またまた，今度は自分から ホンダに差をつけられちゃった(笑)。
　それにしても，ノーベル医学･生理学賞受賞者をトップにすえて，自分は 匿名で金を出す庶務理事しておけばよかったのにね。これでは カネだけでなくて名誉まで独占したい欲望が丸見えになってしまう。
　以下は，本田宗一郎の「作行会」の記録である。

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　産業界で傑出した存在であった本田宗一郎と 財団活動を支える学界とを結びつける縁となったのが, 「作行会」の取り組みでした。これは本田宗一郎と藤沢武夫が，薄給に耐える若き研究者への助成を行う基金として，私費で 1961 年に財団法人として設立したものでした。
　「作行会」の最大の特長は，基金を利用する研究者に対して，
　 ･ 奨学金の用途は問わない（遊びに使おうが，生活費に使おうが自由)。
　 ･ レポートは必要ない。
　 ･ 将来の進路も自由。
　 ･ 返還の必要はない。
　 ･ 誰が支給しているか知らせてはならない。
としたことでした。
　設立以来,「作行会」は国内の有望な若手研究者に匿名で奨学金を送り続け，そこから大勢の科学技術分野のリーダーを輩出しました。1983年にその役割を終えるまでに，延べ1735人が対象となりました。 この会からの助成金を受け取った研究者の１人には宇宙飛行士の毛利衛氏もいますが，数多くの研究者が知らず知らずに「作行会」を通じて本田宗一郎や藤沢武夫との縁を結び，後に学際的な活動を掲げる本田財団との間に様々な絆を生み出していくこととなりました。
　また，こうした「作行会」の精神は本田財団に引き継がれ，21世紀に入り「Y-E-S奨励賞」として，国際的に展開することになり，世界の未来を築くアジアの若き科学技術者たちに夢を託す事業として発展を遂げています。
　作行会は 1983年に解散しましたが，２人がスポンサーであったという極秘事項は，解散記念謝恩会の席で初めて公開されました。
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　ウェブを検索すると，発足当時の大学助手の月給は２万円，作行会は３年間毎月 1.5 万円を支給したという。
　今の大学助教 (学位取得者) の給料がいくらなのか 正確には分からないが，30 万円とすると１年に 270 万円くらいを 完全無条件で支給したことになる。
　なお，何となんと「２年分の前払い」もできたとのこと。何とも大らかな本田さん！
　元奨学生の中には，奨学金で車を買い「日本一周をした」という者もいたが，藤沢はそれをうれしそうに聞いていたという。
　なお面白いことに (笑) 日本経済新聞 2016/12/20 の「春秋」コラムが，この奨学金に触れている。
　孫さん 読んだでしょうね。どう思っているかな (笑)
　▼報告義務ナシ，返済不要。ただし 基金に拠出したのが誰かは絶対に教えない。かつて こんなユニークな奨学金制度があった。運営する財団は，約 20 年にわたり 理工系の若手研究者 1,735人を支援した。奨学生らの謎が解けたのは 1983 年，財団が解散したときである。
　▼足長おじさんはホンダの創業者，本田宗一郎氏と，その名参謀として知られた藤沢武夫氏だったことが明かされた。それでも匿名へのこだわりは強かったようで，本紙がこのエピソードを報じた際にも，掲載する直前になってなお関係者から,「やはり謎のままにしておくべきなのだろうか」との苦悩の電話が入ってきた。
　日経が 孫さんの発表後の５日後にこれを書いたのは，何かの意図があるのか？ 突然こんなことを書くのも不思議です (笑)

同じ件について Financial Times の記事 を読んでいたら，SoftBank Vision Fund のトップを務める人の名前が書いてありました。
　Rajeev Misra となっている。
　この人を Wikipedia で検索すると，
　ラジーブ･ミスラ（Rajeev Misra，1962年 - ）はアメリカ合衆国の実業家。
　インド出身。ペンシルベニア大学で機械工学の理学士号とコンピューター科学の理学修士号を，MITスローン経営学大学院で MBAを取得。
　1996年ドイツ銀行では投資部門の立ち上げに関わり，2008年６月までクレジット部門のグローバルヘッドを勤めたが，2009年５月25日UBSに移籍し，クレジット部門責任者，2010年１月25日には債券･通貨･商品 (FICC) 部門の共同責任者，2012年11月からは 世界金融ソリューソンズ部門を率いた。2014年４月15日 UBSを退職するとフォートレス･インベストメント･グループに移籍してシニア･マネジングディレクターに就任したが，2014年10月14日退職し，
