サウジ 報道
(started 2014/01/06)
  1. Saudi crown prince says sovereign wealth fund will surpass $600 billion target by 2020
    サウジ皇太子は,ソブリン基金が 2020 年までには目標の $6,000 億を超えると言う
    Reuters,2018/10/06 @06:02 am ET
    By Marwa Rashad (リヤド)
    サウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子は,経済の石油依存を減らす計画の一環として, 王国の主たるソブリン基金 (PIF) の資産が 2020 年までに 目標額 $6,000 に達すると述べた。
     "我々は現在 $3,000 億を超えており,$4,000 億に近づいている。我々の 2020 年目標は約 $6,000 億である。2020 年には目標を超えると私は思う。" … と 皇太子は 金曜日に発表された Bloomberg インタビューで語った。
     そして PIF は 50% 以上の投資をサウジアラビア国内に行なっているが,来年は さらに多くのところに投資するつもりだ … と続けた。
     PIF はさらに $450 億を,日本の SoftBank Group と PIF が支援し,人工知能とロボットのようなテック・セクターに投資する世界最大の PEF SoftBank Vision Fund に投資する意向である。
     "我々は,最初のから 膨大な利益を得ている。我々 PIF は,もしも最初の投資 $450 億で初年度に莫大な利益を得ていなければ,さらに $450 億を注ぎ込むことはしないだろう。" … と皇太子は言った。
     サウジ国内では,PIF にとって最大の投資案件である $5,000 億事業が計画されている:2017 年 10 月に発表され,ヨルダンとエジプトまで続く NEOM と呼ばれる工業地帯である。
     Mohammed 皇太子は,NEOM の最初の町が 2019 年 または 2020 年に動き出し,全体は 2025 年までに完成する … と言う。
     民営化
     皇太子は,サウジアラビアが 2019 年に 20 以上の企業を民営化すると言う。これにより 石油の輸出から経済を多様化するのが政府の戦略である。
     "2019 年,我々は 20 以上のサービスを民営化するつもりだ。これらは 水道,農業,エネルギー,スポーツ関連である。" … と 皇太子は金曜日 Bloomberg インタビューで言った。
     今年4月,サウジ政府は 2020 年までに民営化計画により 非石油収入 $90 億 ~ $110 億 と最大 12,000 の雇用を得ることを目指すと言った。
     民営化イニシアティブは,14 件の官民提携投資を目標とする。4月に発表された公式文書によれば,これには サウジの港湾の民営化と SWCC (サウジ海水淡水化会社),Ras Al Khair 脱塩 & 発電プラントが含まれる。
     皇太子は,13 % という記録的水準に近い失業率が,経済再編の副作用の一部だと言う。
     皇太子はさらに,2019 年の王国の予算が 1兆リヤル ($2,670 億) を初めて超える計画であり,非石油収入が +300% 以上増える現状で,現在の王国の経済は 強力である … と続けた。
     "失業率は 2019 年から下がり始めると思う。2030 年には目標の 7.0% に達するだろう" … と彼は言った。

  2. HRH Crown Prince: The Kingdom is Moving in The Right Direction and There Is A Big Deal Will Be Announced After 2 Weeks
    皇太子殿下:王国は正しい方向に動いており,2週間後に大きな取り引きが発表される
    Saudi Press Agency,2018/10/06 @10:30 GMT
     Bloomberg:I am interested when you say that you didn’t call yourself a reformer because in some of the big interviews you gave in 2016, you were asked are you the Margaret Thatcher of Saudi Arabia you said absolutely. Are you still the Margaret Thatcher?
     MbS:Maybe they mean some person bringing something new to the country. I don’t care how the world views me as much as I care about what’s in the interest of the country and the Saudi people. Whatever serves the Saudi people and Saudi Arabia as a country, I will do it with full force, regardless of the impressions that it will create about me. If it’s good, thank you, that’s great. If it’s bad, I will try to clarify myself. If it works, good, if it doesn’t work I have to do what’s good for my country and for my people.
     Bloomberg:In 2016, you told us that Aramco ownership will be transferred to the PIF. Is this still the plan?
     MbS:No. Aramco’s ownership will continue to be in the hands of the Saudi government, but the money of the IPO will go to the PIF.
     Bloomberg:How do you evaluate the PIF so far? Again in 2016 the strategy that you gave us was 50% investments domestically 50% investments globally, excluding Aramco.
     MbS:That’s right.
     Bloomberg:Where do we stand today with the PIF?
     MbS:We are now above $300 billion, we’re getting close to $400 billion. Our target in 2020 is around $600 billion. I believe we will surpass that target in 2020.
     Bloomberg:Is it now 50-50?
     MbS:Now it’s more than 50 in Saudi Arabia and less than 50 outside Saudi Arabia that’s why we are investing in more places next year.
     Bloomberg:One of the places you invested in was SoftBank. Will you be a part of the other $100 billion they’re seeking?
     MbS:Of course. Definitely. We are the creators of SoftBank vision fund. We have 45 percent. Without the PIF, there will be no SoftBank vision fund.
     Bloomberg:How much of the new $100 billion?
     MbS:Same amount mostly.
     Bloomberg:Another $45 billion?
     MbS:That’s right.
     Bloomberg:So a total of $90 billion.
     MbS:That’s right. That means we have a huge benefit from the first one. We would not put, as PIF, another $45 billion if we didn’t see huge income in the first year with the first $45 billion.
    Bloomberg 記事の元になった会見を サウジ国営通信が出している。
     タイトルには "ビッグな発表あり" と書かれているが,本文では全く それに触れていない。
    ──────
     ここで皇太子は SVF に 既に満額の $450 億を出資して,そこから大儲けしたように書いている。
     しかし SoftBank の 2018/06 までの決算報告によれば,SVF への LP (SoftBank 以外の出資者) からの出資合計は $178 億である。
     なぜ こんなにすぐにばれるウソを MbS はつかねばならないのか?

  3. Saudi Arabia Doubles Down on SoftBank Bet With Extra $45 Billion
    サウジアラビアは,SoftBank の賭けに $450 億で倍賭けする
    Bloomberg,2018/10/06 @06:00 JST
    By Riad Hamade , Matthew Martin & Archana Narayanan
      ソブリン基金は Sabic とアラムコから牡丹餅を受け取る予定である。
      皇太子は,PIF の資産が 2020 年までに $6,000 億を超えると言う。
     サウジアラビアは,Masayoshi Son が未来のテック巨人を選ぶことのできる賭けに倍賭けしようとしている。この基金は,Son の第2巨大 Vision Fund に さらに $450 億の投資を行なう。
     PIF は,向こう 3~4年に期待している $1,700 億の牡丹餅の使い道を探す中, この投資を行なう予定である。PIF の Mohammed bin Salman 議長 ── サウジアラビアの皇太子でもある ── によれば,この金は Sabic (サウジ基礎産業公社) の権益の売却と 国営石油会社 サウジアラムコの IPO から来る。
     PIF は,SoftBank Group の Son CEO が調達を計画する 第2次 $1,000 億 投資基金のカギを握る投資家になりたい … と Mohammed 皇太子が Bloomberg とのインタビューで述べた。これにより PIF の2つの基金への拠出額は $900 億になる … と皇太子は言った。
     "我々は,最初のから 膨大な利益を得ている。" … と彼は言う。"我々 PIF は,もしも最初の投資 $450 億で初年度に莫大な利益を得ていなければ,さらに $450 億を注ぎ込むことはしないだろう。"
     PIF を眠れる国内持ち株会社から世界最大のソブリン基金に変換すると 2016 年に発表して以来,PIF は一連の大胆な投資を行なった。その多くは,これから黒字になるようなテック企業に集中している。第1次 Vision Fund への資金拠出に加えて,PIF は Uber に $35 億を投資,テスラの 5% の権益を取得,次いでテスラのライバル Lucid Motors に $10 億を投入した。PIF は,Blackstone Group が運用するアメリカのインフラ基金に $200 億を拠出する契約を結んだ。
     ビッグなリターン
     昨年 リヤドで開かれた FII で話したとき,Son は第1次 Vision Fund による投資が既に元を取ったと言った。この基金は 最初の5ヵ月で 20% を超えるリターンを得た … と彼は言った。
     その基金は アブダビのソブリン基金とアップルからもカネを調達しており,史上最大の規模のベンチャー資本基金の4倍の約4倍の規模である。今年9月,Son は Bloomberg Businessweek に,2~3 年ごとに 新しく $1,000 億の基金を設立し,毎年約 $500 億を使う計画と告げた。
     基金が最初に投資を始めてから1年も経たないうちに,既に Uber, WeWork Cos, Slack Technoloties Inc および GM Cruise LLC の大きな権益を取得するために $650 億をコミットした。
     カネを集める
     SoftBank の次の Vision Fund にさらに巨額を投資することは,PIF が 現在 $3,000 億以上に達した資産をふやすことを助ける … と Mohammed 皇太子は言う。現在 PIF の資産は 大部分が Sabic, Saudi Telecom, National Commercial Bank などの国内株式である。
     "我々は いま $3,000 億を超えており,$4,000 億に近づきつつある。" … と彼は言う。"我々の 2020 年目標は 約 6,000 億である。私は 2020 年にこの目標を超えると予想する。"
     昨年は 2020 年までに資産が $4,000 億に達することを望む … と言っていたから それよりも予想が増えている。昨年 10 月に 2020 年計画を PIF が発表した文書によれば,2015 年末の PIF の資産は $1,520 億だった。同じ文書で,PIF が 2014~2016 年には 3% だった名目年利を,2020 年まで 4~5% にしたいと書かれている。
     PIF は 今年 $110 億を 初めて銀行借り入れにより調達した。PIF はまた,Sabic の 70% の権益を 2019 年にサウジアラムコに売却することにより 約 $700~800 億を受け取る予定だと Mohammed 皇太子は言う。その上に,アラムコの上場からの手取り金 $1,000 億が加わる … と皇太子は言う。
      — With assistance by Alaa Shahine, Donna Abu-Nasr, and Vivian Nereim
       孫社長が 過去の発言に対して SEC から訴訟を起こされるのを防ぐために,MbS に口裏合わせを依頼したものか (笑)
       $3,000 ~ $4,000 億の資産を持つ PIF が,$110 億を銀行から借り入れて,SoftBank に $450 億を入金して頂けるとは,ありがたいことである。
       サウジ国営通信にこのような記事は無い。
       内部で対立が起こっていると考えれば, すべてを "サウジアラビア" で一括りにするのはおかしい。
       FT のように,石油省+アラムコ と PIF に分けて考える必要があるだろう。
       2018/06/30 の時点で,SVF への LP の出資履行額は $178 億であり,未履行額は $474 億である (SoftBank の出資額を含めても合計 $286 億である)。$650 億をコミットした のであれば,SoftBank から巨額の "立替払い" があったのか?

  4. Softbank says it is working with Saudi PIF on solar power project
    Softbank は,サウジの PIF と太陽電力プロジェクトで共同作業中であると言う
    Reuters,2018/10/02 @01:40 am JST?
    By Davide Barbuscia & Katie Paul (ドバイ)
    日本の SoftBank は火曜日,サウジアラビアのソブリン基金と太陽電力発電プロジェクトで 密接に共同作業中であると言い,PIF との $2,000 億プロジェクトを SoftBank が棚上げしたとの Wall Street Journal の記事を否定した。
     "この規模と複合性を備えたプロジェクトに対する期待に応えて,進歩は継続中である。" … と SoftBank のスポークスマンは書面による声明で言った。
     Softbank のチームは何ヵ月ものあいだ PIF および 政府機関と密接に "王国における再生エネルギー生産の将来を変換すべく" 「新太陽エネルギー計画2030」 の誕生のために共同作業をしてきたと Softbank は言う。
     Softbank の声明は,PIF のスポークスマンが E-メールで SoftBank Vision Fund および その他の関係者と ソーラー業界に関連する大規模な 数十億ドルプロジェクトで共同作業を続けると言った後に出された。
     プロジェクトは いずれ発表されると PIF は言った。
     SoftBank の Masayoshi Son CEO は3月,世界最大の太陽電力プロジェクトをサウジアラビアで始めるために投資する計画を発表していた。このプロジェクトは 2030 年までに 200 GW の電力を生む規模が予定されている。
    "ドバイの Softbank" が否定声明を出しました。あくまで $2,000 億を払うようです。
    "東京の SoftBank" からは,そんな声明は出ていません! 2018/10/01 の人事異動が最新です。
     いったい どちらが 本物の SoftBank Group なんでしょうか?
     日経 (2018/10/02 @23:45) は,ドバイの SBG に取材したのか 東京の SBG に取材したのか不明である。
     だが 200 GW という "狂気の太陽光発電所" を 2030 年までに建設する $2,000 億計画は順調に進んでいるらしい。だったら,孫社長が逃げ隠れせずに 記者会見すべきだろう。
     でもここで記者会見すると別件で追求されるのが怖くてビビらざるを得ない?(笑)
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     Feasibility Study (採算性など企業化のための調査) を5月に実施すると 3月の発表では書かれていたから,まずその結果から書くべき (たとえば, まだ終わっていないとか) なんだけど,それが無くて,「進歩は継続中である」 のが まずおかしい。
     この計画はとにかく巨大 (日本の現在の全発電能力程度) だから,全世界向けの膨大な輸出が必須であり,ソーラー建設に付随して 港湾建設,空港建設,道路建設,水道建設,輸出のための船舶建設 などなどを含む 膨大な事業 (まとめて 物流事業) となる。とりあえず 港が必要だから,五洋建設と合弁会社を作りますか? 道路が必要だから 大成道路と合弁会社を作りますか? 輸出のために大量の船を必要とするので,日本郵船と合弁会社を作り,ソーラー施設輸出の専用船を大量発注しますか? 清浄な水を大量に常時供給するシステムが必要です。日揮/千代田化工とか 東京都水道局と合弁会社を作りましょうか?
     このような関連会社の株は,暴騰してもおかしくない (笑)。なにしろ $2,000 億。
     $2000 億の投資でこの杜撰さは,前代未聞のプロジェクトである。
     いかに ホラで有名な孫社長にしても異常である。
     ドバイに同名異人の 孫社長がいるのだろう。
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     それはさておき,日本政府とサウジアラビア政府との間には,「日本-サウジアラビア ビジョン 2030」が結ばれており,その上に立って 日本の多くの企業とサウジアラビアとの間で大量の覚書・協力合意を交わしていることをご存じでしょうか?
     2017 年にサウジ国王が 84 歳の老体をおして来日した目的の1つがこれだったのである (当サイトも つい最近までこれを知らなかったので驚いた次第である)。日本側の目的は 石油の確保である。
     これにくらべれば SoftBank とサウジアラビアとは,たかが1本か2本の覚書に過ぎない。日本にとって絶望的に必要な石油の確保には無関心である (だから日本政府の支援は期待できない)
     あちらに比べれば,こちらは「吹けば飛ぶような」ものである。
     サウジが 日本では 孫社長だけを相手にしているとお考えの方は,「日本-サウジアラビア ビジョン 2030」を検索なさるとよい。読んで気絶なさらないように (笑)
     SoftBank と日本政府との間に発生する諸問題は,上記の文脈の下で捉えると理解しやすい。
     40% 値下げは,ほんの入り口に過ぎないと思われる。
      さもなければ せっかくの官民一体体制がぶっこわれ,石油の安定確保に響くことを政府は恐れるだろう。

  5. Saudi Arabia Reaffirms Commitment To Becoming A Global Leader In Solar Energy
    サウジアラビアは,太陽エネルギーで世界のリーダーになるという公約を改めて主張する
    Saudi Press Agency,2018/10/02 @10:38 GMT
    エネルギー産業鉱物資源省 (MEIM) は,Vision 2030 に則り,サウジアラビアの電力セクターを 多様化され, 持続可能な, 競争力のある, 効率的なものに変換する計画を改めて主張する
     最近のメディア報道とは異なり,MEIM は PIF, SoftBank および その他 王国の利害関係者と共に,太陽エネルギーに関連する数多くの大規模な数十億ドルプロジェクトで作業を続ける。これらの投資の長期的目標は 2030 年までに容量 200 GW の PV (光起電力) 容量を生み出すことである。投資家,技術顧問,建設請負業者は このプログラムに参加するよう招聘された。短期のパイロット・プロジェクトを開発する計画も進行中である。
     モロッコの Marrakesh で開催された第11回年次アラブ・エネルギー・フォーラムにおいて,MEIM 顧問 Abdulrahman Abdulkareem 殿下は,MEIM の役割の詳細を述べ,王国が太陽エネルギーで世界のリーダーになる計画 ならびに この有望なセクターへの $2,000 億の投資機会を提供することを披歴した。
     MEIM は また,電力セクターの変換計画が3つの主要な部分から成ることを示した:電力市場の再編;消費者から見た競争力の強化;民間セクターに対する投資の勧誘。
     Transitioning the Kingdom’s fuel and technology mix to include a significant capacity of renewables, primarily solar, but also wind. There will also be substantive investment in new high efficient gas-powered generation capacity.
     Investing, industrializing and localizing the full value chain of the power industry for domestic and export-oriented manufacturing of conventional power components and services as well as new technologies.
     電力セクターの転換に関する重要な決定は既になされており,その詳細は いずれ発表される。
    前日の記事の補強のつもりで書いたのだろうが,わけの分からない (翻訳しにくい) ことをいろいろと並べている。
     "蛇足" というべきか?
     200 GW は アラムコ+エネルギー省が 実現不可能と言っているのに,相変わらずやると言っている。
     これは PIF が勝手にまとめたものだろう。「短期のパイロット・プロジェクト」が 本来の MEIM のプロジェクトか?
     SoftBank も 厄介なところへ足を踏み入れたもんだ。さっさと $2,000 億を払って 日本へ逃げ帰れ!
     さもないと $2,000 億では済まないかもしれない。なにしろ "大金持ち" として 世界中から狙われている。
     狙っている点では PIF もエネルギー相も同じであり,互いに協力するだろう (笑)
    ──────
     サウジアラビアは,太陽エネルギーで世界のリーダーに なれるはずがない。
     なれるのは 中国である。こんな自明なことが サウジもバカ社長も分からないとは。
     孫社長は (日本では絶対にやらないが) 外国では 『サウジからは 45 分で $450 億, 1分で $10 億を調達した』と得意満面で何度も話す (筆者は2回見た)。その都度 大きな笑いが起こる。受けているのかバカにされているのか分からないが,笑いが起こるので 社長はこれが気に入っているらしい。
     だが 反対かもしれない。「$450 億のエサで,東洋のバカ社長をうまく釣りだした」
    ──────
     2018/06/30 の時点で,SVF への LP の出資履行額は $178 億であり,未履行額は $474 億である。
     したがって,サウジアラビア (予定額 $450 億) の出資履行額が $0 (あるいは 僅少) という可能性も否定できない。

  6. The Public Investment Fund (PIF) says that the Wall Street Journal article in regards to the Solar Project is inaccurate
    PIF は,ソーラー・プロジェクトに関する Wall Street Journal の記事が不正確だと言う。
    Saudi Press Agency,2018/10/01 (月), @20:58 GMT
    最近のプレス報道での主張に答えて,PIF の広報担当者は,「サウジアラビアは,SoftBank の $2,000 億ソーラー・プロジェクトの作業を棚上げにする」 と題する Wall Street Journal の記事が不正確であると言う。
     広報担当者は,PIF が SoftBank Vision Fund および その他の関係者と ソーラー業界に関連する数多くの大規模な 数十億ドル プロジェクトを続けている … と言い,これについてはいずれ発表を行なう … と続けた。2018 年3月の発表は,これが ソーラー発電プロジェクトと サウジアラビア国内で大規模ソーラーパネル製造施設を建設する ジョイント計画とを含むことを明言した。これに R&D および 訓練部門が加わる。業界の先頭に立つチャンピオンを育てることを狙うこれらの計画は,この規模と野心を持つプロジェクトに期待される時間軸に沿い,その路線上にある。
     これと並んで 王国は,サウジアラビアが 再生可能エネルギーの先端的 かつ 信頼しうる多様化された供給者たることを目指す再生可能エネルギー戦略全般を推進している。Vision 2030 の精神に則り,エネルギー産業鉱物資源省は,王国の利害関係者と協調して民間セクターの強力な参加を得て,電力セクターを変換し,競争力の強い 効率的 かつ 持続可能たらしめんと プログラムを企画しているところである。
    内部抗争の証拠?
      (ロイターに無視されちゃった) 何が書いてあるのか 分からない英語 (翻訳すると 訳者の苦心により分かりやすくなる (笑)) で 糊塗しようとしてる?
     方針がはっきりしているなら,もっと具体的に書けるでしょ。
     例えば,数十億ドル プロジェクトを続けている のだから,
     SoftBank から 5月に $1億,6月に $2億,8月には $10 億入金があった ・・・ と書けば,それだけで疑惑は晴れる。簡単なこと。
     いずれにせよ,このように1次情報で確認することが重要である。

  7. Saudi Arabia Shelves Work on SoftBank’s $200 Billion Solar Project
    サウジアラビアは,SoftBank の $2,000 億ソーラー・プロジェクトの作業を棚上げにする。
    Wall Street Journal,2018/09/30 @02:57 pm ET
    By Rory Jones & Summer Said
    サウジの当局者は,10 月に新しい再生エネルギー計画を公表する予定である。
    [読者コメント 26 件]
    サウジアラビアは,世界最大のソーラー発電プロジェクトを建設する SoftBank Group との $2,000 億計画を,王国の人目を惹く別の転換計画と競合するため,凍結した … とサウジ政府官僚らが発表した。
     ソーラー・プロジェクトの棚上げは,野心的なアイデアを追求してきた サウジアラビアと SoftBank の間の提携の挫折を画する。両者は,テック企業への投資向けに $1,000 億の基金を設立し,これが スタートアップ企業への新たなカネの洪水のラッシュを生んだ。
     ソーラー・プロジェクトは,世界で最も重要な石油生産国を最終的に 200 GW のエネルギー (これは サウジが毎日必要とするエネルギーの3倍を超える莫大なエネルギーである) を生み出すソーラー電力の巨人に変身させるはずであった。
    今年3月, 世界最大のソーラー発電プロジェクト建設の契約に調印後,
    SoftBank の Masayoshi Son CEO がサウジの Mohammed bin Salman
    皇太子と握手する。 (©Jeenah Moon | Bloomberg News)
     この計画は,今年3月に SoftBank の Masayoshi Son と Mohammed bin Salman 皇太子が今年3月にニューヨークで発表し,両社の提携の延長を意味するものと了解された。
     今ではサウジ政府の官僚と顧問は,このプロジェクトで誰も本気で動いていないと言う。
     それどころか 官僚と顧問は,サウジ王国が 再生可能エネルギーをふやすために,もっと広範で現実的な戦略で動いており,10 月末にリヤドで開かれる投資会議の頃に その内容を発表する予定だと言う。
     その発表は,王国の再生エネルギーの目標を明確にするのに役立つ … と或るサウジの官僚は言う。
     この展開は,サウジアラビアが 更なるコンサルティングの後に再検討した最新の名高いプロジェクトである [?] 。リヤドは 2016 年に サウジアラビア石油会社 (一般には アラムコの名で知られる) を上場して $1,000 億を調達する計画を発表したが,最近 この IPO を中止した。
     "SoftBank が率いるプロジェクトでは,人の関心を揺るがすことも掴むことも たやすい。" … と サウジ政府の或る上級顧問が言う。"だが,難しいのは 実行だ。"
     SoftBank は,コメントを拒んだ。サウジ政府の報道官は,このプロジェクトに関するコメント要請に応じなかった。
        < WSJ 日本語訳はここで打ち切り 肝心の社長の バカを削除した (笑) >
    横軸の単位 = 1015 BTU (英国熱量単位)。
    このソーラー・プロジェクトは,サウジアラビアで進行中の一世一代の経済と社会の変革の一環と考えられていた。
     33 歳の Mohammed 皇太子の下で,王国は 世界で唯一の女性の運転禁止を解除し,劇場のオープンを許可し,過激な宗教観の影響を弱める動きを見せた。
     王国のソブリン基金と SoftBank は 力を合わせて Vision Fund と呼ばれる $1,000 億ベンチャーを発表し,新しい世界的技術と企業に投資した。
     ソーラー・プロジェクトは 高い値札がついているが,第1段階は 今年 Vision Fund による $10 億の投資から成る。
     2年以内に 7.2 GW,2030 年には 200 GW に達する予定である … と Son は3月に言った。
     Vision Fund は,サウジのプロジェクトに これまで少しでも投資したかどうかを開示しない。
     サウジのエネルギー官僚は,ソーラー・プロジェクトの カギを握る詳細 ── たとえば どこの土地を使うか;開発の構造;国から助成金を受けるか ── を未だ決定していない … と 事情に詳しいサウジのエネルギー官僚と顧問が言う。
     "誰もが,このアイデア全体は 死ぬしかないと予想しているに過ぎない。" … と或るサウジのエネルギー官僚が言う。
     これほどの規模の容量を建設することは,将来新しい技術が到来した場合に 非常に高くつく開発にサウジアラビアが嵌ることを意味する … と別のサウジ官僚が言う。
     そもそも このプロジェクトと 200 GW という目標は 厳格ではない合意であり,野心の表現と考えられていた。つまり 2030 年までにそれだけの量の発電を明確に行なうというものではなかった [注:だから WSJ の記事には "non-binding" と書かれている]。しかも発電された大量の電力が外国へ輸出されるのかどうかは不明である。" … と同じ官僚が続けた。
     10 月に発表される予定の枠組みは,SoftBank が将来 発電建設に係わることを排除するものではないが,超巨大 200 GW プロジェクトの開発にはつながらない見込みである … とその官僚が続けた。
     広大な砂漠の平原と豊富な日光で,サウジアラビアは 長年にわたり 世界の石油生産国から ソーラー電力の大手になろうとしてきたが,その計画は高いコストと物流問題によりこれまで阻まれてきた。
     SoftBank と協定を結ぶ前,サウジアラビア石油省は ソーラーと風力発電プログラムを始めていた。その目標は 2023 年までに 王国の全電力のざっと 10% にあたる 9.5 GW を得ることだった。
     石油省は 2023 年目標で 0.30 GW を2月に入札し,地元の民間企業と (ソーラー電力を生産し 世界一安い料金でそれを末端消費者に提供するという) 開発契約を結んだ。
     サウジアラビアは 現在,ほとんど全くソーラー発電を行なっておらず,電気は 原油,重油,天然ガスの燃焼による。
     Son は,世界中で超巨大再生エネルギー・プロジェクトを発表する履歴を持つが,そのプロジェクトはやがて 初期の圧倒的な目標を見失う。
     2011 年に日本を地震と津波が襲い,原子核のメルトダウンを引き起こしたとき,Son は言った:SoftBank は十分大きなメガソーラー発電プラントを建設して,原子力発電で 50 GW 相当の穴埋めをするつもりだ。ところが,彼のコングロマリットは その目標に未だに 到達していない。
      — Mayumi Negishi in Tokyo contributed to this article.
     Write to Rory Jones at rory.jones@wsj.com and Summer Said at summer.said@wsj.com
    現在のところ,これに対応するニュースは サウジ国営通信 (SPA) には見られない。
     SoftBank 関連の記事としては 10月23~25日に PIF が FII (Forward Investment Initiative) を今年も開催するとの通知がある。これには 世界から 100 社ほど集まる。
     上の本文中の 「10 月末にリヤドで開かれる投資会議」 が FII を指すことは明らかだ。
     ということは,その会議に合わせて発表が行われるわけで,出席する孫社長は 赤っ恥? なぜ?
     ちょっと微妙なのは (笑),「(PIF が主催する) 投資会議で発表する」とは書かれておらず「投資会議の頃に (around the time of ・・・) 発表する」… と書かれていることだ … 読み直して下さい。これを どう読むか? 内部対立か (笑)。そう考えると,上の記事に PIF の意見は登場しない。
    SoftBank と協定を結ぶ前,サウジアラビア石油省は ソーラーと風力発電プログラムを始めていた。 … という記述から分かるように,内部対立が容易に想像できる。
     サウジアラビアの石油省+アラムコ と PIF との間で アラムコの上場を巡ってこれまで 内部抗争説があったが (FT),結果を見れば,前者が勝ち,後者 (PIF+SoftBank) が敗れた … と解釈できよう。200 GW は,SoftBank と PIF の契約である。今から考えれば,石油を抑えている前者が強いのは当然か? 後者にはどんな強みがあるのか?
    ──────
    これにて,SoftBank と サウジアラビアとのご縁は切れる。
    SoftBank にとって西側諸国から叩かれている "危険な皇太子" とのご縁が切れるから良いニュース!
     下手をすると 孫社長がテロに遭遇しないとも限らない。それくらいひどいことを皇太子はやっている。上のような写真は危なすぎる。
     (A) SoftBank → Saudi の $2,000 億投資が無くなれば,
     (B) Saudi → SoftBank の $450 億投資も当然無くなる (アラムコ上場は国王が中止した)。
    ──────
     あらためて "200 GW" の "どでかさ" を理解できない "バカな社長" を WSJ は世界に印象づけている。
     サウジ官僚の方が理解が深い。当事者だから当然であろう。
      さもないと国がバカ社長に潰されてしまう。
     ウェブで調べると,日本の現在の総発電能力は 200 GW 程度らしい。
     その 1/4 を SoftBank 1社で,しかも すべてソーラーで … と言う社長は 辞職する方がよい。
     技術に余りにも無知である (ことを WSJ を通じて天下に曝け出した)。
    基本は,FT (2018/04/19) が伝えるように サウジに深刻な内部抗争があり,その一方の肩を持った社長がバカだった … ということである。
     FT の記事であるから,日経は承知しているはずなのに,なぜこれを報道せず,「同ファンドは Uber の筆頭株主になるなど世界の成長企業に投資し,利益を得ている。そのため、今回の太陽光発電の計画を修正しても、サウジがこのファンドに損害を及ぼすような判断を下すことは考えにくいとの見方もある」 などと ごまかすのか?
     PIF とアラムコを1まとめに "サウジ" と呼ぶところがおかしいのに,気づいていないフリをしている。
     200 GW というドン・キホーテのような非現実的計画を取り止めるのは PIF+SoftBank であり,別の現実的な計画を考えているのは 石油省+アラムコである。
     SVF を支援しているのは PIF であり,石油省とアラムコは むしろ SVF を嫌っている。
     日本から見れば「修正」に見えるかもしれない。

  8. ‘We will fight’: 9/11 families renew bid to sue Saudi
    「我々は戦う」:9.11 家族は,サウジに訴訟を起こすとの覚悟を新たにする
    World24 Monitor,2018/09/17 @00:09
    サウジ王国の弁護士が マンハッタンの連邦法廷で被害者の家族に面会する中,サウジアラビアは 2001 年9月11日のニューヨークでのテロ攻撃の犯人に支援を提供したとの非難からまたしても 政府を擁護した。
     木曜日のヒアリングは,9.11 被害者と生存者の家族グループが 3,000 人弱を殺したテロ攻撃に関連する損害賠償を求めてサウジ政府を起訴しようとする 第3回のヒアリングを記録した。
     テロ攻撃者 19 人のうち 15 人がサウジ市民だった。
     今回は,サウジ政府に対するヒアリングをこれまで妨げてきた国家特権の問題を取り除く 法律 [テロ支援者制裁法 (JASTA), 2016/09] をアメリカ議会が成立させた後の初めてのヒアリングだった。
     犠牲者の親族,生存者 および 保険会社は,サウジ政府のメンバーが アルカイダ関連の (飛行機をハイジャックして,ニューヨーク貿易センター,ワシントン郊外のペンタゴン および ペンシルバニア州の畑で墜落させた) 人たちを支援したと主張する。
     彼らは,アルカイダを支援する慈善団体にサウジアラビアが資金を提供したとも非難する。
     "テロリズムに対する正義を求める 9.11 家族 および 生存者連合" の全国議長 Terry Strada は,国家特権を制限する法律のために戦った。
     彼女は,自分のグループがテロ攻撃とサウジ王族の間の明確な財政的連帯と見るものを暴き続けるつもりだと言う。
     "私は この作業を絶対に諦めない。" … と Strada は Al Jazeera に語った。"我々は最後まで戦う。"
     彼女は,このテロで 3人の子どもの父である夫 Tom を失ってから,自分の人生が変わったと言う。
     "私はもう失うものが何もない。できり限り これをする。"
     2015 年サウジアラビア人のテロ攻撃者が サウジ政府から支援を得ていたとの疑惑は調査され,9.11 委員会により証拠に欠けるとして却下された。
     しかし原告の弁護士らは,委員会の結論が決定的ではなく,それ以後 新しい証拠が現れたと言う。その中には,以前は機密書類とされていた文書や 元 FBI 工作員2名 および フロリダ州選出の元上院議員 Bob Graham (9.11 委員会の委員だった) などの証言が含まれる。
     サウジアラビア側の弁護士は これらの訴えを "根拠がない" と言い,再び却下に持ち込もうとしている;法廷文書によれば,新しい証拠は "伝聞と憶測であり,サウジアラビアに対する法的効力に必要な決定を支持するには不十分である。" … と言う。
     家族らは,この証拠が アメリカに拠点を置くサウジ政府工作員らが ハイジャッカーを助け,また サウジ政府が意図的に (反西欧の ジハード・イデオロギーを支持する) 慈善財団に資金を提供した … と考える。
     犠牲者とその家族を代表する弁護士 Sean Carter は判事に,これら慈善団体は "9.11 テロ攻撃につながるアルカイダへの主要な資金提供源だった" … と述べた。
     彼は,判事がこの訴訟を次の段階に進めて,原告がサウジ王族と宗教者リーダーシップの主だったメンバーを召喚して証言を求め,文書の提出を求めることができるようにすべきだと述べた。サウジ当局は これが起こるのを阻止し,原告が イスラムと "テロリズム" を同義としていると非難する。
     "伝道の仕事,モスクの建設 および コーランの提供とテロリズムを同一視することは,この法廷では適切でない。" … と Michael Kellogg 弁護士が法廷で述べた。
     判事はこの裁判を進めるか否かを決めるのに,最大4ヵ月の猶予がある。
     もしもこの公判を続けることが認められれば,アメリカとサウジアラビアの間の経済・外交関係にひずみをもたらすだろう。

  9. SoftBank hints more companies from its $100 billion Vision Fund could expand to the Middle East
    SoftBank は,$1,000 億 Vision Fund 傘下の多くの企業を中東に拡大させる意向である。
    CNBC,2018/09/17
    By Arjun Kharpal
      SoftBank は, $1,000 億 Vision Fund を通じて投資した傘下企業に中東への事業拡大を助ける意向である。
      SoftBank Investment Advisers の Faisal Rahman は,Vision Fund の支援者である Mubadala および PIF と協力して,SoftBank のポートフォリオ企業の中東進出を助けるつもりだと言う。
     SoftBank は,$1,000 億 Vision Fund 経由で投資した企業に 中東地域での設立を助けることにより,中東への焦点を強化するつもりである。
     月曜日の フィンテク・アブダビ会議で CNBC が主催したパネルで SoftBank Investment Advisers のトップ幹部は Vision Fund が中東に当てるスポットライトの詳細を開示した。これは 日本の会社がこれまでほとんど話してこなかった話題である。
     "我々は ポートフォリオ企業に 関連があれば 地元 および 当地の地域事業を設立できるよう招聘する作業を行なっている。実際,世界に拡大できる事業モデルを有する企業は数多くある。" … と SoftBank Investment Advisers の中東地域のトップ Faisal Rahman は言った。
     アブダビの国有投資基金 Mubadala と サウジアラビアの公共投資基金 (PIF) は,SoftBank の Vision Fund にカネを注ぎ込んでいる。Rahman は,SoftBank がこの両方の基金と協力して ポートフォリオ企業 ── WeWork と Uber を含む ── がこの地域で拡大するのを助けると言う。ただし,具体的な会社名は挙げなかった。
     SoftBank はこれまで 中東で大きな動きを見せていない。ほんの数週間前に 元ドイツ銀行幹部 Rahman を雇っただけである。SoftBank は 通常 投資先の企業に 数億ドルの小切手を切る。だが,中東でその規模の投資を行なった例は無い。
     Rahman は 中東に拠点を置くテック企業への投資を管理しているわけではないが,最初の焦点は,現在のポートフォリオ企業を中東へ連れてくることだ。"当地の我々のオフィスは,ポートフォリオ企業の移転を促進し,ここに居を構えるのを促進する。"
     こんな「群戦略」は初めて聞いた。社長が決算説明会の時に言うべきである。
     入社して数週間しか経っていない "新入りの顧問" に 重要な 中東展開群戦略を大っぴらに開示させるとはおかしい。やるなら,社長がアブダビに出かけて行くべきだ。
      SVF の経営体制が暴走していると想像される。
     SoftBank の群戦略に加わる傘下のポートフォリオ企業は 34 社ある。
     これだけの企業が SoftBank の資金援助を得て,中東で揃い踏みで事業を展開すれば,さぞかし壮観だろう。
     市場から株を買った Nvidia 以外はどれも "No. 1 赤字企業" らしいから,現在でも赤字満載。それがさらに膨らむ。
     1年の赤字が 1兆円を超えることも夢ではない (笑)
     世界 No. 1 赤字企業の中東での揃い踏みとなる。

  10. Saudi's PIF invests more than $1 billion in electric carmaker Lucid Motors
    サウジの PIF が シリコンバレーの電気自動車メーカー Lucid Mortors に $10 億以上を投資する
    Reuters,2018/09/18
    By Tom Arnold (ドバイ)
    サウジアラビアの公共投資基金 (PIF) は Lucid Motors に $10 億以上を投資することに合意した。これにより アメリカの電気自動車メーカー テスラが直面する競合が増す。
    2017 年4月13日, ニューヨーク国際モーターショーで Lucid Motors の設計担当副総裁 Derek Jenkins が Lucid Air のアルファ原型車を紹介する。
    Reuters | Andrew Kelly | File Photo)
     この資金調達により,シリコンバレーに拠点を置く Lucid は 2020 年に Lucid Air 電気自動車の商用販売を達成できる。PIF は,この協定を 月曜日に発表したと言う。
     この取り引きの ほんの数週間前には,テスラの創業者 Elon Musk がサウジのソブリン基金から自分の会社を非上場にする助けを得られると言ったばかりだった。月曜日の発表を受けて,テスラの株価は 当初 −2.2% 安となったが,プラス圏に浮上している。
     PIF は $10 億以上と言ったが,正確な数字を言わなかった。Lucid への投資は,王国の経済を石油頼みから多様化する "Vision 2030" の推進を急ぐ中,環境にやさしい経済を建設せんとするサウジアラビアの取り組みの一環である。
     " 急速に拡大する電気自動車市場に投資することにより,PIF は長期的成長の機会にエクスポージャを増し,創新と技術の発展を支援し,サウジアラビア王国の 収入とセクターの多様化を図る。" … と PIF の広報担当者は言う。
     1つの新しいモデルに $10 億以上を要する自動車メーカーにとって,安価な資金調達は,常時 直面するチャレンジである。
     シリコンバレーの西端 カリフォルニア州 Newark に本社を置く Lucid Motors は, 2007 年に Atieva という社名で Bernard Tse (テスラの元副総裁で取締役) と Sam Weng (オラクルグループと Redback Networks の元役員) が創立し,中国の投資家 (テック企業家 Jia Yueting と国営自動車メーカー BAIC [北汽集団] ) から支援を受けた。
     今回の資金調達は PIF が 100% を所有する特別目的会社を通じてなされるが,Lucid はこれを利用して Lucid Air のテストと完成,アリゾナ州に工場を建設して 車の生産を開始する。
     "新しい技術の収束は 車を作り変えているが,その利益は 未だ真に実現されていない。" … と Lucid の CTO Peter Rawlinson が言う。
     "そのため,持続可能なモビリティとエネルギーを採用するペースが阻まれている。Lucid では,我々は この業界を前進させるため,つながる電気自動車の可能性をフルに証明する。"
     月曜日 PIF は,一般企業目的に $110 億の国際シンジケート・ローンを調達したと発表した。
     PIF は既に 再生エネ, リサイクルを含む環境にやさしいプロジェクトに かなりの公約をしており,日本の SoftBank Group が率いる巨大テック基金に $450 億を投資する契約を含めて,テック企業へも投資を行なっている。
    ロイターの既報 (2018/08/30) が ほゞその通り実現した。
     PIF がこのように直接に投資できるのであれば,SoftBank に頼る意味はあるのか?

  11. Public Investment Fund Concludes Investment Agreement with Electric Automotive Manufacturer “Lucid Motors”
    公共投資基金は,電気自動車製造会社 "Licid Motors" との投資契約を完了する
    サウジ国営通信,2018/09/17 @14:13 GMT (リヤド)
    公共投資基金 (PIF) は本日,PIF が完全所有する特殊目的法人を通じて,Lucid Motors への $10 億を超える投資契約を完了したことを発表した。
     この契約の取り決めによれば,双方は通常の完了条件と規制当局の認可を条件として,この契約を実行する拘束性の取り引きを結んだ。
     PIF の "国際投資戦略" の一環であるこの取り引きは,Lucid 初の電気自動車 Lucid Air の 2020 年 商用販売のために必要な資金を提供する。同社は この資金を用いて Lucid Air のテスト および 技術開発の完了,アリゾナ州に工場建設,Lucid Air の生産開始を行ない,北米における同社の小売り戦略スタートを世界へのロールアウトに拡大する。
     PIF のスポークスマンが言った:"急速に拡大する電気自動車市場に投資することにより,PIF は長期的成長の機会へのエクスポージャを獲得し,創新と技術開発を支援し,サウジアラビア王国の収益とセクターの多様化を推進する。"
     そして PIF の国際投資戦略は,国際経済の中の積極的貢献者として,将来の産業への投資家として,国際投資の機会で選ばれるパートナーとして,PIF の業績を強化することを目指す。Lucid への我々の投資は,これらの目標の強力な例である … と続けた。
     シリコンバレーに本社を置く Lucid の使命は,魅力ある電気自動車を生み出すことにより持続可能なエネルギーの採用を促進することである。Lucid と PIF は,世界の高級電気自動車会社を生み出すというビジョンで強くつながれている。Lucid は PIF と密接に協力し,急速に変化する自動車業界で 製品を市場に速やかに送り出すことに戦略的焦点を置く。
     Lucid の最高技術責任者 Peter Rawlinson は,"新しい技術の収束は 車を作り変えているが,その利益は 未だ真に実現されていない。そのため,持続可能なモビリティとエネルギーを採用するペースが阻まれている。Lucid では,我々は この業界を前進させるため,つながる電気自動車の可能性をフルに証明する。" … と述べた。
     今回の取り引きは また,Vision 2030 で強調された (将来の環境にやさしい持続可能な経済を建設する) 取り組みを支援する。過去 12ヵ月に亘って PIF は,再生エネ, ユーティリティ および エネルギーの効率的サービスを行う企業に投資してきた。
     PIF は,大規模で多様な長期資産プールの運用に気候変動を統合することを勧告する枠組みを今年7月に公表した "かけがえの無い地球 ソブリン基金作業グループ" の一員でもある。
    サウジ国営通信の記事にしては 長い。Vision Fund の時よりも長い。
     それだけ 熱が籠っている。
    ──────
    ほ~~。ロイターの記事には無かったが,これは拘束力を持つ契約である。
     対して SoftBank と交わした2本の契約は,
     (1) 孫社長が今年3月契約したサウジの 200 GW ソーラープロジェクト (総額 $2,000 億)
     (2) SoftBank Vision Fund への PIF の $450 億出資
     は,どちらも非拘束と明記されていた (自由に破ってよい)。
     拘束と非拘束の差は,天地の差である。

  12. Saudi king's brother 'considers exile' after Yemen war criticism
    サウジ国王の弟が,イエメン戦争を批判した後で "亡命を検討する"
    Aljazeera,2018/09/09
    Ahmed bin Abdulaziz 王子は,Salman 国王と MbS 皇太子がイエメンの戦争に責任があると言った。
    政府批判が厳しく罰せられる王国では, 公然たる不同意の意思表示は稀である。
    Saudi Press Agency | AP File)
    Middle East Eye (MEE, 中東の眼) の報道によれば,サウジアラビアの王子は,イエメン内戦への介入について Salman 王と Mohammed bin Salman 皇太子を非難した後,亡命を検討している。
     英国に拠点を置くウェブサイトは金曜日,Ahmed bin Abdulaziz 王子に近い匿名の情報筋を引用して,サウジ国王の弟が自分のコメントの動画が先週オンライン投稿されたことを受けて,サウジアラビアに戻らないだろうと言った。
     その動画で,王国の創立者の残り少ない息子の1人である Ahmed 王子は,彼のロンドンでの住居の外に集まっていた反戦抗議運動家たちに,イエメン介入戦争の責任をサウジ王族全部に負わせるべきではない … と言った。
     "責任を負うべき特定の人たちがいる。王族全部を非難してはならない。" … と王子は言った。
     特定の人とは誰かと問われると,王子は "それは 国王とその法定相続人だ。" … と言った。
     "イエメンでもそれ以外のところでも,我々の願いは,明日よりも今日 戦争が終わることだ。" … と彼は続けた。
     この動画は オンラインで広く回覧され,サウジ王族内に不和があるのではないかとの猛烈なスペキュレーションに火を点けた。
     この動画が公表されるや サウジの公式報道機関 SPA (Saudi Press Agency) は直ちに これを Ahmed 王子によるものと特定し,王子の発言の解釈が "不正確" であると言った。
     SPA の声明で 王子は "国王と皇太子が サウジアラビアとその決定に責任を持つことを私は明言した。" … と言っている。
     "これは,国と国民の安定と安全保障にとって正しい。したがって,私が言ったことをそれ以外の如何なる意味に解釈することも不可能である。"
     しかし MEE は,Ahmed 王子が 最初の発言を変えていないと情報筋が主張する … と言う。
     "彼は,国営の SPA による報道がニセ・ニュースであり,SPA が引用した言葉は 王子の言葉ではないと言う。" … と MEE は伝えた。
     逮捕の余波
     サウジ独裁を批判する者は長期の投獄判決,むち打ち刑,重い罰金を科せられる王国にあっては,公然たる不同意の意思表示は稀である。
     2017 年12月,Mohammed bin Salaman が立ち上げた "反腐敗追放" の最中,何十人もの王族,閣僚,トップ実業家が逮捕された。拘束された者に対する容疑としては,マネーロンダリング,収賄,強請が含まれていた。
     王の勅令によるこの取り締まりは,"自分の利益を公共の利益に優先する心弱い者たちが不法に財を成そうとするための搾取" に対応したものと説明された。
     逮捕者の大部分は,サウジの実業家で大富豪の Alwaleed bin Talal 王子を含めて,政府との和議により解放された。
     この逮捕は,皇太子がサウジアラビアの政治と経済の権力を握るための手段であった … とアナリストらは言う
     Ahmed 王子は,2012 年に前の Abdullah 国王の下で内相を務めたが,その後 Mohammed bin Nayef 王子が就任した。

  13. イエメン内戦泥沼化 サウジ王族 不協和音
    東京新聞,2018/09/09
    奥田哲平 (カイロ)
    国王の弟:『国王と皇太子に責任がある』
     サウジアラビアの Salman 国王の実弟,Ahmed 元内相のイエメン内戦を巡る発言が波紋を呼んでいる。サウジが軍事介入して泥沼化する内戦について "責任のある特定の人たちがいる。国王と継承者 (皇太子) だ" … と述べた。サウジ王族内での不満の一端が明らかになるのは極めて異例だ。
     9月3日 ツイッターに投稿された映像では,Ahmed 王子が ロンドンで軍事介入に抗議する反対派から "サウド家を引き摺り降ろせ" と批判を浴びせられると,集団に近寄って "王族全体が非難されなければならないのか? 私たちの願いは,戦争が明日よりも 今日終わることだ" … と反論した。
     Salman 国王と,後継が確実視される Mhammad 皇太子の責任を追及するかのような発言は,即座にインターネット上で拡散した。Ahmed 王子は9月4日,声明で "単に国王と皇太子が国家の出来事に責任があると説明しただけだ" と釈明した。Ahmed 王子は,初代国王 Abdulaziz の息子の中でも有力な「Sudairi 7兄弟」の1人である。
     Mhammad 皇太子が主導した軍事介入は,深刻な人道危機を招いているとして国際社会の批判を招き,戦費負担が国家財政を圧迫するとの指摘がある。皇太子は,女性の自動車運転解禁などの社会経済改革を進める一方で,イスラム教スンニ派の宗教指導者を相次ぎ拘束した。汚職撲滅を名目に多数の王族も摘発するなど,強権統治に保守層の不満が燻ぶっているとされる。
    危険な皇太子と組んでいる 社長と会社も,危険な状況になりつつあると思われる。

  14. Opinion:Can Saudi Arabia diversify its economy without an Aramco IPO?
    オピニオン // サウジアラビアは,アラムコ IPO 無しに経済を多様化できるか?
      Aljazeera,2018/09/04
      By Adeel Malid
    サウジアラビアの多様化の努力は,アラムコを上場してもしなくても 難問だろう。
    サウジアラムコが計画した IPO は, 8月末にスクラップされた。
    Reuters | Ahmed Jadallah)
    サウジアラビアの存在を脅かす難問は,石油への過度の依存から経済を引き離す必要以外にはほとんど無い。 サウジは,対外 および 国内の両面で2つの必然性に直面する:石油市場の大きなブレとそれが国家予算に及ぼす影響; ならびに 増え続ける教育を受けた労働力である (サウジは,人口の 50% 以上が 25 歳以下である)。
     サウジアラビアは伝統的に 給料, 助成金 および 福祉を通じて国民に収益を分配することにより,社会の平和をカネで買ってきた。ところが この社会協定は,石油収入が不安定になり,約束する支出が膨らむ中で,次第に危うくなってきた。
     サウジアラビアの Vision 2030 が,脱石油の未来に向けた転換の動きの旗印となる 改革派の意向として称揚されたのは,この文脈においてである。この戦略の要となる礎石は,サウジアラムコの約 5% の株式を世界の市場に上場することによる部分的民営化であった。だが サウジ国王が最近 アラムコの国際上場を中止すると,オブザーバーは,多様化の運命に疑問を投げ掛け始めた。
     Vision 2030 の柱石が倒れた後,多様化の望みは未だあるのだろうか? さらに,Mohammed bin Salman 皇太子の壮大なビジョンは 未だ信用できるものとして残っているのか?
     アラムコ IPO なしの多様化
     簡単な答は,サウジアラビアの多様化の見込みを書き上げるには 未だ早過ぎるということだ。また,アラムコの部分的民営化があってもなくても,多様化は難問だろう。
     まず第1に,国際証券市場でのアラムコの上場は中止されたけれども,国営石油会社アラムコは,国営石油化学巨人 Sabic の戦略的権益の取得を通じて,債券発行を計画している。
     サウジアラビアの現在の慎ましい債務水準からすれば,資本市場からカネを調達するのにほとんど困難は無いはずである。唯一の違いは,株式よりも債券の方が 回り道の資金調達だということである。
     第2に,アラムコが上場できたとしても,サウジアラビアの多様化問題をそれだけで解決することにはならない。Vision 2030 の目玉として,最初の発表の時には大宣伝されたが,アラムコの上場は資産管理戦略の1つとして利用されたに過ぎない。
     なるほど 役に立つスタートであった。だがしかし,多様化は 中東の石油輸出国の文脈では重大 かつ 入り組んだ開発の難問である。その場凌ぎや 間に合わせ措置は,一時的な気休めになるだけであり,経済の構造改革の代替たりえない。
     経済を多様化するために サウジアラビアは,経済と政治の根本的な不可分性を認識する 総合的な開発ビジョンを必要とする。
     外国の著名なコンサルタントが考案した技術的青写真から 多様化が実現することは無かろう。非常に長い間, サウジは政治への効果を帳消しにするようなやり方で経済改革を試みてきた。ところが 厄介なことに,サウジの経済構造の真のシフトは 政治に影響を及ぼす。
     たとえば,石油に依らない経済を発展するには,体制が 真に独立な民間セクターを受け入れる必要がある。このようなセクターは,政治の外に経済力を持つ新しいポケットを生み出す。
     中東の専制体制が 政治的実行力をふるう巨大な経済組織に疑念を示すのは,まさにこれが理由である。
     言い換えると 体制は,忠実に従属する民間セクターだけを許容する。企業の側が生き残るため (または 繁栄するため) 受け入れる標準的な作戦は,体制のインサイダーと直接に組むか あるいは ブローカーやフィクサーを通じて間接的に組むことである。
     何かの企業が成功するや,または 成長の可能性を示せば,体制の表看板から "売却 または 提携" を迫られる。かくて企業は 2通りの選択を迫られる:提携か 死か。
     このシナリオで,企業はレーダーの監視下で営業し,直接対決を避ける。王族とのコネが会社にとって最も価値ある資産となる場合には,小さな若い企業が 市場で成功する見込みは低い。
     民間セクターの成長の問題
     サウジの民間セクターが,有力な王族の隠れ蓑に過ぎない既成の大手プレイヤーや企業により支配されていることは驚きではない。しかも 不透明な調達と免許手続きを通して国との接触から利益を得るのは,通常 これらの大きな つながったコングロマリットである。
     中東最大の建設業を持つサウジアラビアは,このセクターの体系的改革を通じて その経済的可能性を伸ばすことができるが,それには 入札手続きを真に競争的なものにする必要がある。
     コネでつながる企業は,民間企業が必ず必要とするもの ── 土地と信用 ── にアクセスする特権を持つ。小企業が 土地を ── 特に 強力な王族が値上がりを期待して寝かせている 郊外の空間で ── 手に入れることは 非常に難しい。
     最近まで,王族による土地の恣意的な没収は 当たり前のことだった。この土地は 時には 公共プロジェクトのために政府に売り戻され,内部関係者に結構な収益をもたらした。
     公共の土地の登記は 進んでおらず,悪評が高い。しかも,銀行の信用では,中小企業は不利である;銀行の貸し付けの僅か 2% を占めるに過ぎない。
     土地を所有できないことは,銀行ローンを受ける際に必要が担保が無いことを意味する。
     市場への参入と生き残りが難しいだけでなく,中小企業にとっては,市場からの退場も難しい;サウジアラビアでは,破産を決着するのが極めて難しいからである。この点だけでも サウジアラビアは,2018 年 "事業をやりやすい国" で 189 ヵ国中 168 位である。
     このような構造的障害があっては,多様化は夢物語に留まる。
     経済を多様化する政治
     多様化のためには,サウジ政府は 過激な 親-競争的改革を導入し,土地市場を透明化し,コネでつながったプレイヤーと企業の砦から 市場を解放するする必要がある。ところが,そのような改革は 重大な政治的結果を生むだろう;なぜなら エリート王族とその影響力の強い提携相手を維持している収益を減らす/断つことになるからだ。
     ここで 私が指摘しておきたい重要な点は,真の オープンドア経済は,勝者と敗者の両方を生むということだ。 この文脈では,多様化は 勝者だけを生むのではない;改革により損をする敗者も生むことを要求する。  Extrapolating this to Saudi Arabia, could one imagine a bargain that keeps ruling clans out of business in exchange for higher royal stipends or in-kind rewards?
     To do so, however, would require an active recognition of the political fallout of economic reform and the creation of new bargaining structures that could balance the interests of reformers and spoilers, and nudge the growth trajectory towards a higher equilibrium.
     Had the political fallout of an Aramco listing been worked out before and the buy-in from relevant actors secured in advance, the devastating blow to the credibility of Vision 2030 could have been avoided.
     つまるところ,明らかにアラムコの評価は当初から 途方もなく過大であったし,国際上場がアラムコの帳簿の透明な開示を要求することも ── 国内の政治的な抵抗に遭うことも自明であった。最終的には,IPO 提案の背後にある経済の判断基準に政治が打ち勝った。
     サウジの政策立案者は 今後,見た目は華やかな ビッグ・バン的手法に頼るのではなく,地に足の着いた積み上げ戦略を経済改革に採用することが求められる。
     本稿に表明した見解は 著者自身によるものであり,アルジャジーラの編集スタンスを必ずしも反映するものではない。
    ──────
    The writer is Globe fellow in the economies of Muslim Societies at the University of Oxford.
     著者 Adeel Malik は,オクスフォード大学でイスラム社会の経済を研究する GLOBE プログラム研究員である。

  15. Bruised bankers seek consolation prizes after shelved Aramco IPO
    アラムコ IPO の棚上げにより傷ついた銀行家らは,補償を求める
    Reuters,2018/08/31 @07:17 pm ET
    By Saeed Azhar, Hadeel Al Sayegh & Clara Denina (ドバイ, ロンドン)
    棚上げされた石油の巨人アラムコの上場作業に対して見込んでいた巨額の支払いを失った投資銀行は, サウジアラビアが改革を追求する中,他の大量のプロジェクトの確保に努める。
     JPMorgan と Morgan Stanley を含む銀行は,世界最大の証券市場デビューに何ヵ月も準備を重ねてきた。ところが アラムコの 5% を 目標 $1,000 億で売り出す計画は中止された。
     銀行家らは定額顧問料 (retainer fee) の支払いを受けてきたが,上場後には 約 $2億 [の成功報酬?] が関与したすべての銀行の間に分配されるものと期待していた。
     今や 彼らは,石油依存を弱めんとするサウジの経済改革の一環である民営化プログラムによる他のプロジェクトに期待をつなぐ。アラムコ売り出しによる資金が無くなったので,政府は 他の手段によりカネを集めようとしている;これにより銀行にとって新たなチャンスが生まれる … と銀行家らは言う。
     IPO の作業を行なっていた JPMorgan と Morgan Stanley のチームは,石油化学会社 Sabic (サウジ基礎産業公社) を 最大 $700 億で買収するアラムコの計画への助言にシフトした … と この取り引きの詳細に詳しい3人がロイターに語った。
     同じく アラムコ IPO の顧問だった HSBC は,この買収のための資金手当てとして債券発行を受け持つらしいと彼らは言う。
     情報筋の1人は,発行額が 従来の記録である 2016 年のソブリン債発行 $175 億を超えるのではないかと言う。アラムコは今月初め,Sabic の権益の買収で PIF と "非常に初期の交渉" を行なっているが,その資金手当てをどうするかについては何も言わなかった。
     JPMorgan,Morgan Stanley および HSBC の広報担当者は,Sabic 買収での役割についてコメントを拒んだ。 どの銀行も,アラムコ上場に関与していることを認めなかった。
     他の取り引きが近いとの期待
     "ソブリン基金 PIF は,アラムコ上場から $1,000 億を入手できないことが判明して,過去3ヵ月 予算の再検討を迫られた。" … とサウジアラビアの或る銀行家が言う。
     "そこで 他の方法でカネを調達しようと,慌ただしい活動がなされた。しかし,これらの多くは,ここからいくら あそこから いくら … という $10 億程度の少額の取り引きであり,大きなインフラ計画を予定から遅らせないようにするための資金にすべて向けられた。"
     この銀行家は,他の取り引きの詳細に触れなかった。PIF の関係者は,ロイターのコメント要請に応じなかった。
     アラムコ上場が棚上げされたと先週ロイターが報道すると,Khalid al-Falih エネルギー相は,政府は将来の特定されない期日に IPO の実施を公約していると述べた。
     警戒する銀行家
     とは言え 銀行家は,アラムコでの経験から警戒を怠らない。アラムコは,(反対運動も 野党の存在も禁止される) 絶対君主が支配する国で事業を行なうハードルの高さを浮き彫りにする。さらに不確定性を増すのは,数十人の王族トップ,閣僚,実業家が 昨年11月に反腐敗キャンペーンにより逮捕されたことである。
     上場準備は 2年前に Mohammed bin Salman 皇太子が立ち上げた。一部の銀行家は,Dhahran のキャンプでの作業のために 王国に数百回 飛んできた。
     別の情報筋は,アラムコは トップ中のトップの銀行家だけしか相手にしないと要求した … と語る。
     アラムコ上場に詳しい さらに別の1人は, 18ヵ月の間に Dhahran へ 20 回 自分は飛んで行ったが何の成果も無かったと言う。彼は,"自分のチームが 毎度 同じプレゼンテーションをして,フィードバックがほとんど無かった。" … と言う。
     どの銀行家も,支払われる手数料は,ほかの国に比べれば慎ましいものだったと言う。
     "取り引きの流れは巨大だが,これらのプロジェクトから得られる手数料は低い懸念がある。" … と湾岸に拠点を置く 或る銀行家は匿名を条件に語った。
     "手数料に関して言えば,サウジアラビアは 香港やドバイより低い。" … と彼は言う。"標準以下である。"
     先進国での IPO により銀行が受け取る手数料は 全取引額の 1% 程度であるが,銀行家とアナリストは アラムコ上場について 0.2% を予想する。
     トムソンロイターのデータによれば,中国インターネット巨人 アリババの $218 億上場の作業に 主要な引き受け業者 6社の下に参加した 35 の銀行は $3 億を山分けした。
     "山を成す取り引き"
     それでも,民営化から予想される報酬を アナリストは 2020 年までに $90億 ~ $110 億と見込んでおり,銀行家が到底無視することはできない巨額である。
     今年3月の開示によれば,HSBC は 既に Sipchem (サウジ国際石油会社) の顧問をしているが,これは Morgan Stanley が顧問を務める サハラ石油化学会社との合併を狙ったものである。
     アメリカの銀行 Citigroup は,昨年 13 年ぶりにサウジアラビアで 資本市場ビジネスを行なう免許を取得した。
     アメリカの銀行 Moelis は サウジアラビアでの顧問免許を申請準備中であり,アメリカの投資銀行 Evercore は,2017 年にドバイにオフィスを開設した。
     サウジ政府は 従来の債券金融からの拡大を認める法改正を行ない,取り引きを容易にしようとしている。
     "大手の参加者から 市場の再編とバイアウトを見据えて 山のような取り引きがなされようとしている。" … と EFG Hermes Investment Banking のドバイ部門の共同トップ Mohammed Fahmi が言う。
     "良い話には続きがあるものだ。"
    ──────
      Additional reporting by Dasha Afanasieva in London and Katie Paul in Dubai; editing by John O'Donnell and Anna Willard

