Inside SoftBank
(started 2014/01/06)
  1. 総務省,携帯「分離プラン」義務付け 緊急提言案を策定
    産経新聞,2018/11/26 @18:52
    総務省は 11月26日(月),携帯電話料金の引き下げに向けた事業者の競争促進施策を議論する有識者会議を開き,端末購入代金と通信料金を完全に分離する "分離プラン" を事業者に義務付けるなどの緊急提言案をまとめた。
     消費者に分かりやすい料金体系を整備することで事業者間に競争を促し,通信料金を引き下げる狙いである。販売代理店に届け出制を導入し,行き過ぎた端末割引を行なった場合に業務改善命令を出せるようにもする。
     現在の料金プランで主流の端末購入を条件にした通信料の割り引きは,通信料を原資にしているため,通信料引き下げを阻害しているとされる。また,頻繁に端末を買い替える人ほど恩恵を受けるため,利用者間に不公平感が生じている。割引額も端末ごとに異なり, 特定の端末に販売が集中するため, 消費者の選択肢を狭めていた。
     緊急提言案では,料金プランを分かりやすくして契約者が選びやすくするために,端末購入を条件にした通信料の割り引きを "廃止することが適当" と指摘した。4年間の分割払いを前提に端末代を割り引く "4年縛り" は,利用者の囲い込みになるとして,抜本的な見直しを求めた。総務省は,携帯電話事業者に一連の見直しを義務付けるため,来年の通常国会にも電気通信事業法の改正案を提出する方針である。
     一方,通信事業者ではなく,同法の適用外だった販売代理店に届け出制を導入することを提言。不適切な販売手法に対して業務改善命令を出せるようにする。
    流石と言うか … NHK にも産経が先着した (笑)
     この "緊急提言" が カネ欲しいカネ欲しいカネ欲しい病気に罹っている誰かさんを狙い撃ちにした (Bloomberg) のかどうかは,時間が経てば分かるのだろう。

  2. SoftBank, Mizuho Tap Into Stock-Trading App to Sell Massive IPO
    SoftBank と みずほ証券が,超巨大 IPO を売るために株取引アプリを頼みにする
    Bloomberg,2018/11/22
    Takahiko Hyuga
    SoftBank Group の電話部門の 2.4 兆円 ($210 億) IPO は,その価値を最大化するために小口の投資家を引っ張ることを狙う。したがって株を売るために,このテック会社と引き受け業者みずほ証券がスマートフォン利用の売買に向かうのは驚くことではない。
     彼らが使う株取引アプリ "One Tap BUY" は,偶然にも SoftBank とみずほが支援するネット証券会社である。彼らの計画は,個人投資家が ロットを分けることにより IPO に応募しやすくすることだ。目論見書によれば,通常は最低 100 株を \150,000 以上で申し込む代りに 1株 \1,500 で1株買うこともできるようにする。
     SoftBank Corp という名前の新しい法人のお披露目は,$1,000 億 Vision Fund を通じて 親会社 SoftBank Group を 世界の投資会社に変身させる創業家 Masayoshi Son の壮大な計画の一環である。個人投資家は,1987 年の 元国営キャリア 日本電信電話を上回るかもしれない IPO で要の役割を演じる。引受業者は 約2兆円相当の株を日本の個人投資家に売る計画である。
     "財布 (wallet) のカネで,誰でも株を買える。" … と いちよし証券の 宇田川克己投資情報部課長が言う。 "株式投資に慣れていない人でも,SoftBank のスマートフォンを使っていない人でも,株主になれる。"
     One Tap BUY は,IPO 専用のアプリを新たに配布している。同社のウェブサイトによれば,手始めが今回の SoftBank の IPO である。SoftBank と みずほの広報担当者は,このアプリでどれだけ売るつもりかとの質問にコメントを拒んだ。
     この IPO を引き受ける日本の証券会社の中で,野村ホールディングスが最大であり,次いで大和証券グループ,みずほ証券 … と Bloomberg News が今月 既に報道した。みずほのシェアは 4,100 億円であるが,そのうちのどれだけを このアプリで売る予定かは不明である。
     多くの投資家を引っ張る努力の一環として,野村, みずほ などの引受業者は,TV で売り込みを始めた。One Tap BUY を使って株を買う投資家は,配当を受け取る権利があるが,投票権は無い。規制当局への届け出によれば,SoftBank は One Tap BUY の 48% の株を持ち,みずほは 12% を持つ。
     "これは,預金者に 貯金の一部を株式市場に入れてもらうことにより,個人投資家の数を拡大する道を拓く可能性がある。" … と 宇田川は言う。
      To contact the reporter on this story: Takahiko Hyuga in Tokyo at thyuga@bloomberg.net
     To contact the editors responsible for this story: Robert Fenner at rfenner@bloomberg.net, ;Takashi Amano at tamano6@bloomberg.net, Reed Stevenson
    爺さん,よほど博打遊びのカネが欲しくてしかたがないらしい。
     市場で売れない僅か 1株 \1,500 の株主を増やして何になるのか?
     "端株" の読み方も知らないような被害者を増やしてどうするつもりか?
     耄碌したとしか言いようが無い。
     みずほで 4,100 億円というのも,ノルマを課された社員に気の毒である。
     今は 日本のどの証券会社も 店舗と従業員を減らしているから 売り込み能力が極端に落ちている。
     加えて 個人投資家は NISA 発足時の高値で 野村が SoftBank を売り込んだから,(SoftBank の所為ではないが) SoftBank で大損をして,恨み骨髄に達している。
      "若い人" を狙うとは,そういう意味である。
     えっ,SoftBank が 48% 握っている オンライン証券会社で買うと,投票権無いの? [絶句]
     『Investors who purchase shares using One Tap BUY won’t get voting rights, but will be eligible to receive dividends.』(普通株と優先株の2本立ての発行とは知らなかった).
      この情報は,もっと広く知られる必要がある。
     株式投資に慣れていない人は … わざわざ買うべきでない。
    ちなみに,One Tap BUY のサイトに行ってみましょう。
     『身近で業績の安定度も重視した 日本が誇る優良企業30社が勢揃い!
     しかも誰でもカンタンに 1,000円から株主に』