　2014年11月３日ソフトバンク･グループの SIMI 戦略的ファイナンス責任者に就任した。ほぼ同時期の10月30日地元インドの映画会社 エロス･インターナショナル取締役も受諾し株主総会で選出される予定。
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　SIMI は Nikesh Arora が "Nikesh チーム" とともに活動していた場所です。
　なお，すべては 覚書 (Memorundum of Understanding, 了解事項のメモ) の段階であり，双方を拘束する契約を結んだわけではない。したがって，ラジーブ･ミスラも サウジが了解したわけではない … と Bloomberg は伝えています。
　もちろん，"ソフトバンク･ビジョン･ファンド" なんていう名称もサウジが了解したはずないでしょう。資金力が圧倒的に違うのに，ファンド名称をこのようにするとは 考えられない。これでは，サウジの潤沢なお金を 借金だらけの会社に丸投げか (?) と受け取られる(笑)。
　日経報道が先走りし過ぎている印象です。
　もっとも アメリカとの関係がどうのこうの … と ようやく (笑) 書き始めました。
　アメリカを棚に上げて 経済の話を進められる国なんて地球上に１つも無いことくらい 誰もが認識しているはずなんだけど，浮かれると忘れてしまうのか？ 投資先としても，アメリカを除いたら，サウジのクジラのような資金の行き先は … どこにあるのか？ 投資を受け入れる国も，アメリカとの関係は気にする。全体として，今回の計画は政治性が非常に強い。ソフトバンクは ( あるいは Nikesh Arora は，Alok Sama は) その認識が弱いので，ここまで漕ぎつけることができたのか？

心覚えとして，この先 どうなるか １つの予想を書いておくことにした [2016/09/03]。
　たぶん 外れる可能性が高いとは思うが，後から振り返ったときのために 書き残しておく。
はじめに，これまでに分かっていること：
　(1) ソフトバンクが 3.3 兆円で ARM の全株を買い上げる。英国 ARM 技術者 1,600 名を５年以内に倍増する。英国外の職員を増加する。ARM の提携事業モデル，文化，ブランドを維持する。 [ARM のサイトによる]
　(2) ARM は上場廃止となる。
　(3) 英国側からは反対の明確な意見が聞こえる。
　 元閣僚２名がはっきり反対している。ARM 創立者 Hermann Hauser は，Theresa May 首相にこの合併を差し止めるよう強く求めた。Financial Times にも 反対意見の 投稿があった。ARM 自身が無借金で資金調達能力があり，しかも金に困っていないのに，なぜ外部資金を導入する必要があるのか？ 会社は 説明せよ … という筋の通った意見であった。
　この他，英紙 The Guardian は，社説で反対意見を表明した。
　(4) 反対意見と同じくらい 論旨の明確な賛成意見は 皆無である。たとえば，パラダイムシフトや IoT を買収されることの理由にする意見は 英国には見られない。見られるのは 「そういう理由を買収側が挙げている」という報道である。結局，この買収を推進する力になったのは，ARM 経営陣, とくに Chairman の Stuart Chambers であると思われる。
　首相のスポークスマンは「良いニュース，良いニュース，良いニュース」と連呼しているが，却って不自然である。それに，英国の安全保障に関する案件ではないので，政府は 反対することができない以上「賛成」を唱えざるを得ない立場にある。
　[これだけ理屈の通った反対論があり，それに対抗して理屈の通った賛成論が出てこない。つまり，ARM 側の賛成論は「取り敢えず儲かる」ということだけである。このような状況下で どうするかは難しい判断であるが，少なくとも２週間で決めた判断は拙速である。向こうの情勢をきちんと読まずに即断したのであろう。アリババは５分で決めたと言うかもしれないが，場合が違う。今は，英国の側がほとんど反対であり，その理屈は筋が通っている｡]
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　この予想の結論 (?) は，ソフトバンクが おそらく全く予想していないことである。
