運転手 および 都市に 不可欠の価値をもたらすための当社の能力を大幅に増強する。" … と言った。
     滴滴出行は,タクシー運転手 および 規制当局を敵に回すのではなく,協力した 99 の当初の手法に惹かれたと言う。昨年の The New York Times とのインタビューで,滴滴出行の上級副総裁 朱景士 (Stephen Zhu) が言った:"99 は 滴滴出行と,事業モデルも発達状況も,数多くの類似点を共有する。彼らの文化と哲学は,我々と非常に似ている。"
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      Vinod Sreeharsha reported from Rio de Janeiro, and Mike Isaac from San Francisco.
     Follow Vinod Sreeharsha and Mike Isaac on Twitter: @VinodSreeharsha and @MikeIsaac.
    最後のところがあてつけがましいね (笑)
     SoftBank は これまで 99 に $1 億を出資していたが,その株を 滴滴出行に売却して「利確」するらしい。これで 99 は滴滴出行の完全子会社となり,南米で Uber ともろに衝突する。
     SoftBank などから $40 億を調達して,そのうちの $6億で 99 を買収ですか ・・・ 。
     な~んか,SoftBank が一杯喰わされた感 無きにしも非ず。
     滴滴出行としては,SoftBank は単にカネをくれるところ。別段言うことを聞くわけではない。
     SoftBank に配車事業の世界戦略が仮にあったとしても,滴滴出行は 完全無視!
     結局 これは全体として 騰訊控股-滴滴出行 連合による世界戦略の一環なのだろう。これが Uber と激しく争う。SoftBank の投資は 一貫性が無いから,互いに敵として戦う両方に出資するため,無駄が多い。
     こんな「投資」をやって何になるのか? 結局,両陣営の赤字負担係? 双方から歓迎されている。
    下の図は,同じことを伝える Recode の記事 (2018/01/03) から転載した。
     滴滴出行の提携先を示している。世界の各地で 滴滴出行は Uber と衝突する。
     SoftBank は いったいどちらの肩を持つのか?
      このままでは,双方から赤字の負担係として 喜ばれるだろう (笑)

  55. Even with SoftBank as a common investor, the battle between Uber and Didi is only getting fiercer
    次は 誰?(©Reuters | Paulo Whitaker)
    SoftBank を共通の投資家としながらも,Uber と Didi の戦いは,激しさを増すばかり。
    Quartz,2018/01/03
    By Josh Horwitz
    滴滴出行と Uber は,財務で更に こんがらかったが,両社の対抗意識は 深まるばかりである。
    本日 (1月4日) 中国の配車巨人は,ラテンアメリカ最大の配車企業の1つである 99 を買収すると発表した。 この取り引きは 滴滴出行の国境外への国際的リーチを増大し,Uber が 先月末に 滴滴出行の支援者である SoftBank から投資を受け入れる承認を取り付けた後でも,Uber との間で進行中の代理戦争をエスカレートする。
     2013 年に設立された 99 は,ラテンアメリカで人口最大の国 ブラジルにおける Uber の最も獰猛な競争相手である。滴滴出行と同様に,この会社は 現存する都市タクシーの配車アプリとしてスタートし,その後 私有車による配車に手を伸ばした。2017 年1月,同社の 滴滴出行からの投資は $1 億を記録し,3月には 日本の SoftBank から追加の $1 億を確保した。
     滴滴出行は,99 買収の条件を開示していないが,New York Times は,$6億程度の取引と報道している。
     SoftBank は,かつては 滴滴出行を含めて Uber の競争相手の国際連合のまとめ役と見られていたが,今では中国企業 滴滴出行が資金手当て ならびに 連合の拡大にますます主導権を握っている。
     2015 年,滴滴出行は Lyft に $1 億を投資した;東南アジアの Grab とインドの Ola の投資ラウンドに参加した。2017 年には,99 への資金調達に加えて,SoftBank と共に Grab への $20 億投資に参加した;中東の Careem と 欧州 および アフリカの Taxify に未開示の金額を注入した。
     しかし,滴滴出行の 99 買収は,海外配車企業の 初の丸ごと買収である。これは,中国内に閉じ込められたままのつもりは無く,同時に世界中の Uber のライバルに積極的に支援する … という明確な合図を画する。この取り引きを 最終決定の前に報道した The Information によれば,滴滴出行の一部従業員は既にブラジルへ移住して,新しい都市での 99 の立ち上げを助けている。
     この買収は また,Uber と 滴滴出行が講和に到っていないことを示す。2016 年8月,両社は Uber の中国営業を 滴滴出行が吸収して Uber の世界事業に $10 億を投資するとして,中国本土での競合関係に終止符を打った。これと引き換えに,Uber は 滴滴出行の 17% の権益を取った。
     SoftBank が Uber に投資した結果,もしも 滴滴出行が国際展開を加速すれば,Uber は 99 のようなライバルと合併する圧力に直面するだろう。そのような合併は,Uber が Grab とカネの掛かるステイルメイト状態に嵌っている東南アジアで起こりそうである。昨年11月,Uber の Dara Khosrowshahi CEO は,東南アジアの収益性の見通しについて "楽観していない" と述べた。もしも 滴滴出行が 99 のような企業をさらに買収 あるいは 資金供給を続ければ,この悲観論は さらに多くの市場に拡大しそうである。

  56. Is Softbank Uber's Savior?
    SoftBank は,Uber の救世主か?
      Forbes,2018/01/01 @05:48 pm ET
      By Len Sherman
     2017 年も終わりに近づくころ,Uber は 傾く貸借対照表をテコ入れするための投資をまたもや確保した。SoftBank の公開買い付けは,初期投資家の投資に 360,000% [=3600 倍] もの莫大な利益確定選択を許すと同時に,同社に新たな資本 $12.5 億 を注入した。
     SoftBank の Masayoshi Son CEO は,Yahoo, Vodafone, Alibaba, Sprint, Nvidia などへのこれまでの大きな賭けから財を成した。Son は Uber (あるいは ,その代りにこれまで SoftBank が手厚く投資してきた 他の配車企業 滴滴出行, Ola, Grab, 99) に,会社のこれまでのぶざまな (dismal) 業績を俯瞰する何を見ているのか?
     私の 過去の Forbes 記事 "Uber は なぜ黒字になれないか?" は,如何なるスタートアップ企業よりも急速に赤字に到った Uber の事業モデルの根本的弱みを特定した。ちょうど終わったばかりの1年の ── Uber 創業後7年目の年間予想赤字 $50 憶は,前例のない巨額であり,持続不可能なことは明らかである。しかも,今のままの路線では,Uber が 近い将来に出血を止めると考える理由は ほとんど無い。その理由は簡単である:事業モデルが根本的に破綻しているからである。
     Uber が破壊しようとしているタクシー業界は,[Uber のように?] 規制の無い市場へ拡大を許されたとしても, 黒字には絶対にならない;この業界は参入の障壁が低く,変動費用 [=固定費以外の費用] は高く,規模の利益が少なく,料金競争が激しい。しかも,Uber の現在の事業モデルは,これら業界の構造特性に根本的にチャレンジしようとしない。
     Uber の事業モデルは,乗客にとって べらぼうな価値を創出し,会社の急成長につながったが,極めて猛烈な料金設定は,運転手に魅力的な報酬を与えるだけの売り上げを生むことはできず,株主への大きな利益も生んでいない。同等なタクシー料金の ざっと 30% 引きにサービス料金を設定することにより, そして水揚げの 25% を Uber が取ることにより,(実際に労働, 車, 保守費用, 保険費用, ガソリン代を負担する) 運転手に与えるべき売り上げを切り詰めた。Uber の現在の事業モデルには,ライドシェア・サービスの 切り詰め可能なコスト要因がほとんど無いし,事業規模を大きくしたところで, それによって営業コストを切り詰められる内在要因は無い。 このように,Uber はタクシー業界を破壊しようとして,本質的に低収益の [注:つまり どうやっても低収益を免れない] サービスを提供するコストを減らそうとしてきたのである。
     これと同じ罠 ── 消費者は少ししか払いたがらず;変動費用は高く;規模の利益は小さい ── は,(山のようにある 赤字企業 Postmates, [注:SoftBank が出資する] DoorDash, Instacart と競合する) UberEats, UberRush のような "最後の1マイル" 配達サービスからも 利益の可能性を奪う。
     過去 10 年にわたって,投資家は 次の "Uber for X" ユニコーンを探して $90 憶以上を 125 のオンデマンド配達企業に注入した。しかし,新しい資本の注入は干上がっており,多くのベンチャー資本家は損を重ね,破産するセクタに信頼を置かない。たとえば 過去2年,DoorDash は 16% 評価減の (厳しい条件付きの) 資金調達を強いられたし,SpoonRocket, Sprig, Maple は営業を停止した。
     この苦しい状況を,新しい価値を生み, 業界を破壊しつつある 他のスタートアップ企業と比較してみよう。その場合 ── 眼鏡,ファッション衣類,マットレス,企業用ビジネス・システム では ── Warby Parker, Rent The Runway, Casper, Amazon Web Service のような企業は 革新的な事業モデルを開発し,バリュー・チェーンに沿った かなりの低コストで 優れたサービスを提供し,これにより業界の経済を根本的に変革する。たとえば,Warby Parker と Casper は,業界の非効率なバリュー・チェーンを それぞれの業界で 小売価格に対して製造コストから 10 倍 中抜きし,大幅な低価格で 優れた顧客体験を与え,しかも維持可能な営業マージンに余裕を残している。
     Uber の場合は,そうではない。インターネットの夜明け以来 我々は,面白そうな価値命題を持ちながら未検証の事業モデルの企業が 利益はそっちのけで 狂ったように急拡大を目指し,挙句の果てに燃え尽きる … という醒めた事例を数多く目撃している。Kozmo と UrbanFetch は,都市部での最後の1マイル配達業の 初期の犠牲者であった;2001 年に破産を宣言するまで,$3 億以上のベンチャー資本を燃焼させた。
     その同じ年,もう1つの叙事詩的 事業モデルが メルトダウンした;Webvan は オンライン食品配達分野を開拓した企業であった。ベンチャー資本 $8 憶と,E-コマース・バブル最高の時代に IPO で調達した資本により,Webvan は 先行者利益を確立し,高度に自動化された倉庫を 全米 26 都市に建設した。しかし,Webvan は低マージンのこの業界で利益を挙げて営業するために必要な経営規律をマスターすることができず,新しい都市で営業を始めるごとにマイナスのキャッシュフローをさらに拡大した。その結果,Webvan は IPO から僅か 18ヵ月で破産した;上場会社が最も速く倒産した記録となった。
     Webvan 伝説は,利益を後回しにして 狂ったように急成長に走るすべての企業 ── 特に 基盤経済に挑戦するカテゴリの企業 ── に教訓を与える。確かに Uber は,21 世紀への変わり目の頃に先行企業が欠いていたいくつもの有利な点を持つ ── 計算が低コストでできる;バンド幅;GPS;地図ツール;ソフトウェア;携帯とオンライン取り引きが消費者から広く受容された;深い (減りつつあるが) 現金貯蓄。そににも拘わらず Webvan 同様,Uber は 主要な大都市市場で 黒字営業が一貫してできることを まだ示していない。反対に,$90 憶を超える負のキャッシュフローを計上している。
     以上を背景として,Uber の権益 15% に $77 憶の投資を最近完了した Masayoshi Son は,Uber に何を見ているのか? その答は,Son が 2つの異なる時間軸で Uber の財務が改善すると期待しているからであろう。
     短期-中期では,Uber は もはや現実的には 世界中の大都市市場で "最後の生き残り" になると期待すべくもないが,ライドシェアの激しい競争が収まって,破滅的な運賃戦争を避けるという望みはある (ちょうど アメリカの航空業界のように)。もしも,ライドシェア・セクターと最後の1マイル配達セクターでの競争が (低い参入障壁にも拘わらず) 弱まれば,生き残ったプレイヤーは 料金決定力を持ち,運転手をリクルートする費用を下げることができる。SoftBank は,Uber 以外のライドシェア企業にも多額の投資を行なっている。したがって,世界市場で Uber, 滴滴出行, Ola, Grab, 99 のあいだの "好ましい競争" を SoftBank は促進するはずだ。とは言え,ライドシェア業界は,これまで 自分自身の中に深い穴を掘った。拠って立つ事業モデルの弱さは,業界の収益見通しを急激に改善する見込みは無い。
     それより長期では,Uber は財務の改善の可能性を 自動運転車 (空飛ぶタクシー・ドローンを含む) に常に置いてきた;自動運転になれば,カネのかかる運転手も,信頼できない運転手も不要になる。理論的には,無人運転車は 生産性を上げ,サービス品質を上げ,同時に営業経費を大幅に減らす ── だが,これには3つの重大な注意を必要とする。
     (1) 自動運転技術の経済性は 未だ証明されておらず,労賃の節約と業界の変革とのトレードオフを我々は未だフルに理解していない。いかなる状況であれ,自動運転車の広範な採用は,最終的に 数十億ドルの新しい投資を必要とする。そして Uber にはそれだけの資金を手当てする力は無かろう。
     (2) Uber は,完全無人車への競争で,単独と言うには程遠い。グーグル (Waymo),既存の自動車会社, あるいは 他のライドシェア企業が,無人ライドシェア・サービスを最も上手に配備する位置につけるかは 未だ不明である。仮に,都市交通セクターでの持続可能な黒字へのカギが,大都市ごとのライドシェア・プラットフォームの営業 (これは 参入障壁が低め) ではなく,優れた自動運転技術へのアクセス (これは参入障壁が高い) により押し上げられるとすれば,無人運転車は Uber の収益追求の救いにはならないだろう。
     (3) 最も好条件の下でも,混雑した都会での "レベル5" 自動運転車の広範な配備の時間軸は,年を単位ではなく 10 年を単位として計算されるだろう。これは,如何なる投資家も 素早いリターンを求めて投資するような賭けではない。そして,この現実は 最終的に Masayoshi Son の Uber et al に対する (ライドシェア業界のキングメーカーたらんとする) 大きな賭けを説明するかも知れない。
     Son は,一貫して 例外的に忍耐強い夢想家であることを証明してきた。彼は,(やがては巨額のリターンを生む) 生まれたばかりの技術に大金を投資したがる。Son は,インターネット 1.0 (Yahoo), E-コマース (Alibaba), 通信 (Vodafone, Sprint), マイクロプロセッサ (ARM, Nvidia), ロボット (iRobot, Boston Dynamics), 共有経済 (WeWork), ソーラー (SBG Cleantech) の爆発的成長の初期投資家であり,最終的勝者である。ライドシェアでの Son の賭けが 元を取れるかどうかは,時間が経てば分かる。
     ただし,黒字の無人運転という未来への移行まで生存できるためには,Uber は 短期の猛烈なアクションにより,営業成績を改善する必要がある。Dara Khosrowshahi CEO の優先リストにおいて,2つの命令を 最優先にすべきである。
     運転手との関係の改善
     Uber は,その両面市場で,乗客と運転手の両方の参加者の経験と経済とをうまくバランスさせることが肝要である。Uber はこれまで,運転手の処遇と給与より,乗客の満足を一貫して重視してきた。この偏りが 運転手の満足度を下げ,他社への流出増 ── 絶対数においても,競争相手の Lyft と比べても ── を招いた。これを戻そうとする最近の取り組みは正しい方向への1歩であるが,依然としてイライラするほど不十分である。たとえば,長年の懸案だった アプリ内のチップ支払いの動作が (わざとやってるの?) お粗末であるし,前払い料金制は 戦略としては健全であるが,その通信動作が これもお粗末である。ミッション・クリティカル [~不可欠業務] を事実上の従業員が不満足な形で実行するサービス事業は,高くつき 損を招く。
     Shrink-to-grow (改革と成長)
     Uber は当初から,世界制覇を達成し,既存のタクシー企業と 競争相手のライドシェア企業の両方を薙ぎ倒し,料金決定に独占的なパワーを握ることを目指してきた。しかし,歴史的に低い利益の可能性と 低い参入障壁のために,Uber がこの賭けに負けたことは明らかである。しかし世界のライドシェア市場の中で,黒字の営業を現在でも維持できるような 地理的に防衛可能な市場と 利用者セグメントがあることは間違いない。Khosrowshahi は,すべての市場を 何が何でも取ろうとこだわる Uber の野心を 頭を冷やして考え直す必要があろう。これは,短期的に利益を挙げる可能性が低い営業を放棄し,一方で 競争上優位にある特定の市場では 業界をリードするチャンスを生かし続けることを意味する。
     過度に拡大した企業が 防衛的な中核事業に篭り,そのあと 前よりも強力になって再登場するケース・スタディはいろいろある,Uber の現在の現金燃焼の速さでは,何が何でも守るべき中核をどこにすべきか,そして 他日の戦いを期して どこに一時的に撤退すべきか … を ゼロベース予算により明確化する必要がある。
     SoftBank は,Uber の営業と財務を支配下に置くことにより Uber に 追加の滑走路を与えた。しかし,Uber は,Webvan とは違って,意気上がる野心が 忘却への気違いじみた突進という結果に終らないことを保証するよう,厳しい選択を迫られている。
      Follow me @lenshermanCBS. More ideas and contact info on book site: If You're In A Dogfight, Become A Cat! - Strategies For Long-Term Growth
    配車事業の難しさは,実務を 本当に知る人でなければ 分からないらしい。
     問題は,SoftBank にそういう人が 1人もいないことだろう。
     Masa, Rajeev, Marcelo ・・・ いずれも失格である。Dara Khosrowshahi も知らないだろう。
     結局 Travis がいなければ何もできない。
      こういう「投資ごっこ」を 何十とやる Masa が (SoftBank が) 愚かである。
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     そうだった (笑)。SoftBank が $3憶 出資する DoorDash (Recode,2017/12/07) が Uber の子会社 UberDash と競合するね。社長さん,あれこれ考えずに出資すると,子会社が あちこちでぶつかるんじゃないの。配車企業同士だけじゃ無い (笑)
     やはり,こういう気違いじみた買収は 全面的に辞めるべきだ。
     目が見えなくなってるんじゃないか?重症だよ。世界の笑いもの (笑)
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     短期-中期では,SoftBank のお声掛かりで 競争を抑える … とか,お手並み拝見ですね (笑)
    ──────
     やっぱり 長期では,自動運転に賭けているのか (笑)
     この著者も 長い年数が掛かると言っている。
     無人の自動運転タクシーが実現するのと Uber が破産するのと,どちらが先か?
    それだけの資金手当てをする力は,Uber には無かろう」という部分は,著者の完全な間違いである(笑)。SoftBank は,$100 億でも $200 億でも いくらでも喜んで出すだろう。沽券に関わるから。
    ──────
     「撤退」は,もうやってると思う ・・・ 中国とロシア。
     結局これは,Uber, 滴滴出行, Ola, Grab, 99 の経営統合をどう進めて,グループとしての無駄 ── 毎年 数十億ドルに上るらしい ── をなくする問題である。これをやらなければ,SoftBank に巨額の赤字が発生する。
     根本的に解決するには (笑),合計 10 兆円くらいを用意して,これらすべての企業の 過半数の株式を取得するしかない。
     けれども 仮にそれだけの金を掛けたとして,統合グループのトップに立つ人材を 東京本社は出せない。
     要するに 何をするにも 人材が ゼロであることが祟る。カネだけは借金で賄えても,人材はどうしようもない。結局,世界中の配車企業の 巨額の赤字を SoftBank が負担する … という状況が続くものと予想される。