     … とあって その下に 確かに 積水ハウス以下 "優良企業 30 社" の取り扱い銘柄が書かれている。
     その中にもちろん SoftBank Group は 見つからない (笑)
     SoftBank Group の子会社 One Tap BUY が "優良企業 30 社" として推奨している銘柄の中に SoftBank Group が無いのであるから,その子会社 SoftBank Corp の株に手を出すバカな投資家がいるだろうか?(笑)
     積水ハウス,明治製菓,花王,楽天,ヤフー にも劣ることを自己認識しておられる。
     流石に一流の経営者の眼識は鋭い。炯眼に感服する。

  3. 端末・通信料「完全分離」提言へ 4年縛り禁止,総務省有識者会議
    共同通信,2018/11/23 @22:24
    総務省の有識者会議が,携帯電話料金の引き下げに向けて取りまとめる緊急提言の概要が 11月23日 判明した。
     端末購入代金と月々の通信料金を完全に切り離した "分離プラン" を事業者に義務付けると明示する。4年間の分割払いを前提に端末代金を割り引く "4年縛り" は,顧客を拘束するとしてこれを禁止し,電気通信事業法の改正も視野に入れることを盛り込む。
     海外に比べ高額と指摘される料金の値下げに道筋を付ける狙いで,11月26日(月) にも公表する。政府の規制改革推進会議や消費者庁から,端末代金と通信料金を一体化した大手の従来プランは複雑で分かりにくいと批判があった。
    もともと 総務省の方針が
     このような契約は端末代金とサービス料金をごちゃ混ぜにしており,参入の障壁を生んでいると見る政府は,キャリア各社に 電話代金を別払いにさせたい … と総務省の上級官僚がロイターに語った (2018/08/21)
      ・・・ のであるから,"分離プラン" になるのは当然であるが,問題は答申の時期である。
     総務省の諮問 (2018/08/23) には,有識者会議の答申予定は 2019年12月を目途 … と書かれており,
     そのための中間答申が 2019年6月に出ることになっていた。
     共同通信の記事によれば,これを大幅に繰り上げて "緊急提言" を出させることになる。
     もちろん "提言" を有識者会議が書くと言っても,総務省が用意したものにハンコを押させるだけのことではあるが,それでも なぜ 今 "緊急提言" が必要なのか? 月曜日になれば "緊急" の理由が分かるのかもしれないが ・・・ ,
     これに関連するかは 不明であるが,Bloomberg は 次のように書いている (2018/11/12)。
     Japan’s government has been pounding carriers to lower their rates, which are among the highest in the developed world. Just two weeks ago, Docomo said it may cut rates 40 percent and return billions to customers. That wiped $34 billion off the market values of the top three carriers. But it’s not clear Docomo will follow through. The company, partly owned by the government, has spent years side-stepping pressure. Indeed, Docomo’s announcement may very well have been timed to hurt Son just as he was trying to raise money.
      [ドコモの値下げ発表は,資金集めを狙う誰かさんを狙い撃ちするようにタイミングを合わせた … ということも十分あり得る]

  4. SoftBank's Underwriters Try Offbeat Campaign to Sell Mega IPO
    SoftBank の引受証券会社は,メガ IPO を売り込もうと 調子はずれのキャンペーンを試みる
    Bloomberg,2018/11/15 @16:44 [Update:2018/11/16 @08:01 JST]
    By Takahiko Hyuga
      コマーシャルは,小口投資家の関心を鳴り物入りで喚起する。
      通信部門の上場は,日本最大の IPO となる。
     SoftBank Group の引受証券会社は,投資家が ── 特にあらゆる年齢の個人投資家が ── 日本最大の IPO に確実に群がるように,テレビによる異常なマーケティング作戦を容認している。
     30 秒の TV スポット広告は,頭にアンテナをつけた 多世代家族を見せる。朝食を食べるあいだ,頭の付属物はピカピカし,SoftBank の日本の通信事業の 2.6 兆円 デビューを 家族にアラートする。この広告は,株価の範囲が決まる 11月30日まで続く … と事情を知る複数の人が言う。
    SoftBank の IPO の目論見書。
    Takaaki Iwabu | Bloomberg)
     創業者 Masayoshi Son は,SoftBank を $1,000 億 Vision Fund を経由して 世界のテック投資会社に変身する計画を推進できるために,この IPO の成功を必要とする。日本の全家庭資産 16.3 兆ドルのうち 株式が 11% に過ぎないことを考えれば,この上場の膨大な規模は 難問である。このコマーシャルは,引受証券会社が 新規の小口投資家を狙っていることを示す … と東京の DZH Financial Research Inc の IPO アナリスト [日本で最も IPO に詳しいと評判の] 田中一実が言う。
     "新規顧客を引っ張ることは通常は難しいが,引き受け会社は SoftBank の知名度を利用して新しいカネと新しい口座を惹きつける。" … と田中は言う。"IPO の後も,株価を支えるのに役立つだろう。"
     これらのコマーシャルは,SoftBank が無線サービスの宣伝に使っている折衷的スポット広告に応じるものである。彼らは通常,お父さんが柴犬であることを除けば人間の家族を使う。証券法を守る必要から,IPO の広告は,発行体の SoftBank ではなく,証券会社がカネを払い,証券会社が流す。
     これらのコマーシャルは日本で放映され,個人投資家に訴えるが,SoftBank の幹部と 株式の世界販売責任者らは,アメリカ,欧州,アジア,日本で今週と来週 ロードショーを行ない,アナリストや基金運用者と面談する … と上記の人たちが言う。機関投資家との面談とフィードバックは,IPO の価格範囲を決めるのに役立つ。SoftBank は売り出し価格を \1,500 にする意向を今週 示したが,これは 通信事業を 7.2 兆円に評価していることを意味する。
     この価格での IPO は,これまでの記録 日本電信電話会社 (1987 年) の IPO を超える。目標は 30 代の投資家を呼び込むことであるが,同時に沢山の株を引き受けてもらうため,資産を大量に持つ 60 代も引っ張りたい … と KPMG Azsa LLC の IPO アドバイザ 鈴木智弘が言う。
     "これは巨大な資金調達であり,売れ残りが無いように予約を確実に集めなければならない。" … と鈴木は言う。"SoftBank ブランドを使って,SoftBank の顧客ではあるが投資をしたことの人たちの間に知名度を広げようと彼らは狙っている。"
     SoftBank と引き受け会社の広報担当者は,TV キャンペーンとロードショーの日程について コメントを拒んだ。
     SoftBank は,野村ホールディングス, Goldman Sachs, Deutsche Bank, みずほ FG, JPMorgan Chase & Co, 三井住友 FG をコーディネーターに選んだ。
     "ロードショーにより,企業の取締役から情報と感じをつかむことができるし,投資すべきかすべきでないかを判断する重要な機会になる。" … と Alianz Global Investors の日本部門の最高投資責任者 寺尾和之が言う。 "この事業は安定しており,利回りは高そうだ。これならかなりの投資家を惹きつけるだろう。"