　それは ･･･ 新任の 田中錬 執行役員事業副統括兼 ARM 事業推進室長 が ロンドンから さして眺める光景の無い中を快速電車に２時間乗って ケンブリッジに乗り込んでみたところ … あらら … ARM は もぬけの殻 … になっているのではないかということである。
　どういうことかというと ･･･
　ARM は，これまでソフトバンクが手掛けた買収案件とは 非常に異なる。Sprint の場合だったら，電波も無線設備も金になる資産であり，それを２兆円で買ったのである。今 赤字で苦しんでいるけれども，売れれば 物凄い利益が出るという説がある。
　しかし，ソフトバンクが 3.3 兆円で ARM の何を買ったのか？ 仮にこれを今 3.3 兆円で売れるのか？ 固定資産があるわけでもない。むしろ軽量であることが強みとされている。
　ARM は その技術に値打ちがあるとされている。しかし，技術を支えるのは，人であり哲学である。人と哲学を抜いて，技術だけが金儲けをしてくれる … ことはあり得ない。哲学が優れているから，人が優れているから，ノーベル賞学者を輩出するケンブリッジであるから，良い技術が着想されるのである。
　ここが ポイントである。創立者 Hermann Maria Hauser (1948- ) さんのように 電磁気学の創始者である J.C. Maxwell を初代所長とするケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所 [この研究所だけで，ノーベル賞 29人] で 物理の Ph D を取り，ARM の前身である Acom Computers を創った技術者が強力に反対した場合，何が起こるかは 想像できない。たとえば，Hauser さんとか あるいはその子飼いだった人が旗を上げれば，ARM の現在の主要な技術者を集めることだって可能である。これが「もぬけの殻」の意味である。
　誇り高い英国人が しかも 歴史のある名門大学ケンブリッジに学んだような技術者が，東洋の借金まみれの企業の利益のために コツコツ働いて 借金返済に尽力する … などは，想像しがたい。いくら頑張ったとしても 東洋の [英国人から見たら] 見下げ果てた 固有の技術をまるで持たない企業のために働くというのは，働き甲斐が無い。… もちろん，その東洋の企業が，深い哲学を持ち，カネカネ亡者ではなく，ARM と対等の尊敬に値する補完的技術を持っており，経営統合の効果を発揮できる … というのであれば，話は別である。つまり，ソフトバンクも島津製作所 (あるいは ソニー) のようなら問題は無いでしょう。
　有り体に言えば，ここは ソフトバンクなどには レベルが高過ぎるのである。あるいは，文化の差が大きすぎる。その差をカネで埋めようとしているわけである。
　これは，立場を逆にしてみれば 理解しやすい。たとえばソニーが 外国の「哲学･技術ともにまるで無しのカネカネ亡者」とウワサされる企業に 100% 買収されたとしてみよう。おそらく，ソニーの技術者は，一致団結して退社して，新会社を作るだろう。誇り高い社員が いくら新製品を開発しても「カネカネ外国企業」の大富豪のために 借金返済の協力労働をして，大大富豪にするために働く気なんか毛頭ないはずである。表面上は 資本の論理により隷従せざるを得ないが，内心は相手を … どう表現するのがよいか分からないが … 金のちからだけで屈服させられて 働き続けるのは，誇りの高い人にとって 屈辱以外の何ものでもない。
　技術者を 1,600 名から倍増することを ソフトバンクが約束した ･･･ ここの記述がとても面白い。
　先方の Chairman は，ヤケにこれにこだわる。この約束は法的義務であるから，ソフトバンクが必ず守らなければいけない … と強調する (これ，何故なんでしょうね？ 技術者なんだから，そろえたくても 1,600 人集まらない可能性がある。もちろん 質を落とせば可能だが。なんか，これが守れないことを見越して，５年後に契約違反の訴訟でも起こせるように準備しているのか？ 兎に角 英国紳士は 油断がならないからね｡)
　技術者は，事務職員とは違う。どこからか湧いてくるわけではない。雇った後できちんと育てるから，まともな技術者になる。時間もかかる。手間もかかる。… ということは，社内の育てる人･体制が整っていることが前提である。なのに，この前提が抜け落ちていて，約束さえすれば充足できるように ソフトバンクは考えているらしい (いかにも 社内に技術を持たない企業らしい)。