  57. ソフトバンク,ウーバーに 15% 出資 割安も課題山積
    日経電子版,2017/12/29 @20:24
    兼松雄一郎 (シリコンバレー)
    ソフトバンク・グループがアメリカのライドシェア最大手,Uber Technologies への大型出資で最終的に合意した。Uber 株全体の 15% を77億ドル (約 8,700億円) で取得し,ライドシェアで世界連合を完成させる。だが,Uber の経営は混乱続きで,いわば火中の栗を拾った格好である。取得額は当初より割安になったが,対応を誤れば大きなリスクを抱え込む。
     一連の手続きは,2018年1月にも完了する見通しである。ソフトバンクは12月29日,「来年1月の出資完了を心待ちにしている」とのコメントを出した。
     一般の人の車をスマートフォンのアプリで呼ぶライドシェアは,世界で普及が進む。ソフトバンクは中国最大手の滴滴出行,東南アジア最大手 Grab,インド大手 Ola,ブラジル最大手 99 など新興国勢に出資してきた。
     世界の幅広い地域で展開する Uber を加えると世界連合が完成する。システムの活用や顧客の紹介などの面で相乗効果を狙うと見られる。
     Uber への出資は悲願だが,これまでは機会を逃してきた。今回成功した背景には,Uber の経営の混乱が収拾しないことが背景にある。
      創業者の Travis Kalanick は,法令順守を軽視する姿勢が批判を呼ぶ。CEO を退任した今も,取締役に残ったままだ。自動運転に関する知的財産の盗用疑惑や,個人情報の大規模流出の隠蔽などでは訴訟を抱える。
     さらに海外での贈賄疑惑や,規制当局の目を掻い潜るためのソフト開発では課徴金を課される可能性もある。不祥事のデパートのような状況に既存株主から株を手放したいとの意向が増えた。
     混乱が続いたことで,企業価値が低下した。ソフトバンクはこの機会を見逃さなかった。Uber の企業価値は700億ドル近くあったが,今回は3割安い金額で交渉をまとめた。
     だが,これが好条件である保証はない。ソフトバンクは取締役を2人送り込み,経営に一定の関与をする方針だが,文化を根底から変えられなければ企業価値がさらに落ちるリスクがある。
     課題は社外にもある。例えば規制の動向。タクシー業界の独占に風穴を空ける形で成長してきたが,欧州全域では原則,タクシー並みの規制が課される方向だ。登録手続きなどでコストが増せばうまみは薄れる。
     シェアエコノミーの成長は世界的な流れとして定着してきたが,ソフトバンクが今回の大型出資を成功に導くにはまだまだハードルが多い。
    第一報よりは,穏やかになって 正確さが増した。
     それでも,例によって (笑) ケチをつける。
     (1) シェアエコノミー 云々の件であるが,New York Times の記事を読めば分かるように,今回の欧州裁判所の判決をきっかけとして,ギグ経済そのものに対し世界中で規制が厳しさを増す可能性が高い。いわゆる非正規労働者の人権を確保する問題でもある。こういう視点からの取り上げが世界中で始まれば,ソフトバンク流の「情報革命」に待ったが掛かる可能性がある。要するに,インターネットを利用して人権を安く買い叩くことにより利益を上げる企業が問題になるだろう。
     (2) 残りの3% を買うのは Dragoneer, Tencent, Sequoia Capital である (Bloomberg)。Tencent (騰訊) は,今や アリババと対決し,アリババをも時価総額で凌ぐ存在であり,いずれは 世界最大の民間企業になると目されている。アリババの宿敵が 3% 程度を 一緒に出資したことは,どういう狙いなのか? 不気味である。僅か 3% 程度と言え,Uber が新しいことをする際に,騰訊のご機嫌伺いをせずには済まないだろう。したがって,SoftBank に何か戦略があったとしても,それがすんなり通るとは考えられない。むしろ SoftBank を邪魔するために少額の投資をした (?) とも考えられる。 同じ "反阿里联盟" に属する 滴滴出行を助けるためか? なお,滴滴出行は,最近 反阿里联盟 に加盟した (WSJ)。SoftBank は,アリババからお目玉を喰らうんじゃないの? Flipkart でも SoftBank は騰訊と組んだからね。
     (3) 一番の問題は,何のために 『ライドシェアで世界連合を完成させる』のか?
     どの記事を読んでも,この「投資」により Uber の改革は進む … と書いてある。
     でも具体的に SoftBank がどういう良いことをして 良くなるのかは 全く書いてない。せいぜい ・・・
     「世界のライドシェアの赤字を SoftBank が一手引き受け」する雲行きである。
     つまり,現在 および 将来の赤字の強力な引き受け手として大いに期待されているに過ぎない? 将来も 赤字穴埋めの「出資」要請は来るだろう。
     東南アジアとインドでは,Uber, 滴滴出行,Grab, Ola が激しく競り合っている。これをどう納めるのか? SoftBank が 期待されているらしいが 無理だろう。あの3人の取締役ではね。せめて 東京本社からタクシー事業に熟知した辣腕の C-級幹部 (CEO, COO, CFO) を送り込めないようでは (笑)。
     結局 すべては,Kalanick の言いなり,思いのまま (幹部はどんどん退社した)。この人なしには成り立たない会社であるから,そうならざるを得ない。「文化の改革 (笑)」とかいう江戸時代みたいな改革も,できる人材を SoftBank が提供できないお粗末だから,できっこない。結局 SoftBank が差し出した金は,Kalanick の思いのままに赤字の穴埋めに使われる。New York Times (2017/12/28) は, 『定款を以ってしても,Mr. Kalanick の Uber 執行役員への復帰を妨害できるかどうかは 不明である』… と書いている。
     結局「Kalanick さん,お好きなように何でもどうぞ おやりなさい。赤字は全部 SoftBank が面倒見ますから」と言っているようなものだ。そうでないと言うのであれば,東京本社から強力な幹部を派遣すべきである。この構図は ARM, Sprint, Snapdeal, Flipkart にも共通しており,SoftBank の "おおらかな" 体質とも言える。SuperCell では,このやり方が大変うまく行ったから,いつでも失敗するとは限らない。尤も SuperCell は,物凄い黒字の別格優良企業だったから,比較にならない。これを アリババにでなく騰訊に売ったのは,反阿里联盟に加入するきっかけだった ?
     (4) "15% を投資した" … という表現が 問題である。15% は既存株主にサービスして利確を助けたのである。ほんとに "投資" と呼べるのは,Uber の金庫に入った $12.5 憶 (4% くらい?) である。
     ARM の場合には,この意味での投資は "ゼロ" だった。3.3 兆円全部が既存投資家の利確サービスに使われた。どういうわけか知らないが,SoftBank の「投資」は,相手先企業から見れば「投資」に非ずして「利確」に過ぎない。利確サービスした資金を SoftBank は「のれん」に計上している。相手の不動産やノーハウ, 営業権を過大に評価した「のれん」なら未だ分かるが,そういう裏付けの無い「のれん」なのである。
     今回の Uber の利確代金も 1兆円近くの「のれん」として計上されるのだろう。国際会計基準なので,のれんの償却は禁止されている。やりたいけれどもできないんですよ … と社長は言うだろう。
     (5) $480 憶で安かった … と書かれているが,これでも高いので,コンソーシアムから脱落したのが2社あったとか。
     (6) 12/30 日づけ日経には,にぎにぎしく『10兆円ファンド,投資加速』と書いてある。
     SVF に Uber を移管することを指しているらしい (シャープなんか,それでも出資するのかね?)。
     確かにあれは,(社長ではなく) Rajeev Misra が移管すると (自分が決めたことのように) 言っていたし,デリバティブにはめっちゃ強いが,会社の経営経験は皆無の Misra の始めた Uber 投資だから,社長はほとんど 棚上げにされて,そう決まっていくのだろうと思う。Misra という人は,自分がソフトバンクを動かしているかのような尊大な物言いをする人である。インド人投資家のあいだでは,それが受けるらしい。
     根っからの SoftBank の人間ならば,推定 毎年 1,500 億円の赤字が ほゞ確実に予想される (しかも 欧州が厳しい情勢下にある ── Uber の欧州営業のトップは 辞任しちゃった ・・・ Recode 報道) Uber にカネを注ぎ込むはずは無いと思う。SoftBank にわざわざ 損害を与える行為だからね。
     どうして Arora で懲りずに,Misra なんかを SVF に引っ張り込んだんだろうね。Misra の後ろには Alok Sama もいる。Arora の部下だった人だ。今は SIMI の CFO に採用されている。だからときどき「SoftBank の最高財務責任者」と呼ばれる。
     いやまぁ,Misra,Sama (+陰に Arora) が建てた構想に 社長が引っ張り込まれた ・・・ と考える方が 理解し易いのかもしれない (笑)。(Sama はドバイが本拠地で,サウジは目と鼻の先。地縁はいろいろとあるだろう) どちらが ほんとの実権を持つ社長なのか? … インドでの Misra の話を読むとほんとにそう思う。
     まぁ 株主さんも 売主さんも (?),誰が社長であれ,適当に取り引きして 儲かれば結構 (笑)。
     どちらも 入れ込まない方が安全。こういう銘柄では,損をするのが 一番 ばからしい。

  58. Uber likely isn’t the world’s most valuable startup anymore
    Uber は,世界最高額のスタートアップ企業ではなくなる見込み
      Quartz,2017/12/28
      By Alison Griswold
    日本のテック巨人 SoftBank は,Uber の投資家と従業員が約 20% 相当の株を売るので,大幅な割り引きで Uber のかなりの権益を買う模様である … と Wall Street Journal が今日の午後 報道した。
    There goes that.Reuters | Danish Siddiqui)
     Uber 株式は,ざっと 30% 割り引きで公開買い付けされた;Uber は $480 億に評価されたことになる;前回の評価は $700 億だった。Wall Street Journal によれば,SoftBank は,この公開買い付けにより Uber の 15% の権益を取得し,残りの投資家 数人が 残りの株式を買い上げる。公開買い付けは,Uber の投資家と従業員にとって 非上場企業の持ち株を売る滅多に無い機会であり,本日 (12月28日) 正午が期限となっている。
     Uber はコメントを拒んだ。
     SoftBank などから Uber への全投資額は,約 $100 億と見込まれる。そのうちの一部 $10 億は,SoftBank から (ライドシェア・サービス会社が 2016 年に獲得した評価額 $680 億で) Uber へ直接投資される。したがって テクニカルには,紙の上の計算で 高い方の水位で評価されていると Uber は主張できる。しかし, 公開買い付けでの株式の売却に曖昧さは全く無い:投資家は実際には $680 億の評価で Uber の株を買うつもりは無い。 Uber の評価はそれより遥かに低いと彼らは考える。
     もしも Uber の真の評価が $680 億ではなく,$480 ~ $680 億の間 (おそらく $480 億に近い) とするならば,どちらにしても Uber は評価額最高のスタートアップ企業ではなくなる。その称号は,滴滴出行のものとなる;Uber は 2016 年夏,中国営業を滴滴出行に売却し,引き換えに 合併後の事業の 17.7% の権益を受け取った。滴滴出行は 約 $560 億に評価されており,SoftBank は 今年初め $50 億を 滴滴出行に注ぎ込んだ。
     スタートアップ企業の評価は,(企業の過去の業績, 将来の業績予想 ならびに どれだけ多くの投資家がそれを信じるかに ゆるく依存する) 数学の曖昧な分野である。歴史的に,投資家は Uber をかなり信じてきた。そもそも Uber は,2013 年8月の投資ラウンドを $35 億の評価で完了した "元祖ユニコーン" の1社であった。その推定評価額は その後 $170 億,$400 億 と上がり続ける一方であり,終に $700 億の直下にまで到達した。
    評価額が鰻登りの Uber
    ['13 は,2013/12/31 の意味であろう]
     評価というのは 高々不正確なサイエンスであり, 心理的要素で決まる側面も大きい。圧倒的多くの投資家は,Uber が $680 億の値打ちがあるという考えを疑っていた。しかし,重要なのは 会社がそう信じ,そのように振舞ってきたことである。
     世界最大の評価を持つスタートアップ企業だということが,Uber の利益に働いた。政治家や規制当局との何度もの小競り合いで,脅しにも自信にも利いた。Uber が新しい市場に割り込むときは いつでも,しばしば 地元の規則から 大っぴらに嘲笑を浴びる中で,Uber のカネとコネは,計算の一部だった。
     Uber が今や この称号を失ったことは,大きな心理的要素であるが,それだけではない。今年は Uber にとって 報いを知る1年であった。Uber の中毒性の文化が暴かれ,共同創業家とその腹心の友人のサークルは追放された。Uber は 自動運転車の競争会社から 企業秘密を盗んだとして訴えられているし,法律違反を理由に連邦検察から複数の捜査の的になっている。また,大規模データ漏洩に蓋をするためにハッカーらにカネを払っていたことを会社は認めた。
     言い換えると,2017 年は 膨大な数の人が Uber を信頼しなくなった;議員も顧客も従業員も,そして 今や投資家も。このような信頼の欠如は,最終的には Uber の評価額の低下よりも,Uber そのものに被害を及ぼす;たとえば,かつてのように 大きなリスクを取るとか 素早く動くなどが不可能になる。今回の資金手当てにおいてさえ,以前の評価による SoftBank の $10 億 投資は,Uber の現状について 多くの人の心を変えることはないだろう。
     Uber が 自分は $680 億の評価を依然として持っていると言う権利があるだろうか … と質問されて,長年 Uber に懐疑的なニューヨーク大学 Stern ビジネス・スクールの Aswath Damodaran 教授は E-メールで "Uber は,事実に基づかずに意見を言うのは自由である" … と回答を寄せた。"Uber は まじめな顔でそう主張できないだろうと私は思う。"
    There goes that.
     英語を話す人でも,この表現が分かりにくいらしい (日本人にはサッパリ分からない)。
     インターネットで検索すると,次の用例が見つかる。
    John: Bob is going to the party too, so he can give us a ride. (ボブもパーティーに行く。乗せてってもらえるだろ)
    Bill: Oh, he can't go. (ボブは,行かないんだって)
    John: Well, there goes that idea. (そうか,そのアイデアはポシャったか)
     ここでは「もう 時価総額最大でなくなる」「もう 企業として オワ」を掛けているのか?
    やはりそうでしたか (笑)。
     世界最大の評価を持つスタートアップ企業だということが,Uber の利益に働いた。政治家や規制当局との何度もの小競り合いで,脅しにも自信にも利いた。Uber が新しい市場に割り込むときは いつでも,しばしば 地元の規則から 大っぴらに嘲笑を浴びる中で,Uber のカネとコネは,計算の一部だった。
     「似たもの同士」と よく言うけれど ・・・ カネカネ社長さんにはお似合い,気も合う。
     さぞ Travis Kalanick とはウマが合うのでしょう。レイプなんて不祥事なんて ぜ~んぜん問題にならない。カネがあれば (これまで通り?) 揉み消せる。どちらも一匹狼ですからね。
     今後 10% を握る実力者 Kalanick の発言権が弱まることはないでしょう。
     トップの写真が,著者の気持ちを雄弁に物語る。 ・・・ Uber の文化の変革なんて不可能だわ?
    ──────
     鰻登りの評価額 ・・・ 3年でほぼ 7倍,6年で 50倍である。紙の上の数字であるが。
    当社 ご自慢の 44% の場合,3年で3倍,6年なら9倍である。Uber には 圧倒的に及ばない。
     44% というのは もちろん (?) 根拠が不明な数字であるが「鰻登り」のグラフを見れば,そして「44% を必死で実現しよう (笑)」と思えば,何が何でも Uber に ・・・ と ド素人投資家の涎が垂れるのは自然ですなぁ。
     実際 Benchmark が Uber に投資したのは たったの $0.27 憶で,それが $80 憶になったという (↓WSJ)。ならば,80 / 0.27 = 296 倍である。ここからも,SoftBank は投資会社と言うよりは 「軟銀 世界 利確お助け会社」に変身したことが分かる。世界中の 利確したがっているスタートアップ企業の創業家に カネを貢ぐマシーンと化した (笑)
     本来は,自分で 小さな企業を見つけて,自分の優れたノーハウ・特許・人材・僅かな資金を投入することにより,大きく育てることが「投資」ではないか? たとえば,グーグルのように。
     でも,グーグルと違って どれも無い (カネさえも借金 (笑)) のに,金儲けだけはしたい。こういうときには 既に大幅に値上がりした株に手を出すか,わけの分からない小さな株に 一か八かの賭けを張る … というのが,素人投資家のすることである。当サイトも 自分の経験からよく分かる。
     確かに SVF は世界一のテック基金であると評されているが, 「大金持ち Son」と同様に こうまで枕詞が固定すると,逆にそれ (ら) は,成金趣味の「世界最大のアホ基金」と笑いものにされているように感じられる。それを「受けている」と喜ぶところが,天然である。

  59. SoftBank Succeeds in Tender Offer for Large Stake in Uber
    SoftBank が,Uber の大量株式の公開買い付けに成功する
    Wall Street Journal,2017/12/28 @01:45 pm ET; @06:04 pm ET
    By Liz Hoffman & Greg Bensinger
    日本の会社が率いるグループは,大幅な割り引きでスタートアップ企業の約 18% を取得する模様である。 [9 comments]
     SoftBank Group Corp は,Uber Technologies の大量の株式を 前回の取り引きの評価に対して大幅割り引きで買うビッドに成功した。これにより世界最大のテック投資家は,アメリカの時価総額最大のスタートアップ企業を支配下に置く。
     Uber の投資家と従業員は,Uber を $480 億 ── これは 前回の資金調達の際の評価 $680 憶の 30% 引きである ── に評価する SoftBank が率いるコンソーシアムに対して,約 20% の株式の買い付けに応じた … と事情に詳しい複数の人が言う。
     グループの買い取る株式は,これよりやや少ないものになる:SoftBank 自身は,公開買い付けで 約 15% を取るが,グループ内の他のメンバーが約 3% を取る … と中の1人が言う。
     この公開買い付け ── 非上場会社の株式を買う公開コール ── は,太平洋時間正午に期限切れとなる。すなわち,その時までに 投資家は まだ考えを変えることができ,したがって取得株数に影響を与えることがあり得る。
     Uber は 木曜日,この取り引きを認め,"当社は [この取り引きが?] 当社の技術投資を支援し,当社の成長に燃料を供給し,当社の企業統治を強化することを期待する [sic]。" … と言った。
     SoftBank のスポークスマンは,同社が来年1月にこの取り引きの完了を期待すると言い, [Recode 報道によれば,SoftBank の Rajeev Misra は] "当社は,Uber のリーダーシップと従業員に恐ろしい信頼を持ち,Uber の支援にワクワクしている。" … と語った。
     この取り引きの一環として,SoftBank は 別に少なくとも $12.5 億を $680 億弱の評価で Uber に投資する。これは,低価格での公開買い付けが 残りの権益の評価を台無しにすることを懸念する Uber 株主への譲歩である。
     この取り引きの成功は,Uber にとって不可欠の重要なものである。なぜなら多大の努力を必要とする一連の企業改革が,この取り引きの完了と連動しているからだ。配車企業は 取締役を6名増員 ── うち2名は SoftBank から ── することにより変換 (transform) され,投票権はすべての投資家に拡大される。SoftBank にとって この取り引きは,日本の投資家が 既に世界中で Uber の競争相手の権益を大量を所有する中で,交通の将来に対する一か八かの賭けである。
     最終的な取り引きは,時には 岩だらけだった何ヵ月にも亘る交渉に終止符を打つ。Uber は,SoftBank を強力な同盟者にすると同時に,SoftBank に多大な影響を及ぼすだろう。この取り引きは,共同創業家で 元 CEO Travis Kalanick の下でのスキャンダルと内紛の時代の後,新任の Dara Khosrowshahi CEO による Uber 安定化と企業統治更新の努力を助けるだろう。
     Uber は依然として,今年初めの 元ソフトウェア・エンジニアによる性差別の訴えに喘いでいる;この件は 会社全体の捜査と 20 人を超える退職につながり,Uber が企業スパイ活動を行なっているとのウーバー元幹部による主張を生んだ。Uber は また,企業秘密を盗んだとアルファベットから裁判を起こされている。そのほか,同社にとって重要な世界市場の1つであるロンドン営業の免許を巡って ロンドン規制当局とやり合っている。また,1年以上前の大量ハッキングを最近になって開示し,Uber の幹部がこれを隠そうとしていたことを認めた。
     Uber は SoftBank の Masayoshi Son という強力な支援者を獲得する。彼の会社は,(中国の滴滴出行,インドの ANI Technologies Pvt の Ola,東南アジアの GrabTaxi Holdings を含めて) 世界中の大きな配車企業すべてに権益を所有する。
     SoftBank は また,WeWork Cos., Slack Technologies, Flipkart のようなよく知られたテック・スタートアップ企業の権益を所有する。Vision Fund は,世界最大のテック基金である。
     $12.5 億の投資は,2019 年の IPO の可能性に先立って,Uber の貸借対照表を固めるのに役立つだろう。同社は 差し迫ってカネが必要ではないが ── 今年第3四半期末の現金は $50 憶弱であった ── 売り上げと水揚げは増えているにも拘わらず,過去2四半期合計の損失は −25.2 憶である。
     SoftBank は,Uber の取締役に,$930 憶 Vision Fund の舵取りをする Rajeev Misra を指名する予定である … と事情に詳しい複数の人が言う。
     もう1人は Marcelo Claure らしいが,SoftBank の Ron Fisher 副議長も検討されている。この3人はいずれも SoftBank の取締役である。このどちらが取締役になるにせよ,Uber と SoftBank の両取締役会は3人のメンバーを共有することになる。なぜなら サウジ・アラビアの PIF の専務 Yasir Al Rumayyan が既に両社の取締役だからである。
     SoftBank の投資コンソーシアムは,Dragoneer Investment Group と Tencent Holdings を含む。
     SoftBank が 2つの異なる価格で同時に株式を買うことで,この取り引きは Uber の真の価値について疑問の声を呼んだ。
     スタートアップ企業と その投資家は 通常,会社の価値を 前回行なわれた直接投資ラウンドで支払いがなされた価格を目印にする。いわゆる2次株式売り出しでは,割り引きが普通である;なぜなら,所有者にとって株は容易に再販できず,会社から直接に購入する人たちよりも 保護が弱いからである。単一の投資家からの 直接 [1次] と2次の投資は,(特に SoftBank-Uber のように大規模に) 通常 同時に発生することは無い。
     一部の従業員と投資家は 何年も Uber の持ち株を売る機会を待っていた;そして 多くの人は 2019 年にあるかもしれない IPO まで待てない。初期投資家は (僅か $0.27 憶を Uber に投資して $680 億評価の Uber で $80 憶を超える権益を持つ) Benchmark を含めて,今回の公開買い付けで 数十億ドルを利確することができる。
     今回の取り引きは,SoftBank を Uber 最大の単一株主の1つにする。13% の権益を持つベンチャー資本会社 Benchmark も,別の初期投資家 Menlo Ventures も,今回の公開買い付けで持ち株の一部を売りたいと言っていた。Uber の共同創業家 兼 取締役の Garrett Camp も,SoftBank に株を売りたい1人である … と中の1人が言う。Uber の約 10% を持つ前 CEO Kalanick だけは,この買い付けで売らない意向である … と事情を知る複数の人が 以前 言った。
     木曜日の時点で,Kalanick が 持ち株を全部抑えているかどうかは知ることができなかった。
     今回の取り引きの見通しは,これまで ときどき 不確かに見えた。Benchmark と Kalanick は 瀬戸際の争いを続け,この取り引きを脱線させる恐れがあった。最終的には,Benchmark が折れて Kalanick に対する (取締役3名を指名する権利を取締役会に戻せという) 訴訟を [この取り引きがまとまるまで?] 棚上げにした … と 事情を知る複数の人が言う。そして Kalanick は自分が指名する3名の取締役を 取締役会の承認を必要とすることを認めた … と彼らは言う。
     もしも SoftBank が木曜日に終わった 20 営業日以内に 14% の株式という閾値に達するのに失敗すれば,SoftBank は取り止めることができた。万一そうなれば Uber をカオスに投げ込み,計画された企業統治改革を脱線させ,Benchmark と Kalanick の間に法廷闘争が継続する見込みを高めただろう。
      Write to Liz Hoffman at liz.hoffman@wsj.com and Greg Bensinger at greg.bensinger@wsj.com
    年の瀬になって 悪いニュースが続くね (笑)。
     いや 社長さんには「おめでとうございます」。
     これで 「孫セイギ個人商店」を ご希望通り 破綻に1歩近づけることができました。
    ──────
     Uber の過去2四半期の赤字が合計 $25.2 憶だから,通年で $50 億の赤字である。
     $12.5 億を注ぎ込んでも焼け石に水である。赤字埋め合わせの「投資」に過ぎない。
     むしろ この赤字の 1/6 ~ 1,000 億円程度を 毎年 SoftBank が負担させられる。
      いえいえ,金利を含めて 1,500 億円の赤字を負担になる。何しろ 当社は全額借金を投資する。
     まだまだ 来年も, 再来年も「出資」を要請されるだろう。
    ──────
     Uber なんて 赤字で かつ アメリカ一番の悪評 (特に レイプ,セクハラ,特許訴訟, 個人データ漏洩, ハッカーにカネ払ってボロ隠し) の会社の株主の利確をお助け。
     Fortress なんて,これも赤字で (ハリウッドの有名プロデューサーの 50 人レイプを支援;SEC の調査,破産寸前の企業から不良資産を買い叩く) 債権回収会社 の買収を CFIUS が認可しちゃった。こちらも,無能の経営陣の利確をお助け。Fortress 幹部は,上場廃止で決算発表しなくて済むようになって 大喜び (excited) してる (Bloomberg)。
     ほんとに SoftBank はレイプ好き。#MeToo キャンペーンから叩かれるだろう。
     おまけに,社長さん大のお気に入りの SoFi の Michael Cagney CEO は Wall Street Journalセクハラの事実を嗅ぎつけられて 辞任・退社に追い込まれちゃった (2017/09/11)。どうして これを SoftBank は広報で発表しないの? 日経が記事にしないの? Cagney のいなくなった SoFi なんて,社長さんがいなくなった SoftBank みたいなもの。この先どうなるか分からない。
     日本の株主さんも,レイプがお好き?
     SoftBank は「投資」と言うけれど,相手企業の株主 (その主力は 無能な経営陣) の利確をお助けする「軟銀 利確お助けグループ」になっちゃった。ARM も同じ。Sprint では,Dan Hesse の巨額の利確をお助け。
     いったい,これで いくらの赤字要因が積み重なったのか?
     Uber に派遣するのは,東京本社の社員ではない。こんなことで 東京本社の権益が守れるのか?
     派遣できる人材ゼロで 世界中にカネを配りまくっていることがバレバレである。
     それに,配車事業なんて何も分からない3人を派遣しても意味が無い。やり手の Travis Kalanick は喜んでいるだろう。結局,Kalanick の言うなりになるしかない。SoftBank の注ぎ込んだ金は 実質的に Kalanick の思うままに使われるだろう。
    ──────
     ここでも 騰訊控股 (Tencent Holdings) が出てくる。本当にこれで良いのか?
     SoftBank は騰訊控股にくっついて "反阿里联盟" (滴滴出行が既に加盟した) に加盟したと見られているだろう。この先,何が起こるか分からない。
     そもそも,全体として「成功」と言えるのか?
     個人商店の「大失敗」では ないのか? 欧州裁判所の判決 (New York Times など) を読めば,状況は非常に厳しい。社長は,配車事業に対する間違った「思い込み」に こだわっている。君子は豹変すべきである。
     実際,この人の唯一の取り柄 (?) は,実にコロッと豹変することである。
     アレッと驚くほど 急に,言っていることが 180° 変わることがある。
     この記事への読者コメント
     David Corsi
      そもそも Uber が $480 億の会社だなんて いったい誰が信じるのか? 不思議でしょうがない。
     David S
     前に Sprint,今度は Uber. SoftBank は頭がソフト [=脳足りん]
     Jim Hass
     ビットコインで払えば 公正な取引になるだろう。
     Charles Cotton
     予想通り,Softbank の Son は 甘いインチキ取り引きに釣られた。これは,Charley-Ponzi スキーム [不特定多数に出資を求める詐欺] の古典的事例だ。Kalanick と [Benchmark のパートナー] Gurley は 青天井にカネが入る。確かな監査と 法務会社に 株の売却と評価をさせずに 価値ゼロの株を 数十億ドルで買う投資家なんて,誰が想像できるだろうか?
     30% 割り引いたと言うけれど,ゼロの 30% だよ。この狂乱的な評価は Kalanick と Gurley と その仲間が決めたんだ。
     PT Barnum が言うように "毎分 甘いインチキ取り引きは誕生する。"
     間もなく,司法省は,この共謀犯罪を摘発するだろう。EU [司法裁判所] は終に目覚めて,Uber がアプリではなく,タクシー会社だと正当に判決した。したがって Uber は,規制されたタクシー会社の法律に従わねばならない。
     Uber は絶対に上場できないだろう;なぜなら 規制された業界で営業している規制されない企業だからだ。SEC は こんな会社に絶対に IPO を認めないだろう。
     Tom Russo
     豚にカネを喰わせるようなものだ。
     ひどい経営陣,ひどい取締役会,配車ごとに赤字が増える。規制はますます強まる。
     Cesar Aquino
     Uber の 20% に $100 億の小切手を書いて成功? これじゃ,Uber にカネが尽きるまで助成金をやれというようなものだ。
     Joseph Swartz
     面白い記事だ;30% 割引は ライドシェア業界に対する目覚ましコールだ。もっと安くてよかった。何と言っても Uber は,遅れに遅れている上場まで何年も絶望的にカネが欲しい。
     黒字になったことがない。我々が Uber の運転手に $1 払うごとに会社は $3~$4 の助成金を払っている。自動運転技術に関連した重大な訴訟の泥沼に嵌っている。もう沢山だ。Son は,SoftBank の $1,000 億基金を買いもの三昧に使って,世界中にカネを投資してきた。私が思うに,彼の投資の全部が,予想しているようなリターンを生むことは無いだろう ── そして Uber がその1つだろう。ライドシェアは普及しているが,そのコストは? ・・・ だれも知らない。Uber は 今が盛り ・・・ でも これを続けるのは 難しいだろう。
     Jerome Abernathy
     くだらん。Uber の運転手の入れ替わりは 気違いじみている。しかも この業界は参入の障壁が無い。 Uber は中抜きされる危機にある。
      [注:中抜き (disintermediation) とは, 仲介業者抜きの直接取引を意味する]