  5. コラム:ソフトバンク子会社 IPO,個人投資家の関心は十分か
    Reuters BreakingViews,2018/11/12 @15:23 JST
    By Alec Macfarlane (香港)
    SoftBank Group の通信子会社 SoftBank が上場する際の時価総額は約 700億ドル (約 7.9 兆円) 規模になる可能性があると一部で報じられている。
     だが,BreakingViews の試算によれば,この評価は強気過ぎるかもしれない。小口投資家を重視する中で,一般の日本人に対して,これに投資すべき魅力を説得する必要があるだろう。
    2018年10月,東京で記者会見する SoftBank Group CEO Masayoshi Son。
    Reuters | Issei Kato)
     同グループの Son CEO が築いたこの子会社には,国内の競合相手である NTT DoCoMo と KDDI と比べて,プレミアムを上乗せして取り引きされるだけの価値が恐らくあるだろう。SoftBank は,両ライバル社と比べて利益率が高いだけでなく,SoftBank Group が支援するテック企業との合弁企業を通じて提供しているサービスの面でも1歩先行している。
     Son の投資戦略の方が,たとえば先月子ども向け職業体験施設を買収した KDDI の戦略よりも,シナジー効果を追求していることは,ほぼ間違いない。
     KDDI と NTT DoCoMo の企業価値の EBITDA (支払利息・税金・償却控除前利益) 倍率は, それぞれ5倍, 6倍となっている。仮に SoftBank の EBITDA 倍率が7倍とすれば,企業価値は総額 700 億ドル超になる計算だ。
     だが SoftBank Group は,通信子会社に巨額の負債も残す見通しだ。証券会社 CLSA が同子会社の債務額として見積もっている $180 億を純負債額として差し引けば,子会社の株式時価総額は約 $550 億となる。報じられた額より2割低い数字だ。
     上場時の株式は,主に個人投資家を対象に売られる可能性が高い。野村ホールディングスが主幹事を務める。
     日本取引所グループの株式分布状況調査によると,今年3月末時点で全投資部門における株式保有金額は約 666 兆円で,個人投資家はその約 17 %を保有していた。したがって,個人投資家が投資額を拡大させる余地は大いにある。
     だが,直近の大規模かつ高値の上場で,野村 HD などが主幹事として一般投資家に売り込んだ例には,2015 年の日本郵政があるが,機関投資家のファンド・マネージャに嫌われ,現在では株価は低迷している。
     SoftBank の通信子会社が更に巨額の負債を抱えている可能性もあり,その場合は理論上,株価はもっと下がるだろう。
     *筆者は Reuters Breakingviews のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

  6. SoftBank Is Asking for Too Much for Its Mobile Unit
    SoftBank は,携帯部門から余りにも多くのカネを欲しがる
    Wall Street Journal,2018/11/12 @07:50 am ET
    By Jacky Wong
    日本のテック・コングロマリットは,国内電話事業の値打ちが $600 億を超えると投資家を説得したい。
     日本の SoftBank Group は,海外資産の買収に大枚をはたくことで知られている。だが,国内の携帯子会社について投資家に同じように太っ腹になってもらおうとしても,説得するのは難しそうだ。
     月曜日,このテック・コングロマリットは,東京証券取引所が SoftBank Corp という名前で知られる部門の新規株式公開 (IPO) の承認を得たと発表した。同社は最大 37% 弱の株式を売却し, $230 億の調達を目指す。得られたカネは $1,000 億 Vision Fund を通じてさらに多くのテック・ユニコーンに注入される可能性がある。
     だが,それならば 携帯部門の評価額は $630 億弱になり,余りにも高額に見える。ライバルの NTT DoCoMo と KDDI は,企業価値が EBITDA の平均 5.2 倍で取り引きされている。この数字を SoftBank Corp に当て嵌めると,企業価値は $520 億となる。ここから純負債 $270 億を差し引けば,SoftBank Corp の企業価値は $250 億にまで下がる
     SoftBank は,利回りに飢えた日本の投資家を引っ張ることにより,高い評価を獲得したい。そのため,ライバルの配当性向 40% ~ 50% に対し,純利益の 85% を配当に回す計画である。その結果,SoftBank Corp の利回りは 5% を超え,DoCoMo と KDDI の4% 強を若干上回る。
     SoftBank Corp にとって問題は,この配当を持続できるかどうかである。日本に上場されている通信会社の株価は,DoCoMo が政府の圧力を受けて 携帯電話料金を最大 40% 引き下げると発表して以来 2週間ほど下げている。SoftBank はその後追いをしないと言うが,創業家 Masayoshi Son は先週,通信従業員を 40% 削減することにより経費削減を行なうと言った ── つまり 料金引き下げもできると言いたいのだろう。もちろん,このような大規模な解雇をやってのけるのは至難の業であり,SoftBank Corp が高配当計画にしがみつくことは,いささか困難であろう。
     安定配当を求める投資家は,SoftBank の今回の IPO に飛びつく前に 再考すべきであろう。
      Write to Jacky Wong at JACKY.WONG@wsj.com