　それに，技術者倍増の中身も問題である。普通は，技術者を大幅に増やすのは，新事業をやるからである。旧事業を拡大するために倍増するのは，悪いことではないが，根本的に考え方がおかしい。つまり，かくかくシカジカの新事業もやるので，技術者を倍増するというのなら分かるが，ただ単に倍増というだけでは 買収の際の基本方針としておかしい。この点は，歴史的に見て 初の事例ではないか？
　以上は，ARM が資産軽量型であり，技術者によって成立した特異な企業であるという特徴から，どんなことが考えられるかを述べた。基本的には，このような 誇り高い技術者軍団が ソフトバンクの借金返済のためにセッセセッセと働いてくれる … と考えるところに大きな間違い･思い込み･驕りがある (相手を自分より低く見ている)。
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　ところで，ARM の主体は技術者であることに間違いはないが，会社としては経営陣も重要である。

Chairman: Stuart Chambers

CEO: Simon Segars

CTO: Mike Muller

CFO: Chris Kennedy

　というわけで，経営陣を確認するため ARM のサイトに行って見た。右の４人が幹部である。このほかに 独立取締役 (いわゆる 社外取締役) もいる｡
　ところで，時期が時期だけにいろんな文書が見られる。
　ARM から みずほ銀行あてに ８月31日には 10,000,000,000 円＋消費税額 を支払うという日本語の支払い確約書があった。その金額の 0 を数えてビックリした。ただの口利きで 100 億円だよ。みずほにしたらありがたいだろうね。ソフトバンクさまさまだ。これなら ソフトバンクの社債も さばけるわけだ (昨日は 我が家に ソフトバンク社債を買って下さい … とみずほ証券の若い女性社員が飛び込みで営業に来たよ。もちろん初めて。なんでもアメリカの大学を卒業したんだそうだ。これには，家内がビックリしていた。でもねぇ，あの歯科医院のおかしなロボットを作ってる会社でしょぅ … これは家内の弁でした。こしょうくんが早速社債の売れ行きに響いたみたい(笑)。年2.90%～3.10% だった。日銀はマイナス金利なのに，前回より かなり上がってる。どういうことかな？)
　そのほか 金庫株を従業員に全部放出して，会社にはもう１株も残っていないとか。１株 0.05 ペンス (~何銭？) というから，ほとんど タダみたいなもの。従業員の allotment というが，会社幹部も 大口の「従業員｣。Chariman 以外の幹部それぞれの持ち株についても開示されている。
　株主総会決議の結果も載っている。面白いことに，票数の他に 人数も載っている。
　票数では，賛成 (95.12%) 反対 (4.18%) ･･･ [よく報道されている]
　人数では，賛成者 (1,855 人，82.7%)，反対者 (388 人，17.3%)
となっている。株数の少ない人の中に反対者が多いってことかな。
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　では，脱線から戻り，経営陣の吟味に移りましょう。
　(1) Chairman: Stuart Chambers
　2014年３月１日より現職。アメリカと世界に実業経験が深い。ARM の前は，[英国製缶会社] Rexam plc の Chairman [現在も] 。その前は 2009 年まで 日本板硝子グループ CEO [１年７ヵ月で 家庭の理由で辞任した]。なお 日本板硝子は 2009 年に 英国ガラス会社 Pilkinton を買収したが，そのとき Chambers は Pilkinton の CEO だった。ガラス業界の前は， [アメリカの大手食品会社] Mars Inc で上級役員，その前は [何と] ロイヤル･ダッチ･シェルなどで 10 年。2016年４月30日 英国買収パネル調査委員会委員に指名された！
　(2) CEO: Simon Segars
　2013年７月より現職。シリコンバレーに住むが，多くの時間を アメリカ, 欧州 および 中国での世界の技術のハブ [＝中心地] の主導的な有力者との会合に費やす。
　埋め込み CPU アーキテクチャの特許を数多く持つ。サセックス大学で電気工学士，マンチェスター大学で計算機科学修士を取得。
　(3) CTO: Mike Muller
　2000 年10 月より現職。ARM 創立者の１人。Acom Computers 在籍。その前は Orbis Computers。[古参の技術者と見える].