  60. Uber Dealt Setback After European Court Rules It Is a Taxi Service
    欧州裁判所が Uber はタクシー事業だと判決したことにより Uber は挫折に直面する
    New York Times,2017/12/20 (12月21日,ニューヨーク版 B1 面に掲載)
    By Liz Alderman
    欧州連合の最高裁判所は水曜日,Uber は輸送会社であり 単なるテック・プラットフォームではないと判決した。この判決は既にスキャンダル ならびに 規制による挫折と取っ組み合いをしている同社に もう1つの打撃を加える。
    2014 年 欧州全体の大都市でのウーバー反対デモの一環として,
    ロンドン中心部で道路を塞ぐタクシー。
    Andrew Testa for NY Times)
    Uber は 自らを,運転手と乗客をつなぐ ディジタル・マーケットプレイスであると位置づけてきた;これは,規制の負荷が軽くなりがちな位置づけである。今回の判決は,欧州ブロックのタクシー および その他の輸送会社に対する規制に従うことを Uber に強制し,同社が 厳しい免許 および その他の要請に直面することを意味する。
     この判決は 欧州連合だけに適用されるが,さらに広範にギグ経済を見渡す規制当局により吟味されることは確実だろう。世界中の政策担当者は,急拡大する このような (人々がフリーランサーとして営業し, あるいは 正規職員としてではなく短期契約で働く) 労働制に対する規則をどのように設定すべきかを苦心してきた。
     多くの国では,法制が この変則的な (企業がコストを浮かせる) 労働に追い付いていない。規制当局が何十年も取り組んできたのは,伝統的な 9時5時 労働である。
     この不確かさは訴訟の波に火をつけたが,各国の裁判所は その場しのぎの規制と規則を生み出してきた。
     "規制当局がどうしてよいのか分からないのは 正常である ── 誰かが 新しい事業モデルで営業しているのだと主張すれば,規制することはできない。" … と ベルギーの Leuven 大学の Valerio De Stefano 法学教授が言う。"この訴訟は,プラットフォーム経済での労働の真の姿について,規制当局の理解を深めるだろう。"
     欧州裁判所 (ECJ) での Uber 訴訟は,バルセロナに拠点を置くタクシー団体が起こしたものである。この団体は,Uber がバルセロナにおけるタクシー規則に従う必要が無いのは不公正であると訴えた。Uber は,バルセロナで UberPop と呼ばれる P2P サービスを行なっており,これはアマチュアの運転手と乗客とをインターネットでつなぐ。
     このサービスは その後 スペインといくつかの国で解消された。Uber は,現在では 欧州連合の大多数の国でプロの運転手だけを使っていると言う。
     今回の判決で 裁判所は,Uber は 運転手と乗客をスマートフォン・アプリを使ってつないでおり,"本質的に輸送サービスに係わっていると見なされるべきである" と判定した。欧州連合の 28ヵ国は,今後 "このようなサービスが受けるべき条件" を規制しなければならない … と裁判所は続けた。
     この判決は Uber にとって際どい時期になされた。同社の新任の CEO Dara Khosrowshahi は,2019 年までに上場したいと言う。しかし,その前に彼は,内部紛争, 職場でのセクシュアル・ハラスメント訴訟, 前任者 Travis Kalanick の がむしゃらスタイルに見られるような 企業文化を立て直さねばならない。
     Khosrowshahi は また,数多くの訴訟 および 規制問題を抱えている。ロンドン市は最近,安全とセキュリティの懸念を理由に,Uber の営業免許を剥奪した。英国の裁判所は,運転手を 自営の契約者として扱うことはできないと判決した。つい先週,アメリカの連邦当局が 少なくとも1件の犯罪捜査を Uber に対して行なっていることが裁判資料から判明した。
     水曜日の判決に関する声明で,Uber は 同社が既に 欧州の大部分の国で輸送法の下で営業を行なっているので,この判決の影響はほとんど無いと言った。さらに,欧州全体の都市で 同社のサービスについて会話を続けると言った。
     この訴訟を起こした団体 Elite Taxi は,ツイッターへの投稿で,"本日,タクシー運転手は ゴリアテを打ち負かした。" … と言った。
     Elite Taxi を代表するバルセロナの法務会社は この判決を称賛し,声明で "この判決は 法的責任を逃れようとし続ける他の事業にも外挿できる。" … と言った。
     この裁判は 独立労働者を規制しようとする国々にベンチマークを与えるだろう。McKinsey Global Institute の調べによれば,独立労働者は アメリカと欧州で 労働可能人口の 30% を占める。一部の人は,このグループが 間もなく 社会の最下層となることを懸念する。
     Mohaan Biswas (24) は,ロンドンで情報技術の修士号を取ろうとしている学生であるが,オンライン・スタートアップ企業 Deliveroo [注:ここは SoftBank が出資している] で 食事を配達している時に自動車が衝突して 足の骨を折った。
     療養中,有給の病気休暇は得られず,保険会社は スクーターの修理費用をカバーすることを拒否した。カネを稼ぐため,再び Deliveroo に乗り始めた。今回は 自転車で,Uber も掛け持ちする。しかし,自分の目的のためには 働く時間が長くなってしまった。
     "結局は,こういうサイクルの罠に嵌ってしまう。" … と Biswas は言う。最大のショックは,"結局は 自分を構ってくれない他人の手に自分を委ねているという感覚です:歯車の一員として戻るまで 構ってはくれない。"
     政策立案者にとっての難問は,一方で 労働を保護すること;他方では 厳しい規制がコスト増を招き,革新を停滞させるという警告に配慮すること;この2つのバランスを取ることである。共有経済による売り上げは,2015 年に欧州で €280 憶に達したと (EU の執行機関である) 欧州委員会が報告した。
     しかし,このような数字は,変則的な労働の危うい側面を覆い隠す。たとえば スペインでは,昨年 170 万の長期雇用に対して,1,800 万の一時契約があったと政府が報告した。
     "財政危機が,数多くの安定な永久雇用を奪い,統計をゆがめ,高い雇用率を記録しているように見える。" … と ロンドンに拠点を置く 法務会社 Russel-Cooke の労働法専門家 Jeremy Coy が言う。"それしか働き口が無いから,その仕事に就かざるを得ないのでしょう。"
     規則を 実態に合わせるする努力は続いている。英国の雑誌 Modern Working Practices は,ギグ経済の労働者を (従業員の福祉と社会保障が保証される) "非独立契約者" として分類し直すような変化を強く推奨する。欧州委員会は,超柔軟労働時間と固定給無しで働く労働者の標準の切り下げと戦う提案を支援している。
     一部の企業は,このような変化の先頭に立っている。スウェーデンでは,Uber の競合相手 (アプリを使う輸送サービス) Bzzt は,運転手を社会保障, 医療保険などの福祉のある通常の契約で雇う。
     "当社は,利益を出すために 当社スタッフを搾取する必要はありません。" … と Bzzt の Sven Wolf CEO は言う
     明確な規則が無ければ,惰性で回るギグ労働の世界の人たちも,柔軟な労働を背景に巨人に成長した企業から譲歩を勝ち取ろうと,労働組合へと向かう。
     欧州,アジアなどで営業する 食事配達サービス Foodora の配達人らは,今年 オーストリアで 労働評議会を結成した。ドイツのクラウド・ソーシング・プラットフォームがドイツ最大の労働組合 IG Metall と最近 行動規範に共同署名した。
     ロンドンの 建築学生だった Mags Dewhurst は,英国の配達ネットワーク CitySprint の自営配達人となってから,労働組合に参加する必然性を感じたと語る。
     会社が有給休暇を認めなかったので,彼女は CitySprint を労働裁判所に訴え, £200 の給料の払い戻しを勝ち取った。しかし この戦いは,それ以上にカネが掛かった:基本給を稼ぐためには,1日 80 km 自転車で走り回る必要があったからである。
     "役人さんたちが よく分からないのなら,配達会社で1週間ほど ほんとに 働いてみればいい。自動車でも自転車でも乗って。" … と DewHurst は言う。
     "そうすれば,何をする必要があるか ほんとに分かるでしょう。"
      Follow Liz Alderman on Twitter: @LizAldermanNYT.
     Amie Tsang contributed reporting.
    やはり ・・・ というか,New York Times は,これを単に Uber の問題としてではなく,配車企業の問題としてではなく,"プラットフォーム経済" の問題として捉えている。
     今回の欧州裁判所の判決は,SoftBank にとって長期的に重大な影響を及ぼすと 当サイトは考える。

  61. European Ruling Buries Uber’s Platform Myth
    欧州裁判所の判決は,Uber のプラットフォーム神話を葬り去る。
      Bloomberg View,2017/12/20 @22:17 JST
      By Leonid Bershidsky
    欧州司法裁判所は,テック支援タクシー・サービスを やはりタクシー・サービスであると判決した。
     欧州司法裁判所 (ECJ) は,上訴の可能性を認めず,Uber がタクシー会社であり ソフトウェア会社ではないと判決した。これは,テック業界が その革新を 従来の人間の経験を超える何かであるとか, したがって従来の規制の範囲外にあるとか主張する欺瞞的試みの終わりの正式な始まりである。
     この判決は,バルセロナのタクシー運転手組合 Associación Profesional Elite Taxi が 2014 年に起こした法廷闘争に終止符を打つ。組合は,Uber を不正競争により訴えた:Uber Pop サービスは,無免許の運転手を使っており,乗客を運ぶことが許されない。これに対し,Uber は いつものように,同社が運転手と乗客をつないでいるだけだと主張した。この訴訟は 欧州の裁判所の上級審へと進んだ。ECJ は,Uber のアプリが "運転手にとっても乗客にとっても不可欠であり" しかも "運転手が提供するサービス内容に Uber が決定的影響を及ぼしているのであるから" Uber は輸送サービスを提供する企業であり,情報企業ではないとの見解を採用した。欧州各国は 今後 そのように規制を行なわねばならない。
    単なるプラットフォームに非ず。
    David Ramos/Getty Images)
     Uber は,この判決は "当社が既に 運送法に従って営業している大部分の EU 諸国では" 変更を与えないと言う。しかし,それは疑わしい。なぜなら Uber Pop は数多くの西欧諸国 (ドイツ, フランス, スペイン, イタリアを含む) で禁止されている。しかし,東欧の大部分の国では規制が緩く,実際のところ賄賂が利くので,Uber PoP は活動している。例えば ポーランドでは,当局が (収入に対して税金を払わない) 無免許の運転手を取り締まろうとしているにも拘わらず,Uber Pop は営業を続けている:Uber は,運転手の罰金の肩代わりとか,無料の法律相談を行なっている。ECJ の判決はこれらの国々に対しても Uber がタクシー・サービスであり,そのように取り扱うべきだと命じる。この結果,営業禁止は増え,監察は厳しくなるだろう。そして 将来結局は,欧州全体で Uber は免許を持つタクシー運転手を使うことになるだろう。
     ただし さらに重要なのは,テック企業が実際に何をしているかを ECJ の判決が調べる前例を生み出したことである。法的な目的では,アヒルのように鳴き,アヒルのようによたよた歩くのであれば,それはアヒルなのであり,外界から来たエイリアン・ロボットではない。
      This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.
      To contact the author of this story: Leonid Bershidsky at lbershidsky@bloomberg.net
    この判決は,SoftBank の世界戦略に影響を及ぼすんじゃないか?
     「情報革命」というのは,ハッキリとは言わないが「借り物経済」を基本にしている。
     たとえば Uber のような事業では 車も運転手も自前で持たず,借り物で済ませることにより安上がりにして,既存のタクシー会社を潰して 利益を得る … これが基本的な仕組みである。でも ECJ のように認定されちゃったら,日本でやっているように,(運転手が2種免許を必要とする) タクシー会社と同じ事業になる。インターネットで呼び出すタクシーなんて 今どき どこのタクシー会社もやっている。「差」がつかない。つまり,いわゆる 配車企業の存在理由が無くなる。Uber, 滴滴出行, Lyft, Grab ・・・
     ホテル紹介業 Airbnb, Oyo Room も同様だろう。ホテルの免許を必要とされたら やっていけないんじゃないか? 実際,Bloomberg の記事には
     この判断によって,民泊仲介のエアビーアンドビーなど他の「ギグエコノミー」(インターネットを通じて単発の仕事を請け負うことで成り立つ事業) 企業も法的リスクが高まる可能性がある。
     と書かれているよ。
     P2P 貸金業 (SoFi) も。「自分のお金を貸してはいません。プラットフォームで皆さんが 互いに貸し借りしているだけです」
     要するに「プラットフォーム」と呼ばれていて,"単にお客さん同士を仲介しているだけ" と称するインターネット事業にメスが入る。程度の違いはいろいろあるだろうが,社会に対して不都合を生じているプラットフォームには,厳しい規制がかかるだろう。それが ECJ の言いたいことだろう … というか,現実にそういう社会的不都合が生じているから,ECJ がこのような判決を出した;裁判とはそういうものである。
     規模の点で その究極が,アリババの買い物サイト。
     「ニセモノを売っているのは当社ではありません。当社のプラットフォームに出品している業者がニセモノを販売しているのです。したがって,当社は このような業者を警察に突き出しています。当社には責任がありません。したがって当社自身が処罰されることはありません。」… この理屈 何となくオカシイよね。
     アヒルのように鳴き, アヒルのようによたよた歩くのであれば, 法律上 それはアヒルと認定される。
    ──────
     もともと 「敗車」事業に社長さんがなぜ あんなに入れ込むのか 全く理解できない。
     唯一の理由は 自動運転のタクシーを実現できれば 人件費が大幅に減らせるというのがあった。
     でも そんな「無人の相乗り自動運転タクシー」なんておそらく実現しないだろう。仮に実現するとしても,(テロリストが絶滅した) 何十年も先の話である。
     技術的な可能性だけでなく,世界中の人の意識が変わり,法律が変わり,道路が変わる必要がある。
     50 年先を読むという社長にしては,先が読めなさすぎる。
     そして,仮に人件費が減らせたとしても,参入しやすいだけに,競争は さらに激化するだろう。
     いったい,どこまで 読めているのか?(笑)
    ウーワァー,日本語でもドバッと出ている (10 件を超える)。やはり,重要なんだろう。ひょっとして ウーバーの息を止める? やはり,社長さんは情報不足である。ロンドンでウーバーが営業禁止されたのは,今年の9月だった。誰もが知っていることだから「情報不足」の程度がひどすぎるよ。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの本社がロンドンにあるのは何のため? ロンドンで情報収集をやってない?
     自分の (ギグ経済一般に対する) 入れ込みで 会社を潰す?
     まぁ それもいいだろう。実態は「孫正義個人商店」なのだから。
      ロイター:『欧州司法裁:ウーバーは輸送サービスと判断し,タクシー同様の規制対象となる』
      日本経済新聞:『「ウーバーは運輸会社」EU司法裁,規制適用を認定 タクシーと同様,加盟国に容認 』
      ブルームバーグ:『ウーバーをEUは運輸会社として規制へ-司法裁判所の判断で』
      朝日新聞デジタル:『ウーバー,規制促す判決 EU司法裁判所』