  16. サウジアラビアは,なぜアラムコの IPO を中止したのか;活発化する反皇太子派の動き,国内で未曽有の混乱も?
    JB Press,2018/08/31
    藤 和彦
    サウジアラムコの IPO 中止を契機に,Mhammad 皇太子の改革を頓挫させようとする宗教過激派や反皇太子勢力が巻き返しを図ろうとすれば,サウジアラビア国内で未曾有の混乱が生ずるかもしれない。
     8月中旬に1バレル=64ドル台に下落した WTI 原油先物価格は,その後 60ドル台後半にまで回復している。
     現在の原油価格の動向を決定する要因が
      (1) イランをはじめとする主要産油国の原油生産量,
      (2) 米中貿易摩擦の激化が原油需要にもたらす影響,
     という2つである構図に変化はない。
     ペースが落ちてきた協調減産
     (1) の "イランをはじめとする主要産油国の原油生産量" から見ていこう。
     まずイランの動向だが, 8月前半の原油輸出量は,日量 232万バレルから 168万バレルに減少したようだ (8月22日付 OilPrice.com による)。イラン産原油輸入国第2位のインドでの減少などがその要因である。
     ただし,イラン国営石油会社はインドの石油会社に対し 9月積み原油価格について大幅なディスカウントを提示しているとされており, 9月以降のインドのイラン産原油の輸入量が回復する可能性がある。また,輸入第1位の中国もイラン産原油の輸入継続を目指し,輸送を自国の船舶からイラン国営タンカー会社の所有するタンカーに切り替える (8月20日付ロイター) など,イラン産原油の輸入継続に向けた準備を進めている。
     次にベネズエラの動向だが, 8月20日,ベネズエラ石油公社 PDVSA が米石油大手 ConocoPhillips に $20億 分の補償を支払うことに同意したことから,同国の原油生産量が著しく減少する懸念が低下した。
     余談になるが, 7月末のインフレ率が年率 80,000% を超えていたベネズエラで 8月21日,急激なインフレを抑えるために通貨単位を10万分の1に切り下げるデノミネーションが実施された。ベネズエラ政府は,原油価格に連動する仮想通貨 "Petro" とのペッグ制を導入することで,デノミ後の通貨の価値を安定させようとしている。その試みは,ドイツの臨時通貨 Lentenmark を参考にしていると考えられる。ドイツは第1次大戦後に通貨単位を 1兆分の1に切り下げるとともに,地代請求権を本位とする (土地を裏付けとする) Lentenmark を発行することにより,ハイパーインフレを鎮静化させた。だが,ベネズエラの "最低賃金を 3000% 超引き上げる" といった政策は,通貨供給量をむしろ拡大させる可能性がある。Lentenmark の成功のもう1つの要因が通貨供給量を大幅に制限したことに鑑みれば,Nicolás Maduro 政権の企みは "画龍点睛を欠く" ことになるだろう。
     話を原油供給量に戻すと,主要産油国による共同閣僚監視委員会は 8月27日,"7月の減産遵守率が 109%に低下した" ことを明らかにした (5月の遵守率は 147% だった)。協調減産の適用除外のリビアの原油生産量も日量 60万バレル台から100万バレルを超えるにまで回復している。
     さらにイラクが原油輸出量を拡大する姿勢を鮮明にしていることなどから,"年末に向けて世界の原油供給量が増加する" との見方が出ている (8月29日付ロイター報道)。
     米国でも原油在庫が増加する可能性が高い。米国の原油生産量は,パーミアン地区の産油量の輸送力が不足し始めていることなどが影響して,このところ日量 1100万バレルで頭打ちとなっているが,Trump 政権は 8月20日,"戦略石油備蓄 (SPR,6.6億バレルの原油を貯蔵) を10月1日から11月30日にかけて合計1100万バレル分を放出する" 計画を発表した。放出の規模は日量ベースで約 20万バレル,イランからの原油輸出量が 100万バレル減少するとすれば,その2割が穴埋めできることになる。米国の原油需要は8月をピークに10月にかけて減少することが通例だが,原油在庫の増加圧力が高まる時期に SPRが放出されれば,原油価格の下落圧力が高まる可能性が高い。
     中国経済の動向次第で $50 割れも?
     続いて (2) "米中貿易摩擦の激化が原油需要にもたらす影響" はどうか?
     心配されるのは,中国の今後の原油需要である。
     8月23日,米中両国は互いに 160億ドル相当の輸入品に対する追加関税を発動した。8月22~23日に開催された事務レベルの通商協議は何らの進展も無く終了した。Trump 大統領が事前に "中国との貿易戦争は無期限であり,事務レベルの協議には何の成果も期待していない" と述べていた通りであった。
     Trump 政権の側近は 対中強硬派で固められており, 9月にさらに $2,000 億相当の中国製品に関税を課す方針を発表済みである。
     貿易摩擦の悪影響が懸念され始めている中国では,キャッシュレス化が急速に進展しているが,このところ "ネット金融" の破綻が相次いでいる。個人間で資金を融通する "P2P 融資" サイトに投資して損失を被った人々が,中国全土で怒りの声を上げるなど大問題に発展している (8月15日付ロイター報道)。
     この問題を4年前に指摘していた中国の経済学者が8月22日,"米中貿易戦争を今後2ヵ月以内に解決しなければ,中国経済は崩壊モードに突入する" との警告を発した。
     2000年に世界の原油需要の6%のシェアに過ぎなかった中国は,現在 13%を超える規模となっている。中国の原油輸入量は既に減少傾向にあるが,経済自体が急減速モードに入れば,世界の原油価格に与えるインパクトは計り知れないものになる。
     2014年後半以降の原油価格は,世界の原油需給が緩んだことから1バレル=50ドルを下回り,その後の協調減産などで需給調整を行なったことで 70ドルを超えた。この傾向が正しいとすれば,足元の需給は緩みつつあるので,原油価格は9月中に1バレル=60ドル台前半に下落し,その後の中国経済の動向次第では 50ドル割れになる可能性がある。
     「巨額の財源」を失ったサウジアラビア
     7月中旬から始まった下落傾向を反転させる要因は,新たな地政学リスクの発生しか考えられないが,サウジアラビアの雲行きがますます怪しくなってきている。
     8月22日付ロイターは, 「サウジアラムコの新規株式公開 (IPO) の計画中止が決定された」とのスクープ記事を報じた。関係筋によると,サウジアラムコは石油化学大手サウジアラビア基礎産業公社 (SABIC) の過半数株式の取得を目指しており,これに注力するため,IPO に向け準備を進めていた財務顧問チームは6月下旬に解散されたという。
     サウジアラムコの IPO は,次期国王と目される Mhammad 皇太子が掲げる経済改革 "Vision 2030" を支える重要な資金調達源である。上場に伴う株式売却で得ようとしていた $1,000 億は,サウジアラビアの国家予算の約4割に相当する。この資金を元手に,政府系基金の PIF が IT や再生可能エネルギーなど新産業を育成する戦略だった。
     しかし,サウジアラムコの IPO については, 2兆ドルという企業価値の現実性に疑問が出ていた。さらに "IPOの実施によりかつてない厳しい監査が入る" との懸念からサウジアラムコ側が難色を示したことから,Mhammad 皇太子も 2018年春の海外メディアのインタビューで "2018年末か 2019年初めとなる" と延期を示唆していた。
     サウジアラムコの IPO 中止により,PIF は想定していた資金が調達できなくなったため,外国銀行からの融資を受けることになりそうだ (8月23日付 FT 報道)。巨額の財源を失ったサウジアラビアの行方を市場は注視し始めている。
     2014年以降に発生した財政赤字を国債の発行で凌いできたサウジアラビアは,石油依存の経済構造を変える戦略の一環として国内の株式市場の活性化に努めてきた。だが,トルコの問題が深刻化した8月中旬から資金の逆流現象が生じている (8月25日付日本経済新聞)。生活物資の大半を輸入に頼るサウジアラビアは,自国通貨リヤルをドルにペッグしているが,2015~2016年にかけて投機マネーがドル・ペッグ制に攻撃を仕掛けた経緯がある。米国が金融引き締めに向かう中,投機マネーが財弱な国や企業を狙い撃ちをしている状況下では,トルコの不安がサウジアラビアに伝染しないという保証は無い。
     懸念されるサウジの未曾有の混乱
     ロイターはさらに8月27日, 「サウジアラムコの IPO が中止された背景には,サルマン国王の反対があった」とする驚くべき記事を配信した。
     関係者によれば, 6月半ばまでのラマダン (断食月) の期間中,"IPOによってサウジアラムコの詳細な財務情報がすべて公開される" ことを懸念する王族,銀行関係者,サウジアラムコの元トップなどが国王と会談し,サウジアラムコの IPO の中止を決定したという。"「ノー」と言えば絶対に決定が覆ることがない国王の決定' が,6月下旬に行政機関に書簡として送付されたと複数の関係者は証言している。
     だが,サウジアラムコの President であり,Mhammad 皇太子の腹心とされるファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は8月23日,"政府は今もサウジアラムコの IPO に取り組んでおり,いつが条件として最善であるかを検討している段階にある" と述べた [サウジ国営通信 2018/08/23]。サウジアラムコの IPO に向けた更なる措置 (同社の石油/ガス採掘権をこれまでの無期限から40年に制限) も発表した。国王の決断を無視するかのような振る舞いはサウジアラビアではあり得ないが,Mhammad 皇太子にとって,改革に不可欠な資金源の確保 ── サウジアラムコの IPO ── は譲れない一線である。改革を進めるにあたって国内で軋轢が生じることは承知の上だろう。
     Mhammad 皇太子に対しては,改革により特権を剥奪された王族や既得権を失った財閥などから不満が燻ぶる。特に2017年11月に王室内の有力者や国内の大富豪らを横領などの疑いで一斉拘束したことは,大きな反感を買った。
     ロイターの一連の報道からは,反皇太子派の動きが垣間見える。つまり,既得権益層にとって何より貴重な資金源であるサウジアラムコの財務まで公開されたら "一巻の終わり" という恐怖から,元々保守的な考えを有する国王を取りこみ,IPO の中止を決定させた。だが,それに従わない Mhammad 皇太子側の動きに業を煮やしてメディアにこの決定をリークしたということだろう。
     サウジアラビアでは各地で銃撃や衝突が発生している。8月16日,内務省は "治安部隊が首都リヤド近郊で IS の戦闘員を制圧した" と伝えたという。
     若者たちは改革を支持しているとされるが,痛みばかりで改革の果実を享受できなければ反旗を翻すのは時間の問題である。「サウジアラムコの IPO 中止」報道を契機に Mhammad 皇太子の改革を頓挫させようとする宗教過激派や反皇太子勢力が巻き返しを図ろうとすれば,サウジアラビア国内で未曾有の混乱が生ずるかもしれない。

  17. サウジアラムコ 米同時テロの影,誤算に;上場断念,遺族の賠償請求リスク拭えず
    日本経済新聞 朝刊,2018/08/31
    岐部秀光 (ドバイ)
    サウジアラビアが "脱石油" の国家改革の目玉と考えていた国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開 (IPO) が事実上断念に追い込まれた。世界の民営化史上で最も大きい案件とされ,ニューヨークやロンドン,香港,東京などの取引所が激しい誘致競争を繰り広げていたはずだった。上場を主導した実力者 Mhammad 皇太子の誤算はどこにあったのか?
     皇太子はアラムコの市場価値を 2兆ドルと訴えてきたが,市場ではこれを "過大評価" と見る向きが増えた。原油価格がピークから大きく下がったことや,アラムコの情報開示の不足などが背景だが,もっと大きな理由がある。
     今年春,皇太子として初の外遊で英米を訪れた Mhammad 王子は,各地で有力政治家や企業経営者や投資家から "改革の旗手" として熱烈な歓迎を受けた。だが,ホスト国政府や企業が用意した巨大な歓迎のサインボードによって皇太子の視界から巧みに隠されたものがあった。市民や活動家による激しい反サウジのデモだ。
     実行犯の出身国
     Trump 大統領とサウジ王室の親密な関係を見れば,両国の蜜月は疑いようが無い。だが,そこには,Obama 政権時代に成立した "テロ支援者制裁法 [通称 サウジ法]" が棘のように突き刺さっている。
     この法律は,2001年のアメリカでの 9.11 同時テロを巡って,遺族がサウジ政府への損害賠償を請求できる道を開いた。テロの実行犯 19人のうち 15人がサウジ人だった。遺族は,サウジ政府が関与した慈善団体の寄付が国際テロ組織アルカイダの資金となったと考えている。
      テロで死亡した 850人の遺族と 1500人以上の負傷者が手続きを着手したサウジへの請求額は 1,000億ドルに達するとの報道もある。弁護団は,IPO でアメリカに上陸するアラムコ株を,恰好の標的と待ち構えていた。
     強引に株を公開すれば,訴訟リスクによって上場価格が割り引かれるのは確実だ。5% の部分上場では,これが企業価値全体に響く。
     リスクを回避するため,アメリカ抜きで IPO 計画を進める手もあった。だが,"世界最大のニューヨーク抜きで,これほどの巨大な IPO を進めることは難しい" … と,助言役の金融機関はサウジ側に伝えていた。
     アメリカ国内では,イエメン内戦をめぐる対サウジ不信も膨らむ。イスラム教シーア派武装勢力 "フーシ" との戦いでは,サウジの航空機による誤爆で民間人の犠牲が広がり,深刻な人道危機を招いている。米国や英国の議会には,サウジへの武器供与への反対論が根強い。
     強硬姿勢に懸念
     サウジは今後,IPO ではなく銀行からの借り入れによって資金を調達し,改革路線を進めていくと見られる。Trump 政権との親密な関係がいつまでも続く保証はない。長い道のりの改革を成功させるには,内外投資家の信頼回復が重要であることは変わらない。
     カタールへの一方的な断交など,皇太子の強硬な外交姿勢には懸念が広がる。政敵や人権活動家の拘束は,サウジの言論社会をいっそう窮屈にした。石油に頼らない経済を実現し,穏健で開かれたイスラム国家にしようとする皇太子の改革が失敗すれば,損害は世界に広がる。
     昨年,首都リヤドの国際会議に招かれた Lawrence Summers 元財務長官は,改革について いくつか助言を伝えていた。第1は自身の強みを伸ばすこと。弱点を補うより得意分野を強化するよう促した。第2は後発の利を生かすこと。19世紀終わりのドイツの発展が参考になると述べた。
     皇太子はこれを聴き入れ,アラムコの石油化学事業進出の加速を指示するとともに,人工知能や自動運転,再生可能エネルギーの導入に国民が唖然とするほどの勢いで突き進んだ。重要なのは第3の助言だ。Summers は,トップダウンでなく,広く市民や国際社会の声に耳を傾けた包括的な改革が重要だと訴えた。
      だが,未来都市 Neom の建設など自身が進める巨大事業に比べ,国民の政治参加や言論の自由拡大に皇太子が熱心なようには見えない。
    アラムコ上場をやめても,集団訴訟は起こる。サウジがアメリカに持つ資産 ($7,500 億 + SVF の $450 億) が狙われることに違いは無い。
     しかし,予想される $1,000 億 (11 兆円) という賠償金額もさることながら,原告が 数千人にのぼることから,裁判が非常に長引くことが予想される。これによる影響は大きいだろう。

  18. サウジアラムコ上場中止に見る王国の「焦り」,ソフトバンクもサウジ投資には慎重になる?
    東洋経済 Online,2018/08/31 @06:00
    内田 通夫 (フリージャーナリスト)
    世界最大の産油国サウジアラビアを主導する Mhammad 皇太子。その Mhammad 皇太子が,建国以来のイスラム教ワッハーブ派原理主義と離れたサウジアラビアの外交,政治/経済改革・開放路線を推進している。この6月には,それまで禁じられてきた女性の運転が解禁されたばかりだ。
    サウジアラビアの Mhammad 皇太子の改革は行き詰まっている (©Reuters)
    ところが, Mhammad 皇太子が進める改革・開放路線を象徴し,Goldman Sachs が書いたとされる「Vision 2030」の本気度が疑われるようなスクープが飛び込んできた。8月22日,ロイターが世界に配信した「国営石油会社サウジアラムコの IPO が中止になった」という報道だ。
     中東調査会の中東瓦版 (8月23日付) のまとめによると,記事は以下のように掲載された。
     IPO のための金融顧問団が解雇されたとの情報
     2018年8月22日付ロイターは,高位の産業筋の話を基にサウジがアラムコの新規株式公開 (IPO) を取りやめたとの特ダネを報じた。報道の要旨は以下の通り。   
     (1) サウジアラビアは,アラムコの国内・海外での IPO を両方とも取りやめた。サウジ政府の関心は "サウジ基礎産業公社 (SABIK [→ Sabic] )" の株式を "戦略的割合" で取得することへと移っており,アラムコ IPO のための金融顧問らは解雇された。
     (2) 消息筋は,IPO の取りやめは以前に決定されていたが,それについて公表することが許されておらず,IPO の延期,そして取りやめ … と小出しに情報を流していたと述べた。
     (3) アラムコは, 6月末まで IPO に備える金融顧問団のための予算を組んでいたが,消息筋によるとこの予算は更新されておらず,顧問団の活動停止が決められた。
     2016年頃からサウジアラビア政府は世界中で説明会を開催し,改革・開放の目玉として,アラムコの IPO をプレゼンテーションしてきた。これは日本でも開かれた。アラムコは世界最大の国有石油会社であり,石油の上流 (開発・生産) から下流 (石油の精製・販売) まで手がける一貫企業である。もともとはアメリカが創設した会社であるが,1980年に完全国有化されたという経緯がある。
     この華々しいプレゼンテーションを目にしたアナリストたちのコンセンサスは,次のような期待に膨らんだものだった。
     (1) サウジは一時,1バレル=40ドル割れになった原油価格下落により,財政難に陥った。この打開策として海外株式市場 (ニューヨーク,ロンドン,シンガポール,あるいは 東京も) での IPO を目指した。
     (2) アラムコの上場によって,決算報告は透明性を高めることになり,同社にたかっていたサウジ王族の利権が縮小される。これにより Mhammad 皇太子の権力基盤が高まり,サルマン国王の "次の座" が確実なものになる。
     (3) アラムコの IPO を受けて,巨額の上場益がサウジアラビアに入り,その上場益を原資に何兆円という政府系ファンドが形成される。日本では,ソフトバンクがサウジアラビアと組み,10兆円規模のファンドが予想されることが報道された。
     今回のロイターのスクープが本当ならば, Mhammad 皇太子が掲げる "Vision 2030" への期待が萎むことになろう。一方でサウジアラビア政府関係者は,この報道を否定している。いずれにせよ,アラムコの IPO の実現性は,かなり低下したと言わざるを得ない。
     まともな財務諸表を作れるのか危ぶむ声も
     なぜアラムコの IPO が今になって中止になるのか。理由を筆者なりに推測してみたい。
     まず,2016年頃に比べて,原油価格は大きく上昇しており,サウジアラビアの危機感が弱まっている。
     また,たび重なる王族の粛清で Mhammad 皇太子の権力基盤が強化され,次期国王が確実視されていることもある。2017年に実施された王族の汚職追放によって権威と財産を奪い, Mhammad 皇太子のライバルになりそうな王族の力を削いだ。これ以上,王族をサウジアラムコ IPO による利権剥奪で追い詰めると,却って Mhammad 皇太子の失脚や暗殺など "窮鼠猫を噛む" 異常事態を招きかねない。
     さらにはサウジアラビアが安全保障を依存するアメリカが,トランプ大統領になってからの180度の政策転換によって,オバマ前大統領時代の冷え切った関係から,旧来の緊密な関係を取り戻したことも大きい。とりわけアメリカがイラン制裁を再開したことは,サウジアラビアにとって大きな安心材料だ。
     つまりは,"Vision 2030" を公表した頃とは環境が変わったということである。
     実は,アラムコの IPO については,かねてから実現を危ぶむ意見が強かった。アラムコの資産や負債,自己資本などについて,ニューヨークやロンドン,シンガポール,東京などの株式市場で通用するまともな財務諸表を作れるかどうか,疑問視する声があった。このため,アラムコの IPO がリヤド (サウジアラビア首都) 限定になる,という観測も流れた。
     もしも,今回のアラムコ IPO 中止が事実とすれば, Mhammad 皇太子が進めてきたサウジアラビアの改革・開放への信頼性が大きく低下する。日本のソフトバンクを含めて,サウジアラビア関連投資への期待を膨らませた海外投資家を,より慎重にさせることになるだろう。

  19. Exclusive: Saudi king tipped the scale against Aramco IPO plans
    特ダネ:サウジ国王が アラムコ IPO 計画に反対を決定づけた
    Reuters,2018/08/28 @12:26 am ET
    By Reuter Staff (ロンドン)
    国王が話した。すると2兆ドルの夢は煙と消えた。
     過去2年間,サウジアラビアは国営石油会社の最大 5% を株式市場に上場する準備をしてきた。関係者は,サウジアラムコの IPO を国際証券取引所,世界の銀行家, および Donald Trump アメリカ大統領に売り込んできた。
     この上場は史上最大の $1,000 億を調達し,王国が公約した経済立て直しのコーナーストーンとなるはずだった。これは, 世界最大の石油輸出国の法定相続人 Mohammed bin Salman 皇太子 (32) の頭脳の所産であった。
     しかし,何ヵ月もの挫折の後,国際と国内の両方の IPO が取りやめになった。
     その理由:皇太子の父である Salman 王が介入して IPO を棚上げにした … とサウジ政府とつながりを持つ3人の情報筋がロイターに告げた。
     この決定は,Salman 国王が 王族,銀行家,アラムコの元 CEO を含む上級幹部と会談した後になされた … と中の1人が匿名を条件に語った。この協議は (今年の6月中旬に終わった) ラマダンの期間内に行なわれた。
     国王の話相手らは 王に,アラムコの IPO は王国の役に立つには程遠く,むしろ王国を根こそぎ滅ぼすだろうと告げた。彼らの主たる懸念は,IPO がアラムコの財務を詳細に至るまでフルに公表することだった … と 複数の情報筋は言う。
     今年6月末,王は 王の diwan (行政府) に書簡を送り,IPO を中止せよと命じた … と3人の情報筋が言う。王の決定は最終決定である … と別の情報筋が言う。
     "王が「No」と言うときには常に,僅かの変更も無い。" … とその情報筋は言う。
     先週 IPO が棚上げされたとロイターが報道して以来,Khalid al-Falih エネルギー相は,政府が未確定の将来に IPO を実施を約束していると言った。
     或るサウジの上級官僚はロイターにこの声明を指して,条件が整えばアラムコの株主である政府は IPO に向けて作業をする … と繰り返した。
     "政府が IPO 計画を活発に続けているとのエネルギー相の声明にも拘わらず,ロイターが 計画中止を言い立てることに我々は驚いている。"
     "アラムコの株主は,サウジアラビア政府である,サルマーン国王陛下は皇太子殿下を IPO および エネルギー相,経済相を含む委員会のトップに指名したのである。したがって,IPO の内容とタイミングに関する決定は,この委員会によりなされる。" … とその官僚は言った。
     何十年もの間 Al-Saud 王朝が支配した国にあって,国王が最終決定を下すのは驚くことではない。だが アラムコ IPO の棚上げは,皇太子の (サウジアラビアを石油依存から自立経済国へと根本的変換を目指す) "Vision 2030" 改革プログラムへの大きな打撃となる。
     これは,2015 年1月の父国王の即位後に若き皇子が握った新しい専権を 実は国王が掌握していることを示唆する。
     さらに これ [IPO の棚上げ] は,IPO 手続きに関する リヤドの行政能力 ならびに 経済を透明にするとの公約への疑念を生む … と一部の投資家は言う。
     手綱を握る
     Salman 国王は政策に関して最終発言権を持つとは言え,MbS と呼ばれる息子に大きな権限を与えてきた。
     MbS は,2015 年1月に国防相 および 王宮のトップとして権力を掌握して以来,イエメンに戦争を仕掛けた;天敵イランに対して攻撃的姿勢を強めた;カタールに外交と貿易のボイコットを仕掛けた。
     新設された強力な経済評議会の手綱を握るや,彼は 歳出を引き締め,民間セクターの成長と外国からの投資を図った。
     国王は 彼に,保守的なイスラム国で (女性の運転禁止解除と映画館の開設を含む) 社会改革を推進することを許可した。
     2015 年,MbS は叔父を退けて副皇太子に就任し,王位継承者に連なった。その2年後,彼は 王宮のクーデターにより 従兄の Mohammed bin Naef 内相を退けて,皇太子に昇格した。
     国王は 時折 干渉した。
     中でも最も注目されるのは,昨年 Trump 政権の未だ曖昧だった (アメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認識することを含む) 中東和平計画をリヤドが支持するが如き印象を MbS が与えたとき,国王は これを公に訂正した。
     4月のアラブ連盟サミットで 国王は,イスラム世界の騒動を受けて アラブとイスラムにとってエルサレムのアイデンティティ [~独自性, 固有性] へのコミットメントを再確認した。
     "国王は,後の歴史が自分をどのように裁くかで 頭が一杯である。アラムコを売った王となるか? パレスチナを売った王となるか?" ・・・ と2番目の情報筋が言う。
     急停止する
     最終的にどういう理由でサルマーン王がアラムコ上場を取り止める決定に至ったのかは,正確には明らかでない。
     だが,業界の専門家と情報筋は以前ロイターに,少なくとも2つの理由で上場の準備が何ヵ月も遅れていると語った:(1) この売り出しがアラムコ全体を2兆ドルに評価するだろうと言う 2016 年の MbS の公的声明への懐疑心; (2) [9.11 サウジ法案の 2016/11 成立に伴う?] 訴訟のリスク ならびに 外国上場に伴う厳しい開示要求。
     今年4月までには,IPO の作業を行なっていた一部の銀行に定額顧問料 [成功報酬とは別] の支払いをアラムコは停止した … と3人の銀行関係の情報筋がロイターに言った。これは 通常,取り引きが滞った場合にも顧問らが完全に手を引かないことを保証する定額の手数料である。アラムコの関係者は,これについてコメントを拒んだ。
     他方 国王は 6月中旬 熟慮を重ねていたが,JPMorgan と Morgan Stanley を含む銀行は,いささか別の提案をするように申し渡された。
     彼らは,アラムコが 石油化学の巨人 Sabic をソブリン基金 PIF から買収する提案を提出せよと求められた … とある銀行関係の情報筋が言う。
     これは,上場計画が失速し,リヤドが アラムコ以外から資金調達しようとする最初の兆しだった … と複数の銀行筋は言う。
     サウジの上級官僚は,アラムコが Sabic を買収しようとする関心が エネルギー+統合石油化学事業の世界のリーダーたらんとするアラムコの目的に合致すると言う。同時にアラムコを上場しようという政府の意図にも合致すると言う。
     "Sabic の所有権を PIF からサウジアラムコに移譲することは,PIF の戦略とガバナンスを強化し,PIF の投資ポートフォリオを強化する。" … と その官僚は言う。
     "かかる戦略的買収が アラムコ IPO の時間軸に影響することは必然であるが,必ずしも アラムコ IPO の意図に影響するものではない。"
     JPMorgan と Morgan Stanley のスポークスウーマンは,これらの銀行が Sabic 買収で果たす役割について コメントを拒んだ。
     皇太子のアジェンダへの打撃
     それでも サウジアラビアは,代替源から金を生み出し,他の改革を進めることはできる。しかし,MbS は この上場が秘密性の強い王国に開放の文化を生み出す助けになると約束していた。
     IPO の棚上げは,透明性の公約への懸念を生むだけでなく,何十人もの王族トップ,閣僚,実業家が昨年11月に反腐敗キャンペーンで逮捕された後では,予測不可能性の感覚に寄与する。
     王の決定は皇太子のアジェンダ (行動計画) に打撃となったが,それでもお気に入りの息子であり,政策に大きな影響力を持つ息子であることに変わりはない … と複数の情報筋は言う。
     むしろ,今回の件は,見通しうる将来に王が決定権を持つことを示したかったことを示唆する … と彼らは言う
     "皇太子の支配力を根こそぎ崩すものとは断言できないが,むしろ皇太子が無鉄砲な行動に走らないようにするためのもののようだ。" … とシンガポールのナンヤン工科大学 S.ラジャラトナム国際研究院 (RSIS) の上席研究員 James Dorsey が言う。

  20. Saudi Aramco loses its ‘in perpetuity’ oil and gas rights
    サウジアラムコは,石油と天然ガスに対する "永久の" 権利を失う
    Financial Times,2018/08/26
    By Anjli Raval (上級エネルギー特派員)
    無期限契約から 40 年契約への変更は,王国と国有エネルギー・グループのあいだの権力闘争を顕在化する
    サウジアラビアは,国有エネルギー会社 アラムコが王国の広大な油田とガス田に持つ独占的権利の期間を短縮した。これは,サウジアラムコの長期にわたる石油とガスの生産に疑問を投げかけ,同時に アラムコと政府の間の権力抗争 (power struggle) を顕在化する。
     サウジアラムコとの国の利権協定 (concession agreement) は,エネルギー・グループが資源開発を行うことのできる期間を 40 年に制限した ── 以前の契約では 永久にアクセスできるとされていた。ただし,契約更新のオプションはある。
     事情に詳しい3人が伝えたこの動きは,サウジアラムコ上場の準備の一環としてなされたが,上場は無期延期された。
     サウジアラムコの議長で 元 CEO の Khalid al Falih エネルギー相は,上場が不可能であり 国が望んでいないという山のような証拠にも拘わらず,王国が上場を約束していると言い張る。
     Falih は先週,IPO 手続きの一環として 新しい利権協定が結ばれたと言った。これには,開示条項はついていないが,サウジアラムコの決算報告の見直しと エネルギー貯蔵量の独立監査の実施が含まれる。
     サウジのエネルギー省は Financial Times に,この新しい契約は "サウジアラムコの上場準備のためのいくつもの重要なステップの1つ" であると言い,政府は "条件がいつ最適であるかを自ら選びつつ,IPO を進める" と約束している … と述べた。
     今回の法改正 (legal change) は,サウジアラムコを外国投資家に開放する前に,サウジアラムコと国の関係を正式に定めようしたものだ … と3人が言う。
     上場が中止された今,アラムコに近い複数の人は,これが (長続きする契約の維持を求めて戦った) サウジアラムコに対し官僚支配を許したピンボケの権力行使だと言う。
     政府は 当初 40 年より ずっと短い契約 ── 国際石油企業並みの 20 年を要求した。しかし,それでは アラムコの石油埋蔵量の算定,長期開発計画,評価 などに予期しない影響が生じる可能性がある。
     エネルギー・セクターの一部の専門家は,この利権協定が サウジアラムコの石油生産を急がせるのではないかと懸念する。他の専門家は,これは 政府が 向こう数十年の間に原油需要がピークを打つと予想して,生産政策を変更する動きの表れだろうと言う。
     "石油会社によくあることだが,利権が短いほど,資源を早く生産しなければならない。" … と Texas A&M 大学の John Lee 教授が言う。"無期限の利権を得ることは,常に 莫大な利益である。"
     ただし,40 年の利権は エネルギー・セクターの大多数の契約より長い。サウジアラムコは 国の主たる歳入源であり,契約が更新されないという兆しは無い。
     サウジのエネルギー相に近い人たちは,生産政策は影響を受けるはずがないと言う。そして,究極の株主である王国は,法改正をせずともエネルギー戦略の大きな変更を命令する権力を持つ … と続けた。
      Additional reporting by Ahmed Al Omran
    SoftBank が "権力抗争" に巻き込まれた … という観測は当たっていたのかな。
     アラムコ versus PIF+政府。花見酒の権力抗争?(笑)
     ──────
     確かに アラムコを上場して 外国投資家に開放するのであれば,利権を無制限にするよりは,アメリカのメジャー並みにするのが適切だろう。だが それは "ピンボケの権力行使 = 口実" (?) であったらしい。実際には上場は実現していない。
     この権力抗争の 行く末は? 50 手先を読むとウソブク社長の見通しは?

  21. Saudi modernisation drive is reflected in Aramco's faltering sale
    サウジの現代化の動きは,アラムコの売却の躓きに反映されている
      The Guardian,2018/08/23 @17:05 BST
      By Larry Elliott (Guardian's economics editor)
    石油が豊富な国は,多様化の差し迫った必要を知っているが,道は長い。
    サウジアラムコのマニファ油田 (©Reuters)
    1938年5月2日,サウジアラビアは,メッカへの巡礼が生む観光が脇役の 概ね遊牧民族国家だった。その翌日,ダーラムで石油が発見され,国の将来は一変した。
     サウジアラビアの石油資源の全貌が知られるまでには長い時間を要した。1938 年ごろには,世界は他のことに気を取られていたが,第2次世界大戦が終わる頃までには,砂漠の砂の下に 容易に掘り出すことのできる豊富な石油があることが明らかになった。サウジの安い石油は,戦後の世界経済の長いブームを支える重要な要素だった。そして石油の輸出による収入は,道路, 橋, 住宅街 および 西側の生活水準のために使われた。
     だが,これには欠陥があった。サウジアラビアの経済は かつても今も 危険なほど石油に依存しており,歳入の 87% を占める。GDP の 40% 超を占め,輸出収入の 90% に及ぶ。
    サウジの GDP の成長率
    2011 年のピーク 10.3% の後, 今年は 1.7% 成長が予想されている。
     サウジ経済が回るためには,油田は石油を汲み上げ続けなければならない;原油価格は 高止まりする必要がある。それでも 原油価格が 1バレル $100 を越えていた頃は,サウジの支配者たちは 税金を安く保ち,福祉への支出を高く維持し,同時にインフラ投資を増やすことができた。さらには 国防費を増やして,中東での覇権をイランと争うこともできた。来年オープンすれば 世界で最も高いビルになる予定の高さ1km [当初計画は 高さ1マイル] のジッダ・タワーの建設ゴーサインは,原油価格が 1バレル $120 を超えたときに出された。
     だが それ以後,2つのことが起こった。第1に,原油価格は 2014 年に $100 を割って急落し,いまだに回復していない。2016 年初頭には, 1バレルの原油が $30 以下で売買されていた。この暴落は,不況と赤字の膨張を生んだ。
    ブレント原油は 2014年9月に1バレル $100 を割った
     2番目は,温室ガス放出の削減に世界が本気になり始めたことである。2015 年のパリ気候変動会議で,国際社会は 世界の平均気温上昇を産業革命以前の水準の +2℃ 以内に抑えるよう手段を講じる協定を採択した。
     サウジの人たちにとって,パリ協定の含意は明らかである:世界経済を脱炭素する動きは,石油資源のかなりの部分が地下に留まり,発掘されないことを意味する。この警告は 既に 21世紀への変わり目に,サウジの Sheikh Ahmed Zaki Yamani エネルギー相が緊急の問題として指摘していた。
     "今から 30 年後には,膨大な量の石油があり ── 買い手はいないだろう。" … と Yamani は言った。"石油は地下に放置されるだろう。石器時代が終わったのは,石器が無くなったからではない。石油時代が終わるのは,石油不足のためではない。"
     それから間もなく,サウジの支配者は,この双子の苦難に対応した。短期では,仲間の産油国を説得して供給を制限し,原油価格を上げ,これにより財政への圧迫を緩和しようとした。現在の $70 程度の原油価格では,サウジは黒字を維持できる。
     長期では,経済を脱石油により多様化する計画があった。"Saudi Vision 2030" は,原油価格が底値に達した直後の 2016 年4月に Mohammed bin Salman 皇太子が発表した。そのアイデアは,サウジアラビアを世界の投資巨人にして,欧州, アジア, アフリカ 3大陸をつなぐハブに変え,サウジはアラブとイスラム世界の中心になることだった。
     国有石油会社 サウジアラムコの一部を売却する提案は,国の経済を改革し現代化する試みのカギの部分であった。手取り金は,ソブリン基金が 電気自動車会社テスラや 配車アプリ Uber のような企業に投資を続けるため PIF に留保されていた。
     Vision 2030 を 国際通貨基金 (IMF) は強く支持しており,その大胆さについて 計画を称賛した。
     それでも この先の道は長い。国の経済は 600 万の外国人労働者頼みであり,女性の運転禁止が解除されたとは言え,労働市場への女性の参加は弱い。リヤドは 反対者を取り締まることで批判されており,イランと代理戦争を戦っているイエメンでは民間人の死者を出している。
     アラムコ上場の延期は ── 政府は 将来の時点での IPO を約束したままだと言うが ── 金融市場の状況とは無関係であり,石油資源の残量が明らかになるのをサウジが嫌っているためであろう。サウジアラビアは 依然として 徹底的に保守的な国である。巨大タンカーのように,方向を変えるには時間が必要だ。
     なんだか カネの巡り方が "花見酒" のように見える。

  22. Saudi Aramco float: huge prize proves to be desert mirage
    サウジアラムコの上場:巨大な賞品は,砂漠の蜃気楼であった
      The Times,2018/08/23 @12:01 am
      By Patrick Hosking
    あれは,ブレクシット後の英国が世界に対してオープンであり,EU 27ヵ国に頼ろうと望みを託しているのではないことを証明する 象徴的な取り引きになるはずだった。如何なる基準で見ても地球上最大の会社サウジアラムコがロンドンに上場した場合の賞品は,英国閣僚と投資銀行家の想像を超えていた。
     Theresa May が売り込みの先頭に立った。昨年4月 リヤドを訪問した際には,アラムコ議長の Khalid al-Falih サウジ石油相に個人的なロビー活動を行なった。首相は,ロンドンの熟練と深い流動的市場のメリットを力説した。
      [イギリスの金融規制機関] FCA (金融行動監視機構) の CEO Andrew Bailey が主たるフィクサーだった。彼は今年6月に上場規則を変更して,アラムコが企業統治の基本的セーフガードを満たさないにも拘らず,優先上場資格を得るようにした。結果として 優先上場の新しい国際カテゴリが誕生した。
     あれは,リヤドにとっても象徴的だった ── Mohammed bin Salman 皇太子が 中世の神権政治 (theocracy) を現代化し,石油と天然ガス依存を脱し,石油以外の産業に投資するカネを調達するビジョンのカギとなる要素だった。
     その金額は莫大だった。アラムコの顧問らは,会社が $2 兆もの高い評価を受けると考え,その 5% を売却すれば $1,000 億が得られると考えた。これは, 1回の IPO としては あらゆる記録を破る。そして しばらくの間,ロンドンにとって叶えられる子どもだましのように見えた。サウジにとっては,ニューヨークの方が好ましかっただろう。だが アラムコは,アメリカの JASTA (テロ支援者制裁法, 2016/10 成立) に神経質だった。9.11 残虐行為の被害者の遺族からアラムコが訴訟を受けるリスクがあるからだ (ただしリヤドは この攻撃への係わりを否定している)。ロンドンは,明らかに その次に選ばれるはずだった。
     IPO が時間表からずれるにつれて,疑念が湧き始めた。西側の投資家が要求する説明責任と調査は,リヤドの口に合わなかった。混乱した国から企業を取り出すことは,痛ましい作業だろう。しかも 原油価格の回復は,差し迫った財務への圧迫を減らした。賞品は 蜃気楼に過ぎないことが判明した。

  23. Opinion Saudi Aramco // Beyond Saudi Aramco’s stalled IPO
    オピニオン // サウジアラムコの上場中止の先
      Financial Times,2018/08/25
      By Nick Butler
    無期延期は,カバンにパックリと穴を空けたままにする。
    サウジアラビアの経済を多様化すると言う Mohammed bin Salman の
    計画の根底にある考えは正しかった。だが,実現のためのメカニズムを
    欠いていた ── そして 今はカネが無い。 EPA)
    サウジの国営石油会社 アラムコの少数権益を売却する計画の無期延期は,今や 王国がその財政と経済多様化計画を如何にして切り盛りするかという問題を提起する。
     この売却は,アラムコの 5% の権益を最低 $1,000 億で売るというもので,(切望される雇用を生み,やがてはサウジアラビアの脱石油を可能にするために必要な) 多様化のための中核資金たることを目指していた。このコンセプトは,国際コンサルティング会社 McKinsey が 2014 年に行なった調査に遡る。Mohammed bin Salman 皇太子は 2016 年,これを "Vision 2030" という旗印のもとに打ち上げた。
     この考えは,方向としては正しかった:サウジアラビアは [石油以外の] 新しい歳入源を見つけ,多様化する必要がある。問題は,壮大なビジョンを実行可能な現実に変えるメカニズムが無かったことである。今では カネもない。
     サウジアラビアは,歳出にバランスを取るためには ブレント原油1バレル当たり 約 $70 の原油価格を必要とする。ただし,それでも 新しい支出の余地はほとんど無い。北の砂漠に $5,000 億を掛けて新都市 Neom を建設するアイデアは 常に夢想であったし,観光大国構想も同様である。
     サウジ公共投資基金 (PIF) がテスラの権益を買うためにカネを使うというアイデアは,Elon Musk 以外の誰にとっても意味が無い。
     だが さらに重大なのは,そして 遥かに価値が高そうなのは,現在石油を燃やしている代りに,新たに再生可能エネルギー源を生み出すという概念であった。サウジのソーラー能力は無限であり,他方 石油の無駄な利用は 異常な水準に達している。約 3,000 万の人口を抱える王国が毎日使う石油の量は,ドイツと英国を合わせたほど (合計人口 1.47 億人の先進国経済) である。
     借金を増やすことも,問題の少ない国有資産を売却することも考えられる。しかし,多様化のために実際に必要な資源を生み出すためにサウジが持つ選択肢は ただ1つ;歳出を抑えつつ,原油価格の引き上げを図ることだ。
     これは容易ではなかろう。現在の原油価格は,各国の生産を制限する OPEC の割り当て制 (もちろん,最大の削減はサウジに課せられている) と イラン, リビア, ベネズエラの諸問題との組み合わせにより維持されている。
     現在の原油価格は, 4年以上前より $40 以上低い。これを引き上げることは 需要と供給の釣り合いに大きな変化を引き起こす。
     供給面では,安全保障担当の John Bolton 補佐官が先週 述べたように,アメリカが イランの石油輸出をゼロにまで押し下げようとするだろう。しかし それも,新しい制裁について欧州から支持が無く,中国, インドなどアジアの輸入国がイランとの貿易継続を望んでいる状況では 難しいだろう。他方,需要が伸び続けるためには, 中国の経済問題の解決とエスカレートするアメリカ-中国の貿易紛争の前向きな結果が必要である。
     石油による収入増を確保しようと思えば,サウジアラビアは石油の輸出を減らして,原油価格を押し上げ,量の減少をカバーする必要がある。
     だが それは,つまらない計算である;そんなものは アメリカのシェール岩からの生産が増え,ベネズエラの生産が安定化すれば吹き飛ぶ。サウジの輸出の大幅な (1日に 100 万バレル程度の) 削減な有効だろうが,逆噴射しかねない。
     読者はサウジアラビアを遠くから見ているので,この国を石油資源がたっぷりある世界最大の富裕国で,他の多くの国には無いような選択の余地を数多く持っていると思うかもしれない。
     だが,事実は大いに異なる。世界にはエネルギー供給源がたっぷりあり,我々は買い手市場の中に生きている;生産国の力は限られている。良き時代に安易な収益に頼ってきた者たちの調整手つづきは,痛ましいものとなりつつある。サウジの人たちにとって,その痛みは増すばかりである。
     IPO の幻想が外れた今,必要なことは 2030 年の壮大なビジョンを取り止め,現実に素早く対応することにより,国の経済の運用の実行可能な計画に目を向けることだ。
     ── 著者は,キングス・カレッジ・ロンドン (ロンドン大学) の王立政策研究所所長 兼 客員教授である。
      The writer is visiting professor and chair of the King’s Policy Institute at King’s College London
      サウジアラビア「ビジョン 2030」 (サウジアラビア王国, 2016/04/25)

  24. Shelved Aramco IPO hits at heart of Saudi prince's reforms
    アラムコの IPO の棚上げは,サウジ皇太子の改革の中心に打撃を与える
    Reuters,2018/08/24 @07:09 pm ET
    By Andrew Torchia, Saeed Azhar & Stephen Kalin (ドバイ, リヤド)
    史上最大と目されていた株式売却を棚上げするサウジアラビアの決定は,Mohammed bin Salman 皇太子の信用への大きな打撃となるが,王国の経済を強化する改革を資金手当てする方法は他にもあると銀行家と投資家は言う。
     国有の石油巨人サウジアラムコの 5% の IPO は,$1,000 億を調達して他セクターに投資して,脱石油により王国の経済を多様化せんとする皇太子の計画の目玉であった。
     MbS の名で広く知られる 32 歳の支配者は,サウジアラムコを国際証券取引所に上場することが,秘密性の高い王国に公開の文化を生み出し,外国投資家を招き寄せるのに資すると約束した。
     IPO を棚上げする決定は,上場手続きの運び方へ さらには 広範な改革計画への疑念を呼び,Mohammed 王子の劇的な Vision 2030 発表が 2016 年に生み出した勢いを弱める。
     "問題は:IPO が遅れれば遅れるほど なぜ遅れるのかが不明になり,何が問題かが分からなくなり,信頼を根底からぶち壊すことだ。" … とシンガポールのナンヤン工科大学 S.ラジャラトナム国際研究院 (RSIS) の上席研究員 James Dorsey が言う。
     "彼は 期待を生み出すのは非常にうまいが,期待をマネージするのは さほど得意ではない。" … と Dorsey は言う。
     業界の複数の情報筋は今週ロイターに, IPO は 国際も国内も両方とも無期延期されたと語った。Khalid al-Falih エネルギー相は,政府が 将来の未確定の時期に IPO を実施するとコミットしたままだと言う。
     "改革の過程は,長い期間にわたって判断されねばならないが,IPO がこのように人目を引く条件で公約されたことを考えれば,これは全体の信頼性にマイナスの影響を与えるだろう。" … とロンドンの Manulife Asset Management の上席アナリスト Richard Segal が言う。
     "Vision 2030"
     Mohammed 王子は "Vision 2030" 計画を立ち上げた。これは,サウジアラビア経済を根本的に変換し,人々の閉鎖的ライフスタイルをオープンにすることを約束する。彼は既に 一連の著名な改革を実施した:保守的な王国で,女性の運転禁止をやめる;映画館を開くなど。
     だが これらの動きは,反対運動の厳格な取り締まりを伴った;王族とビジネスマンが腐敗の容疑で追放され,多額の出費を要する イェメン内紛への介入は4年目に入った。
    サウジアラムコの Ras Tanura 石油精製施設のタンク。
    2018年5月21日撮影 (©Reuters | Ahmed Jadallah | File Photo)
     天敵イランに対して激しさを増す皇太子の敵意と カナダやドイツのように友邦と考えられてきた国々との関係に見せる態度は,同盟国と投資家の神経を苛立たせた。
     "アラムコの IPO は,新しい世界レベルでの透明性の例と考えられてきた。おそらく,これほどまでに説明が無いのであるから,透明性は悪化したと考えられる。" … と 西側の元上級外交官が言う。
     しかし 一部の銀行家は,改革プログラムは アラムコ上場よりも 遥かに巨大であり,政治的な余波が考えられるとしても,多くの改革は 進行するだろう,いや 加速さえするだろう ── 上級官僚が もはやアラムコ上場に煩わされずに済むようになったのだから … と言う。
     "現実には,アラムコ上場の他に当局ができることは たくさんある。" … と 或る上席銀行家は言う。彼の所属する銀行は,IPO の手配に加わろうと売り込んでいだ。
    サウジの財務と原油価格
    上から順に,SAMA (サウジ中銀) の外貨資産;政府歳出;政府歳入;原油価格 ($)
    単位=10 億リヤル ~ 300 億円
    サウジの GDP とセクター別の YoY 成長率
     外国直接投資推進
     2016 年に IPO の計画を発表して以来,リヤドの環境は大幅に好転した。
     当時 原油は1バレル 約 $35 で,政府は 絶望的にカネを求めていた。だが 現在では原油価格が そこから倍以上に値上がりし,国家予算の赤字は大幅に縮小した。このため,政府は 財政計画を考える余地が生じた。
     MSCI と FTSE Russel は 今年,サウジアラビアを新興市場株価指数に組み入れることを決めた。したがって,アラムコの IPO が無くても,王国は 来年には外国の基金から $200 億以上の流入を期待できる。
     他方,当局は ゆっくりとではあるが,外国直接投資 (FDI) を招くための改革を進めている。
     今年7月,リヤドは,国と民間企業の間の提携によりインフラを建設するための規則の草案を公表した。先週は,王国の水道局が水処理と配給に関して国際企業と協議中であることを発表した。
     アラムコに加えて,当局は 向こう数年の間に 国有資産 $2,000 億相当の売却を目指すと言う。多くのアナリストは これを野心的と評するが,アラムコ上場の凍結は 少額の売却の障碍をクリアーするだろうと言う。
     "IPO は常に象徴的な重要性を持つが,サウジ経済の他の部分に大きく影響しないだろう。" … とロンドン経済政治科学スクールの准教授でサウジアラビア研究の第一人者 Steffen Hertog が言う。
     "王国の経済の長期的健全性のためには,サウジ人に対する民間雇用の創出や 国内/国外の投資家に対する規制環境のような問題の方が重要である。" … と彼は言う。
    2018年5月27日,ニューヨークのマンハッタンにある国連本部で
    Antonio Guterres 事務総長と会見したときの MbS 皇太子。
    Reuters | Amir Levy | File Photo)
    サウジアラビアの砂漠地帯 Sahaybah 油田の天然ガス液 (NLG) 施設の全景
    Reuters | Ahmed Jadallah | File Photo)
    Sabic 売却
     Mohammed 王子は サウジアラムコの 5% の権益を約 $1,000 億に評価したが,アナリストらは 王子の評価が楽観的に過ぎ,IPO をやったとしても $500 億 ~ $750 億しか調達できなかっただろうと言う。
     このカネは,主として雇用を創出するプロジェクトの資金手当てのために,アラムコから 公共投資基金 (PIF) に渡ったはずである。サウジ市民の失業率は 公式には 12.9% となっていて,雇用を増やす方法を見つけることは極めて重要である。
     しかし,IPO なしでも,これらのプロジェクトは進めることができる。なぜなら 今年7月にアラムコは 石油化学品メーカー Sabic (Saudi Basic Inductries) の戦略的権益を PIF から購入すると発表した ── これにより PIF はアラムコ IPO と同程度のカネを得られる。
     市場価格では,PIF が持つ Sabic の 70 %の権益のアラムコへの売却は,約 $700 億を生む。
     もしも PIF が [Sabic 売却代金により?] 雇用を創出できるなら,アラムコ売却を中止したことは Mohammed 王子にとって政治的にプラスになるだろう。なぜならアラムコ IPO は 一部のサウジ人に受けが悪いからだ。
     "平均的市民は,アラムコ上場を 祖国愛の誤ったセルオフと見る。また,サウジ王族の多くは この売却が王国の富と特権の源泉を暴くことを懸念した。" … と Rice 大学 Baker Institute のエネルギー問題研究員 Jim Krane が言う。
     "それゆえ,この計画から国が撤退したことについて,おそらく 何らかのレベルの安堵感がサウジアラビアにあるだろう"

  25. Riyadh to seek $11bn in bank loans after Saudi Aramco IPO stalls
    サウジアラムコの IPO が失速したことを受けて,リヤドは $110 億の銀行ローンを追求する
    Financial Times,2018/08/24
    By Arash Massoudi, Anjli Raval, Robert Smith & Simeon Kerr (ロンドン, ロンドン, ロンドン, ドバイ)
    ソブリン基金は,メガトン級の上場の遅延による穴埋めを目指す。
    Mohammed bin Salman サウジアラビア皇太子は,
    石油への依存が少ない経済を追求する。
    Bloomberg)
     サウジアラビアのソブリン基金は,国営エネルギー・グループ サウジアラムコの上場の遅れによる穴を埋め,Mohammad bin Salman 皇太子の野心的経済改革の資金手当てとして,$110 億を貸してくれる国際銀行を選んでいる。
     このローンは,経済の石油依存を減らすという 若き皇太子のビジョンを推進するために公共投資基金 (PIF) が行なう初めての借り入れである。PIF は これまで,電気自動車メーカー テスラ,配車アプリ Uber および 宇宙旅行会社 Virgin Galactic に大胆な賭けを張った。
     サウジアラムコを上場して そこから売り上げを手にするつもりだった計画が無期延期された今,このローンは PIF にとって特に重要である。リヤドの関心は,$1,000 億程度の売り上げを期待していたメガトン級の IPO からシフトして,PIF のためにどうすれば資金を集められるかに集中している。
     国際的銀行の有力な名前のほとんどが,この取り引きに活発に売り込んできた。JPMorgan の Jamie Dimon,Morgan Stanley の Franck Petitgas,Goldman Sachs の Dina Powell (トランプ政権の 元ホワイトハウス官僚) などである。
     PIF は,当初 $80 億の調達を希望したが,事情に詳しい1人は,このローンは 申し込み超過となり,Lobor [ロンドン インターバンク金利] に対しスプレッド 75 bp で $110 億に設定されると言う。
     或る銀行家は "誰もがかなり積極的になっている。" … と述べた。
     ソブリン基金へのシンジケート・ローンは異例である。カタール投資庁のような 中東の大型基金は,特定の投資家から借り入れを行なうのが普通である。
     16 もの銀行がシンジケート・ローンへの参加を予想されており,幹事行は 木曜日に決まる … と このプロセスに係わる複数の人が言う。
     これらの銀行の多くはこれまで何年も王国のご機嫌取りをしてきたし,サウジアラムコの IPO の手数料をあてにしていたが,今ではサウジの他の取り引きを競い合い,今回のローンを将来の取り引きのための重要な足掛かりと見ている。
     複数の上席銀行家は,PIF に足掛かりを得ることは特に重要だ;なぜなら PIF は Sabic の $700 億の権益を サウジアラムコに売る計画をしているからだ … と言う。この売却は 国の金庫から別の金庫へカネを移すものであるが,(ライバルに対する銀行同士の実績を計る) 引き受け実績ランキングで意味を持つ。
     サウジアラムコの IPO の作業は,法律問題の懸念と MbS が希望する $2兆評価が得られないために劇的に減速したが,一部の銀行家は その関心を Sabic 売買に移している … と1人の顧問が言う。
     彼らは,Sabic 売買が 将来のサウジアラムコ上場の時期にどう影響するかを評価している … とその顧問が言う。王国は,上場不可能 または 上場の意思が無いとの山のような証にも拘わらず,IPO を中止していないと言い張る。
     銀行は,サウジアラムコが Sabic を PIF から買い取るために必要な資金として $400億 ~ $600 億の債券発行をする際に参加のチャンスを狙っている。この現金は,サウジアラムコの IPO から予定していた資金の代替となり得る。
     皇太子の同盟に近い Yasir al-Rumayyan が率いる PIF は,$2,500 億以上の資産を管理しており, 2020 年までには $4,000 億に拡大する計画である。PIF は 資金手当てのため サウジ中央銀行から現金を受け取り,所有する会社の権益を売ろうとした。また,債権を発行し,国有資産の民営化による売り上げに頼っている [このあたり,英文が乱れており 意味不明]
     財務省の力が弱まり 高額な投資 (SoftBank と Blackstone が運営する基金に公約した数百億ドルを含む) がリターンを生むためには,PIF は 今後ますます債券発行と銀行からの借り入れに頼るものと見られる。
     今月初め,PIF が Elon Musk の電気自動車会社 Tesla の 5% 近くの権益を音もなく構築したことを FT はお伝えした。Musk は 後にツイッターで,テスラを非上場にしたい;"資金は確保した" … と書いた。
     Musk は後に,PIF との協議が サウジの基金が自分に対する [非上場化の] 支援をしてくれると考えたと言った。 しかし,PIF に近い複数の人は,Musk に非上場化をさせるため これ以上のカネを出すような議論を本気でしたつもりは無いと言った。
     銀行借り入れの文書によれば,法務会社 Latham & Watkins は,PIF の銀行借り入れを助ける。サウジアラムコの IPO 作業を率いていた法務会社 White & Case は,銀行と共同作業を行なう。
     エネルギー省+サウジアラムコ と PIF の内部抗争の続編である。
     そこへ,世界中の銀行などが 甘い汁を吸おうと群がる。
     "Vision 2030" のために巨額を必要とする PIF にしては,当初の要求 $80 億ぽっちで何をしたいのか分からない。
     アラムコ上場では $1,000 億を期待していたはずである。
    ──────
     今の世界情勢で サウジアラビアが 改革のための資金 (~$5,000 億級) を期待できるのは,石油が欲しい中国しか考えられない。中国は一帯一路政策で 東南アジアにもアフリカにも巨額を拠出している。ギリシャでは,民有化される資産を買い漁っている。
     SoftBank の弱みは,日本の多くの企業が 石油の安定供給を目的とする日本政府 (外務省+経済産業省) の対サウジアラビア政策 『日・サウジ・ビジョン2030,Saudi-Japan Vision 2030』(サウジ国王が来日した 2017/03, 31 件の覚書から成る) に乗って動いているのに対し,これとは全く独立なことである。日本のために石油を確保するものではない。あくまで 民間企業の利益を図るためだけのものである。

  26. Opinion // The Aramco Flop: Beginning of the End for the New Saudi Arabia
    オピニオン // アラムコの失敗:新しいサウジアラビアの 終わりの始まり
      Haarretz,2018/08/23 @04:25 pm;2018/08/25 @11:45 am
      By David Rosenberg
    石油の巨人アラムコの株式を売る決定をサウジが覆したことは,MbS の改革推進のあらゆる欠陥を強調する。
    アラムコが上場されるはずだった サウジ証券取引所。
    abdulrahman Abdullah | Bloomberg)
    サウジ・アラムコの株式公開は,王国の野心的経済改革計画の必須な部分ではなかった。だが,その後に続く泥沼は,度を越えたあらゆる時代精神をとらえた。
     アラムコは,世界最大の産油会社であり,法定相続人 Mohammed bin Salman (MbS) は サウジの改革推進を率い,アラムコの価値が アップルの2倍の $2 兆であると確信していた。その IPO は史上最大のはずであり,世界の有力な証券取引所は その上場先となる特権を競っていた。
     Donald Trump アメリカ大統領さえも,アラムコにニューヨークを株式の上場先に選ぶよう介入の呼びかけを行なった。
     ところがロイターは水曜日,IPO が中止されたと伝えた。
     いや,政府首脳の声明によれば,中止ではなく 延期されたのだ。だが 行間を読もう:"The government remains committed to the IPO of Saudi Aramco at a time of its own choosing when conditions are optimum.[政府は,条件がいつ最適であるかを自ら選びつつ,サウジアラムコの IPO にコミットしたままである。]"
     「はい,ご主人様」の Sir Humphrey がよく言うように [イギリスの政治風刺番組らしい] ,"そんなことは忘れよ" … ということだ。
     そうだとしても,サウジアラビアを世界最大のガソリン・ポンプから時代の先端を行く技術と創新の経済国に ── あるいは少なくとも平均的なサウジアラビア人が政府の施しと善意に頼って生きるのではなく,自分で働いて生きなければならない国へ ── 変換するという MbS の "Vision 2030" 計画の時代精神には もう1つの重要な役割がある。
     冷たい計算と秘密
     アラムコの上場は 2016 年に最初に発表されてから,何度も延期された。その理由はいつも同じで,王国に対する MbS の計画が失敗の運命にあるということだった。
     アラムコと政府の古い守衛は,ニューヨークやロンドンの証券取引所の要求に従って 秘密企業の多くの情報を開示することを嫌った。MbS は市場の冷たい計算について考えるよりも, $2兆という評価の凄さに こだわったと伝えられている。
     こうして明らかになったのは,MbS と彼を取り巻くきらびやかなマーケット・キャンペーンが約束したほど Vision 2030 が大胆な変換プロセスではないということである。美人は 肌だけと言うように,
     MbS は,サウジの石油頼みを辞める必要を認識する点で正しい。
     Trump は依然として 20 世紀がまだ終わっておらず,石炭と石油が永久に燃え続けると信じているが,MbS は,世界が動いていることを理解している。彼は 本国ではソーラー発電に,外国では テスラのような企業に投資している。
     本国での目標は,石油に頼らずに雇用と富をもたらす民間セクターの繁栄を生み出すことだ。
     だが,MbS は2つの問題を抱える。短期の問題は,原油価格が低い時期に経済変換の資金手当てをしようとしていることだ。このため 国の予算が大幅な赤字に陥っている (今年は GDP の 7% に達する見込みである)。アラムコ IPO は,Vision 2030 に要する費用の一部を賄う予定だった。それでも Vision 2030 が順調であれば,将来への投資として 赤字続きは OK だろう。しかし,情勢は不利である。
    サウジアラムコの女性用運転学校で, シミュレーターにより運転を学ぶ女性。
    サウジアラビア, ダーラン, 2018 年7月12日(火)
    Mohammed al-Nemer | Bloomberg)
     MbS が思い描く 教育を受けた創新的サウジ人と アル-サウド王家の王朝支配とは,完全なミスマッチである。MbS は,王室の特権 ── 少なくとも自分が持つ全ての特権 ── を絶対的支配権として微塵も譲り渡す気配を見せたことが無い。実際,女性活動家が逮捕され 死刑の恐怖に晒されたことが証明されるように,反対意見への寛容さは減っている。
     感謝すべき
     なるほど,MbS は初めて女性に車の運転を許し,いくつかの穏やかな社会改革を行なった。しかし そのやり方は,サウジ社会がオープンな議論の過程を通じて決めたものではなく,支配者が人々に感謝せよと恩恵を施すというものだった。
     MbS のもう1つの問題は,サウジアラビアが経済革命をやってのけるための人的資本を持たないことである。
     王国の人権軽視をカナダが穏やかに批判したのに対する怒りの反応 [=外交官追放] ,レバノン首相をサウジに2週間拘束したこと,隣国カタールに対する軍事行動,イェメン内戦への醜い介入,および 昨年の 腐敗容疑による実業家の取り締まりは,外国 および サウジの投資家に,現実には王国で何も変わっていないことを知らせる。投資家は,法の支配と投資資本の安全を仮定することができない。
     世界経済フォーラムの人的資本報告は,サウジアラビアをエジプトの1ランク下の世界第87位にランクする。 これは,人口を教育するために王国がカネを必要とするという問題ではなく,サウジの人たちが外国からの出稼ぎ労働者に実際の仕事を任せるという考えに余りにも慣れていることが問題である。出稼ぎ労働者が国を率い,創新的変換的事業を建設するとは想像し難い。
     王国にかつて無かった破産法のような 企業活動を活性化する動きにも拘わらず,サウジアラビアは ハイテクと創新 [=innovation の中国語] に関しては,事業を行なうにはお粗末で 見込みの無い場所であることに変わりない。
     全てのカネとすべてのマーケティングは,MbS の改革神話を売り込む 銀行家, コンサルタント, エコノミスト, アナリスト および ジャーナリストから成る世界の応援団が作り出す。だが 王国自身は資本逃避に苦しみ,出稼ぎは帰っていく。サウジ国民と 巨大出稼ぎ組の方が真実をよく知る。
    今では なぜかサウジに友好的な国であるイスラエルの中ではリベラルと評価されているハアレツの記事である。