  7. 携帯電話契約数 (2018年09月末)
    3社の決算に基づき,TCA からデータが発表されたので,携帯電話契約数をグラフにまとめました。
    電気通信事業者協会 (TCA) のサイト は,更新されています。
    漸く正常になった。
    ただし, 9月中旬に 1,000 万通以上の E-メールを勝手に削除した件の影響は 12月四半期以降に現れる。
    そもそもこの不祥事について説明もお詫びも,事後処置も責任者の処分も 11月5日に全く無かったのはおかしい。
    それに 東証は,3年くらい様子を見てから上場を認めるのが本来だろう。
      このグラフでは 2015年9月期から契約数の伸びが急に鈍化した。
      この原因は不明である。
      ただし,1つの可能性としては アリババと SoftBank Group の合弁による 阿里雲の日本進出がある (日経,2016/05/13)
      この種の情報は,敏感な企業の間には事前に流れるだろう。
      この日経記事の中には「機密保護の観点から日本企業の業務データは中国など海外には送らず,日本国内に保持する」という "念の入った" 記述がある (笑)

  8. SoftBank finally condemned Khashoggi’s murder—but it won’t stop taking Saudi money
    SoftBank は,ようやく Khashoggi の殺害を非難した ── しかし サウジのカネをもらうことをやめようとしない
    Quartz,2018/11/05
    By Alice Truong
    Masayoshi Son が,耳をつんざくような沈黙 (deafening silence) を破った。
     SoftBank の CEO は漸く,先月イスタンブールのサウジアラビア領事館内で殺された反政府派のコラムニスト Jamal Khashoggi の謀殺を非難した。
     それでも,まだ Sonは,会社と (2016 年に SoftBank の $1,000 億 Vision Fund に最大 $450 億を投資すると約束してくれた) サウジ政府との関係を断つつもりはない。
     "我々は,責任ある人たちが責任を取ることを望む。" … と彼は 今日の決算のプレゼンテーションで投資家に語った。これは,Son が Khashoggi の死について公に述べた初めての発言である。"同時に我々は,サウジアラビアの国民の皆様から責任を引き受けた ── われわれはこの責務を非常に重大なものと受け止める ── 彼らが金融資源を運用してサウジ経済を多様化することを助ける責任である。"
     数多くの企業とリーダーがこの数週間 Khashoggi の死以来 サウジ政府から距離を置いている一方で,Son は沈黙を守ってきた ── これは,可能な限り依然としてサウジ政府と Mohammed bin Salman 皇太子の味方に立つ経営者の像を描き出す。Son が "砂漠のダボス" と呼ばれるサウジの未来投資イニシアティブで予定されていた講演をキャンセルしたのも,自分の沈黙に対する注目が集まった 最後のぎりぎりの時だった。
     サウジのカネの運用を続けるという SoftBank の決定を Son は,サウジ国民の皆様を助ける手段として位置付けており,サウジ専制君主政府の投資から利益を挙げるためではないとする。彼の主張は,SoftBank の Vision Fund が 石油依存を減らして,サウジ経済の多様化を助けるというものである。
     "この事件はまことに恐ろしいものであるが,我々はサウジ社会を現代化し改革する取り組みを助ける中,サウジ国民の皆様に背を向けることはできない。" … と彼は言った。
     サウジアラビアがこれまでに公約した金額に加えて,MbS は 最近 サウジのソブリン基金が SoftBank の基金にさらに $450 億を投資する計画であると述べた。今日のブリーフィングで記者の質問に答えて Son は,サウジのカネをさらに受け取るかどうかは明言しなかった。
     "説明が完全になされれば,考えたい。" … と彼は言った。
    Yahoo Finance の動画記事なども大体 こんな傾向である。
     "シリコンバレーは考えを変えたのに,Son はそれを理解していない" … というのもあった。
     今後は シリコンバレーの企業が "汚れたカネ" を受け取るかどうかが焦点になりそうである。
     とは言え,要求額の3~5倍を出すのが 孫社長のやり方であるから,残りの 2~4倍をポケットに入れて 赤字決算を続ければよいわけで,"カネ欲しい カネ欲しい とにかくカネだけが欲しい" という企業は無くならないだろう。
    ──────
     説明が完全になされれば ・・・ とは,社長が認識外れ (のフリ) をしていることを意味する。欧州と国連が問題視しているのは, Khashoggi 1人の暗殺よりも,イエメン内戦へのサウジアラビアの介入による空爆が 10,000 人もの民間人を殺し,それを上回る負傷者と難民を発生させたことが原因である。その首謀者が 国王と皇太子であることは "説明" を必要としない。
     したがって,このような "言い逃れ" は危険である。