  62. PAPER WEALTH:Former Uber employees have gone into debt to hang onto shares they still can’t sell
    紙切れの財産:元 Uber 従業員らは,未だ売ることのできない株にしがみつくため借金に走った。
      Quartz,2017/12/10
      By Alison Griswold
    Uber の従業員らは,列を成して 持ち株を (発行株式の 17% を1株 $33 で買い上げると言う) 日本のテック巨人 SoftBank に売ろうとしている。この価格は,Uber の前回の資金調達後の評価 $700 億の 30% 引きである。
     だが,現在の従業員にとっても 元従業員にとっても,SoftBank の公開買い付けは,紙切れの財産を 本物のカネに変える滅多にないチャンスなのである。
     "元従業員は誰もがこの公開買い付けを話し合うために互いに連絡を取り戻している。" … と Uber の元コミュニケーション部門担当者 Lane Kasselman が Quartz に言った。"数多くの元従業員が 2~4年,人によっては 5年,換金を待ち望んできた。だから これはとてもエキサイティングである。"
     今回の公開買い付けに応募するためには,参加者は 10,000 株 [~3,700 万円相当] 以上を持っており,しかも "適格投資家", すなわち 証券取引委員会 (SEC) によって非公開企業などの未登録証券に投資することを認められた個人の富裕投資家でなければならない。さらに 現在の Uber 従業員は持ち株の半分を超えて売ることはできない;ただし 元従業員には制限は無い。この取り引きは 12月28日までテーブル上にあり,もしも SoftBank とその他の投資家のコンソーシアムにとって十分な株 (最低 14%) が得られない場合には,中止となることもあり得る。
     成功を納めるスタートアップ企業で働くことは,繁栄への近道であると よく見なされるが,現実は それより複雑である。スタートアップ企業は,一般に 世間並みより低い給料の埋め合わせとして,ストック・オプションの形で株式パッケージを与えることが多い。しかし,Uber のような企業は 長い間 非上場のままだったので,ほとんどの従業員は これらの株式により富裕になることはできなかった。むしろ その反対である;一部の Uber 従業員は,未だ売ることのできない株にしがみつくために,借金に走った。
     2016 年に Uber を退社した2名の元従業員が Quartz に,退社後 Uber はオプションの行使に 30 日の猶予しか与えなかった … と言う。このうちの1人は,20,000 インセンティブ・ストック・オプション (ISO) の行使に $100,000 を払い,さらに $200,000 を超える税金を払ったと言う [合計 3,400 万円]。もう1人は,約 5,000 の ISO の行使に $70,000 を,そして税金に $160,000 を払ったと言う。この2名の元従業員は そのためにローンを借りたと言い,個人の財務情報なので匿名を望んだ。
     2009 年に創立された Uber は,世界で最も評価額が大きいスタートアップ企業である。2013~2016 年,配車企業の評価は $350 億から $700 億弱に急上昇した。
     現行の税法では,幹部役員と上級社員のために予約されることが多い 特殊なオプションである ISO の行使による収入は,節税のための控除を高所得者が行なえないようにするために,税金が別計算されることになっている。これに対し,普通の従業員に与えられるストック・オプションは,株式を売却した年に利益に課税される。
     個人の財務相談サイト NerdWallet の投資・年金専門家 Andrea Coombes は,これを "ストック・オプション ドリームの暗い側面" と形容する。"可能性としては,従業員に多額のカネを与える価値を持つ。" … と彼女は言う。"しかし,ストック・オプションを持ち,まだ行使していない従業員にとっては,あくまで 可能性であり, 銀行のカネとは違う。"
     これまで Uber は 従業員に ストック・オプションの行使に 30 日を与えていた。これは 異常に短い時間である。元従業員が期限までに行使しなかったオプションは,会社に吸収される。Uber は 今春 この方針を変更し,今では 元従業員は オプションの行使に最大7年の猶予が与えられている。
     Uber は,いわゆる 2次市場での株式の売却を禁止している。4年以上 Uber に在籍した従業員は,最大 10% の持ち株を (SoftBank ほど大きくない) 割り引いた値段で Uber に売り戻すことができる。
     Uber は,コメントを拒んだ。
     Uber の共同創業家で 前 CEO の Travis Kalanick は,"人力の限り できるだけ遅く" Uber を上場させると言ったと伝えられているのは,有名な話である。8月末に CEO を引き継いだ Dara Khosrowshahi は,Uber を 2019 年までに上場したいと言っている。
    従業員の給料を低く抑えて,その穴埋めにストック・オプション。
     従業員がこれを行使したときには,多額の金が Uber に入る。
     従業員は その株がいつ現金化できるかわからないが,とりあえず 借金して権利行使する。
     Uber は買い取りをせず,SoftBank に買い取らせる。
     ひどいもんだ。

  63. Uber 失速の原因を看破していた競合トップ, Lyft の Logan Green CEO の発言を振り返る
    日経ビジネス Online,2017/12/11
    大西 孝弘
    2017年は,ライドシェアの勢力図が激変した年だった。
     2016 年までは Uber Technologies の独走態勢になりつつあったが,スキャンダルによって自滅した。代りに各地域発祥のライドシェア企業が盛り返した。中でも顕著だったのは Lyft の復活だ。2017年に入って利用者が伸び,成長が続いている。
     本誌記者は 2016年4月に,この変化を予知したような発言を Lyft の Logan Green CEO から聞いていた。
     「我々は評判の悪い Uber とは違う」
     当時は負け犬の遠吠えと言われても仕方がない状況だった。 Uber はトラブルは抱えていたものの,好戦的な経営姿勢については「やんちゃ」と好意的に見る向きもあった。当時 Lyft は身売り説も浮上しており,完全に劣勢に立たされていた。
     Green CEO は,Uber についてこう話した。「Uber は,運転手をあくまで商品と考えている。我々の事業展開では人が核となり,運転手に良い待遇をしたいと考えている。」
     その具体例として,運転手にチップの受け取りを認めていることと,パートタイムの運転手への当日支払いのシステムを導入していることを挙げた。いずれも当時,Uber は導入していなかった。
     アメリカでは,Uber と Lyft の双方にサービスを提供する運転手が多いが,Lyft の方が運転手の取り分が多いとされる。
    Lyft の Logan Green CEO は,留学先の
    ジンバブエで近隣や地域の人々の間での相乗りが
    通常の交通手段として使われていることに着想を
    得て, 2007年に Lyft の前身の Zimride を設立した。
     「運転手をハッピーにすることで,乗客もハッピーになる。」共同創業者の John Zimmer CEO は,コーネル大学のホテル経営のコースを取っており, 「我々のサービスはホスピタリティを重視している」とも語った。
     こうした発言は, 「お行儀が良いから,やんちゃな企業には勝てない」と批判されかねないものだった。
     グーグルは Uber から Lyft へ乗り換えた
     Uber に様々な問題が浮上したのは,今年に入ってからだ。社内でのセクハラや性差別,いじめなどで 20人以上が解雇された。創業者の Travis Kalanick は,セクハラの放置や運転手への暴言,技術の盗用疑惑などで,CEO を辞任に追い込まれた。
     今年11月には,顧客情報の流出を隠蔽していたことも発覚した。2016 年以降半に 5700万人分の個人情報が流出されたうえに,当局に報告せず,ハッカーに口止め料を払っていた。
     同社の 2017年7~9月期は,前の期より赤字幅が拡大した。11月には,経営立て直しのため,ソフトバンクから新たな資金を調達した。
    アメリカでは,Uber と Lyft の双方のサービスを提供する運転手が
    多い。 Lyft の方が運転手の取り分が多いとされる。
     Uber が迷走する間,Lyft が猛烈に巻き返している
     グーグルの変節が象徴的である。同社はもともと傘下のベンチャー資本を通じて Uber に出資していたが, 自動運転の開発について,知的財産を侵害したとして Uber を訴えた。
     結果として グーグルは Uber との関係を解消し,傘下のベンチャー資本から Lyft に約10億ドル (約1130億円) を出資した。Lyft はアメリカ市場を重視する慎重な姿勢を貫いていたものの,11月にはカナダに進出することを明らかにした。
     Green CEO が強調する「Uber との違い」が 運転手, 利用者, 関係企業から評価されてきたようだ。
     乗客暴行のユナイテッド航空
     こうした Uber の失速メカニズムは,様々な業界に当てはまるのではないだろうか。
     本誌は 今夏,航空 & ホテル・ランキングの調査を実施した。特徴的なのは,業績好調の企業の中で,満足度が著しく低い企業があったことだ。
     その1つがユナイテッド航空である。4月にオーバーブッキングとなって,機内から乗客を暴力的に引き摺り下ろす事件が発覚した。鼻血を出して引き摺られる乗客の映像が SNS などで拡散し,同社に世界中から批判が集中した。
     そのユナイテッド航空の満足度は,37社中 28位と低迷した。にもかかわらず,同社の足元の業績は好調に推移している。
     日本では,アパホテルズ & リゾーツの評判の悪さが際立った。ランキング対象となった 35 のビジネスホテルの中で最下位だった。
     アパホテルは駅に近く,部屋も機能的だ。しかし,繁忙期の値段の上昇が他のホテル・チェーンに比べて大きいことに批判が集中した。回答者からは,「客の足元を見て値段を吊り上げる」「シングル1泊3万円はあり得ない」といった,料金に対する不満の声が数多く寄せられた。
     財務データだけでは,消費者がどのような気持ちでサービスを利用しているかという「心」の部分は見えない。
     サービスを提供する企業は,利用者が伸び,業績が向上していれば,利用者が満足していると錯覚してしまうのかもしれない。「便利だけど好かれない」企業は,Uber のように利用者が離反するリスクを抱えている。
    ──────

  64. Uber’s deal with a cab firm in Singapore helps the company offload the costs of owning cars
    シンガポールのタクシー会社と Uber が協定を結んだことは,車の所有による経費の軽減を助ける
    Recode,2017/12/08 @03:56 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    Uber は,同社の 車両リース子会社と シンガポールの大手タクシー会社 ComfortDelGro の合併により JV を設立することに合意した。
     Uber は,シンガポールのリース子会社の過半数株式を タクシー会社 ComfortDelGro に売却した。この取り引きの一環として,両社は $4.74 億評価の JV を設立した。ComfortDelGro は,51% の権益を持ち 経営権を握る。
     Uber は Lion City Rentals と呼ばれるリース会社の残りを所有し,ComfortDelGro は,Uber の貸借対照表上にあった 14,000 台の車の運用と保守を引き継ぐ。
     これは,Uber にとって 2019 年の IPO を見据えた大きな取り引きである。
     $690 億の配車企業は,2017 年第3四半期に 赤字が ほぼ 40% 増えて −$14.6 億になった。しかも,東南アジアを含む 大市場の一部で 少なくとも6ヵ月は黒字を期待していない。赤字を削減することは,前任者 Travis Kalanick の課題であると同時に,新たに招聘された Dara Khosrowshahi CEO の課題であった。
     同じ理由から,Uber は今年11月 ロシア事業を地元の競合相手 Yandex と合併させることに決めた。
     東南アジアは,Khosrowshahi にとっても,容易にこじ開けられる市場ではない。
     "あの市場の経済は,我々が望むものではない。" … と Khosrowshahi は最近言った。"現時点では,資本が過剰であると思う。我々は参入し,前掛かりになっている。だが,この市場から間もなく利益を上げられると 私は 楽観していない。"
     強い競合相手 Grab を振り払う困難は,東南アジアで車を所有する高いコストと重なっている。その結果,カジュアルな運転手を商業運転手に使うという Uber の事業モデルが難しくなった。特に 今 シンガポールは私有車の利用を禁止した。
     投資家にとって Uber の当初の価値命題は,固定費が低いことであったが,シンガポールやインドのような市場では,供給を維持・増加するためには,車を自社所有してリースせざるを得ない。
     今や,Uber のアジア部門の最高事業責任者 Brooks Entwistle の下で,同社は 戦略をシフトしつつある。
     Uber は,シンガポールでの営業車両の経費を軽減するだけでなく,Comfort の約 15,000 台のタクシーに独占的にアクセスできる。将来は,さらに多くのタクシー会社と提携を見込む。
     だが これは,Uber の開業以来のやり方とは 反対である。同社は歴史的には,タクシーに対する一般の安全と効率への不満を利用して 新規の乗客を集めてきた。
     ところが シンガポールのような市場は,既に 安全な信頼できる業界を持っており,そのため 配車企業はタクシー企業と提携することに意味がある。そういう理由で,Uber の競争相手 Grab (以前の名前は GrabTaxi) は タクシー呼び出しアプリとして開業し,いまでも 数多くの (Comfort 以外の) タクシー会社とシンガポールで協業を続けている。
     とは言え,リース会社を運営することは,問題が無いわけではない。
     Lion Rentals と Uber は最近,リースしている車が火を吹いて,非難の嵐を浴びた。Wall Street Journal が暴露したように,会社は それと知りながら 製造会社から (電子部品の問題により) リコール中の車を貸した。
    これは,重大なニュースだろう。
     Uber の事業モデルは 車も運転手も持たず,カジュアル運転手が持っている私有車に依存して 安い料金を実現してきた ── ここがミソである。これによって,タクシー会社をどんどん潰して,規模の利益を得てきたのである。
     タクシー会社と協業しちゃったら,タクシー会社を潰せないから,自分も大きくなることはできない。
     ごく 簡単な理屈である。
     世界の配車王は,ほんとに「敗者王」になるだろう。
     こういう簡単なことが見抜けない アホ経営陣なのか。

  65. Lyft gets an investment — from an Uber investor
    Lyft が投資を受け入れる ── Uber 投資家から。
    Recode,2017/12/05 @01:31 pm ET
    By Theodore Schleifer
    フィデリティは,Uber に加えて Lyft も一口 所有する。
     Uber の大株主が,Uber のアメリカでの天敵 Lyft に投資した。これは,ライドシェア業界の絡み合った糸の最新のねじれである。
     Lyft は火曜日,ミューチュアル・ファンドの巨人 フィデリティが 拡大資金調達ラウンドに参加すると発表した。これにより Lyft の評価額は $115 億になるという。今回の資金調達は,アルファベットのアフィリエイト CapitalG が率いるものであり,$10 億を集めるものと見られていたが,フィデリティの参加により $15 億を調達することになった。
     一般に株主は 投資先の利益相反を避けようとするものだが,Uber と Lyft に限っては "何でもあり" らしい。たとえば,アルファベットも Uber と Lyft の両方に投資している。
     フィデリティは,コメントを拒んだ。
     フィデリティが持つ Uber は,Lyft [$5億] より遥かに大きい ── フィデリティは,2014 年 Uber の第4次資金調達 $12 億を率いた。
     注目すべきは,フィデリティは,今夏 Travis Kalanick の追放を助けた 重要な投資家であった。
     Lyft と Uber は アメリカの市場を奪う戦争に嵌っており,これに勝つために膨大なカネを蓄えている。Lyft はこのカネを 今すぐには必要としない ── だが 自律運転車のような先端領域への投資は,健全な軍資金を必要とし,そのため テーブル上のカネを受け入れようとしている。
     Uber の方は,日本のコングロマリット SoftBank から 最低 $10 億の新規投資を受け入れる準備中である。SoftBank は,もしも Uber への投資が完了できなければ,Lyft にも投資すると脅しを掛けている。

  66. GM’s self-driving division has hired a former top Uber engineer as its first CTO
    GM の自動運転部門が,Uber のトップ技術者を 初めて CTO に雇う
    Recode,2017/11/30 @04:25 pm ET
    By johana Bhuiyan
    Uber で AG Gangadhar の下で働いていた Susan Fowler は,この採用を批判する。
     GM の自律運転車部門 Cruise は,安全のための運転手を乗せない自動運転車のネットワークを 2019 年に配備する計画である … と GM 経営陣が木曜日の投資家向け電話会議で言った。
     この目標に向けて,自動車メーカーの自動運転部門は,Uber の元技術者 AG Gangadhar を 同部門初の CTO (最高技術責任者) に招聘した。
     以前グーグルで働いていた Gangadhar は,Uber に2年勤めた後,2017 年に退社した。GM の広報担当者は,Gangadhar が Uber を今夏 退社する前からリクルートを始めたと言う。彼は,今年の9月末から Cruise で仕事を始めた。
     配車企業にいた頃,Gangadhar は ストレージ および データ・システムや開発インフラのようなことに扱う部門のトップだった。この部門は,Uber の元技術者だった Susan Fowler が (のっぴきならない エッセイで) セクシュアル・ハラスメントと性差別を受けたと書いたのと同じ部門である。
     Fowler は,GM の任命を批判した。"この採用はトラブルを招く。しかも,シリコンバレーが 企業文化の問題を重く受け止めていると主張できるためには まだまだ 長い道程があることの証拠である。" … と コメントを求めた Recode に Fowler は 語った。
     これまで報道されているように,Fowler はそのエッセイの中で,性差別とセクシュアル・ハラスメントについて彼女の申し立ての処理を誤った一連のマネージャを挙げた。Gangadhar は特に名指しされた ── ハッキリと名前を挙げなかったが ── 問題のあるチームからの異動を阻止されたと書いている。
     いくつもの情報筋は,彼女の [以下の] ブログで "ディレクタ" と書かれている人が Gangadhar を指すのだと言う
    "私のマネージャ,彼のマネージャ,そして ディレクタによれば,私の異動は阻止された;その理由は 私の成績に問題があるからだと言う。私は 自分の実績が完全であることを指摘した。私の成績について苦情は これまで1つも無かった。私は全ての OKR [=目標管理ツール] に 期限を守って完了した。私は 気違いじみた組織のカオスの中でさえ,締め切りを外したことは一度もない。自分のチームに来て欲しいと呼んでくれるマネージャたちもいた。私の成績の問題とは何なのかと私は訊ねた。彼らは 答えなかった。"
    Recode が当時入手した E-メール (複数) は,Fowler が所属した部門内の技術者らが 上層部に Gangadhar とその部下のマネージャが Fowler にセクハラを行なった別のマネージャと組んで,Fowler の訴えを無視している … と上申したことを示す。
     Gangadhar の退社時,Fowler のエッセイと無関係であると Uber は 言った。Uber はさらに,彼女のエッセイの中のすべての申し立てを徹底的に調査し,勧告された行動をすべて取った … と強調した。
     他方,Cruise の側は, Gangadhar を採用する前に数週間掛けて 身辺調査を行なったと言う。
     "当社は,採用するすべての従業員について身辺調査を完了させる。AG Gangadhar についても同様に行なった。" … と広報担当者は言う。"同氏の技術上のスキルは広範に亘りユニークであり,このことはインタビューにより確認された。Gangadhar の元の雇用主 Uber が現在抱える諸問題に鑑み,当社は この雇用に関連した訴訟の可能性を広範に調査した。同氏が本件に関わっている証は無い。"
     Gangadhar を雇ったのは,Cruise が自律運転車のネットワークを安全に立ち上げることに気を取られていた中で起こったことであるが,その前は Kyle Vogt CEO が CTO の仕事のほとんどを引き受けていた。
     "もちろん当社の一員になれば,Cruise 従業員は全ての個人を 意義無く尊重することが求められる… と広報担当者は続けて言った。"この標準は当社の全員が合意すべきものであり,毎日 責任を問われるものである。"
     Cruise は 2019 年にアメリカのどこかの州で自動運転の配備を見据える中で,この採用を急いだ。
     Gangahar が Cruise に入社するのとほぼ同時期に,同社は 長い間 Netflix の幹部だった Tawni Cranz を新設の最高人材資源担当者として,さらにグーグル地図の元プログラム・マネージャ Ashwin Prabhu を地図事業のトップとして採用した。
     木曜日の GM の投資家向け電話会議で Vogt は,会社のすべての技術者要員は 配備が容易で安全な自動運転車の開発に 100% 集中していると語った。消費者は,サンフランシスコのダウンタウンで Cruise ネットワークの何かのバージョンを最初に期待できる。
    Uber が 如何に腐った企業であるかが分かる。
     それと同時に,自動運転は 人材難であることが分かる。

  67. Is Uber’s Grip on Southeast Asia Up for Grab?
    Uber の東南アジア掌握は Grab に渡るのか?
    Wall Street Journal,2017/11/28 @05:30 am ET
    By Newley Purnell (シンガポール)
    地元の配車企業 Grab の方が 現地の好みに合わせるのが遥かにうまく, しかも規制当局と良好な関係を結んでいる。
     Uber Technologies が昨年 地元のライバル 滴滴出行との高くついた戦争に負けて中国から撤退したとき,配車巨人は,その資源を アジアの儲かりそうな市場に振り向けることを約束した。
     それ以来,Uber は6億の人口を抱える東南アジアで,シェアを がぶ呑みする地元の企業 Grab に出し抜かれ,挫折を味わった。Grab は 急速に拡大しており,地元の好みに対応するのが Uber よりうまく,しかも 規制当局と Uber より良好な関係を結んでいる。
     アプリ分析会社 App Annie によれば,Grab は 東南アジア6ヵ国に亘って Uber より MAU (月間アクティブ利用者) が多く,コンサルティング会社 Bain の5月のレポートでは,この地域全体で Grab が Uber より利用者に好まれている。
     今や,Uber 投資家もアナリストも,7月にロシアから撤退した Uber が次に撤退するのは東南アジアだろうと言う。[注: Yandex との契約は7月であり,11月にロシア当局が承認した。 2017/11/24 Bloomberg]
     1つの要因は,日本のテック投資巨人 SoftBank Group である;同社は Uber へ直接投資 $10 億以上を,従業員 および 投資家から株を買い付けることにより投資する予定である。SoftBank は,早くも火曜日に買い付けを宣言するが,最初の買い付け価格は 30% 近く Uber の前回の評価から割り引いたものである … と月曜日に この件に詳しい1人が言った。
    ジャカルタの街路で客待ちをする Go-Jek (左) と Grab (右) の
    オートバイ・タクシーの運転手 (©Bloomberg)
     SoftBank は Grab への投資家でもあり, 特に いずれ IPO を控える Uber の激しい現金燃焼戦争による赤字を新任の Dara Khosrowshahi CEO が是正しようとしている状況では,再編がありそうだと一部の Uber 投資家が言う。
     今年8月に Uber のアジア部門の 最高事業責任者に指名された Brooks Entwistle は,Uber にとって これまでの世界中での経験を応用できる東南アジアが "生死を分ける" 重要な成長市場であると言う。ただし,彼は 東南アジアからの撤退の可能性に触れることを拒み,"自分は いま 事業を建設し, 回すことに注力している。" … と言った。
    交通麻痺
    SoftBank は いくつもの配車企業に投資しており,
    しかも Uber の権益を取得しようとしている。
    問題:SoftBank の投資を受け入れた
      一部の企業は, Uber と競合する。
    配車相互投資
    = Uber と競合する;矢印は 投資を意味する。
     SoftBank のスポークスマンは,コメントを拒んだ。
     Uber は東南アジアの従業員数を開示していない。
     Grab のスタッフは,昨年の 1,600 人から ほゞ倍増して,今では 3,000 人である。Grab は 今年7月に SoftBank が主導するグループから $25 億の資金注入を受けた。Grab は東南アジアだけで営業しており,2016 年には 30 都市で営業していたのが,今では 150 都市を超える。
     同じ時間の間に,Uber は 15 都市から 60 都市に増えた。
     Grab の Ming Maa 総裁は,以前は SoftBank と Goldman Sachs に在籍したことのある高名な ディール・メーカーであるが,Uber との合併の可能性については コメントを拒んだ。Grab は現在,単なる交通事業から 携帯決済など 幅の広いプラットフォームになることに力を入れている … と Ming Maa は言った。
     Uber が東南アジアで 如何に勝利し損ねたかは,Khosrowshahi に教訓を与える。Grab も Uber もどちらも 多様な交通オプションを提供する;私有車 [=白タク] ;オートバイ白タク,カープール予約。Grab はこれに加えて,地元で人気の高い車 ── サイドカー付きのオートバイ, すなわち 3輪の "トライク (trike)" による "タクシー" を導入した。このサイドカーは,フィリピンで広く使われている。しかも Grab は Uber より遥かに多い都市に遥かに大量の車を投入したらしい。大都市以外の地域で利用者を引き付けるには,これが 決定的に重要だった。
     他方,一部の運転手は,Grab が自分たちが何を必要とするかに配慮してくれると言う。シンガポールで Grab の運転手をしている Jason Chua (54) は,賃金紛争の解決に時間が掛かり過ぎたので,Uber を辞めて ライバルに乗り換えたと言う。
    Grab President Ming Maa
    Bloomberg)
     さらに,いくつかの国の規制当局は,地元政府との交渉のやり方を非難する;これは 世界中で Uber が直面してきた問題である。
     今年 Uber は,フィリピンで 短期間ではあるが登録を差し止められ,新しい運転手の登録ができなかった。kこのため,罰金と運転手への補償に ほゞ $1,000 万を払った。東南アジア最大の国インドネシアでは,Grab は Uberより政府の要請に協力的である … とインドネシア運輸省の上級官僚が言う。
     Uber のスポークスマンは これらの件についてコメントを拒んだ。
     Wall Street Journal は今年8月,シンガポールのマネージャーが 1,000 台以上の ホンダの欠陥バイクを運転手にレンタルし,1台が火を噴いた ことを報道した。この件に詳しい複数の人によれば,公共の安全を自慢する 規制の厳しい都市国家 シンガポールにおける 交通規制当局の評判に打撃を与えた。
     他方,Uber のマネージャーらが 外国に贈賄する法律違反を侵したかどうか アメリカ司法省が予備的調査を進めている。
     Uber のシンガポールに拠点を置く アジア地域担当 元専務 Mike Brown は今年9月に退社した。Brwon に加えて,3つの大きな市場 (インドネシア, マレーシア, ベトナム) を担当する3人のトップが この1年に退社し,そのポストは空席のままである。
     Entwistle は,退社の理由について口を噤んだが,Uber は これらのポストを埋めようとしているところだと言った。
     SoftBank の大富豪創業家 Masayoshi Son は,その考えに詳しい1人によれば,世界中のすべての大型市場で 主力の配車企業の支援をもくろむ。投資先の企業の営業する地域に重なりがあれば,再編は必ず起こる … とその人は言う。
     Uber の広報担当者は,同社が市場の思惑やウワサについてコメントしないと言った。
     Khosrowshahi は,規制による打撃と混乱の1年から Uber を取り戻そうとする中で,カギを握る戦場だけに的を絞るものと見られる。インドでは,Uber は ANI Technologies Pvt の Ola と戦っている;ブラジルでは 99 と戦っている;どちらも SoftBank から支援を受けている。
     "もしも SoftBank が関わるのであれば,中国やロシアで見られたように 世界中で再編が更に見られるだろうと私は思う。" … と Uber に投資してきた ニューヨークのベンチャー資本会社 Lead Edge Capital の創業家 Mitchell Green が言う。
      —Jake Maxwell Watts in Singapore, Anita Rachman in Jakarta and Mayumi Negishi in Tokyo contributed to this article.
     Write to Newley Purnell at newley.purnell @wsj.com
      「交通麻痺」の図を見ると,SoftBank と 滴滴出行の両社は,明確な世界戦略を持っていないことが分かる。
      中国人の Ming Maa は,東南アジアの事情を理解した経営が巧みであるらしい。
     島国が多いから,アメリカとは全然違うだろう。