  27. Saudi Arabia insists it is 'committed' to Aramco float despite reports
    複数の報道にも拘わらず,サウジアラビアは アラムコの上場に "コミットしている" と言い張る
    BBC,2018/08/23
    サウジアラビアは,国有の石油巨人アラムコの株式を売る計画をキャンセルしたとの複数の報道を否定する。
     ロイターは,財務顧問のグループが アラムコの 5% を売る計画を既に放棄したと報道した。
     さらに情報筋を引用して,この決定が 少し前になされたが,発表されなかったと伝えた。
     サウジアラビアのエネルギー相は,(史上最大と言われる) 上場を進めると言う。
     "政府は,条件がいつ最適であるかを自ら選びつつ,サウジアラムコの IPO にコミットしたままである。" … と Khalid al-Falih エネルギー相が声明で言った。
     サウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子が経済改革行動計画 ならびに 大幅な財政赤字を減らすカネの調達の一環として (アラムコに対する西側の規制と調査を導入してまでも) アラムコ株式の売り出しを最初に提案したのは,2016 年初頭のことだった。
     当時,MbS は この売却がアラムコを $2兆に評価すると予想した。計画は,地元リヤドの証券取引所と世界的な金融センターのどこか1つの両方で上場するというものだった。
     "遅延とキャンセル" の報道
     ロイターは,4人の上席業界筋の話として,この計画がスクラップされたと報道した。
     "IPO を中止する決定は 少し前になされていたが,誰もこれを発表できなかった。このため 声明は 徐々になされた ── 初めは 遅れていると;そして中止と。" … と1人が言っているとロイターは伝えた。
     ロイターが2名の情報筋を引用して伝えるところによれば,上場の作業を行なってきた財務顧問らが 今では 地元の石油化学メーカー Sabic (Saudi Basic Inductries) の "戦略的権益" の獲得提案に取り組んでいると言う。
     上場がキャンセルされそうだとのウワサは,2017 年末に浮上した。アラムコの株式は,世界最大のソブリン基金と機関投資家に 非上場のままで売却されるとのことだった。
     大企業
     サウジアラムコは,石油と天然ガスで世界最大の企業である。Forbes は,アラムコが1日に $10 億ドルの売り上げを生むと推定する。その事業は,世界最大級の油田の経営から 精製と石油化学の事業にわたる。
     これだけ高い関心を背景に,ロンドン, 香港, ニューヨークが IPO を受け入れようと鎬を削ってきた。
     アメリカの Donald Trump 大統領は昨年ツイートした:"サウジアラビアが,アラムコの IPO をニューヨーク証券取引所でするのは大賛成だ。アメリカにとって重要だ!"
     ロンドンでは,FCA (金融行動監視機構) が 規則を改定して アラムコの上場を容易にしたが,議員らと IOD (取締役協会) から "サウジアラムコを受け入れるために規制を改定することは英国の良好なガバナンスに対する評判を傷つける" … との批判を浴びた。
     どこで上場するかの決定はされていなかった。
     他方,サウジ王族の一部の人たちは,ニューヨークでの上場が法的リスクを引き起こすとの懸念を示した。アメリカのテロ法律が,アメリカ市民にサウジアラビアを提訴できるようにしたからである。
    「テロ支援者制裁法」(通称 サウジ法案, 2016年10月成立) は,9.11 遺族がアメリカ国内でサウジアラビアを提訴できるようにした法律である。犠牲者 3,025 人の遺族から集団訴訟があったという報道はまだ無いが,サウジアラビアは これに火を点けて アメリカにある資産 ($7,500 億と言われる) が没収されるのを恐れている。

  28. Exclusive: Aramco IPO halted, oil giant disbands advisers - sources
    特ダネ:アラムコの IPO は中止になった。石油の巨人は 顧問団を解散した ── 情報筋
    Reuters,2018/08/23 @01:48 am
    By Clara Denina, Alex Lawler, Marwa Rashad (ロンドン, リヤド)
    サウジアラビアは,国営の石油巨人アラムコの国内 および 国際上場計画を中止した … 業界の4人の上級情報筋が水曜日に言った。
     サウジアラビアがその関心を地元の石油化学品メーカー Sabic (世界最大の石油化学会社 Saudi Basic Inductries Co) の "戦略的権益" の取得に移す中,上場計画に携わる財務顧問らは 既に解散させられた … と2名の情報筋が言った。
     "IPO を中止する決定は 少し前になされていたが,誰もこれを発表できなかった。このため 声明は 徐々になされた ── 初めは 遅れていると;そして中止と。" … と IPO 計画に詳しい或るサウジの情報源が言った。
     我々に与えられているメッセージは,見通しうる将来の間 IPO が中止されたということだ。" … ともう1人の情報筋である上席金融顧問が言った。
     "地元の Tadawul 証券取引所での上場さえ 棚上げにされた。" … とその人が言う。
     木曜日の朝,サウジアラビアのエネルギー相は,IPO が中止されていることを否定した。
     "政府は,適切な状況と適切な時期を選ぶという条件で サウジアラムコの IPO にコミットしたままである。" … と Khalid al-Falih エネルギー相が声明で言った。
     Falih は,リヤドが上場を準備する措置を既に取っており,タイミングは (好ましい市場環境を含む) 様々の要因に依ると述べた。
     計画された上場は,王国の経済を再構築し,石油収入への依存の削減を目指す Mohammed bin Salman 皇太子の改革の中心部分を成す。
     皇太子は 2016 年,アラムコの 約 5% を 地元 および 国際上場により売却して,アラムコの評価を $2兆 と予想していた。何人もの業界の専門家は,こんなに高い評価は現実的でないと疑問視した。顧問らは,これが IPO の準備過程の障碍だったと言う。
     業界の別の情報筋は,この IPO は当面 中止されたのであり,将来 復活もあり得ると言う。
     "何か発表があるまで IPO は延期された。" … と その情報筋は言う。
     ロンドン, ニューヨーク, 香港を含む金融センターの証券取引所は,この株式売り出しの国際部分の引き受け手になろうと競ってきた。
     銀行家と弁護士の軍団は IPO の顧問の役目を勝ち取ろうと競争してきた。この IPO は,王国の広範な民営化計画の入り口と見られていたのである。
     JPMorgan, Morgan Stanley, HSBC のような国際銀行は世界中の根回し役として,Moelis & Co と Evercore のような投資銀行は 独立顧問として,法務会社 White & Case は法務顧問として選ばれた … と複数の情報筋が 以前 ロイターに語った。
     更に多くの銀行が指名される予定だったが,銀行がこの取り引きを売り込んだにも拘わらず,主幹事証券会社は 正式には指名されなかった。
     弁護士,銀行家,監査人は,どれも上場目論見書を書き上げるのに欠かせない。
     アラムコの予算では,顧問への支払い期限が6月末となっていた。これは更新されていない … と1人の情報筋が言う。
     "顧問らは,待機させられていた。" … 石油業界の上級関係者である4番目の情報筋が言う。
     複数の情報筋は 以前 ロイターに,評価の問題以外に,サウジ首脳と顧問の間で どこで上場するかについて不和があり,それが IPO の準備を遅らせたと言った。
      Reporting by Clara Denina, Alex Lawler, Marwa Rashad and Rania El Gamal; Additional reporting by Stephen Kalin; Editing by David Evans, Toni Reinhold and Nick Tattersall。
    こちらは,Bloomberg の続報である。
     Reuters は "call off", Bloomberg は "on hold" という違いがある。
     "Saudi Aramco Puts IPO on Hold to Focus on Giant Chemicals Dea"
     By Wael Mahdi and Javier Blas
     Bloomberg,2018年8月23日 3:15 JST Updated on 2018年8月23日 18:08 JST
       Aramco IPO isn’t canceled, Energy Minister Al-Falih says.
       Company told some financial advisers to suspend IPO work.
     https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-08-22/aramco-is-said-to-focus-on-sabic-acquisition-put-ipo-on-hold
    とにかく,アラムコの上場が 中止になったという 8月14日の Wall Street Journal が再確認されたわけである。

  29. Exclusive: Saudi PIF in talks to invest in aspiring Tesla rival Lucid - sources
    特ダネ:サウジの PIF が テスラのライバル Lucid への投資を協議中である ── 情報筋
    Reuters,2018/08/20
    By Dasha Afanasieva & Harry Brumpton (ロンドン, ニューヨーク)
    サウジアラビアのソブリン基金 PIF は,テスラの Elon Musk CEO によれば,$720 億の非上場化取り引きを助けることになっているが,事情に詳しい複数の人の日曜日の発言によれば,テスラのライバル Lucid Motors への投資を協議中である。
     非公開企業 Lucid Motors と PIF の間の協議は,石油に偏った中東の王国の投資先を多様化し,電気自動車メーカーに投資する食欲を浮き彫りにする。
     Lucid Motors との取り引きは,PIF の限定された資源と見合う:資産 $2,500 億を有するにも拘わらず,日本の SoftBank Group が率いる巨大テック基金への $450 億契約を含めて,PIF は他のテック企業や投資にかなりの公約をしているからだ。
     PIF と Lucid Motors はタームシート [条件概要書] を交わした。それによれば,PIF は Lucid Motors に $10 億以上を投資して 過半数の所有権を獲得できる … と情報筋は言う。ただし,PIF の初回投資は $5 億に留まり,以後の現金注入は Lucid Motors が所定の生産マイルストーンを達成してときに,2段階に分けてなされる と1人の情報筋が言う。
     PIF と Lucid Motors の協議は 協定にまで達しないかもしれない … と複数の情報筋が警告した。
     情報筋は,本件が極秘であることを理由に 名前を明かさないことを要求した。PIF と Lucid Motors は,コメントの要請に即答しなかった。
     47 歳の投資家にしてエンジニア Elon Musk は,今月 テスラの非上場化を1株 $420 で検討しているとツイッターで開示して,金融市場を仰天させた。
     彼はさらに,資金手当てが "確保済み" だと言い,月曜日には サウジアラビアの PIF が必要な資金を提供してくれるとまで言った。ただし,ソブリン基金に近い情報筋は,そのような見込みを軽視した。今年これまでに,PIF は 5% に僅かに欠けるテスラの権益を,新株発行ではなく,公開市場で購入した。
     Musk はまた,現在のテスラの株主の 2/3 は非公開企業になっても持ち株を現金化せず,手放さないと考えると言った。そして,取り引きの構造を決める前に大手株主 および 顧問らと協議すると言った。
     新しいモデルを考案してそれを量産に持ち込むのに $10 億ドル以上を使う自動車メーカーにとって,安価な資本へのアクセスを得ることは つねにチャレンジである。そこまでやった車でさえ,市場の好みのズレや周期的な販売の落ち込みによりポシャることもある。 シリコンバレーの西端 カリフォルニア州 Newark に本社を置く Lucid Motors は, 2007 年に Atieva という社名で Bernard Tse (テスラの元副総裁で取締役) と Sam Weng (オラクルグループと Redback Networks の元役員) が創業し,中国の投資家 (テック企業家 Jia Yueting と国営自動車メーカー BAIC [北汽集団] ) から支援を受けた。
     シリコンバレーの西端 カリフォルニア州 Newark に本社を置く Lucid Motors は, 2007 年に Atieva という社名で Bernard Tse (テスラの元総裁で取締役) と Sam Weng (オラクルグループと Redback Networks の元役員) が創業し,中国の投資家 (テック企業家 Jia Yueting と国営自動車メーカー BAIC [北汽集団] ) から支援を受けた。
     Lucid Motors は,まだ車を1台も売っていない。2016 年,同社は Lucid Air モデルの原型を発表した。そして,この $100,000 高級車セダンを 2018 年末にアリゾナ州で製造開始に期待していた。ウェブサイトでは 返金可能な予約金 $2,500 を消費者から受け入れているが,この車が いつ入手可能になるかは不明である。
     テスラの方は 電気自動車メーカーとして ずっと進んでいるが,投資家は 黒字になるまで何年掛かるのかと疑問視する。モデル3の量産を積極的に進め,Musk が "生産地獄" と呼ぶ状況の中で,テスラは現金燃焼を続けている。
     UBS のアナリストらは先週,モデル3の収益性を疑問視して,テスラは モデル3の基本モデル1台ごとに $6,000 の損失を出すだろうとレポートに書いた。
    結局 サウジアラビア PIF は,SoftBank とは独自にアメリカのテック企業 Uber Technologies, Magic Leap, Noon.com, Ludid Motors に投資できるのだ。このうち Uber は 2016 年6月である。
    PIF の手許は逼迫していると この記事にも WSJ の記事にも書かれているのだが ・・・
     サウジアラビアが SVF への拠出を非拘束の覚書で認めたのが $450 億である。
     そのうち 2018 年6月の時点でいくら拠出したかは分からない。
     しかし,LP (ソフトバンク以外) 全体の出資額は $162 億である (総約束額は $652 億)。

  30. Musk's plan to take Tesla private may be hurt by a bill just signed by Trump
    テスラを非上場にする Musk の計画は,Trump が署名したばかりの法案により打撃を受ける
      TechCrunch,2018/08/15
      By Krystal Hu
    Elon Musk は,まもなく Donal Trump 大統領あてにツイートするだろう,またもや。
     Trump は月曜日,2019 会計年国防授権法 (NDAA) に署名した。その数時間前に Musk は,テスラを非上場にするために,サウジアラビアのソブリン基金と協議している … とツイートした。Musk は,中国の自動車関税に対し Trump に苦情を訴えるツイートをしたが,彼の非上場化計画そのものが,Trump が月曜日に署名した NDAA により脅威を受けかねない。
     $7,160 億 NDAA は,2018 年外国資本リスク審査現代化法 (FIRRMA) を含む。FIRRMA は,外国対米投資委員会 (CFIUS, 外国資本取引が国家安全保障を害さない保証を評価する仕事を受け持つ省庁間組織) の権限を強化する。
     FIRRMA は,CFIUS が審査する取り引きの種類を拡大した。ソブリン基金が パッシブな投資 (すなわち 経営権を要求しない投資) をするのは普通のことである。パッシブ投資 ── 投資家が 10% 未満の権益を取る取り引き ── は,通常 CFIUS の法的判断の安全港 (Safe Harbor) であった。ところが 新しい措置により,重大な技術 または インフラ企業の "パッシブ" と認定されそうな取り引きは減ったのである。
     "サウジアラビア基金からの如何なる投資も,支配を獲得しないものであっても,CFIUS の審査対象となる。" … と コロンビア大学ロースクールの Jeffrey Gordon 教授が E-メールで言った。CFIUS の審査は,国家安全保障の懸念を調べる。長々とした不透明な手続きの後,CFIUS は 認可 または 阻止を決定する。稀な場合には,最終決定を大統領に委ねることもある。例えば,Barack Obama 大統領は 中国企業が ドイツの半導体会社 Aixtron を買収するビッドを 2016 年12月に阻止した。
     Gordon 教授は,テスラは 時代の先端を行く企業であるから審査を受けることになると考える。"特に興味深いのは,テスラが 重大なインフラを所有/営業するか,重大な技術を開発するか,国家安全保障の脅威となるように利用し得るアメリカ市民の個人データを収集 または 保持するかである。" … と教授は書いた。
     "アメリカ政府は,人工知能に懸念を抱いてきた。テスラが AI でやっている全部を考えれば,この取り引きは 間違いなく規制当局の最大級の懸念である。" … と国際ビジネスとアメリカの国家安全保障法に特化した Dorsey & Whitney のパートナー Lawence Ward が言う。
     ただし FIRRMA の中の数多くの術語 ── "パッシブ投資", "重大な技術" のような ── は,正確な定義を必要とする。ピーターソン国際経済研究所の 非居住の上級研究員 Theodore H. Moran は,サウジアラビアの投資が CFIUS の審査を通る必要は無いだろうと言う。なぜなら "サウジは テスラの技術の「コントロールを買収」しないだろうから。" … と Moran は Yahoo Finance に E-メールを寄せた。
     テスラの投資家は,持ち続けるだろうか?
     CFIUS の審査のリスクは,株主の考え方による。Musk は投資家宛ての投稿で,テスラの現在の株主の 2/3 が上場廃止後もテスラに投資を続けると推定する … と書いた。しかし,株主の考えを理解するために時間が必要なことも Musk は認めている。
     もしも テスラの一般投資家の大部分が 持ち続ければ,サウジの投資は かなり小さく,基金は テスラの少数権益を取得することになる。サウジアラビアの PIF は既に 5% を取得しているから,10 % 程度を上積みすればバイアウトができるだろう。
     他方,もしも サウジのソブリン基金が かなり大量の株式を一般株主からバイアウトする必要があれば,経営権と技術の流出に重大な懸念を呼ぶだろう。この不確定性は,取締役会が Musk の非上場計画を投票に掛けるとき,かなりの時間を必要とするだろう。
     仮に CFIUS がサウジの投資を許可した場合でも,議会が何か言うかもしれない。保守的なアラブ国家と過激な組織との結びつき ならびに テロリストを財政支援している可能性は,長らく懸念の的になっている。"一部の議会メンバーは,サウジの基金が「邪悪な」活動に関連していると信じている。" … と Ward は言う。"アメリカは,この国を全体として制裁しないよう注意を払ってきたが,一部の政党を標的にしている。"
    これもタイトルがおかしい?(笑)
    CFIUS が強化されるという話は,数ヵ月前にあった。その具体的影響がここに描かれている。
     8月13日(月) に Trump 大統領が署名した法律により,CFIUS の網の目が細かくなったらしい。

  31. Larger Tesla Stake by Giant Saudi Fund Faces Hurdles
    巨大なサウジ基金による テスラの買い増しは,ハードルに直面する
    Wall Street Journal,2018/08/14 @05:30 am ET
    By Maureen Farrel
    PIF は,未来の巨大都市 Neom 建設 $5,000 億計画を含むイニシアティブへの拠出を既に公約している。
    [読者コメント 16 件]
     サウジアラビアのソブリン基金にとって,テスラのバイアウトに資金供給することは 外見より難しいだろう。
     サウジアラビアの石油の富は PIF に無限の資源を与えるというのが一般の認識であるが,現実には 王国の財政は逼迫している … と顧問や政府関係者が言う。
     過去2年で,サウジアラビアは 世界で最も著名な投資家になった。32 歳の Mohammed bin Salman 皇太子は,石油への依存から離れて 王国の経済を多様化せんとしている。
     この取り組みの中心にあるのが,公共投資基金 (PIF) という名で知られるソブリン基金である。この基金は,既に2つの巨大外部基金に $650 億の拠出を約束した ── 1つは 最大 $200 億に上るインフラ投資であり,Blackstone Group がこれを運用する。もう1つは SoftBank Group が率いる $450 億の基金である。このほか,シリコンバレーのスタートアップ企業 (Uber Technologies, Magic Leap, Noon.com など) への 合計 $40 億を超える小切手がある。
     PIF はまた,サウジアラビア北方の紅海に面した場所に $5,000 億で未来の巨大都市 Neom を建設する計画に 不確定な額を拠出する予定である。
     Blackstone に公約したカネを払わないわけにはいかない;なぜなら Blackstone は,この資金によりサウジにインフラ投資を行なうからである。また SoftBank の Vision Fund については,これまでのところ 支払いがきちんと行なわれたと 事情を知る複数の人が言う。PIF は,約束した額の約 1/3 を支払い済みだと最近言った。
     それでも サウジの当局者は,新しい契約は無論のこと,王国がこれらの公約についてさえ支払えるか懸念を抱くようになった … と 事情を知る複数の人が言う。
     これらの人は,最近購入した 5% を越えてテスラの持ち株を大幅に増やす計画を PIF が本気で考えているのか疑わしいと言う。
     Wall Street Journal が報道したように,昨年の時点で,PIF 首脳と外部コンサルタントは 基金の評価額を計算するのに懸命だった。評価額は,Sabic (世界最大の石油化学会社 Saudi Basic Inductries Co) の 70% の権益を含めて $2,000 億から $3,000 億の範囲にあった。
     いずれにせよ,電気自動車メーカーの Elon Musk が "王国が関心を寄せている" と称するテスラのバイアウトに資金を援助するのは,膨大で複雑な企てである。
     これよりも遥かに大きく複合的な取り組み ── 国有石油企業 サウジアラビア石油会社 (アラムコ) の上場が 大失敗に終わった後では,なおさらである。
     1ダースを超える銀行,法務会社,外部顧問らとの協議を2年以上にわたって続けた挙句,上場に伴う審査への対応への疑念の中で,アラムコ IPO の準備は行き詰まった。
     最近では,政府と PIF が,アラムコの IPO で調達を期待していた $1,000 億を調達する別の方法を探している。
    サウジアラビアのソブリン基金
    王国の PIF は,テスラの 5% 弱の持ち株を増やす交渉をしてきた。
    しかし, PIF が大型取引の資金を用意できるかは不明である。
    PIF は,自分が持っている Sabic をアラムコに買ってもらいたい。
     そうすれば PIF は $500 億 ~ $700 億の資金を入手できる。
    PIF は SoftBank と Blackstone が運用する基金に 既に $650 億を約束済みである。
     政府は,PIF が所有する Sabic の支配株をアラムコに買ってもらう計画を考えている。この取り引きは,もしも成功すれば,$500 億 ~ $700 億を PIF のカバンに入れる。王国はこの取り引きに熱を挙げているが,状況に近い1人によれば,実現するかどうかは不明である。
     ソブリン基金は現在 数十億ドルの国際借り入れを市場から行なっている … と一部の人が言う。
     原油価格が最近上がったにも拘わらず,王国史上最大の財政刺激パッケージを発表したことを受けて,サウジ政府の 今年の予算は赤字である。
     サウジアラビアは,2023 年までに財政赤字をクリアーするために設定した国家債務上限 [GDP 比?] 30% に近づいている。2年前に 王国は初めて国際債券市場から (支出にあてるため) 最低 $400 億を国債により調達した。
      —Miriam Gottfried contributed to this article.
     Write to Maureen Farrell at maureen.farrell@wsj.com
    この記事,タイトルがおかしいんじゃないか?
     テスラは ほとんど無関係であり,"サウジアラムコの上場破綻" が主題である。
     SoftBank に提供予定の $450 億は,サウジアラムコが 2兆ドルの上場を行ない,その 5% の手取り金 $1,000 億を PIF に回してもらうのをあてにする … というのが基本的前提だった。
     それが壊れたのである。
     なぜ壊れたのか。過去の複数の記事が IPO の不要なことに触れている。
     1つには 内部紛争もおもしろい (2018/04/19 Financial Times)。
     カネのあるところでは 奪い合いが起こる (アラムコ-エネルギー省 対 PIF)
     SoftBank は PIF の側に組し,アラムコを実質的に敵に回した。これだと アラムコのカネは回って来ない。
    ──────
     『サウジアラビアの内紛が,ソーラー取り引きに影を投げる』 (Financial Times, 2018/04/19)
    ──────
    日経は これほどの重要ニュースをだんまり。テスラの問題ではないんだよ。
     サウジから あと $300 億入る予定が ・・・ 。
     サウジアラビアの石油の富は PIF に無限の資源を与えるというのが一般の認識であるが,現実には 王国の財政は逼迫している … と顧問や政府関係者が言う。

  32. Saudi Arabia Weighs Larger Tesla Stake as Part of Plan to Make Electric Cars
    サウジアラビアは,電気自動車製造計画の一環としてテスラの権益の更なる取得を検討する
    Wall Street Journal,2018/08/13 @01:13 pm ET
    By Summer Said, Rory Jones & Maureen Farrell (ドバイ, ドバイ, ニューヨーク)
    王国は,経済のための基礎として原油からの多様化を試みている。
    今年4月グーグルの本社など シリコンバレーを訪問したサウジアラビアの
    Mohammed bin Salman 皇太子(©Handout | Reuters)
    [読者コメント 0 件]
    テスラの大きな権益を取得したいとのサウジアラビアの希望は,王国に電気自動車製造の拠点を建設し,原油から多様化を図ろうという野心的計画の反映である。
     ソブリン基金は,テスラの 5% 弱の持ち株の引き上げを検討中である … と事情に詳しい複数の人が語った。 公共投資資金 (PIF) の持ち株の増加についてサウジ内部での議論は,テスラの Elon Musk CEO が 先週 会社を非上場化する提案をツイートしたことを受けて加速したと彼らは言う。
     月曜日,Musk はブログへの投稿で,昨年初めからテスラを非上場化するのに役立つ大型投資について PIF と協議してきたと書いた。この数ヵ月,PIF の幹部らはテスラに 同社への投資について数度接近した … と彼らは言う。
     サウジアラビアが Musk と非上場化計画について活発な協議を行なっているかどうかは不明であり,そのための資金手当てをするつもりがあるのかも不明である。PIF の財務に詳しい2名は,テスラの大量の株式を取得する本気の交渉が行われているとは疑わしいと言う。実際,PIF は現在抱えている 資金投入公約を実施する方法を見つけるのに苦戦している。
     PIF のスポークスマンは,コメントを拒んだ。
     とは言え テスラとの取り引きは,サウジアラビア最大の収入源である原油と競争する技術への異常な博打であろう。テスラの電気自動車は,もしも王国内で製造されれば,サウジの他のハイテク投資を補完することになり,一部のサウジ首脳が 将来の "グランド・ビジョン" と呼ぶところの産業基盤を生み出す … と事情に詳しい1人が言う。
     サウジアラビアは,(石油と天然ガスによる発電に取って代る,しかもソーラーパネルと蓄電池を製造するハブを中東に生み出す) 巨大ソーラー発電プロジェクトを建設するとこれまで言ってきた。王国の計画は ソーラー・プロジェクトと電気自動車を越える。サウジは 砂漠に Neom という名の都市を建設したい。この都市は再生可能エネルギーで動き,ロボットが活躍し,無人運転車が走る。この計画は 世界中からハイテク投資と創新を集めると 王国の関係者は言う。
     これら多くのイニシアティブの背後にいる サウジの Mohammed 皇太子は,今年の4月にシリコンバレーに旅行して 取り引きの打診を行なった。皇太子は テック企業の権益を取得することにより,王国に専門知識の導入を期待する … とサウジ関係者が言う。32 歳の皇太子は,テスラの権益を増やすことについて最近 議論を深めた … と事情に詳しい複数の人が言う。
     PIF の資金供給には制約とコミットメントがあるので,この取り引きには財務の面でかなりのハードルがある。サウジ政府は,国営のサウジアラビア石油会社 (通称アラムコ) を上場してその手取り金を PIF の資金にする計画を棚上げにした後,PIF に間接的に回る数百億ドルを集めるようアラムコに懇請している。
     アラムコの上場は 約 1,000 億の調達を目論んでいた。サウジの関係者は 今では アラムコが 石油化学会社の支配株を PIF から買う代替え案を進めている … と このプロセスに詳しい複数の人が言う。こちらの取り引きは,もしも成功すれば $500 億 ~ $700 億を PIF の金庫に入れる。
     手持ちの現金を増やす取り組みの一環として,PIF は現在,国際市場から借り入れを行なっている … と彼らは言う。
     上述の異常な資金計画は,サウジアラビアの逼迫した財務の表れである。原油価格が最近上がったにも拘わらず,王国史上最大の財政刺激パッケージを発表したことを受けて,サウジ政府の 今年の予算は赤字である。
     サウジアラビアは,2023 年までに財政赤字をクリアーするために設定した国家債務上限 [GDP 比?] 30% に近づいている。2年前に 王国は初めて国際債券市場から (支出にあてるため) 最低 $400 億を国債により調達した。今年は さらに多くの国債を発行する予定であり,GDP に対する比率は 19% を超える。
     PIF はこれまで既に 外部投資家と新規プロジェクトに 数百億ドルの公約を行なっている。その中には,Blackstone Group LP が運用するインフラ基金への $200 億,($5,000 億未来都市のカギを握る投資家) SoftBank Group Corp が率いる テック基金への $450 億がある。
      —Jenny Strasburg in London contributed to this article.
    SoftBank Vision Fund への PIF からの入金は,もともと アラムコ IPO による $1,000 億が期待されていた。
     ところが アラムコの IPO は棚上げになったらしい。
     このため PIF は資金繰りに窮迫している。国際市場から借り入れも行なっている。
     Vision Fund への入金はどうなっているの? 今年に入ってからは ピタッと止まっているようだ。
     2016 年に初めて国債 $400 億を発行した国が,同じく 2016 年に SoftBank に $450 億を約束する非拘束の覚書を結んだ。どういうことか?
     不思議である。まぁ サウジの国債の金利は低いだろうから,SVF の確定 7% 定期預金口座に預ければ,数% の利ザヤを稼げる。しかし,そこまで せこいことをサウジの皇太子がやるとは ・・・ 恥ずかしいだろ。
    ──────
     そうなんですよ。
     日経は書かないが,$5,000 億の未来都市 Neom [ニーアム] にも 社長は,"良いリターンを求めない" と何度も出資の約束発言をしている。日本の現在の総発電能力の2倍近い度肝を抜く規模のソーラー発電 200 GW はその一部であり,非拘束 (non-binding) ながら,最終的に $2000 億 (WSJ) を契約した (2018/03/28, サウジ国営通信, WSJ)。
     だから 差し引き SoftBank 側の大幅超過出資になるように計算/裏合意されているのか?
      あるいは すべて非拘束だから,どちらも 互いにあてにしないのか? インシャーアッラー
      たとえば, 2017/09 にサウジと SoftBank が提携して "世界をリードする共同ロボット・イニシアティブ" を立ち上げるという トンデモお笑いの発表があり (どちらにもそんな資格は無かろう),NHK がこれを伝えたが,以後 進展は ゼロのようである。
     砂漠に新都市を建設するとなれば,港湾,道路,橋,鉄道,水道 (石油燃焼による大規模蒸留?),電気,(最後に) 通信 などがインフラとして必要になる。いずれも 良いリターンは見込めない。

  33. Saudi Fund in Talks to Invest in Tesla Buyout Deal
    サウジの PIF が,テスラのバイアウト取り引きへの投資を協議中である
    Bloomberg,2018/08/13 @12:35 JST
    By Matthew Martin, Ruth David & Claire Boston
      王国の基金は,バイアウトへの投資のやり方を協議中であると言う。
      取締役会は顧問らとの面談を用意する中,投資家は訴訟を始める。
    サウジアラビアのソブリン基金は,Elon Musk の計画が電気自動車メーカーの取締役会, 顧問, 投資家から厳しい疑問の声が増す中,テスラを非上場化すべく立ち上げられる投資家プールの一員となるための作業を行なっている。
     サウジアラビア王国の公共投資基金 (PIF) は,最近 テスラの 5% 弱の権益を取得したが,基金の計画を知る複数の人によれば,バイアウト取り引きにどうすれば係わることができるかを探っている。ただし,この取り引きの $820 億という巨額は,テスラが他の資金源も探す必要がありそうなことを意味する。
     テスラの取締役らは,今週 財務顧問らと面談して Musk の提案を評価する用意をしている。CNBC によれば, 取締役らはおそらく,取締役会の議長である Musk に忌避を求めるだろうし,別の顧問を自分で雇うように既に言っただろう。Musk は社内に大型の利益関係者を1人 または 2人持つことを避けたがっており,代りに大手グループから資金を集めたい … と彼らは言う;資産運用会社を含めて 他の投資家を求めている。
     バイアウト取り引きを発表する Musk のツイート ── ならびに "資金を確保した" との宣言 ── は,投資家にショックを与えた。彼は今や この取り引きの資金手当てに関する主張の裏付けを求められている。事情に詳しい1人によれば,アメリカ証券取引委員会 (SEC) は,このツイートが事実に基づくものかどうかを調査中である。また 少なくとも2人の投資家が,Musk とテスラを株価操作の容疑で提訴した。Musk はテスラの 20% を所有するが,一般株主から会社を買うには $600 億以上を必要とする。
     PIF は,コメントの要請に応じなかった。テスラは コメントを拒んだ。
     北京の BNEF (Bloomberg New Energy Finance) の上級社員 康 楠楠 (Nannan Kou) によれば,テスラが資金を獲得するのは容易ではなかろう。
     "問題は,何と言っても テスラの将来の販売にある。これは,基本的には鶏と卵の問題だ。" … と 康楠楠 は E-メールで言った。"現段階では,すぐに納車が拡大すると テスラが一般投資家を説得することは難しい。したがって,投資家になってくれる人は,我慢強く,しかも戦略に注目する人でなければならない。"
     初期の協議
     テスラを非上場にする協議は 以前に失敗した。Musk と SoftBank Group の Masayoshi Son は,昨年 テスラの非上場化に触れる協議を行なった … とこの協議を知る2人が言う。この交渉は,所有権について合意が得られなかったために潰れた。
     詳細が非公表であることを理由に匿名を求めた事情を知る複数の人によれば,テスラを非上場にする取り引きの資本提供源として SoftBank は参加を計画していない。その理由として 彼らは,SoftBank が ゼネラルモーターズの自動車の将来に大きな賭けを既に張ったからであり,テスラは 激しい競争に直面しており,大量生産の野心の実現はまだこれからだと言う。
     サウジの基金の協議は,Musk が会社を非上場にする計画を考えているとの8月7日のツイートの前に始まった。PIF は,テスラへの投資を 世界最大の原油生産者が原油に対してヘッジする戦略的手段と見る … と彼らは 匿名を条件に言った。サウジの基金がテスラの権益を増やすかどうか,増やすとすればいくら増やすか … について未だ確たる決定をしていないが,協議は進んでいる … と彼らは言う。PIF がテスラに どれだけ投資するかは 今のところ不明である。
     ウォール街は,誰が Musk と提携するかの憶測に溢れている。事情を知る複数の人によれば,Musk とその顧問らは,所有権が少数の大手新規投資家に集中するのを避けるため,自動車メーカーの非上場化を支援する投資家のプールを求めている。Musk はこの取り引きの後もテスラの 20% を所有したい意向だと言っている。
     テスラの自動車生産目標と販売目標に関する公的発表について既に情報を集めてきた SEC は, Musk のツイートを受けて テスラの声明の審査を強めている … と事情を知る複数の人が言う。
     別の1人によれば,PIF は少数株式を買う交渉のため,何ヵ月も前に Musk に接近したが Musk は当初 この投資に抵抗し,新株を発行する計画は無いと言った。その結果,PIF は 投資銀行に依頼して,市場から $20 億の株を買い入れることに決めた … とその人は言う。
     PIF が非上場化取り引きに参加するという現在の協議は,数週間前にスタートした … と別の複数の人が言う。
     サウジ政府は,PIF を2兆ドルのパワーハウスに変え,王国の石油依存経済の多様化に役立てる計画である。 土曜日のツイートで サウジのエネルギー省は,サウジアラビアは現在 (自動車産業に部品と原材料の供給を支援する) 都市を開発中であると言った。その目標は,輸入を減らし,輸出をふやし,外国投資を促し,雇用をふやすことである。
      — With assistance by Oliver Sachgau, Dinesh Nair, Zaid Sabah, Ed Hammond, and Yan Zhang

  34. Opinion:Silicon Valley and its fatal attraction to Saudi Arabia
    オピニオン:シリコンバレーとそのサウジアラビアへの死の傾倒
    Financial Times,2018/08/11
    By Tom Braithwaite
    歴然とした矛盾と 災害の明白な可能性は,カーペットの下に掃き込まれた。
    シリコンバレーの王族は,今年の4月 本物の王族の訪問を受けた。中でも,グーグルの共同創業者 Sergey Brin とベンチャー資本家 Peter Thiel が アメリカ旅行中の Mohammed bin Salman 皇太子に会った。
     2つの王国の間の若芽の関係は,今週 再び見られた。Financial Times は,サウジアラビアのソブリン基金が $20 億を投じて テスラの 5% 弱の株を取得したことを暴いた。
     両社の相互傾倒は 明白だ。Mohammed 王子は,サウジの石油経済を 投資と技術のパワーハウスに変換する野心的行動計画を持つ。サウジから見れば,テック企業 ── 特に 急速に現金を燃焼するテック企業は,忍耐強く懐の深い投資家を高く評価する。
     とは言え,サウジのテック散財は 見た目以上のものであり,歴然とした矛盾と 災害の明白な可能性がカーペットの下に掃き込まれている。
     まずは,スプロール現象 [=無秩序な拡大]
     日本の SoftBank が,技術への投資の規模と量により大量の注目を引き出したのは良かったが,その $1,000 億 Vision Fund の半分近くは サウジのカネであることを思い出そう。つまり,企業向けメッセージング・アプリ Slack やオンライン貸金業者 SoFi のような さまざまの企業が,急騰した評価についてリヤドに 部分的に 感謝することを意味する。今週は,楽観的に評価された共有オフィス・プロバイダ WeWork が追加で $10 億を受け取った ── このように Saudi/SoftBank 資金は ニュースがほとんど注目しないような辺りに幅広くバラ撒かれている。
     名のあるいくつかの企業についても,これは同じである。消費者向け VR 企業 Magic Leap が調達したカネのほゞ 1/5 は,サウジの PIF からの $4 億 直接投資による。Uber については,SoftBank が昨年末に 17% の権益を $90 億で取得する前の 2016 年6月に, PIF が 5% を取得した。これほど大量の権益は 現実の影響力を持つに十分であり,実際 PIF の Al Rummayyan が配車企業の取締役の座に座っている。
     皇太子の吹聴する自由化行動計画にも拘わらず,彼は いまだに抑圧的体制を支配する
     これらは,我々が知る限りのことに過ぎない。テスラの発表は,サウジの人たちが かなりの大量を (開示が要求される 5% ぎりぎり未満で) 音もなく投資する用意があることを示す。サウジ以外のどんな外国政府も,アメリカのテック企業にそこまでのポジションを構築してはいない。
     そしてアメリカのテック企業は,この政府の態度が 自らの言う価値から 想像し得るほど離れていることを思い出す必要はない。Uber が PIF からの初回の投資に飛びついたとき,王国では 女性の車の運転は依然として禁止されていたし,リヤドの リッツ-カールトンホテルに閉じ込められていたサウジの実業家らが解放されたのは,ほんの数ヵ月前のことである。
     皇太子の吹聴する自由化行動計画にも拘わらず,彼は いまだに抑圧的体制を支配して 残虐な戦争を外国に仕掛け,国内では人々を斬首する。この状況では,シリコンバレーのリベラルなエリートによる投資の受容は,せいぜいのところ最大の偽善行為である。
     このような良心の呵責は,Trump 政権からは期待できない。しかし,ここは敏感な業界である ── SoftBank は Nvidia のような 人工知能と仮想現実の先端的チップ企業の権益を所有する。
     そしてどちらの側にも安定性は保証されていない。Trump 政権は同盟国に対してさえコロコロと考えを変えたがる;おまけに その広大な権力を行使して外国投資,特に中国からの投資を阻止してきた。
     サウジ側では,王国の当局者が ── サウジに投獄されている人権運動家に支援の声を挙げたカナダ外相に腹を立て ── 今週 カナダの株式, 債券, カナダドルの現金を "価格を問題にせず" 売却するよう海外の資産運用会社に命令したのは驚くべきことだった。これでは テック・セクターに飽きるのも間もなくだろう。希望しているサウジアラビア向けの投資も,それに見合って遅いに違いない。この投資三昧がブームに終わるか 破綻に終わるか 大特売処分に終わるかは,期して見るべきであろう。

  35. Saudi Arabia’s Spat With Canada Risks Backlash From Investors
    サウジアラビアとカナダとの小競り合いが,投資家の反発を招くリスク
    Wall Street Journal,2018/08/06 @05:36 pm ET
    By Margherita Stancati
    外交紛争は,現在カナダにいるサウジの学生にも影響を及ぼす。
    今年4月のサミットでの サウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子。
    Mohammed 皇太子は, 外国からの投資をさらに引き出すことを目指す改革を
    導入した。 (©Bandar al-Jaloud | AFP | Getty Images)
    [読者コメント 128 件]
    サウジアラビアのカナダとの外交の破壊は,経済の立て直しを目指す中,投資家を呼び寄せようとする王国の取り組みを複雑化するリスクがある。
     サウジアラビアは月曜日,カナダ大使を ペルソナ・ノングラータと宣言し,24 時間以内に王国から退去するよう求めた。カナダ大使 Dennis Horak を追放する決定は,カナダ外相が サウジアラビアを人権運動家の逮捕で批判した後に起こった。
     "内政問題に介入するカナダの受け入れ不可能な試み" に反対して,サウジ外相は "カナダとのあらゆる新しいビジネス および 投資の取り引きを差し止める" … と言った。
     カナダとの外交上のこの争いは,政府から奨学金を得ている カナダの 7,000 人のサウジ学生にも影響を与える。サウジアラビアの Mubarak al-Osaimi 教育相は月曜日,王国が カナダでの奨学金 および 訓練プログラムへの資金提供をストップすると言った。そして,この決定により影響を受けるサウジ学生の他国への移動を援助すると言った。
     これとは別に,国営航空会社 Saudia は, 8月13日からカナダへのフライトを取りやめると発表した。
     カナダの Chrystia Freeland 外相は月曜日,サウジアラビアがカナダ外交官を追放した措置を "王国に抑留されている人権活動家を擁護する" 声明に基づき,カナダ政府は "深く懸念する" と述べた。
     バンクーバーでの記者会見で外相は,この外交上の口論の下で カナダと王国との関係がどのように展開するかについて サウジアラビアの考えを聞こうと待っているところだと述べた。
     "我々は これまでに言ったことを守る。我々は常に 人権と女性の権利のために声を挙げる。"
     同盟国間の緊張の勃発は,王国の激動の時代に投資家の間で懸念を引き起こすリスクがある。
     サウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子は "Vision 2030" と呼ばれる壮大な改革計画を立ち上げた;この計画は,頑なに保守的な石油国家から 石油への依存が少ない 社会的に自由な国家へと 王国を変換することを目指す。ただし Mohammed 皇太子は,重要な決定について外部の批判を我慢するつもりは無いとも明言してきた ── このスタンスを アナリストらは,サウジアラビアが改革に必要とする資本の流出につながりかねないと言う。
     サウジアラビアを魅力的な投資先/取引先としてブランド化することは,Saudi Vision 2030 の基本仮定の1つである。" … とオタワ大学の中東問題専門家 Thomas Juneau 助教授が言う。"今回のような衝動的な外交政策の決定は,その正反対の効果を生む。"
     原油価格の最近のリバウンドにも拘わらず,サウジ首脳は 王国への事業の誘致に苦戦している。国連が今年6月に発表した数字によれば,サウジアラビアへの外国からの直接投資は,2016 年に $74 億だったのが 2017 年には $14 億に激減した。14 年ぶりの最低である。
     投資家の関心が一般に低い中で,注目すべき例外がある。SoftBank Group Corp の $1,000 億テック基金は リヤドにオフィスを設立した。また,映画館事業を含む外国企業がエンタテインメント事業に投資した。
     だが,サウジアラビアは 国内向けの措置を取っている ── 新しい消費税,エネルギー助成金のカット,外国人労働者の雇用の制限 ── これらは 外国資本にとって王国の魅力を薄くした。昨年行なわれた腐敗を一掃する著名な実業家の逮捕も,投資家をビビらせた。
     王国のアグレッシブな外交政策姿勢は,今や かなりの懸念である … とアナリストらは言う。なぜなら,これはサウジ首脳の神経過敏さを反映するものであり,それが投資家の感じる不確実性をさらに深めるからだ。
     "素早い反応は,思慮深い熟慮ではなく,無謀さを反映する。" … とワシントンに拠点を置く アラブ湾岸国家研究所 の政治エコノミスト Karen Young が言う。"ビジネスにとって,このような行動は,明確な赤線 [=越えてはならない一線] や規則が存在しない 国 または 支配階級を 数多くの問題で 傷つけるリスクを強調する。"
     カナダだけではない。サウジアラビアとドイツの外交関係は,昨年11月に当時のドイツ外相が王国を (レバノン首相に圧力を掛けて辞任させたと) 批判して以来 緊張している。この件に詳しい複数の人によれば,その後,サウジ政府は ドイツ企業に新たな契約を与えないことを密かに決めた。
     人権問題への批判に対して大使を追放するのは,最悪の対応である。" … と湾岸に拠点を置く或る外交官が言う。"これでは,欧州のビジネスマンの間に見られるサウジアラビアへの偏見を固定する。たとえば,ビジネス・ファーストであっても人権問題にあまり関心の無い国から投資家を呼び寄せたいのだと。"
     カナダとの貿易の凍結は,カナダ経済に影響を与えない見込みである。両国間の相互貿易は規模が比較的小さく,カナダ政府のデータによれば,2017 年に C$40 億 (US$30.8 億) である。世界銀行の最新のデータによれば,サウジアラビアは 2016 年のカナダの輸出の 僅か 0.24% を占めるに過ぎない。
     今回の外交論争が,具体的な取り引き ── 例えば General Dynamics Land Systems のカナダ部門からサウジアラビアに C$150 億の軽装甲機動車を売却する契約 (2014 年) ── に影響するかどうかは不明である。
     サウジ当局が拘束した人権擁護運動家の解放を ここ数ヵ月要求してきたのは,カナダだけではない。アメリカも 国連も 欧州連合も,人権運動家の逮捕に 公然と懸念を表明してきた。
     今年5月以来 少なくとも 18 人が逮捕された。うち4人は 一時釈放された。多くは女性の権利 ── 6月に認められた女性が運転する権利を含む ── を訴えていた。最近逮捕された中には,投獄中のブロガー Raif Badawi の妹で 著名な活動家 Samar Badawi がいる。
      —Rory Jones in Dubai and Paul Vieira in Ottawa contributed to this article.
     Write to Margherita Stancati at margherita.stancati@wsj.com
     サウジアラビアの独断的外交政策
     王国は,敵と味方の両方に対してアグレッシブな立場を主張し続け,まちまちの結果を得た。
     2015 年3月:
     サウジアラビアはイエメンに軍事介入し,ライバルのイランと組んだフーシ反乱軍と戦った。 それから3年以上経って,サウジ主導の連合軍はイエメンで立ち往生したままであり,紛争の解決は見えていない。
     2016 年1月:
     サウジアラビアはイランと外交関係を断ち,イランを孤立させるよう同盟国に掛ける圧力を強める。
     2017 年1月:
     サウジアラビアと アラブの同盟国3国が 隣国カタールとの外交関係を断つ。その理由として 湾岸の小国 カタールの "破壊的外交政策" を挙げる。
     2017 年11月:
     サウジの指導者らが レバノンの Saad Hariri 首相をリヤドに召喚し,Hariri は 首相を辞任する ── この件は,サウジ首脳が Harini に圧力を懸けて意に反して辞任させたと激しい非難を呼んだ。Harini は 後に辞任を撤回した。さらに,当時のドイツの外相がこの件について王国を批判すると,サウジアラビアはドイツ駐在大使を召還した。
     2018 年8月:
     サウジアラビアは,リヤド駐在のカナダ大使を追放し,カナダとの全てのビジネス関係を阻止した。この動きは,人権活動家の逮捕についてカナダ外相が王国を公然と叱責した後に起こった。
    ここがいつも分からない。 ・・・
     Mohammed 皇太子は, 外国からの投資をさらに引き出すことを目指す Vision 2030 を導入した。
     外国の民間企業からさらにカネを分捕る計画を立てたんでしょ?
    それはそうと,アラムコの上場はどうなった?
    ──────
    日本政府もサウジの人権問題に口を挟めば,何が起こるだろうか?

  36. Saudi Aramco restructures non-oil assets ahead of IPO: sources
    サウジ・アラムコが,IPO を控えて非石油資産を整理する:情報筋
    Reuters,2018/06/04 @08:40 pm
    Rania El Gamal, Katie Paul &Hadeel Al Sayegh
    この動きはアラムコの営業を整理することを目的とし,事業リスクを明確にすることにより評価しやすくし,株価を高くすることに役立つ … と金融筋と業界筋がロイターに告げた。
     "これで アラムコは細身の会社になる。" … とアラムコの計画に詳しい或る情報筋が言う。
     国有の石油巨人は,年金基金の処理や航空部門の計画についてコメントを拒んだ。
     来年に予想されているアラムコの上場は,王国の経済を石油を超えて多様化せんとする政府の野心的 "Vision 30" 計画の柱である。
     Mohammed 皇太子は,この IPO がアラムコを 最低2兆ドルに評価するものと期待する。そして 5% の売却により $1,000 億を調達し,これを Vision 2030 プロジェクトの資金に充てるつもりである。アナリストらは, アラムコを 1兆ドル ~ 1.5 兆ドルに評価する。
    サウジ・アラビア, Dammam のアラムコ専用空港で
    アラムコ専用機に向かうアラムコ従業員,2018年5月22日。
    Reuters | Ahmed Jadallah)
     サウジアラビアは,(社会的目標を持ち,民間セクターに委ねるには大き過ぎる) 政府プロジェクト ── たとえば,産業都市, スタジアム, 文化センターなどの建設 ── の実行をよく アラムコに任せる。
     世界最大の輸出企業は,社内に学校, 住宅, 航空事業,病院を持ち,ざっと 55,000 人の従業員とその家族が利用する。
     だが,史上最大と予想される IPO でアラムコの投資家になりそうな人たちは,そういう複雑な資産に投資するつもりは無かろう。そもそも アラムコの中核石油事業のように大きな利益は見込めないからである … と情報筋は言う。
     そこで アラムコは,数十億ドルの社内退職年金基金のために新しい子会社を6ヵ月前に発足させた … と事情に詳しい複数の情報筋が言う。
     この年金基金は Wisayah と呼ばれるが,アラムコの本社があるダーランの金融プロの小さなチームにより運用されている … と 中の1人が言う。
     "これは最善のやり方だ。ハッキリと線を引くことにより,カネが他の事業活動に使えないようにした。" … と 事情に詳しい別の情報筋がロイターに語った。
     飛行機と病院
     年金基金に加えて,2人の情報筋は,アラムコが航空部門のような非石油部門の一部をスピンオフするのではないかと言う。
    サウジアラビア,ルブアルハリ砂漠の Shaybah 油田のアラムコ専用空港の
    入り口を警備するアラムコ従業員,2018年5月22日。
    Reuters | Ahmed Jadallah)

     "アラムコ航空" は,サウジ・アラビア中の石油プラント, 精製プラントへの訪問者と従業員を運ぶために ボーイング 737 や エンブラエル 170 のようなジェット機を 10 機運用し,ヘリコプターも持っている。
     アラムコは昨年,IPO の準備の一環として,アメリカの建設会社 Jacobs Engineering Group と JV を形成し,石油とは無関係の 政府のインフラ運用プロジェクトを引き受けた。
     従来の石油会社の範囲外にあたる別の JV は,2013 年に設立された "Johns Hopkins アラムコ医療会社" である。これは アメリカの病院との JV であり,アラムコ従業員とその家族に医療を提供する。
     1人の情報筋は,この JV がアラムコ従業員だけでなく,一般に開かれるのではないかと言う。
     アラムコはこれまで,中核の石油・天然ガス事業以外のプロジェクトを (社会に対する企業の責任の一環として) 引き受けることにより,しばしば 身を守ってきた。
     しかし,アラムコがジェッダの Al-Jawhara サッカー・スタジアムとか 洪水の排水プロジェクトのような JV に係わることは,マンパワーが効率的に使われていないとの批判を内部で呼んだ。
     "これでは アラムコの資源が カネだけでなく 人材の点でも浪費されている。" … とサウジ・アラビアの或る業界関係者が言う。
     "もしも私が投資家ならば,何に投資しているかをはっきりさせたい。ファジーであってはならない。"
    全然知らなかったので,これには驚いた。"よろずや アラムコ"
     なお,アラムコ上場に関するサウジの基本的は考え方は,下の WSJ の記事に詳しい。

  37. Saudi Oil Minister Says Aramco IPO Is `Most Likely' in 2019
    サウジ石油相が,アラムコ IPO は 2019 年の "可能性が高い"
    Bloomberg,2018/05/25 @20:50 JST
    By Jack Farchy & Javier Blas
      Khalid Al-Falih 石油相は, "市場の準備が整う" のを待っていると言う。
      アラムコは,世界最大の IPO になるものと予想される。
    An offshore gas platform sits at the Karan gas field,
    owned and operated by Saudi Aramco. (©Saudi Aramco)
    サウジ・アラムコの新規株式公開 (IPO) は,2019 年に行なわれる "可能性が高い" … と王国の石油相が金曜日に述べ,世界最大の株式販売と見られる IPO の遅れを認めた。
     "このタイミングは,当社の準備やサウジ・アラビアの準備よりも,市場の準備に掛かっていると私は思う。" … と (アラムコの議長でもある) Khalid Al-falih は ロシアのサンクトペテルブルクで開催中の国際経済フォーラムで 金曜日に述べた。
     "当方の準備はできており,当社は基本的に あらゆるチェックボックスに既にマークを付けた。" … と彼は言った。"当社は単に市場が IPO を準備するのを待っているだけである。"
    Khalid Al-Falih on May 25.
    Chris Ratcliffe | Bloomberg)
     これまで ほぼ2年間,サウジの当局者は 2018 年後半の IPO は "順調に進んでおり,予定通りだ" と繰り返してきた。しかし 今年3月に初めて,Mohammed bin Salman 皇太子の経済現代化計画のバックボーンを延期して,IPO を 2019 年に遅らせるかもしれないと示唆した。
     "可能性が高いのは 2019 年であるが,発表があるまで 我々は知らない。" … と Al-Falih は言った。"私が言えるのは 「乞うご期待 (stay tuned)」が全てである。"
     アラムコの IPO は,金融市場にとって 一世一代のイベントとなろう。サウジの当局者は アラムコを 2兆ドル以上に評価して,その 5% を売り出すことにより 記録破りの $1,000 億を調達しようと望んでいる。この規模は,2014 年に中国小売り業アリババ集団が調達した $250 億を矮小化する。
     2兆ドルという評価には冷や水を浴びせる向きが多く,Bloomberg News が今年発表した同社の会計情報をもとに計算すれば,1兆ドルに近いだろうと言う。
     "可能性が高いのは 2019 年であるが,発表があるまで 我々は知らない。" … と Al-Falih は言った。 "私が言えるのは 「乞うご期待」が全てである。"
      ・・・ 笑うしかない。下の記事に明言されているように,MbS 以外には当事者能力が無いからだ。
      ・・・ というのは浅薄な見方であり,こうやって 何度も繰り返して先延ばしする 高等作戦である。

  38. Aramco Scales Back IPO Plan, Eyes Saudi-Only Listing
    アラムコは,IPO 計画を縮小し,サウジだけでの上場を狙う
    Wall Street Journal,2018/03/19 @03:50 pm ET
    By Summer Said & Maureen Farrell (ドバイ, ニューヨーク)
    石油の値上がりが,大型国際株式公開への推進力を減らした。
    サウジアラムコのマニファ施設の外観。
    国営石油会社は,国内証券取引所での上場を見据える。
    (Saudi Aramco Handout | Reuters)
     サウジアラビアは,石油の巨人アラムコの上場への野心を弱めつつあり,来年サウジ証券取引所だけへの上場を計画している。外国の取引所が適当かどうかは,時間を掛けて判断する … と この手続きに詳しい政府官僚らが言う。
     この決定の理由は,1つには裁判のリスクがあること [9.11 法案が 2016/09 に成立した] ならびに 原油価格の上昇により大型上場の必要が薄れたからである。
     アラムコの上場は,ニューヨークなどの国際市場で $1,000 億ものカネを調達すると予想されており ── ニューヨークでの上場を公然と求める Donald Trump 大統領から支持を得ていた。
     石油が豊富な王国の日常を治める Mohammed bin Salman 皇太子は,アメリカ上場の裁判リスクが克服し難いとの考えに負けるに至った … とサウジ官僚 および この手続きに近い人たちが言う。
     皇太子は 月曜日に始まるアメリカ旅行の間 アメリカ実業界のリーダらと会見の予定であるが IPO について発表を行なう予定は無い … とサウジ官僚らは言う。
     アラムコにとって国際 IPO は 当初想定したより遥かに複雑になった … とサウジ官僚らは続けた。1バレル $65 付近の石油は王国の予算を支えており,国際上場が良い考えかどうかを決める時間稼ぎに役立った。Mohammed 王子は当初 2016 年初めの IPO を考えていた;そのころ原油価格は $30 を割っていた。
     Tadawul (サウジの取引所の名前) での上場は,ニューヨーク, ロンドン, 香港のような取引所に上場した場合に生じる 裁判のリスクと開示のリスク無しにアラムコを公開するという Mohammed 王子の約束を履行する機会を政府に与える。この数週間,サウジ官僚らは Tadawul 上場が 国のためになるという主張を公言している;地元市場を活性化し,一般のサウジアラビア人が 国の王冠宝石を手にできる … という言い方である。
     "我々が今日知る唯一のことは,Tadawul が要の上場先だということだ。" … とサウジの Khalid al-Falih 石油相が 今月 CNN に語った。"アラムコの Tadawul 上場は 資本市場にとって大きな材料だろう。"
     質問に答えて アラムコは,IPO が Tadawul を "ホーム取引所" として含むと答え,"国際上場の広範な可能性を 現在もなお活発に検討中である。当社は IPO の過程でコメントを行なうことは差し控える。" … と続けた。
     Tadawul 上場であっても,アラムコと 取引所自身に問題を生むこともあり得る。なぜなら,ここは小さな取引所であり,アラムコのような大企業の上場に伴って発生する大規模取り引きを支援できる内部の管理と技術があるかは不明である。サウジ官僚が昨年設定した期限 今年10月までの国内上場は無さそうである。上場手続きに近い人たちと官僚らは,IPO の手続きが順調に進んだとして,地元での上場は 最も早くても 2019 年4月だと言う。
     アラムコの上場計画は変わり得る。Mohammed 王子は,顧問らの助言を拒否して来年の外国上場に突っ走るかもしれない。アラムコ上場は,Vision 2030 と呼ばれる経済変換計画の柱であり,上場による手取り金がサウジのソブリン基金に入れば,王国経済を多様化する投資にそれを振り向けることができる。
     顧問の間にも 王国が IPO を遅らせ続ければ,結局はどこの取引所にも上場できないという懸念の声がある … と この手続きに詳しい複数の人が言う。
     サウジ官僚らは,アメリカ旅行を終えて王子が王国に戻れば,どこにするか決めようとするのではないかと言う
     サウジ官僚らは,もしも中国が 何十億ドルも出して アラムコのコーナーストーン投資家になれば,香港上場は競争に残ると言う。中国はサウジアラビアの石油の上得意客であり,アラムコとの取り引きは長期供給の確保につながる。このような交渉は進んでいると 官僚らは言う。
    買い時
    原油価格の回復が, アラムコに対する
    外国上場への圧力を弱めた。
     一部のサウジ官僚は,サウジだけの上場という判断を疑問視する … と或る上級官僚が言う。
     "Tadawul だけにすれば,当初のメッセージの変更であり,サウジの人たちが 国営銀行の口座になにがしかを持つ手段として上場することになる。これでは王子が最初に IPO を言い出したのと全く違うことになる" … とその官僚は言う。
     Tadawul だけの上場は,大手の資産運用会社が 小さな取引所に投資できる金額の制限のために,アラムコの調達額を激減するだろう。
     Tadawul に現在上場されている株式全部の時価総額は,$4,800 億弱である。これは, 1.3 兆ドル ~ 2兆ドルとされているアラムコの評価額 の半分にも及ばない。
     アラムコがどこに上場するにせよ,顧問らは 原油価格が その価値を決める最大の要素だと言う;原油価格が高ければ高いほど,アラムコの時価総額は必然的に高くなるだろう。
     Tadawul は,MSCI や FTSE Russel のような何兆ドルものパッシブ投資に使われるベンチマーク指数に含むことが認可されていない。FTSE Russel は,王国の申請を6ヵ月前に拒否した後,今月末に サウジアラビアを指数に取り入れるよう決める予定である。MSCI は 今年末に決める。MSCI が Tadawul を新興市場指数に加えるとしても,効力を発揮するのは 2019 年6月である。
      Write to Summer Said at summer.said@wsj.com and Maureen Farrell at maureen.farrell@wsj.com
    基本知識として知っておいた方が良さそうなことがいくつか書かれていると思い,翻訳しました。

  39. Why the blockbuster Saudi Aramco IPO may never happen
    サウジ・アラムコのメガトン級 IPO が絶対に起こらない理由
    Financial Post - Reuters,2018/03/09 @02:15 pm EST
    By John Kemp
    決定が遅れれば遅れるほど,アラムコを2兆ドルに評価する この IPO は,絶対に起こらなくなるだろう。
     サウジアラムコの部分的民営化は,この2年間 石油市場の前に そそり立ち,原油価格の見通しに影響を与えているが,もしも 民営化が全く無いとすればどうだろうか?
     巨大石油会社の少数権益を売る可能性に最初に触れたのは,2016 年1月 当時副皇太子だった Mohammed bin Salman のインタビュー記事だった。
     この可能性は,経済改革, 多様化 および 国有資産の民営化に関するセクションで 極く簡単に触れられただけであった。
     ところが このちょっとした言及が,今世紀最大の売り出しから我も我も利益に与ろうとする コンサルタント, 銀行家, 証券取引所, 政府, 記者などから膨大な量の関心を引くに至った。
     報道によれば,サウジ・アラムコは 投資家向けに国際標準の企業会計を用意しており,石油資源の外部監査も依頼済みである。
     懸案の売り出しは,上場を一部でも確保しようとするアメリカ,英国,香港の証券取引所間の (それぞれが政府の支援を得た) 争奪戦の引き金となった。
     売り出しの技術的準備は,過去2年の間に完了したものと見られるが,売り出しの日取りは 何度も 順延されてきた。
     上場するかしないか,いつするか,どこでするかの判断は,アラムコには無く,政府にある; すなわち 新たに昇格した皇太子の手中にある。
     とは言え,現実に上場を決定するための時間軸さえ未だ無い。2019 年にずれ込んだように見える。
     サウジの政策立案者らは国内証券取引所に上場すると漏らしているが,外国に上場するという公約は未だ無い
     国内だけの上場から,戦略的パートナーへの非公開売却,外国上場,あるいは これら3通りの組み合わせという多様な選択肢をサウジ政府は持つ。
     この決定が遅れれば遅れるほど,売り出しをしない,あるいは 国内証券取引所限定の上場に縮小するという可能性が高まる。
     天然ガス・イニシアティブ
     大規模な戦略的イニシアティブが大幅に変更されるとか,ひっそり中止されることは,これまでにもあった。
    [参考までに,WTI 価格をウェブから転載した。
    1998 年には $20 を割る水準だった。
    2016 年は,$40 を割る安値だった]
     サウジアラビアの天然ガス・イニシアティブは,1998 年に始まった;当時 石油価格は低迷しており,王国の財政は圧迫されていた。
     天然ガス・イニシアティブは,王国の経済を多様化し,政府の役割を引き下げ,民間セクターの関与をふやすことを目指す 広範な改革パッケージの一環であった。
     このイニシアティブは,国際石油大手からかなりの関心を集めたが,数年間 迷路を辿り,大した前進も無く 2002 年 静かに棚上げされた。
     問題は,サウジ・アラムコの部分的民営化も同じ運命を辿るのではないかということだ。
     サウジアラビアの改革計画は,周期的に発生する傾向がある。原油価格と売り上げの低迷が 多様化と民営化を推進して 政治的アジェンダへと押し上げる;ところが原油価格が回復すると その勢いは失われる。
     天然ガス・イニシアティブと同様に,アラムコの株を売り出す提案は,原油価格がサイクルの安値だった 2016 年初めになされた。
     今では 原油価格は回復中であり,民営化の必然性は薄れつつある。
    A flame from a Saudi Aramco oil installion known as “Pump 3” is seen
    in the desert near the oil-rich area of Khouris,
    160 km east of the Saudi capital Riyadh.
     混乱する判断基準
     そもそもの初めから,アラムコの株式を売り出す判断基準は,明確であった試しが無い。
     アラムコの部分的民営化は,企業統治の改善につながる。
     副皇太子はインタビューで,透明性の改善と腐敗への対抗を民営化の理由として挙げた。
     国内証券取引所での売り出しは,通常のサウジアラビア人に アラムコを所有する感覚を与え,国内金融サービス業界の発展に拍車を掛ける。
     同時に,政府資産の野心的な多様化と 原油セクター以外から収入をふやす第1歩でもある。
     あるいは,単に政府が収入をふやすための練習に過ぎないかもしれない。もともと この計画は,財政準備金が急減し 収支が大幅な赤字というドン底で計画されたものである。
     売り出しは,アラムコ自身の内部で 常に 侃侃諤諤の的であった;サウジ社会の一部でも,多くの人が 意味のあることなのか静かに疑問の声を挙げてきた。
     アラムコのリーダーと従業員は,同社の経営がまずいという意見に激怒して,実際には 王国内で 運営が最高の機関の1つであると主張する。
     
     この売り出しは,アラムコ自身の内部で 常に侃侃諤諤の的であった
     
     株式を 国内証券市場 あるいは 外国人に売ることは,既に富裕なサウジアラビア人と外国の株主に資金が振り向けられるので,低収入のサウジアラビア人にとって 石油資産の富から得られる利益が減ることを意味する。
     批評家は,原油価格がサイクルの底の時に株を売れば,会社を過小評価することになると恐れる。
     結局のところ,この売り出しは 明らかに 意味のある多様化を達成するとか,政府のために意味のある金額を調達するには,規模が 余りにも小さい。
     5% の株を売る程度では,政府の石油依存を減らすのに十分な意味を持たない。
     かつて皇太子が これだけの値打ちがあると言った2超ドルの評価でアラムコを売り出したとしても,その 5% の $1,000 億程度では 大したカネにはならない。
     王国は 依然として ほゞ $5,000 億の外貨準備を持つ。これに $1,000 億が加わったとしても,政府が提案する 野心的な社会・経済変換プロジェクトの資金手当てとしては十分でない。
     増え続ける石油収入
     原油価格が上がるにつれて,政府予算の赤字は 縮小しており,王国の外貨準備は安定化した。
     王国は,(反腐敗キャンペーンの一環として資産の収用を含む) その他の収入源も探してきた。政府は これにより $1,000 億の収入を見込む。
     石油収入が 増加に転じる中,株式の売り出しによる利益は,コストとさまざまの問題に比べれば 低くなり始め,最終的な売り出しの可能性を引き下げる。
     そうは言っても,株式売り出しの可能性は,銀行家とプロのサービス会社から大きな関心を鳴り物入りで集めるのに役立った。
     更には アメリカと英国を含む政府とのプレイオフを可能にした。
     これほど多くの熱心な求婚者を抱えて,サウジは できるだけ長く 選択肢をオープンにしておきたい;外国の証券取引所での上場の可能性に完全にドアを閉じることは無いだろう。
     サウジのリーダーは,時間軸の公表を 未だ急いではいないようだ。結局のところ,彼らは 単純な国内上場で決着をつけるだろう;加えて,少数の戦略的権益を国際投資家に売ることはあるかもしれないし,無いかもしれない。
     最終決定は,サウジ・アラビアの事実上の支配者 Mohammed bin Salman によりなされ,この問題に関して 彼は 急ぐ様子は無い。
     © Thomson Reuters 2018
    これは,1ヵ月前の銃撃事件より前の 3月9日の記事である。
     検索していて偶然見つけたが,なかなか面白い。
     サウジが したたかであることが分かる (相手にしたら 手強い?)
      『大規模な戦略的イニシアティブが大幅に変更されるとか,ひっそり中止されることは,これまでにもあった。』
      ・・・ この "基本認識" が重要なのだろう。これで納得できた。
     そう考えれば,サウジ・アラビアとソフトバンクが連携して先進的な "ロボット標準" を建設するとか,同じく協力して 200 GW という 世界を呆れさせた超超巨大プロジェクト,$5,000 億 Neom 新都市計画も納得できる (社長はこれの協力に "良いリターンを望まない" と明言した)。
     "Vision 2030" も誇り高いプロジェクト (カネ儲けの話ではないという意味) であるが,やはり同じ運命を辿るのだろう。
     要するに,気軽に考えたことを気軽にぶち上げて,ひっそりと 何もせず,結局は取りやめるのだ。
     実際,ロボットは もう半年以上経つのに ソフトバンクとサウジの共同発表は何も無い。
     サウジアラビアの改革計画は,周期的に発生する傾向がある。原油価格と売り上げの低迷が 多様化と民営化を推進して 政治的アジェンダへと押し上げる;ところが原油価格が回復すると その勢いは失われる。
       確かに 1998 年ころは $20 を割る水準だった。だから 天然ガス・イニシアティブ! けれども その後 原油価格が回復すれば,そんなものは忘れてしまう。
       2016 年9月は,ちょうど $40 の安値を割るあたり! これは 大変だ (笑)。SoftBank イニシアティブが必要だ … ってんで 孫社長の 45 分で $450 億という話に乗った。けれども ・・・ 今では $70 を超す水準までになった。だったら もう あんな話はどうでもいいじゃん! … というわけか。
       今年に入って SVF への入金が途絶えているのは 原油価格回復のためと考えれば理解できそう。どうせ 非拘束の MoU。前提となるアラムコ上場のカネが入って来ないんだし。
     『このイニシアティブは,国際石油大手からかなりの関心を集めたが,数年間 迷路を辿り,大した前進も無く 2002 年 静かに棚上げされた』
     ここで,
      国際石油大手 → 東洋の大金持ち,
      2002 年 → 20?? 年
     と読み替えては如何?
     サウジアラビアのイニシアティブで,どんなものがこれまでに成功したか?
     単なる外国の民間企業に過ぎない SoftBank に 国家のカネを託するという前代未聞のイニシアティブである。たとえば,日本政府が 10 兆円ほどのカネの運用を どこか外国の運用会社に任せることがあり得るだろうか?