　(4) CFO: Chris Kennedy
　2015年９月１日より現職。2010 年から [英国格安航空会社] easyJet plc の CFO。それ以前は EMI plc 取締役 [EMI 問題のあった時期だね] , 2008 年 Maltby Ltd の CFO。
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　確実に分かるのは，ここまでですが，ここから どんなことが想像できるでしょうか？
　分かりやすい人から取り上げると，(4) CFO は財務の担当者として，たぶん空気のような存在。
　(3) CTO は，ARM の技術をガッチリ支える存在で，創立者 Hauser さんと長い付き合い。この人が Hauser さんとメールのやり取りをして, 「自分が ARM の技術を支えて，それが 東洋のカネカネ会社の借金を減らすためなのか？」と思ったら，危険信号です。
　通常の企業の場合には，技術屋であっても，生産部門と係わっているのが普通なので，簡単に飛び出すわけにはいかない。しかし，ARM は チップ製造部門を持たない設計だけの企業なので，技術者にとっては動きやすいという事情がある。
　この人のインセンティブは 何なのか？ 私にも分からない。これまでは，２つありました。ARM の株価が上がれば，自分の資産も増える。もう１つは，自分がイギリスの技術を支えており，イギリスの役に立っているという自負です｡「ソフトバンクの役に立つ自負」というのは，英国人にはあり得る？ と孫さんは思ったのか？
　ともかくも，ソフトバンクが成功するためには，Mike Muller CTO にしっかりしたインセンティブを持ってもらうことが欠かせないと思う。そういう作戦は 水面下で始動しているのでしょうか。
　JT の買収記事『買収の素人集団がプロになるまで』を読むとよく分かるが，買収後に残ってもらう人ときちんと面接をするのだと言う。
　いまのソフトバンクに，英語でそこまでやれる人材が何人いるのでしょうか？
　もちろん，英語は下手で構わない。技術者の心意気をきちんと汲み取れることが大切です。
　(2) CEO は 元は技術屋さんらしいけど，今は「外商係」ですね。世界中の提携先を回って，注文を取り，同時に新しい情報を仕入れてくる。これは，技術屋さんにしかできない重要な仕事です。
　ここで もしも CTO さんが上に書いたような「心変わり」をした場合，CEO はどうするか？ 想像ですが，まず必死に止める。しかし，同じ技術屋であれば，その心根は痛いほどよく分かります。結果として 同じ行動を取るでしょう。外商係と技術係は，一体になって動かなければ 意味がありません。
　もちろん, そんなに簡単な話ではないでしょう。まず第１に金が要る。ARM の特許は侵害できない｡ 顧客も自分の手で集める必要がある。
　最後に (1) Chairman ですが，ナントカ委員会 [推測ですが，英国の国益を守るために買収に規制を掛ける委員会でしょうね。買収されることを推進はありえないから (笑)] の委員に４月に任命されたことからも分かるように, この渡り鳥さんは, 「Pilkinton を日本板硝子にうまく売却したのだから，同じ手口で，ARM を高値で売ってくれ」と ARM 株主に頼まれて ２年前に Chairman に就任した … と考えるのが合理的です (他にどんな理由が考えられるかな？)。Pilkinton は フロートガラスという画期的な技術を日本板硝子に売り込みました。結果として，10 年経っても 日本板硝子は経営が好転しない。でも それはどうでもよいこと。ARM も，チップの設計という画期的な技術を持っているから，日本のカネカネ会社に高値で売る。その結果，10 年後にソフトバンクがどうなろうと，それは 向こうにとってどうでもよいこと … というように Chairman の考えは一貫している；分かりやすい；２つの買収案件は，パラレルである。