  68. Benchmark and Menlo have committed to sell shares of Uber to SoftBank in a massive transaction
    Benchmark と Menlo が,Uber の持ち株を SoftBank に売却すると約束した
    Recode,2017/11/28 @09:10 pm ET
    By Theodore Schleifer
    2017 年の待望の取り引きに,まずは初動の勢いの印が見られる。
     Uber の大株主2名が 火曜日,世界最大評価のスタートアップ企業の持ち株の一部を SoftBank に売ることに同意した。これは,巨額の非上場株式売却の初動の勢いの印である。
     今夏 Uber CEO Travis Kalanick の追放を推進した Benchmark と Menlo Ventures の両社は,持ち株の一部を公開買い付けに応じて売却する … と SoftBank の広報担当者が言った。ただし 前回の資金調達より評価額を 30% 割り引く2次市場での取り引きは,SoftBank のコンソーシアムの一員と見られていた 1人の買い手 General Atlantic を追い出す結果となった。General Atlantic は,これでも 価格が高すぎると感じた … と事情に詳しい情報筋は言う。
     Uber は,この待望の入札の有資格者に 火曜日の晩 通知を行なった ── これらの投資家 および 初期従業員は,12 月28日正午まで 20 営業日の猶予を与えられ,その間に $480 億の評価で売るか,それとも 2019 年の上場を待つかを判断する。
     "SoftBank と Dragoneer は,Benchmark, Menlo Ventures および その他の初期投資家から 公開買い付けに応じるとの意向を受け取った。" … と SoftBank の広報担当者が火曜日に声明で言った。
     "これらの株主による売却は すべて,公開買い付けに参加する有資格の株主すべてが同一の条件に従う。"
     投資家に配布された公開買い付け文書によれば,SoftBank が主導するグループは,約 $80 億相当の Uber の株式を現在の投資家から 1株約 $33 を払って買うつもりである。
     この取り引きは,セクシュアル・ハラスメント非難,訴訟,最終的には Kalanick の追放に到った内紛により混乱した1年を経験してトラブっている企業にとって,莫大な重要性を帯びる。もしもこの取り引きにしくじれば ── 現在要求されている株価では,数多くの投資家が売るつもりは無いと こっそり Recode に言った ── Uber は またもや 同じドラマの泥沼に はまりかねない。
     この取り引きは,企業統治改革と関連しており,Uber とその株主にとって 大バーゲンである。新しい資金調達は,Uber 取締役会に一連の変革をもたらし,Kalanick と その闘争相手の投資家 (とくに Benchmark) の権力を削ぐ投票権構造を取り入れる。
     Benchmark が 株を売るという決断は,低い株価にも拘わらず,公開買い付けが成功するかもしれない初期の印である。このベンチャー資本会社は,Kalanick の抑えが十分利く場合に限って株を売るとの意向を従来表明していた。
     この名高いベンチャー資本は,Uber が間もなく $1,000 億評価になり,そのたった半分の評価では絶対に売らないと公言していた。
     Recode は この週末,Menlo は売るだろうと書いた。
     Benchmark や Menlo がどれだけの株を売る用意があるかは不明である。Benchmark は Uber の 13% を所有するので,もしも Benchmark がすべての株を手放さなければ,この取り引きは 成立がかなり危うくなるだろう。
     その他の売りそうな株主には,Kalanick と共同の創業家 Garrett Camp,First Round Capital,Google Ventures がある。Kalanick の後継 Dara Khosrowshahi CEO は,Uber の大株主全員に 持ち株の一部を売却して SoftBank が 13.4% を集めるのを助けるよう説いている。
     SoftBank が率いるコンソーシアムは,上の2次取り引きが成立した場合には,これとは別に 約 $10 億を新規に Uber の現在の評価で投資する。全体として,この取り引きは Uber を $540 億に評価することになる … と事情に詳しい情報筋が言う。このコンソーシアムは,Dragoneer Investment Group を含むが,General Atlantic,DST, および 数名の初期投資家を含まない;その理由は 1つには価格であると言う。
     公開買い付け文書によれば,新しい買い手として (中国企業) Tencent,(これまで Uber, Lyft に投資したことの無いアメリカのトップ級のベンチャー基金) Sequioia Capital,(Uber 取締役であり,Uber への権益を増やしたい) TPG が含まれる。
     初期従業員のうち,10,000 株以上の所有者は,数百万ドルの机上の富を現金化するチャンスに飛び上がるものと見られるが,彼らの持ち分は 数 % に過ぎない。
    どうなるんですかね ・・・
     現在要求されている株価では,数多くの投資家が売るつもりは無いと こっそり Recode に言った
     Recode の情報集めは 正確なことで定評がある。
     そうなれば,SoftBank 株主にとっては朗報だが,7月から 声を挙げている社長さんの面目は潰れる。
     痛し痒し!

  69. FROM BAD TO WORSE,How totally screwed is Uber right now?
    悪いから もっと悪いへ;今 Uber は 如何に狂いっぱなしか?
      Quartz,2017/11/29
      By Alison Griswold
    Uber の問題は いま どうでしょうか? 結構,結構! 気にしなくていいですよ。確かに:
    1. 上院議員5人が,巨大データ漏洩をいつ発見し どう対応したかを教えてほしいと Uber に求めている。
    2. ミズーリ州の Josh Hawley 司法長官府が Uber を 巨大データ漏洩について調査中であると言う。
    3. Uber Technologies は シカゴ市と クック郡から,"数万の住民" が被害を蒙った 2016 年のデータ漏洩に関して訴訟を起こされた。
    4. マサチューセッツ州の Maura Healey 司法長官 (民主党員) は 水曜日,Uber から文書 および その他の情報を要求したと WGBH-FM に 語り,さらに "刑事 および 民事のあらゆる可能性を考えている" と述べた。
    5. ニューヨーク州の司法長官は Uber の巨大データ漏洩について 調査を開始した。
    6. ニューメキシコ州の Hector Balderas 司法長官は,配車企業の巨大データ漏洩に関して Uber に追加の情報の発表を要求している。これには,何人のニューメキシコ州住民の個人情報が影響を受けたかが含まれる。
    7. ワシントン州の Bob Ferguson 司法長官は,Uber が ハッキングの事実を公表するまで1年以上待ち,乗客と運転手の個人データを漏洩させたとして,Uber を相手に訴訟を起こした。
    8. 欧州データ保護当局グループ ── 第29条作業グループと呼ばれる ── の議長は 木曜日,今回のデータ漏洩が 11月28, 29 日の会合で議論されると述べた。
    This is your party now, Dara.
    Reuters | Adriano Machado)
    ご立派! でも何もかも結構ではありません。多分 Uber は,あなたに $100,000 を払って結構だと言ってもらいたいんでしょう。それは 5000 万人の乗客と約 700 万人の運転手の個人情報が 2016 年10月に盗まれた後に, 口封じでハッカーを買収するためのカネだった。"これらは全て起こってはならない。私は 言い訳をするつもりは無い。" と Dara Khosrowshahi は言った。報道によれば,この9月に Uber の CEO に就任した2週間後にこのセキュリティ漏洩を知ったという。これなら,2016 年 11 月にこのハッキングを知り,$100,000 の支払いを許可した 前任者 Travis Kalanick より ちょっぴりマシである。
     他方,オイルのたっぷり利いたマシーン Uber Technologies に数十億ドルの投資をもくろんでいる日本のテック巨人 SoftBank は,"その時点では 我々の情報は暫定的 かつ 不完全なものだったにも拘わらず,投資家になる可能性のある者への開示の義務に沿って",この事件について 約3ヵ月前に知らされていた (WSJ) … と Uber は言った。つまり Uber は,どんなことをする義務があるかについて,ほとんど無関心であった。
     SoftBank は,Uber 株式の公開買い付けを昨日 (11月29日) 立ち上げるものと見られていた;最初のビッドは Uber を (従来の評価 $680 億の 約 30% 引き) 約 $480 億に評価する。もちろん,この評価額 $680 億は,Uber が Waymo から 企業秘密を盗んだとして裁判を起こされる悲惨な日の前の評価であった。これらすべての仕上げとして,まだ最高財務責任者 (CFO) が見つかっていない Uber は 昨日,赤字が第2四半期の −$11 億から 第3四半期には −$15 億に拡大したと発表した。SoftBank の公開買い付けへの応募資格のある従業員は,ますます 株を売りたくなるだろう。
     Uber について 今年言える 最も真実の言明は,"これ以上悪くならないと思った時に さらに悪くなる" ということだ。セクシュアル・ハラスメント, 抜け目の無い策士の幹部ら, 追放された CEO, 株主による訴訟, 企業秘密訴訟, 従業員の離反, 不満いっぱいの運転手, 連邦当局の捜査,そして おそらく 次は 議会の聴聞。
     Uber は タクシー業界をひっくり返し,法律の抜け穴を掻い潜り,ときには 全く無視して,ボタンを押すだけで配車を可能にした。この "法的革新" の文化が,今や Uber に復讐をもたらしつつある。
     Uber の怪しげな行動の大半を促した Kalanick は,今年6月に CEO の職から追放された。しかし,それによって 彼は Uber のすべての問題を背負ったわけでもないし,背負うこともできなかった。新任の CEO は6ヵ月の "一般的信頼" を得ると言われるが,先週明らかになったデータ漏洩は,真の境界線のように感じられる。この事件は Kalanick の下で起こったが,Uber の今年の大半の他のスキャンダルとは異なり,Khosrowshahi の手により公表された。議会の審問, 各州の司法長官 [日本で言えば, 各地方検察庁のトップ] の捜査も Khosrowshahi が解決を委ねられる問題である。
     CEO に就いた時には この漏洩を知らなかった人に ほとんど気を悪くしかねないが,だが ここは Uber である。何のために CEO に招かれたのかを きちんと知るべきであった。
      This post first appeared in Oversharing, a newsletter about the sharing economy.

  70. Uber’s quarterly losses jumped nearly 40 percent to $1.46 billion ahead of a massive private stock sale
    大量株式売却を前に,Uber の四半期赤字は 40% 弱 急増して $14.6 億になった。
    Recode,2017/11/28 @11:18 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    会社は これらの数字を,SoftBank が 一部の株主に送付した公開買い付け文書の中で明らかにした。
     Uber は,2四半期連続で $10 億超の赤字だった … 新たに開示された財務書類が明らかにした。配車企業は 純損失を第2四半期の −$10.6 億から −$14.6 億に拡大した。
     この赤字の増加は,1つには 世界中でライバルとの競争の激化に起因する。特にアメリカでは,Lyft が大量の資源を投入してシェアを奪っている … と Dara Khosrowshahi CEO が New York Times Dealbook 会議で最近述べた。
     "アメリカは 目下 当社と Lyft の間の競合が 非常に非常に激しい。このため,アメリカが 向こう6ヵ月間 特に利益を出せる市場ではないと私は見る。" … と Khosrowshahi は言った。
     Khosrowshahi はまた,Grab と競合している東南アジアのような地域でも,Uber が同様の問題にぶつかっていると述べた。
     "あの市場の経済は,当社が望んでいるものとは異なる。" … と Khosrowshahi は言った。"あそこは 資本投資が過剰であると私は考える。我々は あそこに入り,前のめりになっている。だが,私は あの市場から 間もなく利益を上げられると考えるほど楽観的ではない。"
     SoftBank が主導する投資家グループが火曜日の晩に株主に送付した公開買い付け文書の中にこれらの数字が含まれており,それを Bloomberg が最初に報道した。Uber は 一部の新株 および 現在株主の持ち株を日本の巨人に売却しようとしているが,その成功は 暫定的に留まる。
     第3四半期の売り上げは $20 億であり,第2四半期の $16.6 億から増加した。
     1つの明るい点は,需要が上向きなことである:水揚げ (gross bookings) は 第2四半期の $87.4 億から 第3四半期は $97.1 億に増加した。
     Khosrowshahi は,2019 年までに会社を上場したいと希望している。だがその前に,事業を是正するためになすべき作業が山ほどある。
    決算の数字がどこから漏れたのかと思っていましたが,Uber が 自発的に公表したものではなかった。
     なんと SoftBank が株主に送った 公開買い付け文書の中に含まれていた。
     その意図は ・・・ こんなにひどい赤字だから,当社の買い付けに 応じなさい … というつもり? ですね。
     つまり,Khosrowshahi CEO は,データ漏洩の事実を SoftBank だけに伝えたことで非難されているが, 決算の数字も SoftBank だけに伝えていた。
     これでは,ますます 信用を無くするよ,Khosrowshahi さん。
     「我々は正しいことをする。ピリオド」… と言ったんでしょ。

  71. Uber’s Losses Widen as SoftBank Launches Bid to Buy Shares
    SoftBank が Uber の株を買い取りにビッドを立ち上げる中,Uber の赤字が拡大する
    Bloomberg,2017/11/29 @11:25, Update @21:57 JST
    By Eric Newcomer
      第2四半期の赤字 $11 億が 第3四半期には $15 億に拡大した。
      SoftBank には,Dragoneer, Tencent, TPG, Sequoia Capital が加勢している。
     Uber Technologies が 競争, 法廷闘争 および 規制当局の調査をかわそうと格闘する中,配車事業のリーダーの赤字幅は,第3四半期に $14.6 億に拡大した … と事情を知る複数の人が言う。
     サンフランシスコに拠点を置く会社は,株主に財務諸表を報告した。SoftBank は, E-メールによる声明で,少なくとも Uber 初期支援者2名が株を売る意向であると言った。この売却は,会社の評価を前回の評価から 30% 割り引いた $480 億にする。
     General Atlantic と ロシアの DST Global は どちらも買い付けの協議に加わっていたが,この取り引きから撤退した … と1人が匿名を条件に言った。残りの入札者は SoftBank, Dragoneer Investment Group, TPG, Tencent Holdings, Sequoia Capital であり,発行済株式の少なくとも 13.4% を買う意向である … と2人が言う。
     "SoftBank と Dragoneer は,Benchmark, Menlo Ventures および その他の初期投資家から公開買い付けに応じて株を売る意向を受け取った。" … と SoftBank のスポークスマンは書いた。"これらの株主による売却は,この公開買い付けに加わる有資格の株主と同じ条件に従う。"
    Uber の赤字は増える
    配車企業は,水揚げと売り上げが増えているが,赤字も増えている。
     Uber は 株主に (配車サービスの需要を測る重要な物差しである) 水揚げが,9月30日に終わった四半期に +11% 増の $97.1 億であったことを告げた … と上記の人たちは言う。第2四半期には $87.4 億であった。
     売り上げは,第2四半期の $16.6 億から +21% 増の $20.1 億となった。
     ところが,これまでの四半期は 赤字幅が縮小を続けていたのが,第3四半期には反転した。赤字は第2四半期の −$10.6 億から +38% 増えて −$14.6 億になった。Uber は,2019 年に見込まれる IPO を前に 緊急に必要とされる 最高財務責任者 (CFO) が欠員で,募集中である。
     "配車企業らは,全く新しい業界を誕生させるという約束にしがみついているが,彼らのファンダメンタルズを基にすれば,言うも愚かである。" … と東海東京証券のアナリスト 石野雅彦が言う。
     Uber は,厳しい年を過ごした;CEO の追放,経営陣の大脱出 (exodus),5700 万人の個人データを危険に晒したハッキングの隠蔽。アメリカのライバル Lyft は,これに対しシェアを伸ばしている。Uber は第3四半期の大部分を CEO なしに過ごした ── Travis Kalanick は投資家の圧力を受けて6月に退任し,Dara Khosrowshahi が 9月に就任した。
     投資家グループは Uber の株を安値で掻っ攫おうと, 1株 $32.97 での買い付けを申し入れた … と事情を知る複数の人が言う。需要が思わしくなければ,株価を引き上げることも 撤退することもあり得る。SoftBank は,もしもこの買い付けに成功すれば,これとは別に少なくとも $10 億を ($690 億の評価で) Uber に直接投資すると公約している。重み付きで平均すれば Uber の評価額は $540 億になると1人が言う。
     買い手のコンソーシアムは,約4週間を掛けて この株価で十分か それとも値上げが必要かを判断する。公開買い付けの手続き全体の完了は,2月末を想定している。
      — With assistance by Pavel Alpeyev
     まだまだ 来年2月末まで続く 買い付け劇。
     1年の赤字を $50 億と見積もれば,SoftBank は その 1/5 の $10 億を負担する。
     加えて 金利負担もある。
     世界中の配車企業が赤字であるから,"当社に毎年 数千億円の減益要因" という当サイトのこれまでの見立てに狂いは無い。
     ただし こんなことで,Masa … ではなくて (笑) 今や SoftBank の実権を握る セクハラレイプ特許権訴訟好きの Rajeev が撤退するはずはない。
     Rajeev あるいは Masa が CFO に名乗りを挙げればよい (笑)。

  72. SoftBank Bids to Buy Uber Shares for 30% Less Than Current Value
    SoftBank が,現在の評価から 30% 割り引いて Uber 株の買い付けをビッドする。
    Bloomberg,2017/11/28 @09:01, @10:36 JST By Eric Newcomer
      この価格は Uber の前回の投資ラウンドより 30% 低い … と人々が言う。
      名簿に登載された投資家は,売却に合意している。
     SoftBank Group と投資家グループは,Uber Technologies の大量の株式を買い付けようとしているとウワサされている。この買い付けは,$690 億評価の配車企業を大幅ディスカウントするものであり,非上場企業の株式の買い付けとしては過去最大の取り引きに決着をつけるものである。
     SoftBank と (投資会社 Dragoneer Investment Group と General Atlantic を含む) パートナーは,$60 億以上を投じて,配車企業を $48 億の評価で株式を購入する;この評価額は,直近の資金調達の際の評価より 30% 低い。
     もしもこの買い付けが成功すれば,SoftBank が主導する連合は,Uber の現在の投資家から 14% 以上の株式を買うことになる。このほかに 会社への直接投資 $10 億と合わせて,今回の買い付けはこのグループを Uber の大株主にする … と上記の人たちが 匿名を条件に言う。
     SoftBank からの投資を確保することは,この取り引きを 強力な新しい同盟軍を上陸させて 割れ目を埋める絶好のチャンスと見る Uber の新任の CEO Dara Khosrowshahi にとって最優先事項だった。この公開買い付けは,現在の株主に売却により (サンフランシスコに拠点を置く企業が IPO を延ばす限り手にし得ない) 利益を得る機会を与える。Khosrowshahi は,Uber を 2019 年までに上場したいと言っている。
     この公開買い付けは,月曜日にスタートが予定されている … と彼らは言う。多数の Uber 株主が株を売る意向を表明したが,上記の人たちによれば,この手続きは 20 営業日にも亘って続くらしい。
     Uber のスポークスマンはコメントを拒んだ。
     Uber 取締役会の拡大とその他の企業統治改革は,株式売却の承認と連動している。ただし,この取り引きが終わったわけではない。株主は $48 億の評価で売らねばならない。SoftBank の申し出価格 $33 は,直近の資金調達の際の Uber の評価より 30% 低いが, それでも多くの初期投資家にとっては かなりの牡丹餅である。もしも 十分な量の株が集まらなければ,SoftBank は価格を挙げることも撤退することもできる … と彼らは言う
     配車企業が 救いようのなくひどい 2017 年を送る中 (共同創業家 CEO Travis Kalanick が投資家からの圧力により辞任し;アメリカでの最大の競争相手が地盤を伸ばし;アルファベットの自動運転部門 Waymo から訴訟を起こされて評判を取る中),SoftBank は Uber の株に目をつけてきた。$930 億テック投資基金を持つ SoftBank は,割り引いて Uber の株を買うチャンスを狙っていた。
    やっぱりわかりませんね。
     SoftBank にとって どういう良いことがあるのでしょうか?
     世界の "敗者王" となることにより (利払いを含めて) 毎年数千億円の赤字要因が発生するだろう?
     それに見合うプラスは何か?