  40. Why a Saudi Aramco IPO Makes Absolutely No Sense for Saudi Arabia
    サウジアラビアにとって,サウジアラムコの IPO が 全く意味を持たない理由
    Fortune,2016/01/13
    By Cyrus Sanati
    もしもサウジアラムコが上場すれば,サウジ・アラビアは 極度の存立ジレンマに直面するだろう。
     サウジ王族にとって,アラビア石油資産の完全支配は,その全ての支配力, 影響力 および 成功の源泉である。この握力を弱めれば,たとえ僅かであっても,数多い敵の目には弱みと映り,アラビアの絶対支配者, メッカとメディナの守護者 ならびに 原油価格の最終的調停者としての正当性を傷つける結果となる。
     アラムコは月曜日,会社を丸ごと上場する構想の提案をいくつか検討中であることを認めたが,本気で検討されていない … と事情を知る2人が Fortune に語った。川上の石油製造部門の売り出しは 依然として "絶対に問題外" であるが,焦点は川下の精製資産に集中している … と その中の1人が言う。
     サウジアラムコ (サウジ・アラビア石油会社) を上場する発想は,新しいものではない。王宮では長年にわたって,サウド家がアラムコの全部 または 一部を投資家に売り出す可能性を検討している … と囁かれてきた。しかし,これらのウワサは,バカバカしいものとして すぐに撥ねつけられた。
     どんな理由で,王族は生まれながらに得た権利を売却しようと考えるのか? 王国の経済を多様化しようとする 何らかの愚かな試みなのだろうか? あるいは ,5,000 機のエアバス A380 のようなものに気前よくカネを使うために,手っ取り早くカネを調達したいのか?
     少なくとも王族の一部のメンバーは,本気で考えているらしい。父王 Salman bin Abdulaziz Al Saud の "玉座の背後で実権を握ると見られる" Mohammed bin Salman Al Saud 皇太子 (29) は Economist に先週,アラムコの株式の売り出しは "現在検討中の項目" であり,"この件に関しては 数ヵ月後に決定がなされると思う" … と語った。さらに皇太子は,株式の売り出しに "熱意を持っており","透明性を高め,アラムコを取り巻く腐敗に立ち向かうことを念頭に" 行なわれる … と述べた。
     月曜日,アラムコの Khalid al-Falih 議長は,同社が何らかの形での上場を検討中であることを認めた;それには,川下の精製部門だけでなく,利益の大きい川上の開発・生産部門も含まれる。議長は 上場を検討する理由まで述べなかったが,腐敗と戦い 透明性を奨励する取り組みの一環であるという Salman 皇太子の主張には,時間を掛けて反駁した。
     もしもアラムコが上場すれば,地球上で最大の評価額を持つ企業が すぐさま誕生する。一部の人は,時価総額 10 兆ドルと推定する。そうなれば,現在 世界最大のエネルギー企業 Exxon Mobil の 32 倍である。
     アラムコが 5% の株式を IPO で売り出せば,$5,000 億を調達できる。これも 史上最大の調達額であり,2015 年にアリババが調達した額の 20 倍を超える。当時,銀行業界は これに熱狂した。
     アラムコ級の会社が上場する場合に銀行が得る上場手数料は バカバカしいほどの巨額である。仮に IPO の手数料を標準の 7% から 半分の 3.5% に割り引いたとしても,$175 億に達する。
     アラムコの評価額は,(2,650 億バレルと アラムコが称する) 膨大な原油資源から来る。これは,現在の消費水準で地球上の ほゞ8年分の全需要を賄うことができる。
     しかし,アラムコは大量の石油を持っているだけではない;アラムコは 容易に油田を開発してきた。サウジアラビアでは,世界のどの地域よりも 地下から原油を 遥かに安価に取り出すことができる。アラムコの超巨大 Ghawar 油田から1バレルの原油を取り出すコストは,アラムコの営業を知る1人によれば, $4 である。
     アメリカでは,このコストが $25 ~ $80 である。しかも,アラムコは 地下から原油を速く, 大量に汲み上げることができる。アラムコは 1日で 1,350 万バレルの原油を汲み上げることができ,これは 世界の石油需要の 約 15% である。
     サウド家の莫大な権力は,望む時にいつでも原油価格を一方的に操作できる能力に由来する。アラムコ上場は,"投資家" という要素を持ち込むので,この権力を傷つけかねない。もちろん,アラムコのかなりの株式を証券取引所に上場しても,アラムコそのものの経営権をサウド家は握る。しかしアラムコは,会社の収益をそれ以外のすべて ( ふらつく王子らの地政学的移り気など) に優先して行動することを求められる。
     この状況は,毎年のハッジ [メッカ巡礼] から アメリカからの武器調達まで 何でもかんでも資金手当てに アラムコを個人的貯金箱として利用してきたサウド家にとって重大問題になり得る。もしもアラムコが上場すれば,全ての収支の会計処理を求められ,王族が当惑することになりかねず,アラムコが帳簿を公表し 取引所に上場すれば,Salman 皇太子が言うような腐敗が終わるかもしれない。
     確かに 外国では 国有の石油会社が上場している;ロシアの Rosneft とブラジルの Petrobras がその例である。しかし,これらの株価は,膨大な油田を持つにも拘わらず,腐敗と 収益のごまかしのために 低迷している。Petrobas の昨年の大規模スキャンダルは,政府官僚による 大量の疑惑と自己保身行動を明らかにした。多くの株主は,株を売り,投資先を変えることにより "自分の足で投票した [退場することにより意思表示した]"。
     投資家を遠ざけ,置き去りにすることにより,ブラジルは 数十億ドルもの資産を滅ぼした。アラムコが同じ運命を避けるには,その行動をお掃除し,投資家の利益を 王の利益に優先する必要がある。だが これは,王宮の陰謀と賄賂の慣習をやめられない (thrive off) サウジ国家とは ずれがあるように見える。
     さらに上場は,アラムコが投資家の利益を優先するので,石油カルテル OPEC でのサウジアラビアの立場を複雑にする。時には,OPEC のアジェンダに反対せざるを得ない。サウジ・アラビアが 原油の市場価格に無抵抗になるとか,OPEC を脱退する可能性もあり得る。
     地政学の観点からは,アラムコ上場はほとんど無意味であるが,財務の観点から見れば さらに無意味である。 アラムコの株を投資家にランダムに売ることにより,王族にはどんな利益があるだろうか? カネが手に入ることか? 地球上で最大の金持ち一族が,ベンチャー資本会社のように さっさと "手仕舞い" したがるとは考えられない。ほゞ1世紀にわたり権力を握るサウド家が,アラビア半島への長期投資家であることは明らかだ。仮に何かの超巨大プロジェクトでカネが必要だとしても,資本調達の手段として上場はお粗末 (lousy) である。もしもアラムコやサウジ政府がカネを必要とするのであれば,株式を発行する代りに債券を発行する方が遥かに効率が良い。
     アラムコ上場は,サウジ・アラビアの現在の財政状況とは無関係である。この 10 年来 初めて原油価格は1バレル当たり $30 を割ったが,(反論はあるが) サウジ・アラビアは現在カネに困っていない。長引く弱い原油価格による財務への打撃のクッションとして $6,000 億を超える外貨準備をサウジは持っている。実際,GDP の 50% と予想される気前の良い支出を続けることもできるし,10 年間は黒字を続けられる。その後で もしもカネが必要ならば 国際市場で借金もできる。その時点までに 無意味なアラムコ上場をするよりは,歳出を抑制するのが賢明だろう。
     結局,サウジの王族がアラムコを上場する 納得できる理由は無い。これまでのところ 自分たちでうまくやっているように見えるし,今後 何年も現状を維持することにより,人々の幸せを続けられる弾薬を十分に持っている。この注意深い綱渡りを邪魔することは,現状を大いに害しかねない。そうなる時は,Saudi Arabia の "Saudi" を外す時だろう。
    ウィキペディアによると,国名の意味は, ・・・
     アラビア文字による正式名称は المملكة العربية السعودية(翻字: al-mamlakah al-ʿarabīyah al-suʿūdīyah, アル・マムラカ・ル・アラビーヤ・ッ・スウーディーヤ)であり,「サウド家によるアラビアの王国」を意味する。
    古い記事であるが,アラムコの上場が どういう視点から捉えられているかを知るのに役立つ。
    この頃,アラムコ上場の具体的なニュースが ぱったり途絶えているのは なぜか?
    2018 年4月,MbS のアメリカ旅行で盛り上がった時には,ニューヨーク上場のウワサさえ無かった。

  41. Are reports of Mohammed bin Salman’s death greatly exaggerated?
    Mohammed bin Salman の死亡ニュースは,過度に誇張されたものか?
    Spectator USA,2018/05/22 @09:20 pm
    By Damian Reilly
    サウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子は 暗殺されたのか,神経衰弱状態 (breakdown) にあるのか,身を隠しているのか? あるいは ,これら全てはインターネットの荒っぽい想像に過ぎないのか?
    私がこれを問うのは,要するに 4月21日の深夜 リヤドの王宮で聞かれた長く激しい銃声の後,皇太子が 姿を見せないからである。
    [記事の動画では 激しい銃声が長く聞こえる]
    サウジの国営メディアは,銃撃がクーデターによる音だとのツイッターやその他の報道を受け付けず,レクリエーションで打ち上げたドローンが王宮の城壁に近づき過ぎたのを狙い撃ったと主張する。
     フェイク・ニュースが出回り,アラブのメディアが厳しく検閲されるこの時代に,誰を信じるかは難しい。だが,確かなことは 王国の文化革命の中心人物として 至る所で 外国からも注目を浴びていた皇太子が突如として姿を消したように見えることだ。
     ソーシャル・メディアは,若き支配者の謀殺のウワサに舞い上がり,MbS 皇太子が2発の銃弾を受けたという秘密諜報調書の報告も出回っている。
     テヘランに拠点を置く日刊紙 Kayhan (サウジ関連ニュースの公平な情報源とは言い難いことは指摘しておかねばならない [イランと皇太子は敵対関係] ) の編集長は,社説に "4月21日のリヤドでの衝突で 少なくとも2発が Bin Salman に命中し,既に亡くなったこともあり得る。" … と書いた。
     しかし,英国外務省筋の信頼できる情報源によれば,皇太子は存命であり無事である。皇太子は 4月28日,サウジアラビア最大の 文化, スポーツ, エンタテインメント・サイトである Qiddiya プロジェクトの開幕で写真を撮られている。
     したがって,この話はイランのフェイク・ニュースに間違いない … のだろうか?
     おそらく 暗殺のウワサを否定するために,王宮の報道官は MbS がバーレーンの Hamad 王,エジプトの Sisi 大統領,アブダビの支配者 Mohammed bin Zayed と付き合っている写真を公表した。
     ところが この写真は,MbS がフィットネスと戦っていると世界を納得させるにしては,奇妙なやり方である。帽子が目を隠しているものの,確かにその人らしく見える。しかし,4人が水泳プールの脇に立っているこの写真がいつ撮影されたかは確かめようが無い。この主張の重大な意味を考えれば,今までに動画を記録しておくことはできなかったのか? 今は隠れているのか? 権力を奪われた状態にいるのか?
     面白いのは,アメリカの Mike Pompeo 国務長官が4月末にサウジアラビアを訪問した時,MbS が同席した写真も動画も見られなかった。国務省は,予定されていた Pompeo 国務長官と MbS のワーキング・ディナーが本当に行われたことを 認めなかったし,2人がリアドで会ったことも認めなかった。もしも会わなかったとすれば,日程が変更されたのだろう … と いささか曖昧に報道官は言った。この会合は報道陣には非公開だった。これも やはりおかしい;MbS を取り巻く報道は世界を駆け巡る。サウジの支配ファミリーの有力者から 除け者にされたのだろうか?
     今回 何が起こったにせよ,国内で MbS は敵に事欠かない。2017年6月 事実上 国の支配者となって以来,32 歳の彼は 腐敗退治と称して 380 人ほどのサウジの富裕層を逮捕した。拘束された有力者が巨額の富を国に渡すようサインするまで,拷問が行なわれたとの未確認報道もある。
     MbS はまた,王国の近代化を始めるにあたって,有力な Wahhbi 聖職者らの怒りを買うことを恐れなかった。たとえば 彼は,女性の運転禁止令を解除した;さらに サウジの保守層にショッキングなことに,宿敵であったイスラエルとの関係を ほとんど 大っぴらに融和させ始めた。
     外国では,イランなど有力なシーア派諸国は,皇太子の死亡ニュースに大喜びするだろう。MbS と Trump 大統領の親密さが明らかになるにつれて,中東の緊張は 特に高まっている。
     もちろん,欧州とアメリカへの急ぎ足の旅で MbS がへたばって,長い休暇を取り,豪華なヨット遊びに身を隠していることはあり得る。しかし,王宮での激しい銃声の後 間もなく MbS が公の場に姿と見せなくなったことは不可解である。
     [更新1] 本稿発表後,サウジの王族は 昨日,ジェッダの閣議での とても健康な (in rude health) 皇太子の写真の配布を許可した。
     [更新2] 生きている! 少なくともツイッターでは。ジェッダでの閣議では不十分だと考えたらしく,サウジの王族が 今度は MbS が経済開発評議会の議長を務めている写真を発表した。
     この写真は,皇太子の報道官がツイートした。 ・・・ 終わり良ければ総て良し ・・・
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    写真を引っ張り出してきて 生きている証明だとか ・・・ 笑えて来る (笑)
     今の世の中,写真なんていくらでも合成できる。
    皇太子の状況は正確には不明であるが,状況が厳しいことに変わりは無い。
    皇太子が (イランとの対立を重視するあまり) イスラエル寄りの立場を取るので 状況は複雑化している。
     やはり,孫社長の国際情勢に対する感覚が問われる。カネだけですべてが片付くわけではない。
     まさかに,SoftBank がイスラエルを公然と支持することはできないだろう。
     こんな状態で アラムコ上場は進むはずが無い。
     アラムコの上場を前提とする国の計画は全て狂っているだろう。
     上の Bloomberg 記事でも 2018 年後半だったのを 2019 年前半に遅らせて,しかも「乞うご期待」である (笑)
     SoftBank と結んだいずれもお笑いの ロボット計画,200 GW ソーラー計画などは潰れる方が良いが,SVF への出資が止まるのは (1月~3月は既に止まっている) どんな影響があるだろうか。

  42. Speculation over Saudi Crown Prince health amid rumours of his death
    サウジ皇太子の死亡とのウワサの中,その健康状態に憶測が生まれる
    Middle East Monitor,2018/05/28 @05:55 am
    西側メディアの報道は,4週間 公的に姿を全く見せない サウジ皇太子 Mohammed bin Salman の健康状態についてさまざまの憶測をする。
     フランスの新聞 20 Minutes は,皇太子が姿を見せないことと (4月21日にリヤドの Khuzama 近郊の王宮で起こった "クーデターの試み" を結びつけた。
     同紙によれば サウジのメディアは,ソーシャル・メディアに出回っている (王宮で聞かれた銃声が軍のクーデターの試みの一環であるとの) 報道を拒絶し,王宮の城壁近くに現れたドローンを追い払うために半自動銃が使われたと当局は言う。
     フランス紙の記事は,やはり皇太子の健康について疑いを投げ掛ける 英国の The Observer が発行した記事の後に出た。
     Bin Salman 皇太子は 4月12日にスペインの王族と面会して以来,公的な場に姿を見せていない。
     "サウジの意思決定サークルに近い" と自称する al-Ahd al-Jadeed のツイッター・アカウントは,皇太子が4月の王宮での事件以来,宮廷に入ったことが無いと主張する。
     先週,イランの新聞 Kayhan は,匿名のアラブの国の上級官僚宛に送られた秘密諜報報告を引用して,攻撃中に皇太子が2回撃たれ,既に死亡しているかもしれないと報道した。
     このサイトによれば,アメリカの Mike Pompeo 国務長官が 4月遅くにリヤドを訪問した時,Bin Salman は カメラの前に現れなかった。
     サウジの王族は水曜日,Bin Salman と内閣のジェッダでの会合の写真を発表し,皇太子が生きていることを確認した。

  43. Is Saudi Arabia’s 32-Year-Old Crown Prince Dead?
    サウジアラビアの 32 歳の皇太子は死んでいるのか?
    The Observer,2018/05/25 @04:37 pm
    By Sissi Cao
    サウジアラビアの皇太子 Mohammed bin Salman (32) は,メディアに強い石油王国のリーダーであるが,不自然なことに最近沈黙を守っており,余りにもそれが長いので,中東のメディアは 皇太子が生きているのかを問題にせざるを得ない。
     Bin Salman は4月12日にスペインの王族と会見して以来 公的な場に姿を見せていない。4月21日,大きな銃声が 王国の首都リヤドの王宮近くで聞こえた。サウジアラビアの国営通信は,治安部隊はおもちゃのドローンが王宮の地域に近づき過ぎたので,それを撃ち落としたのだと主張するが,一部の人は この銃声が 実は Bin Salman 皇太子の父 Salman 王を転覆しようと サウジの王族が率いたクーデターではないかと言う。
     サウジアラビアの一部の敵国は,かなり確信している。
     先週,イランの新聞 Kayhan は,"匿名のアラブの国の上級官僚へ送付された シークレット・サービスの報告" を引用して,皇太子が 攻撃中に2発の弾丸で撃たれ,実は死んだだろうと報道した。
     "証拠はたっぷりある:サウジ・アラビア皇太子 Muhammad bin Salman のほゞ 30 日の不在は,公的に隠されている事件によるものだ。" … とこの日刊紙は報道した。
     この憶測に信頼性を加えるように Kayhan は,アメリカの Mike Pompeo 国務長官が4月末にリヤドを訪問した際,父王 Salman bin Abdulaziz Al Saud と Adel al-Jubeir 外相が一緒に写真に納まったのに,Bin Salman がカメラの前に現れなかったことを指摘した。
     イランとサウジ・アラビアは,中東で覇権を争う長年のライバルである。
     このウワサを打ち消そうと,サウジの王族は水曜日,Bin Salman がジェッダでの閣議に出席している写真を発表し,皇太子が生きていることを確認した。
     Bin Salman が1ヵ月もの長きにわたり メディアの脚光を浴びないことは,その数週間前のアメリカと欧州での華々しい旅行と著しい対照を成す。とくにアメリカでは,数多くの実業界の巨人たちと取り引きについて協議した。
     本国では,サウジの玉座は 王族内の危険な緊張に直面している。イランの PressTV によれば,Bin Salman の従兄 Bin Naef と 先王の息子 Mutab Bin Abdullah の2人が,イエメン侵略とカタール封鎖に反対している。 [注:Bin Naef は, 2017/06/21 MbS の皇太子昇格により,皇太子などすべての地位を剥奪された]
     月曜日,国外亡命中のサウジ王族 Khaled bin Farhan 王子は,Middle East Eye に,その叔父ら ── 特に Ahmed bin Abdulaziz 王子と Muqrin bin Abdulaziz 王子 ── がもしも 現在の王にクーデターを起こすなら,"王族のメンバーの 99% も,治安部隊も,軍隊も,味方するだろう。" … と語った。
     2013 年にドイツに政治亡命した Khaled 王子は,サウジ・アラビアの警察と軍隊の多くの人から 自分を支持する E-メールを受け取ったと言う。
     4月の不審の銃声について Khaled 王子は,"必ずしも Mohammed bin Salman を引きずり降ろそうというものではなく,皇太子に対する抗議運動に過ぎない" … と言う。
     4月のクーデターは,もしも本当ならば,2017 年11月に Bin Salman が行なった反腐敗取り締まりに対する復讐の可能性が高い。当時,何十人もの富裕な王族が拘束された。
    何がどうなっているのか 正確には分からないが,サウジ内の経済派閥抗争 (↓) にサウジ電力などで 既に巻き込まれた上に,政治抗争に巻き込まれたのか? 昨年 11 月の厳しい取り締まりから,反動は当然予想された。
     イランに対抗するためとは言え,今や パレスチナをいじめるイスラエルの肩を持ち,イエメンとカタールをいじめるようでは "アラブ" から反発を喰らうのは当然のこと。皇太子の生死より,王に対するクーデターの動きのように読める。いずれにせよ,孫社長の "国際政治感覚" が問われる。
     それよりも SoftBank に重要なのは,これと関係があるのかないのか分からないが,決算短信からわかるように,2018/01 ~ 03 の3ヵ月に SVF への追加入金が ほとんど ゼロとなっていることだ。
    ──────
     もう1つ重要なことがある。アラムコ上場のニュースが 最近 とんと聞かれない。
     2兆ドルの 5% = $1,000 億の売り上げから その一部を SVF に入金予定のはずである。
     MbS が動かなければ,アラムコ上場はあり得ない。

  44. Saudi Arabian infighting casts shadow on solar deal
    サウジアラビアの内紛が,ソーラー取り引きに影を投げる
    Financial Times,2018/04/19
    Anjli Raval,Arash Massoudi & Simeon Kerr (ロンドン, ドバイ)
    摩擦は,王国の転換を阻害しかねない不確定性を浮き上がらせる。
     サウジアラビアと日本の SoftBank が 世界最大のソーラー・プロジェクトを創るという $2,000 億の取り引きは,Mohammed bin Salman (MbS) 皇太子の下で 原油豊富な王国を転換しようとする最新のギャンブルである。
     しかし,王国で最も強力な2つの組織である エネルギー省とソブリン基金の間の摩擦は,経済を再生しようとする王国の試みを邪魔しかねないリスクを浮き彫りにする。
     アメリカ訪問旅行の一環として,MbS 皇太子と SoftBank の Masayoshi Son CEO は ニューヨークで,発電能力 200 GW のソーラー・パークを王国内に建設する契約に調印した。この再生エネルギー計画は,MbS 皇太子の経済改革に欠かせない柱であり,サウジ・アラビアが必要とする電力の4倍 の 1.5 億家庭の電力を十分に供給する [注:現在の人口は 0.32 億人である]
     ところが,王国の 数十億ドル 再生エネルギー戦略を統括するエネルギー省と これを支援するサウジアラムコは,先月のニューヨークでの発表を全く知らされていなかった … と この件をブリーフした何人もの人が言う。 "これは,高度に複合的なプロジェクトである。そもそも発表というものは,実際に係わる人たちにサプライズとして降りかかるべきではない。" … と1人が言う。
     こうして,Khalid Al Falih エネルギー相と 公共投資基金 (PIF) の Yasir al-Rumayyan 議長の間の権力闘争があらわになった。
     この件を直接に知る1人は,これが Rumayyan による強圧行為 (powerplay) であるという ── アメリカ訪問中に Falih エネルギー相の人気を浚って 目立つ取り引きを取ろうとした。
     他の人たちは 歴史は繰り返すと言う;MbS 皇太子が サウジアラムコの IPO 計画を開示して サウジの年上の人たちを呆然とさせたことを思い出す。
     この投機的事業 [=200 GW] は,再生可能エネルギー・プロジェクトの発展に責任を持つエネルギー省内部の部門から出たものではなく,PIF が主導するものだった ── PIF は,SoftBank と現在関係を持つ取り引きの投資家である。サウジアラムコの幹部らは 再生可能エネルギー戦略を国家プロジェクトに乗せることを辞めよと主張しており,王国の再エネプロジェクトにこの件は不確定性を生むことになった … とアラムコに近い1人が言う。
     SoftBank 関連のソーラー・プロジェクトについては,いくつもの提案が この数ヵ月 堂々巡りしている … と3人が言う。これらは エネルギー省,研究機関 および (投資を要請された) サウジアラムコにより 突飛で実行不可能として却下された。
     ある計画は 必要な規模の5倍を超えるプロジェクトだった … と2人が言う。それより現実的な提案と実行計画は,ニューヨークで契約が発表されたとき,まだ作業中だった … と事情に詳しい1人が言う。
     PIF とサウジアラムコは,コメントを拒んだ。エネルギー省は コメントの要請に応答しなかった。
     Falih エネルギー省は 夜遅く プラザホテルで緊急招集された調印式に Rumayyan と共に出席していた。この発表について どのくらい以前から Falih エネルギー相が知っていたか不明である。関係者はこれについて何も言わない。Falih エネルギー相は,Son のプレス発表の時に退出した。
     SoftBank の契約は,もしも実現すれば 2023 年までに 3.2 GW と計画されてされているソーラー発電能力を矮小化し,再生可能エネルギー合計 9.5 GW にする。
     サウジアラビアは,貴重な石油資源を国内火力よりも,節約して輸出に振り向けようとしてきた。新しい契約は,王国内にソーラー産業を創出することを目指す。これには ソーラーパネルの製造が含まれる。
     "このプロジェクトの規模を疑う人もいるだろう。だが,王国には 太陽と土地と財政力がある。" … と最近 落札したソーラー開発業者 ACWA Power の Paddy Pdmanathan CEO が言う。"今回の契約を進化するビジョンと考えよ。"
     MbS 皇太子は PIF を利用して 名高い投資を通じて王国の改革を推し進めており,そのため PIF が影響力を増した。石油による利益は,今では 中央銀行から,高い運用利回りを生むと期待して,PIF に管理が移されたと見られる。今回のソーラー契約は,既成の権力中心から PIF が 支配権を強奪 (usurp) した更なる証拠である。
     Falih エネルギー相と Rummayyan PIF 議長は,皇太子と密接に同盟しているが,両者の異なる手法は 緊張を生んだ。エネルギー相は 事業の健全性とプロジェクトの実行を優先し,PIF 議長は 大胆な投資を進めたがる … と3人が言う。
    読めば分かるように,結論として,"ええかっこしいのアホ社長が サウジの権力闘争に巻き込まれた" ということであろう (笑)。ただし,この記事は 単純にそう結論する前に,押さえておくべきポイントが非常に多い 文字通り複合的な (complex) 記事である。
     まず 権力抗争が起きていることは明らかだ。
     [A] エネルギー省 + サウジアラムコ:ここはエネルギーが中心。ただし そのエネルギーが生むカネにも関心。
     [B] PIF (+ SoftBank):ここはカネが中心。
    次に 事実経過をまとめると
     (1) 2018/03/30:ニューヨークで SoftBank が サウジに 200 GW という法外なソーラー施設 (および それに必要なソーラーパネル工場) を建設する契約を結んだ。この規模は 世界中から笑われている代物である。実際,SoftBank 関連の計画は エネルギー省,アラムコなどが "突飛で実現不可能" だと言っている。このことが [B] に対する [A] の敵意を深める要因になっただろう。
     しかも この契約について [A] は事前に知らされていなかった。
     (2) 2018/04/08:(ロイター報道) これは,上の記事で完全に脱落している。
      [A] が, アメリカで石油精製だけだったのを 悲願の石油化学事業を始めると発表 (これは非常に重要である)。何しろ アメリカのエネルギー省 Rick Perry 長官が 調印式に列席したのである。(1) より格上であることを強調したかったのか?(笑)
    ──────
     ロイター記事の時点では 半分しか理解できていなかったが,こうして並べると,[A] と [B] が 張り合っていることは明らかだ。
     (3) アラムコは 2兆ドルの上場により その 5% = $1,000 億を手に入れ,そこから SoftBank Vision Fund に $450 億を入金することとされている。その上場がいつか というのが問題であるが,ひところ騒がしかった IPO ニュースはパタッと消えて 今年なのか来年なのか分からない。
     パタッと消えた ことの当サイトの無責任見解は,MbS のこのところの乱暴な武力行使にある。隣国イエメンへ武力侵攻とか,イランに対抗するため あろうことかイスラエルの軍事力と手を結ぼうとかしている。こういうことをすると,アラムコの上場先が MbS に協力した … という理由で イスラム過激派の攻撃を受けかねない。東京証券取引所も候補の1つとして勧誘したが,テロが怖いのかこの頃はそういうニュースが無い (笑) [ホントを言えば,SoftBank の本社ビルだって怖いのだ。]
     いずれにせよ,カネのあるところで悶着が起こるのは必然であり,このあたりが [A] と [B] の権力闘争の原因であろう。
     (4) 振り返ると,昨年6月の株主総会で Rummayyan を SoftBank 取締役にしたのは まずい判断だった。SoftBank の "金づる" としては,Amin Nasser アラムコ CEO の方が遥かに重要である。
     (5) 今後の展開がどうなるかは 分からないが,両派が 金欲しさで争っていると考えれば判断しやすいかもしれない。
     (6) SoftBank の最大の関心は アラムコ上場であるが,こういう状況では 厳しいだろう。
      サウジからの入金がどうなっているのかは,いつも首を傾げている。
     (7) 補足すると,仮に IPO が実現したとすると,そのカネは 本来 [A] のものである。そのカネを [A] は ロイター報道のようにアメリカ直接投資に使いたい。SoftBank としては その [A] のカネを [B] に渡してもらわないと SVF に入ってこない。それが "管理が移される" とか "強奪" とか呼ばれている。
     したがって,アラムコ 2兆ドルの争奪戦に アホ社長が巻き込まれたか?

  45. Aramco takes step to integrating petrochems into United States' biggest refinery
    アラムコは,石油化学工場をアメリカ最大の精製工場に統合するステップを踏む
    Reuters,2018/04/08 @08:01 am
    By Erwin Seba (ヒューストン)
    サウジアラムコは,同社の子会社 Motiva Enterprises が運営するアメリカ最大の石油精製工場に石油化学事業を統合する初めてのステップを踏もうとしている。
    サウジ・アラムコのロゴ
    アラムコの Amin Nasser CEO は, $80~$100 億 相当の MoU を Honeywell UOP および Technip FMC と調印した。これは,アラムコが [テキサス州] ポート・アーサー精製工場に建設を検討中の石油化学プラントで使うための 石油化学品製造技術を学ぶするためである。
     サウジの Mohammed bin Salman 皇太子は, 2週間のアメリカ訪問を終えて,サウジの Khalid-Falih エネルギー相 および アメリカエネルギー省 Rick Perry 長官と共にテキサス州ヒューストンでの調印式に臨んだ。
     "これらの合意は,当社の [単なる石油精製から] 石油化学への拡大計画の狼煙である。" … と Motiva の Brian Coffman CEO が言った。
     サウジ政府が世界最大の石油企業の 5% を 今年新規上場する用意をする中,川下の事業を発展させたいアラムコは, [燃料ではなく] 石油化学原料として石油を使いたい。
     Coffman CEO はさらに,Motiva が ポート・アーサー精製工場の能力を 603,000 bpd (バレル/日) から 1,000,000 ~ 1,500,000 bpd に引き上げる計画であると言った。そうなれば,世界最大の精製工場となる。
     今回の MoU の中の1つで Honeywell UOP の技術が予定されている芳香族 [=ベンゼン類] 部門は,ガソリン製造の副産物である ベンゼンとパラキシレンを 年間 2,000,000 トンの化学品とプラスチックの原料に変える。
    サウジアラムコの Amin Nasser CEO.
     もう1つの MoU は,アラムコがアメリカの Technip FMC のミックス・フィード・エチレン製造技術を使うことを可能にする。 この技術は,年間 2,000,000 トンのエチレンを製造し,これがプラスチックなどの製造に使われる … と Motiva は言う。
     数十億ドルに上る石油化学工場をポート・アーサーに建設する最終的な投資決定は,2019 年までにはなされない見込みである;なぜなら "強い経済,競争に耐えうるインセンティブ,規制当局の支持" に依存するからだ … とアラムコは声明で言った。
     Coffman CEO は,ポート・アーサー精製工場の原油処理能力を拡大する時間軸については 発言しなかった。
     "それは 現在 評価中である。当社は 将来のために研究している。" … と彼は言った。
     世界最大の原油処理能力を持つ精製工場は,インドのジャームナガルにある 1,200,000 bpd の Reliance Industries の工場である。
     アラムコは昨年,Motiva に $180 億を投資して精製工場を拡大し,石油化学品製造に入るつもりだと言った。
     そのほかのアメリカ企業 ── Chevron Corp と Philipps 66 の JV である Chevron Phillips Chemical と Exxon Mobil Corp は,最近 Motiva と同様の エタンを処理してエチレンにする工場をオープンした。
     Chevron Philipps は,2番目のエタン・クラッカーをテキサス州の湾岸地帯に建設を検討している。
     アナリストによれば,大きなエタン・クラッカーを作るには,$60 億超を要する。エタン・クラッカーは,自動車用燃料として使える 水素ガスも製造する。
      Additional reporting by Rania El Gamal; Editing by Susan Fenton
    エタン・クラッカー:(ethane cracker)
     エタンクラッカーとは,天然ガスに含まれるエタンを原料として,エチレンなどの化学材料を生産する装置の名称である。エチレンは,さまざまな化学製品の原料となるため,エチレンの生産能力が石油化学工場全体の生産能力を示す尺度になっている。
    当サイトはかつて,サウジのアメリカでの石油事業に SoftBank が及ばずながら 何らかの (間接的でよいから) 支援をできないものか;そうすれば とても喜んでもらえるだろう … と書いた。
     石油精製では利益が出ない。川下の石油化学への展開は サウジの強い願望である。しかし,条件の厳しい国内は工場に不適であり,これまで日本などの石油化学企業から協力を得たものの,失敗している。
     大物の出席は,両国にとって この協定の重要性をうかがわせる (ソフトバンクの時には,調印式すら無かった。単に MoU が 双方から発表されただけだった)。
     何やら「頭越し」の感がある (SoftBank 側から見れば)。
    ──────
     結局, 今回の MbS のアメリカ訪問は,石油化学事業からシリコンバレーのテック業界までをカバーする大掛かりなものだった。大成果と言えるだろう。
     一方,SoftBank が投資した "No.1 を自慢の" 数十の「群戦略」企業のうちのいくつかを SVF 投資の見事な成功例として見学してもらってもよかったと思う。Magic Leap のように 自分が投資した企業は,どんなに スタートアップでも "混合現実メガネ" を掛けて試してみたいと思うのは自然な気持ちである。"群戦略" の中にそういう企業は1つも無かったのか? $450 億投資予定なのに,見学してみたいという打診すら無かったのか?
     このような状況を読めば,MbS 皇太子は SVF にほんとに (あるいは 非拘束覚書通り将来も) カネを注ぎ込むか? ・・・ という疑問が湧いてくる。

  46. Photos: The Saudi Crown Prince met with tech VIPs this week in Silicon Valley, including Sergey Brin and Magic Leap’s CEO
    写真集:サウジ皇太子が 今週 シリコンバレーの テック重要人物と軒並み会う,まずは Sergey Brin と Magic Leap の CEO
    Recode,2018/04/06 (金)@01:34 pm ET
    By Shirin Ghaffary
    次は,アップルの Tim Cook CEO。
    左から:グーグル CEO Sundar Pichai, サウジ皇太子 Mohammed bin Salman, グーグル共同創業者 Sergey Brin。
    Bandar Algaloud / Saudi Kingdom Council / Handout/Anadolu Agency / Getty Images)
     サウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子は,グーグルの共同創業者 Sergey Brin,Sundar Pichai CEO, Magic Leap の Rony Abovitz CEO, Virgin Group の創業者 Sir Richard Branson を含む テック業界 および メディア業界の CEO らの 綺羅星の如きグループと今週 会っている。次は,アップルの Tim Cook が予定されている。
     サウジ国営ニュース・チャネル Al Arabiya が伝えるところによれば,グーグルのマウンテンビュー本社への皇太子の訪問では, サウジの若者のための研究開発 および 訓練センターの設立 ならびに "サイバーセキュリティでの協力の強化" が議論された。photo op もあった。グーグルの広報担当者は,皇太子が訪問したことを認めたが,それ以上のコメントを拒んだ。
    サウジアラビアの Mohammed bin Salman Al Saud 皇太子が,2018 年4月5日にカリフォルニア州
    サンフランシスコのシリコンバレーを訪問し,グーグル創業者の1人 Sergey Brin により歓迎される。
    Bandar Algaloud / Saudi Kingdom Council / Handout/Anadolu Agency/Getty Images)
    サウジアラビアの Mohammed bin Salman Al Saud 皇太子が,2018 年4月2日にカリフォルニア州
    公式訪問の一環として Virgin Galactic 社を訪問し,Virgin Group Ltd の創業者 Richard Branson とポーズを取る。
    Bandar Algaloud / Saudi Kingdom Council / Handout/Anadolu Agency/Getty Images)
    サウジアラビアの Mohammed bin Salman Al Saud 皇太子が,2018 年4月3日に
    カリフォルニア州ロサンゼルスで Magic Leap の経営陣と会う。 [Rony Abovitz CEO ?]
    Bandar Algaloud / Saudi Kingdom Council / Handout/Anadolu Agency/Getty Images)
    サウジアラビアの Mohammed bin Salman Al Saud 皇太子が,2018 年4月3日に
    カリフォルニア州ロサンゼルスで Magic Leap の経営陣と会う。 ["MR (混合現実)" glass]
    Bandar Algaloud / Saudi Kingdom Council / Handout/Anadolu Agency/Getty Images)
     Recode が以前に報道したように,頭文字を取って MbS の名で知られる Mohammed bin Salman 皇太子は, [国際ホテルチェーン] フォーシーズンズのシリコンバレー・ホテル全部を彼の代表団のために予約したものと思われるが,サウジ・アラビア政府の隣国イエメンへの軍事行動について ホテルの外から抗議デモを受けた。
     皇太子が テック・セクターに改めて関心を寄せたのは,サウジが石油依存を脱却しようとする取り組みの一環である,王国の "Vision 2030" の一環でもある。
    この記事にはビックリした。物凄い人気だよ。まさに綺羅星だ!
     グーグルの Sergey Brin と Sundar Pichai ・・・ 次は アップルの Tim Cooke!
     いくつか 情報を補足すると,
      Magic Leap は,サウジが SoftBank とは無関係にアメリカに直接投資した2番目の例として注目されている。なぜ こんなスタートアップ企業が Google, Apple と同格で注目されるかは,Financial Times をどうぞ(笑)。アリババ, グーグルが以前に出資しているとか。
      1番目は Uber であり,SVF より前である (サウジ国営通信, 2016/06/02,Uber の第8次資金調達)。SoftBank は第9次。
      Virgin Galactic は,宇宙旅行ビジネスの会社である。
    ──────
     この訪問で何が話されたかを グーグルは言わないが,そうなるとますます気になるね。
     一番の問題は,サウジのアメリカ投資は もはや直接投資で十分であり,SoftBank を経由する必要は無い。SVF の投資も実態を見れば おかしなところに投資している (と メディアが書いている) し,直接ならば 手数料を払わなくて済む。この手数料というのも,期間が長くなるとバカにならない (そこが基金の狙い目でもある)。
     さしあたって気になるのは, "コミット" された金額が順調に入っているのか? 特にその内訳である。
     株式と 金利 7% (WSJ の内部情報による) の優先商品 (定期預金みたい) の2本立てで,SVF は出資を受け入れる。[7% ってのはすごい金利だ。複利で 10 年後に 2倍になる。よほど集めにくかったのだろう(笑)]
     例えば,サウジアラビアの $450 億は (180+270) の構成であり 安全な後者の方が多い。これに対し,SoftBank の $280 億は (280+0) であり,安全を全く見込んでいない (自分が投資を決めるから当然か)。
     株式部分は 儲かれば利益が大きいが,投資が赤字になれば 損を生じる。
     その反対に,優先商品に投資しておけば,SVF がドジでどんなにへまな投資をしても,その損失は SoftBank が被り,おまけに 7% の配当を払ってくれる。だから シャープのような病み上がりでも, $10 億を投資するのだ。
     シャープの 2017/12 の決算報告書を見ると
    出資コミットメントの総額: 1120.5 億円
    払い込み実行残高: 253.24 億円
      ・・・ と書かれていて,昨年5月から始めたにしては 早いペースである。
     しかし,シャープは 以前 "配当があるので" と言っていた。つまり,株式部分よりは定期預金部分に期待しているらしい。シャープも この 253.24 億円の内訳を書いてくれるとよいのだが,そこは不明である。
     「SoftBank 以外の投資家は 60% を優先商品」に払い込むというから,これまでに振り込まれた履行額の全部が 安全な優先商品ということもありうる。その場合 投資のリスクを SoftBank だけが負っていることになる。[(158+494) × 0.60 = 391 >> 158]
     なお ソフトバンクの 2017/12 決算短信 (p. 20) に 次の表がある。
    SoftBank 以外SoftBank
    支払い履行額$158 億 $100 億
    残額$494 億$225 億

     ここで 気がついたことが2つある。
      SoftBank の出資は $280 億のはずだと思っていたが,$325 億に増えている。
      ARM の 1/4 (~$80 億) の移管は,合計額には (注2="ARM 移管を含む") がついているが,支払い履行額 $100 億には この注2がついていない。やはり,Financial Times 報道が言う通り,CFIUS の認可が (理由は不明だが) まだ下りないので,(注2) を履行額につけられないのだろう。したがって,この $100 億は全額 SoftBank が現金により手当てしているのだろう。… というわけで カネ繰りが苦しいことが理解できる。
     実際 決算短信には,『本現物出資は,ソフトバンク・ビジョン・ファンドの関係文書で定められた関係規制当局からの承認等に関連する前提条件(対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the United States)の対象 ARM 株式の移管許可を含む)の充足が必要です』
    と書かれている。ARM の 1/4 移管も,Boston Dynamics も 申請から1年以上経つ。
     半年前頃からやたらに カネ欲しい,カネ欲しい (その代表が通信子会社上場による 2兆円,アリババ担保の $80 億など) が発生しているのはこのためか? とするとこれを逆に読めば,ARM 移管の CFIUS 認可を絶望と考えているのか? 何やら条件付きで交渉中でそれさえ呑めばクリアーされると 最近の (もちろん 内部情報を引用して) Financial Times (2018/04/03) は書いているのだが。
     常識的に考えれば,赤字の上に のれん (2兆6466億円) 満載の ARM を SVF に移管などは,SVF の CFO が断固として拒否するのが本来である (純資産は 7,203 億円,そのうち テクノロジー 5,429 億円 という凄まじい内容である。固定資産は無い。いつでも倒産できるように賃貸か(笑)。これでは 危なくなっても担保が無いから銀行から借金できない。親会社よりひどい資産内容である)。
     拒否できない仕組みになっていること自体が,SVF という組織の欺瞞を物語る。アリババも出したくないらしいが,アリババだって拒否する論理はいくらもある。それこそ,通信子会社とか Yahoo Japan を現物移管するのが妥当なところだと思う ・・・ が,そうするつもりの無い理由は,上の資産内容から理解できる。SVF の出資者にクズを負わせようとする腐った親会社である。
     シャープなど LP の自衛策は,SVF の "株式" ではなく,固定金利 (7%) 元本保証の "優先商品" になるべく多く出資して,SoftBank のリスクを高めることだろう。

  47. Saudi Arabia’s Solar Power Goals Are as Challenging as They Are Big
    サウジアラビアの太陽発電目標は,ビッグであると同時に多難である
    Bloomberg,2018/03/30 @01:00 JST
    By Stephen Stapczynski & Chisaki Watanabe
      SoftBank と サウジアラビアが 200 GW の光電池容量を計画する。
      この計画は,サウジアラビアに余剰電力を与え,送電網建設を要求する。
     サウジアラビアと日本の SoftBank Group Corp は火曜日,砂漠の王国に 2030 年までに容量 200 GW の太陽光発電を開発する MoU (おぼえがき) に署名した。総額 $2,000 億である。以下に,注目すべきいくつかの点を列挙する:
    Over the Top
    サウジと SoftBank の Solar Power Project 2030 は, 他の PV プロジェクトを矮小化する。
    名前容量 (GW) 状況
    サウジアラビアSolar Power Project 2030200発表
    ギリシャSolar Choice Bulli Greek PV Plant2許可
    アメリカHelios PV Plant Phase 11.3建設中
    U. A. E. Marubeni JinkoSolar and ADWEA
    Sweihan PV Plant
    1.18建設中
    中国EverRich Energy Wuwei PV Plant1発表
    Source: Bloomberg New Energy Finance
     (1) その規模
     Bloomberg New Energy Finance がまとめたデータによれば,世界中で設計図が作成されているどんなものよりも 100 倍以上大きい。しかも,昨年 世界で光電池業界が発電した総量の2倍である。
     あるいは,AWR Lloyd で電力とユーティリティを担当するマネージング・ディレクタ Bard Lucarelli が言うように,"奇想天外な (surreal), 前例の無い" ものである。
     Bloomberg News の計算によると,もしも1つのサイトに建設されれば,200 GW のソーラー・ファームは 2,023 km² [= 45 km × 45 km, 山手線内側面積の 32 倍] をカバーするだろう。これは 香港市の面積の2倍である。
     驚きのあまり 顎が外れる程の大きさがニュースの見出しを飾るにも拘わらず,このプロジェクトは 段階的に建設が進む。最初の部分は 7.2 GW であり,2019 年に稼働する。
     (2) 単なる MoU に過ぎない
     今週締結されたこの契約は,MoU であり,誰もこれを履行する義務を負わない。
     これは 単なる MoU であり,建設すると言う拘束力を持つ契約ではない。" … と GTM Research のアナリスト Benjamin Attia が言う。採算性調査 (feasibility study) が5月に完了するそうだから,詳しい計画が発表されるかどうかを静観しよう。"
     (3) 費用
     SoftBank の Vision Fund がプロジェクトの第1段階の費用として $10 億を投資すると言うが,この巨大投資の残りのカネがどこから来るのか分からない。
     "私の感じでは,これだけの期間にわたって $2,000 億を調達するのは,到底 無理なことだ。" … と Leeds 大学の Christopher M. Dent 教授が E-メールで伝えてきた。"しかし,ソーラー電力セクターが 物凄いペースで世界的に成長すれば,2030 年までに何が可能になるかは誰も知らない。"
     大手の国際再生エネルギー開発会社が サウジアラビアのクリーン・エネルギー政策の見通しと財源に魅力を感じるかもしれない。そうなれば,サウジアラビアは 長期電力買い取り契約から 予想可能なリターンを提供できるはずである … と BMI Research のアナリスト Francesco Menonna が言う。
     だが 銀行は,サウジアラビアが それらの PPA [Purchase Price Allocation, 取得原価の配分] にどれだけの報酬を与えるかを決めるまで,関心を示さないだろう。サウジは固定価格買い取り制度を選択して 開発業者にいくら儲けられるかを示すか あるいは オークションを実施して 業者に安値を競争させることもできる。
     (4) 前に聞いた話だ
     サウジアラビアは,長期にわたる野心的なソーラー電力配備計画を 2012 年と 2016 年に発表したが,Sindicatum Sustainable Resources の Assaad Razzouk グループ CEO によれば,それ以来ほとんど何事も起こっていない。この国は,2040 年までに ソーラー電力 41 GW を増やすという計画に投資家から関心を集めるのに失敗した。
     "建設中と言われる 最初の 5~10 GW が実現するのを見るまで,私は判断を控えたい。" … と Razzouk は言う。"サウジアラビアと SoftBank ならびに 両者を取り巻く生態系全体がなすべき作業は山のようにある。"
     (5) 送電網の制約
     Bloomberg New Energy Finance および CIA World Factbook のデータによれば,このプロジェクトは,多くの国の総発電容量より大きい。
     これだけ大量の電力を扱うには,送電網を更新するために "莫大な投資" が必要だ … と Dent 教授は言う。
     "2030 年までには 電力貯蔵技術がかなりの進歩を遂げて,ソーラーや風力のような間歇的再生可能エネルギーを送電網に沢山取り入れることができるようになるだろう。" … と教授は言う。"だが これは 今のところ憶測に留まる。"
     このほか,大規模な蓄電貯蔵施設も必要である。このプロジェクトの重要な特徴は,2~3年後に日没以後も 消費者に電力を供給する "大容量で実用規模の蓄電池" を建設することだ … と SoftBank 創業家 Masayoshi Son が 今週 ニューヨークで記者団に語った。
     (6) ビルドアウト
     初期段階が完了した後は,2030 年まで平均して 1年あたり 17.5 GW 以上の容量を設置する問題が残る。これだけでも 昨年アメリカで稼働した量を上回る。アメリカは中国に次ぐ最大の大量ソーラー電力市場である … と BMI の Menonna が言う。
     "これだけの急成長は,わずか数年でサウジ・アラビアを 世界第2のソーラー供給チェーンにする。" … と彼は言う。"そういうことは 技術的に不可能ではないが,きっと難問だろう。"
     (7) まことに有望
     GTM の Attia によれば,2019 年半ばまでに2つのサイトの 容量 7.2 GW をつなぐ短期計画は見込みがある。
     実現可能な長期目標は,2030 年までに 40 GW であろう … とドバイに拠点を置くコンサルタント会社 Qamar Energy の CEO Robin Mills が言う。それでも 送電網の適切な更新は必要だろうと彼は言う。
     "サウジの再生可能エネルギーの進歩は 加速しているとは言え 遅い。" … と Mills は言う。"全体として,私は 200 GW に強い疑念を持つ。せいぜい 数 GW 程度が現実的であり,経済的にも望ましいだろう。"
    ここでは 送電網が強調されている。
     日本だったら,ソーラー発電をすれば,あとは電力会社が送電を引き受けてくれる。
     でも砂漠にソーラー発電所を建設すれば,自前で送電会社を設立する必要がある。
     また,大量にソーラー機器を輸出するとしても,輸出先の国に大規模送電網が整っていなければ使い物にならない。
     やはり "サウジ-ソフトバンク世界送配電株式会社" の設立が必要だ。
     そのほか,ソーラーは夜間はお休みだから,バックアップの化石燃料発電所も それに見合う規模が必要になる (カナダのように,水力発電が使える国ならば 問題にならない)。
     ただ,どの記事も
     (A) 常時 200 GW を発電するソーラー発電所をサウジ国内に建設する。
     (B) 1年に (?) 200 GW 相当のソーラー機器を製造する工場を国内に建設して,輸出する。
    の区別がはっきりしない。
     (A) は,それこそ 山手線内側の 32 倍,東京ドーム・グラウンド部分の 155,600 個分を覆うソーラー・パネルを敷き詰めるから,これは冗談に近い。
     冒頭の表にあるのは ソーラー発電所計画らしいが,そういう意味では 200 GW は荒唐無稽である。
     (B) の場合には 200 GW の機器製造を 長~い時間をかけてやるのだったら できないことは無い。
     例えば ソーラー工場で 毎年 10 GW 相当のパネルを製造して 輸出・国内消費し,20 年後には累計 200 GW と言っているのかもしれない (無理な言い方ではあるが)。ただし,仮に (B) であるとして 砂漠の中のソーラー・パネル製造工場が,中国の価格攻勢に輸出で勝てるはずは無かろう。
    ──────
     念のため 丸紅-UAE のプロジェクトをウェブで見ると, 1.177 GW の太陽光発電プラントを建設し, 保守・運転を担い,アブダビ電力公社に 25 年間売電する (2019年4月商業運転開始予定)。明らかにこれは (A) である。パネルについては何も書かれていないが,一番安い中国から輸入するのだろう。
     SoftBank が 2017/04/11 にインドで始めたソーラー発電所の規模が 0.35 GW である。これで 70 万世帯の電力を賄う。これも (A) である。
    採算性調査 が5月に完了するそうだから,詳しい計画が発表されるかどうかを静観しよう。"
      ・・・ ここで笑ってしまった。どうせ "世界のロボット標準を サウジとソフトバンクで提案" と同様に,続報が無いことを見越している?
    ──────
     結論として,(A), (B) どちらの場合にも,巨額の赤字が発生する。
     というわけで "ロボット" の時と同様に続報は無かろう。
     したがって,株主に実質的な負担は発生しない。
     ただし,ハイテク企業のトップが,"テック" に無知蒙昧であることがバレた代償がいくらにつくかは 不明である。

  48. Building The World’s Largest Solar Project
    世界最大のソーラー・プロジェクトを立ち上げる
    Oilprice.com,2018/03/29
    By Nick Cunningham
    サウジアラビアは,世界最大のソーラー・プロジェクトを建設するために,ソーラーに $2,000 億を注ぎ込みたい。
     サウジのソブリン基金と日本の SoftBank Group Corp は,度肝を抜く規模 ── 200 GW ── のソーラー・プロジェクトを 2030 年までに建設する計画を共同発表した。これは,現在世界の最大級のプロジェクトの約 100 倍の規模である。"これまでにない飛び抜けた最大級のソーラー・プロジェクトである。" … と SoftBank の Masayoshi Son が,サウジの Mohammed bin Salman 皇太子 (MbS) との非拘束契約を調印後,ニューヨークで火曜日の記者会見で言った。
     このプロジェクトは $50 億の投資で今年始まり ── これは 約 7.2 GW に相当する ── 2019 年に稼働が予定されている。
     サウジアラビアが巨大規模のソーラーを猛烈に開発するロジックは,明白である。日光は希少資源ではない。この国は,電力需要の約 1/3 を賄うために石油を燃やしている。これは発電の方法として,環境的にも 輸出できる原油が失われる点でも高くつく。SoftBank の Son は, 200 GW のソーラーが電力コスト [毎年?] $400 億を節約し,同時に 100,000 の雇用を創出すると言う。
     この規模の建設だけでも サウジアラビアの国内ソーラー製造業界を発達させるのに役立つ … と SoftBank の Son は言う。このプロジェクトは 最終的には エネルギー貯蔵を統合する;ただし 今すぐにではない。
     加えて,このプロジェクトは MbS の長期経済戦略の礎石となるだろう;経済の多様化,雇用,石油後の経済戦略に関して 明らかにスピンオフの利益をもたらす。
     このプロジェクトは,控え目に言っても野心的であるが,数多くの疑問を招く。(1) カネはどこから来るのか? Wall Street Journal は,このプロジェクトの大部分が借金により資金手当てを受ける … と書いている。SoftBank とサウジのソブリン基金は 2017 年に $1,000 億テック基金 Saudi-SoftBank Vision Fund を発表した。報道によれば,この Vision Fund が最初の $10 億を提供する。
     $10 億の後の資金手当てのメカニズムは,曖昧なまゝ放置されている。SoftBank の CEO は,電力販売が更なる拡大に必要な資金を生むと言う。"このプロジェクト自身が,自分の拡大のための資金を支える。" … と Son は言う。"新しい投資資金は,プロジェクトによるそれまでの利益から来るので,$2,000 億全部を1日で確保する必要はない。ステップ・バイ・ステップである。"
     1つの可能性は,サウジ・アラムコの IPO の売り上げを使うことだろう。サウジの関係者は,約 $1,000 億を調達すると繰り返し自慢している。しかし 独立系 [=証券会社・銀行に属しない] アナリストらは,この数字を疑問視する。おまけに,もしもアラムコが ロンドン, ニューヨーク, 香港ではなく, サウジ・アラビア国内だけで上場する場合には,IPO の可能性は制約される。
     (2) 別の問題もある。このプロジェクトは 過去にサウジが行なった発表とどこが違うのか? ソーラーに大規模投資を公約して 実現に失敗したではないか? 5年ほど前,サウジ・アラビアは 2020 年までに 24 GW, 2032 年までに 54 GW のソーラーを建設する計画を発表した。Bloomberg によれば,最初のプロジェクトは 2017 年にようやく動き出し,僅か 300 MW [=0.3 GW] の入札を得た。
     サウジアラビアの過去の宙に浮いた公約は ── その多くは 振り出しの段階に留まっているのだが ── 明らかに皇太子の息を挫かせはしなかった。"これは,人類史上における 巨大な歩みである。" … と MbS は言った。 "大胆 かつ リスキーであり,我々は その成功を望む。"
     (3) さらにもう1つの不確定性は,Bloomberg New Energy Finance によれば,2016 年に 77 GW に達したばかりという電力が フルに 200 GW に達した時,サウジ・アラビアが何をしたいのか … である。その規模は途方もない大きさであり,アメリカの現在の全電力容量 (建設中, 開発中を含めて) の約3倍である。
     (4) 今回のソーラー発表は,向こう 25 年間に $800 億を投じて 約 16 の原子力発電所を建設する計画とサウジ・アラビアがどう整合するのか疑問を招く。これらの投資を全て進めることは 不可能に思える。ただし,サウジのソブリン基金と日本の SoftBank の間のソーラー契約は,前進する保証がほとんどない非拘束契約であることを注意すべきである。
     非拘束契約は,本気で貫徹する努力の証拠が無ければ,多くのことを必ずしも意味しない。静観すればよかろう。
    "Oilprice.com" の過去の記事には,蓄電池用のリチウム,コバルトの資源などの詳細な (ほかでは絶対に見られない) 調査結果が述べられている。このような資源の先物商品取引会社らしい。もちろん,名前から想像されるように,石油の先物取引が主力だろう。
     そういう意味では,サウジアラビアの電力事情を正確に収集して顧客に提供する必要があるのだろう。あるいは,このような記事により,新たな顧客の取り引きを誘う目的もあるだろう。
    SEC のニュースが話題を集めているのは 200 GW, $2,000 億というとんでもない巨大さのためであるが,もう1つは Wall Street Journal が取り上げたためである。
     どのメディアも WSJ を引用している。
     もちろん,WSJ の影響力が大きいためである。
     ところが,天邪鬼の当サイトは これを是非指摘しておかねばならない。
     基本的にはこのニュースは 昨年 10 月に既に報道されている既報のニュースである。
     サウジ国営通信とロイターが報道した (前報 1, 2 ↓)。
     要するに,古いニュースなのである。
     当時はほとんど話題にならなかった。
     素朴に疑問に思うのは,なぜ 去年の 10 月に騒がずに,今になって大きく騒ぐのか?
     去年の 10 月と最近では 何が変わったのか?