　ARM 経営陣の中では，東洋のカネカネ社長と親和性が最高である。話が短時日でまとまったとしても，不思議ではない。要するに，Hauser さんのような 英国技術者魂とは正反対の，これまた 英国に伝統的な 老獪政治家魂の具現のような人物である。英国は この特異な２重性をウリにする国である。
　もちろん２年前に依頼された売却のお仕事が済めば，この「渡り鳥」は，ARM にいる必要が全く無い。… というか，何が仕事として残っているのでしょう？ おそらく目を剥くような巨額の [Nikesh も真っ青の，だって 3.3 兆円で売った辣腕だから凄いよ，凄すぎる！ ── 日本のメディアは，ソフトバンクが 3.3 兆円の買収をしたとか騒いでいるが，客観的に見れば そこまで値段を釣り上げられた馬鹿なソフトバンクを叩くのが普通であり，高値で売った方の手腕を賞賛すべきでしょ？] 報奨金を受け取って，ARM をおさらばするでしょう。長居をするのは ヤバイ。いろいろ嗅ぎつけられると困るから。
　上の Guardian 記事には 『経営陣に留まることになっている 最高経営責任者 Simon Segars は ･･･ 』と書いてあるのが，気になりませんでしたか？ 翻訳のときには，物凄く気になりました。だって，残ると明記されているのは CEO だけ。深読みをすると (笑)，こんなところに誰も残らないなんて書けませんよね？
　ここの原文は『Chief executive Simon Segars, who will stay with the company, ･･･ 』です。
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　基本的に，この買収が完了すれば [=金さえ手に入れば] ，現在の ARM の幹部は ARM に対する関心を急速に失うでしょう。カネカネ会社の社長さんに それ以上の義理は感じていない 。金と引き換えに株を渡せば，それですべて終わり。ストック･オプションも １株 0.05 ペンス [=9.9 銭らしい] で全部行使，金庫株も全部配分しました。これを 34,000 倍の 1,701.90 ペンスでお買い上げいただけるわけです。
　東洋の借金まみれの会社と 大大富豪さんのために あくせく働いて 11 兆円とウワサされる債務返済に ご協力いたします … なんて ARM 社員が何人いるでしょうか？
　(付け加えると，この気持ちは スプリントも大同小異ですが，それは 一応 別の話｡)
　ですが，仮に あなたがスプリントの社員だったとして，退職金を半分に減らされて，大幅人員整理で３万人に (Verizon は 17万人), (覚えられるはずもないお笑い種の，孫さん御自慢の) ゴミ捨て改善，駐車場利用改善，ペーパーレス化など 470 項目の節約条項を厳守せよ (これを幹部が毎日チェック)；おまけに ソフトバンクに買収されてから何故か 櫛の歯のように幹部が抜けていく (最後に残っていたハーバードの物理で Ph D を取った人も昨年 10 月に退社)；穴を埋めるのは, 外国からリクルート会社を経由してやってきた人が主力 … というキビシイ環境で一生懸命働いても，ソフトバンクの借金返済に協力するだけのこと，大大富豪さんにソフトバンクの決算発表会で手柄を大威張りさせる結果になるに過ぎない … ことをどう思いますか？
　ここまで長々 外れかもしれない長文をお読みいただいた方に，お礼申し上げます。
　ありがとうございました。