  9. SoftBank CEO decries journalist's death, defends Saudi fund
    SoftBank Group の Masayoshi Son CEO が, 2018年11月5日 (月) 記者会見で話す。
    SoftBank の CEO は,ジャーナリストの死を公然と非難し,サウジの資金を擁護する
    Associated Press,2018/11/05
    By Yuri Kageyama (影山優理)
    Son は,サウジのジャーナリスト Jamal Khashoggi の殺害を公然と非難したが,サウジのカネを含む日本のテック巨人の投資基金を完遂する必要のある仕事だとして擁護した。
     決算説明会に登壇した Son は,Khashoggi の死を,"貴重な生命とジャーナリズム および 言論の自由" に対する攻撃と呼んだ。
     Son はサウジアラビアの Mohammed bin Salman 皇太子と手を組んでおり,2016 年に設立した彼の $1,000 億 Vision Fund のほぼ半分は,サウジ王国から来る。この基金は,ソーラー・プロジェクトや人工知能のようなさまざまの企業に投資を行なってきた。
     Washington Post のコラムニスト Khashoggi (59) は,10月2日 トルコのサウジ領事館で殺された。ただし,詳細は今なお不明である。
     "実に恐ろしい行為が起こった。しかし,我々は自分の仕事に背を向けることはできない。" … と Son は言った。彼は,自分の資金への投資がサウジの "国民のみなさま" から来ると言った。
      Khashoggi は,再婚のために必要な書類を受け取りにイスタンブールのサウジ領事館に入った後 姿を消した。トルコ人の婚約者は,領事館の外で彼を待ち続けた。サウジ皇太子の批判者 Khashoggi は,アメリカに亡命して暮らしていた。
     Son は皇太子 および サウジ高官らに面会し,徹底的な捜査を要求したと言う。彼は,皇太子が Khashoggi 殺害に懸念を表明したと言う。
     日本の大物は,Vision Fund の第2段階の計画について何も決まっておらず,捜査の結果を待っていると言った。
     "未だ何かを言うには早すぎる。この問題に注意深く取り組む必要がある。" … と彼は言った。
     SoftBank は,7月~9月期の利益 5,426 億円 ($48 億) を報告した。これは YoY でほとんど5倍の増加であり,アメリカの無線 Sprint と英国の IoT 企業 ARM の好調な決算に助けられたと言う。
     四半期の売り上げは +7% 増の 2.38 兆円 ($211 億) だった。
     SoftBank の野放図に広がったテック投資帝国は,通信,フィンテク,ソーラー,配車予約サービスから ペッパー人型ロボットに及ぶ。
     中国の E-コマース巨人アリババと Uber の権益も所有する。
     Son はこれまで Khashoggi の死について発言したことが無い。彼はこの記者会見を殺害への言及から始め, いつもより落ち着いた様子を見せた。
     だがそれは,初めの数分だけだった。話を日本シリーズでのソフトバンク・ホークスの勝利に切り替えると,
     "私は 特に ファンの皆様に感謝の意を表明したい。" … と言った。
    孫社長の カネカネ体質を暴いた 影山優理 AP 記者の記事である。

  10. SoftBank CEO Denounces Khashoggi Killing But Says Firm Will Keep Saudi Partnership
    SoftBank の CEO は Khashoggi 殺害を非難するが,会社はサウジとの提携を維持するつもりだと言う。
    Wall Street Journal,2018/11/05 @08:48 am ET
    By Mayumi Negishi & Phred Dvorak (東京)
    Masayoshi Son は,殺人は悲劇だったが,会社は王国に責任がある … と言う。
     SoftBank Group の CEO は,サウジのジャーナリスト Jamal Khashoggi の殺人を起こってはならない悲劇と呼んだが,SoftBank は王国との提携を守る責任があると言う。
     SoftBank は,サウジアラビアからの $450 億出資コミットメントで支援された世界最大のテック基金 Vision Fund を運用する。Khashoggi の殺害は,SoftBank に政治的リスクを引き起こすと同時に, 既に世界の大きなスタートアップ企業の権益を追い求めるために債務をふやしている同社の Vision Fund が財務のリスクを負うことになった。
     イスタンブールでのサウジ領事館内での Khashoggi の殺人に関するゾッとする詳報は,SoftBank または Vision Fund から投資を受け入れた企業を含めて,シリコンバレーの多くの企業に 先月 サウジのソブリン基金が主催したリヤドでの会議の講演の約束をキャンセルさせた。
     SoftBank の Masayoshi Son CEO は,この会議で登壇をキャンセルしたが,Mohammed bin Salman 皇太子と会って,懸念を伝えたと言う。
     "これは,起こってはならない悲劇的事件だった。" … と Son は 月曜日の四半期決算説明会で言った。"私は真実が間もなく解明され,正確な説明がなされることを心から望む。"
     Son は,SoftBank がサウジの国民から投資を受け取っているので,サウジアラビアがその経済を多様化するのを助ける責務がある … と言った。彼は,王国による将来の投資の可能性を排除せず,殺害の捜査結果を考慮に入れると述べた。
     サウジ政府は,王国が Khashoggi を狙っていることを Mohammed 皇太子が直接知っていたとは認めない。これに対しトルコと西側の関係者は,知っていたに違いないと一貫して疑っている。皇太子はこの殺害を "極悪非道な事件 (hideous incident)" であると非難した。
     この事件は,サウジアラビアをスタートアップ企業に対する最大の資金源とするシリコンバレーに鋭い自己反省を引き起こした。これまでのところ,Vision Fund のカネを断る企業は多くはない … と Son は言う。ただし,"多少の影響はあるかもしれない。" … と Son は言った。
     Vision Fund とサウジとのつながりによるリスクは,Fund が良いリターンのために債務の取入れを増やしているために生じている。
     SoftBank Vision Fund とそのアフィリエイト Delta Fund は,合わせて $980 億の資本を運用する。彼らはこの資本を使って世界で最も価値あるテック・スタートアップ企業に投資を追い求める。SoftBank は配車のパイオニア Uber に投資しており,この権益を Vision Fund に移管する計画である。
     SoftBank 以外の投資家が拠出を約束したカネの 60% は,債券のような形を取り,年率 7% の固定金利が支払われる。この構造は,赤字の若い企業 ── 投資家にとってはいつ儲けが出るか,あるいは そもそも儲けが出るのか分からない ── を支援する基金にしては,これは異例である。
    レバレッジを利かせる
    SoftBank Vision Fund と Delta Fund は,
    リターンを増やすために債務をふやしている。
    有利子負債 (10 億円)
     それに加えて,Vision Fund と Delta Fund は,借り入れを行なっている:SoftBank のファイリングによれば, 9月末の時点で 6,360 億円 ($56 億) の債務を抱え,過去6ヵ月に +28% 増加した。このカネの一部が,投資家に基金が約束した 7% のリターンの支払いに充てられる … とファイリングは言う。
     しかも,SoftBank は,リターンを増やすために Vision Fund に追加の $90 億程度の借り入れをさせる計画である … と記者会見の後で Son が Wall Street Journal に語った。
     このリターンは,既に綺羅星のように輝いている … と Son は記者会見で言い,SoftBank の営業利益が +62% 増の 1.4 兆円に達したチャートを指さした。
     SoftBank は, 9月30 日に終わった半年に Vision Fund から営業利益 6,320 億円を挙げた (これは1年前の3倍を超える);これはインドの E-コマース企業 Flipkart の Walmart への売却, ならびに チップ・メーカー Nvidia と インドのバジェット・ホテル予約会社 Oyo のような企業の評価益のお蔭である。
     格付け機関から債券をジャンク級とされている SoftBank の全債務は, 9月30日時点で 18 兆円に近い。現金 および 現金同等物は 3.2 兆円である。債務の大部分は,Sprint と 日本の携帯サービス・プロバイダとしての通信事業による。
     "来年の決算は今年を遥かに超えるだろう。おそらく,日本でかつて見られなかったような水準の営業利益になるだろう。" … と Son は言った。
      Write to Mayumi Negishi at mayumi.negishi@wsj.com and Phred Dvorak at phred.dvorak@wsj.com
    SVF が借り入れを行なっている (borrowing money) というのは,これまで知らなかった。
     あらためて今回の決算を見ると,確かにそう書かれている。
     このままだと $56 + $90 = $146 億もの借り入れにより資金調達をするらしい。
     他方9月末現在で SVF が集めたカネは,SoftBank からを含めて $286 億である。
     借り入れは,この資産を担保に行なうのだろう。
     だが これでは信用取引の2階建てのようなものだ。
     もともと SVF の投資先は Nvidia を除けば赤字企業であり,経済情勢が一変すれば2階建ては非常に危険である。