  49. Saudis, SoftBank Announce Massive Solar Power Project
    サウジと SoftBank が,巨大ソーラー電力プロジェクトを発表する
    Wall Street Journal,2018/03/28 @08:00 am ET
    By Margherita Stancati & Michael Amon
    開発は,Saudi-SoftBank Vision Fund からの $10 億投資により今年始まる。
     サウジアラビアのソブリン基金と日本の SoftBank Group Corp は,世界最大のソーラー発電プロジェクトを企てる計画である。これにより 世界の大金持ち投資家同士による もう1つの野心的ゴールを設定する。
     この事業の開発は,両者の合弁 Saudi-SoftBank Vision Fund からの $10 億投資により,今年始まる … と SoftBank の Masayoshi Son CEO が火曜日に言った。やがてはこれが $2,000 億の大物に育ち,2030 年までに 200 GW ── そのときには サウジ国家全体が必要とする以上の ── 電力を提供することを期待すると 彼は言う。
     "これは 史上最大のソーラー・プロジェクトを遥かに超えるものである。" … と Son は このプロジェクトの開発について 非拘束の契約 (nonbinding agreement) をサウジの Mohammed bin Salman 皇太子と結んだ後,ニューヨークで夕方の記者会見で言った。
     このプロジェクトの第一段階は,約 $50 億の費用を要し,今年始まる。Son は,2019 年には 約 7.2 GW の電力を生むソーラー・パネルを設置すると言った。第一段階の大部分は,買い入れにより資金を手当てする。
     Son が言う通りのことが実現すれば,このソーラー・プロジェクトは これまでサウジ・アラビアの PIF と SoftBank が発表した 共同計画の最大のものになる。両者は 昨年,約 $1,000 億のテック基金を発表し,世界中のテック投資をひっくり返している。サウジ・アラビアのソブリン基金は,最大 $450 億をこのテック基金にコミットしている。
     サウジアラビアは,日光という豊かな資源と広大な砂漠により,長い間 ソーラーのパワーハウスになる可能性を自負してきた。しかし,その夢は高いコスト ならびに 荒れはてた地域に大型ソーラー施設を建設するための物流問題により邪魔されてきた。
     ところが中国のパネル製造により,コストは近年下がってきた。国際エネルギー機関 IEA によれば,世界のソーラー発電は急速に伸びている。場合によっては,ソーラー・プロジェクトは コストの点で 天然ガスや石炭プラントと競争できるようになっている … と (世界のエネルギー事情を政府と企業についてモニターする) IEA が言う。
     IEA によれば,ソーラーは 世界のエネルギー・ミックスの小さな部分に過ぎず,2016 年の世界の電力の僅か1% を占めるに過ぎない。しかし,特に もしもサウジの計画がフルに実現すれば,そのシェアはますます伸びそうである。
     Son は,このプロジェクトが 最終的には サウジ・アラビア中の異なる場所のソーラー・パネルを含むと言う。サウジは,電力を蓄え必要に応じて放出する電池システムを建設する計画だ ── これは,従来こんなに大規模に実施されたことがない。
     ソーラーパネルは,サウジ・アラビアが 2~3 年後に競争に耐えうる価格で生産できるまで 低コストの製造会社から輸入する予定だと Son は言う。
     Son は,サウジと SoftBank がこのプロジェクトの資金手当てをどうするのか詳しく説明しなかったが,発電からの売り上げは,この計画の将来の段階に注ぎ込める。
     "このプロジェクトは,自分自身の拡大に資金を投入することになる。" … と彼は言った。"新しい投資は,それ以前のプロジェクトの利益から来る ── 我々は 最初から 総額 $2,000 億の確保を必要としない。ステップ・バイ・ステップであろう。"
     サウジアラビアは,(安いが非効率な電力供給手段である) 原油を燃やす以外の新しい発電方法を探し求めている。これらの原油も,輸出市場での価格が高くなることだろう。
     "一夜にして起きることではない。" … と Son は言う。
      Write to Margherita Stancati at margherita.stancati@wsj.com and Michael Amon at michael.amon@wsj.com
    "the joint Saudi-SoftBank Vision Fund" というのが初登場。これは何だ。
     "SoftBank Vision Fund" は SoftBank が運営する。
     "PIF" は サウジが運営する。
     この両者の合弁会社? "Solar Power Project 2030" を指すのか?
     このニュースは 2017/10/27 にロイターが報道したのであるが,その時に感じた不思議さは今でも消えない。
      サウジが $450 億を SVF に出資。
      サウジが SVF と総額 $2000 億の契約を結ぶ。
      全体として サウジ側の帳簿はどうなるの?
      結局,差し引き $450 億はチャラ。サウジから SVF への出資は 実質 ゼロ。
      ソフトバンクが $2000 − 450 = $1,550 億を自己負担とならざるを得ない。
    ──────
     低コストのソーラーパネルを製造しているのは中国を措いて他には無い。
     社長は 現在の政治情勢を理解しているのか?
    ──────
     いみじくも 問題点が2つあると書いている。
     (1) コスト
      こちらの方は,中国から輸入すればよい。
      しかし,2~3 年でサウジ・アラビア製が中国製と太刀打ちできるなどあり得ないだろう。なぜなら,2~3 年後の中国製は さらに安くなっている。
     (2) 物流問題
     こちらが重要である。これについては,何も書かれていない。
     日本で工場を建設する場合には,港湾近くに立地して輸出するし,高速道路網も考慮して立地する。
     そういう前提がここでは崩れる。もちろん 大量の従業員も必要である (北朝鮮, 中国から?)
     砂漠に工場を建てて輸出するから,港湾,道路を自前で建設する必要がある。
     そのほか 工場建設のためにも 通信,電力,水道 などが必要である。これらをまとめて "物流問題"。
     採算性調査を5月までにというから,社長として これらに目算が付いたからなのだろう。
      ならば 心配ない! 心配ない!

  50. HRH Crown Prince signs MoU with Softbank to establish the world's largest solar project
    皇太子殿下が Softbank と 世界最大のソーラー・プロジェクト建設の MoU に調印する
    Saudi Press Agency,2018/03/28 @10:12 GMT
    サウジ・アラビア王国の Mohammed bin Salman bin Abdulaziz 殿下,皇太子,防衛相,内閣副首相, PIF 取締役会議長は 火曜日,Softbank Group 議長兼 CEO Masayoshi Son と (太陽エネルギーの分野では この種の世界最大となる) "Solar Power Project 2030" を設立する MOU に調印した。
     この合意は,サウジアラビア王国の太陽エネルギー・セクターの発展にとって新たな枠組みであり,これにより太陽エネルギーの新会社が設立される。容量 3 GW と 4.2 GW の2つのソーラー・プラントを 2019 年までに立ち上げる。ソーラー・パネルは,サウジ・アラビア王国内で製造・開発され,2030 年までには それぞれ 150 GW, 200 GW となる。
     今回の MoU は,前回 昨年 10 月に FII (Future Investment Initiative, 未来前進イニシアティブ) で調印された MoU の補完である。この合意は また,このプロジェクトに関する双方の feasibility studies (採算性調査) が 2018 年5月までに完了すると述べている。この合意はまた,双方が サウジアラビア王国内でのソーラー貯蔵システムの製造と開発,ならびに サウジ・アラビア内で大量に商用生産され,現地 および 世界中に販売できるソーラーパネルの研究開発のために特別会社の設立にコミットしていると述べている。
     この MoU は,サウジ・アラビア王国内で 容量 200 GW のソーラーパネルの生産と配給を行ない世界にマーケティングを行ない,さらに 王国における発電と蓄電システムの分野において産業を確立する機会を探り,先進技術分野に雇用を創出し,さまざまのセクターの多様化を図るとの双方のコミットメントに基づく。
     サウジ・アラビア王国により設立されるプロジェクト (複数) と今回の MoU は,王国内のエネルギー生産において石油の節約に資するものであり,石油市場への供給者としてのサウジの役割を強化する。これらのプロジェクトは,サウジ・アラビア王国に 推定 100,000 の雇用を創出するのに寄与するものと期待される。
    Wall Street Journal (2018/03/28 @08:00 am) には,"nonbinding agreement" と書かれている。 "拘束力を持たない" んだから,いろいろ書いているけれど,守る義務はない。
     金額については,とりあえず $50 億で,最終的には "$2,000 億" らしい。
     だが,この金額も "nonbinding" だからね (笑)
     これなら,ロボットと同じ,単なる口約束。いつ潰れてもおかしくない。
     Wall Street Journal が,サウジ国営通信に取材せず,孫社長の言い分だけを伝えているのはおかしい。
    いやぁ,社長さん とんでもない協定に調印した!
     ソーラーパネルの 国内生産,国外販売 … これだけでも大変だろう。
     国内生産には,砂漠の中に生産工場を建設する必要があり,そのためには 港湾,道路,電力,通信,水道 も自前で用意する必要がある。日本で工場を建設するのとは 環境がまるで違う。
     さらに エネルギー貯蔵まで。
      要するに,サウジは 国内に "ソーラー産業" を確立して 世界に輸出したい。
    ──────
     でもまあ,サウジと "ロボット産業では世界のリーダーである SoftBank" が共同で 先進ロボットシステムの研究開発,ロボットの世界標準を策定する … とかいうのがあったよね。
     お笑いのプロジェクトだったけど,後続のニュースが無い。あれと同じ運命か?
     それなら いずれ立ち消えになるから問題ない。"社長がアホ" という記録が残るだけで済む。株主にとって,実害は無い。
    ちょっと気になって調べてみた。200 GW のソーラー・パネルとは?
     SoftBank が 2017/04/11 にインドで始めたソーラー発電所の規模が 350 MW である。MW は GW の 1/1000 であるから,インドのソーラーの発電能力は 0.35 GW である。これを 70 万世帯に供給する … と書かれている。
     単純に計算すると 200 GW なら 70 万 × 200 / 0.35 = 4億 世帯に電力を供給できる。
     これだけの ソーラー設備を毎年 生産するから,10 年では 40 億世帯 (世界全部かな) に供給する。
     そこで お客さんはゼロになる。ただし,ソーラー機器は 10 年くらいで更新するから更新需要あり。
     それにしても,荒唐無稽な規模であることが分かる。世界の需要を一手に引き受ける。
     これだけの ソーラー設備を輸出するには ものすごい港湾設備,専用運搬船の建造も必要になる。
     港湾会社,船舶会社の設立も必要か? あの狭い海峡から輸出するから海賊の出没への防衛も必要。
     日本の自衛隊に頼みますか?
     ちなみに 日本の (原子力を除く) 発電能力は 17560 万 kW = 175.6 GW であるから,200 GW なら日本全体の (工場なども含めた) 電力をカバーしてお釣りが来る。
     社長が如何に テクに弱いかの証明になっている。これで "情報革命" なんだからね。
      ご自分の頭の中の情報を "革命" する必要がある。
     結論として,おツムの弱い社長であることを世界中にバラしてしまった。これが最大の "業績" である。これで "ロボット" に続いて サウジ絡みのお笑いは,少なくとも2件目である。
     SoftBank は 世界中から まともな IT 企業として認識されなくなるでしょう。
     投資を受け入れるのは,Uber のようにカネ欲しさの塊のようなアホ企業限定?
    ──────
     Oilprice.com の記事にも, 200 GW はアメリカの現在の発電容量の (建設中, 開発中を含めて) 3倍 … と書かれている。加えて,建設予定の原子力発電所 16 ヵ所,$800 億と両方やるのか?

  51. HRH the Crown Prince meets number of heads of major American companies
    皇太子殿下が 数多くの大手アメリカ企業のトップに会う
    Saudi Press Agency,2018/03/27 @21:46 GMT (ニューヨーク)
    Mohammed bin Salman bin Abdulaziz 皇太子殿下は 月曜日,ニューヨークで Softbank Vision Fund が投資したアメリカの大手企業の数多くの CEO および 取締役と面会した。
     会合の間,彼らは Vision Softbank Fund の枠内の共同投資分野をレビューした。
    たったこれだけの短い記事が サウジ国営通信から出ている。
     "SoftBank Vision Fund" のはずが "Vision Softbank Fund", "Softbank Vision Fund" となっているのは,何を意味するのだろうか?

  52. Is Saudi Arabia's MBS really a reformer?
    サウジアラビアの MbS は,本当に改革者か?
    Aljazeera,2018/03/24 @09:46 GMT
    By Jamal Khashoggi, Ali Shihabi & Sarah Leah Whitson
    ジャーナリスト Jamal Khashoggi,シンクタンク創立者 Al Shihabi,HRW [=ヒューマン・ライツ・ウォッチ] の Sarah Leah Whitson が民主主義,イェメン,MbS を論じる。
     サウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子 (32) は西側では MbS と呼ばれるが,今 世界中を旅行して,サウジで自分が始めた反腐敗,親-女性改革を自慢して回っている。
     WbS は革命家だと称賛されてきたが,人権団体は懸念の声を挙げ,王国内の反対派の取り締まり ならびに イェメンでのサウジ主導の連合軍による戦争犯罪が続いていることを指摘する。
     "いつも言っているように,サウジでは知識人とジャーナリストが投獄されている。" … と 自ら亡命して今ではアメリカに住むサウジアラビア人のジャーナリスト Jamal Khashoggi が言う。"サウジでは 改革について誰も話そうとしないし批判もしない [ ・・・ ] 批判する人たちに,サウジの知識人に,サウジのライターに,サウジのメディアに 議論を許す息抜きを与えれば 今よりずっと良くなるだろう。"
     MbS の未来都市 Neom の $5,000 億開発は,矛盾した政策の好例である。もしも Neom が失敗すれば,国が破産しかねないと Khashoggi は言う。
     "この未来都市に MbS は $5,000 億を投資する計画だ。もしも これがうまく行かなければどうなるか? 国を破産させるだろう。だが,そういう客観的な記事を どんな新聞に書くことも 誰も許可されていない。" … と Khashoggi は言う。
     シンクタンク Arabia Foundation の創立者 Ali Shihabi は 改革を称賛し,助成金のカット,経済の再生,女性の運転許可 ならびに 就業機会の増加を 国の政策として顕著なものと認める。
     "これまで 途上国世界で これほど劇的な変化を実行して成功を納めた人は誰もいない。" … と Shihabi は言う。"我々は慈悲深い貴族政治を必要とする。"
     皇太子とサウジが主導する連合軍は,イェメンで行なわれている戦争と人道危機で果たす役割を批判されてきた。
     "彼らは,イェメンで今我々が見ている圧倒的な人道被害の責任者である。" … と HRW の中東北アメリカ部門の責任者 Sarah Leah Whitson が言う。最近の HRW のレポートは,6,000 人を超える民間人がイェメンで殺されたことを示す。その 60% は,サウジ主導の連合軍の空爆による。

  53. Magic Leap in talks for $400m Saudi cash injection
    Magic Leap が,サウジの PIF から $4億の現金注入を受け容れる協議中である
    Financial Times,2018/02/23 (土)
    Arash Massoudi & Tim Bradshaw (ロンドン, ロサンゼルス)
    PIF との取り引きは,AR スタートアップ企業の資金調達を総額 $23 億にする。
    Magic Leap の "混合現実" 端末は, もう8年も開発中である。
    サウジアラビアのソブリン基金は,Magic Leap への $4億投資を協議中である。実現すれば,アメリカのスタートアップ企業の資金調達を合計 $23 億にする。ただし,同社の AR メガネは未だ発売されていない。
     サウジアラビアの公共投資基金 (PIF) とフロリダ州に拠点を置く Magic Leap との間の取り引きは,数週間後に発表される見込みである … と この協議に近い複数の人が言う。
     新しい資金調達は,昨年 10 月に発表された シンガポールの投資基金 Temasek が率いる $5.02 億投資ラウンドの拡張である。
     サウジアラビアの投資は 約 $60 億の評価でなされる … と彼らは言い,アリババ, グーグル, フィデリティを含む Magic Leap への有名な投資家名簿に PIF が加わる … と付け加えた。
     Magic Leap は コメントを拒んだ。PIF はコメントの要請に応答しなかった。
     Magic Leap の "混合現実" メガネは,同社の ディジタル光照射野 (lightfield) 技術と先進的センサー配列を特徴とし,仮想物体を現実世界における特定の位置に定置する。ただし,同社が計画している (開発にもう8年を掛けている) "混合現実" 端末を見せてもらった人は 少なく,シリコンバレーの一部には 懐疑の念を生んでいる。
     PIF との協議は進行中であり,取り引きが確定する保証は無い。しかし もしも取り引きが完了すれば,PIF によるアメリカのテック業界への2番目の投資となる;PIF は 2016 年に $35 億を Uber に投資した。
     $2,300 億のソブリン基金は,王国の経済を石油から多様化させようという Mohammed bin Salman 皇太子の取り組みの中心にある。
     PIF と Uber との取り引きは,配車サービス企業を $625 億に評価したが,それは Uber が一連のスキャンダルで滑るほんの数ヵ月前のことだった。その後 Travis Kalanick CEO は辞任した。
     この取り引きの後で,PIF は 日本の SoftBank が運用する $930 億 投資基金の主要な支援者になった。この基金は,SoftBank 創業家 Masayoshi Son が テック企業に大きな賭けを張るために設立されたものである。多くの人は,SoftBank Vision Fund に注ぎ込まれる $450 億を,経験のある企業家の手でテック・セクターを泳ぎ回る方が適切だと王国が決定した印であると解釈した。しかし,Magic Leap への直接投資は,このロジックを くつがえす。
     投資家は,Magic Leap の資金調達の規模を,商品を発売する前の非上場テック企業にしては前例が無く,しかもハードウェアとソフトウェアの両方で広範なブレイクスルーが必要だと言う;その中には,コンパクトなデバイス内で ディジタル照射野画像を扱うための 独自のシリコン [=半導体チップ] , 光学系, ならびにOS とその上で動くアプリケーションの作成が含まれる。同社は 優先スタートを狙って,マイクロソフトやアップルなど張り合うつもりである。
     同社の創業家 Rony Abovitz CEO は,同社の技術が いつかは PC とスマートフォンの両方を 同氏が言うところの "空間コンピューティング (spatical computing)" で置き換えるとの主張を変えない。昨年 12 月,同社は暫定デバイス Magic Leap One を "設計者, 開発者, 創造家" 向けに発表した。
    Shaquille O'Neal
     しかしながら,このデバイスの "創造家版" の価格がいくらなのか ── おそらく $1,000 を超える ── は不明であり,いつ 誰もが入手できるのかも不明である。Magic Leap は今月,NBA [バスケのリーグ] と提携を結び,未来論的なゴーグルをつけた 身長 216 cm の Shaquille O’Neal を起用したプロモーション動画を流している。
     Magic Leap は,同社端末向けにゲームやアプリを作成する開発者向けのツールキット "creator portal" を 2018 年はじめに提供すると約束した。
    多くの人は,SoftBank Vision Fund に注ぎ込まれる $450 億を,"経験のある企業家の手でテック・セクターを泳ぎ回る方が適切だ" … と王国が決定した印であると解釈した。しかし,Magic Leap への直接投資は,このロジックを くつがえす。
     社長さん,何か MbS のご機嫌を損ねることをなさったのかな?
     PIF からの "commit" されたカネの入金は順調か?
     そう言えば,昨年暮れごろからバタバタと カネが必要だと言い始めた。
     子会社上場で2兆円欲しい,Swiss Re の資金 $1610 億を自分勝手に運用したい,ARM と Uber の株を担保に銀行から数十億ドルを借りたい,100 兆円だって集められるんだ ・・・ などなど。

  54. 原油から水素製造,日本と協力 サウジアラムコ CEO
    日本経済新聞 電子版,2018/01/30 @18:00
    松尾博文 (編集委員),岐部秀光 (ドバイ支局長)
    サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの Amin H. Nasser CEO は都内で日本経済新聞記者と会見した。
    原油販売への依存を減らすため,アジアで石油化学工場などへの投資を拡大する考えを示した。原油から水素を取り出す技術の実用化を多角化の柱に掲げ,"日本企業と協議に入った" と明らかにした。史上最大規模となる見込みの新規株式公開 (IPO) は「2018年後半に実行する用意がある」と言明した。
     サウジは,Mhammad 皇太子が旗振り役となり,原油の販売収入に頼った経済を見直す改革を進めている。アラムコ株を最大5%上場して1000億ドル (約11兆円) を調達し,その資金を民間企業の育成に投じる計画だ。同社が事業モデルの転換を急ぐ背景には,自らの企業価値を高めて国の改革を牽引する狙いがある。
     アラムコは世界の原油生産の1割近くを握り,売り上げの大半を原油販売で稼ぐ。Nasser はこの収益構造を段階的に改革する方針を示した。目先の柱が自国で産出した原油をガソリンや化学製品に加工して販売する体制の整備だ。Nasser は "エネルギー・石油化学の複合企業となる" と強調した。需要が拡大するアジアに照準を絞り,マレーシアやインドネシアで石油化学工場や製油所への投資を進める。
    アラムコの Amin Nasser CEO
     "インドは重要な市場だ" とも強調した。同国の石油需要は 2040年まで 年率 3.3% 成長を続ける見通しだ。具体的な計画は控えたが "複数の企業と製油所開設に向けて協議中だ" と明かした。
     原油は "健全な需要に支えられている" と話し,当面は堅調な相場が続くとの見通しを示した。だが英仏が将来のガソリン車販売を禁じる方針を打ち出すなど脱化石燃料の動きが加速する中 "原油から水素を取り出す技術の実用化を日本企業と議論している" とも述べた。温暖化ガスを排出しない水素の製造を将来の柱の1つに育てる狙いだ。
     燃料電池車などに使う水素に関連するインフラの市場規模は,2050年に約160兆円になるとの試算がある。豊富な埋蔵量を誇る原油を水素に加工することで,原油の利用価値を高める計画だ。
     関係者によると,経済産業省系の日本エネルギー経済研究所が日本側の窓口になる。日本は官民を挙げて水素産業の育成を進め,トヨタ自動車や川崎重工業,千代田化工建設などが水素ビジネスの実用化をリードする。
     アラムコと日本側はすでに実務者級の協議を複数回実施した。年内にサウジ国内の試験プラント設置に向けた事業化調査で合意を目指しており,複数の日本企業が参加する長期的なプロジェクトになる可能性がある。
     Nasser は "海外の天然ガス田への投資機会を探り,多くの企業と交渉している" とも述べた。同社は自国以外の油田やガス田への投資を見送ってきたが,エネルギー生産体制のリスク分散につなげる。
     今年後半を目指す IPO による資金調達額は,アリババ集団 (約250億ドル),フェイスブック (約160億ドル) を大幅に上回る見通しだ。ニューヨーク,ロンドン,香港に加え東京市場も誘致に名乗りを挙げている。Nasser は "全ての市場で詳細を調べている" と話したが "上場市場を最終的に決めるのは政府だ" と述べるに留めた。
    この記事は いくつかの点で興味深い。
     (1) SoftBank の名前が出て来ない。
     (2) 日本の国策として協力している。
      サウジのような国を相手にする経済協力は,(これまで何度も書いているが) 国策として協力することが大前提である。参加する日本企業グループのリスクは,これにより大幅に軽減される。サウジは安心できる。
     (3) SoftBank の場合には,非常に異例なことに 日本の国策ではない。国と国の協力ではなく,国と外国企業との協力である。これで 10 兆円規模というのは例が無いだろう。この場合には たった1社の日本企業に大きなリスクがつきまとう (独裁者 MBS の意向で何がどう変わるか分からない,極端なことを言えば,SoftBank 1社の信用を失う無茶をしても,サウジにとって痛くも痒くもない)。
     (4) アラムコの CEO と言っても実権はほとんどない。全ては MBS が決める。
     (5) アラムコ上場の話は,他の記事によると,ほとんど難しそうである。MBS の傲慢さが響いている。
     もしも 本当に 2018 年後半に上場して $1000 億 入るのなら,ようやく SVF に入金があるだろう。
     (6) 石油化学工場は サウジにこれまで建てていたが,漸くうまく行かないことに気づいたらしい。エントロピー問題により,サウジで工場を建てることは無理である。したがって ソフトバンクが協力すると社長が大声をあげている 「良いリターンは望まない」と繰り返している Neom 建設も無理だろう。東南アジアとかインドは良い着眼。そこへSoftBank が協力しない (できない) のが面白いところ。社長さん「俺にも協力させろ,良いリターンは要らない」と声を挙げなかったのか? 国策に協力するのは 気が進まない?

  55. Billionaire Saudi Prince, Alwaleed bin Talal, Is Freed From Detention
    サウジの大富豪王子 Alwaleed bin Talal が抑留から解放された。
    New York Times,2018/01/27
    By Ben Hubbard (ベイルート)
    サウジアラビアの異彩を放つ著名な投資家 Alwaleed bin Talal 王子が,腐敗の一斉取り締まりの中で逮捕された後,首都リヤドのリッツ-カールトンホテルでの抑留から解放された … とその家族の親しい仲間2人が土曜日に語った。
    Prince Alwaleed bin Talal on Saturday in what was said to be
    the Ritz-Carlton suite where he was detained in Riyadh, Saudi Arabia.
      [サウジ・アラビアのリヤドで拘束されていたリッツ-カールトン・ホテルの
    特別室と呼ばれる部屋で,土曜日にロイター記者と面談した Alwaleed bin Talal 王子]

    Katie Paul | Reuters)
     大富豪皇太子は,腐敗の大規模な取り締まりと政府が呼ぶ措置の一環として,昨年 11月に逮捕され, 10 人の王子と数百人のサウジエリート層と共にリヤドで身柄を拘束されていた。実際には この逮捕は,Mohammed bin Salman (MBS) 皇太子による権力掌握のための最新の動きとも見られていた。
     逮捕から2ヵ月半後,著名な拘束者たちはおそらく政府にかなりの資産を引き渡したか あるいは 引き渡すことに合意した後,釈放された。その中には,MBC [サウジの放送局] の主なオーナーである Waleed al-Imrahim; 王宮の元 トップ Khalid al-Tuwaijri; 大型ファッション小売り企業のオーナー Fawaz Alhokair が含まれる。
     しかし 今回の逮捕は極秘のうちに隠されているので,誰が拘留されたのか,何の理由か,解放されるには政府とどういう取り引きを打てばよいのか … は不明である。
     王国の経済を石油から多様化し,社会の厳格な慣習を弱めようとする取り組みの先頭に立つ MBS 皇太子は,このキャンペーンが $1,000 億以上の不当利益を取り戻すと考えると言う。
     しかし 批評家は,反腐敗運動の陰には,若き皇太子が経済支配を強め,ライバルの権力と知名度を削ぐ狙いがあると言う。
     MBS と同じく王国の創立者の孫である Alwaleed 王子の逮捕は,王国の隠れた顔の1人と王子を見なしていた国際実業社会にショック・ウェーブを送った。彼は,中東のウォーレン・バフェットと呼ばれていた。
     その投資は Twitter, Lyft, Citigroup のかなりの権益を含み,Bill Gates, Rupert Murdoch, Michael R. Bloomberg を含む 世界の実業家巨人たちと事業を行なっていた。
     彼の投資は,パリの高級ホテル Four Seasons Hotel George V,ロンドンの Savoy ホテル, ニューヨークの Plaza ホテルを含めて,世界を跨いでいた。彼はまた [パリを本拠地とする] AccorHotel チェーン とロンドンの再開発事業 Canary Wharf にも投資した。
     プライバシー規則を盾に,サウジ政府は Alwaleed 王子を拘束した理由を絶対に公表しないが,一部の人は 2008 年の財務危機で王子の投資がダメになった後に 王室から受けた借り入れを 全額返済していないからだと推測する。王子に面会した他の人たちは,王子が MBS の改革プログラムを誤っていると内輪に批判して,若き皇太子の怒りを買ったのだと言う。
     Alwaleed 王子の解放に到った理由も すぐには分からないし,政府にかなりの資産を渡すことを認めたかどうかも不明である。
     全体像を複雑にするのは,ロイターの記者1人が土曜日早朝 リッツホテルへの立ち入りと 特別室と呼ばれるところで王子のインタビューを許されたことである。以前より痩せて,ごま塩のひげを生やし,自分の顔の像が入ったマグ・カップを使う王子は,自分の拘留が "誤解" であると述べた。
     ロイターのインタビューの書き起こし記録によれば,"安心してください。これは 我々のクリーン作戦です。政府とさまざまの事柄について 今 協議を行なっているところですが,その内容を今は申し上げられません。" … と王子は言った。
     "ただし ご安心ください。我々は 事の顛末の最終局面にいます。私は 非常に楽な気持でいる。なぜなら,私は自分の国にいる;自分の街にいる;だから安心を感じている。問題は全くありません。全てはうまく行っている。"
     だが,王子が 自由に話せたのかどうかは不明である。王子の家族の関係者2名が (この解放が 未だ公式発表されていないことを理由に) 匿名を条件に語ったところによれば,その数時間後,王子はリッツ・ホテルから解放され,リヤドの自宅に帰った。
    解放されたのだから,何か取引はあったのだろうが,王子は 沈黙を守るよう強制されているらしい。
    何か 喋れば,それなりの大きな罰が見返りに用意されているのか。
    ──────
    不当利益 $1,000 億というのは,ソフトバンク・ビジョン・ファンド の規模とピッタリだ。(笑)
     偶然だろうか?
     日本の欲張りジジイから $1,000 億 くらい巻き上げようと考えても おかしくはない。
     なぜなら 日本のカネカネ社長は 「45 分で $450 億, 1分あたり $10 億をサウジの MBS から調達した」… と得意になって世界中のあちこちで喋り捲っている。本来は "サウジ・アラビア Vision 2030" を SoftBank が助けることが目的なのに,これでは,サウジからカネを "ふんだくる" ことが 目的なのか? これを聞いた MBS は何と思っただろうか? MBS の自尊心を傷つけていることは間違いない。
     誇り高い MBS 皇太子が,すんなり $450 億を払うだろうか?
     カネカネ社長に そうまで言われて払うとすれば,サウジの王族から馬鹿にされるだろう。
     反対に サウジ電力会社 (SEC) の株 数兆円を買う契約は もう済んでいる。
     通信子会社上場で調達できるカネ 2兆円だけでは足りない。
     だから (?),ARM と Uber の株を担保に $50 億を銀行から借金するというニュース (ロイター 2018/01/24) が出ている。これなら金額が 合いそうだ。
     サウジから 予定通り $450 億が入るなら,こういう必要は全然無いだろう。
     いずれにしても カネカネ社長は,懐具合が寂しいと認識していることだけは間違い無い。
     何のためだか 知らないが 2兆円 + $50 億が必要だと感じている。
     インドの P2P 保険会社 PolicyBazaar とシリコンバレーの プレハブ建設会社 Katerra だけなら,こんなカネは要らない。
     Sprint を上場廃止するには,4,000 億円もあれば足りる。

  56. Apple and Amazon are in talks to establish a presence in Saudi Arabia as the country continues its high-tech makeover
    特ダネ:サウジアラビアがハイテクへのシフトを続ける中,アップルとアマゾンは,サウジでのプレゼンスを確立しようとサウジと協議中である。
    Daily Mail - Reuters,2017/12/28 @12:22 GMT
    By Katie Paul
      リヤドは,過去2年間 規制の障害を緩和してきた。
      原油価格の低下は,石油依存経済の多様化が必要なことを意味する。
      両社は既に,第三者経由で製品を サウジ・アラビアで販売している。
      アップルとアマゾンを誘うことは,Mohammed 王子の改革プランをさらに推進し,両社の利益を上げる。
     アップルとアマゾンは,サウジ・アラビアへの投資について リヤドと免許取得の協議中である … と複数の情報筋が言う。
     この動きは,Mohammed bin Salman (MBS) 皇太子が 保守的な王国にハイテクの装いを与える推進策の一環である。
     別の情報筋は,アップルが SAGIA と協議中であることをロイターに確認した。
    SAGIA:サウジ・アラビア総合投資院 (Saudi Arabian General Investment Authority)
      2000年に設立された SAGIA は,外国からの投資を認可する機関である。
     SAGIAは,サウジアラビアへの拠点設立を考える国内外の投資家に対して投資許可証を発行する。手続き窓口として,主要都市にビジネス・センターを設置しており,投資家はこれらのビジネス・センターを通じて各種申請を行なう。
     この両社は,第三者経由で製品を既に サウジアラビアで販売しているが,この両社も それ以外の世界的テック巨人も 直接のプレゼンスをサウジ・アラビアで未だ確立していない。
    アップルとアマゾンは,サウジ・アラビアへの投資について リヤドと
    免許取得の協議中である … と複数の情報筋が言う。この動きは,
    MBS 皇太子が保守的な王国にハイテクの装いを与える推進策の一環である。
     アマゾンの協議は,同社のクラウド・コンピューティング部門 Amazon Web Services (AWS) が率いている。AWS は,Saudi Telecom Company (STC) と Mobility [携帯サービス企業?] のような地元の小さなプロバイダが現在支配している市場で 激しい競争を引き起こす。
     リヤドは,原油価格の低落が 石油依存経済の多様化の必要を強調する中で,過去2年間 外国投資家を長い間 遠ざけてきた外国資本の保有比率を含む規制の障害を緩和してきた。
     アップルとアマゾンを誘うことは,Mohammed 王子の改革プランをさらに推進し,インターネットとスマートフォンの利用が世界的に見て高く,しかも若く 比較的豊かな市場で,両社の利益を上げる。
     サウジの人口の 約 70% が 30 歳以下であり ソーシャル・メディアに貼り付けになっている若者が多い。
     アップル店舗に対する SAGIA の免許は,2月までに得られる予定であり,最初の小売り店舗は 2019 年の開設を目標にしている … と この協議に詳しい2人が言う。
     アマゾンの協議は初期段階にあり,投資計画の具体的な日取りは決まっていない … と彼らは言う。
     アップルは サウジの携帯電話市場で,サムスンに次いで No. 2 である と 市場リサーチ会社 Euromonitor は言う。
     アマゾンは,既に 2017 年 ドバイに拠点を置くオンライン小売り企業 Souq.com を買収し,アマゾン小売り商品が 王国で販売される道を開いた。
     両社とも コメントを拒んだ。SAGIA とは 直ちに連絡が取れなかった。
     長引くご機嫌伺い
    リヤドの Kingdom Centre Tower を通り過ぎながら電話で話す人。
    2017年11月5日撮影。 (©Reuters | Faisal Al Nasser)
     サウジの改革計画は,広範なセクターに亘り外国投資を呼び込む必要があり,関係者らは サウジのハイテクへの野心を満たすべく,過去2年以上に亘って 特にシリコンバレーに強くご機嫌伺いをしてきた。
     MBS 王子は ハイテク好きを自認する人であり,Steve Jobs, Mark Zuckerberg, Bill Gates のような 破壊者 (disruptor) を気取る。
     昨年 アメリカを公式訪問した際には,フェイスブック,マイクロソフト,ウーバーの幹部らと面会した;後に,ソブリン基金がウーバーの株 $35 憶を取得した。
     それ以来,日本の SoftBank と $450 億テック基金を設立し,人間よりロボットが多い $5,000 憶 巨大未来都市の生成計画を発表した。
    アマゾンの協議は, 同社のクラウド・コンピューティング部門 AWS が率いる。
    AWS は,STC と Mobility のような地元の小さなプロバイダが
    現在支配している市場で 激しい競争を引き起こす。
     アップルとアマゾンは,両社とも サウジの持つ外国企業優先リスト上にあり,サウジの関係者は サウジのさらなる改革に役立つことを希望している … と1人の情報筋が言う。
     "現在サウジにいる 多くのテック多国籍企業は,サウジ政府へのベンダーか,または Uber の場合のように サウジの多額の投資から利益を得た企業である。" … と ドバイに拠点を置く テック顧問企業 MENA Catalysts Inc のトップ Sam Blatteis が言う。
     "アマゾンのサウジ参入は,重大変化である"
     アマゾンにとって この動きは,AWS が データ・ストレージ および 計算サービスを中東の顧客に先陣を切って売ることを強調する。
    リヤドのカフェで携帯電話で話す女性。
    2016年10月6日。 (©Reuters | Faisal Al Nasser)
     売り上げで世界最大のクラウド事業である AWS は, No. 2 のマイクロソフトよりゆっくりした世界展開を始めたが,今では クラウド・サービスを提供する地域を2倍に広げた。
     ただし マイクロソフトもこれから 中東とインドの3地域ででデータセンターの計画を発表する予定である。
     AWS は今年9月,バーレーン地域にもデータセンターを設立すると発表した。
     王国は,サービス・プロバイダを引っ張るために 1年以上かけて,クラウド・コンピューティングに適用される法律の多くの重なりを合理化してきた。
     完了すれば,クラウド取り引きは,アマゾン小売り倉庫のサウジ・アラビアでの拡大に道を開く。
     アマゾンは 様々の事業部門を別々に営業しているが,営業している国々では,小売り,第三者マーケットプレイス および クラウド・サービスを ほぼフルセットでにロールアウトしている。
     アップルの店舗は,同社製品のプロフィールの名を高め,修理,コミュニティ・イベントを提供し,"広場 (town square)" として 店舗を位置づけるというアップルの戦略に沿う。
      サウジアラビアが $5,000 憶 ハイテク巨大都市 Neom を建設する
     今年 10 月,サウジ・アラビアは $5,000 憶 未来都市構想を発表した。この都市は,代替エネルギーに 100% 依存し,未来の革新のハブとなる。
     Neom と呼ばれるこのプロジェクトは,エジプトとヨルダンに近い紅海海岸沿いの未開発の土地に建設される。
     MBS 皇太子が今日発表した 野心的計画は,ドローン, 無人運転車, ロボットの利用に道を開く。
     面積 26,500 km² [=九州の面積の 2/3!] のゾーンは,エネルギー, 水, バイオテック, 食糧, 先進製造技術, エンタテインメントを含む業界に重点を置く。
     このゾーンは 紅海とアカバ湾に隣接しており,スエズ運河を利用する海上貿易ルートに近い。
     広大な土地は,エジプトとヨルダンに広がっており,3国をカバーする最初のプライベート領域である。 [?]
     電力は,風力とソーラーだけを使用する … と PIF は言う。
     このエリアは,エジプトをサウジ・アラビアをつなぐ King Salman Bridge の玄関の役割をする … と PIF は言う。
    電力は,風力とソーラーだけを利用する … って ところに馬脚が現れている。できっこない。
    ──────
    それにしても,そうなんですよね (笑)。どうも最初からカネの流れがおかしいと思っていた。
     サウジは 外国からの投資を必要としている。だから SoftBank のカネをサウジに投資して欲しい。
     これは切実なんですよ。Neom の電力会社の株 数兆円を SoftBank が買った契約もその一環である。
     合計 50 兆円は必要である。
     「シリコンバレーに2年以上 強く投資を要請してきた」… というのも その流れである。
     それなのに,SoftBank Vision Fund というのは,カネの流れが正反対。$450 億を 逆流出。
     たくさんカネが欲しいサウジが,SoftBank に出資する。これ 矛盾していない?
     サウジが SoftBank に快く投資なんかするのかな? 今まで 入金がいくらあったの? ゼロ?
     いや まぁ 別に,見返りとして SoftBank がサウジに同額の $450 億を投資すれば問題ありません。
     実際,その 1/4 くらいは,サウジ電力を買ったことで 既に埋め合わせている。
     あと,残りも期待されていると考えれば,辻褄が合う。
    SoftBank の Uber への $100 憶出資について,どの記事も触れていないが,サウジ・アラビアがどう考えてるかは 重要だと思う。そこで SPA のサイトに行って見たが,10 月13日のものしか無かった (↓)
     (1) サウジは Uber への出資では1年半先行しており,既に $35 億を 2016年6月に投資した。
     (2) 今回の SoftBank の投資は,サウジの権利を侵害する。
     まず第1に,希薄化がある。次に 評価額を 30% 減らされたから,$35 億の出資が $10 憶ほど損になる。
     王国相手に,この埋め合わせは (何らかの形で) 絶対に必要だろう。
     (3) 移管の話が出ているが,そうなると サウジの Uber 出資は2重になる。揉めないか?
      移管を拒否するとか,自分の Uber 株も移管せよとか,評価をいくらにするかとか ・・・ 。
     SoftBank が赤字の ARM の 1/4 を現物出資するのなら,サウジも Uber 株で現物出資したっていいはずだし,シャープもアップルも,どこかの液晶上場を株式会社化して 適当な評価額で現物したっていい (笑)
     どちらも 一見 大金持ちのように見えて,実は窮屈だからね。

  57. The Price of Freedom for Saudi Arabia’s Richest Man: $6 Billion
    サウジアラビア最大の富豪の身代金:60 億ドル
    Wall Street Journal,2017/12/23 @02:50 pm ET
    By Margherita Stancati, Summer Said & Benoit Faucon (リヤド, ドバイ, ロンドン)
    サウジ当局は,al-Waleed bin Talal 王子を拘束から解放するために 少なくとも $60 億を要求している … と事情に詳しい複数の人が語った。これにより,世界最大の富豪の1人の世界事業帝国をリスクに陥れている。[233 件のコメント]
    サウジアラビアの al-Waleed bin Talal 王子は,11月初めから
    リヤドの Ritz-Carlton ホテルで拘束されている,今年7月撮影。
    Ishara S. Kodikara | AFP | Getty Images)
    62 歳の王子は,先月初め 広範な汚職に対する Mohammed bin Salman (MBS) 皇太子のキャンペーンの第一弾としてサウジ政府がぶち上げた一連の逮捕で捕まった 数十人の王族, 政府官僚 および 実業家の中の1人である。
     サウジ政府は,逮捕された人たちにその理由を 殆ど開示していない。その多くは カネを払うことにより和議に応じ,リヤドの Ritz-Carlton ホテルの即席監獄から解放された。サウジ当局が (ツイッターのような西側企業の大株主である) al-Waleed 王子に要求している $60 憶は,逮捕者から要求している中でも最高額に属する … と事情に詳しい一部の人たちが言う。
    ビジネス帝国
    al-Waleed bin Talal 王子は 世界中にわたる
    持ち株の巨大なネットワークを構築した。
    これまでに開示されている大企業の持ち株
     Forbes は 王子の資産を $187 憶と推定しているが,これは 中東では 個人の最大の資産である。ただし al-Waleed 王子は,こんな巨額を調達して引き渡すことは 自分が有罪であると認めることになり,25 年以上かけて築き上げた金融帝国の解体を要求するに等しいと漏らした … と他の人たちは言う。
     al-Waleed は,解放のための支払いとして,自分のコングロマリット Kingdom Holding Co のかなりの部分を提供できないか 政府と協議中である … と事情に詳しい複数の人が言う。リヤドに上場されているこの企業の時価総額は $87 憶であるが,王子が逮捕されて以後 約 14% 下がった。Kingdom Holding は 11 月に声明を発表し,サウジ政府を支持し,戦略は "不変のまま" であると言った。
     現在同社の議長である al-Waleed 王子は,国が支援する企業となっても リーダーシップの地位に留まる意向である … と 王子に近い1人が言う。
     "自分の支配下に Kingdom Holding を置くことが,彼の戦いである。" … とその人は言う。
     サウジの上級官僚によれば,al-Waleed 王子は マネー・ローンダリング, 汚職 および ゆすり を含む容疑を受けている。その官僚は,詳細を明かさなかった。
     過去に al-Waleed 皇太子と共同で働き,その家族と接触を続けている Salah Al-Hejailan 弁護士は,王子に対する "正式の告訴は何も無い" と言い,了解が達せられない場合に限って検察が裁判を要求するだろうと言う。
     サウジ政府は,"和議に達するための友好的意見交換" を tycoon と行なっているにすぎないと Al-Hejailan は言う。そして 現在 自分は al-Waleed 王子の弁護依頼人ではない … と付け加えた。
    サウジの首都 リヤドの Ritz-Carlton ホテルの玄関。
    ここには, 11月から 数十人の王族, 官僚, 実業家が抑留されていた。
    Giuseppe Cacace | AFP | Getty Images)
     王子は,自分の無実を証明し,必要ならば 汚職の容疑を裁判で晴らすため戦う決意であると 周りの人たちに漏らした。
     "王子は正当な捜査を求めている。al-Waleed が MBS をつらい目に遭わせることになるだろう。" … と al-Waleed 王子の側近の1人が言った。
     Kingdom Holding,Saudi Royal Court,ワシントンのサウジ大使館は いずれもコメント要請に応答しなかった。
     サウジの高官らは,先月の逮捕者との和議から数百億ドルを国が受けるものと期待すると言う。かつては玉座に最も近いと見られていた Miteb bin Abdullah 王子は,政府と $10 億の和議で身柄を解放された … と サウジ政府の上席顧問らが言う。
     今回の身柄拘束は,32 歳の Mohammed 王子がたくらんだ大規模なサウジ社会の改変計画の一環である。彼はまた,来年から女性に運転を許可し,ここ数十年で初めて映画館を開設し,さらに経済転換のカネを調達するため国営石油企業を上場しようとしている。
     Mohammed 王子は,王族の権力の集約に素早く動いた。過去2年,皇太子は国内の治安サービス,国防 および 経済の権力を長く握っていた叔父や従兄たちから奪った。
     皇太子の従兄にあたる al-Waleed 王子は,その父 Talal bin Abudulaziz 王子が 1960 年代に社会と政治の改革者と呼ばれたものの人気を失ったので,玉座を争うとは 全く見られていなかった。
     その父と同様に al-Waleed 王子は,女性の運転を認めるような社会改革の 遠慮のない信奉者であった。彼は,アップル,GM,News Corp のような会社の大株主 (今ではすべて売却した。News Corp は Wall Street Journal のオーナーである) として,外部の実業界に対する一種の 独立サウジ大使であった。現在 彼はツイッター,Lyft,AccorHotels,Four Seasons Hotel & Resorts の大株主である。彼の会社の摩天楼 Kingdom Centre は,リヤドで最も目を引く建物の1つである。
     al-Waleed の側近の一部の人は,その高名が Mohanned 王子の敵対心を生んだと考えると言う。実際,Kingdom Holding は 長らくサウジ国家の腕のような振る舞いをしており,皇太子や国のソブリン基金 PIF が行なうような契約を結んできた。
     今夏 9つの国を回る旅の或る休日,al-Waleed 王子は ポルトガル大統領とアルバニア首相と会見した。9月には,フランスの Macron 大統領と フランスとの "戦略的連合" を議論した … と Kingdom Holding が発行するニュース・リリースに書かれている。
     Kingdom Holding は,フランスのソブリン基金とそのパートナーが サウジ事業に $5 億を投資するよう協議しており,サウジ政府が契約間近だった … と事情に詳しい複数の人が言う。しかし,王子の逮捕以来,この件の進捗は見られなくなった。フランスの基金のスポークスマンは,コメントを拒んだ。
     Ritz-Carlton ホテルの中で,al-Waleed 王子は,通信を制限されており,"ダイエット食品" と側近が呼ぶようなものを食べている。
     al-Waleed 王子の逮捕は,その国際事業のパートナーを不意打ちし,彼の企業の将来に不確定性を投じた。al-Waleed 王子は Mohammed 王子の改革プランに支持を表明していたし,Kingdom Holding は 進行中の経済・社会改革のそれぞれを実行する上で重要な役割を果たすと見られていた。Kingdom Holding の取締役会は 水曜日に会合を開き,al-Waleed 王子の逮捕以来初めて 会合を開いたことを発表した。
     事情を知る複数の人によれば,al-Waleed のメディア企業 Rotana は,フランスのコングロマリット Vivendi が PIF と JV を設立して サウジで音楽を売り 映画館を開くべく協議中であった。しかし 今回の逮捕により協議は沈没したと彼らは言う。Vivendi の広報担当者は,al-Waleed 王子と Vivendi の Vincent Bolloré 議長が協議を行なっていたことを認めた。ただし JV は "フォローアップされておらず,議題に上っていない" … と言った。
     側近の話によれば,al-Waleed 王子は,自分が捜査の対象になっているとか,逮捕が身近に迫っていることにうすうす気づくようなことは 全く無かったらしい。
     逮捕の1ヵ月前,彼は テキスト・メッセージを残した ── これを Wall Street Journal が入手した。これは,巨大建設会社 Saudi Binladin Group の議長 Bakr bin Laden 宛てのもので,メッカでのクレーンの倒壊に関連した不正の容疑が晴れたことを祝うものだった。このメッセージで al-Waleen 王子は bin Laden に Jeddah Tower に戻る時が来た と書いた。Jeddah Tower は,完成すれば 世界最大の高さになる Kingdom Holding との提携事業である。
     この塔は 未完成のままである。bin Laden は,王子と共に Ritz ホテルに拘束されている。
      Write to Margherita Stancati at margherita.stancati@wsj.com, Summer Said at summer.said@wsj.com and Benoit Faucon at benoit.faucon@wsj.com
    よくは分からないが,MBS 皇太子は 相当のワルらしい。
     al-Waleed ($187 憶) がこういう目に遭っていることを肝に銘じる必要がある。
     こういうワルに近づいてうまい汁を吸えるのは,相当のワルでないとアブナイ。
     大抵は,身ぐるみ剥がれておしまい … というのが 世界の常識だろう (笑)。
     「1分で 10 億ドル」とか 自慢しているようではネ。MBS がアホに見えるが ・・・ 。
     反対に SVF $1,000 憶は,飛んで火にいる夏の虫 (笑)。
     日経の記事 (2017/12/24 @18:38) には,
     財政赤字の穴埋めに使うとみられるが,財産権の保護や法の支配の観点から海外投資家の懸念が強まるのは必至だ。
      ・・・ と書かれている。「海外投資家」の懸念が強まれば,SoftBank はどうなるのかな?
     そもそも SoftBank は サウジ電力に数兆円の出資を契約したが,
     SVF への $450 億の入金は 何 % 済んでいるのか? ほとんどゼロなんじゃないの?
     上のような記事から考えれば 分かるでしょ。気前よく出すはずが無い。
    ──────
    WSJ の続報 (2017/12/25) では 続々解放中らしい (もちろんカネと引き換え).
     結局,なんのかんのと言い掛かりをつけて,カネをむしり取ることが目的だろう。

  58. Tables Turned: Saudi Arabia Hunts for Oil Assets in the U.S.
    テーブルは回る:サウジアラビアが アメリカで石油資産を漁る
    Wall Street Journal,2017/12/20 @06:56 pm ET
    By Sarah McFarlane & Summer Said
    アラムコが,Tellurian および その他アメリカのシェール業者とエネルギー資産についてと初期協議を行なった。
    Saudi Arabia's energy Minister Khalid al-Falih speaks
    at an oil-and-gas conference in Basra, Iraq, on Dec. 4.
    Essam al-Sudani | Reuters)
     サウジアラビアは,経済の押し上げにより石油・ガス生産への投資を初めて推進しようと,アメリカのシェール地域でエネルギー取り引きを漁っている。
     アラムコという名で知られる Saudi Arabian Oil Company は,ヒューストンに拠点を置く液化天然ガス開発会社 Tellurian Inc の権益の取得 あるいは 将来 燃料の一部を買い付ける契約について初期交渉を行なった … と事情に詳しい複数の人が言う。これとは別に,アラムコは アメリカの石油・ガス油田の2巨人 Permian と Eagle Ford の資産の買収について問い合わせた … と同じ人たちが言う。
     この協議は 進んだ段階には 未だ達しておらず,サウジ側は 他の 非開示のアメリカ企業とも天然ガスの輸出取引について協議した … と同じ人たちが言う。
     Tellurian の広報担当者は,"商売上の取り引きについては コメントできない。" … と言った。アラムコはコメントを拒んだ。
     アメリカの石油・ガス生産資源を買収する取り組みは,サウジ・アラビアにとって重大な転換点を画する。サウジは これまで何十年も 世界 No. 1 の原油輸出国であった。しかし,アメリカの生産ブームが価格低下により王国を揺るがした;サウジ政府は,巨大な石油資源からの売り上げへの依存を再考せざるを得なくなった。
    Power Mix
    サウジは,いまだに原油と石油製品を
    燃やすことにより大半の発電を行なう。
    2016 年の発電用燃料消費。
     水圧破砕法 [地下の岩体に超高圧の水を注入して亀裂を生じさせる手法] を用いてシェール層から石油とガスを取り出すことにより,アメリカは 世界最大の石油・ガス産出国となり,余ったエネルギーを輸出し始めている。サウジの原油輸出は ── かつてはアメリカの原油の主要な輸入源であったが ── 今年9月に 過去 30 年で最低の水準を記録した。
     "歴史上の観点からは,驚くべきことだ。" … とコロンビア大学世界エネルギー政策センターの Jason Bordoff 所長が言う。"これは,シェール革命の影響が如何に劇的であったかを印象づける。" … と彼は言う。
     この変化は,32 歳の Mohammed bin Salman 皇太子が指揮する サウジ社会の変革を加速するのを助けた。
     Mohammad 王子が 今年 推定法定相続人に昇格して以来,王国は 女性の運転を許可し,映画館への立ち入り禁止を解除し,汚職の取り締まりを始め,これにより自らの権力を強化した。彼は また,来年 アラムコの一部株式を公開する取り組みを立ち上げた。この上場は 史上初の大規模になると見られ,石油依存から経済的に脱却するための数十億ドルの資金を得ることになろう。
     アメリカのエネルギー企業との協議は,サウジ-アメリカ関係が改善した中で飛び出した;Donald Trump 大統領は,サウジ・アラビアを イラン封じ込めのために欠かせない同盟者として自慢する。アメリカの Rick Perry エネルギー長官は,最近の王国への訪問で アメリカの LNG の輸出について Mohammed 皇太子と話したと語った。
     アラムコは,アメリカを含めて,世界中に精製工場を持つが,サウジ・アラビア国境の外では 石油もガスも生産していない。王国は これまで,天然ガスも原油も輸入していない。
     アメリカでガスを生産・輸出することは,アラムコを多様化する;これはアラムコの上場を前にした投資家にとって魅力であろう。サウジの関係者は,アラムコの IPO 後に生産施設に国際的投資をする意向であると述べた。
     サウジの Khalid al-Falih エネルギー相は,今月 記者団に,アラムコが 地中海や東アフリカのように アメリカより 王国に近い地域から天然ガスを輸入することに関心があると述べた。ロシアの Vladimir Putin 大統領も,サウジの関係者に ロシアのガスに投資するよう迫っている。
     しかし,事情に詳しい複数の人は,サウジの関係者が 今年 アメリカのシェール地域の石油・ガス生産業者と広範な協議を行なったと言う。
     シェール生産に投資することにより,サウジ・アラビアは アメリカの石油・ガス業界を深く理解できるようになるだろう。シェール企業は (サウジ・アラビアが何十年も やっているような) 長期プロジェクトには投資せず, 価格が下がったときには生産を落とし,価格が上がったときに増産するというやり方を素早く行なう。
     サウジ以外の中東の石油国家は,シェールについて学ぼうとしている。今年はじめ,アブダビのソブリン基金 Mubadala は アメリカの非上場シェール企業に小規模な投資を行なった。"その目的は,この事業のダイナミクス, 技術面 および 財政面 ── とくにコストを理解することだった。" … と Mubadala の 石油 および 石油化学品事業の Musabbeh Al Kaabi CEO が言う。
      The Saudis have been engaged in a global search for natural-gas partners as the kingdom’s energy officials push to make the fuel a larger part of their mix for producing electricity, some of which is generated by burning crude oil.
     Tellurian は,アメリカの LNG をルイジアナのターミナル経由で輸出する計画 (2022 年までに完了予定) で知られている。LNG は,原油と同様に世界中に出荷することができる。
     Tellurian は,BG Group の元幹部 Martin Houston と Cheniere Energy Inc の 元CEO Charif Souki により共同創立された。後者は,大きな LNG 輸出プロジェクトを立ち上げたアメリカ初の企業である。Tellurian は 天然ガスの生産施設と 未開発のシェール用土地を所有する。
     Nasdaq 上場の Tellurian の株価は,このニュースの発表を受けて 水曜日に +2.7% 高となった。
     サウジ・アラビアのガス資源は抜き取りが難しく,硫黄分が多いので処理費用が高くつく。このため,アメリカの地下埋蔵量とほぼ等しい ── BP によれば,世界の埋蔵量の約 4.5% である ── にも拘らず,大したガス生産を行なっていない。
     LNG の輸入は,サウジ・アラビアにとって これまで経済的意味を持たなかった。王国は 消費者に電気料金を補助しているので,インフラのコストと LNG 輸送のコストを加えると,コスト高となり 単に大量の石油資源を燃やすのに比べて太刀打ちできない。
     だが,王国がアラムコの IPO を準備する中で,この計算は変わり始めた。長期的には,追加の原油輸出からの売り上げ増が,LNG をエネルギー・ミックスに加えるのに要する価格初期コストを上回る可能性がある。
     "サウジにとって これは非常に魅力的である。なぜなら,多くの場合 LNG を輸入することにより,原油の輸出を自由にできるようになるからだ。" … と Tellurian の Martin Houston が Wall Street Journal に先月の LNG 会議で語った。
     サウジ・アラビアは,発電用の石油を LNG に切り替えれば,1年に最大 1,200 万トンの LNG を輸入できるが,そうなれば中東で最大の輸入国になる … と コンサルタント会社 Poten & Partnes は言う。
      Write to Sarah McFarlane at sarah.mcfarlane@wsj.com and Summer Said at summer.said@wsj.com
    このニュースは,SoftBank にどういう影響を与えるのか?
     サウジが アメリカのシェール企業に直接に投資して,アメリカの資源を アメリカから輸出したいらしい。
     当然,莫大なカネが掛かる。
     サウジは,必要な資金をどこから手当てするのか?
     サウジ自身がアメリカに投資するのであれば,SVF にわざわざ投資する必要はない?