  73. The city of Chicago is suing Uber for failing to disclose the 2016 breach of 57 million users’ data
    シカゴ市が,5700 万人の利用者データの 2016 年漏洩を開示しなかったことで Uber を起訴する。
    Recode,2017/11/27 @06:12 pm ET
    By Johana Bhuiyan
    Uber が前回のデータ・ハッキングの後に合意した システムのセキュリティ脆弱性の改善を行なっていないとシカゴ市は言う。
     シカゴ市は Uber を相手取って,5700 万人の Uber 利用者に影響を及ぼした 2016 年のデータ漏洩の開示を怠ったとして,訴訟を起こした。
     この訴訟は,イリノイ州の法務長官府が 同社の捜査を開始すると Recode に告げてからほんの数日後になされた。
     利用者と一般向けにどんな情報が漏れたかの通知を怠ったばかりか,Uber は ハッカーに身代金 $100,000 を払ってデータを消去させ,次いで 非開示合意にサインさせた。市は,これに加えて,2014 年のデータ漏洩につながったセキュリティの脆弱性を 配車企業が訂正することを怠ったと主張する。
     訴状は言う:
     "2014 年5月12日のデータ漏洩の詳細が 公表された後,Uber は (同社の不適切なデータ・セキュリティ慣行に懸念を抱く) 数多くの州 および 連邦規制当局の調査を受けた。Uber は (個人情報の保存, アクセス, 移動を保護する技術を採用することにより) データ・セキュリティ政策を強化する … と最終的に約束した。ところが それから1年も経たないうちに,同じ失敗が 1,000 倍 ひどい漏洩につながった。"
     シカゴ市は イリノイ州の住民をも代表して Uber に裁判を起こしており,一連の金銭的補償と陪審による裁判を要求している。市は,公共情報開示条例を Uber が破った1日当たり $10,000 の罰金を裁判所に求めている。
     その他に 市は,イリノイ消費者詐欺法に違反したとして Uber に罰金 $50,000 を科することを求めている。
     イリノイ州に加えて,少なくとも4州 (マサチューセッツ, ミズーリ, ニューヨーク, コネチカット) が,この件を調査すると Recode に伝えた。
     さらに,アメリカ議会からも ハッキングの開示になぜそんなに長い時間を要したかの一連の質問を Uber は浴びている。一部の議員は,この漏洩について Uber が発見に至った時間的経過を詳細に示すよう求めている。
     Mark Warner 民主党上院議員は 月曜日に Uber に書簡を送り,Uber が最初にハッカーをどのようにして見つけたかを訊ねた。Uber の "過去の行動パターン" から考えれば,Uber は 連邦法の下で違法とされる "ハック・バック" を試みたのではないかと Warner 議員は言う。
     改訂:Uber のスポークスウーマンは 我々のコメント要請に応答した:"本件を当社は 非常に重く受け止め,規制当局からの問い合わせには喜んでお答えする。当社は 事業のやり方を改めることを約束しており,当社のすべての決定の中核に誠実さを置き,顧客の信頼回復に懸命に努める所存である。"

  74. Uber,規制で手詰まり 日本でタクシー配車優先
    日経電子版,2017/11/27 @22:00
    ライドシェア世界大手の Uber Technologies の日本事業が曲がり角を迎えている。
    11月27日,日本では当面タクシーの配車サービスに専念する方針を示した。Uber は,日本法人の高橋正巳社長の退任も明らかになっている。タクシー業界の反発や規制を前に日本市場を攻めあぐねており,民泊分野で規模を拡大する Airbnb (エアビーアンドビー) との明暗が鮮明になってきた。
     「タクシー会社との提携に優先的に取り組んでいく。」同日開いた日本事業の説明会で,Brooks Entwhistle アジア事業責任者はこう強調した。自家用車で乗客を運ぶライドシェア事業を諦めたわけではないが,「規制当局との対話を重視している。スピーディーに進まない市場もある」と規制に従う考えを示した。
     米国本社では Travis Kalanick 共同創業者のセクハラ問題や個人情報の流出などで経営の混乱が続いている。日本法人でも高橋正巳社長の退社が明らかになったばかり。Entwhistle は「後任を含め日本で人材を探している」とした。
     Uber はこれまで「破壊者 (disruptor, 良い意味に使われる)」という批判を顧みずに事業を広げてきた。だが創業者の辞任や地元政府の反発など世界的な逆風を受け,「稼働率を高められる」としてタクシー業界と協調する姿勢を打ち出している。
     タクシーとの連携はアジア全体の戦略だが,日本は状況が異なる。シンガポールでは自家用車の運転手が有償で運送できる制度が設けられるなど,規制緩和を実現した。
     日本では,政府の規制改革推進会議でライドシェア解禁の議論が始まっているものの,実現に向けた抜本策は先送りされたままだ。国土交通省は安全性を理由に慎重な姿勢を崩しておらず,Uber はタクシーと組まざるを得ない状況が続く。
     連携を探るタクシー業界からも「手数料が高すぎて中小の事業者には受け入れられない」(タクシー大手首脳) という声が多い。ハイヤーやタクシー配車の対象地域は,都内から広がらない。
     一方,Uber が日本でハイヤーの配車を始めた2014年に日本進出を果たした Airbnb は国内で約5万6000室を登録し,利用者数は年間で約500万人に上る。同社の推計では 2016年の経済効果は 9,200億円と 2015年比で8割増えた。
     旅館業法の許可を得ない民泊物件が「ヤミ民泊」として認められていないのは,自家用車による有償での運送が「白タク」として禁じられるのと同じである。それでも,2020年の東京五輪に向けホテルの客室不足が懸念されていることを背景に,事業を拡大し,規制緩和の呼び水を自ら作った。
     一方,国内のタクシーの輸送人員は減少傾向にある。特に都市部ではライドシェアの需要が民泊ほど高くないことが,両者の明暗がくっきりと分かれた原因だろう。

  75. Uber Russia’s merger with Yandex approved
    Uber Russia と Yandex との合併が承認された
    Bloomberg,2017/11/24 @19:25 JST
    Ilya Khrennikov
    ロシア最大のテック企業 Yandex NV が,配車企業 Uber Technologies とロシアで合併する認可を地元の独占禁止当局から受けた … ロシア連邦反独占局 (FAS) が金曜日に発表した。
     スマートフォンのアプリによる車の呼び出しは ロシアのタクシー市場の成長を押し上げているが,Yandex-Uber JV は,乗客,運転手,パートナーが他の配車企業を利用するのを邪魔しないよう要請されている … と FAS が声明で言った。
     "現在,市場には 配車企業を再編し,市場での役割を強化しようとする傾向が認められる。" … と FAS の次官 Anatoly Golomolzin が声明で言った。"これと同時に,すべての市場参加者が平等な足場に立つように,極く初期の段階から,このような市場での競争が発展できるよう保証することが重要であると我々は理解している。
     Uber Technologies は 今年7月,同社のロシア営業と (近隣諸国を含む) 元ソビエト連邦諸国とで JV を設立し,Yandex が 59.3%, Uber が 36.0% を所有する協定を結んだ。サンフランシスコに拠点を置く会社にとって,これは 昨年 の中国市場からの (ライバル滴滴出行の少数株式と引き換えの) 撤退に次ぐ 2番目の撤退である。
     この合併は,2018年1月の完了が予定されている。取引完了後,乗客は Yandex.Taxi と Uber の両方のアプリを使って配車を予約できる。他方,運転手側のアプリは 両方のサービスから予約を受け付けられるように統一される予定である。
     モスクワ市場で,Yandex の株価は +3.5% 上がった。ロシアでタクシー事業を行なっているその他の企業には,PEF UFG が支援する Vezet, Taxi Maxim, イスラエルの Gett Inc がある。
      [ロシアの検索巨人] Yandex は,近年 大きくなったタクシー事業を 2019 年前半までに IPO へ進める計画である。
    Uber は 中国,ロシア から撤退する。
     いずれも SoftBank は承知していることであるが,どういうつもりなのか?

  76. Uber looks to step up India investments
    Uber が,インド投資の拡大を見据える
    Live Mint,2017/11/24 @08:51 am IST
    By Anirban Sen (バンガロール)
    Uber は,バンガロール・センターで インド固有の世界的革新を建設し,成長と技術チームを急拡大させる計画である。
    Daniel Graf, Uber’s global head of product.
    世界的配車タクシー巨人 Uber Technologies は,最近の揉め事 および スキャンダルから立ち直ろうとしている中であるにも拘わらず,インドでの投資を拡大し,インド固有の世界的革新をさらにビルドアウトしようとしている。
     Uber の製品担当世界トップ Daniel Graf はインタビューで,インドが世界で最も目覚ましい市場の1つであり,急成長するインターネット経済の中で成功するためなら何でもやるつもりだと述べた。中国事業を地元のライバル滴滴出行に昨年8月に売却した (アメリカに拠点を置く) Uber にとって,インドは 最も重要な国際市場となった。
     "当社にとって重要なのは,当地で長期にわたって持続可能な事業を持つことだ。当社は多くの市場で実際に利益を挙げており,当社事業のファンダメンタルズは非常に健全である。ただし 一部の市場では 当社は いまだに超成長モードにあり,持続可能な段階に到達できるよう 投資を続けている。インドでは,当社は投資を続けている。当社は 技術,プロモーション などに投資を行なっている。" … と Graf は言った。彼は 元 グーグルのトップ幹部であり,2015 年に Uber に加わった。
     "当社にとって,インド, ブラジル, インドネシア, フィリピン のような市場は急成長市場であり,非常に重要である。当社は 大量の技術資源をインドに投じている ── ここバンガロールとハイデラバードには,150 人の技術者を置いている。技術センターとしてのインドへの公約は この上無く重要である。当社は ここインドのハイデラバードとバンガロールで世界的なソリューションを開発中であり,これらのチームを増大するための投資を続ける。これについては 疑問の余地が無い。" … と Graf は言う。
     彼は,Uber が最近の揉め事により影響を受けていることを認めたが,争いごとの大部分は過去のものとなったと言う。Uber は Travis Kalanick CEO を追放し,その後任に Dara Khosrowshahi を今年8月に指名した。
     "最近の揉め事が我々に影響を与えていないと言えば, それはウソになるだろう。もちろん 影響はある。私に言えるのは,Dara が取締役会に加わって あらゆる種類の改革が予定されており,既に多くの点で改革を行なった … ということだ。たとえば,提携する運転手との係わり方を変えたが,これは 今年 最大の変化の1つである。これまでにしたことを見れば,新しい章の始まりだと言いたい。会社は前進しており,過去から学んでいる。確かに 過ちはあった。だが 過ちには対応できたと私は思う;事業の観点からだけではなく,文化の観点からも,チームの観点からも,我々は 従来より良い体制を築いた。" … と Graf は言う。
     中国で敗退を強いられた Uber にとって,インドでの成功は 最優先課題の1つである。しかし,アナリストらによれば,Ola という地元の極めて資金豊富なライバルに対抗するのは,容易ではない。
     今年 10 月 Ola (ANI Technologies Pvt. Ltd) は,新たに騰訊控股からと 現在の投資家 SoftBank から合計 $11 億を調達した。これは,Uber を寄せ付けないための弾薬としては十分である。
     Uber と Ola は目下,インド市場の大半を誰が牛耳っているかで意見が割れている。
     Ola の経営陣と投資家は,Uber は Ola の規模の半分以下であると主張し,Uber の経営陣は,自分たちが Ola よりわずかに大きいと主張する。どちらの主張が正しいかをチェックする決定的な方法は無い [注:車も運転手も借りものだから?]
     けれども,シェア争いで潰し合いの戦争に嵌っている Ola と (SoftBank から新たに資金を調達しようとしている) Uber は,両方とも 巨額の資本を必要とする。Uber の新しい CEO が最近の会見で,東南アジアのタクシー配車市場は "投下資本が過剰" であり,この地域から 間もなく利益を上げられると期待していない … と述べたことを考えれば,Uber がインド投資を続けられるかどうかは,今後を見なければ分からない。
     Uber is currently also looking to tweak and improve its pricing algorithm, which has in recent times drawn considerable flak after it was revealed that the ride-hailing giant uses a “route-based pricing” system where it charges customers based on what the algorithm predicts they are willing to pay.
     “Remember in the old days, when you requested a ride, you didn’t know the price upfront. At the end of the ride, sometimes you were positively surprised and sometimes you were negatively surprised. We don’t want those surprises. You want something to work reliably and be affordable. We introduced globally ‘Upfront Pricing’, which takes real time, real world conditions into account. Our model for upfront pricing is good, but we have room to improve there. We are trying to get it as accurate as possible. If two people sign up on Uber at the same time, and they are taking the same ride at the same time, we want both to see the same fare. There’s no reason for them to have different fares,” said Graf.
    Uber と Ola は インドで正面衝突するらしい。
     それでも 両方に肩入れしようという Rajeev Misra の構想は?

  77. New Uber CEO Knew of Hack for Months
    Uber の新任の CEO は ハッキングを何ヵ月も前に知っていた。
    Wall Street Journal,2017/11/17 @01:44 pm ET
    By Greg Bensinger & Robert McMillan
    Dara Khosrowshahi は,2016 年のデータ漏洩を 9月5日に CEO に就任した2週間後に知ったが, 顧客には今週まで黙っていた。
     Uber Technologies の大規模データ漏洩は,同社の新任の CEO の下で起こったのではないが,被害を受けた乗客と運転手にこの事件を通知するまでには,2ヵ月以上経っていた … とこの件に詳しい複数の人が言う。
     Dara Khosrowshahi CEO が (2016 年に発生し,5700 万のアカウントに影響を及ぼしたと Uber が言う) このデータ漏洩を知ったのは,9月5日に正式に舵を取ってから2週間後のことだった … と中の1人が言う。Khosrowshahi は,直ちに調査を命じ,公表前に完了を望んだ。
     ところが 約3週間前,Uber は このデータ漏洩の調査 ならびに 大筋を (配車企業に数十億ドルの投資を検討している) SoftBank Group に開示した … と事情を知るほかの複数の人が言う。Uber 首脳は,最高セキュリティ責任者を含めて,データ漏洩の点で,個人情報がアクセスされたことを知っていた。Uber は 火曜日になって 漸く 乗客と運転手に通知した。
     SoftBank への開示の時点では,FireEye Inc の Mandiant 法務部門が率いる調査が進行中であった。Uber は,従業員などとのいくつものインタビューを実施し,さらにアカウントを調べ,何人の乗客と運転手が影響を受けたかを決める … などの作業を迫られた … と中の1人が言う。Uber は,何個のアカウントが影響を受けたかその確かな数字を確定させ,この漏洩の処理を誤ったと (Uber が) 言う幹部2名を絶縁した後で,漸くこの漏洩を公表した … とその人が言う。
     Uber は,ハッカーに $100,000 を払って盗まれたデータを破壊させ,消費者と当局には知らせないことに決めていた … と 火曜日に開示した。これらの行動は,(6月に CEO を辞任した) 前 CEO Travis Kalanick の下で起こった。Kalanick は,この攻撃を 2016 年 11 月に知り,カネの支払いを認めた … と この件に詳しい複数の人が言う。
     いくつもの州が 連邦取引委員会 (FTC) と共に,また 少なくとも欧州の3ヵ国の政府機関が,なぜデータ漏洩の開示に Uber が1年を要したかの調査を 今週 開始した。Uber は本件についてさまざまの政府当局に協力していると言う。どんな罰を Uber が受けるかは不明である。
     Khosrowshahi は,Uber が1年に及ぶスキャンダルと法律上の挫折の後で,会社を一新するために招聘された。Uber は 過去において,顧客より自社の利益を優先し,たとえば 顧客の動きを追跡できるようなソフトウェアの使用を従業員に許すなど,批判に晒されてきた。
     ほかの会社には,Khosrowshahi が2ヵ月を要したと事情を知る人が言うよりも 短い時間内にデータ漏洩を開示したのに批判を浴びたところさえある。
     たとえば Equifax Inc は,大量のデータ漏洩に気づいてから 開示までに6週間を要したとして,先月 議員らから非難を浴びた。この場合のハッキングは,1.45 億人を超える消費者の個人情報に不正アクセスした。Yahoo Inc も 5億件のアカウントが絡む 2014 年の事件を直ちに調査しなかったと発表して,同様に非難を浴びた。この両者は,可能な限り速やかに事件を報告したと言った。
     "今日のアメリカでは 多くの法律が,会社が規制当局 および 消費者に通知するための時間として, 6~8週間を容認している。" … と データ漏洩への企業の対応を助ける会社 AllClear ID Inc の Bo Holland CEO が言う。 この標準を満たす企業であっても,消費者と投資家が速やかな対応を期待するので,評判に傷がつくことはありうる … と 彼は E-メールでメッセージを寄せた。
     "Equifax は法律の字句を守った;だが 会社の対応には誰も不満だった;その結果 経営陣も株主も その結果に打撃を受けた。" … と彼は言う。
     データ漏洩の通知には連邦法の定めが無いので,Uber のハッキングのような事件は,48 州の異なる法律のツギハギによりカバーされる。そのうちの一番強い要求は,個人を特定できる情報が不正アクセスされたならば,可能な限り速やかに消費者に直接に通知することを要求する。
     Uber は,営業を行なっている 各州でこれらのそれぞれの法律に従う。もしも 法律に従わなかった場合には, Uber は 州法の範囲内で罰を受け,消費者から訴訟を受ける。
     "遅延を許す条項は,経営陣の交代を理由として認めるものではない。" … とカリフォルニア大学バークレー校の Deirdre Mulligan 教授が言う。カリフォルニア州の 漏洩通知法は 漏洩後 可能な限り速やかに消費者に通知することを要求しているが,時間については特に定めていない。この法律の制定の際に,教授は議員に顧問の役目を務めた。カリフォルニア州司法局は,コメントを拒み,捜査が行われる可能性のある事柄についてはコメントしないことになっていると言った。
     サンフランシスコに拠点を置く Uber は,数百万人の乗客の 氏名, E-メール・アドレス, 電話番号 がアクセスされ,さらに 約 600,000 人の運転手の免許証番号がアクセスされたと言った。これらの氏名と番号の 許可されていないアクセスは,カリフォルニア州法によれば,開示要求の引き金を自動的に引くことになる … と Mulligan 教授は言う。
     Uber によれば,外部の犯罪専門家を雇って行なった調査は,消費者の財務情報が盗まれたとか,取得された個人情報が 成りすましのような 犯罪に使われた証拠を見出さなかった。
     ハッカーらが接触してきた後,Uber は 彼らを同社の "バグ・バウンティ" プログラム [会社のソフトウェアの脆弱性を報告してもらうことで報奨金を払う制度] に参加させた … と事情を知る複数の人は言う。ハッカーらは,このプログラムに参加することに同意し,Uber は 彼らに $100,000 を払った。盗まれたデータが破壊されたことは,ハッカーらが確認したと Uber は言う。
     "なぜ 1年も後になって 今さら こんな話をするのかとお訊ねでしょう。" … と Khosrowshahi は ブログに書いた。"私も 同じ疑問を持ちました。ですから,何が起こり どんな処置をしたのか徹底的に調査するよう直ちに求めました。"
     Uber は 今週に到るまで,この調査について SoftBank に既に通知済みであることを公表しなかった。
     "我々は データ漏洩を調査中であることを SoftBank に通知した。これは 投資家になる可能性のある者への開示の義務に沿ったものである。ただし,その時点で我々の情報は暫定的 かつ 不完全なものだった。" … と Uber は水曜日に声明で言った。"我々は,我々の犯罪捜査が進行中であると明言した。しかしながら,ひとたび内部調査が完了し,事実の完全な理解が得られると,我々は 規制当局 および 顧客に 大っぴらに開示した。"
     Uber は SoftBank との投資取り引きをサポートしようと懸命だった;何しろ総額 $100 億にも上る取り引きである (ただし,Uber の金庫に直接に入るのは $10 億だけである)。しかし,この手続きは SoftBank が 公開買い付けで 現在株主から いくらで買うかを巡って遅れていた … と事情に詳しい複数の人が言う。
     Uber は,公開買い付けに優先して,自分の顧客と運転手にデータ漏洩を開示する必要があった;なぜなら これほどの規模と範囲のデータ漏洩を投資家は重大と考えるからである … と この件に詳しい複数の人が言う。さらには,SoftBank の買い付け価格にも影響を及ぼしかねない。SoftBank は,買い付けの固定価格を来週にも決める見込みである … とこの件に詳しい複数の人が言う。
      Write to Greg Bensinger at greg.bensinger@wsj.com and Robert McMillan at Robert.Mcmillan@wsj.com
    Rajeev Misra の選択は明らかである。
     (1) いい口実ができた。安く買い叩ける。
     (2) こんなに腐っている会社にカネを出すのは意味が無い。撤退する。
    ──────
     Uber 甘いよね。インターネットを使って事業をやる資格が無い。
     今のうちに廃業する方がよい。
     盗まれたデータが破壊されたことは,ハッカーらが確認したと Uber は言う。
     これには,誰しも笑うだろう。当のハッカーさんも高笑い (?)
      破壊なんかするはずがない。コピーして売るでしょう。まだまだ 儲かる。いずれ出回って騒ぎになるかも。
     Khosrowshahi という人は 旅行会社の CEO だった。インタネットではまともな人かと思っていた。
     ちょっと前は (11月7日 Recode),"We do the right thing, Period." (我々は,正しいことをする) と言っていたのが,その時点で既に 隠していたとは。
     データ漏洩があったときに,誰が被害を受けるか … を真っ先に考えるべきであり,だから 被害者に通知すべきと考えるのが普通だろう。ソフトバンクに真っ先に通知したというのは,自分の利益しか考えていない。同じ「投資家」に通知するのなら,Uber の全株主に同時に通知していれば まだ救われる。
    ──────
     それにしても,そんなに SoftBank からカネが欲しいのか?
     ほかに 資金提供者は皆無 (?) なんだろうね。SoftBank に逃げられちゃったら,他に投資家はいない。
     … ということは,Uber は クズ物件。魅力なし。SoftBank も撤退すべきだろう。
     [参考] Yahoo! の身売りのときには,何でも 50 件を超える入札があったとか ・・・ 。
     今回は,SoftBank グループ1件のみ。福の神,カネの神として 頼りにされるわけだ (笑)