  11. It’s Hard to Share Masayoshi Son’s Optimistic Vision of SoftBank
    SoftBank についての Masayoshi Son の楽観的ビジョンは同意し難い
    Wall Street Journal,2018/11/05 @06:41 am ET
    By Jacky Wong
    日本のテック・コングロマリットの強い第3四半期は,既に昔の話である。
     SoftBank の Masayoshi Son 議長は,自分の Vision Fund の最新の業績が反対者たちを沈黙させるはずだと言う。
     ちょっと待て!
     確かに $1,000 億弱の基金は,輝かしい結果を月曜日に報告した。SoftBank の $60 億 Delta Fund と合わせて, 9月に終わった6ヵ月に営業利益 $56 億を挙げた。そして,これが 日本のテック・コングロマリット全体の営業利益を +62% 押し上げた。
     前四半期 インドの E-コマース企業 Flipkart の Walmart への売却は,Vision Fund に $13 億の利益を生んだ。この Fund はオフィス共有巨人 WeWork とインドのホテル・チェーン Oyo への投資の再評価からも利益を挙げた ── ただし,これらの利益は 或る程度 自己充足的である:評価が上がったのは,Vision Fund から何十億ドルもの資金が高い評価額で注入されたのが主たる理由である。
     SoftBank の大きな問題は,ポジティブなニュースが既に昔の歴史のように感じられることだ。
     チップ・メーカー Nvidia の 4.4 % の権益を考えてみよう。9月末の時点で,この投資は 約 46 億に評価されていた ── Vision Fund の昨年5月のスタート以来の全営業利益の半分を超える。ところが Nvidia の株は,世界の半導体銘柄に暗闇が降りる中, 9月末以来 1ヵ月で −24% 下がった。これは SoftBank に机上の損失 $18 億を生む。
     SoftBank は,他にもトラブルを抱える。同社と Vision Fund の後援者サウジアラビアとのつながりは,ジャーナリスト Jamal Khashoggi の殺害により突如として汚染された。しかも,日本政府の強い求めに応じてライバル通信会社が料金引き下げを公約したため,国内通信事業は 圧迫を受けている。
     SoftBank の株価は9月以来 −24% 下がった。Vision Fund に累積する問題を抱えて,短期の下げに終わりを見通すのは難しい。
      Write to Jacky Wong at JACKY.WONG@wsj.com
    投資先の企業の評価を挙げるための "自己充足的 (self-filling)" 手口がここで説明されている。
     何度も 投資を繰り返し,その都度評価額を挙げれば,以前に振り込んだ分の投資から自然に利益が発生する。
     このようにして自分で自分の利益を意図的にふやすのが,SoftBank の言う "公正評価" である。