  59. サウジ,石油化学製品に活路 2.2 兆円投じコンビナート
    日経電子版,2017/11/27 @13:35
    佐野彰洋 (イスタンブール)
    サウジアラビアの国営石油会社サウジ・アラムコと化学大手 SABIC (サウジアラビア基礎産業公社) は 11月26日 (日),サウジ国内で世界最大規模の石油化学コンビナートを建設する覚書を締結した。 2025年の操業開始を目指す。ロイター通信によると投資規模は200億ドル (約2.2 兆円) に達する。 付加価値の高い化学製品を増産し,国を挙げて産業構造改革を加速する構えだ。
     石油化学コンビナートの建設は, Mhammad 皇太子が主導する包括的な経済改革構想「ビジョン2030」に沿ったものである。原油生産だけでなく,石油ビジネスの "川下" でも収益を稼ぐ狙いがある。
     コンビナートは,日量 40万バレルの原油を処理し,年間 900万トンの化学製品とベースオイルを生産する見通し。中国をはじめアジアなどに輸出する。
     アラムコの Amin H. Nasser CEO 兼総裁によると,紅海沿岸の産業都市 Yanbu を候補地として検討しているという。2019年末までに投資実行の最終判断を下すという。両社が投資を折半する。
     SABIC (Saudi Arabian Basic Industries Cooperation) の Yousef Abdullah Al-Benyan CEO は「(実現すれば) 世界最大のコンビナートになる」と強調する。新たに3万人の雇用を創出し,サウジの国内総生産を 1.5% 押し上げる効果を期待する。
     人口急増と財政の悪化に直面するサウジは,政敵排除により実権掌握を図る Mhammad 皇太子が主導し,原油輸出に頼らない国造りを目指している。具体的には産業多角化や雇用創出に向けた経済改革を急いでいる。改革の柱の1つがサウジアラムコの新規株式公開 (IPO) で,2018年にも株式の5%売却を目指す。
      ただ,サウジはイランやカタールと国交を断つ一方で,多数の有力王子や閣僚を汚職容疑で一斉に拘束した。政情の不安が国家改革の推進に影響する懸念も出ている。
     日本企業では住友化学が,サウジ・アラムコと総工費 1.5 兆円の「 Rabigh 計画」をサウジで進めている。2009 年に稼働し,現在はメタクリル酸メチル, パラキシレンといった化学品の製造プラント建設が完成間近だ。
     直近のアジアの石油化学相場は上昇している。石油化学製品の主原料であるエチレンのアジア市場における取引価格は11月下旬時点で1トン $1290 前後と前年同月から4割近く上がった。 「中国を中心に自動車部材やレジ袋向けなど幅広い分野で需要が強い」(アメレックス・エナジー・コム) という。長期的に需要の高まりが予想されるが,日本企業を含む国際競争は激化すると見られる。
     一般に,最新プラントは生産効率が高く,サウジでは原料の石油や天然ガスを安値で調達しやすい。新たな計画ではアラムコが低価格で原油を提供するのは確実と見られ,コスト競争力の高い化学品が日本などのアジアに流入すれば,市況の下落要因になり,日本の化学メーカーが影響を受ける可能性もある。
    2017/11/27 にこういう「おかしな」記事が日経から出た。
     「おかしい」と言うのには,いくつもの理由がある。
     (1) SPA (サウジ国営通信) から こんなニュースは出ていない。
     (2) ロイターからも こんなニュースは出ていない。トルコのイスタンブールにいる日経の特派員が ロイターの記事を引用して書いているのである。
     (3) 一番おかしいのは,ソフトバンクの名前が全く出てこないことである。
      MBS 皇太子は 当社社長を有力な金づると頼んで,SEC にも数兆円の出資をさせた。で あれば,石油化学計画に 2.2 兆円の金づるとして社長を頼らないのはおかしい。
     (4) さらに おかしいのは (笑),こんな成功の見込みがほとんど無いものをなぜぶち上げるのかが分からない。1つの理由としては,悲願のサウジアラムコ上場に弾みをつけるための煙幕作戦とも考えられる。いまのサウジにとって アラムコを上場しなければ,自由に使える資金が手に入らない。SVF への入金の約束も果たせない。この 2.2 兆円計画にしても,アラムコ上場以外に資金を手当てする見込みは無かろう。
     (5) サウジが川下に進出するのは 宿願である。今に始まったことではない。原油を輸出するだけでは うまみを米英の石油化学会社に奪われる。だから,日本の三菱や住友を頼って 石油化学プラントを国内に建設してきた。筆者の友人にもこれに関わって現地で指揮に関わった技術者がいるが,結局はうまく行っていない。
     たとえば,『住友化学の社運を賭けた一大プロジェクト「ラービグ」の稼働が安定しない。世界最大級の石油コンビナートとしてサウジアラビアで稼働してから既に7年が経つが,今も設備の稼働停止が相次いでいる。』(日経 2016/07/14)
      ・・・ という記事も見受けられる。国策であるから,うまく行かなくてもやらざるを得ないのだが,当サイトの見解では,サウジ・アラビアのように気候条件が厳しいところでは,日本で成立しているような工場が経済的に成立し得ないのだと想像する。日本であれば 工場建設に必要なインフラは 鉄道, 港湾, 空港, 高速道路, 電力, 通信, 上下水道などすべて整っているから,自前でこうしたものを用意する必要は無い。何しろ 清潔な水は,海水を蒸留しなければ得られない国である。このほかに,有能な従業員の確保も問題である。原油のコストが安いと言っても,全体としてコストはかなり高いだろう。
     これらは もちろん,SoftBank が契約した SEC のソーラー事業にも当てはまる (部品を製造する工場まで現地に建設するという話だ)。

  60. OPEC 総会よりも心配なサウジのメルトダウン,絵空事ではない原油供給ストップ,日本の備えは大丈夫か
    JB Press,2017/11/24 (金)
    藤 和彦
    Keystone パイプライン (カナダのアルバータ州から アメリカのサウスダコダ州,オクラホマ州などを経てテキサス州へ輸送) の原油漏れ事故の影響で11月17日に1バレル= $56 後半に上昇していた WTI原油価格は,今週に入り11月20日に1バレル= $56.09 へと反落した。買いポジションの手仕舞い売りの増加が下げを招いたことが要因だった(米商品先物取引委員会が17日に発表した建玉報告では,投機筋による原油先物の買い持ち高は過去最高だった)。
    サウジアラビア首都リヤドにある高級ホテル Ritz-Carlton。
    身柄拘束された王子らの「留置場」になっているとされる。
    2017年11月5日撮影。(©AFP | Fayez Nureldine)
     その後原油価格は1バレル=$57 台に上昇しているが,市場では「11月30日の OPEC 総会で主要産油国による協調減産が来年末まで延長される」ことが既に織り込まれており,OPEC 総会の結果が期待外れに終われば, 「失望売り」が加わるのは確実である。
     「ロシアが減産延長の判断を来年3月末まで留保する」ことを懸念する見方があるが,仮にロシアが11月末に決断しなくても,OPEC総会で減産期間の来年末までの延長がすんなりと決まるのではないだろうか。
     大きな理由は,ベネズエラにおける原油生産の不調が,ここに来て好材料となっているからだ。
     ベネズエラの原油生産量は,国営石油会社 PDVSA の資金不足により,OPEC が定めた生産目標を下回っている。10月の原油生産量は 28年ぶりの低水準となり,OPEC によれば今年の原油生産量は 少なくとも日量25万バレル減少する見通しである。資金不足が早期に解決する見込みが無いことから,来年さらに減少するのは確実な情勢だ。これに乗じてイラクなどが,アメリカやインドへの原油輸出量を増加している (11月20日付ロイター) が,OPEC の原油生産量が生産目標を上回る圧力が弱まっていることから,OPEC 総会ですんなりと減産期間の来年末までの延長が決まるのではないか。
     減産期間延長でも原油価格は上昇しない?
     ただし,減産期間の延長が決定されても,原油価格は上昇しないだろう。新鮮味が無いことに加え,アメリカのシェール・オイルが増産基調にあることから,原油価格はむしろ下落する可能性が高い。
     前週末のアメリカの石油掘削装置 (リグ) 稼働数に増減は無かった (738基) が,過半数のシェール企業が「売りヘッジ」により来年の原油価格を1バレル=約 $50 で確定していることから,シェール・オイルの生産が今後も増加する見込みである。
     需要サイドを見ても,好材料は乏しい。OPEC は11月9日,「インドの原油需要が 2040年までに世界最大になる」との見通しを出したが,インドの足元の情勢は芳しくない。原油処理能力にボトルネックが生じ,インド企業のデフォルト・リスクが過去最大になる (11月17日付NNA) などの悪材料が重なっており,当面の需要は弱含みであろう。
     今年 世界最大の原油輸入国となる可能性が高い中国も,10月の原油輸入量が日量 約 730万バレルと激減している (昨年の原油輸入量の日量平均は 約 840万バレル)。国内の原油精製能力の過剰状態はますます深刻になっており,予断を許さない状態となっている。
     国際エネルギー機関 (IEA) も11月4日に発表した月報で「来年第1四半期に需給バランスが再び悪化する」との見方を示している。
     にわかに勃発したサウジアラビアの政変
     筆者は,協調減産延長への期待から原油価格は1バレル=約 $50 の水準を保ち,これに地政学要因が加わって $55 超えの相場になると見ているが,今後は「地政学要因」がますます強まっていくのではないかと懸念している。
     その原因がサウジアラビアであることは,言うまでもない。
     筆者は2年前からサウジアラビア情勢を心配してきたが,このところのサウジアラビアの「ドタバタ劇」により,日本でも危機意識が高まってきたようである。
     11月18日付の日本経済新聞は,「サウジ政変 国王退位の影」と題する記事を1面トップに掲載し,その中で「サルマン国王はこの1ヵ月あまり不機嫌だった。生前に譲位する考えを周囲に打診したが,予想外に慎重な反応が返ってきた」と報じている。
    (日本経済新聞の現地記者が連日配信しているレポートは,非常に参考になっているが,残念ながら欧米のメディアに比べて踏み込みが足りないと言わざるを得ない。)
     9月頃から Mhammad 皇太子への譲位が噂されていたが,障害となっているのは「 Mhammad 皇太子が実施を決断したイエメンへの軍事侵攻」だと筆者は考えている。
      Mhammad 皇太子が国防大臣に就任した直後の 2015年3月,サウジアラビアが主導するアラブ連合軍のイエメン空爆が始まった。だが,当初の目的であったイスラム教シーア派反政府組織フーシの勢力を駆逐することができず,軍事費が増大するばかりである。イエメンでは 700万人以上の市民が飢餓の恐れに直面していることから,国連安全保障理事会がサウジアラビア政府に対して「イエメンの国境封鎖を解除せよ」との声明を出す始末である。サウジアラビアの国際社会からの評判は悪化する一方である。
      Mhammad 皇太子が率いる国防軍 (約10万人) はイエメン人傭兵を多数擁するなどの「アキレス腱」を抱えており,フーシ派を排除するための地上戦を展開できる状況にない。「戦果を挙げられずにイエメンへの軍事介入を止めれば,自らの権威が地に落ちる」と焦った Mhammad 皇太子は「国家警護隊」に頼らざるを得なくなったようだ。
     国家警護隊は国防軍と同規模の兵力を擁し, 古くからサウド家に仕える超エリート部隊であると言われている。 遊牧民「ベドウィン」のラクダ部隊の伝統を受け継ぐ勇猛果敢な国家警護隊であればイエメンでの地上戦に耐えうる,と考えた Mhammad 皇太子は,兵士投入用の輸送ヘリ「ブラックホーク」などを米国から購入するなど国家警護隊の能力拡大を急いでいた (「選択」2017年11月号)。
     だが,泥沼化しているイエメンへの地上戦を,国家警護隊が引き受けるとは到底思えない。 Mhammad 皇太子からの度重なる要請に反発した「国家警護隊をはじめとする軍部」がクーデターを画策しているとの噂も出ていた。
     王族を含む約 50人の政府関係者が逮捕されたのは,その矢先の11月4日だった。
     拘束されたムトイブ前国家警備相は,独善的な Mhammad 皇太子に批判的だったとされる。尋問中に軍による殴打や拷問を受け,現在は病院で治療を受けていると言われている (11月19日付時事通信)。
     11月20日付ブルームバーグは,「サウジアラビア国防省関係者14人が違法な金融協定の締結に関与したとして逮捕されたが,情報筋は『イエメン戦争における軍司令官の作戦失敗が真の逮捕の理由である』と述べた」と報じている。 Mhammad 皇太子と軍部との関係は悪化の一途を辿っているように思えてならない (軍関係者による Mhammad 皇太子暗殺未遂事件が起こったとの未確認情報もある)。
     「濡れ手に粟」の喜びは束の間
     当局は,逮捕された王子たちとの間で「『不正に得た』財産を放棄すれば釈放する」との合意を成立させたようだ (11月20日付ロイター)。逮捕された王子の中には,著名な投資家であるアルワリード王子も含まれており, サウジアラビア政府は,これにより最大 1000億ドルの資産を確保できるものと見られる。
     原油価格は上昇しているものの,サウジアラビアの原油輸出量は 約 655万バレルにまで減少しているため,原油売却収入が伸び悩んでいる。また, Mhammad 王子が今年6月皇太子に就任した「ご祝儀」として,昨年6月に実施した公務員給与の削減を遡って撤回したため,国家財政は「火の車」だったはずである (今年10月「サウジアラビア政府は 2000億ドルの外貨準備を取り崩した」との情報が流れていた)。
     サウジアラビア財務省は「濡れ手に粟」だと喜んでいるかもしれないが,そうは問屋が卸さない。王族らが多数拘束された事件を契機に投資家が警戒感を強めているからだ (11月20日付日本経済新聞)。サウジアラビア国債への売り圧力が強まっていることから,今後,国際市場で国債を発行して資金調達を図ることが困難になる。
     さらに「王子たちが保有している巨額の金塊が没収される」との噂が飛び交っており (11月20日付日本経済新聞),疑心暗鬼となった王子たちが個人資産を海外に移転しようと躍起になっている。汚職逮捕劇はいつ収拾がつくのか予測できない状況だ。
     ドイツ,米国,中国の反応
     国民の関心を海外に逸らす目的のためか,サウジアラビア政府は最近レバノンにおけるイランの勢力拡大を声高に叫んでいる。これに対しドイツの Sigmar Gabriel 外相は 11月17日,「サウジアラビア政府の挑発行為を欧州は黙って見ているわけにはいかない」と批判的なコメントを出した。
    2015年12月,メルケル首相直轄の情報機関が「 Mhammad 皇太子は中東地域のトラブルメーカーになる」とのレポートを国会議員に配布するなど,ドイツの政府関係者は Mhammad 皇太子に対して警戒的だった。腹を立てたサウジアラビア政府は18日,駐ドイツ大使の召還を決定したが,ドイツの Mhammad 皇太子への批判は強まるばかりだろう。
     一方,米国のトランプ大統領は,王族らの汚職逮捕について即座に「支持する」と表明した。しかし,アメリカ国務省の元外交官は Foreign Policy 誌の最新号に「サルマン国王と皇太子の親子に露骨に肩入れするトランプ大統領の無防備さが,アメリカと中東の未来をリスクに晒した」と警告する内容の論文を投稿している。CIAは,アルカイダ掃討作戦の戦友だったナイーフ前皇太子をサウジが今年6月に解任したことに激怒していると言われている。
     このような情勢下で中国外務省は11月16日,「習近平国家主席はサウジアラビアのサルマン国王を支持する」旨を電話で表明したことを明らかにした。サウジアラビア政府高官は10月30日,「核開発計画の一環としてウラン濃縮に着手する」意向を明らかにしている。中国は,サウジアラビアに独自の原子炉を売り込むなど,最大のサポート役となる可能性が高い。
      国王就任を強行すると何が起きるのか
     11月に入りサルマン国王は皇太子への譲位に理解を求めるために,実弟であるアハマド王子を呼び出した。そうした異例の行動があったため,汚職逮捕劇後に「48時間以内に王位継承が行われる」との憶測が流れた。だが,その予想は再び外れた。
     王位継承が行なわれなかったのは,「イエメン問題」をはじめ Mhammad 皇太子がこれまでの失政を反省する姿勢を示さないからではないだろうか。
      Mhammad 皇太子は国内では数千人に及ぶ王族の大半を敵に回し,海外では「核疑惑」を含め欧米の情報機関から問題視されている。そんな皇太子が国王就任を強行すれば国内で内乱が勃発する,との懸念は「杞憂」ではなくなっている。そうなれば原油価格は1バレル=$100 を超え,最悪の場合,サウジアラビアからの原油供給がストップすることもありうる。日本はその備えが万全だろうか。
    著者 プロフィール
    藤 和彦
    経済産業研究所上席研究員。1960年 愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。通商産業省 (現・経済産業省) 入省後 エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。
     2003年 内閣官房に出向 (エコノミック・インテリジェンス担当)。
     2016年から現職。
     著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
    これだけサウジアラビアの皇太子絡みの記事が出るということは,それだけ 問題があるのだろう。
     メルケル首相府が 中東地域のトラブルメーカーになる と予想する MBS 皇太子と深く結ばれたソフトバンクの運命は?
     もはや $450 億なんて 本当に期待できるのか? (カネに窮迫している様子である)
       拘束した王子から巻き上げた $1,000 億をソフトバンクに回すこともできるだろう。
       でもそんなことをすれば,何が起こるだろうか?
     反対に いろんな理屈をつけて (たとえば約束を果たさないなど) ソフトバンクから カネを巻き上げるのではないか?

  61. サウジ政変,国王退位の影 性急な国家改革に危うさ
    日本経済新聞 電子版,2017/11/18 (土) @02:00
    岐部秀光 (リヤド)
    サウジアラビアの Mhammed Bin Salman (MBS) 皇太子 (32) が進める国家改革が世界に波紋を広げている。汚職摘発を名目に政敵を排除し,イランなどへの強硬姿勢を取る。石油に頼らない経済を作り上げるため,権限を集中させる狙いだ。複数の王室関係者によると,サルマン国王 (81) は,生きているうちに息子である皇太子に王位を譲る検討に入った。サウジ政変は生みの苦しみか,衰退の始まりか。イスラム世界の盟主の行方はまだ見えない。
     生前の譲位は,国王が弟ら王室の有力メンバーに理解を求め,広く支持を得ているという。譲位の時期は,国王と皇太子の間の極秘事項とされ,父子以外は知らされていない。早ければ,国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開 (IPO) を予定する 2018年中との見方が出ている。
     サウジはメッカ,メディナというイスラム教の2大聖地を抱え,国王は「2聖モスクの守護者」を自任する。アジアを中心とする世界への石油の安定供給源として重要な役割を果たし,最大の対日石油輸出国でもある。その国家運営は中東だけでなく,国際社会にも大きな影響を与える。
     ■汚職で王子を拘束
     サウジは,初代アブドルアジズ国王の息子である第2世代の王子が兄弟間で順番に王位を引き継いできた。MBS 皇太子が昇格すれば第8代目となる。第3世代が国王となるのは初めてだ。次期国王として半世紀以上の長期にわたり指導者に君臨し,初代国王以来,最も大きな力を握る人物になる可能性がある。
     「許可が無いなら先には進めない。」首都リヤドの高級ホテル,Ritz-Carlton の通用門で高圧的な警官に行く手を阻まれた。10月末に「サウジ版ダボス」とされる国際会議が開かれたホテルは,巨大な正門が堅く閉ざされた。
     ホテルは,4日に汚職容疑で逮捕された有力王子や現役閣僚の拘束場所とされる。警察車両が止まり,ものものしい雰囲気だ。「世界一豪華な拘置所」とも皮肉られるが,快適とはほど遠い。清掃や調理を担当する外国人の従業員は大半が自宅で待機。拘束された王子は外出もできない。
     サルマン国王は,この1ヵ月あまり不機嫌だった。生前に譲位する考えを周囲に打診したが,予想外に慎重な反応が返ってきた。皇太子による王子らの拘束劇が始まったのは4日。その数日前,国王は同腹の弟アハマド王子を呼び出し,膝詰めの談判をした。皇太子への譲位と汚職摘発に理解を求めた可能性が高い。
     国王とアハマド王子は,初代国王とハッサ妃の間に生まれ,サウド家の本流である「スデイリ7人兄弟」のうち存命している2人だ。両者の合意に表立って反対できる者はいないと見られる。
     皇太子は汚職問題に断固とした対応を取り,経済を透明にすると訴えた。「汚職は許せない。皇太子は英雄だ」とリヤドで暮らす運転手のマジドさん (23)。人口の過半を占める若者や女性は,皇太子の改革を熱烈に支持する。
     ■取り決め破棄?
     皇太子は 2015年,副皇太子に抜擢され,内外の政策全般の実権を握った。改革の柱として石油に頼ってきた経済を多角化すると宣言し,厳しすぎる宗教戒律を緩める近代化も掲げた。2018年中にアラムコ株の一部を内外で公開する。
     サウジの譲位や汚職摘発を含めた性急な国家改革は,危うさもある。譲位もすんなりと実現するかどうか予断を許さない。建国以来引きずる体制の暗黙の取り決めを破棄することを意味するからだ。
     象徴的なのは,皇太子が国家警備相のムトイブ王子を解任,拘束したことだ。王子はアブドラ前国王の息子である。前国王は 50年にわたり国家警備隊司令官を務め,2013年に王子を閣僚に据えた。皇太子はアブドラ家が最後に握っていたポストを奪い,サルマン家への権力集中を進める。伝統を離れた一極集中が行き過ぎれば,思わぬ反発に遭いかねない。
     厳しい戒律がある宗教界は,権威を与えられ,王室を支えた。女性の運転解禁など規律を緩める決断は内外で歓迎されたが,メンツをつぶされた宗教界は改革を支えるのか。
     国民は教育・医療など丸抱えで国に面倒をみてもらう代わりに,政治参加の権利を放棄した。若者の失業率は 40% に上る。いつまでも仕事に就けず,増税や財政緊縮で負担増を迫られれば,やがて民主化を求めて立ち上がるかもしれない。15万人に上る海外で学ぶ若いサウジ人の中には,帰国を取りやめることを考える者も多く, 国の将来を担う若者の空洞化も懸念される。
     皇太子の改革は,外国の投資で技術移転や雇用創出がもたらされることを前提とする。10兆円ファンドの創設でサウジの改革に協力を表明したソフトバンクグループのような外国企業が慎重になれば,改革どころではなくなる。
     「世界に開かれたイスラムの国とする。」皇太子が目指す国家像は明確だ。だが,内外の信頼を取り戻し,権力を確立するまでは,中東や世界の火種としてくすぶり続ける。
    社長は「45分で 450 億ドル,1分で 10 億ドルを調達した」とインドとアメリカで怪気炎を上げては笑いの種になっている。SoftBank の株主は,$450 億がサウジから転がり込んでくる … と考えているようだが,本当にそう期待できるのか?
     皇太子の改革は,外国の投資で技術移転や雇用創出がもたらされることを前提とする。10兆円ファンドの創設でサウジの改革に協力を表明したソフトバンクグループのような外国企業が慎重になれば,改革どころではなくなる。
     ここでは,SoftBank があたかも 10 兆円をサウジに投資して,SoftBank の持っている技術を移転して,サウジの改革を助ける … と書かれている。社長の言っていること,株主の期待することとは正反対 (?) である。
     実際,SVF は既に PIF と契約を交わし サウジ電力 (SEC, $1000 億と言われる) の "かなりの" 株式を取得した。おそらく数兆円を SEC に投資すると約束したのだろう。
     なんだか 綻びが見え始めたように思う ── カネの流れる向きが逆ではないか?
    ──────
     今後 MBS 独裁と Masa 独裁は協力せざるを得ない。
       コンセンサスに依らず,独裁する … という点で両者は共通する。
     Masa 独裁が倒れても MBS 独裁は びくともしないだろうが,その反対に MBS 独裁が倒れれば,Masa 独裁は共倒れになる。だから,MBS の要求を Masa は すべて呑まざるを得ない (あるいは 社長を辞任するか)。
     よって,今後何兆円ものカネの要求をすべて呑むことになるだろう。SEC への出資はその手始めである。
     SVF というような "SoftBank" の名前を冠した基金に $450 億をサウジが入金してくれるという期待は甘いだろう。アラムコ上場は 現状ではできなくなっているし「アラムコ上場 無いから,あれはチャラ」と MBS に言われたら,Masa は何も言えないだろう。何か 言えるためには,同額の見返りが無くっちゃね (袖の下でよい)。
     何しろ 201 人を拘束し,汚職を言いがかりに $8,000 億を巻き上げようという (NY Times) MBS のやることである (MBS だって,巨額の賄賂を受け取っているだろう)。皇太子に即位したクーデターの際には,イスラエルに依頼して,空軍機をリヤド上空に飛ばせたとも言われている (Washington Post)。

  62. サウジ有力王族の大量拘束は賭けか,必然か; 国王と皇太子は国家改革に「不退転」の決意を示した
    日経ビジネスオンライン,2017/11/16
    橋爪 吉博
    サウジアラビアが大きく揺れている。
    11月4日,有力王族・現職閣僚・有名実業家 数十名が突然汚職容疑で拘束された。国内的には脱石油依存を目指す国内改革「サウジ・ビジョン 2030」の進捗遅延が,国際的にも対イラン関係を中心に緊張激化が伝えられる中,次期国王を目指す Mhammad ・ビン・サルマン (MBS) 皇太子による権力基盤強化の動きと見られている。
    本稿では,最近のサウジを巡る内外の情勢を展望するとともに,今回の拘束劇の概要を紹介し,今後の展開を考えたい。
    国内改革の停滞
    サウジアラビアのサルマン国王 (左) は, Mhammad 皇太子 (右) と
    共に,傷みを伴う国家改革に乗り出した。(写真=AP/アフロ)
     現在,サウジアラビアは,サルマン国王の第7男で次期王位継承権者である Mhammad 皇太子主導の下,石油収入に依存する経済体制から脱却するための経済改革プログラム「サウジ・ビジョン2030」を進めているところであるが,その進捗状況は必ずしもはかばかしいものではない。
     ビジョンの具体的な数値目標を示した「国家変革計画」の実施が遅れており,目標数値の下方修正や実現年次の先送りが続出している模様で,年内にも改訂発表があると言われている。例えば,2016年6月に公務員給与の削減が発表されたが,2017年5月にはその方針が撤回され,給与の削減分が遡って支給された。
     また,歳入・歳出の財政均衡の実現年次も 2020年から2023年に先送りされると見られている。ビジョンの中核は,若年・女性労働力の活用による非石油・民間部門の経済活性化であるが,これまでの石油依存経済に慣れてきた保守層や官僚たちからは反発が強いという。
     女性の自動車運転解禁
     しかし,そうした中で,9月26日には,大きな進展があった。女性の自動車運転を 2018年6月から解禁することが発表された。女性の運転禁止は,サウジの閉鎖性・女性の人権制限の象徴的規制であったが,女性の社会進出を促進するためには必要不可欠な措置で,長年の懸案でもあった。
     イスラム法上,その旨定められているわけではないが,宗教界からは,解禁反対が強かっただけに,驚きをもって受け止められた。家族の宝 (主人の所有物) である妻や娘が自分の意志で移動してはおかしいではないかと,サウジ人から聞き,筆者は妙に納得したことがある。
     この発表前の9月10日には,サウジの宗教指導者多数が逮捕されており,改革への抵抗勢力として,宗教界に対しても実力行使に出ている。
     アラムコ上場の難航
     また,ビジョン実施の前提,改革のための財源措置として予定されているのが,国営石油会社サウジアラムコの IPOである。当初,2018年中に,資産価値約20兆ドルの5%を株式公開し,サウジ国内外の株式市場に上場することとされていた。
     ところが ここに来て,どうも,IPO の実施が遅れそうな模様である。アラムコ当局からは予定通りであるとの発表が行われているが,英誌 Economist 等の海外メディアからは,2019年に先送りされるとか,上場はサウジ国内取引所だけで海外では関係先への私募にとどまるとか,種々の観測が出ている。
     総資産も想定の 20兆ドルに遥かに届かない,あるいは,アラムコの経営情報の開示が海外株式市場の上場基準に遠く及ばない,などとも言われている。確かに,原油価格 $50/バレルとして,サウジの確認埋蔵量 2,700億バレルとすれば,原油資産は 13.5兆ドルと試算できる。そもそも,原油価格が低迷している現状は,株式上場のタイミングとして適当ではない。
     しかし,本来,この改革は,長期にわたる原油価格の低迷を前提に,石油収入への国家財政の依存から脱却することを目的としている。ここで,原油価格が回復した場合,改革への勢いが低下する可能性がある。原油価格が回復すると改革の必要性が薄れる。原油価格の回復は,サウジにとって "両刃の剣" であろう。
      「未来投資イニシアティブ」
     さらに,10月24日から26日には,今回関係者が拘束されていると伝えられる最高級ホテル Ritz-Carlton Riyadh で,公共投資基金 (PIF) 主催の国際金融会議「未来投資イニシアティブ (FII)」が開催された。
     PIF は,サウジの国家投資基金であるとともに,将来は アラムコを含め民営化後の国営企業株式の受け皿となることを予定しており,今回の会議は そのお披露目の意味があった。会議には,世界の著名投資家とともに,国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事も出席した。PIF と10兆円規模の基金を組成したソフトバンクグループの孫正義氏が Mhammad 皇太子と並んで着席する写真も配信された。
     また,会議では,紅海沿岸に 5000億ドルを投じ,自動運転,人工知能,ロボット,再生可能エネルギー等の最先端技術を集積した新都市 Neom を建設する計画が発表された。
     対外関係の行き詰まり
     サウジを巡る対外的関係も,対イラン関係を中心に良好とは言い難い。
     2016年1月に国交を断絶して以来,イランとの関係は,石油政策やメッカ巡礼受け入れなど特定の問題を除いて,改善の兆しは見られない。むしろ,イエメンを実効支配するフーシ派やレバノン政府と対立する武装集団ヒズボラへのイランの支援に対するサウジの反発は高まっている。
     偶然かもしれないが,汚職容疑の拘束があったのと同じ11月4日には,フーシ派からイラン製ミサイルの攻撃を受けたとの報道があり,ヒズボラの攻勢を警戒し レバノンからの自国民の退去を勧告している。
     また,イランへの融和姿勢をとるカタールとの対立も,6月5日の国交断絶以来,電話会談等接触の機会はあったものの膠着状態にある。そのため,イランに対抗する有力な地域組織である湾岸協力協議機構 (GCC) も機能不全に陥っている。
     シリアにおいても,三つ巴の対立の中で IS は打倒されたものの,サウジが支援する反政府勢力は優勢とはならず,ロシアとイランに支援されたアサド政権の勢力が回復した。イランと同じシーア派が政権を握るイラクを含めて,サウジは,イラン (シーア派) の包囲網を大きな圧力として感じている。
     対米関係については,5月のトランプ大統領の初外遊先となり,サウジ外交は大統領の支持を得ているように,ホワイトハウスとの関係は良好であるが,議会や国務省,国防総省,情報機関等との関係は必ずしも回復しているとは思えない。カタール断交についても,トランプ大統領は一貫してサウジ支持であるが,ティラーソン国務長官は双方に対し中立的な仲裁姿勢を堅持している。
     サルマン国王のロシア訪問
    サウジアラビアのサルマン国王は 2017年10月,ロシアを初めて訪れ
    プーチン大統領と会談した。この直後,息子の Mhammad 皇太子が
    主導する形で,王族の大量拘束が実施された(ロイター/アフロ)
    こうした状況の中,外交関係の立て直しのため,サウジは ロシアとの協調路線に舵を切った。10月5日,サルマン国王は サウジ国王として初めてロシアを訪問し,プーチン大統領と会談した。
     両国は,20億ドル(約2300億円)規模の投資ファンド設立を含むエネルギー・経済部門における協力協定を締結,軍事面ではロシア製地対空ミサイルの導入で合意するとともに,原油の協調減産合意の延長等についても協議したといわれる。サウジは,ロシアとの協調関係の演出によって,米国を牽制するとともに,イランとシリアに対するロシアの影響力行使を期待したものと思われる。米国は,このロシア製ミサイル購入で,保留中であった対空ミサイルシステム THAAD の対サウジ供与を即時承認した。
     当然,両国が主導する原油価格維持・回復に向けた協調関係も確認されたことは間違いない。この機会に,ファリハ,ノバク両エネルギー相の2国会談はもちろんのこと,イランのザンガネ石油相らモスクワに参集した主要産油国石油相との会談も行われ,協調減産を 2018年の年末まで9ヵ月延長することが合意されたと言われる。
     その結果,足元で原油価格は堅調に推移しており,WTI 先物価格は $60/バレル近くまで上昇した。サウジにとっては来年のアラムコ上場を控え,また,ロシアにとっては来年春のプーチン大統領再選を控え,原油価格の維持は必要不可欠なのだろう。
     対イラク関係の見直し
     また,外交関係で注目されるのは,対イラク関係の改善に動いていることである。
     イラクは,イラク戦争後,米国ネオコン主導の「民主選挙」実施で,シーア派政権が成立し,スンニ派であるフセイン政権時代の反イラン政策から,親イラン政策に転換した。そのため,イラクは,イランによるサウジ包囲網の一翼を担っている形であるが,10月22日には,新政権成立後初めて,イラクのアバディ首相がサウジの首都リヤドを訪問し,国王・皇太子と会談するとともに,米国のティラーソン国務長官を交えて,3ヵ国会談も開催された。
     米国とサウジは,IS 打倒のためイラクに派遣していたイラン民兵の撤退を要請したと報じられている。石油関連では,湾岸戦争時の戦時賠償でサウジが接収し利用していた,イラクからサウジを経由し紅海につながる「イラク・パイプライン」(IPSA) の再開が話題となった模様である。
     有力王族・現職閣僚・有名実業家等の拘束
     2017年11月4日,サルマン国王は 勅令を発布し, Mhammad 皇太子をトップに,検事総長・会計検査院長等をメンバーとする腐敗防止委員会を設置,腐敗防止に必要な措置を取る権限を与えた。また同日,別の勅令で ムトイブ・ビン・アブダッラー国家警備隊相 (長官),ファッキーフ経済企画相,アブダッラースルタン海軍司令官の解任を発表した。
     11月5日,サウジのメディアは,同委員会の命令で,11人の王族,4人の現職閣僚,数十人の官僚・実業家等が拘束されたと報じた。拘束者は,王宮に近いリヤドの最高級ホテル,Ritz-Carlton に軟禁され,取り調べを受けているという。Ritz-Carlton Riyadh の日本語サイトで,空室照会カレンダーを見ると,来年1月末まで「ご利用いただけません」の表示が出ている (11月14日現在)。
    拘束現場とされる Ritz-Carlton Riyadh (写真は同社サイトから) では
    来年1月末まで,宿泊予約ができない状態になっている。
     拘束者名簿が公式発表されているわけではないが,拘束されたと伝えられる人々は,概ね3つのグループに分けられる。
      Mhammad 皇太子は国軍・警察・国家警備隊を自らの指揮下に
     第1は,王族メンバーである。このグループは,後継国王として名前が挙がったこともあるムトイブ国家警備隊相,トルキビンアブダッラー元リヤド州知事らアブダッラー前国王の子息など,前国王と関係が深いメンバーが中心である。特に,国家警備隊(National Gourd)は,国軍とは別系統の軍隊組織で,遊牧民「ベドウィン」のラクダ部隊の伝統を受け継ぐ勇猛果敢な精鋭部隊といわれる。
     ファハド元国王やサルマン現国王など「スデイリ・セブン」(スデイリ家のハッサ妃から生まれた7兄弟) といわれるサウド家の主流派に対して,王族内基盤の必ずしも強くなかったアブダッラー前国王が,国王に即位でき,10年間の治世でリーダーシップを発揮できたのも,国家警備隊の武力が背景にあったからだと言われる。
      Mhammad 皇太子は,2015年の父王サルマンの王位継承時に,父王から国防相の地位を受け継いだ。また,2017年6月21日には,内務相を兼任する従兄の Mhammad ・ビン・ナイーフ皇太子 (当時) が解任,廃位され,副皇太子から昇格した Mhammad 皇太子が警察・検察組織を掌握した。
     今回の措置で, Mhammad 皇太子は,国軍・警察・国家警備隊と3つの実力組織を自らの指揮下に置くこととなり,その国内権力基盤は大幅に強化されたと言える。汚職容疑でライバルを追い落とし,権力基盤を強化するとともに,国民的人気を高めようとするのは,習近平を見るまでもなく,よくある話でもある。
     改革遅延の責任を取らされたか?
      第2のグループは,ファッキーフ経済企画相,アッサーフ前財務相,ダッバーグ総合投資庁長官,王宮府長官,前・現儀典長など,現職閣僚を含む経済・王宮官僚である。
     汚職容疑での拘束ではあるが,むしろ,改革に抵抗したか,改革遅延の責任を取らされ,解任されたと見るのが妥当であろう。ファッキーフ経済企画相は,"サウジ・ビジョン2030" の担当大臣であり, Mhammad 皇太子との関係は悪くないと言われていた。ビジョン自体,その原案は米国のコンサルタント会社マッキンゼーが作成したと言われ,最近では,経済企画省は「マッキンゼー省」と揶揄されている。テクノクラート官僚として,ファッキーフには言いたいことが沢山あったのだろうと推測する。
    「アラブのバフェット」も拘束
     第3のグループは,世界的な投資家,「アラブのバフェット」といわれるワーリッド・ビン・タラール王子を含む,サウジの財閥経営者・有名実業家である。この中には,ウサマ・ビン・ラーディンの実家の異母兄バクル・ビン・ラーディン,大財閥バラカグループ代表も含まれる。ビン・ラーディングループは,歴代王族との関係が深いサウジ最大の建設業者で大規模公共事業で拡大してきた。
     実は,筆者には,このグループが摘発対象となったことは意外であった。特にワーリッド殿下は,国内改革の必要性を常々主張してきた改革派であり,国際的影響力も大きい。サウジ経済の中で,非石油部門を成長させ,民間部門を振興させることが,皇太子の主導する国内改革の中核である。改革に逆行する措置に見える。
     ただ,Wall Street Journal によれば,拘束者は200人を上回り,差し押さえた銀行口座は1700口,没収金額は1000億ドルを超えているとしており,国民的人気を集めたいだけでなく,本気で,国家財政の支出改革にも取り組む姿勢を示したものかも知れない。
     王位継承への道
     このように,内外で難しい局面を迎えているサウジアラビア。そうした中で,有力王族を含む汚職容疑による大量拘束が行われた。従来であれば,王族内のコンセンサスによって全てが決まるシステムであったが,サルマン国王が即位して以降,こうした強硬措置による決定が目立ってきた。
     サウジアラビアが世界最大の石油輸出国であり,わが国の原油輸入の約35%を占めているだけに,先行きが懸念される。
     ただ,石油依存から脱却して「普通の国」になるためには,普通のやり方では物事は進まないのかもしれない。また,サウジの王族には,コンセンサスでは決められない課題がある。王位の第二世代から第三世代への継承問題である。
     建国の父アブドラアジズ大王は,リヤド近郊の豪族から身を起こし,戦いと婚姻政策で,メッカとメディナという二つの聖地を含むアラビア半島の大部分を統一した。地方豪族との婚姻政策の結果,43人の王子をもうけた。
     大王は,王位は自分の子と孫に継承されるとし,国家基本法にもそのように定められている。ただ,王位継承は,ベドウィン遊牧民の伝統に則り,長子相続ではなく,兄弟相続で行われた。遊牧民は一族が集団で移動するが,その時,リーダーは一番経験豊かな長老がふさわしいという考え方である。年長者から順にリーダーになる。
     当然,国王にふさわしくない者は,王族会議で排除されたが,これでは,70歳を超えた高齢即位が多くなり, 王位継承権者である皇太子が国王より先に亡くなるケースも出てくる。さらに問題は,大王の第二世代で回している間は良いが,どこで第三世代に王位を移すのか,決められない。数千人と言われる王族の中で,第三世代の誰に王位を移すか,王族のコンセンサス形成には期待できない。おそらく,これだけは権力闘争を経て,決めていくしかないのだろう。
     サウジの国内改革は,経済改革,社会改革だけではない。この王位継承を中心とする王室改革も大きな課題である。その意味で,サルマン国王・ Mhammad 皇太子父子は,不退転の決意で勝負に出たのだと思う。

  63. Uber seals multibillion-dollar investment from Softbank
    Uber が,SoftBank からの数十億ドル投資に調印する。
    Saudi Press Agency,2017/11/13 @01:02 GMT
    Associated Press によれば,日本のテック・コングロマリット SoftBank は,配車巨人に数十億ドルを投資する Uber との協定に達した。Uber Technologies は 日曜日,声明で 詳細抜きで この投資を確認した。
    ただし,この取り引きをブリーフした1人は Associated Press に, SoftBank Group が Uber の新株約 $10 憶を買い,既存の株主と Uber 従業員から 目標 14% で公開買い付けを行なう … と言った。Uber は現在 $685 億に評価されているが,買い付けは それより低い評価により行われる;したがって全額いくらになるかは不明である … とその人は 匿名を条件に語った。
     Uber の声明は,SoftBank と Dragoneer Investment Group が率いるコンソーシアムが Uber と合意に達したと述べている。この取り引きは,Uber の可能性への "信任投票" であり,"当社の企業統治を強化しつつ,当社のテック投資と 本国 および 外国での引き続く拡大の火付け役となる。" … と声明は言う。
     この動きは また,世界最大の評価を持つテック企業の1つである Uber にとって,株式を公開するための道をクリアーする。この取り引きによれば,IPO は 2019 年末までに発生する。
     待望のこの取り引きは,今年 10 月に発表されたが,企業統治の問題 および Benchmark Capital と (CEO の職を追放された) 取締役 Travis Kalanick の間の法廷闘争により遅れていた。双方は,SoftBank の投資の道を整えるために 日曜日に争いをやめた … とその人が言う。
     11 人の Uber 取締役のうち3ポストを握る Kalanick は,自分が将来指名する取締役については 取締役会の承認を要することを認めた … とその人が言う。Benchmark は Kalanick に対する訴訟を中断し,(2週間後に始まる) SoftBank が行なう1ヵ月の公開買い付けが成功すれば,訴訟を取り下げることに合意した。シリコンバレーの大手 ベンチャー資本企業で Uber の初期投資家である Benchmark は,Kalanick が Uber の混乱を隠蔽し 法的脅威をもたらしたと訴訟で訴えていた。
     この取り引きにより,Benchmark などの初期投資家は,持ち株の一部を売却して それなりの利益を得ることができる。ただし,その株価がいくらが妥当かについては,今後数週間 争いがあるものと見られる。
      SPA (サウジ国営通信) に見られる SoftBank の Uber への $100 億投資に関する記事は,これ1つだけである。12 月末の「成功」記事を,SPA は全く報道していない。
      サウジは 2016年6月に既に $35 憶を Uber に投資している。
      SoftBank が サウジより低い価格で投資して,しかも SVF に「移管」すると,サウジにとっては 2重投資になり,しかも 直ちに損失が発生するように思うが,それについては何も触れていない。$10 億以上の損害補償要求もあり得る。
    ──────
     なお,2018年1月1日時点で サウジ国営通信を検索して見られる SoftBank 関連の記事は,以下の通りである。繰り返すが,SVF にいくら出資した … とか,ARM の 1/4 の現物出資を認めた … というような記事は一切見られない。
    ──────
      [2017/10/25] Public Investment Fund, SoftBank Vision Fund sign Partnership to establish "Solar Energy Plan 2030" ← SEC の株 (数兆円?) を買わされた。
      [2017/10/03] The Future Investment Initiative will drive global thinking on the future of technology, robotics and artifical intelligence
      [2017/09/06] Saudi Arabia's Public Investment Fund, SoftBank to launch world-leading robotic systems initiative ← サウジとソフトバンクで 世界最先端のロボット開発 (笑)
      [2016/10/14] In partnership with Public Investment Fund, SoftBank Group Corp. to Establish SoftBank Vision Fund ← おおもとの 非拘束覚書
      [2016/09/03] Deputy Crown Prince Meets with Founder and CEO of SoftBank Group ← 45 分の会談。
    ──────
     こんな風に スカスカなのが実情である。国王来日の時に会見したという記事は無い。
     したがって,サウジ国営通信の記事を信じれば,サウジ側から SVF への入金はゼロであり (非拘束覚書だから文句は言えない),ARM の 1/4 移管は実現しておらず,他方 SoftBank はサウジ電力の株式購入で 数兆円を巻き上げられる契約を済ませたことになる。今後どうなるんだろうね?
     だいたい,サウジと SoftBank が組んで 世界をリードするロボットシステム [2017/09/06] なんてのが奇想天外の無茶苦茶。誰もが荒唐無稽と思う。そういう荒唐無稽と「同列」なのが "ソフトバンク・ビジョン・ファンド" なんですよ (笑)。どう思いますか?
     ロボット・システム (続報は ソフトバンクからも無し) は 笑って信じないけど,SVF の方は信じる?
     まぁ,常識的に考えれば,たかが外国の民間企業に過ぎない「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に 誇り高いサウジの王様が一方的に $450 億ものカネを 突然 出すとは考えられない。仮に出すとすれば,出す以上のカネを SoftBank から巻き上げるつもりだろう (笑)。そのために,馬鹿な社長を たったの 45分で おだてて,取り敢えず非拘束覚書で喜ばせた。非拘束だから,あんなものはチャラ。SEC の方は契約だからね。

  64. 11月10日,サウジアラビアで政財界のエリート数十名が拘束された汚職摘発で,何か異変が起きているという最初の兆候は,1通の書簡にあった。
     写真は汚職摘発を命じたサルマン国王の息子 Mhammad ・ビン・サルマン皇太子。リヤドで 11月9日撮影。国営サウジ通信提供 (2017年 ロイター)
    特別リポート:サウジ「王室分裂」の裏側,汚職口実に政敵排除
    ロイター,2017/11/10
    By Samia Nakhoul, Angus McDowall & Stephen Kalin (ベイルート, リヤド)
    何か異変が起きているという最初の兆候は,1通の書簡にあった。サウジアラビア首都リヤドにある高級ホテル,Ritz-Carlton の宿泊客らは4日,次のような通告を受けた。
    「地元当局よりセキュリティ強化を要する予期せぬ予約が入ったため,通常営業に戻るまで,お部屋をご用意できなくなりました」とそこには書かれていた。
     このとき既に粛清は始まっていた。数時間内に,治安部隊が主に首都リヤドと沿岸都市ジェッダで,サウジ政財界のエリート数十名を拘束。中には,11 人の王族のほか,閣僚や富豪が含まれていた。
     一部は,拘束現場での会合に招かれていた。自宅で逮捕された人々は,飛行機でリヤドまで,それから自動車で Ritz-Carlton まで護送された。こうして,このホテルは一時的な監獄となった。
     拘束された人々は,自宅に1回だけ,短時間の電話を掛けることが許された … と逮捕状況に詳しい関係者がロイターに語った。
     「外部からの着信に応じることは許されず,厳重な警備下に置かれた。誰も出入りすることは許されなかった」… と この関係者は語る。「よく準備されていたことは明らかだ」
     今回の汚職摘発を命じたのは,サルマン国王の息子 Mhammad ・ビン・サルマン皇太子 (32) だ。国王の公式の継承者となった同皇太子は,現在,実質的に国家を運営する立場にあり,サウジを現代国家へと改革することを表明している。
     そうした改革遂行に向け,また自身の権力を強化していくため, Mhammad 皇太子は,王族の一部を含む国内エリート層を,収賄や事業コスト水増しなどの容疑で訴追することを決意した。拘束された人々のコメントを得ることはできなかった。
     問題は,世界最大の産油国であるサウジの政治安定性だ。 Mhammad 皇太子が抵抗を受けずに統治を行なうことができるかどうかは,今回の取り締まりの成否次第だ。
     国が変わらなければ,サウジ経済は危機に陥り,社会不安が煽られる … と皇太子は懸念する。そのような事態は,サウジ王族を脅かし,中東地域のライバルであるイランに対する立場が弱体化する可能性がある。
     <政敵排除が目的か>
      Mhammad 皇太子が今回の行動を決意したのは,自身が王位継承することに対して,思っていたよりも親族の反対が多いことに気付いたことがきっかけだった … と今回の事件に詳しい関係者は語る。
     「皇太子への支持を躊躇する者は警戒すべきだというサインだ」… と この関係者は語る。「汚職撲滅キャンペーンという考え自体,王族を標的にしている。それ以外は見せかけだ」
     サルマン国王は 今回の粛清について,「公共の利益より私的な利益を優先して違法に金を稼ごうとする 一部の心の弱い者による搾取」に対応するものだと述べている。内部関係者によれば,容疑は情報機関が収集した証拠に基づいているという。
     政権支持者は,今回の汚職撲滅キャンペーンが実際には政敵の排除を目的としているのではないか … という憶測を否定する。本記事について,宮廷からのコメントは今のところ得られていない。
     Ritz-Carlton で現在拘束されている人物の1人が, Mhammad 皇太子の従兄であり,強力な権限を持つ国家警備隊の隊長を務めるムトイブ王子だ。
     ムトイブ王子はリヤドの農場にある自宅にいたが,皇太子と面会するよう呼び出された。こうした呼び出しは,夜間であっても高級官僚にとって珍しいことではなく,特に疑念を招かなかったと見られる。
     「彼は会合に出かけ,戻って来なかった。」拘束された一部の人々と繋がりのある第2の関係者はそう語る。
     拘束されている人々の中には,国際投資会社 Kingdom Holdings の会長であり, Mhammad 王子の従兄である富豪のワリード・ビン・タラール王子や,元リヤド知事で故アブドラ前国王の息子トルキー・ビン・アブドラ王子も含まれている。
     一部の王室ウォッチャーによれば,夏に開かれていた王族会合で,対立は明らかになっていたという。ムトイブ王子を含む有力王族の一部が, Mhammad 王子の皇太子昇格を快く思っていないことは,皇太子もよく分かっていた … と内部関係者は語った。
     サウジ国内で "MbS" というイニシャルで呼ばれることの多い Mhammad 王子はかつて,国内にはびこる汚職の捜査を進め,トップ官僚の摘発も躊躇しない … とインタビューなどで公言していた。
     その手段となったのが,サルマン国王が創設し,11月4日に発表された汚職対策委員会だ。国王は Mhammad 皇太子を同委員会のトップに据え,過去3年間に皇太子に与えた数々の権力をさらに強化した。
     サウジ当局は,これまでの汚職捜査で 208 人の容疑者を取り調べ,汚職によって不正取得された金額は少なくとも 1,000 億ドル (約 11.3兆円) と推定される … とサウジのシェイフ・サウド司法長官は 11月9日述べた。 。 汚職対策の委員長は,捜査官が過去3年間証拠を集めてきたと語る。
     汚職との戦いによって, Mhammad 皇太子は国民に人気の高い政策遂行と,自身の王位継承に対する障害排除を組み合わせた格好だ。
     「MbS は,誰でも標的にできる汚職撲滅というムチを振るった。」1979年から 2001年まで情報機関トップを務めたトルキー・アル・ファイサル王子の元顧問ジャマル・カショーギ氏はそう語る。「我々は,王子たちが汚職の容疑で取り調べを受ける姿を初めて目撃している。」
     だが, Mhammad 皇太子は,粛清の対象を注意深く選別している … と米国在住のカショーギ氏は指摘する。
     「MbS は,自国を愛するナショナリストであり,自国を最強にしたいと考えているが,彼の問題は,自分1人で統治したいと考えている点だ」とカショーギ氏は言う。
     <事実上の支配者>
      Mhammad 皇太子は,サルマン国王が即位した 2015年,国防大臣に任命された。サルマン国王は今年6月,治安機関を長年率いてきた甥の Mhammad ・ビン・ナエフ氏に代わり,息子の Mhammad ・ビン・サルマン氏を皇太子に昇格させた。王族はこれを黙認し,皇太子は9月までに自身と対立する宗教家や知識人らを検挙している。
     今回の拘束は, Mhammad 皇太子による改革推進を狙ったものだ。この改革は,1930 年代に現サウジアラビア王国を樹立したアブドルアジーズ国王の治世以来最大のものになると約束されている。
     サウジ国家は,王族のサウード家と同国発祥の厳格なイスラム主義を統制するワッハーブ派聖職者との長年の共存を基盤としてきた。
     王家は,サウジアラビア国民に快適な生活と豊富な石油収入の分け前を約束してきた。それと引き換えに,臣民たちは政治的に服従し,国家の厳格な宗教的,社会的な規範に従うことを約束した。
     「イブン・サウード」の名でも知られるアブドルアジーズ初代サウジ国王は 1953年に死去。それ以降も国王がこの国統治しており,その下には複数の王子たちがいるが,他の王子たちの希望に逆らってまで自らの意志を押し通すほどの力を持った王子はこれまでいなかった。
     意志決定は専らコンセンサス重視で行なわれた。こうした仕組みによって,社会や政治面での改革は遅々として進まなかった一方で,王国の安定は保たれてきた。
     だが,自身を新たな「イブン・サウード」と位置付けようとする動きのなかで, Mhammad 皇太子は,人口増大と石油価格低迷という重圧で揺らいでいたこの国の統治構造を破壊しつつある。
     コンセンサスによる意志決定は,批判派の言う「独裁」に取って代わられた。一部の王子たちはこれに反対しているが,表立って批判を口にするリスクを冒そうとはしない。
     過去数十年にわたって,サウジの歴代国王は,1~2人の兄弟か息子,甥を側近として意見を申し入れさせ,共同して統治にあたっていた。だが, Mhammad 皇太子は,兄弟や近親者を要職に任命せず,代りにアドバイザーたちに頼っている。彼らは主に自国出身者だが,中には米国や英国で教育を受けた者もいる。
     最終的な決定権を握っているのは,依然としてサルマン国王 (82) だ。しかし, 王国の軍事, 治安, 経済, 外交, 社会問題への対応は既に皇太子に委ねられている。宮廷関係者は否定するが,ここ数ヵ月,国王が近く Mhammad 皇太子に譲位するのではないかという憶測が流れている。
     こうなると,皇太子の年齢も注目に値する。過去3代の国王が即位した年齢はそれぞれ 61歳,80歳,79歳だった。 Mhammad 皇太子は 32歳で,実質的に国王同然の権力を手に入れている。
     <成功の保証なし>
      Mhammad 皇太子は「新たな社会契約を提示する」と言う。これまでの硬直した官僚制度とよりもうまく機能する国家,楽しみを味わう機会,そして石油市場で何が起きようと持続的雇用を生み出す経済だ。
      Mhammad 皇太子は9月,サウジ女性に自動車を運転する権利を認めると発表した。いまや粛清対象者の収容所と化した Ritz-Carlton ホテルだが,ほんの3週間前に同ホテルで行なわれた投資家向け会議 [FII] では,男女同席が可能で人間よりもロボットの数の方が多い 5,000億ドル規模の未来都市 Neom プロジェクト案を皇太子が披露した。
     さらに皇太子は,サウジを石油依存から脱却させ,国の補助金や政府による雇用頼みの状態から国民を解放する構想も描いている。その柱となるのは,国営石油会社サウジ・アラムコの株式公開だ。
      Mhammad 皇太子の野望が成功する保証はどこにもない。
     皇太子が能力以上に手を広げすぎているのではないか … との声は,彼の崇拝者からも聞こえてくる。反対意見を許容しないトップダウン方式では,治安と法の支配について確証を得たい投資家を震え上がらせる可能性がある。投資家の大きな後押しが無ければ,サウジの若者たちが抱く希望に応えることは難しくなるだろう。
     イエメンでの戦争や,カタールとの紛争,そしてイランとの対立激化も投資家の懸念要因だ。
      Mhammad 皇太子としては,かつてのイブン・サウードに倣って,米国との特別な絆を育むことの重要性に留意すると有益だろう。
     サウジアラビアを5月に訪問したトランプ大統領は,サウジアラビア政府に対し,イランに対抗するグループの先頭に立ち,イラク,シリア,レバノンに跨るシーア派勢力を分断する取り組みを主導するよう促した。
     その後まもなく,サウジアラビアとアラブ首長国連邦 (UAE) は,カタールに対する禁輸措置を実施した。カタールを統治するサーニ家がイランとイスラム主義によるテロを支援しているという理由からだ。
     トランプ大統領はこの措置を支持した。サウジ王族らの拘束についてもトランプ氏はツイッターで支持を表明し, 「(逮捕された人々は) 多年にわたり 国家から甘い汁を啜ってきた」と述べた。
     王族に近い内部関係者によれば,国家警備隊が,自らのトップだったムトイブ王子の排除に対して強く反発することはないとみられる。 Mhammad ・ビン・ナエフ氏が皇太子の地位を剥奪された時も 内務省からの抵抗は無かったため,国家警備隊においても同様だろう … とこの関係者は話す。
     (Samia Nakhoul 記者, Angus McDowall 記者,Stephen Kalin 記者,翻訳:エァクレーレン)

  65. Saudis Are Talking to Amazon, Alibaba About New City, Prince Says
    サウジアラビアが,新都市についてアマゾン,アリババと協議中である ── 皇太子が言う。
    Bloombergm,2017/10/27 (金) @17:57 JST
    By Alaa Shahine, Erik Schatzker, Vivian Nereim & Glen Carey
      「Neom の最初のロボットは,Neom 自身である」と皇太子が言う。
      皇太子は,このプロジェクトについて Bloomberg インタビューで語る。
    MBS 皇太子は,自らが紅海沿岸に建設を計画する $5,000 億都市の暮らしを強化するための技術開発に,サウジ・アラビアが世界最大の複数の企業と協議を行なっていると言う。
     Neom [ニーアム] と呼ばれるプロジェクトは 2025 年に開業が予定されているが,いくつかの限られた事業は 早くも 2020 年を予定している … と Mohammed 皇太子は 水曜日,リャドで Bloombrg News とのインタビューで語った。アマゾン, アリババ集団, エアバス SE とは既に交渉を行なっていると言う。
     "我々は,すべての人と協議している。" … と 世界最大の石油輸出国の玉座の後継者である 32 歳の王子は言った。"我々は,このプロジェクトに係わる 世界中の人の「who's who [紳士録]」を持っている。"
     Mohammed 王子は,サウジ・アラビアの先頭に立って,石油依存を脱却して これまで どんな経済大国もほとんど試みたことの何かへと舵取りをしようとしている。しかも,ゴールポストを動かし続ける ── 計画を野心的なものにするために。
     2015 年以降に達成された社会と経済の変革には,石油の巨人 アラムコの株式の売却,長く続いてきた女性の自働車運転禁止の終了がある。今週,Mohammed 王子は この都市プロジェクトを発表した。また,サウジ社会の宗教基盤を変革して,イスラムの厳格な見解 (version) を "緩やか" にすると言った。
     今週 公表されたニーオムのプロモーション・ビデオでは,この2つの目標が重なっていた;従来のサウジの都市には 到底考えられない光景を描いている。ニーオムの仮想女性は,公共空間でレオタードで自由にジョギングする;男性と並んで仕事をする;音楽アンサンブルで楽器を演奏する。
     人工知能と IoT は結合して 世界のどこにも無いようなライフスタイルを提供する … と Mohammed 王子はインタビューで言った。"あなたの医療カルテは あなたの home supply [?] につながる,車につながる,家族につながる,あなたの他のファイルにつながる。" … と 彼は言う。"そして,このシステムは,あなたにどうすれば良いものを提供できるかを自己開発する。"
     Mohammed 王子は,ほとんど自動化され,住民の必要に応答する (アプリが動かす) 都市を思い描く。"ニーオムの最初のロボットは,ニーオム自身であろう。" … と彼は言う。

     サウジ・アラビアが砂漠の中に新都市を建設しようと提案するのは,これが初めてではない。今週リャドで PIF が主催して開かれた FII (Future Investment Initiative) 会議は,国際的な銀行家と政策立案者らで寿司づめとなり,そこで ニーオムのプロジェクトが発表されたが,一部のアナリストは,過去の試みが大した結果にならなかったと指摘した。
     "サウジアラビアは,過去の過ちを繰り返そうとしているのではないか。" … と ロンドンに拠点を置く Capital Economics はレポートに書いた。王国は "巨大計画を実現する話に関しては,つぎはぎだらけの記録を持つ。"
     Mohammed 王子は,これまでの計画の一部は,批評家が言うよりうまく行っていると主張した。さらに,滞っている計画は ── たとえば リャドの "アブドラ王金融特区" を例に挙げて ── 政府が復活に努力していると言う。この地域には 係わっている銀行がほとんど無く,第1期は 2018 年にオープンの予定であり,オープン後に G20 の首脳を集める会議をこの特区で開催するのだと言う。
     ニーオムについては,政府が 信用もカネも用意する。国のソブリン基金 および 投資家が "数百億ドル" を拠出する … と Mohammed 王子は言う。火曜日の発表によれば,このプロジェクトは,サウジ政府, PIF および 地元と国際投資家からの $5,000 億以上の投資により支援を受ける。
     サウジアラビアとエジプトの間には,昨年 いくつかの合意が署名されたが ── その1つは,シナイ半島に産業ゾーンを開発するというもの ── これは ニーオムを念頭に置いたものである … と皇太子は言う。
     "シナイ半島に この特区を調印する目的は,これをニーオムとリンクさせることである。" … と王子は言う。 "ニーオムは,たくさんの港を持つ。その一部はサウジアラビアに,一部はエジプトに。"
     紅海の Tiran と Sanafir の2島も この領域に入る。この2つの島は,エジプトの Abdel-Fattah El-Sisi 大統領がサウジアラビアに戻すことを合意するまで,エジプトの支配下にあった。ただし,この返還はエジプトの抗議運動に火を点け 法的な訴えもあったが,エジプト議会がそれらを最終的に無視した。
     このプロジェクトは,紅海に架ける橋を含む。橋は, 提案されている新都市をエジプト および アフリカにつなぐ。およそ 25,900 km² の土地が 都市部の開発用に割り当てられており,これがヨルダン ならびに エジプトへ延びる予定である。
     この都市が,ドバイのような同地域の商業ハブと競合するのではないかと問われた Mohammed 王子は,両者の関係は ゼロサム というよりは ウィンウィンであろうと言った。ニーオムは "新しい需要を生み出し",それが近隣を助ける … と彼は言う。"香港がシンガポールに有害ではないし,シンガポールが香港に有害ではないと 私は思う。"
    社長がこれに「入れ込んじゃっている」様子は おそらく 来月の決算発表会で直接に知ることができるだろうと思います。ともかく FII では,サウジの人を「情報社会により助けられる」というところに感銘しています。ここから「良いリターンは望まない」となる。
    ──────
     それはそうと 今 気が付いたのですが,SoftBank はこの記事には登場しませんね?
     どういうことかな?