  78. Uber's messy data breach collides with launch of SoftBank deal
    Uber の だらしないデータ漏洩が,SoftBank 取り引きの立ち上げとぶつかる
    Reuters,2017/11/23 @03:23 am
    By Jim Finkle & Heather Somerville
    Uber Technologies の株式売り出しの新聞広告は 水曜日,配車企業がデータ・ハッキングを隠していたとの記事と並んで掲載された。これは,投資家から際限のない関心を集め,同時にルール破りへの強い性癖が一連のスキャンダルを生んだ Uber に対する何らかの暗喩であろう。
     New York Times に広告された株式売り出しは,Uber 投資家が 持ち株を日本の投資家 SoftBank に売ることを可能にする。この取り引きは (競争相手をスパイし,警察の取り締まりを免れるためのソフトウェアの作成から アジアでは贈賄の疑いで捜査を受けている) Uber にとって欠かせないものである。
     Uber は 火曜日,ハッカーに $100,000 を払って 会社から盗まれた 5700 万人を超える顧客と運転手のデータを消滅させたと発表した。しかも,前 CEO Travis Kalanick の下で,この件を被害者にも当局にも報告しないことに決めていた。このハッキングが行なわれたのは 2016 年 10月であり,データ漏洩は その翌月に発見されていた。
     会社を方向転換し,企業文化を見直す使命を今年8月に託された CEO Dara Khosrowshahi は ブログで,Uber が データ漏洩の処理で過ちを犯していたことを認めた。
     この開示のタイミングとして,これ以上悪い時は あり得なかっただろう。
     Uber は,SoftBank との取り引きを 今 完了しようとしており,日本の会社は これにより 少なくとも 14% の株のほとんどを現在株主から買い集めることにより $100 億もの巨額を投資する意向である。SoftBank は,売る意向を持つ株主を見つけようと広告を打っている。
     Uber は先月,SoftBank の投資について 暫定協定を発表した。
     1つの問題は,SoftBank が この漏洩問題を受けて価格を変更しようとするかどうかである。この件に詳しい或る情報筋は,SoftBank が Uber 投資の合意を守る意向ではあるが,良い条件を要求するだろうと言う。SoftBank は,再交渉するかどうかの最終決定を 未だ下していない … とその情報筋は言う。
     もう1つの疑問は,Uber の共同創業者であり 会社を世界的なパワーハウスにまで育て上げた一方,そのため 問題の多い猛烈な戦術を駆使した Kananick の将来である。彼は 今年6月,その経営スタイルが会社に害をなすのではないかと恐れる投資家により強制的に CEO を退任させられた。ただし,取締役会には 大株主として留まっている。
     Uber の諸問題を解決するための投資家の間の 厳しい戦いは,初期投資家 Benchmark による (Kalanick から すべての役を奪うことを要求する) 訴訟へと発展した。しかし,今月はじめ,SoftBank 取り引きに向けて道を均すため 和解が成立し,Kalanick は取締役の座と その他の権利を確保した。
     Kalanick は,昨年 11 月のハッキングを承知しており,$100,000 の支払いも承知していた … と この件に近い1人が言う。Kalanick はコメントを拒んだ。Uber は,ロイターから 水曜日に送った質問に応えなかった。
     多重捜査,多重訴訟
     Uber が 2016 年10月のデータ漏洩に対して直面する反響の範囲は,水曜日 世界中の政府が捜査を開始するに及んで 形を取り始めた。
     イギリス, オーストラリア, フィリピンの当局は,今回のデータ漏洩に対する Uber の対応を操作するつもりだといった。ロンドンの交通当局は,これまで Uber の営業免許を剥奪して協議を行ってきたが,Uber に詳細を提示するよう迫っていると言った。
     カナダのプライバシー監視機関は,データ漏洩について Uber に詳細を要求したと言った。ただし,正式の捜査は 未だ 立ち上げていない。
     少なくとも6州の司法長官は FTC と共に この件を調査すると発表した,一部の州は,Uber が合理的期限内にデータ漏洩しなかったことを法律違反として追及する模様である。
     データ漏洩の開示を怠ったこと ならびに 消費者に害を与えた可能性があるとして,アメリカでは少なくとも2件の集団訴訟が Uber に対して起こされた。
     Uber は,FTC および 複数の州と ハッキングを議論し,協力を約束していると言う。
     法律の専門家は,Uber がデータ漏洩訴訟から受ける財政的余波は限定的なものになるだろうと言う。乗客 および 運転手との協約は 論争が起こった場合 調停を義務付けているので,Uber は完全に訴訟を押しつぶすことに成功するだろう。
     Uber は,最高セキュリティ責任者 Joe Sullivan と 副責任者 Craig Clark を ハッキングの処理での役割に関して,解雇した。
     取締役会は,漏洩がどのように発見されたかの調査を Sullivan とそのチームにゆだねた。取締役会の委員会は,Kalanick も 当時の法務顧問 Salle Yoo も,漏洩について調査を受けていなかったと 結論した。
     そもそも 取締役会が何を知っているのかが不明である。複数の取締役は,コメントの要請に応じなかった。
     “The scope of this breach is something the Uber board should have been briefed about and consulted on at the very least,” said Cynthia Clark, an associate professor of management at Bentley University. “It’s a monitoring issue and one of strategy and reputation.”
     Clark said that these sorts of risks could affect Uber’s IPO, which the board has agreed will take place in 2019.
     The company has begun overhauling its security practices with help from Matt Olsen, former general counsel of the U.S. National Security Agency and director of the National Counterterrorism Center, CEO Khosrwoshahi said.
     Uber in August settled with the FTC after the regulator found the company failed to protect the personal information of passengers and drivers, an agreement that requires 20 years of regular auditing of Uber’s data.
     After this week’s disclosures, Uber can expect “more audits and more people inside of the company” from regulators, said cyber security attorney Steven Rubin.
    この記事事態が混乱している。
    ──────
    ここでも, 「SoftBank」という言葉は誰を指しているんだろ?(笑)
     ロイターの情報筋は,誰から情報を得たのだろう?
     (1) Masa
     (2) Rajeev
    折しも,今日 11月24日は,山一証券の自主廃業から 20 年。
     「社員は悪くなかった」という野澤正平社長の涙の会見は有名である。
     それでも,東芝のように 企業トップの不祥事は無くならない。
     なぜか?
     その原因を 識者は 閉鎖的な意思決定にあり … と言う。

  79. Uber is under investigation by multiple states over a 2016 data breach
    Uber は,2016 年のデータ漏洩で 複数の州により捜査を受けている。
    Recode,2017/11/22 (水) @12:13 pm ET
    By Tony Romm & Johana Bhuiyan
    アメリカ中の規制当局は,Uber が 5700 万人に影響を及ぼしたハッキング後に沈黙を守っていることを 問題視している。
     Uber が 2016 年に大規模なセキュリティ漏洩を被ったとの ── 当初は 運転手にも乗客にも当局にも詳細を隠していた ── 開示は,政府のさらなる捜査に火を点け,配車巨人に対する顧客の訴訟を招いている。
     侵入が 5700 万人の顧客に影響を与え,名前, 住所, (場合によっては) 運転手の免許証番号に不正アクセスしたと Uber が水曜日に発表したことを受けて,少なくとも5つの州 (イリノイ, マサチューセッツ, ミズーリ, ニューヨーク, コネチカット) が 今週 Recode に この件を捜査すると語った。
     他方 Uber は,連邦取引委員会 (FTC) での新しい調査の脅威とも争わなければならない。アメリカ政府のプライバシーとセキュリティの最高レベルの番犬としても動く FTC は,この8月に,Uber のプライバシーとセキュリティの慣行について 処罰を行なった。しかし,Uber が 2016 年に大規模なセキュリティ漏洩を起こしたことを,同時であったとは言え 関連の無いセキュリティ過失であるから,FTC は おそらく知らなかっただろう。今では FTC は 単に "発生した重大な問題を綿密に評価している" … と言うだけである。
     さらに,被害を被った一部の顧客が 同じようなアクションを取っている。水曜日 ── 漏洩が公表されてから数時間後 ── 1人の Uber 利用者が Uber を相手取って,怠慢 ならびに 詐欺的事業慣行を理由に訴訟を起こした。原告 Alejandro Flores は,乗客と運転手を含む集団訴訟を求めている。
     全体として,Uber の沈黙に対する揺り戻しは,既に広大に見える。Uber は,山のような民事 および 刑事訴訟に反撃する中で,またもや 配車企業は,高くつく訴訟 および 厳しい罰 または 罰金の脅威に直面している。
     "当社は,複数の州の法務長官府と接触しており,FTC とも問題を協議している。当社は これらの機関と前向きに協力する用意がある。" … と Uber の広報担当者は言った。
     Uber によれば,2016 年遅くハッカーらは Uber に狙いを定めた;Travis Kalanick がまだ CEO として会社を率いていた頃である。Uber のデータの公共収納庫にアクセスすることにより,2名が 世界中の 5700 万人の Uber 利用者の個人情報を見ることができた ── 盗むことはできなかったらしい。
     その時,Uber はデータ漏洩に関する情報を抑えた ── しかも ハッカーらに 身代金 $100,000 を払って 彼らが入手したデータを削除させた。それからざっと1年後,Uber の新任の CEO Dara Khosrowshahi がこの事件に関する情報を公表することに決め,併せて 謝罪し,同社のディジタル防衛体制を改善すると述べた。
     しかし,Khosrowshahi の "culpa mea" は,規制当局を満足させそうもない。
     1つには,アメリカ 48 州は,データ漏洩を起こした会社が 事態を消費者に通知することを要求する州法を独自に定めている。大部分の州では,非常に敏感な顧客データ ── Uber で 2016 年末に起こった運転手の免許証番号のような ── をハッカーが盗んだ場合には,会社はセキュリティ事件を開示しなければならない。
     この州法に合わせて,イリノイ, コネチカット, ニューヨークの3州の司法長官は Uber のデータ漏洩を捜査中であると言った ── おそらく Uber が州法を回避したかどうかが眼目なのだろう。その他の州 (ペンシルベニア, フロリダ) のトップ検察は 水曜日の時点で コメントを求める E-メールに即答しなかった。カリフォルニア州の司法長官は コメントを拒んだ。
     州法は,これから発生する (Uber が 2016 年の情報漏洩の開示を怠ったことが カリフォルニア, イリノイ, ハワイ などの州法での通告規則に反するとの) 集団訴訟の基礎を形作る。ただし イリノイのような一部の州では,漏洩した乗客の情報は 開示を必要としないが,600,000 人の運転手の免許証番号がアクセスされた件は 開示を必要とする。
     他方,我が国の首都 ワシントンで,Uber は [FTC との交渉で] さらに苦しい目を見る見込みである。
     数ヵ月前 Uber は,2014 年に遡る顧客データの取り扱いの誤りで,FTC との和議を取り付けた。その争いで,FTC は Uber が乗客の最も個人的な情報 (乗車履歴を含む) を従業員にアクセスさせることを許し,"消費者を騙した" と争った。
     ところが Uber の FTC との和議は,技術的に 確定したものではない;FTC が投票によりこれを決定しなければならない。このため,FTC が順序を再考する余地が残っている。一部の議員らは,FTC に対して 今週の開示を受けて,Uber に新しい審査を始めるよう強く迫っている。
    Richard Blumenthal
    @SenBlumenthal に答える
    消費者と運転手は,Uber のぞっとする個人情報の軽視より遥かに値打ちがある。この企業不正は,速やかに厳しく罰せられるべきである。
     
    Richard Blumenthal
    @SenBlumenthal
    私は Uber の漏洩に関して,FTC に速やかな法的執行を行ない,厳しい罰を科することを強く求める。
     事態をおそらく紛糾されているのは,FTC が 2014 年と 2015 年に Uber に命じて,当局が閲覧できるように プライバシーとセキュリティ関連のすべての文書を保存させたことである。この命令は,さもなければ Uber はさらなる民事 または 刑事責任に直面することになろう … と書かれている。この要求が,っ関連の無い調査の真っただ中で Uber が漏洩を開示しなかった 今回の事例にどのように適用されるかは不明である。
     FTC のスポークスウーマンは この件について質問されると,"2016 年遅くに Uber で漏洩があったとのプレス報道を FTC は承知しており,その漏洩以後の Uber 幹部の行動も承知している。" … と語った。彼女は "FTC が 発生した重大な問題を綿密に評価している" … と言ったが,それが捜査にまでなるのかどうかは言わなかった。
     しかし,2つの情報筋は Recode に,Uber がこの件について この数日内に FTC に短い報告を行なったと告げた。
     外国では,Uber は無限に批判 ── おそらくは 追加の調査に晒されている。欧州連合のトップ規制当局者は水曜日,データ漏洩への Uber の対応が アメリカのテック巨人たちをさらに規制する理由になるとの見解を強調した。
     Uber の新しいトラブルを是正する責任の大半は,同社の新任の最高法務責任者 Tony West の双肩にかかる。 バラク・オバマ大統領の下で 司法省の副司法長官を務めた 元 PepsiCo 経営幹部である West は,これ以外の一連の規制問題 (外国との汚職の連邦調査を含む) での Uber の戦いを統括する職務を負っている。
    meā culpā:(Lat abl)
     私の過ちにより

  80. Uber Paid Hackers to Delete Stolen Data on 57 Million People
    Uber は,5,700 万人の盗まれたデータを消去するために,ハッカーにカネを払った。
    Bloomberg,2017/11/22 @12:21 JST
    By Eric Newcomer
      会社は ハッカーに $100,000 を払い,情報を消去させ,口封じをした。
      最高セキュリティ責任者 Joe Sullivan ともう1名の幹部が追放された。
     ハッカーらは,5,700 万人の顧客と運転手の個人データを Uber Technologies から盗み,会社は,この巨大な情報漏洩を1年以上隠した。今週,配車企業は このハッキングを覆い隠すために $100,000 を攻撃者に包んだ最高セキュリティ責任者とその部下1名を追放した。
     2026 年10月から 不正アクセスされたデータは,世界中の Uber 乗客 5000 万人の氏名, E-メール・アドレス, 電話番号が含まれる … と Uber は Bloomberg に火曜日告げた。約 700 万人の運転手の個人情報もアクセスされた;その中には 約 60 万人のアメリカ人運転手の免許証番号, 社会保障番号, クレジットカード情報, 移動情報の詳細などが盗まれた … と Uber は言う。

    "None of this should have happened, and I will not make excuses for it."

     この事件が発生したとき,Uber は,別件のプライバシー侵害を調査する規制当局と協議中であった。今になって Uber は,このハッキングを規制当局に報告し,免許証番号を盗まれた運転手に報告する法的義務があったと言う。しかし 当時は,ハッカーらにカネを払って データを消去させ,データ漏洩を口封じした。盗まれた情報は まったく使われていないと Uber は言い,攻撃者の身元を開示することを拒む。
     "None of this should have happened, and I will not make excuses for it (これらは全て起こってはならない。私は 言い訳をするつもりは無い)" … と9月に CEO を引き受けた Dara Khosrowshahi が E-メールによる声明で言った。"当社は 事業のやり方を変えつつある。"
     Uber の火曜日の発表を受けて,ニューヨーク州法務長官 Eric Schneiderman は このハッキングへの調査を立ち上げた … とそのスポークスマン Amy Spitalnick が発表した。Uber は ほかにも,顧客からデータ漏洩への怠慢で集団訴訟を起こされている。
     近年,ハッカーは 様々の企業への潜り込みに成功している。Uber のデータ漏洩は 大規模であるが,Yahoo, MySpace, Target Corp, Anthem Inc, Equifax Inc の件に比べれば ちっぽけなものだ。警戒すべきは,Uber がこの攻撃を隠すために取った極端な措置である。このデータ漏洩は,Khosrowshahi CEO が 前任者 Travis Kalanick から引き継いだ最新のスキャンダルである。
     Uber の共同創業家で 前 CEO の Kalanick は,2016 年11月に このハッキングを知った;発生から1ヵ月後である … と会社は言う。Uber は ニューヨーク州法務長官と データ・セキュリティ開示に関する訴訟を 和議で終わらせたところであり,消費者データの取り扱いについて連邦取引委員会 (FTC) と交渉中であった。Kalanick は,このハッキングについてコメントを拒んだ。
     退社するセキュリティ責任者 Joe Sullivan は,昨年 ハッキングへの対応の先頭に立った … と スポークスマンは Bloomberg に語った。Sullivan は かつては連邦検事であったが,2015 年にフェイスブックから Uber に入社し,今年 Uber を痛めつけた多くの意思決定の中心にあった。Bloomberg は先月,取締役会が Sullivan のセキュリティ・チームの活動を調査すると決定したことを報道した。この調査プロジェクトは,外部の法務会社により実施され,その結果 今回のハッキング ならびに 開示の怠慢が発見された … と Uber は言う。
     ハッキングの手口は,以下の通りである:
     攻撃者2名が,Uber のソフトウェア技術者が使っている 秘密の [ソフトウェア開発プロジェクトのための共有ウェブ・サービス] GitHub コーディング・サイトにアクセスした;次に, そこで取得したログイン情報を用いて,アマゾン・ウェブ・サービスに置かれた (Uber 用の計算タスクを処理する) データにアクセスした;そこから ハッカーらは 乗客と運転車情報を累積したファイルを発見した。のちに 彼らは Uber にカネを要求する E-メールを送ってきた … と会社は言う。
     州法と連邦法がツギハギ細工になっているために,微妙なデータ漏洩が起こった場合に,企業は 政府機関・州機関・一般大衆へのアラートに混乱が起こる。Uber は運転手の免許情報のハッキングをする義務があったが,それを怠ったという。
     "事件当時,我々は 直ちにデータを安全に保つ措置を取り,権限の無い個人によるアクセスを それ以上 遮蔽した。" … と Khosrowshahi は言った。"我々は また,アクセスを制限するセキュリティ措置を実施し,クラウドをベースにするアカウントへのコントロールを強化した。"
     Uber は 2009 年の創立以来,営業を行なっている地域で規制をあざ笑っている (flouting) との評判が高い。 政府は,贈賄, 違法ソフトウェア, 問題含みの料金スキーム, 競合会社の知的財産の窃盗 などで 少なくとも5件の犯罪捜査を開始した … と これらに詳しい複数の人が言う。数十件の民事訴訟も起こされている。ロンドン および その他の欧州政府は,Uber の向こう見ずな行動を理由に,このサービスを禁止するステップを踏んだ。
     2016 年1月,ニューヨーク州法務長官は Uber に,2014 年に起こった初期のデータ漏洩を速やかに開示しなかったとして 罰金 $20,000 を科した。昨年のサイバー攻撃の後でも,ハッカーらとデータ漏洩を納めようと交渉しているにも拘わらず,同社は [別件である] プライバシーの和議についてFTC と交渉していた … と会社は言う。
     新任の CEO は,Uber のやり方を変えることが自分の目標であると言う。
     ニューヨーク州法務長官と FTC に,2016 年のハッキングを火曜日に初めて伝えた … と Uber は言う。Khosrowshahi は Sullivan の辞任を要求し,Sullivan の直属の部下である上席弁護士 Craig Clark を解雇した。2人にコメントを求めたが,即答は無かった。
     Khosrowshahi は, E-メールによる声明で言った:"私は 過去を消すことはできないが,すべての Uber 従業員を代表して,過去の過ちから学ぶつもりであると約束することはできる。"
     Uber は,他の複数の件への対応を調査され,退任することになっている最高法務責任者 Salle Yoo がこの事件について報告を受けていなかったと言う。その後任 Tony West は水曜日から職務に就き,サイバー攻撃を担当している。
     Kalanick は投資家からの圧力を受けて,今年6月に CEO を追放された。彼は取締役に留まっており,最近 自分の権限により取締役会の2名の空きポストを埋めた。
     Uber は,Matt Olsen を顧問として雇ったと発表した。同氏は [国防総省の諜報機関である] アメリカ国家安全保障局の 元 法務顧問であり,国家テロ対策センターのディレクタであり,Uber のセキュリティ・チームの再編を助ける。Uber はさらに,このハッキングを調査するために,FireEye Inc が所有するサーバーセキュリティ企業 Mandiant を雇った。
     Uber は,乗客に向けて "この事件に関連した不正利用や詐欺の証拠" は見つかっていないとの声明を発表する計画である。免許証に不正アクセスされた運転手に対しては,無料の信用保護モニタリングと 個人情報盗難保護を提供する予定であると言う。
      — With assistance by Erik Larson
     (0) 日本語訳 (09:19 JST) は,『社会保障番号や乗車データなどは盗まれなかったと Uber は説明した。』となっているが,こちら (12:21 JST) は,『約 60 万人のアメリカ人運転手の免許証番号, 社会保障番号, クレジットカード情報, 移動情報の詳細などが盗まれた … と Uber は言う。』となっている。
     ほかにも喰い違いが見られる。
     (1) こんなことがあっても,Kalanick を取締役から辞任させることはできない。幹部は次々に退社してしまった。この人がいないと,配車事業が分かる人がいなくて困る。「オレが辞めたら どうなる?」
     (2) これで SoftBank が Uber に「カネを突っ込む」のをやめるかどうかだが,不祥事多発の Uber にここでやめるくらいなら,とっくにやめているだろう。
     (3) 結局,配車企業に固有のリスクがあることがバレたのである。乗客も運転手も個人データが漏れるという危険である。では,漏れる惧れの無い企業なら安全か? そこが問題である。
     滴滴出行のような中国企業はどうか? 既に「漏れ漏れ」に漏れている (?) と考えるべきだろう。中国共産党政府は,外国にいる反政府活動家の状況を 顔認証まで駆使して把握するのに,配車・自転車共有・決済などの中国系企業はありがたい存在である。
     特に日本では,ソフトバンクがアリババの日本進出に積極的に協力してくれる。中国政府にとって,こんなにありがたい国は無い。効率の点から考えれば,ソフトバンク系のすべての企業のデータ (従業員/顧客のデータを含む) は,ソフトバンクとアリババの JV である日本の阿里雲にすべての運用を委ねるのが最も効率的である。
    ──────
     何が問題かというと,アリババ株が 14 兆円の評価であることを社長は自慢するが,あれは 中国 13 億の人民が中国内に蓄えた富であり,それを SoftBank が「不労所得」として手にしているということだ。かつての植民地時代ならば,これほどの不労所得は珍しくなかっただろう。言い換えると,中国 13 億人民 [共産党が好んで使う表現] にしてみたら,1人1万円を 中国人全員に配ってもおかしくない性質の (社長が自慢すればするほど屈辱的に感じられる) カネである。
     その見返りとして,中国共産党政府が (アリババ経由で) 日本の情報集めをしたいと言ってきたときに, SoftBank はこれを断ることができない … というのが現実に実現し始めている構図である。