  12. ソフトバンク,値下げへ人員4割減 サウジ混迷で試練
    日経電子版,2018/11/05 @18:48
    佐竹 実,井川 遼
    国内通信子会社の上場を控えるソフトバンク・グループが,"内憂外患" に直面している。携帯電話の通信料金引き下げの圧力が強まる中,収益悪化の懸念が浮上した。運用額 10兆円規模のファンドは,最大出資者であるサウジアラビアの政情が混迷する。通信子会社は上場で独立させ,親会社はファンドを武器にグローバルに投資するという戦略は,軌道修正を迫られるのか? 孫正義会長兼社長の手腕が問われる局面だ。
    孫氏は5日の記者会見で,携帯電話の通信料金を一段と下げる方針を示した。普段の決算会見では人工知能や運用額 10兆円規模の SoftBank Vision Fund の説明に多くの時間を割く孫氏としては異例だ。菅義偉官房長官が "携帯電話の料金は4割下げる余地がある" … と述べたことについて,"真摯に受け止めながら,しっかり対応していきたい" … と述べ,政府に噛みつくことも辞さない姿は影を潜めた。
     通信子会社の上場を控え,料金収入の減少は大きな逆風だ。孫氏によると,ロボットによって業務を効率化して通信事業に携わる社員を4割削減し,値下げの原資にするという。孫氏は "業務プロセスを効率化することでいろいろな価格サービスに対応できる" と説明した。社員の削減分は,新規事業に振り向けるという。
     孫氏はさらに "我々は世界で最も安い通信会社の1つ。25~30% 値下げ済みで,今後の状況は常に真摯に行なっていく … と述べた。格安ブランドのワイモバイルについても,端末と通信を分離した 1~2 割ほど安いプランを 2019年度に導入するという。
     通信子会社の上場について孫氏は "潤沢な資金が手元に入る。さらなる成長のために Vision Fund の資金の供給に回し,純有利子負債の支払いに回していきたい" … と述べた。NTT ドコモは 2~4割の値下げで減益予想を出したが,コスト削減などで通信子会社の増益を確保する姿勢を示した。
     上場する通信子会社を他の事業会社や SoftBank Vision Fund と同様に本体から切り離し,親会社はファンドを軸に世界の成長企業に投資するというのが孫氏の戦略だ。これまでに Uber Technologies の筆頭株主になるなどスタートアップ業界では影響力を持つ。
     だが,その戦略も岐路に立つ。サウジでは,著名記者殺害事件が尾を引き,孫氏が "石油の次はデータ" と口説いて出資を取り付けた王室の関与も取り沙汰されている。サウジ・マネーを嫌う欧米企業が増えれば,投資はスローダウンしかねない。
     5日の会見で孫氏は事件について "大変悲惨な事件で遺憾に思う。石油依存から経済の多様化を目指すサウジ国民から資金を預かっており,サウジ国民の将来に対する責務を果たすべきだ" … と述べた。一方で,さらなるサウジからの投資を受けるかどうかについては "新たなものについてどうするかは事件の真相究明が行なわれた後,改めてもう一度よく考える" … として将来の投資のために新たな大口の投資家を探すことにも含みを持たせた。
     サウジの事件があってもなお,技術の進化のスピードは速く,資金需要は根強い。シリコンバレーを拠点に環境性能の高いガラスを製造する View は2日,Vision Fund から 11億ドルの出資を受けたと発表した。孫氏も5日の会見で,View の筆頭株主になったことを明らかにした。
     サウジの混乱が尾を引けば,投資戦略のみならず収益にも直結する。日本でも珍しいリスクテーカーである孫氏は内憂外患の難局を乗り切れるのか。世界が注目している。
    「サウジ国民から資金を預かっており,サウジ国民の将来に対する責務を果たすべきだ」
      ・・・ 預かっている汚れたカネで自分が金儲けしようとする意地汚いところが問題なのである。

  13. SoftBank Vision Fund への投資家の出資状況
    ソフトバンク 決算発表,2018/11/05
    決算発表から,SVF への出資が どれだけ履行されたかを知ることができる。
    不思議なことに ほとんど増えていない。
     6月期の出資額合計 $286 億だったのが $289 億に (僅か +$3億) 増えたに過ぎない。
     これでは,Vision Fund は開店休業状態のはずである。これで View,バイトダンス(字節跳動), Zume など SVF からの最近の投資は なぜ可能なのか?
     何かがおかしい。
     サウジアラムコの上場で期待された $1,000 億が SVF に入ってくる予定だったから,それが取りやめになった以上,サウジからの入金は途絶えたと考えるのが自然である。とすると,"SoftBank の投資" を "SVF の投資" だと偽っている可能性がある。SVF の利益は,連結決算により 本社の営業利益に直接に反映するからだろう。
    ──────
     ちょっと 笑えるのは (笑),上のような実態を決算に発表しているのに (SVF の実態はほとんど 休眠状態なのに) サウジからカネをもらうの もらわないのと社長が議論していることだ。
     実態として最近はもらっていないのだから,"最近はご縁がありません" と言えば終わりだろう。SoftBank だけで投資を行なっており,SVF は活動を停止しています … と言えばよい。
     なぜ サウジから火中の栗を拾おうとするのか?
     なお Vision Fund の "投資利益" 6487 億円のうち,5037 億円は Nvidia, Oyo の未実現評価損益 (つまり お得意の公正評価) による。
     Brightstar の赤字は急増した。Sprint の影の尻拭いに大忙し (笑)
    "利益の数字そのものが途方もない。" … と東京の BNP パリバ SA の投資調査本部長 中空麻奈が言う。 "たぶん 会計手続きの変更によるものではなさそう。でも 利益が一体どこから来るのか ますます理解しづらくなっている。"
      ・・・ Bloomberg, 2018/11/05「SoftBank の Son は,サウジとのつながりを詮索される中,利益の急増を見る」