  66. Saudi Arabia Just Announced Plans to Build a Mega City That Will Cost $500 Billion
    サウジアラビアは, $5,000 億で巨大都市を建設する計画を たった今 発表した。
    Bloomberg,2017/10/25 @00:46 JST
    By Alaa Shahine, Glen Carey & Vivian Nereim
      ニーアムと呼ばれる新しい都市は,エジプトとヨルダンにつながる。
      この計画は,王国が発表する最新の巨大プロジェクトである。
    MBS 皇太子は,新しい都市を紅海沿岸に建設する計画を発表し,資源が枯渇していく中で 王国をリメークしようと,今日のサウジアラビアでは得られないようなライフスタイルを約束した。
     皇太子は,"NEOM" と呼ばれる予定のこの都市プロジェクトが,開発の各段階で投資家と相談しつつ,"現存する政府の枠組み" とは独立に運営される … と述べた。火曜日に リャドの国際ビジネス会議で発表された声明によれば,このプロジェクトは サウジ政府, ソブリン基金 ならびに 地元 および 国際投資家からの $5,000 億により支援される予定である。
     この新プロジェクトは, ポスト原油時代に備えようと努める中で権力の座に彗星のように上った皇太子が行なった一連の大型の発表を未だに消化しきれない投資家を驚かせるであろう。2年も経たない間に,彼は石油の巨人サウジアラムコの権益を売却する計画を発表し,世界最大のソブリン基金を創設し,長年の懸案だった女性の運転禁止を終わらせた。
     滅多に人前に姿を見せない 32 歳の皇太子は,このプロジェクトを推進するための会議に 珍しくも出席し,銀行家と経済政策担当者に 王国は "新世代の都市" へ向かって動きつつある … と言った。NEOM は クリーン・エネルギーを動力源とする … と彼は言い … "伝統的なものをすべて" 受け入れる余地は無い … と言った。
     これは,メディアを飾る従来の発表に見られたのと同様の 楽観と疑いの入り交じりにぶつかるだろうと思われる。支援者らは,王国を変換させる大胆な推進力と認めるものを歓迎すると予想されるし,その他の人たちは,サウジ経済を立て直す試みに (同じく 砂漠の中に工業都市を建設しようとして) 失敗した過去を指摘するだろう。
     国際 コネクション
     この野心的計画は,提案された都市とエジプト および その先のアフリカを繋ぐ 紅海に懸かる橋を含む。およそ 25,900 km² がヨルダンとエジプトへ拡がる都市エリアの開発に割り当てられた。
    Klaus Kleinfeld
    元 シーメンス AG とアルコアの CEO 兼 議長だった Klaus Kleinfeld が NEOM 開発の責任者に指名された。SoftBank Vision Fund は火曜日,王国のソブリン基金から国営のサウジ電力公社 (SEC) の "かなりの" 権益を買う初期合意に署名した。サウジアラビアは 今年,Vision Fund のコーナーストーン投資家になることに同意した。
     このプロジェクトは,"おおむね ドバイをパイオニアとする「自由区 (free zone)」の概念をモデルにしているらしい;自由区では,関税が免除されるだけでなく,独自の規制と法律を持ち,したがって政府とは独立に機能する" … とロンドン経済スクールの Steffen Hertog 教授が言う。教授は,長年のサウジ・ウォッチャーでもある。"ドバイでは,これがうまく行った。しかしそれをコピーする試み (複数) は この地域では それほどうまく行っていない。"
     保守的な聖職者たち
     火曜日に公表されたプロモーション・ビデオは,従来のサウジの都市には あり得ないライフスタイルを描き出す。女性は,公共空間でレオタードで自由にジョギングする;男性と並んで仕事をする;音楽アンサンブルで楽器を演奏する。ヒジャーブ [顔を隠すスカーフ] を着けていた或る女性は,頭を模様のあるピンクのスカーフで覆っていた。
     王国は,数百キロに及ぶ紅海沿岸を,"国際標準と同等の" 法律が支配し,準自治権を持つ世界クラスの観光地に変換する計画を既に発表した。
     この新プロジェクトの発表は,サウジ高官が 最近の改革まで ほとんど2年を掛けて いまだに 王国の保守的な宗教既成階級と衝突し,(経済を損なうことなしに) 変革の加速に取り組む中でなされた。
     世界最大の原油輸出国は,社会不安のリスクを避けるために,十分な富を生成しつつ,経済を見直したい。同様の取り組みは 過去 30 年に亘って もがき続け,原油価格が回復するや 計画は勢いを失った。いくつかの目玉プロジェクトは ── たとえば リャドの $100 億 金融街構想は,離陸に手こずっている。
     "サウジアラビアは,最近 数多くの巨大プロジェクトを発表したが,投資家が最終的に求めるものは もっと詳しい詳細であり,計画の進行状況であり,初期投資である。" … とアブダビ商業銀行の主任エコノミスト Monica Malik が言う。しかも,NEOM について計画されている リベラルな 規制の枠組みは,"投資を整理するのに具合よいが",王国でこれまでに開発された複数の経済都市では 人気を集めなかった … と彼女は言う。
     今年の夏に 従兄が退場させられて,玉座の後継者となった MBS 王子は,過去の過ちを繰り返さないと誓い,自分の Vision 2030 が 原油価格とは無関係に進むと主張して止まない。彼の政府は 助成金をカットし,歳出を切り詰め,予算の赤字を減らし,原油の売り上げ以外の収入を増やすために 来年は付加価値税の導入を計画している。
     Hertog 教授は,"サウジアラビアの のろい官僚主義と一般的な社会規制の迂回が 特区で" うまく行くかどうかを投資家は見たいだろうと言う。"もしも ここを 国際的なハブにしたいのであれば,ドバイより良い何かを見せる必要があるが,これは 超えるには高いバーである。" … と彼は言う。
     皇太子は,チャレンジ [難題] を理解していると漏らす。"夢を見ることは たやすく,夢を達成することは難しい。"
      — With assistance by Nour Al Ali, Vivian Nereim, Donna Abu-Nasr, and Zainab Fattah
    長かったので,全部 翻訳するのに手間取った。
     最後の1行がまとめだろう。

  67. Public Investment Fund, SoftBank Vision Fund sign Partnership to establish "Solar Energy Plan 2030"
    Public Investment Fund と SoftBank Vision Fund は "Solar Energy Plan 2030" を確立するための提携に調印する
    Saudi Press Agency,2017/10/25 @15:31 GMT
    Public Investment Fund (PIF) と SoftBank Vision Fund は,"Solar Energy Plan 2030" を確立するための MoU に署名した。これは,王国のソーラー・エネルギー・セクターの発展のための新たな枠組みである。
     この MoU (覚書) は,今週リヤドで開催中されている FII (先進投資イニシアティブ) の期間中に署名された。 この新しいイニシアティブは,2018 年までに容量 3GW を発電するサウジアラビア王国初のプラントの設立を含む。
     本プロジェクトは,PIF が 74.3 % を所有するサウジ電力会社 (SEC) を通じて実施される。両者は,SoftBank Vision Fund による SEC のかなりの少数株式の取得の可能性を議論するであろう。
     PIF と SoftBank Vision Fund は また,王国における発電システムと蓄電システムの分野における産業の樹立の機会を探り,以って このセクタの多様化のサポート ならびに 先進技術の分野における雇用の創出に資する。
     王国におけるソーラー・セクターの発展は,モダーンで多様な経済を創出せんとする "Vision 2030" の主たる目標の1つである。王国は,2023 年までに再生可能エネルギー 9.5 GW に達することを目指す。
     SoftBank Group の議長兼 CEO Masayoshi Son は言う:"急速な技術的発展とその広いスコープは,太陽エネルギーを発電の最も魅力的なオプションの1つにした。王国は高いレベルの太陽輻射に恵まれているので,我々は PIF および SEC と協業して ソーラー発電を行ない,発電システムと蓄電池の分野の産業を確立し,王国において先進技術の分野で雇用を創出するために,先端的国際ソーラー・パワー・プラントを建設することに非常に興奮している。"

  68. Saudi Arabia considers selling stake in utility SEC to SoftBank Vision Fund
    A vehicle drives past workers near power plant number 10 at Saudi Electricity Company's
    Central Operation Area, south of Riyadh, April 27, 2012.
    Reuters | Fahad Shadeed)
    [どれも石油を燃やす発電所なのだろうが,数が多いのと,旧式らしいのに驚く]
    サウジアラビアは,電力公社の株式を SoftBank Vision Fund に売却することを検討する。
    Reuters,2017/10/24
    Reem Shamseddine (サウジアラビア, コバール)
    サウジアラビアは,サウジ電力公社 (SEC) の大量の権益を SoftBank Vision Fund に売却することを検討する。ただし,サウジ政府は 支配株を保有し続ける … と火曜日に SEC が発表した。
     SEC の 74% の権益を所有するサウジ・アラビア公共投資基金 (PIF) は,月曜日に世界最大の PEF SoftBank Vision Fund と (2018 年に SEC が3GW のソーラー・エネルギーを開発することで) MoU に署名した … と SEC が声明で言った。
     この合意の財務に関する詳細は,公表されなかった。
     この声明は,(日本の SoftBank Group と サウジアラビアの主要なソブリン基金が支援する) SoftBank Vision Fund が SEC の大量の権益を取得する可能性を "関係者 (複数)" は 高く評価する … と言う。
     サウジ政府は 支配権益を留保するつもりだ … と声明は言う。
     SEC の資産は,$1,000 億と推定される。サウジ政府は この会社を 多年に亘り 民営化しようと考えていた。この取り引きが 民営化計画にどのような影響を与えるかは不明である。
     石油の巨人 サウジ・アラムコは,現在 SEC の 7% を所有している。
     PIF と SoftBank Vision Fund は,ソーラー製造/貯蔵施設を建設し,王国に雇用を創出する。
     デューディリは 来年2月末までに完了する … と SEC は言った。
     SoftBank Vision Fund は $930 億以上を集め,人工知能やロボットのようなテック・セクターに投資する。
    ロイターさん,下の記事で終わりかと思ったら,こちらがあった。
     SoftBank の株主にとって どちらのニュースの方が重大なのかは分からない。
     だが,おそらく こちらも『Good Return に期待しない』ニュースだろう。
       電力会社で そんなに利益が出たら,サウジの国民に申し訳ないからね。
    ──────
     金額は いかほど?
     $1,000 億のうちの「大量」だから,3兆円くらい? が 来年3月には SVF の 10 兆円から吹っ飛ぶ。
      [ここのところが ブートストラップになっちゃったことが笑える。だって, PIF は $450 億 ($930 億の ほゞ半額) を SVF に拠出している。PIF は SVF の株を持っているから,自分のカネで SEC の株を買い取っていることになる。おかしいよ。SVF じゃなくて,SoftBank に 100% カネを出させなきゃ 意味ない]
     確かに,これじゃぁ 2年でタマが尽きるわけだ。このほかに ニーアム開発も『新都市建設に土台から設計に係わることができるのは ファンタスティックだ』と Fox Business Video で リャドから社長が ご機嫌に語っているから,ソーラーだけで済むはずが無い。結局は 数十兆円級 掛かるだろう。逆算して 100 兆円と言いたくなる気持ちは理解できる。でも 資金をどこから どうやって集めるの?
     100 兆円を サウジに期待するという話があったけど (笑)
     アブダビから? なんかヘンな感じがする。それだったら アブダビから直接投資の方が分かりやすい。
     アップルから? シャープから?
     一番の問題は,新都市建設にあれこれ 協力したいと社長はぶち上げるが,SoftBank には その人材資源がゼロ,ノウハウもゼロ,蓄えた知見もゼロ。自己資金 ほとんどゼロ (あるのは借金だけ) … と オール・ゼロで何も具体的な協力をできないのに,大口を叩くことだろう。新都市の設計なんて まずいのを作っちゃったら,ブラジリアみたいに,世界遺産として登録され,長く人類の記録に まずい例として SoftBank の名を轟かすだろう(笑)
     最悪なのは,新都市建設へ 10 兆円,20 兆円 ・・・ をせびられたとき,エエかっこしたがりのため,断われなくて 借金が膨れ上がることである。
     なお社長が「新都市建設の設計への協力」の例に挙げるのは,インタネット,AI, ロボット のようなもの。要するに情報化社会である。
     ほんとの協力は 港湾,空港,(高速)鉄道,工業団地 なのだと思うが,そういうものは頭に無いらしい。
    ──────
     付け加えると,デューディリとは,このくらいの時間 (4ヵ月) 掛かるものらしい。
     だから,CNBC のアンカー David Faber が 両手を振り回して熱を込めて語る「デューディリ ごっこ」がおかしく見えるのである。到底 信じられない (こんなことを言うのは,世界中で ど素人の当サイトだけである)。
     もちろん,Charter との期限が7月に切れた直後に直ちに 馬を乗り換えて Tmo と相互デューディリに入るという早業ができていれば,その限りではない。しかし,Legere がそこまでお人好しとは ・・・ 。
     「あちらは ダメでしたか,お待ちしていました。では 私がお相手しましょう ・・・ 」
    ──────
     [後記] 結局 Tmo との話は潰れちゃった。デューディリをどこまでやっていたかも不明である。
      総体として,何をやるにも 今の社長さんは無計画である。
      本来なら「取締役会」で きちんと成文化された方針を立て,社長はそれに拘束されて動くのでなければ「株式会社」とは言えない。現在は,自分の失敗を隠すための隠れ蓑に取締役会を 利用している。
     Uber への1兆円 ぶち込みは,何月何日の取締役会で決定したのか?
    [2018/04/01] 『最悪なのは,新都市建設へ 10 兆円,20 兆円 ・・・ をせびられたとき,エエかっこしたがりのため,断われなくて 借金が膨れ上がることである』
      ・・・ と上に書いたのは,ほぼ半年前のことだった。SEC への投資は,実際に この予想を超えて 21 兆円 ($2,000 億) と言われている。こんなことは 当たらない方が良い。

  69. SoftBank to work with Saudi Arabia on new city
    SoftBank が,サウジ・アラビアの新都市開発に協力する。
    Reuters,2017/10/24 @10:01 pm JST?
    By Alexander Cornwell (リャド)
    SoftBank Group がサウジ・アラビアと共同で 新しい事業/都市 "ニーアム" を開発すると火曜日に発表した。
     SoftBank Group の Masayoshi Son CEO は,火曜日にリャドで開催中の投資会議で,サウジの MBS 皇太子から 係わって欲しいと頼まれたと言った。
     "私は,ニーアムがファンタスティックな機会であると思う。" … と Son は言い,SoftBank Vision Fund は サウジ電力公社 (SEC) に投資するつもりだ … と続けた。
    これは サウジ・アラビアの "Vision 2030" に協力する。
     投資を "テック企業" に限定しない。素晴らしい。
     おそらく メガ・ソーラー事業。
     "良いリターンを期待しない","ニーアムの設計に最初から係われることがファンタスティックである"
     Fox Business Video で 非常に非常に非常に 熱を込めて 両腕を大きく動かして 社長は語る。

  70. Saudi Arabia redrafts crown prince’s transformation plan
    サウジアラビアは,皇太子の変換計画を やり直す。
    Financial Times,2017/09/08
    By Simeon Kerr (ドバイ)
    当初の改革計画は,Mohammed bin Salman (MBS) 皇太子が議長を務める
    経済開発問題会議が 2016 年6月に立ち上げ,統括していた。(©AFP)
    一部の目標が過度に野心的であったことをリャドが認める動きである。
     サウジ・アラビアは,大騒ぎで立ち上げた僅か1年後に,国家経済改革計画をやり直し中である;変革の目玉とされた一部の目標を剥ぎ取り,残りの目標の時間軸を延長する。
     「国家変換計画 (NTP, National Transformation Plan)」は,サウジの石油依存経済を見直す取り組みの中心にあり,これを先頭に立って推進したのは 力溢れる若き MBS であった。彼は 今年6月に王国の玉座の後継に指名された。
     この計画をやり直す (rework) 動き ── 場合によっては 改革の実施を 10 年も遅らせる ── は,一部の目標が野心的に過ぎたことをリャドが決定したことを示唆する。
     Financial Times が閲覧した内部資料は,修正された計画 "NTP 2.0" とラベル付けされており,"NTP の時間軸は 2020 年まで続くが,この計画の目標の実現は 2025 年,2030 年を要する" … と書かれている。
     重要なことは,王国が最も注目する改革の取り組みは,サウジアラムコの部分的民営化であるが,これが NTP の外部にあることだ。 [このため,この文書には] 来年に計画されているアラムコの 5% 上場に NTP のやり直しが どう影響するかが 全く触れられていない。
     当初の計画の中核部分では,国有資産の民営化により 120 万の雇用を民間セクターで創出し,失業率を 2020 年までに 11.96% → 9% に引き下げるとされていた。
     政府は,今年7月以来,NTP をやり直してきた (has been reworking)。石油セクター以外の民営化の取り組み ならびに 住宅を安く適用するとか金融セクターを改革するなどのイニシアティブは,さまざまの省庁により行なわれ,NTP の枠外に置かれた。
     "これまでの目標が 余りにも数が多すぎ,しかも 猛烈過ぎ,経済に与える影響が大き過ぎるとの認識がある。" … と ある政府顧問が言う。
     サウジ政府と作業を行なっている或るコンサルタントは,国の煩雑な官僚主義と戦いながら3年ちょっとで目標を達成するには,やり直しプロセスは避けられないと語る。
     しかし顧問らが心配するのは,この改革が 経済の減速に神経質な投資家に混乱を生みかねないこと ならびに MBS が従兄に代って急に皇太子になって以来,王族の間の政治的陰謀を誘発することである。
     銀行家らも,この改革の取り組みが,成長を伸ばすイニシアティブよりも 増税と助成金カットのような歳入増加措置に力点を置きすぎていることを心配する。
     国際通貨基金は,今年の王国の経済成長率が 僅か +0.1% 増であると予想する (2016 年は +1.7%)。
     "流動性は 十分大きいが,ゴールポストを動かすのは 健全な修正ではない。" … と 別の政府顧問が言う。改定後の NTP は,政府官僚主義の改革を目指す;たとえば 公務員の仕事の生産性向上と透明性向上。NTP の目標は,女性の労働参加をふやす,中小企業の支援なども含む。
     この文書によれば,変更の詳細は,今年10月末に当局者が最終稿をまとめるまで 分からない。
       (計画変更の内容を動画で見る, 2分44秒, 159MB, ダウンロードに時間が掛かる)
    とりあえずの感想は ・・・
     (1) これは,サウジ内部の権力抗争であろう。3月に国王が来日したとき,物凄い数の飛行機で 物凄い数の王族が随行した。そういう物凄い数の王族と MBS の権力争いは熾烈だろう。
     (2) ロボット計画が飛び出したのは,この権力争いの一部である。
     (3) こういう状況を株主に隠してきた社長は万死に値する。即刻解任すべきである。
     権力争いに巻き込まれて,くだらない ロボット標準化などを進言した社長は愚かというほかは無い。
     (4) アラムコ上場が NTP の中に入っていないのであれば,上場による収入により Vision Fund へ投資するのが MBS の構想であるから,「SVF への出資は NTP 計画の中に含まれない」ことになる。
     実際,この記事は SoftBank Vision Fund に全く触れていない。

  71. Saudi Arabia's Public Investment Fund, SoftBank to launch world-leading robotic systems initiative
    サウジアラビアの公共投資基金,SoftBank は,世界をリードするロボット・システム・イニシアティブを立ち上げる
    Saudi Press Agency (SPA),2017/09/06 @15:13 GMT, 18:13 Local
    サウジ・アラビア公共投資基金 (PIF) は,政府セクター, 企業 および 社会の日常活動 および 業務に 如何にロボット・システムを組み込めるかを探るために,世界をリードする共同ロボット・イニシアティブを SoftBank Group Corp とともに,立ち上げ準備中である。
     向こう数ヵ月にかけて PIF と SoftBank は,自動ロボット産業の推進に向けたプラットフォーム設立のために,世界の大手機関 ならびに 民間 および 学術セクタにわたる専門家, 政府, NGO と 提携を確立するであろう。
     現在 ロボットは,世界の産業労働力の 0.7% を占めるに過ぎない (10,000 人の作業員あたり ロボット 69 台である) が,現在のところ 世界の "ロボット人口" の成長を継続して測定する方法論が 国際的に合意されておらず,その確立も 本イニシアティブが目指す目標の1つである。
     ロボット産業と関連するサービスへの 世界全体の支出は,2020 年までに倍増の見込みである (2016 年には $900 億が 2020 年には $1,880 億) ので,この分野における生産性と投資リターンを測定する標準的方法を確保することが不可欠である。
     本プロジェクトは,ロボットのパワー,性能,知能 を測定する標準化された方法の開発を目指す。
     現在進行中の 自動環境の進化と採用は,著しい経済的/社会的福祉を涵養する可能性を持つが,同時に広範囲の変化に影響するパワーを持ち,人類がこれに用意を必要とする。
     世界的な規制を進化させる必要があり,異なるセクタに亘る 社会の福祉と労働環境 および 将来の労働市場に及ぼす影響を理解することは 欠かせない。
     皇太子殿下 Mohammad bin Salman Al-Saud, 副首相 兼 国防相 兼 経済開発会議議長 兼 PIF 議長がコメントした:"技術は サウジ・アラビアの「Vision 2030」達成のための不可欠な要素であり,このプロジェクトは,ロボット・セクターの将来の形成に資する重要な役割を演じようとする王国の野心を反映する。我々は,ロボット産業で既に世界のリーダーである SoftBank と このイニシアティブで提携することを嬉しく思う。"
     SoftBank Group の Masayoshi Son 議長 兼 CEO はコメントした:"ロボット産業の現実世界への応用は 理論から現実へと急速に動いており,このシフトは,規制と測定に関連する分野を標準化する切迫した必要を生みつつある。サウジ・アラビアは,リーダーシップの役割を担うことにより,間違いなく サウジ・アラビア経済を多様化し現代化する取り組みをサポートするであろう。"
     SoftBank との提携は,2016 年10 月に SoftBank Vision Fund に関連して PIF と SoftBank のあいだで署名した覚書に立脚する。
    念のため,今日は4月1日ではありません (笑)
     その証拠に NHK からもニュースが出ています。
     『ソフトバンクとサウジのファンド ロボット』(2017/09/07 @04:33)
     そこには
    ことし5月には,巨額の資金力を誇るサウジアラビアの政府系ファンド「PIF」と組んで 10 兆円規模のファンドを設立し ・・・
     と書いてあるが,サウジはそんな発表をしていない。そもそも5月には,何の発表も無かった。
     ソフトバンクと日経の宣伝に NHK までが引っかかった。
    ソフトバンクの単独設立である。だから「SoftBank Vision Fund」という名前なのであり「Saudi Arabia-SoftBank Vision Fund」ではないのである。"SoftBank の Vision のための Fund" なのである。
    New York Times の報道とは,かなり違う。
     ロボットの標準化を サウジと ロボット産業で既に世界のリーダーである ソフトバンクが組んで,世界に先駆けようという野心である。まことに結構ではあるが ・・・
     社長の 2番目の文は おかしいよ。サウジの多様化・現代化は Vision 2030 の重要な柱であるが,それがロボットとどう関係するの? スケールが違いすぎ。おそらく これも「作文」を自分で読んでいないのだろう。自分で目を通せば,おかしいことに気が付くはずである。
    ──────
     いったい 誰が こんな作文を書いたのか? 誰に頼んで書いてもらったのか (笑)
     自分でロボットも満足に作れない者同志が手を組んで,どんな すばらしい「標準」が作れるのか?
    あと,もう1つ重要なことが,最後の1行から読み取れる。
     サウジと SoftBank の間に結ばれた覚書 (2016/10/14) 以上に重要なものは無いということである。 実際 SPA のサイトで検索しても 何も見つからない。
     サウジのサウド国王来日記事はわんさかあるが,その際 孫社長と会見したなどという記事は もちろん 皆無である。国王が杖付きながら わざわざ迎賓館から孫社長の待つホテルへ出向いたなどと言う記事も無い。
     5月に SVF がめでたくクロージング … とか サウジが $450 億を拠出する … などという記事は皆無である。(信じられない?) (笑)
     要するに 2016/10/14 以降,正式には,サウジは 何も約束していないのである。
     [信じられない人は多いと思うが,この記事のリンクから SPA に行き,"SoftBank" で検索すれば分かります。2016年10月の 非拘束 MoU 以後は何も無いことが分かるでしょう。逆に言うと,ここの社長と日経の連携刷り込みプレイが 如何に強力であるかが分かります。要するに,多くの人が メディアも騙されている。もちろん,この世界では 騙されるのがアホである … というだけのこと]
     あの「非拘束覚書」以上に重要なもの,拘束性の契約 があれば,ここに書くはずである。
    ──────
     さしあたり業績に影響は無いだろうが,これで 世界のテック企業を買収 ・・・ と言っても,まともな企業は「標準」の意味さえ理解していない社長の買収には,応じないだろう。もちろん,カネカネカネだけが目当ての企業はたくさんあるから 買収には困らない。安宿ホテル紹介の Oyo も赤字で (WSJ 報道) 金欲しい見本である (ホテルの単なる紹介業がなぜ 金を必要とするのかは 不明であるが,金をタダでくれる人がいれば,もらうのが普通でしょ)。
     こんな程度の人間が 社長でございます,情報革命をいたします … と胸を張る ソフトバンクは,単純な株主を喜ばせるので,幸福と言うべきか 不幸と言うべきか。世間は「情報技術企業」とおだてるが,テクなし企業というのが実態だから,止むを得ないのか。
     まぁ これで「ソフトバンクがテクなし企業である」という情報を開示したつもりかな?
     恥ずかしいから,こんな人 (60) は引退させるのが常識だが,猫に鈴をつけられる人がいません。
     MBS も,わんさか いる王族さんたちから 反発喰らっているでしょう。リリースに名前の出てくるのは MBS だけです。誰が考えたって,サウジがロボットなんて作れるはずが無い。作れないものを標準化できるわけがない。そんな宣言をしちゃった MBS は,世界からどう見られるか。
     そういうおかしな知恵を世間知らずの若い MBS (32) に授けて,New York Times にまでリークして,誇り高い王国に大恥を掻かせたのは,どこのどいつなのか? … ってね。
     その先 何が起こるかは ご想像に ・・・ 。

  72. A king-to-be’s ransom:The prospects for the world’s biggest IPO
    王位継承者の人質:世界最大の IPO の見通し
    Economist,2017/06/24
    サウジアラムコは,その資金を提供する王国から孤立してはありえない。
     サウジアラムコの 5% を売却する提案は,おそらく 史上最大の新規公開株売り出し (IPO) であるだけではない。"ジブラルタルが岩を売るようなものだ。" … と サウジの石油政策のある専門家が この IPO を表現する。世界最大の石油会社 アラムコは サウド家の権力を支え,昨年の国家予算の 60% を支援した。そして 官僚主義の泥沼に嵌まったサウジ経済で,アラムコは効率の鑑である。
     この IPO の 31 歳の設計者 Mhammad bin Salman (MBS) の6月21日の皇太子への昇格は,2018 年後半に計画されている売り出しに更なる勢いを与えるだろう。このニュースは IPO に対する国内の批判派を抑えることになろう。実際 一部の人たちは,王家の家宝を売るよりも借金する方が良いのではないかと訝る。だが,IPO の成功は保証されているわけではない。王子について知られているように,IPO を細部まで自分で決めようとする MBS の性癖は,自らがサウジアラビアに望むと言う 公開と自由の精神とは相容れない。これが IPO で逆噴射しかねない。彼が 口を出せば出すほど,投資家は買う気が失せるだろう。
     サウジ経済を下支えするアラムコの役割は,この企業の巨大な規模よりも IPO の評価にとって大きな難題である。一方で,アラムコの低コストと細身の労働力は,アラムコを ExxonMobil や Royal Dutch Shell 級の超優良石油メジャーに匹敵すると 顧問らは言う。他方,政治的干渉のリスクは,国有石油企業 (NOC) であることに関連した汚点から逃れがたいことを意味する。多くの NOC は,中国の PetroChina や ブラジルの Petrobras のように,アラムコが いま 創り出している ファンファーレのようなもので市場に登場した。それから 10 年,民間の石油企業に比べて $5,000 億相当以上の価値を NOC は破壊した (チャートを参照)。
    民間6社と国有6社の時価総額の推移
     石油企業として,アラムコのセールスポイントは強い (ただし 原油価格が十分高いとして)。所有する原油・天然ガスの採掘権は ExxonMobil の 12 倍,Shell の 27 倍である。生産水準は,数倍高い。1バレル当たりで比較すると,従業員は少なく,債務調整後のキャッシュフローは高い。精製事業,石油化学事業,川上事業は いずれも そこそこのマージンを上げている。上場までに 超メジャーのような取締役会構造を持ち,配当予想を含む 数多くのパラメタを 同等なものにするよう,顧問らは期待する。そうなれば,投資家は このようなデータに基づいて評価できるようになる。"この会社が上場する時には,アラムコは トップ優良石油会社の仲間入りをするだろう。" … と或る人が言う。
     厄介なのは,評価がいくらであるべきか MBS が既に言ってしまったことだ。2兆ドルでは,シリコンバレーのボスさえも赤面させるほど パンチが利いている。これを実現するためには, [上場する] 5% 分が $1,000 億相当でなければならない ── これは 従来の最高である 2014 年のアリババ IPO の4倍である。
     リサーチ会社 Sanford C. Bernstein の分析によれば,アラムコの評価を 2兆ドルとすると,アラムコが地中から得る価値は,原油1バレル当たりに換算して,他の優良企業よりも +60% 高いことになる。1.5 兆ドル または それ以下の評価が的中に近いが,それでは新皇太子を失望させるリスクがある。"皇太子は,安く売るか,それとも 上場を辞めるかの選択をせざるを得ないだろう。どちらにしても,面目を失う。" … と London School of Economics の Steffen Hertog が言う。この人は,サウジアラビアの国情と石油のライターである。
     MBS の目標 2兆ドルに近づくために,王国は 最近アラムコに対する税率を 85% → 50% に引き下げた。これにより 石油企業に対する税率の国際標準に近づいたので,投資家には訴えるだろう:低い税率は,配当の引き上げが可能なことを意味する。
     サウジにはまた,2020 年までに 世界最安のエネルギー価格から国民を乳離れさせ,これによりアラムコの利益を押し上げる計画がある。Rice 大学 ベーカー公共政策研究所の Jim Krane によれば,アラムコの生産の 約 1/3 が国内向けに販売されており,たとえば 発電用には1バレル当たり $6 以下のディスカウント価格で石油が売られており,"巨大な機会コスト" をアラムコに負担させている。
     だが,投資家は賢明にも 税金とか補助金を取り出して見ることはしないだろう。一部のアナリストは,配当が不安定であり,もしも国が金を必要とすれば,アラムコに対する減税を巻き戻すに違いない … と懸念を表明する。現実的な料金政策を導入しても,政治的 および 社会的副産物を引き起こしかねない。なぜならサウジの人たちは,世界最安のエネルギーを使う世界最大の消費者だからである。
     投資家にとって もう1つの懸念は,MBS が OPEC (石油輸出国機構) の代りにアラムコを,世界石油政策の道具に使い続けていることである。世界の石油市場で OPEC は 安定化勢力として役立っており,それがアラムコの利益に適う … と王国は信じているようだ。しかし,原油市場の操り師を演じようとした最新の試みは,逆効果を招いた:OPEC 産油国と 非-OPEC 産油国が 来年3月まで減産するとの合意にも拘わらず,6月21日, 世界の原油価格は 昨年8月以来の安値に落ち込んだ。その結果,アラムコは 収入を減らしただけでなく,減産合意に制限されないライバルにシェアを奪われた。
     最後に,世界的信望が増すに連れて,王子は 地政学と商売とを混同する誘惑に駆られるようだ。その証拠を示す逸話が,5月 Donald Trump 大統領がリャドを訪問中に浮上した。アラムコは 国に代わって実行するさまざまの非中核活動に巻き込まれないものと想定されていたにも拘わらず,正規の守備範囲外の義務を負った:電光石火の早業で,リャドに「過激派イデオロギー対策世界センター」を建設したのである。81 歳になる MBS の父王 Salman bin Abdel Aziz Al Saud と Mr. Trump は その奇妙な開所式に出席した。アラムコがこれに係わったのは,王国内には 2倍以上の時間を掛けても できる者がいなかったからである。
     Venue, vidi, vici (売り上げ! 見た! 勝った!)
     このような戦略的考察が,サウジ以外の上場先をニューヨークかロンドンか どちらにするかの決定に影響を与えるかもしれない (一部の株式は,地元のサウジ証券取引所 Tadawul に上場されるだろう)。アラムコの弁護士は,ロンドン証券取引所 (LSE) に上場したいらしい。その理由は,たとえば 2001年9月11日のテロ攻撃に関連した集団訴訟の現実的リスク,環境保護派の司法長官からの訴訟のリスク ならびに ニューヨーク証券取引所 (NYSE) に上場した場合に直面する資産絡みのその他の訴訟のリスクを避けたいからである。
     だた,MBS は NYSE に傾いていると信じられている。その理由は おそらく 流動性にある:NYSE に上場されている企業の時価総額の合計は 約 20 兆ドルであり,対して LSE は 4兆ドルである。加えて,NYSE は高い威信を持つ;アラムコが上場した場合に比較対照されることを望む大手の仲間は,NYSE に上場されている。さらに,MBS は ニューヨークに上場せよと ホワイトハウスから 圧力を掛けられているとの了解もあり,Mr. Trump との結びつきを固めたいという気持ちが強い。もしもこのようなことが最終的な判断を支配するのであれば,投資家は そんなことを有難がりはしないだろう。
     多くの投資家は [そんなことはどうでもよいと] 肩をすくめるだろう。世界の最も弾力に富む石油会社の株を買うチャンスは,抗いがたい。さらに,各国のソブリン基金は,アラムコ および 新皇太子との絆を深めようと, この IPO の「中核テナント」になりたがるだろう。
     とは言え,玉座への MBS の蛙跳びは,今なお渦巻く疑問を黙らせることは無いだろう。調達した金は,どうなるのか? 上場は,GDP の8% に達する歳入の赤字を埋めるのか? 鉱業, 国防, 観光のような国内事業に資金を投入するのか? それとも「金のなる魔法の木」となって,すべての人にあらゆることを約束するのか? IPO の当初の目標は,サウジアラビアに透明性と強い市場力を ── アラビアの砂漠に「サッチャーのオアシス」のようなものを ── もたらすことであった。もしも MBS が望むものが当初の通りであるならば,藪から蛇を出さないことを学ぶべきだ。
    ジブラルタルの岩:(Gibrartar Rock)
     イベリア半島先端の 英領ジブラルタルの 海峡を見下ろす巨大な1枚岩の石灰岩。
     これを売ってしまったら,イギリスにとって要衝の軍事的価値が失われる。
    Venue, vidi, vici (売り上げ! 見た! 勝った!)
     ユリウス・カエサルがガリアからローマの元老院に送った有名なことば 「veni, vidi, vici (来た! 見た! 勝った!) をもじったもの。
    日経から日本語に翻訳して掲載されていますが,Economist の英文記事から翻訳しました。
     翻訳の練習かな?
    ソフトバンクの株主には,目新しいことがいくつかあると思います。
     その筆頭は,"SoftBank" とか "Vision Fund" という単語が全く見られないことです。
     どうしてなのでしょうか?

  73. Saudi King Rewrites Succession, Replacing Heir With Son, 31
    サウジ国王が後継を書き換えて,相続人を 31 歳の息子で置き換える。
    New York Times,2017/06/21 (2017年6月22日,ニューヨーク版 A8 面に掲載)
    By Ben Hubbard (ベイルート)
    サウジの王冠から2歩も離れているのに,王の 31 歳の息子 Mohammed bin Salman 王子は既に 巨大な国営石油会社の上場計画を推進し,(サウジの若者を苦しめる) 社会的な制約をものともせず,どうやって終わらせるかの計画も無しにイエメンに高くつく戦争を仕掛けた。
     今や サウジアラビアの サルマーン国王が 水曜日 皇太子に指名したことを受けて,Mohammed 王子は 自らが 既に震撼させてきた王国を継承する立場にいる。王は この任命により,息子より年上のライバル Mohammed bin Nayef 王子 (57) を退けて,何十年も続いた王国の慣習に終止符を打ち,王国の内部権力構造の 根本的な再構築を行なう。
     今回の動きは,若き野心溢れるリーダーに更に大きな権力を与える一方で,アメリカの緊密な同盟国 サウジアラビアは ── 低い原油価格,イラン および スンニ派アラブ諸国圏との敵対関係の増大を含む ── 巨大な難問を抱え込む。
     国家安全保障の洞察力で尊敬を集める Mohammed bin Nayef 王子より自分の息子を可愛がることにより,81 歳の王は,年上の数多くの王子 ── その多くは外国で教育を受け,若き王子に欠ける行政経験を何十年も積んできた ── を 置き去りにした。もしも Mohammed bin Salman 王子が 父の後を継げば,サウジアラビアにこの半世紀以上見られなかったものを与えるかもしれない:若き王には,何十年もの在位の可能性がある。
     Mohanned bin Salman 王子が速やかに頭角を現し その影響力を増したことは,すでに他の王子らの心情を害しており,Mohammed bin Nayef 王子を弱体化させると非難を呼んでいた。しかし,そのような訴えは 何よりも安定を重視する支配ファミリーの中では 内輪に留まっていたようである。
     "若い世代が権力に近づいたことを 数多くの人は喜んでおり,これに動転しているのは 年上の世代である。彼らは このように劇的な変化に慣れていなのだ" … と 王族内部と広範な接触を持つ ファイサル国王イスラム調査研究センター (KFCRIS) の上級フェロー Joseph A. Kechichian が言う。"たとえ 快く思わない人がいるとしても,つまるところ これは専制君主の決定であり,新しい手筈を受け入れざるを得ない。さもなければ 基本的には 口を閉じたままで 居続けるしかない。"
     M.B.S. [=Mohammed bin Salman] として知られる若き王子は,2015 年に父が王位に進んだことを受けて,無名から浮上した。爾来 彼は広範な権力を一手に集め,国防相を務め,国有石油独占企業を管轄し,サウジ経済の見直しに取り組み,外国指導者 ── とくに Trump 大統領との連帯を結んだ。
     彼の支持者は,王子を称賛する;王国の将来の 望ましいビジョンを実現するために懸命に働いている;とくに 人口の多い若い人のために。批判する人たちは,王子を権力欲が強いと呼び,その未熟さが 隣国イエメンに戦争を仕掛けたように,サウジアラビアを 明確な出口の無い 高くつく問題に巻き込むと恐れる。
     現代サウジアラビアを創立した Abdulaziz al-Saud 初代国王 [1902 年, 22歳で即位] の死後 (1953 年),絶対君主は 初代国王の息子たちにより受け継がれた。このシステムは,これら異母兄弟たちが年老い,亡くなる者が出始めると,その将来に疑問を投げ掛けることになった。
     王位についた [2015 年1月,第7代国王] サルマーン国王は,この問題を避けるため [自身の異母弟がほとんど亡くなっちゃった?] ,Mohammed bin Nayef を皇太子に指名した。ここで初めて,第3世代が皇位継承の地位に登った。
     今や 王室のリストラは,内相を務め,10 年前には一連の自爆を受けて王国内のアルカイダ網を解体させたことで,サウジ国民 および 同盟国から広く尊敬を集めている Mohammed bin Nayef 王子のキャリアを終わらせた。
     サルマーン王の水曜日の勅令は,Mohammed bin Nayef 王子を後継のラインから外し,内相のポストからも外し,内相には 別の若き王子 Abdulaziz bin Saud bin Nayef (33) を任命した。この王子は,内相の広範な安全保障,警察,諜報活動に関連する経験がほとんど無い。
     国王の別の息子 Khalid bin Salman 王子は,最近 アメリカ駐在大使に任ぜられた。その年齢は 20 代後半と見られている。
     M.B.S. 王子の昇格は 隕石衝突的 [=急速] であった。
     父が 副皇太子 (王位に2番目の地位) に任命して以来,彼は開発計画 "Saudi Vision 2030" を率いた。これは,国の石油依存を減らし,経済を多様化し,保守的な イスラム王国の社会的規制を緩和することを狙うものであった。
     国防相としては,イェメンへの王国の軍事介入への責任を負っていた。アラブ同盟の連合を率いて空爆キャンペーンを行なった。Houthi の反乱軍を首都から追い出し,政府を回復することが目標である。
     この作戦は2年以上経っても 大した進歩が無く,人権団体は サウジが 民間人を爆撃し,アラブ世界の最貧国の経済を破壊する;海上と陸上の封鎖により人道危機を悪化させている;と非難した。
     M.B.S. 王子は,イランに対して強硬路線を取っており,先月 TV インタビューで,シーア派の強国との対話は不可能である;なぜなら イスラム世界の覇権を握ろうとしているのだから … と語った。
     "我が国は イラン体制の主たるターゲットである。" … と王子は言い,メッカや メディナのようなサウジ・アラビア内のイスラム聖地をイランが奪おうと企んでいる … と非難した。"我々は サウジアラビア内で戦争が起こるまで待つつもりはない。その代りに,イラン内で戦争が起こるようにするつもりだ。"
     サウジアラビアとイランは,バーレーン, シリア, イエメンの紛争で正反対の立場にいる。そして アフリカ, アジア, 中東にわたって 互いの影響力を弱めようとする。
     M.B.S. 皇太子は,アラブ首長国連邦のアブダビの Sheikh Mohammed bin Zayed al-Nahyan 皇太子を師と仰ぐ。この2人は最近,相次いで カタールを孤立させようとして,テロを支持していると非難した。ちっぽけな隣国カタールは,これを否定する。
     廃嫡されることになった Mohammed bin Nayef 王子は,カタールの首長 および その父と暖かい関係を持っており,今回の措置により この小国カタールが 隣国と折り合いをつけていくのはますます難しくなるだろう … とアナリストらは言う。しかも,一部のアナリストは,若き王子の熱心さが この地域を更に不安定化するのではないかと不思議がる。
     "今こそは,静かな外交のようなものが 真に必要な時である。" … と ベイルートのカーネギー中東センターの Maha Yahya 所長が言う。"我々は,緊張に火を点けるのではなく,緊張を和らげる能力を持つ 冷静な頭の政治家を必要とする。サルマーン国王の下では サウジの外交政策に かなり積極的スタンスが見られたが,今ではそれが 悪くなりかねない。"
     M.B.S. 王子は,重大な経済問題に直面している;石油の低価格が続いて 国家予算に穴を空け,王国の若者の雇用の機会を減らし,消費者の信頼を落としている。
     サウジアラビアは,改革の発表後,国内株式市場は 4% 値上がりしたが,原油価格は 水曜日も下がり続けた。
     M.B.S. 王子が世界最大の原油輸出国で権力を増すことは,広汎な結果を生みかねない。
     従来,サウジ王族は 概ね エネルギー業界の営業を辞めてテクノクラートに転身した。しかし M.B.S 王子は それより直接の役割を担っている。
     特に彼は,国営石油巨人 サウジアラムコの IPO を推進していることで批判を浴びた。アラムコは,王国の経済を下支えする 高度に秘密主義の企業であり,数十年来 途方も無い富を生成してきた。彼はまた 石油生産政策について 経験深いサウジ・エネルギー官僚を出し抜くような発表を行なってきた。
     "問題は,彼が予測不可能な人物であり,いったい誰に助言を求めているのか不明である。" … と ロンドンに拠点を置く調査団体 Chatham Haouse の中東石油アナリスト Paul Stevens が言う。
     M.B.S. 王子の昇格は,サウジの石油業界にとって 真の悪い時期にぶつかった。
     石油輸出国機構 (OPEC) による生産調整は,昨年 主としてサウジの根回しにより行なわれたが,これまでのところ価格を上げるのに失敗した。その結果,サウジ および その他の石油生産国は,取れる手段の余地が ほとんど無くなった。大手の石油輸出国は 更に生産をカットすることもできる; すなわち サウジは 2014 年末に追求した政策を再開することもできる:原油価格を下がるままに放置し,低マージンの生産国を市場から締め出し,その結果として シェアを上げるのである。
     M.B.S. 王子は,伝統的に公開を望まない王国にあって,ユニークな注目を浴びる道を取り,西側報道機関のインタビューに応じ,中国, ロシア, アメリカへ 人目を引く旅行を行なった。今年3月には,Mr. Trump と会食した。
     サウジのニュース機関は,サウジの職階の変化を 秩序ある改造と描写し,前皇太子に膝まづいて その手に丁重に口づけする新皇太子のビデオ映像を繰り返し放送し [注:日本の TV でも見られた] ,年長の王子らの諮問会議が 34 人中 31 人の賛成により この任命を承認したと伝えている。
     退任する王子のプロフィールは,若い従弟のプロフィールが上がるにつれて,衰えた。しかし,西側の当局者に人気を保っているのは, 国家安全保障と諜報関連で協力してきた これまでの皇太子である。
     2009 年 Mohammed bin Nayef 王子は,ある軍人が仕掛けた爆弾により 直腸に傷を負った。最近王子に面会した複数の人によれば,この傷の影響が長引いているというが,国王が交代を決めたのがそのためであるかどうかは不明だと言う。
    The Economist の記事が日経に翻訳掲載されました。
     『若きサウジ新皇太子が背負う大きな任務』2017/06/27 18:50
     New York Times と大筋は同じである。
     やはり せっかちで 評判のよろしくない人物らしい。
      原油安は長期化する可能性が高い。宗派対立も深刻で,アラブの多くの国は内戦状態にある。とはいえ,せっかちで経験が浅い MBS による事実上の統治は,長老政治で経済が停滞するのと同じくらい危険かもしれない。
    このニュースは 日本でも流れているが,内容は 良く分からない。単なる交代のように思える。
     ところが,今朝の BS で欧州メディアの報道 (複数の国) によると,この新皇太子さんはえらく評判が悪い。
     孫さんから 昨日 聴いたのとは 天地の差 (?)
     イエメン攻撃がとくに悪いらしいが,人物としても 独善的で うまくいかないだろうという意見が圧倒的。
     顔に似合わず 31 歳がそうなのか (笑) とビックリして,New York Times の記事を探して読みました。
     なおサウジ国営通信 SPA は,どこの国の大統領・首相などなどから お祝いの電報・電話が届いたというのがわんさか あって,何が何だか分からない。とにかく お祝いムードを盛り上げるのに必死らしい。
    ──────
     あっ,この記事には,SoftBank とか Vision Fund とか Masayoshi Son というような固有名詞は一切登場しません。
     なぜなんでしょうね?
     5月には先端産業の育成などを狙いソフトバンクグループと10兆円規模の投資ファンドを立ち上げた。(日経) … はずなんですけどね。New York Times ともあろうものが 知らないとは ケシカラン!(笑)
    ソフトバンクに投資する人が ここまで知っている必要があるかどうかは 知りません (笑)
       しかし,権力争いというのは どこの社会でも面白い。
       少なくとも,今の国王がなぜ 杖つきながら 79 歳という高齢で王位についたのか? という疑問は解ける。
       孫社長とお付き合いの深い M.B.S. 皇太子が,イエメンでは 人権団体から非難されるような残虐行為をしていることもよく分かった。民間人を爆撃。まぁ トランプさんもやってるね。
       しかし,M.B.S. さんが 顔に似合わず こんなに好戦的とは知らなかった。
       結局 皇太子としての能力の国際評価は,イエメン内戦をどうまとめられるかによるだろう。
       だが,戦争は始めるのは易しいが,終わらせるのは難しい。
       経済での能力は,Vision 2030 で 国内開発をどこまでできるかで試される。
       大きな懸念は 原油価格が暴落しており,さらに暴落しそうと言われていること (JBPress, 2017/06/23) 風が吹けば桶屋が儲かるように,原油価格下落 → アラムコ上場が遅れる → サウジの金庫が乏しくなる → SVF への入金が遅れる/滞るリスク。

  74. It turns out that the $110 billion Saudi arms deal is actually fake news
    $1,100 億のサウジ武器援助協定は,実は フェイク・ニュースであることが判明した。
    Business Insider,2017/06/07
    By Daniel Brown
    Brookings Institution によれば,Trump 政権が5月に発表した $1,100 億サウジアラビア武器協定は, 実は "フェイク・ニュース" であることが判明した。
    Donald Trump Saudi Arabia
    Bandar Algaloud | Courtesy of Saudi Royal Court | Handout)
    Brookings 諜報プロジェクトの上席フェロー 兼 ディレクタ Bruce Riedel は,防衛業界 および 議会で話したすべての人が いわゆる $1,100 億協定が 実は "覚書の山であり,契約ではない" … と話している … と書いた。
     実は,これらの提案の多くは,ペンタゴンが "intended sales (販売予定)" としているものであり,サウジが将来いつかの時点で買うものと武器契約者が 憶測している武器に過ぎない。しかも その多くは,オバマ政権時代に提案された。
     たとえば,ペンタゴンはサウジに フリゲート艦4隻を $112.5 億で売る提案を 2015 年にした。しかし,それ以来 契約は全くなされていない。
     THAAD システムについても同じである。サウジは ミサイル防衛システムを希望したことがある。オバマ政権はこの販売を 2015 年に認可するところまでいった。しかし,何も契約されなかった。
     Riedel は,サウジが 現時点でそんなに巨額の契約を結ぶ 財政のゆとりが無いだろうと言う。なぜなら 原油価格が下がり,しかも 隣国イエメンでの2年越しの戦いにも金が要るからだ。
     彼はまた,"取引がフェイクでない" ことを証拠集めする1つの方法は,いつイスラエル自身がアメリカと取り引きを望むかだと言う。なぜなら イスラエルの人たちはアラブの隣国に対して牙を研いでおきたいからだ。Bob Gates 元国防長官は,2012 年にサウジアラビアと $1,120 億 武器協定を結んだとき,これを議会に通すため,イスラエルと別の協定を交渉せざるを得なかった。
     Read the full Brookings Institution article here.
    シンクタンク Brookings Institution の報告だから,間違いないでしょう。
     「金が無い」のが理由だったら ・・・ 。
    ──────
     +英国 DailyMail.uk によると ↓
    Published: 17:54 BST, 6 June 2017 | Updated: 20:55 BST, 6 June 2017
    Read more: http://www.dailymail.co.uk/news/article-4577842/Is-110-billion-arms-deal-Saudi-Arabia-fake-news.html#ixzz4jIFD2TKs
      Trump 大統領は 9日間の外国旅行中の5月21日「サウジの $1,100 資金による武器購入」を発表した。
      ブルッキングス研究所の中東専門家が,この主張は誤りであり "取り引きは無い" と言う。
      これまでほとんど知られていなかったペンタゴンの5月20日付ファクト・シートには,アメリカのハードウェアをサウジ王国に売却する過去の認可に基づく合意が記載されている。
      過去の文書の一部は 2013 年にまで遡る。
      ホワイトハウスのある官僚は 火曜日,Trump が サウジアラビアで発表した大部分は "将来に期待する性質のもの" であると DailyMail.com に語った。
      しかし,ホワイトハウスの Sean Spicer 報道官は 火曜日,"サウジアラビアとの武器販売" が本当に調印された" … と強く主張した。
    ──────
     Washington Examiner:2017/06/06 @05:40 pm ET
     『Trump's $110 billion arms deal with Saudi Arabia is 'fake news,' defense expert says』
     サウジアラビアとの Trump の $1,100 武器協定は "フェイク・ニュース" だと 軍事専門家が言う。
      Bruce Riedel は,元 CIA に勤めていたらしい。
    Spencer answers on Saudi defense deal.
     ↑をクリックすると,You Tube 動画を見ることができます。

  75. 思惑漂う米・サウジ連携に組み込まれた孫正義氏
    日本経済新聞 電子版,2016/06/5
    松尾博文 (編集委員)
    トランプ大統領が就任後初の外遊先としてサウジアラビアを訪問した。サウジと米国の関係はオバマ前大統領時代に冷え込んだ。トランプ氏に期待するサウジが用意した「ディール(取引)」の目玉が,ソフトバンクグループの10兆円ファンドだった。
     外交関係者が異例と驚く厚遇ぶりだった。オバマ前大統領が昨年4月にサウジを訪問したときに出迎えたのは州知事だった。81歳のサルマン国王は今回,自ら空港に出向いた。サウジ側は昼食会と晩さん会の両方を主催し,トランプ氏に最高位の勲章も授与した。
    (以下省略)
     何度も日経さんにケチつけて申し訳ないんだけど (笑),大統領が異例の厚遇をされたことは,サウジの公式報道 SPA で非常によく伝わっている。写真も多い。
     しかしこのとき同時に ソフトバンク社長がサウジを訪問したとは (なぜか) 全く報道しなかった。
     10 兆円ファンドの話は,昨年10 月の MoU が最後である。
     PIF の事務総長と何かあったとの報道も無い。
     日経さんも迫真に満ちた記事を書くのなら,写真を1枚でいいから載せたらどうか?
     なぜ 古い写真を何度も使い回しせざるを得ないのか?(笑)
     孫社長は政府系ファンド,公共投資基金 PIF のヤシル・アルルマイヤン社長と「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」への資金拠出を記した覚書を交換した。
     ・・・ この報道は,SPA から出ていない。そのとき写真を撮ることは,すべてのカメラマンが禁止されていたのか? なぜ写真を撮れなかったのか?
     仮に 写真が禁止でも,覚書があるのなら,昨年 10 月の覚書と同様に,サウジと東京で同時発表するのが普通だろう。なぜ 重要な覚書を公表できないのか?
     たぶん書かれていることは事実なのだろうとは思うが,なぜサウジがその事実をこれほど必死に隠したがるのか? 新聞たるものはここを解明すべきだろう。将来の基金の運営にも係わる重大な問題である。
     覚書を公表しない理由は,non-binding だからと想像できる。もしも binding であれば,サウジが $450 億の出資を確約したのだから,社長は 鬼の首でも取ったように派手に会見したに違いないし,覚書を公表したはずである。
    ──────
    サウジがソフトバンクとの取り組みを重視するもう一つの理由がある。
     ならば,これほどまでに隠す必要がどうしてあるの? バンバン写真を使って報道しまくればいいじゃないの? SoftBank とか Son とかいう名前は 昨年 10 月以降お見限りなんですよ。
     ここから先は見解の相違であるが,アメリカとサウジの関係がこの記事のように非常にうまく行った以上,もはや日本政府とは無関係の1企業を頼る理由は弱まった。資金力でも政治力でもアメリカとソフトバンク1社を比べるのは,全く意味がありません。たとえば,サウジがアメリカにエチレン製造プラントを建設して,アメリカで石油化学工業事業を手広くやることになったが (なぜ日経はこれに触れないの?),ソフトバンクがこれにどれだけ援助してあげられるか? 石油化学商社でも設立しますか? もちろん,かなりの「持ち出し」をすれば,エチレン・プラントに協力できるだろう。
     これからは,重要なことは アメリカを頼ればよい … というのがサウジの現在の基本路線。大統領の訪問の大成功により,基本路線が修正されたと見るべきだと思う。
     SPA の記事を読んでいる当サイトとしては,この日経記事はピント外れの 我田引水,危険なおべっか記事であると断定する (笑)
     いつまで 続くこの腐れ縁! 編集委員兼論説委員を名乗る人が書いているだけに,悪質である。
     早速 板では,この記事を転載して喜んでいる。若い記者が知らずに書いたのとは ワケが違う。根の深さを思わせる。ソフトバンクのインド投資の「赫赫たる戦果」を知らない筈が無い。
     世界中の優良企業の株式などに幅広く資金を投じる。 ・・・ イタリアの潰れそうな銀行 MPS が 世界の優良企業なの ?
    ──────
     なお,本日の中東ニュースには「サウジアラビア, エジプト, バーレーン, アラブ首長国連邦は,6月5日 カタールとの国交を断絶すると発表した」 ・・・ というのがある。AFP-時事通信は,国営サウジ通信 (SPA) を引用してこれを伝えている。それくらい,世界/日本の報道は,SPA を重視している。
     ニュースは「報道される」ことに意味があるが,「報道されない」ことにも意味がある。
    ──────
     [追加] 覚書がたぶん non-binding なのには,理由がある。
     サウジの出資額がなぜ 非開示なのか? と疑問 あるいは 不安を感じておられる方は,おそらく多いだろう。その理由は,サウジが (1) いつ (2) いくら出資できるか確定していないためである (だから この覚書を non-binding にしたのだろう)。
     この日経記事にも
     国家収入の大半を稼ぎだす国営石油会社サウジアラムコを PIF の管轄下に移し,アラムコの新規株式公開 (IPO) によって得る資金を投資の原資にあてる。
     と書かれている。つまり アラムコの上場から (1) いつ 金が入るかが分からないと 願景基金にいくら拠出できるかが決められない。ところが,この上場ニュースは,この頃 立ち消えになっている。New York, London, 上海,東京 など争奪戦とウワサされているが,このところパタッと 途切れている。おそらく,大統領訪問により サウジとアメリカの関係が強まったので,これからは ニューヨーク上場に向けて話が進むだろう。
     もう1つの問題は,アラムコ上場により PIF が (2) いくらを入手するかである。アラムコの評価額の 5% を上場すると言われているが,では アラムコの評価額はいくらになるのか? 副皇太子は 2兆ドルを唱えているが,ここが問題であり,$450 億を本当に願景基金に出せるのか?
     基金の発足が大幅に遅れたのは このためもあるか?
    ──────
      サウジアラムコの評価は,報道によれば $5,000 億 ── ざっと アマゾン+ネットフリックスの時価総額 ── ほどのサバを読んでいる』 (CNBC, 2017/04/24)
      アングル:サウジの巨大政府系ファンド,国内投資が足枷に』 (Reuters, 2016/05/17)

  76. トランプ中東外交,ソフトバンクに牡丹餅も
    日本経済新聞 電子版,2017/05/30 @05:30
    編集委員 滝田洋一
    Trump 大統領の初の外遊は,原油と武器の地政学を鮮明にした。アメリカ,サウジアラビア,イスラエルの3国が関係を強化し,中東の秩序づくりを狙う。金融市場はそうした環境に,リスクオフの雰囲気を感じ取っているように見える。
    「サウジアラビアの巨額の対米投資はアメリカに雇用,雇用,雇用を生み出す」。Trump はサウジからの投資取り付けに際し,「雇用」という言葉を3回繰り返した。アラブ・イスラム諸国の代表者との会合では「道義に基づく現実主義」と語った。
     Obaba 前大統領の下で冷え切っていたサウジやイスラエルとの関係を修復し,アメリカの中東関与の基軸にする。そんな Trump 外交の舞台回しを務めたのは,アメリカ側は Kshner 大統領上級顧問であり,サウジ側は Mhammad 副皇太子である。
      サウジが打ち出したのは,脱石油依存であり,イランの脅威に対処するためのイスラエル接近であった。昨年10月時点で,サウジの Al-Walid bin Talal 王子は「パレスチナによる反乱が起きた場合はイスラエル側に立つ」と発言していた。
     昨年11月に Trump 政権が誕生すると,11月末にはサウジが予想外の原油減産を発表し,石油輸出国機構 (OPEC) がこれに追随した。そしてロシアも 15年ぶりに原油減産に加わる。その間に Kshner は,Mhammad 副皇太子やロシアの Putin 大統領と会っている。
     今年3月にサウジの Salman 国王が訪日したときも,Mhammad 副皇太子は別行動を取った。訪米し,Trump 大統領と会談していたのだ。
     4月には Mattis 国防長官がサウジを訪問した。5月に入るとサウジの軍事関係者がホワイトハウスを訪ね,米国からの武器売却を求めた。価格交渉が難航したが,Kshner がロッキード社首脳に直接電話し,値下げを求めた。
     その直後にホワイトハウスが大統領のサウジ訪問を発表。Trump は破格の待遇でサウジ入りし,巨額の武器売却と対米投資の約束を引き出す。アメリカとサウジは蜜月関係に入ったと言ってよい。
    Kshner 上級顧問と Mhammad 皇太子 (AP).
     こうした現実主義外交を後押ししたのは,米政権内のパワーシフトである。Kshner の名代として,Dina Habib Powell 大統領副補佐官が3月に国家安全保障会議 (NSC) 入りした。右翼の Steve Bannon 首席戦略官・上級顧問は NSC から外されている。
     Ms. Powell はエジプト出身で,中東との関係が深い。Kshner の妻である Ivanka のお友達である。Mhammad 副皇太子の大統領訪問を調整したり,Mattis 国防長官のサウジ訪問にも同行するなど,Kshner の意を体して中東外交を遂行している
     表題に「ソフトバンクに牡丹餅も」とあるが,どういう「牡丹餅」を誰から いつごろ 食べさせてもらえるのかな?
     実際には イタリアで毒饅頭を食べようとしている (笑)。こちらも書くべきでしょう。
     現実には,孫正義社長と親しいと言われる Mhammad 副皇太子との会見もありませんでした。

  77. Saudi Arabia, US Sign Joint Strategic Vision Declaration
    サウジアラビアとアメリカが,共同戦略ビジョン宣言に署名する
    Qatar News Agency,2017/05/20 (リャド)
    2聖モスクの保護者 Salman bin Abdulaziz Al Saud 王とアメリカ Donald Trump 大統領が 本日,サウジ-アメリカ 共同戦略ビジョン宣言に署名した。
     両リーダーの出席のもと,数多くの合意と投資機会に関する調印式が執り行われた。 これらの合意と投資機会は 総額 $2,800 億を超え,両国の知識の交換 ならびに 数十万の雇用の機会の創出に貢献する … と サウジ報道機関 SPA が伝えた。
     両者は,サウジ国防省とアメリカ国防省の間で サウジの防衛能力を現代化・刷新する覚書2通を交わした。Black Hock チョッパーを王国で製造する提携について合意を交わした。
     両者はまた,軍事産業の分野で4件の合意を交わした。両者はまた,技術の分野で MoU を交わした;1つは発電;2つは高価値製品を製造する分野,2つは 技術とインフラ分野;さらに アメリカでエチレン・プラントを建設する合意である。
     石油とガスのサービス分野では,サウジ・アラムコとの数多くの合意が交わされた。 ・・・ A number of agreements with Saudi Aramco in the fields of oil and gas services were exchanged. The two sides also exchanged three agreements in the field of mining and developing human capabilities, an agreement in the field of health investments to build and operate various hospitals in the Kingdom, an agreement in the field of air transport to purchase aircraft, an agreement in the field of digitalization, an agreement to build an information storage center and an agreement in the field of real estate investment.
    この共同宣言は重要なものと考え,検索しましたが カタールニュース機関によるこのニュースしか引っかからない。
     大統領がサウジを訪問するというので あれほど騒いでいたのに,その成果について メディアの関心がこれほど低いとは,トランプさんも ガッカリ? 週末でお休みということもあろうが,たくさんの記者が随行したはず。
     ご覧のように (ソフトバンクの 5年で $500 億,50,000 の雇用なんて 小せぇ!小せぇ! と見せつけるかの如き) 総額 $2,800 億,数十万の雇用,おまけに (ソフトバンクにはできない) エチレン・プラントをアメリカで建設から,サウジアラムコもチョコっと出てくるのに,アラムコの激しい上場先争奪戦の騒ぎはどこへやら (笑)。スカーフのニュース価値が高いとは!
     日本も含めて 世界がサウジに如何に冷たいかを,中東の人は思い知ったでしょう。
     日本にしても,サウジは 単に 原油の安定輸入先として確保したいだけ。
     イギリスもアメリカも,基本は 多額の武器をサウジに売りつけたい。そこが基本。
    [2017/05/22] 今朝 もう一度ニュースを検索したけれど,全く見つからない。ひどいもんだ!
     アメリカ政府が係わる共同宣言なんだけど。
     日露とか日ソの共同宣言なら 日本のメディアは大きく取り上げる。
    ──────
    [2017/05/22] 日経:「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の最大の出資者は450億ドルの拠出で合意したサウジアラビア政府系ファンド。
     孫正義社長が現地入りしサウジ政府と最終合意した。

     これは,日経さん (またまた) とんでもない誤報じゃないの? PIF が $450 億の拠出に合意した のがほんとなら,サウジの公式報道が出るはずだけど,そんなものは出ていない。
     本来なら こういうものは「共同発表」して「共同記者会見」をするはず。副皇太子と社長が共同記者会見する写真がバーン!世界中に配信されれば,それだけで ものすごい宣伝力! 企業としてのソフトバンクの知名度はさらに上がる! それができなかったのはなぜか? を探るのが報道の本来の役目だと思うけど,違うかな?(笑)
     昨年 10 月の MoU は「$450 億の出資を検討する」と約束した。それだって Non-Binding (拘束力無し).
     一生懸命ニュースを (特に副皇太子のニュースを) 探しているけれど,SPA (Official Saudi Press Agency) からの記事は アメリカが圧倒的。ソフトバンクの「ソ」の匂いも見えない。少なくとも「サウジ政府から公式には」ソフトバンクは全く 相手にされていません。$450 億も拠出に合意していたら,発足に当たって 何かサウジから公式の発表があるでしょう。隠す理由が何かあるでしょうか?
    ──────
     同じ記事に,ソフトバンクは当初250億ドルを拠出する予定だったが,他の出資者の要請で一部をアーム株として280億ドルにすることで決着した。
     これって,他の出資者が有利になるように計らったから,ソフトバンクの株主が損をさせられた … っていう意味ですよね。
     早速 ソフトバンク株主から訴訟があってもおかしくありません。
     こういうややこしいシステムを,社長さんは「世界に例を見ない」と自慢したけれど,確かに例を見ない!そんなにうまくいくのなら,グーグルとかアマゾンが 50 兆円規模 ?の基金をこしらえて,目一杯の利益相反で稼ぎまくるでしょう。
     この基金への出資だって年率 +44% も ほんとに儲かるんだったら,世界中から 発表後即日 申し込みが殺到して $930 億なんかで納まるはずが無い。募集は1日で締め切らざるを得なかった。1,000 兆ドルくらいは軽く集まったんじゃないの? $930 億なんて少なすぎる! 集まった金の少なさが,このシステムのインチキ度を証明する。オラクルは消えているようですね。
    ──────
     本来のやり方は,10 兆円の新規株式発行。これを出資者に割り当てる。既存株主が大幅に希薄化するが,なんせ 年率 +44% の利益が上がるのだから 全く問題はありません。10 兆円の資本導入で,毎年 4.4 兆円の利益が増えるのだから,希薄化なんて ぜ~んぜん問題にならない。毎年 4.4 兆円の利益増加が続くなら,株価はとんでもない値上がりをして株主を喜ばせる。\100,000 くらいに 直ちに行くかな?(笑)
     [ちなみに,44% というのはベラボーな利益率:2年で2倍,4年で8倍,6年で 16 倍,8年後には 32 倍です。8年待てば いまの株価の 32 倍とすると \270,000 になる。10 年後にはその2倍,\540,000]
     債券発行ではないし,100% 自己資金だから 自由な投資ができます。なぜ これをしないのか?
    不思議ですね。ど~して わざわざ,社長は株主を喜ばせないことをするのか?
     理由は誰にも分る:「年率 +44% の利益というのが大ウソだから」。ほかには考えられません。
     こういう利益率の計算で重要なのは,最近の実績です。アリババへの出資は確かに絶賛されている。でも それは 過去のこと。スーパーセルも見事だった。でも これから出資する人にとっては それらは過去のこと。最近の投資の成果がどうなっているか? その投資成果一覧表を決算発表の資料に添えれば,分かりやすい。そうすれば ブザマが実態が明らかになる。
     なんせ,Snapdeal は $65 億に評価されていたのを $10 億で Flipkart に叩き売ろうとして,他の投資家の反対に遭い その説得に苦戦,(どういう手を使ったのか分からないが) これを説き伏せたところ,他にも2人の大物の承認が必要と分かって ・・・ という状況。

  78. Saudi Press
    サウジ報道
    Saudi Press Agency,2017/05/21 @11:38 (Local), 05/21 @17:38 JST
    サウジの新聞各紙は 本日,地元,地域,国際分野の数多くの問題を社説で取り上げた。
    Al-Riyadh 紙は社説で,サウジ-アメリカ サミットを論評し,昨日 Al-Yamamah 宮殿で開催されたサミットが (70 年以上続くサウジ-アメリカの協力の枠組みの中で実施される) さまざまの分野における合意の署名を証明した … と書いた。この協力関係は 今では リヤドとワシントンの間の戦略的アライアンスに発展し,今後は 共有する関心に基づく提携の強化につながり,両国の大望に役立つ幅広い水平線に到ると期待される。
    これが,サウジ政府の公認する重要な成果 … ということらしい。
     逆に言うと ・・・ もうお分かりですね。