  81. HACK BRIEF: UBER PAID OFF HACKERS TO HIDE A 57-MILLION USER DATA BREACH
    Uber,個人情報 5,700万人分のハッキング被害に 口止め料を払って隠蔽 ── 刑事責任が問われる事態に発展か
    Wired,2017/11/21 @07:56 pm (Wired Japan, 2017/11/25 @14:00)
    By Andy Greenberg
    今では,"Uber" という名前は 事実上スキャンダルを意味する言葉になっている。だが今回は,既にこれまで圧倒的なものになっているスキャンダルに加えて,ジェンガ [=崩れやすい積み上げゲーム] -スタイルのスキャンダルの塔を建設することにより,Uber は崩れ落ちる寸前になっている。
     ライドシェア・サービス企業は 5,700 万人もの個人情報の管理を失っただけでなく,大規模情報流出を1年以上も隠し,情報漏洩開示法違反を隠蔽した。Uber は,それ以前の別件のデータ漏洩で同社を調べていた 連邦取引委員会 (FTC) の捜査官を故意に騙した可能性もある。
     新任の Dara Khosrowshahi CEO が 2017年11月21日(火) に出した声明によると,2016年10月にハッカーが大量の個人情報を Uber のネットワークから盗み出していた。その中には,60万人の運転手の氏名 および 免許証情報,そして悪いことに 5,700万人もの Uber 利用者の氏名,メールアドレス および 電話番号まで含まれていた。
     大規模なデータ流出も ひどい話だが,FTC が現在 Uber に対して行なっている [別件の] 調査に詳しい情報筋は,利用者との関係に最大の打撃を与える原因は Uber 自身の対応にあると見る。さらに,役員の刑事責任が問われる可能性もあると言う。
     データ流出のニュースを最初に報道した Bloomberg によれば,Uber はハッキング事実の隠蔽 および 盗まれたデータの削除と引き替えに,ハッカーに 身代金 $100,000 を支払っていた。そして,攻撃された事実を公表することを怠った。これは,利用者が居住する多数の州において,情報流出の事実を報告するよう求めた法律に違反する可能性がある。しかも FTC には,データ盗難の事実を隠し続けた。
     "もしも Uber が事態を把握しながら隠蔽して,FTC に知らせなかったとすると,あらゆる問題が生じる;刑事犯罪の責任が問われる可能性もある。" … と話すのは,ミネソタ大学ロースクールでデータ機密を専門とする William McGevaran 教授である。"報道がすべて事実だと仮定すれば,たくさんの「もしも」がつくことになるが,調査官に虚偽の申し立てを行なっていたことになる。和議の過程で調査官に嘘をつくことは許さない。"
     問題のハッキング
     Bloomberg の報道によると,Uber のユーザー名やパスワードを含むコードを,同社のエンジニアがコード共有サイト「Github」の個人アカウントで公開しているのをハッカーが発見し,これが 2016年のデータ漏洩につながった。これらの機密情報を得たハッカーは,Uber のネットワーク上で特別な権限を要する開発者アカウントに直接アクセスすることが可能となった。さらにそこから,アマゾンにホスティングされた Uber の敏感なサーバーにアクセスし,利用者や運転手などの機密データにアクセスしたという。
     ハッカーがどのように Github の個人アカウントにアクセスしたかは不明である。だが,"Github 上のコードで認証情報を共有するという最初のミスは,決して珍しいことではない" … とセキュリティ会社 SentinelOne のウェブ・セキュリティ研究者で 最高セキュリティ・ストラテジスト Jeremiah Grossman は指摘する。というのも,アクセス権限を必要とするデータやサービスの利用を自動化するために,プログラマはコードに認証情報を書き込んでおくことが多い。そして機密情報が満載されたソフトウェアを共有する方法や場所について 制限を掛けるのを忘れてしまうというわけだ。
     こうしたことはよく起きるのだと言うが,Grossman は Uber による隠蔽の方に大きなショックを受けたと言う。"誰にだってミスはありますが,ミスへの対処法を誤るとトラブルが生まれるのです。"
     被害を蒙ったのは誰か
     Uber が発表した 5,700 万人という利用者数は,全利用者基盤の大きな部分を占める。昨年の月間利用者数は 4,000 万人に達した。影響を受けた利用者に Uber は未だ通知していないが,声明では "今回の事件による詐欺や悪用の証拠は見つかっていない" とした上で,影響を受けたアカウントには追加の防護措置を取ったと言っている。
     個人情報漏洩に含まれる 600,000 人の運転手については,Uber は いま連絡を取っているところであり,クレジットカードの利用状況レポート および 成りすまし保護の保険サービスを無償で提供すると言う。
     どの程度 重大か?
     氏名, 電話番号, メール・アドレスの大量流出は,詐欺を働こうとする人間やスパムメールの送信者にしてみれば,価値あるデータとなる。他の漏洩データと組み合わせて個人情報を盗んだり,フィッシング詐欺に利用したりもできるだろう。
     運転手の流出データは機密性の高いものであり,詐欺師にとってさらに有用な個人情報を与える可能性もある。 これらすべてが,消費者の支配下にある個人情報をじわじわと着実に侵食していく。
     だが,最も深刻で直接的な影響を受けるのは,データを漏洩された一般利用者ではなく, Uber 自身であろう。 Uberは既に 最高セキュリティ責任者 (CSO) だった Joe Sullivan を解任した。以前はフェイスブックのセキュリティ責任者で,その前は連邦検事だった人物である。
     ミネソタ大学ロースクールの McGevaran 教授は,情報漏洩の開示を1年以上怠ったことにより,Uber は 漏洩開示法に違反した可能性があり,利用者のいる多くの州と 本社所在地のカリフォルニア州で重い罰金を科されるはずだ … と言う (下に埋め込んだツイッターの声明で,前 FTC 弁護士 Whitley Merrill は,漏洩開示法の解釈を述べている)。"これを根拠にして 各州が Uber を訴追しても私は驚かないでしょう。" … と McGeveran は言う。
    Whitney Merrill
    「これは恐らく,かなりの州で通知義務違反になるでしょうね。
    うわあ」
    Whitney Merrill
    「セキュリティ漏洩に関して FTC が調査している最中に情報流出の事実を隠蔽するなんて,ほんとゾッとする」
     もしも 今回の隠蔽が 2014 年のデータ漏洩に対して FCT が行なっている調査に対して行なっていた [別件の] 虚偽報告を含むのであれば,事態は さらに悪化しかねない。FTC の調査官に虚偽の報告をしたとすれば,連邦法による刑事事件となる … と McGevaran は指摘する。"Uber は既に政府の調査官により調査を受けている最中である。Uber は,その最中に別の漏洩をを起こしたことを知っているだけでなく,隠蔽のために口止め料を払ったのである。Uber はおそらく,FTC への開示から 5,700 万人分のデータ漏洩を隠したと見られる。
     "もしもこれ全部が事実なら,大変なことになるでしょう。" … と McGeveran は繰り返した。
    何か起こったときに,正々堂々と発表せずに「隠したがる」という体質は SoftBank と非常によく似ている。
     相性が良さそう (笑)

  82. How Uber Could End Up As Silicon Valley’s Most Spectacular Crash
    なぜ Uber は,シリコンバレーで最悪の華々しい倒産になりかねないか
    Newsweek,2017/03/04 @07:50 am ET
    By Kevin Maney
    1年前まで輝く星だった Uber は,今やトラブル続きで評判はガタ落ちである。ゼネラルモーターズ (GM) を上回る時価総額は,逆に IPO を妨げ,資金調達もままならない。このまま行けば, 自ら創造した配車サービスという事業の形だけを残して消える可能性もある。
    僅か1年前,アメリカの配車サービス大手 Uber は,まるで万能の "オズの魔法使い" のように IT 業界に君臨していた。だが化けの皮が剥がれた最近のイメージと言えば,狂ったように車のレバーを引く不機嫌な酔っ払いのような CEO が,救いを求める従業員に向かって拳を揮うような粗暴さだ。
     今の Uber は,何もかもが裏目に出る。事故にあった原子炉のようにメルトダウンして,シリコンバレーの中心に クレイター [隕石の衝突による穴] を開けるのでは … と懸念が高まっている。オンデマンドで車を手配する Uber の革新的サービスは,世界中で多くの人々に愛され,需要は高まる一方だ。市場が成長するのは間違いない。だがその成長には,Uber がいなくても困らないだろう。
     腐った企業文化,ひどいメディア露出
     Uber の問題の根幹にあるのは,粗野な企業文化だ。昨年12月に退職したエンジニア Susan Fowler は,在職中に上司からセクハラを受け,人事部に何度も訴えたが,まともに取り合ってもらえなかった。会社は機能不全に陥っており,女性の処遇で Uber は腐っていると,今年2月にブログで公表したことで, Uber の社内事情が世間に知れ渡った。職場は冷酷だったと批判したファウラーは,ブログにこう綴った。「管理職は,昇進を巡って同僚と争うか,直属の上司の揚げ足を取ってそのポストを奪うことしか考えていなかった」
     数日後には,ロータス創業者のテック業界レジェンド Mitch Kapor と,労働慣行を専門にする妻 Freada Kapor が,Uber の経営陣に公開書簡を送りつけた。Uber の設立初期に出資した Kapor 夫妻は,Fowler の告発に対する Uber の対応に誠意が無いことに不満を抱き, Uber が愛用する [本来は良い意味に使われる] 表現を使って, "破壊的な企業文化" にうんざりしていると書いた。「我々が今こうして声を挙げるのは,Uber に幻滅し 怒りを覚えるからだ。社内からの変化を待つだけでは限界だと感じた」
     1週間後,Travis Kalanick CEO が 乗車中に Uber 運転手を罵倒する動画が公開された。Uber が運賃を下げ続けるせいで収入が減った … と運転手は不満を訴えた。「あなたのせいで私は破産だ」と言われた Kalanick は激昂し,運転手をののしった。Bloomberg がこの動画を入手して配信すると,Kalanick は また謝罪する側に立たされ,同社のホームページに「私は リーダーとして根本的に変わり,成長しなければならない」という短文を掲載した。分かり切っていたことだ。
     負の宣伝効果
     Uber には,負の話題がつきまとう。イスラム圏7ヵ国からの入国を禁止した Donald Trump 大統領の大統領令に抗議するタクシー運転手がニューヨークの JFK 国際空港でストライキを行なった先月は,Uber の運転手がスト破りをして営業を続けたことで抗議者側と衝突した。スマートフォンから Uber アプリの削除を呼びかける "#DeleteUber" 運動がツイッターで広まり,同社は火消しに追われた (いくつかの推計によると,約20万人のユーザーがアプリを削除した模様だ)。
     その半年前には,サウジアラビアの政府系ファンド「公共投資ファンド (PIF)」から $35 億の出資を受けた。 女性に運転を禁じ,同性愛者を刑務所に入れる外国政府の片棒を担ぐ印象になった。ある出資者は,この資金調達について,Fortune 誌にこう語った。「これで,Kalanick CEO がどういう男かがわかる。誰にどう見られようと意に介さない」
     そして今は,インターネット検索大手グーグルを傘下に持つアルファベットから,技術泥棒と名指しされている。Uber は昨年,自動運転車開発ベンチャーの Otto を $6.8 億で買収した。従業員の多くは,アルファベットの自動運転車プロジェクト部門が独立した Waymo の元従業員である。アルファベットは元従業員の一部が Waymo から技術情報を盗んだと主張し,自動運転車開発の差し止めを求めて Uber を提訴した。
     Uber は かねてから,自分たちの未来は自動運転車に懸かっていると言っていた。うるさい運転手たちに利益を分配せずに済むからだ。もしアルファベットが勝訴すれば,Uber はかなりの確率で,また一から自動運転技術の開発を始めるか,大金をはたいて他社の技術を買い入れる必要がありそうだ。
     不満を抱く運転手,厳しい懐事情
     自動運転車という漠然とした未来を当てにする Uber も,当面は 16 万人の運転手を満足させねばならない。だが,先日の Kalanick の動画を見る限り,運転手たちは不満を抱えているようだ。彼らは Uber のアプリでチップがもらえるようにしてほしいが,会社側は認めない。福利厚生を求める運転手からの訴訟も起きている。
     運転手の年収を実際より多く見せかける求人広告を掲載したとして連邦取引委員会 (FTC) に訴えられた裁判では,2000万ドルの罰金を払わされた。ライバルの Lyft は,運転手に対する Uber のひどい待遇を揶揄する広告を流して,運転手を囲い込もうとしている。良心的なユーザーは運転手に優しい Lyft を選ぶべき … というわけだ。
     戦略面では,次々に新しいことに手を出し過ぎたようだ。配食サービス UberEats で,中東風のコロッケを頼んだ人が何人いるだろう? 自動運転車の Otto を買収した翌月には,NASA (米航空宇宙局) の科学者を雇い入れて「空飛ぶ車」を開発すると宣言した。
     アメリカは中国に負けてばかり … というのは トランプの口癖だが,Uber は準備不足のまま中国市場に参入し,トランプの正しさを証明した。昨夏,Uber は中国の配車サービス最大手「滴滴出行」との合弁事業から事実上撤退した。これを機に,世界市場でも滴滴出行が Uber を追い落とすことになるかもしれない。もしアメリカのユーザーが外出時に「Uber する」のではなく「滴滴する」というフレーズを使い始めれば,トランプは発作を起こすだろう。
     苦境に追い打ちをかけるのが,Uber の財政事情だ。Uber は未公開企業だが,経営状態を示す数字がいくつか流出している。Bloomberg は,同社が 2016年の第3四半期に $8 億の損失を計上したと報道した。去年1年間の損失は,30億ドルに上ったという憶測も飛ぶ。
     IPO を拒む真の理由
     Uber の事業モデルを維持するには,とにかくコストが掛かる。より多くのユーザーに利用してもらうには,運転手を多数確保して,多額の報酬を払う必要があるからだ。大量生産でコストを削減するという,規模の経済はここでは通用しない。Lyft やタクシーやその他の新規参入者 (たとえば GM 傘下の Maven) などとの競争に晒されているため,料金を上げる力もほとんど無い。それにも拘らず,投資家から資金を募るたびに株価は上がり,時価総額は $700 億近くに達している。既にゼネラル・モーターズ (GM) の時価総額を上回る。誰が見ても過剰評価だろう。
     天を突く時価総額は,Uber の首を絞める可能性がある。創立8年目の Uber は,多くの IT ベンチャーが IPO を行なう時期に差し掛かっている。それにも拘らず,Kalanick が頑なに株式公開を拒んでいるのは有名な話だ。
     彼はまるで市場を必要としない異端児のように振る舞うが,本当の理由は,今の Uber の財務状況で IPO を行なっても,現在の投資家に損をさせない高い株価が付かないからだとも言われる。もしそれが事実なら,Uber は窮地だ。小学校6年生レベルの算数ができる人から投資してもらうのは不可能である。
     時間を稼ぐにしても,救ってくれる忠実な顧客層はいない。顧客は Uber に限る … というこだわりを持っていないからだ。Uber には,得意客への割引制度も無いし,支持すべき社会的な価値も無い。顧客と運転手の間に絆が生まれることを好まない。Uber の常連だからといって誇りを持てるわけでもない。
     希望する価格で目的地まで連れて行ってくれる限り,人々は Uber を利用するだろう。だが,もっと良質なサービスや低料金を掲げる事業者が現れれば,さっさと乗り換えるはずだ。
     2010年代版の Drexel?
     Uber が潰れた後の惨状は,想像するのも難しい。ベンチャー資本や Kapor のような個人投資家からマイクロソフトやシティグループなどの大企業に至るまで,多くの関係先が同社に出資している。従業員は,運転手を除いて,11,000 人であり,その大半がシリコンバレー周辺に集中し,新しいオフィス建設のために $2.5 億を注ぎ込むところだ。それらがすべてパーになれば,昨年の大統領選で民主党が味わったのと同じくらい強烈な自尊心への鉄拳が,今度はシリコンバレーを襲うかもしれない。
     Uber は,短期間で見事な仕事を成し遂げた。オンデマンドの配車サービスという新しい市場を創造し,定義を作り,今も独占している。人々の暮らしを変え,都市交通の未来に対する考え方を一新した 歴史に残る重要な企業だ。その功績を,Kalanick や彼の仲間から奪える者などいない。
     配車サービスは不滅である
     だが Uber は企業としての欠陥も露呈した。これに匹敵する前例といえば,Kalanick がまだ小学生だった 1980年代の (なんと彼はまだ40歳だ) 証券会社 Drexel Burnham Lambert の事件だ。
     伝説の投資家 Mike Milken 率いる Drexel は,債券市場でジャンク債を開拓して市場を支配した。ウォール街と企業の関係を永遠に変えた同社は,スーパースターになった。だが異常なまでに成果を求める企業体質が災いし,従業員は最終的に刑事訴追されるほどのリスクを取った。結局同社は,ウォール街の頂点を極めてから数年で倒産に追い込まれた。Milken は,証券詐欺の罪で刑務所に入った。
     Drexel が作り上げたカテゴリーは健在だ。同社が姿を消した現在も,ジャンク債は1兆ドル規模で取り引きされている。
     Kapor 夫妻は Uber を存続させるため,企業文化を創り直すよう Kalanick に圧力を掛けている。もし同社が約束を実行し,アップルやアマゾンのような企業に肩を並べられるなら素晴らしいことだ。だが不祥事を積み重ねるたびに,Uber は 2010年代版の Drexel に似てくるようだ。

  83. Uber Driver in India Sentenced to Life in Prison for Raping Passenger
    乗客レイプの Uber 運転手に終身刑で,問われる安全性
    Newsweek,2015/11/03 @12:31 pm
    Lucy Westcott
    インドのニューデリーで,配車サービス Uber の元運転手が 25歳の女性客をレイプしたとして有罪判決を受け,終身刑となった。
    急成長中の配車アプリを使った犯罪は,果たして「強姦大国」インド特有の問題と言い切れるのか?
    氷山の一角 女性客をレイプした Uber の元運転手 (右から3人目)
    2014年12月8日,
    Adnan Abidi | Reuters)
     Uber でタクシー運転手をしていた Shiv Kumar Yadav (32) は先月,レイプ および 脅迫, 誘拐, 傷害の4件で罪を問われ,有罪を言い渡された。被害者の女性によれば,2014年12月,勤務先から自宅までの配車を Uber にリクエストしたが,Yadav に人気のない場所へ連れて行かれ,目が覚めたときには Yadav が隣にいたという。被告は無罪を主張していた。
     今週,量刑を言い渡した Kaveri Baweja 判事は「Yadav は自然死するまで収監される」と述べた … とアルジャジーラは報じている。AFP によれば,終身刑はレイプに対する判決としてインドでは最高刑という。The Times of India によれば,懲役刑に加え,2万1000ルピー (約3万9000円) の罰金も科された。
     営業停止となり,対策を打ち出した Uber India
     本誌 Newsweek の取材に対し,Uber はこの一件に関して新たな声明は無いと返答した。先月の Yadav の有罪判決時には,Uber India の Amit Jain 総裁が「レイプは不快極まりない犯罪であり,Yadav が法の裁きを受けたことを歓迎する」と声明を出した。
     「Uber は安全を重視する。この恐ろしい事件を教訓にして,当社は事件発生以降,運転手の身元確認の強化, 年中無休・24時間のカスタマー・サポートの改善など,多くの対策を行なってきた」と,Jain の声明には記されている。
     Uber と他の同種のインターネット・タクシー配車サービスは,今回の事件後,デリーで一時的に営業停止処分となった。Uber は現在では デリーでの営業を再開している。
     BBC によれば,今回のレイプ被害者はアメリカでも Uber 本社に対して訴訟を起こしたが,こちらは示談となっている。
     インドではここ数年, 女性に対する暴力事件が相次いでおり, この事件は一連の悲惨なレイプ事件の1つに過ぎない。デリーの乗り合いバスの中で女子学生が集団レイプされて殺された 2012年の事件は,特に世界に広く知れわたった。
     一方で Uber には,運転手の身元にまつわる不安が指摘されてきた。Uber は 2009年にアメリカで創業され, 瞬く間に各国に広まったタクシー配車サービスだが,アプリで手軽に車を手配できる反面,一定の条件を満たせば誰でも契約運転手になれる不安がある。利用者が事前に運転手の写真や評価を確認できるシステムはあるものの,運転手と乗客のトラブルが報告されてきたことも事実だ。
     既存のタクシー業界を代表するタクシー・リムジン・パラトランジット協会が行なっている啓発キャンペーン「誰が運転しているの? (Who's Driving You)」によれば,この1年の間に,Uber 運転手による乗客のレイプ, 性的暴行,セクハラなどの事例は,オーストラリア,カナダ,インド,英国など各国で報告されている。
     今回の事件はインド特有の問題なのか,それとも Uber の事業モデルそのものの安全性を問う契機になるのだろうか。

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