  79. US President Receives Deputy Crown Prince
    アメリカ大統領が,副皇太子と会見する
    Saudi Press Agency,2017/05/20 @21:55 (Local), 05/21 @03:55 JST
    アメリカ大統領は 本日,当地の滞在先で 副皇太子 Mohammed bin Salman bin Abdulaziz 第2副首相兼国防相と会見した。
    この会見のあいだ,両者は,(テロリズムと過激主義に対抗する取り組みを含む) 中東での最近の発展状況に加えて,さまざまの分野における2国間協力の諸側面を議論した。
     この会見には,Khalid bin Salman bin Abdulaziz 王子 (アメリカ駐在サウジ大使);Dr. Musaed bin Mohammed Al-Aiban (国務相);Dr. Majid bin Abdullah Al-Qasabi (商業投資相);Khalid bin Abdulaziz Al-Faleh (エネルギー, 産業, 鉱物資源相);Adel bin Ahmed Al-Jubeir (外相);Rex Tillerson (アメリカ国務長官) および 数多くの関係者が出席した。
    5月20日 (土),サウジ政府から SoftBank 関連の発表は何もありませんでした。

  80. Custodian of the Two Holy Mosques, US President Sign Saudi-American Joint Strategic Vision Declaration
    2聖モスクの保護者とアメリカ大統領が,サウジ-アメリカ 共同戦略ビジョン宣言に調印する。
    Saudi Press Agency,2017/05/20 @20:52 (Local), 05/21 @02:52 JST
    2聖モスクの保護者 Salman bin Abdulaziz Al Saud 王と アメリカ大統領 Donald Trump が Al-Yamamah 宮殿において 本日 サウジ-US 戦略ビジョン宣言に協同調印した。
     両リーダーの出席のもと,数多くの合意と投資機会に関する調印式が執り行われた。これらの合意と投資機会は 総額 $2,800 億を超え,両国のあいだの 知識の交換 ならびに 数十万の雇用の機会の創出に貢献する。 Deputy Crown Prince Mohammed bin Salman bin Abdulaziz, Second Deputy Premier and Minister of Defense, and US Secretary of State Rex Tillerson exchanged two memorandums to modernize and revamp Saudi defense capabilities between the Saudi Ministry of Defense and the US Department of Defense. An agreement of partnership to manufacture Black Hock choppers in the Kingdom was exchanged by Prince Dr. Turki bin Saud bin Mohammed, Chairman of Board of Directors of Saudi Corporation for Development and Technological Investment and President and Chief Executive Officer of Lockheed Martin Corporation Marillyn A. Hewson. Four agreement in the field of military industries were exchanged by Chief of the Saudi Military Industries Company Ahmed Al-Khateeb and President and Chief Executive Officer of Lockheed Martin Corporation Marillyn A. Hewson, Chairman and Chief Executive Officer for Raytheon Company Dr. Thomas A. Kennedy, President of General Dynamics and President of Boeing Company.
     技術分野での MoU が取り交わされた。発電分野で合意が交わされた。高価値製品の製造分野で2件の合意が取り交わされた。
     技術 および インフラ分野で2件の合意が取り交わされた。アメリカでエチレン・プラントを建設する合意が交わされた。
    まだ ソフトバンクのニュースは SPA から出ていないが,2,800 億ドル,数十万の雇用という数字に度肝を抜かれた。Vision Fund を超えようという意図?
     当サイトは,ただいま リャドから最新の報道を日本語でお届けしています (笑)
    ──────
     アメリカでエチレン・プラントを建設することにどういう意味があるか?
     わざわざ特記することには どういう意味が?
     私見によれば,これは トランプ大統領が この件でかなりの譲歩を行なったとみられる。
     サウジがアメリカに石油プラントを建設すると,すぐに問題になるのは,原油をどこから調達するか?
     アメリカには豊富な原油 (たとえばアラスカにも,シェールも) あるから,アメリカ・ファーストならば アメリカ産原油を使ってもらいたい。しかし,サウジとしては 当然ながら サウジから輸出した原油を使いたい。原油コストがアラスカとサウジでは全然違う。ここがどうなるかが問題で,トランプさんはこれまで アメリカ原油派だった。おそらくここを変えたのでしょう。両国の協調を重視した。
     サウジとしては,原油から石油化学製品まで,上流から下流まで一貫して事業ができるようになれば,非常に心強い。(石油化学の基本である) エチレンを生産できれば,さらに下流の消費者製品にまで手を伸ばせる。かなり時間は掛かるが,これがサウジの念願である。
     方向としては,SVF (Vision Fund) にマイナスかな。
     エチレン・プラント および その将来の拡大に投資する資金が必要。当然,その計算も副皇太子が終えているはず。$2,800 億の一部。
     正直言って,ここまでトランプさんが譲るとは意外でした。第3国に対抗するためでしょう。
     SoftBank としてできることと言えば,サウジのアメリカでの今後の石油化学事業を側面から援護することが考えられる。ここがうまく行けば,プラスに変えられるだろう。具体的には すぐには 分からないが。
    ──────
     サウジにとって もう1つ重要なのは,サウジ法案の懸念が弱まることである。
     (主としてアメリカで) 数十万人の雇用を保証して $2,800 億規模の経済協力を認めた大統領が,サウジ法案に賛成の立場は取りにくい。大統領は,ここでも 従来の方針を変更せざるを得ない。したがって,サウジとしては,単独で (SVF を経由せずとも) アメリカに直接に投資できることになる。これは大きなメリットである。だから 拠出額を明示しないのかな。

  81. Workshop on "Saudi-US Relations" held in Riyadh
    "サウジ-アメリカ関係" に関するワークショップがリヤドで開催される。
    Saudi Press Agency,2017/05/20 @12:44 (Local), @18:44 JST
    "サウジ-アメリカ関係" に関する第3回ワークショップが本日当地で開催された。これは,"Saud Al-Faisal 王子 外交研究所" により組織された。多数の関係者,研究者,学者が参加した。
     今回のワークショップは,研究所の Dr. Abdul-Karim Hamoud Al-Dakhil 所長のスピーチにより始まった。同氏は アメリカからのゲストと 外務省からの参加者;Shura Council;多数の政府機関;Saud Al-Faisal 王子外交研究所 および サウジの複数の大学の参加を歓迎した。
     ワシントンの中東政策評議会の理事長 Richard Schmierer は,そのスピーチで このワークショップを 王国とアメリカ合衆国の間の友情と深い根を持つ関係の証であると述べた。
    以下,中東各国の首脳の到着が 細切れに 続々と報道されている。しばらく これが続くのだろう。
     誰が到着し,誰が空港に出迎えたかを いちいち細かく報道することは,非常に重要らしい。
     現在のところ,No. 29 まであるよ(笑)。20:23 (local)= 02:23 (JST)
     アブダビ (No. 27),アフガニスタン (No. 28),クウェート (No. 29) ・・・ といった調子で続々。
     インドネシア (No. 33), ニジェール (No. 34)
     世界中からアラブ関係者が大集合するみたい。深夜にならないと会議が始まりそうにありません。
     考えてみれば,アラビア語圏というのは広いんだ!
     全体会議が行なわれるのは 明日とのこと。

  82. US President Arrives in Riyadh
    アメリカ大統領がリャドに到着
    Saudi Press Agency,2017/05/20 @08:46 GMT; @11:46 Local; @17:46 JST
    アメリカ大統領は Faisal bin Bandar bin Abdulaziz 王子,リヤド市長 兼 Khalid bin Salman bin Abdulaziz 王子,アメリカ駐在サウジ代理大使の出迎えを受けた。
    大統領の到着の際には,その歓迎として数発の祝砲が撃たれ,子どもたちがバラの花束を国王とアメリカ大統領に捧げた。
     宮殿での短い休憩の後,国王は 大統領と共に王宮での公式の式典に臨んだ。
     アメリカ大統領には アメリカ・ファースト・レディ Melania Trump;Rex Tillerson 国務長官;Wilber L. Ross 商務長官;Reince Priebus 大統領首席補佐官兼ホワイトハウス・チーフスタッフ;Jared Kushner 大統領補佐官兼上級顧問;Ivanka Trsump アメリカ・ファースト・ドーター兼大統領顧問;Stephen Bannon 大統領補佐官兼ホワイトハウス主席戦略官兼顧問;Cristopher Henzel サウジアラビア王国アメリカ大使館代理大使 および 数多くの関係者が同席した。

  83. Saudi Aramco's valuation reportedly off by $500 billion, or roughly Amazon and Netflix combined
    サウジアラムコの評価は,報道によれば $5,000 億 ── ざっと アマゾン+ネットフリックスの時価総額 ── ほどのサバを読んでいる。
      CNBC,2017/04/24
      By Christine Wang
      サウジアラビアの Mohammed bin Salman 副皇太子は,アラムコが 2 兆ドル相当の値打ちがあるとこれまで言っている。
      だが アラムコの評価は $1.5 兆に近い … と Wall Street Journal が内部文書 および この件をよく知る複数の人を引用して報道した。
      この食い違い $5,000 億は,アマゾンとネットフリックスの時価同額の合計を僅かに超える。
    サウジ副皇太子,国防相,経済開発評議会議長 Mohammed bin Salman.
    Fayez Nureldine | AFP | Getty Images)
     サウジアラムコに 2兆ドルもの値打ちは無い … と Wall Street Journal は,大いに期待されている同社の上場に詳しい複数の人の言葉を引用して伝えた
     サウジアラビアの Mohammed bin Salman 副皇太子は,アラムコが 2兆ドルの評価で上場する予定であると これまで言っている。しかし, 情報筋は WSJ に対して,アラムコ上場の作業を行なっている関係者が その数字に合うモデルの草案を作成できていない … と告げた。
     最も条件の良い税率 [何の税率?↓] を想定した場合でも,作業に係わっている人たちは 約 1.5 兆ドルまでしか出せなかった … と WSJ は,閲覧した内部文書とこの件に詳しい複数の人の言葉を引用して書いている。
     もしも これが正しければ,当初の 2兆ドルという数字は,アマゾン+ネットフリックスの時価総額の合計を僅かに上回る程度にサバを読んでいたことになる。言い換えると,$5,000 億の差は マイクロソフトの時価総額を僅かに下回る。
     サウジアラムコは,CNBC からのコメント要請に即答しなかった。
     先月 ロイターは,ファンド運用者と機関投資家が (アラムコが 5% の株を売却する場合) アラムコの市場評価を $1~1.5 兆とする調査結果を報道した。先月,サウジアラビアは アラムコに対して減税措置を取った。或るアナリストによれば,これにより アラムコの評価が 約 1兆ドル増えたはずだと言う。
     このニュースは ソフトバンクと関係ありや/なしや? クイズです(笑)
    これまでの報道でご存じと 思いますが 念のため。
     例の "軟銀願景基金" に支出予定とされている $450 億の元手は,アラムコ上場により手に入る予定のお金です (知らんかった? でも 毎年赤字連続のサウジで,お金はどこからか沸いて来るはずはありません)。
     これまで 2兆ドルの 5% 程度を上場すると伝えられている。
     これが 1~1.5 兆ドルに減ると,その 5% は? 大したこと なさそうか?
     そうじゃろ,そうじゃろ! 株価は 今日も がんばっとるけん。
    ──────
     もともと 2兆ドルという評価には疑問が持たれている。2016/05/17 のロイター記事 (↓) には
     サウジアラムコの評価として,
      しかし銀行筋などの間では,アラムコの評価額は配当政策や政治リスクなどに左右されるとして,副皇太子の試算に懐疑的な声が出ている。米フォーリン・リポーツは,精製施設や石油へのアクセス保証などを除くアラムコの市場価値を 2,500億 ~ 4,600 億ドルとするアナリストの試算を示した。いずれにせよ,PIF が海外市場で動かせる金額は当面2兆ドルを大幅に下回り,サウジの財政への寄与も限定されそうだ。
     これの 5% だったら … 書くまでもない。

  84. Saudi Ambassador to the UK: Saudi Arabia's security and prosperity is also the United Kingdom's security and prosperity
    UK 駐在サウジ大使が UK に:サウジアラビアの安全保障と繁栄は,連合王国の安全保障と繁栄でもある
    Saudi Press Agency,2017:04/06 @17:12 GMT
    連合王国駐在のサウジ大使である Mohammed bin Nawas bin Abdulaziz 王子は,サウジアラビア王国の安全保障と繁栄は,連合王国の安全保障と繁栄であることを強調した。
     本日発表された声明で Mohammed 王子は,Theresa May 英国首相のサウジアラビア王国訪問は,歴史上重要なこの時に 双方の歴史的友情を強化し,双方の関係を再活性化した … と述べた。
     "連合王国はブレクシットを通して,サウジアラビアは Vision 2030 を通して,両国が新しい1章に取り掛かる時,英国首相の訪問は,我々が 共に変化の道を歩むことを示した。連合王国とサウジアラビアは重要な戦略的パートナーであり,安全保障からテロリズム,交易,投資,教育,女性のスポーツに到るまで,首相の訪問の間に議論された広範な問題は,両国の間の関係の強さと深さを物語る。" … と王子は続けた。
     現在 サウジアラビアには 既に 700 の英国企業がおり,議論は,我々の交易,ビジネス および 投資のつながりを (王国の Vision 2030 を通じて) 広げ かつ 深めるために存在する 多くの機会に集中した。サウジアラビアは また,Vision 2030 が規定する我々の目標に参加するとの連合王国が与えたコミットメントを歓迎し,その結果の達成に共同作業することを期待する。両国は テロリズムと戦うとのコミットメントを再確認し,サウジアラビアが この不確かで不安定な地域における強い安定した影響力を持つ存在であることを保証する重要性を集中して議論した。" … と UK 駐在のサウジ大使は述べた。
     Mohammed 王子は最後に,英国首相の訪問の成功を足掛かりにして,両国の作業を続けるために 高いレベルの訪問 (複数) を向こう数ヵ月間に期待する… と述べた。
    やはり,英国とサウジが協力すれば,互いに大きな力になる。
     ここでは アメリカのシリア爆撃を予想するかのように「安全保障」が強調されている。
     安全保障まで言われちゃったら,国連安全保障理事会の常任理事国であるイギリスは強い。
     日本政府もソフトバンクも出る幕はない。

  85. UK Prime Minister Leaves Riyadh
    英国首相がリヤドを去る。
    Saudi Press Agency,2017:04/05 @15:59 GMT
    Theresa May 英国首相と同行代表団は,今晩リヤドを離れた。
    サルマーン国王空軍基地で,首相は Mohammed bin Nawaf Al Saud 王子,英国駐在サウジアラビア大使,商業投資相 Dr. Majed Al Qasabi および サウジアラビア駐在英国大使 Simon Collis に見送られた。
    SPA という報道機関の報道の仕方は,普通とちょっと違う。
     小さなニュースにして細切れにたくさん流す。
     誰がその場にいたかを逐一書こうとする。空港の見送りに誰が来たかまで。
     たぶん それが重要とされるお国柄なのでしょう。
     だから 余計に ・・・ 。

  86. UK Prime Minister Visits The Saudi Stock Exchange (Tadawul)
    英国首相が,サウジ証券取引所を訪問する。
    Saudi Press Agency,2017:04/05 @15:53 GMT
    サウジアラビア王国訪問の一環として Theresa May 英国首相は,サウジ証券取引所 (Tadawul) を訪問した。これには 商業投資相 Dr. Majed Al Qasabi が同行した。
     取引所では,Mohammed bin Nawaf Al Saud 皇太子 (英国駐在サウジ大使), Mohammed bin Abdullan Al Jadaan (財務相) および Tadawul CEO Khalid Al-Hussan の出迎えを受けた。
     この訪問で,英国首相 および 同行使節団と サウジ政府側の代表者との会合があった。サウジ側の出席者は,サウジアラビア金融機関支配人;Dr Ahmed Abdulkarim Alkholifey (資本市場機関 副総裁);Mohammed bin Abdullah Al Quweiz, Saud bin Khalid Al-Faisal 王子 (サウジアラビア一般投資法人支配人); ならびに 民間セクターからの代表者である。この会合では,両国の間の経済的提携の促進と さまざまの分野での協力の機会が議論された。
     ロンドン証券取引所の Xavier Role CEO とサウジ・アラビア駐在の Simon Collis 英国大使は,この訪問のあいだ 英国首相に随行した。

  87. Custodian of the Two Holy Mosques holds official talks with British Prime Minister and grants her King Abdulaziz Sash
    2聖モスクの庇護者が英国首相と公式会見を行ない,Abdulaziz 王のサッシュ [飾り帯] を授与する
    Saudi Press Agency,2017:04/05 @15:22 GMT
    2聖モスクの庇護者 Salman bin Abdulaziz Al Saud 国王は,当地の Al-Yamamah 宮殿において 本日,Theresa May 英国首相と公式会見セッションを行なった。
    会見に先立ち,2聖モスクの庇護者は 英国首相に Abdulaziz 王のサッシュを授与した。
     その後,両国の相互関係のレビューが行なわれ,友好関係にある両国のあらゆる分野における協力 ならびに この地域の国際的状況の発展に加えて その開発を強化する方法が議論された。
     この会見に同席したのは,Bandar bin Faisal bin Abdulaziz (リヤド地域知事);Miteb bin Abdullah bin Abdulaziz 王子 (国家防衛相);Mohammed bin Nawaf bin Abdulaziz (英国駐在サウジ大使);Mohammed bin Aalman bin Abdulaziz 副皇太子 (第2副首相兼国防相);Dr. Musaed Al-Aiban (国務相);Dr. Ibrahim Al-Assaf (国務相);Dr. Majid Al-Gasabi (商業投資相,今回の英国代表団の公式ガイド);Dr. Adel Altoraifi (文化情報相);Adel Al-Jubeir (外務相);Mohammed Al-Jadaan (財務相) である。
     英国側からは,サウジアラビア駐在英国大使 Simon Collis および 数多くの上級関係者が出席した。

  88. British Prime Minister Receives Supervisor of Public Investment Fund
    英国首相が,公共投資基金 (PIF) の支配人を迎える
    Saudi Press Agency,2017:04/05 @12:14 GMT
    Theresa May 英国首相は 本日,リャドの滞在先に PIF の支配人 Yasir bin Othman Al-Rumayyan を迎えた。
     両者は,両国の間の経済 および 投資の協力について協議した。
     Dr. Majed bin Abdullah Al-Qasabi 商業投資相と Simon Collins サウジアラビア駐在英国大使が同席した。

  89. Deputy Crown Prince Meets with British Prime Minister
    副皇太子が英国首相と会見する
    Saudi Press Agency,2017:04/05 @22:25 GMT
    Mohammed bin Salman bin Abdulaziz 副皇太子 (第2副首相 兼 国防相) は,本日当地で Theresa May 英国首相と会見した。
    この会見を通じて 両者は,この地域における安全保障と安定性 ── 特にテロリズムとの戦い ── を達成するために両国が行なっている努力 ならびに この地域の最近の発展に加えて,両国の間の相互関係と その強化策を議論した。
     この会見には,Mohammaed bin Nawaf bin Abdulaziz 王子 (連合王国駐在サウジ大使);Dr. Majid bin Abdullah Al-Qasabi (貿易投資相);Adel binAhmed Al-Jubair (外務相) および 数多くの関係者が同席した。

  90. Crown Prince, UK Prime Minister Discuss Ways of Enhancing Bilateral Relations between the Two Countries
    皇太子と英国首相が,両国間の相互関係を強化する方策を議論する
    Saudi Press Agency,2017:04/04 @13:59 GMT
    Mohammed bin Naif bin Abdulaziz 皇太子 (副首相と内務相を兼任) が,本日 英国の Theresa May 首相と会見した。
    この会見では,両国の相互関係をレビューし,あらゆる分野にわたってこの関係を強化する方策を議論した。さらに,過激主義と戦い,テロリズムと戦う協力についても議論した。
     会見には 数多くの関係者が出席した。

  91. British Prime Minister arrives in Riyadh
    英国首相がリャドに到着
    Saudi Press Agency,2017:04/04 @12:13 GMT
    英国の Theresa May 首相 および 同行使節団が サウジアラビア王国訪問のため,本日当地に到着した。
    首相は,サルマーン国王空軍基地空港で Faisal bin Bandar bin Abdulaziz 王子 (リャド地区市長),Mohammed bin Nawaf bin Abdulaziz 王子 (英国駐在サウジ・アラビア大使),商業投資相 Dr. Majed Al-Qasabi, Simon Collis (サウジアラビア王国駐在英国大使) ほか 多くの関係者の出迎えを受けた。

  92. UPDATE 1-British PM, stock exchange chief woo Saudi sovereign fund
    英国首相と取引所のトップが,サウジのソブリン基金を口説く。
    Reuters,2017/04/06 @12:31 am IST (インド標準時)
    By Katie Paul
    イギリスの Theresa May 首相とロンドン証券取引所 (LSE) の CEO が,リャドを2日間訪問する中で,4月5日(水),英国への投資を サウジアラビアのソブリン基金 (SWF) に持ち掛けた。
    メイ首相は その後 サウジのサルマーン国王と面会し,連合王国が EU から離脱する準備の中で,英国にとって中東最大の交易相手との交易 および 安全保障を含む複数の問題を協議して,同日 リャドを去った。
     首相府のスポークスマンによれば,May と Xavier Role は,サウジ公共投資基金 (PIF) の Yasir al-Rumayyan に "高いレベルの投資の機会の鳥瞰図を提出した"。
     LSE ならびに 世界のその他の証券取引所は,国家石油企業 サウジ・アラムコ の世界最大と見込まれる IPO にありつこうと躍起である。
     サウジアラビアは,最大 5% を上場する前に,アラムコの株を PIF に移管する計画である。そのため,PIF が 各地の取引所との協議で 要の位置を占める。
     2018 年と予想される IPO は,約 $1,000 億に達すると見られる … とサウジ関係者は言う。おそらく,複数の取引所で上場されるだろう。
     PIF は また,外国への大型投資で そのプロフィールを広げている。その中には,日本の SoftBank と作る世界テック基金 Vision Fund への 最大 $450 億の約束が含まれる。
     サウジの当局者は昨年,アラムコ株の移管の後,PIF が $1,600 億から $2 兆に拡大すると見込んでいると言った。これにより PIF は世界最大の SWF となるはずである。
     PIF は これまで英国企業に直接投資を行なっていないが,SoftBank は 英国チップ設計会社 ARM の $80 億の権益を Vision Fund に移す計画を検討中である。
     帰国に際して May 首相は,英国が サウジアラビアの "Vision 2030" の確固たる支持者であり,これを野心的改革プランであると形容した。
     首相府から出された声明によれば,"さまざまのセクターに亘る世界のリーダーとして,連合王国は サウジアラビアが これらの肝要な改革を行なうのを助ける良い位置にいる。" … と首相は言った。
     声明は,Phillip Hammond 財務相,Liam Fox 国際交易担当国務相,Boris Johnson 外務省が 向こう数か月以内に王国を訪問する予定であると言う。
     防衛事務次官 Stephen Lovegrove も,王国を来月訪問し,サウジの防衛改革を議論する。これは,英国が援助を約束してきたことである … と声明は言う。
     ストックホルム国際平和研究所によれば,サウジアラビアは,これまで 英国の武器輸出の最大の受け入れ先であった。
     中国とロシアの軍事企業は,サウジ市場への足場を掴もうと躍起である。
    こちらは,やや軍事色が残っている。
     それにしても,これから3人の重要閣僚が相次いでサウジを訪問するというのだから,メイ首相としては大成果であろう。

  93. Custodian of the Two Holy Mosques leaves Japan after official visit
    2聖モスクの守護者が公式訪問を終えて,日本を去る
    Saudi Press Agency,2017/03/15, @06:03 GMT
    2聖モスクの守護者 Salman bin Abdulaziz Al Saud 国王が公式訪問を終えて,本日 日本を去った。
    東京の羽田国際空港を去るにあたり,2聖モスクの守護者は,日本の徳仁皇太子 および その他の関係者に見送られた。
     2聖モスクの守護者は,数多くの皇子と政府関係者と共に日本を去った。
    [2017/04/04] 上のリンクから SPA のサイトに行き,"SoftBank" で検索してみましょう。
     見つかるのは,2016/10/14 の記事が最新です。
     少なくとも 公式には,何の進展もありません。もう半年近くなります。
    サウジの国営報道機関は,到着から離日まで 数多くのニュースを本国に送っている。30 件くらいはあるだろうか? 首相,天皇との会見・謁見から トヨタ自動車との MoU まで盛り沢山である。
     さぞ お忙しかったことでしょう。
     こんなことをなぜ ほじくりまわるのか? もうお分かりでしょう (笑)
     日経が伝えた ソフトバンク社長会見のニュース 「孫社長,サウジ国王と会談 投資ファンドを説明 (2017/03/14 23:05) 」は,サウジ側のニュースには全くありません。不遜ザイ!(笑)
     これだけ 国王の日本訪問を詳しく伝える国営通信が,ソフトバンク社長との謁見記事を省くのは,なんだかおかしいですね。だって,虎の子の $450 億をソフトバンクに預金するんですからね。
    日経電子版 2017.03.14 に掲載された写真。
    サウジ国営通信は,このような報道をしていない。
    下の写真と比べてみて下さい (笑)
     日経記事には 珍しく "借りてきた猫" のような写真が載っているから,疑いようがない … とは思うけど,写真もこの頃は合成できるからね (笑)
     最初の5分くらいはサウジの記者を入れて,オープンな会見になぜ しなかったのか? というギモンが生じる。
     まぁ いずれにせよ,サウジでは (いゃ日本を除く世界では) 日経が伝えた謁見は,存在しなかった。
     とにかく,サウジの国営メディアが書かないことが重要で, 謁見があろうが無かろうが,今ではどうでもよい!
     書かないというのであれば,軟銀願景基金への出資も 流れたんじゃないの?
     日経さん,ソフトバンクの提灯持ち ご苦労さん。 (笑)
    ──────
     付け加えると,SPA は 中国からも膨大な量のニュースを送っており,中国に寄せるサウジの期待の強さを窺わせる。(逆に言うと, ソフトバンクに寄せる期待の弱さを窺わせる?)
    写真による研究 (?)
    [産経新聞,2017/03/15 @08:46]
    サウジアラビアのサルマン国王を会談後に送り出すソフトバンクグループの孫正義社長=14日, 東京都千代田区
     
     [こちらの写真では,81 歳のサルマーン国王が都内のホテルに孫社長の許へ 杖をついて (?) 出向いた?!らしい。何しろ,飛行機のタラップを降りるにも,特製のエスカレーターをサウジから運ばせた国王である。
     異例中の異例です。社長から説明を直に聞きにご老体がわざわざ?
     常識的には,孫さんがご滞在中の迎賓館へこちらから伺います … と言ったけど,国王が自分からどうしても話したいことがあったので … じゃないの? どう思いますか? 年寄りというのは, 気がせくと どうしようもない。とめられなかった。でも, 81 歳の国王がわざわざ話に来る必要がある件とは?
     しかも この会見は非公開! なぜ サウジ側の記者まで締め出す必要があったのか?
     しかも,この会見をサウジ国営通信は報道しない。
     しかも,このニュースは 日本限定の特ダネである。
     英語のニュースは,ロイター1社が会見予定を流したのみ (得意のリーク)。
     会見後の報道は,なぜか 日本限定である。英語ニュースは無い。]
    都知事のツイッターには,こんな写真もある。
    「教育, 女性, 環境など, 話が弾みました。」… と書かれている。
    "借りてきた猫" の写真とは大違いです (笑)
     SPA (Tokyo), 2017/03/13, @06:17 GMT.
    「リャドと東京の多くの分野での協力について話し合った。
    サウジと日本の関係者が数多く同席した。」
     一方,サウジ国王と 小池百合子都知事の会談を SPA は この写真入りで報道している。
     なお SPA は,一般に 報道に写真をあまり使わない。安倍首相にも写真を入れていない。
               写真研究からの当サイトの結論:
     ソフトバンクさん,蛇の生殺しのようなことはやめにして,現在の状況を素直に告白せよ!
     まだ話がまとまらないのなら,どのあたりまで行ったかを漏らせばよい。リークはお得意でしょ (笑)
     たぶん,それができないのは, サルマーン国王が わざわざ丁寧にお詫びに来たからかもしれない。おそらく,今回の訪問の重要な目的の1つだったのだろう。そうでなければ,民間企業のトップと単独会見などするはずがありません。既に皇太子を通じて知っている話をあらためて聞きにわざわざ 81 歳の国王の方から杖までついて出向いたなどとは考えられない。
     社長さんの硬い表情がそれを物語る?(謁見を喜ぶ都知事とは大違い)。覚悟していたこととは言え,正式に言い渡されたのか。
     膝の上の指がバラバラのおかしな並び方である。普通は,指をそろえるでしょう。国王とのツーショットですよ。どうやったら こんな風に指を置けるのか。やってみたが ほとんど不可能である (笑)。たとえば,右手;4本ぴったりで,小指だけを大きく開きます。無意識にしかできないことである。
     だったら,それもそのまま正直に発表すればよい。先方の意向が変わりました … って。
     今さら $1,000 億ファンドが潰れたなんて発表できない? そこが大間違い。
     $1,000 億なんて投資を SoftBank はこれまで手掛けたことが無い。これで 何兆円も儲かると舞い上がっている株主さんはいっぱいいるらしいけど,インドでの実績を見ればその反対。10 兆円なんて運用すれば,何兆円もの損失を重ねる可能性が大きい。だから 軟銀願景基金は取りやめました って発表すれば,投資家は安心して株価は上がるんじゃないの? 灰汁抜けはまだか?
    ──────
     … と書いたが望み薄か?
     英語のリリースには "non-binding MoU (法的拘束力の無い覚書)" と明記されているところを日本語のリリースでは 単なる "覚書 (おぼえがき) " としている (法的拘束力は無いから,サウジから解消しても通知の義務は無い。サウジ国王は 日本政府・財界との将来を考えて,通知の必要があると考えて,自ら足を運んだのであろう)。こういう不誠実なことをする確信犯的企業に期待するのは無理か。
     以前からどうもよく分からないのは,この会社が (おそらく日経とグルになって) 必死で (笑)株主に損をさせよう 孫をさせようとしていることである。いわゆる「信者グループ」は,これに協力を惜しまない。売りで儲けている人を喜ばせるだけである。… とすると 不誠実の理由が理解できるのか?
    ──────
     もちろん,これには正反対の見解もあり得る。
     軟銀願景基金によろしくお願いします … というので 81 歳の国王が わざわざ杖をついて ホテルで待ち受ける孫さんを訪問した。
     サウジ法は通ったけれども,あんなものは問題にしていない。裁判に負けるはずがない。3,000 人を超える犠牲者の遺族が たとえ 10,000 人 束になって訴訟を起こしても構わない。
     トランプ大統領は あの法案が自分のところに来ればすぐに署名する … なんて選挙の時には言っていたらしいが,ぜ~んぜん怖くない。だって,まだサインしていない。
     一方,単独で Uber に昨年6月投資したけれども,大失敗だったらしいということが最近判明した。ここはソフトバンクの孫社長の目利きにお願いして,サウジの非石油資産を増やしていただきたい。FIG とか Intelsat では,買収の際に情報漏れがあったようだが,インサイダー取り引きなんてのも怖くはありません。 どうかよろしくお願いします。
     要するに,自分で投資判断をできないサウジが ソフトバンクの孫社長を投資の目利きと見込んで頼み込んで来た … というシナリオです。
     米英の歴史の古い投資ファンドを頼むのが本来ですが,それでは利回りが低すぎる。国の財政は大幅な赤字なので,かなり高い利回りが要求されているのです (ロイター記事)。そういう意味では,長期的に見てやや焦っている。ここで,ソフトバンク 孫社長の言う 複利計算で「年率 +43% という実績」は魅力的に映るのでしょう。
     でもね,年率 43% の投資信託を買う人がいるでしょうか?
     年率 43% ということは,2年で 2.045 倍,4年で4倍,6年で8倍,8年で16倍,複利計算とは恐ろしいもので,10 年で 32 倍です。20 年では 1,024 倍になる。
     ソフトバンクの株価も これと同様に上がるならば,10 年後には \256,000,20 年後には \8,192,000 となります。もちろん 1株の株価です。100 株ではありません。
     20 年後まで 手放さない人は 100 株が 8.2 億円になります。億万長者が続出します。
     その時の時価総額は?
     社長さんは 2040 年に 200 兆円だから 株を売るな! と言って回っているらしいが,控え目もいいところ
     10 年後の 2027 年に既に 200 兆円を超えて,283 兆円,
     20 年後の 2037 年には 9,042 兆円になります。すごいよ! ソフトバンク。
     ちなみに 現在の日本の国債の発行残高は 1,062 兆円です。

  94. Custodian of the Two Holy Mosques arrives in Japan
    2聖モスクの守護者が日本に到着する
    Saudi Press Agency,2017/03/12, @10:59 GMT
    2聖モスクの守護者 Salman bin Abdulaziz Al Saud 国王が公式訪問のため,本日 日本に到着した。
    国王は,東京の羽田国際空港で日本の徳仁皇太子,サウジの日本駐在 Ahmed Younis Al-Barrak 大使 および サウジ大使館員らの出迎えを受けた。
       < 原報は,7枚の写真を交えて 歓迎の様子を伝えている >

  95. Saudi wealth fund PIF said to consider stake in Six Flags
    サウジの政府基金 PIF がアメリカの Six Flags の権益を検討中とのウワサ
    Bloomberg - Gulf News,2017/02/09 @18:54
    サウジアラビアの公共投資基金 (PIF) は $2兆の投資巨人へと拡大中であるが,事情に詳しい複数の人によれば,アメリカのテーマ・パーク運営会社 Six Flags Entertainment Corp の権益の買収を検討中である。
     PIF という名前で知られる政府系基金は,テキサス州に拠点を置くこの企業にサウジで初のアトラクションを開いてもらう交渉を始めたことを受けて,投資についても初期段階の検討を行なっている … とこれらの人が言った。ただし 協議が非公開であることを理由に名前を明かさないよう求めた。合意はまだ達せられておらず, 非公式の協議は取り引きに至らないかもしれないと 彼らは言う。
     Six Flags のニューヨークの株価は,水曜日の 午後1時53分の時点で +1.7% 高の $60.84 をつけ,時価総額は約 $56 億となった。この銘柄は,火曜日までの1年間に +24% 上がっている。
     Six Flags は,ウェブサイトによれば,全米,メキシコ,カナダに 18 のテーマパークを持ち,売り上げは $13 億である。同社は,リャド,ジェッダ,紅海リゾートを含むサウジ・アラビアに テーマ・パークの場所を探している … と昨年11月に James Reid-Anderson 議長が言った。この計画は,Mohammed Bin Salman 副皇太子と Six Flags の John Duffey 総裁との間で昨年6月にアメリカで行なわれた会談を受けたものである。
     サウジアラビアは,(石油への依存を断ち切り,経済を立て直す) Vision 2030 計画の一環として,エンタテインメント業界への投資を許すよう規則を緩和しているところである。2020 年までに,王国は 450 以上のクラブを作り,多様な文化活動とイベントを提供する計画である。さらに,レクリエーションへの家計の支出を倍増して 6% にすることを目指している。
     PIF のスポークスマンからは,コメントをもらえなかった。Six Flags の広報担当者には 何度も電話したが応答が無く,コメントを求める E-メールにも返信が無い。
     中東は,ライセンスによる売り上げを伸ばそうとする アメリカのエンタテインメント企業にとって 格好の場所となった。ドバイの [世界最大の] 室内テーマ・パーク IMG Worlds of Adventure は 昨年オープンし,そのアトラクションはタイムワーナーの Cartoon Network ならびに ウォルト・ディズニーの Marvel Super Heroes と提携している。SeaWorld Entertainment Inc は 昨年12月,アブダビの投資会社 Miral と提携して, 海のテーマ・パークをアブダビに建設すると発表した。
    この記事には,いろんな意味で驚かされる。
     ただし 検索した限りでは,今年2月9日付のこのニュースに 続報がありません。

  96. In partnership with Public Investment Fund, SoftBank Group Corp. to Establish SoftBank Vision Fund
    PIF と提携して,SoftBank Group Corp が SoftBank Vision Fund を設立する。
    Saudi Press Agency,2016/10/14, @21:33 GMT (リヤド)
    With a strategic partnership with the Public Investment Fund of the Kingdom of Saudi Arabia, SoftBank Group Corp. (“SBG”) today announced that it will form SoftBank Vision Fund (tentative name) (the “Fund”).
     サウジアラビア王国の PIF との戦略的提携により,SoftBank Group Corp (以下 "SBG") は 仮称 SoftBank Vision Fund (以下 "Fund") を設立すると本日発表した。
    The Fund intends to make investments in the technology sector globally. The Fund will be managed in the United Kingdom by a subsidiary of SBG and will deploy capital from SBG and investment partners. The Fund will aim to be one of the world’s largest of its kind.
      SBG expects to invest at least USD 25 billion over the next 5 years. SBG has concluded a non-binding memorandum of understanding (“MOU”) on October 12, 2016 with the Public Investment Fund of the Kingdom of Saudi Arabia (“PIF”), under which PIF will consider investing in the Fund and becoming the lead investment partner, with the potential investment size of up to USD 45 billion over the next five years. In addition, a few large global investors are in active dialogue to join SBG and PIF to participate in this Fund. The overall potential size of the Fund can go up to USD 100 billion. SBG will use its deep operational expertise and network of portfolio companies in order to add value to the Fund’s investments.
      Deputy Crown Prince Mohammed Bin Salman, Chairman of PIF, commented as follows:
     “The Public Investment Fund is focused on achieving attractive long-term financial returns from its investments at home and abroad, as well as supporting the Kingdom’s Vision 2030 strategy to develop a diversified economy. We are delighted to sign this MOU with SBG given the long history, established industry relationships and strong investment performance of SBG and Masayoshi Son.”
     Masayoshi Son, Chairman & CEO of SoftBank Group Corp., commented on the establishment of the Fund as follows:
     “With the establishment of the SoftBank Vision Fund, we will be able to step up investments in technology companies globally. Over the next decade, the SoftBank Vision Fund will be the biggest investor in the technology sector. We will further accelerate the Information Revolution by contributing to its development.”
     Rajeev Misra, Head of Strategic Finance, SoftBank Group, is leading the Fund project for SBG. SBG has engaged former Deutsche banker Nizar Al-Bassam and ex-Goldman partner Dalinc Ariburnu for the project. PIF also had its own team of experts engaged.
    この文書は,ソフトバンクの 2016/10/14 発表に対応する サウジ側の公式発表文書である。
    おそらく これは (細部まで突き合わせていないが) SoftBank の英文リリースと同文であり,ここでも non-binding MoU (非拘束の覚書) を交わしたことが明記されている。
     (ソフトバンクの日本語文書しか読まない) 日本の投資家だけが これを知らされていない。
     下にも 礒川剛志弁護士のウェブに書かれているように,効力を持つのは英語の文書であり,食い違いを持つ日本語の文書は無意味である。
     しっかし … ,非拘束の上に under which PIF will consider investing in the Fund (この MoU に基づき PIF は Fund への投資を検討する) んだからね。日本語の発表でなぜか「非拘束」を脱落させたのは 故意か偶然か;かなりの「誤訳」だと思うけどね。SoftBank は,いつになったら 訂正するのかな?
     なお "Saudi Press Agency (略称 SPA)" のアドレスが http://www.spa.gov.sa/ となっているので,ここは政府の広報機関と思われる。
    たぶん,今となってはどうでもいいことなんだろうけど (笑),この主文は
     『ソフトバンクが SoftBank Vision Fund を設立する意思を持つことを発表した』のであり,それは PIF との提携を踏まえている ということである。両者が合弁事業のようなものを発足させたのではない。あくまで 主役は ソフトバンクである。PIF が出資するかしないかは,これから検討する (さらにハッキリ言えば,PIF が出資するか否かとは無関係に SoftBank Vision Fund は設立されたのである)。
     これに対し,同日の日経電子版の主文は
     ソフトバンクとサウジ,IoT 覇権へ投資連合
     10兆円ファンドで関連産業囲い込み。
     ソフトバンクグループがサウジアラビアの政府系ファンドと共同で投資ファンドを設立する。

     となっており,これが「非拘束の MoU」に基づくなんて 全然書いてない。これを読めば,ソフトバンクとサウジが合同で基金を立ち上げ,サウジの出資は確定した事実であるかのようだ。
     おまけに
     あらゆるモノがインターネットとつながる「IoT」事業の構築に向け,孫正義社長は財布に巨額のオイルマネーを取り込む。
     この部分は, 明らかにソフトバンクから「こう書け!」と言われたんでしょ?
     そもそも サウジアラビアの "ビジョン 2030" は,日本の明治維新を思わせるような 高邁な理念に基づくものであり,財布がどうのこうのというミミッチイ話ではない。明らかにサウジを見下す書き方であるが,副皇太子の努力に対して 恥ずかしくないのか, 日経よ!
     5ヵ月前のことですから,今となってはどうでもよいことか。
    英文契約書の実務
     弁護士 礒川剛志
     1.世界共通言語としての英文契約書
     国際取引に際して如何なる言語を用いて契約書を作成するかは,原則として契約当事者の自由ということにはなります。
     もっとも,日本企業からすれば,日本語の契約書が良いということになる一方,ベトナム企業からすれば,ベトナム語の契約書が良いということになってしまいます。そのため,単に相手方企業がアメリカ企業なので英文契約書を作成するという場面だけではなく,両企業の母国語が異なる場合に両者が同等に理解できる英文契約書が世界共通言語として採用されるということになるわけです。結果,相手方企業が英語を母国語とする企業か否かを問わず,国際取引では英文契約書が利用されるケースがほとんどということになります。
     2.英文契約書の種類
     (1) 取引開始前に締結される英文契約書として以下のような種類があります。
     ① Non-Disclosure Agreement (NDA)
     Confidentiality Agreement というタイトルの場合もありますが,いわゆる秘密保持契約書です。
     例えば,日系メーカーが東南アジア企業に製品の製造委託を行なうことを検討する際,仕様書やサンプル等を開示して取引可能性を打診する。その際に,仕様書やサンプル等を他の目的に流用されないようにしたい … といった場面で利用されます。
     ② Letter of Intent (LOI)
     意向確認書や基本合意書と訳される書面です。例えば M&A の場面で,LOI を締結した上で,詳細なデューデリジェンスを行い,最終契約締結に至るといった使われ方をします。
     LOI については,特に binding か,non-binding かが重要であり,注意が必要です。
     すなわち binding ということになれば,その LOI は,両当事者を法的に拘束するものとなり,これに違反した場合には損害賠償責任が発生することになります。これに対して,non-binding ということであれば,あくまで紳士協定的な意味しか持たないことになります。LOI によっては,たとえば,一定期間に対する独占交渉権の付与や秘密保持条項等,特定の条項のみに法的拘束力を持たせるということもあります。
     ③ Memorandum of Understanding (MOU)
     日本語に翻訳すれば覚書ぐらいの訳語が適切かもしれませんが,正式契約締結前に既に決定済みの事項を規定する等の利用のされ方をします。法的拘束力については LOI と同じ問題があり,法的拘束力が無い場合には,議事録的な意味しか無いことになります。
    ──────
    これを分かりやすく 要約すれば,
     (1) 日本語の発表を信じてはならない。英語の発表だけが正しい。
     (2) binding と non-binding は天地の差であるから,これに気をつけよ。

  97. Deputy Crown Prince, CEO of Softbank Discuss Investment Opportunities in the Kingdom
    副皇太子と SoftBank CEO が王国への投資の機会について懇談する。
    Saudi Press Agency,2016/10/13, @14:27 GMT (リヤド)
    副皇太子 Mohammed bin Salman bin Abdulaziz, 第2副首相兼国防相は,SoftBank Corporation の 創立者兼 CEO 兼取締役会議長を 本日当地に迎えた。
    この会談で 両者は,王国ビジョン 2030 に従って提携を強化する方法と 王国への投資の機会を議論した。
    何となく違和感が感じられる短文ニュースである。
     「ソフトバンクがサウジ王国へ投資」… ですか。国営ニュース機関だから正確なのでしょう。
     これが そのまま 世界中に流れているわけだ。
     ひょっとして,ソフトバンクがサウジ王国へ投資するのと引き換えに,SoftBank Vision Fund に投資してもらえるの? だったら辞めといた方がよさそう。

  98. Saudi Arabian Public Investment Fund Invests $3.5 Billion in Uber
    サウジアラビアの公共投資基金 (PIF) が Uber に $35 億を投資する。
    Saudi Press Agency,2016/06/02 @22:49 GMT
    サウジアラビアの公共投資基金 (PIF), サウジアラビア王国の長期投資ソブリン部門と Uber は,PIF が Uber に$35 億を投資したと 本日発表した。
    今回の投資は,Uber の第8次資金調達ラウンドの一環であり,PIF の単一の国際投資としては,サウジアラビア王国が (王国の経済を多様化する包括的な計画である)「Vision 2030」を発表して以来,これまでにない最大規模である。この投資の一環として,PIF は Uber の取締役ポストを1つ得る。
     "当社のサウジアラビアにおける経験は,Uber が 如何に乗客, 運転者 および 都市の利益になり得るかを示す偉大な例である。当社は 当社事業に投じられた信任票を高く評価し,経済改革と社会改革を進める王国との提携に期待する。" … と Uber の共同創立者 兼 CEO Travis Kalanick が言った。
     Uber は 現在,中東と北米の9ヵ国 15 都市でサービスを行なっている。サウジアラビアでは,Uber はリヤド,ジェッダ,メッカ,メディナ および 東部州でサービスを行なっている。
     Uber is a technology platform that is evolving the way the world moves. By seamlessly connecting riders to drivers through its apps, Uber makes cities more accessible, opening up more possibilities for riders and more business for drivers. From its founding in 2009 to its launches in more than 400 cities today, Uber's rapidly expanding global presence continues to bring people and their cities closer.

  99. サウジアラビア「ビジョン 2030」
    サウジアラビア王国 (vision2030.gov.sa) ,2016/04/25
    慈悲あまねく慈悲深きアッラーの御名において。
    私がこの国家で目指す第1の目標は,サウジアラビアをすべての面における「先駆的かつ優れたグローバル・モデル」として成功させることです。そのために,国民と力を合わせて目標の実現に臨みたいと考えています。
     サウジアラビア国王 サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール=サウード2聖モスクの守護者
    はしがき
    Mhammad ・ビン・サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール=サウード
    経済開発評議会 議長
     サウジアラビアが向かっていくべき未来のビジョンをこうしてお伝えすることができ,非常に光栄です。
     本書では,それに向けた長期的目標と希望,および国家の強みと手腕を反映させた,野心的ながら地に足のついた計画の数々をご紹介します。
    以下 44 ページにわたり,サウジ・アラビアが 2016年4月に策定した「ビジョン 2030」が詳細に述べられる。
    この文書は,アラビア語, 英語, 日本語, 中国語で読める。上の緑色のリンクをクリックすると,日本語の PDF ファイルを読むことができます。
     "SoftBank Vision Fund" の前に この "Saudi Vision 2030" があったのです。
     この内容は非常に多岐にわたる膨大なものであり,経済や投資は 重要ではあるものの,その一部に過ぎません。日本を含め 世界中の人に知ってもらおうという副皇太子の熱意が溢れています。
     ── ところがところが 今では日本語の PDF は読めなくなっている。
      "SVpdf_jp.pdf" は見つかりません … とアラビア語で表示される。English なら読める。
      セーブしておかなかったのは 残念!
      SoftBank は サウジに見限られた (笑)
      ご縁が続いているのであれば,消してはならない重要な日本語ファイルである。

  100. Shifting Political Landscape in U.S. Prompts Saudi Arabia to Rethink Financial Strategy
    アメリカの変化する政治風景は,サウジアラビアに財務戦略の再考を迫る。
    Wall Street Journal,2016/12/16 (金), 11:07 am ET
    By By Justin Scheck, Maureen Farrell & Brody Mullins
    不確かなアメリカの政治気候の下では,サウジのソブリン基金は 投資を中止することもあり得る
    世界最大の石油製造会社 サウジ・アラムコは,取り敢えず IPO を来年 または 2018 年に
    設定した。この写真は,アラブ首長国連邦に近い「無人地帯」と呼ばれる砂漠の中の
    Shaybah 油田である。 (©Ian Timberlake | AFP | Getty Images)
    サウジ・アラビアは,その計画に係わる複数の人によれば,アメリカの政治風景の変化を理由に,数十億ドルに上るアメリカ投資戦略の見直しを行なっている。これには 国営石油企業の上場で他の国へ行くことも含まれる。
     2つの出来事が,サウジ高官 および 外部顧問による見直しを急かせた … とこの議論に係わった複数の人が言う。2つのうちの1つは,テロによる被害者がサウジ・アラビアを訴えることを許可する法案 [いわゆるサウジ法案] が成立したこと,もう1つは Donald Trump の当選である。
     サウジ・アラビアのソブリン基金は,この法案がどんな結果をもたらすかが判明し,ホワイトハウスの新しい教書がどうなるかを見るまで,アメリカへの投資を停止した … と基金の運用判断に詳しい1人が言う。
     世界最大の石油会社 サウジ・アラムコ (Saudi Arabian Oil Company) は 暫定的に 来年 または 2018 年に上場が予定されており,$1,000 億を越える金を集め,IPO の歴史に新記録を刻むものと見られる。この予想に 銀行が殺到し,その手数料は $10 億を越えるものと見られる。
     サウジ高官は どこに上場するかを決めていないが [注:日本も強い関心と報道] ,銀行家は,このような大型上場にはニューヨーク証券取引所が一番良いと言う。サウジ政府は,ロンドンを含むいくつもの証券取引所の関係者と面談を行なっている … と この過程に詳しい複数の人が言う。
     サウジ高官と投資家らは,サウジが 王国の巨額の公共投資基金からどのように金を投資するかを注視している。サウジ高官は,ソブリン基金を 効率よく 海外の非石油投資用の軍資金に変えようとしているのだという ── それが アラムコ上場からの手取り金と共に膨らむ金庫である。
     基金のスポークスマンは,テロ法の通過 および 基金がこれにどう反応するかについてコメントを拒んだ。サウジ・アラムコと NYSE は,IPO がアメリカ以外の国で行なわれる見込みについて コメントを拒んだ。
     サウジは,9月に成立した 2001 年9月11日 テロ攻撃の被害者に サウジ・アラビアを訴えることを許す連邦法に とくに 警戒心を抱いている。遺族らは,サウジ・アラビアが 9/11 攻撃者をサポートしたとして非難してきた;19人中 15 人がサウジ国籍である。 サウジ・アラビアは, 国として この攻撃と如何なる関係も否定している。 2004 年の独立 9/11 委員会による調査は,サウジ政府 または その関係者がテロリストを支援した証拠は無いと結論した。
     テロ行為に責任ありと判決を下されるという予想が,サウジ指導者に アメリカでの大型取り引きで資産が法廷の判断に委ねられると懸念させている … とサウジの投資計画に係わる複数の人が言う。
     サウジ・アラビアは,テロ法を負かす猛烈な作戦を展開して,ロビー活動を強化した。議会が バラク・オバマ大統領による拒否金発動を覆した後は,サウジ・アラビア側のロビー活動家は,議員らにその修正を迫った。ロビイストらは,それでは 余りにも広範な措置になり,外国の個人がアメリカを相手に訴訟を起こすのを促進するという予期しない結果を招きかねない … と言った。
     ロビイストらは,この法律が サウジ・アラビアのアメリカ投資計画を変更させるという悪影響も指摘した。サウジ・アラビアの対米投資戦略の変化は,今や 王国の広範な対米関係における交渉ポイントとなった。
     ワシントンの多くの人は,11月の選挙が終われば 議会がこの法律をソフトなものにするのではないかと期待していた。多数党の上院総務 (共和,ケンタッキー州選出) Mitch McConnell 上院議員は 9月に そう仄めかした。当時は,元国務長官 Hillary Clinton が選挙に勝つと予想されていた。ホワイトハウスは これについてコメントを拒んだ。
     しかし,議会のリーダーは,Mr. トランプの勝利以来,この法律に手を加えず,来年まで休会とした。おそらく この法律は これを変える関心を全く持たない議会と大統領に委ねられる。
     Mr. トランプは,この法案を執拗に (strident) 支持していた。彼は,Mr. オバマの拒否権を恥ずべきと呼び, "オバマ大統領在職中の最低点の1つとして沈没する" だろう … と言った。
    2016年9月,バーレーンのマナマで開催された 石油精製 および
    石油化学業界の見本市 "中東石油テック 2016" で アラムコのスタンドの
    脇に座る同社従業員。(©Hamad I. Mohammed | Reuters)
     オバマ大統領の拒否権を [2/3 以上の賛成で] 議会が覆す前,Mr. トランプは声明で言った: "もしも私が大統領に選ばれれば,私の机に届き次第 サインしよう。"   Mr. トランプは,コメントの要請に応じなかった。
     Mr. トランプは,自分がサウジ・アラビアの友人であると言い,サウジ・アラビアの長年の支持者である James Mattis 大将を 自分の国防長官に選んだ。だが 彼は,サウジへの軍事援助を問題視してきた人でもある。
     サウジ・アラビアにとって もう1つ面倒な可能性があるのは,Mr. トランプが アメリカの石油増産の信奉者であり,部分的に輸入を制限しようとしていることである。
     サウジの企業は アメリカの精油業者に権益を持っており,これを石油化学製品に拡大しようとしている。しかし,トランプの顧問 Harold Hamm は 石油会社 Continental Resources Inc の CEO であり,サウジ・アラビアがアメリカで石油化学プラントを持つことを許可すべきでない … と 最近 言った。その理由は,アメリカ産の石油を買わずに サウジの石油を輸入して処理するプラントを持つことにより,アメリカ事業の権益と衝突するからである。
     "彼らは 自分の石油だけを運び込む。そんなことを他には誰もしない。" … と Mr. Hamm は言う。選挙運動期間中,彼は Mr. トランプの エネルギー顧問のトップであった。"それは 我々がやる。許可すべきでない。"
     サウジ政府は,スポークスマンを介して,Mr. Hamm の声明にコメントを拒んだ。
    サウジアラビア,ダーランでのプロジェクトへのツアー期間中,
    "アブドゥルアズィーズ王 世界文化センター" の内部へ進む参加者 (今年11月)。
    完成すれば,このプロジェクトは サウジ・アラムコがさまざまの文化施設
    (講堂, 映画館, 図書館, 美術館, 公文書館) を収容するように設計されている。
    Simon Dawson | Bloomberg News)
     サウジ・アラムコの ニューヨーク上場は, 確定したものではなかったし,上場計画を進めるべきか否かについて,アメリカの [状況の] 変化が さらに決断を遅らせた。
     上場は,石油への依存を減らし,国の経済を多様化するサウジの戦略の一環である。副皇太子が考案した計画の下で,サウジ・アラビアは,アラムコの一部 ── 5% 程度と この件に詳しい複数の人が言う ── を公開市場に上場する。上場による手取り金は,国内 および 海外の投資に使われるらしい。
     今年6月,ソブリン基金は 配車サービス企業 Uber Technologies Inc に $35 億を投じた。この時の交渉の最中でさえ,政治気候は サウジの投資家と顧問にとって 懸念であった … と このプロセスに詳しい1人が言う。
     しかし,その時点で彼らが考えていたことは,議会の投票は オバマ大統領の拒否権を覆すだけの得票を得られないだろう … ということであった。Uber との取り引きが完了して,サウジの基金は シリコンバレーの他のテック企業 (複数) にも大型の投資を考えていた … と事情に詳しい2人が言う。
     今年6月,Mohammed bin Salman 副皇太子は,シリコンバレーの何人もの (several) トップ級ベンチャー資本投資家と面会し,Uber のような投資をもっと計画していると仄めかした。
     今年9月,議会は オバマ大統領の拒否権を覆す投票をした [注:つまり,サウジ法案が通った]
     翌月 サウジ基金は,日本のインターネット&通信巨人 SoftBank Group Corp が運用する基金に $450 億を投資するつもりであると発表した。
     サウジ政府の投資計画に精通した何人もの人は,テロ法が成立した後で SoftBank に莫大な投資をすることをサウジ高官が決断した,しかも SoftBank に行った金は 直接にアメリカ投資に行くか あるいは アメリカの投資会社に行く … と言う。もしも直接に投資すれば,そのエクスポージャには懸念が伴う … と1人が言う。
     サウジ基金は,SoftBank それ自身にも興味がある … と1人が言う。単一の投資に多額の金を注ぎ込んで,基金が 世界のトップ企業家からの取り引きにアクセスできそうだというのである。
     SoftBank に行った金の一部は,SoftBank 投資家を経由してアメリカ止まりになるだろう。SoftBank CEO Masayoshi Son は ニューヨークのトランプタワーで 12月6日に Mr. トランプに会い,その後 記者団に アメリカに $500 億を ── ただしその一部は サウジをバックにする基金から ── 投資して,50,000 の新規雇用を創出すると言った。
     SoftBank への受け身の投資家として,サウジのソブリン基金は,SoftBank の金がどこに行くかを指図することができないだろう,したがって 最終的には アメリカにかなりの投資をすることもあるだろう … と1人が言う。
    SoftBank-Saudi がアメリカに投資した金は,サウジ法によって,裁判に負ければ差し押さえを喰うリスクがある。そのリスクは,この記事にも明記されているように,サウジは ハッキリ認識している。
     そこを孫さんはどう考えたのかが 全く分からない。
    (1) サウジ・アラムコとは何か?
     サウジ・アラムコの名で知られる Saudi Arabian Oil Company は,どの企業よりも多く石油を生産し,サウジ・アラビアの巨額の準備金を運用する。サウジアラビアは,石油の最大輸出国である。
     大手エネルギー企業の石油備蓄 (2015 年)
     1. アラムコ:2616 億バレル.
     2. エクソン: 132 億バレル.
     3. シェブロン:63 億バレル.
    (2) どれだけの価値があるか?
     この王国は,3兆ドルと推定されるサウジ・アラムコの一部を来年上場するものと見られている。世界最大の上場となるであろう。
     アラムコの推定評価額を,世界の大手企業と比べると …
     1. アラムコ:2~3兆ドル.
     2. アップル:0.618 兆ドル.
     3. アルファベット:0.555 兆ドル
     4. マイクロソフト:0.487 兆ドル
     5. エクソン:0.377 兆ドル
     (3) アラムコは何をする企業か?
     アラムコの主たる事業は,地下から石油を汲み上げ,それを世界の輸出市場に販売することである。大手の得意先は アメリカ, インド, 中国である。
     同社は,原油の探索,ガソリンや化学品などへの精製,独立トレーダーとして他社の石油の売買なども行なっている。

  101. アングル:サウジの巨大政府系ファンド,国内投資が足枷に
    ロイター,2016/05/17 @12:56 JST (ドバイ)
    By Andrew Torchia
    サウジアラビアは既存の公的投資基金 (PIF) を2兆ドルの巨大政府系ファンド(ソブリンファンド, SWF) に拡大する方針を打ち出した。しかし PIF は,海外投資による収益確保と同時に,国内経済を活性化する責務も負わされており,この点が収益増大を図る上で足枷になりそうだ。
    5月16日,サウジアラビアは既存の PIF を2兆ドルの政府系ファンド (SWF) に
    拡大する方針を打ち出した。写真は首都リヤド北部の建設現場。
     2016年4月撮影(2016年 Reuters/Faisal Al Nasser)
    PIF は,国内プロジェクトの支援を目的に 1971 年に設立され,これまでのところ海外での知名度は低い。現行 1,600 億ドルの PIF の2兆ドルへの拡大は, Mhammad 副皇太子が打ち出した大胆な経済改革策の土台を成す。
     計画では,PIF の海外投資の収益は,油価下落で石油収入が落ち込むサウジの財政赤字の穴埋めなどに充当される。ただ国内経済テコ入れも義務となっており,新たな産業の発展による雇用創出や大規模プロジェクトの推進などを求められている。
     PIF は鉱業,造船,6ヵ所の都市開発などに関与する可能性もあり,少なくとも当初数年間は 海外市場よりも国内プロジェクトに重点が置かれそうだと銀行筋などは見ている。
     ドイツのコンサルタント会社ジオエコノミカのスベン・ベフレント氏は,海外投資ではリスクを取って最大のリターンを上げるよう求められる半面,国内では戦略的投資家としてリターンを二の次にし,プロジェクトの成功を目指さなければならないと指摘する。「世界中を見渡しても,こうした2つの責務を負う SWF は少ない。通常はどちらか1つだ」と述べた。「この2つの目的は,投資哲学,能力,運営の技量,評価基準が異なり,一緒にするのは難しい」という。
     事情に詳しい銀行筋やコンサルタントによると,PIF はサウジ・フランシ・キャピタルの最高経営責任者を務めたヤシル・アルルマヤン氏がトップに就任し,新たな運営や機構の策定を進めている段階であり,国内外で運用担当者を募っている。
     政府は,国営石油会社サウジアラムコの持ち分を PIF に移管する計画である。また,PIF の投資資金を確保するために,PIF が保有する企業の株式を数年かけて売却する方針だが,この計画は 石油価格が低迷する状況で外国投資家がサウジの資産に関心を示すかどうかに懸かっている。
     政府は,アラムコの株式5%を売却する計画だ。 Mhammad 副皇太子はアラムコの市場価値を2兆ドル,株式売却収入を 1,000 億ドルと見込んでいる。
     しかし銀行筋などの間では,アラムコの評価額は配当政策や政治リスクなどに左右されるとして,副皇太子の試算に懐疑的な声が出ている。米フォーリン・リポーツは,精製施設や石油へのアクセス保証などを除くアラムコの市場価値を 2,500億 ~ 4,600 億ドルとするアナリストの試算を示した。
     いずれにせよ,PIF が海外市場で動かせる金額は当面2兆ドルを大幅に下回り,サウジの財政への寄与度も限定されそうだ。
     ノルウェーの SWF の 1998~2015 年の平均リターンは,コストや物価上昇分を除く前で 5.6 %である。PIF がアラムコ株の売却で 1,000 億ドルを調達したとしても,この比率だと年間のリターンは 50 億ドル程度となる計算で,1,000 億ドル近い財政赤字に全く及ばない。
     英国のコンサルタント会社コンピターのシャンカー・シンガム氏は,PIF はシンガポールの SWF,テマセク・ホールディングスの成功に倣い,海外に投資するだけでなく,大規模な国有資産を運営して経済界で戦略的な役割を担えるかもしれないと指摘する。また PIF が外国投資を通じ,サウジの国内プロジェクト向けに専門家や市場アクセスを確保しようとする可能性もある。
     ただシンガム氏は,PIF が商業面や政治面でのサウジの影響力を高めようとするなど地政学的な目標に用いられれば,収益力が犠牲になりかねないと釘を刺した。
    サウジの事情も知っておく必要があると思い,収集を始めました。

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