  14. Pressure on Masayoshi Son ahead of SoftBank earnings
    SoftBank 決算を控えて,Masayoshi Son に重圧
    Financial Times,2018/11/01
    By Kana Inagaki
    Khashoggi 殺害を受けて,$1,000 億のサウジ支援 Vision Fund の将来に疑問が残る。
     SoftBank 投資家は 11月5日 (月) の F2Q 決算で,Masayoshi Son CEO に対する緊急質問のリストを持っているだろう。
     そのリストのトップを飾るのは,サウジアラビア人コラムニスト Jamal Khashoggi の殺害の後,サウジが支援する SoftBank の基金の将来である。
     今回の決算発表は,Khashoggi 事件 ならびに サウジアラビア政府と SoftBank との関係への影響,そして Vision Fund の行なう投資への影響について Son が公式に語る最初の機会を提供する。
     日本の通信+テックグループの株価は, Khashoggi が 10月初めに行方不明になって以来 −20% 下がった。 そして SoftBank の国内通信事業は,料金を引き下げよという政府の重圧下にあるので,株価はさらなるセルオフが予想される。
     投資家は SoftBank が最新の数字を発表するとき, 5つの重要な因子に注目するだろう。
     (1) Vision Fund とサウジアラビア
    SoftBank の議長兼 CEO Masayoshi Son が サウジアラビアの
    Mohammed bin Salman 皇太子とニューヨークで契約後握手する。
    Bloomberg)
     リヤドから $450 億を受け入れた世界最大のテック基金の創設は,Son と (サウジアラビアの事実上の支配者である) Mohammed bin Salman 皇太子との密接な関係なしには不可能だったろう。ところが,サウジ体制を批判する Khashoggi の身の毛のよだつ謀殺を受けて, 2人のつながりが今や疑念を招いている。
     この問題について Son は公式の声明を出していないが,SoftBank の Marcelo Claure 最高執行責任者は,Son が以前に自慢したように当社グループがもう1つ Vision Fund を立ち上げる計画は "確定していることではない" と言った。
     それでもアナリストらは,Son が Mohammed 王子と係わり続けていると信じ,SoftBank に近い1人が "我々はサウジと結婚している" と言ったと言う。
     (2) SoftBank とモバイルの IPO
     SoftBank は,国内携帯電話事業の新規株式公開 (IPO) から $300 億の調達を目指している ── この上場は,史上最大の株式売り出しとなる見込みである。しかし,東京証券取引所で 12月19日に計画されているこの IPO のタイミングは,理想的と言うにはほど遠い。
    $300 億
    SoftBank が携帯電話事業の上場から調達を目指す金額である。
    SoftBank の株価は,通信の主たるライバル NTT DoCoMo が携帯電話料金の最大 40% ── 金額にして合計 \4,000 億 ($350 億) の値下げを発表したことを受けて,木曜日 −8.2% 下がった。これは日本の携帯料金が高すぎると政府が苦情を言ったためである。DoCoMo の株価も −14.7% 下がり,No. 2 の KDDI は −16.0% 下がった。
     "我々は,日本で No. 1 のシェアを持つキャリアによる料金引き下げが業界全体に将棋倒し効果を持ち,他のキャリアに負の影響を及ぼすものと信じる。" … とクレディスイス証券の米島慶一リサーチ・アナリストが言う。
     (3) コングロマリット・ディスカウント
     Son は,中国 E-コマース巨人 アリババ,Yahoo Japan,ならびに その他多くの企業を サウジ支援の Vision Fund を通じて所有する値打ちを考えれば,SoftBank の株価は不当に評価されている … と長い間 訴えている。
     シンガポールの SmartKarma に勤め,東京を本拠地とする通信アナリスト Nathan Ramler は,SoftBank の株式価値を 19.5 兆円 (1株 \17,700) に評価する。これを仮定すれば,現在の株価は 53% のコングロマリット・ディスカウントされている。
     F1Q に,Vision Fund は営業利益 \2,400 億を挙げ,日本の通信事業を超える寄与をした。これは年間利益の 1/3 を占める。投資家は,この動向が F2Q へ続くかどうかを見守るだろう。
     S&P Capital IQ によれば,9月末までの3ヵ月にSoftBank は \2,110 億の純利益を上げると予想されている。1年前の同期の純利益は \970 億だった。
     (4) Uber と WeWork
     投資家は,Vision Fund の投資の成果を聞きたがるだろう;特に アメリカの配車アプリ Uber と共有オフィス・プロバイダ WeWork について。Uber は6ヵ月以内の IPO を準備しており,$1,000 億を超える評価を狙っている … と事情を知る複数の人が言う。多くの投資家は,Uber の IPO が SoftBank の株価の再評価につながる待望の触媒になることを望んでいる。
     ところが,アナリストが心配する原因の1つは,ますます怪しくなる WeWork の評価である。SoftBank は,赤字を続けるアメリカの会社に追加で $100 億の投資を協議中である。この投資の規模によっては,SoftBank が WeWork の株式を大量に引き受けることになり,過半数の支配を獲得することもあり得る。
     (5) 債務
     SoftBank が四半期決算を発表するたびに,投資家は 会社の債務の水準に注目する。今年6月末の時点では,同社は \17.3 兆の有利子負債と,\2.7 兆の現金 および 現金同等物を所有する。
     大型のテック銘柄に対する最近のセルオフは,バランス・シート上の債務を株式投資からの利益により埋めようとする Son の戦略への懸念を再点火した。サウジ関連の懸念に加えて,SoftBank の株価の最近の下げは,投資先の一部の企業 ── 特に Nvidia と Alibaba の弱さに火をつけられたものである。
     
    そうなんですよね。最後のところ ・・・
     「SoftBank の株価の最近の下げは,投資先の一部の企業 ── 特に Nvidia と Alibaba の弱さに火をつけられたものである」
      ・・・ その通りなんだけど,これを指摘した記事を初めて見ました。
     どちらも "優良企業" というイメージがあるが,高値から 2/3 くらいに下がっている。
     ただし ・・・ ここにはなぜか指摘していないが,強烈な下げは 10 月に入ってからなので,影響が本格的に現れるのは 12月決算からである。
    WeWork については,投資額が余りに巨大であるために Vision Fund の中のクジラのような存在となり,Fund と WeWork が共倒れする危険が指摘されている。ベンチャー基金というものは,リスクを考慮して,こんな偏った投資をしないものらしい。
    つい先ほど 「カタール首長を年明け日本招待へ 安倍首相が直接謝意伝達」
     というニュースが出た! 要注意だよ 社長さん!
     カタールはサウジアラビアと隣国ながら敵対する仲である。
     安田純平氏の解放に便乗して,日本 (とカタール) のサウジに対する態度を暗黙の裡に国際社会に表明する効果がある。人権無視の皇太子とは 日本が一線を画するという表明である。
     携帯料金の引き下げも,間接的ながら政府の同様の意向を表明する。
     ただし,ここまで泥沼に入った SoftBank としては 抜け出す道がほとんど無いように思う。
     Vision Fund の投資を半年くらい控えていれば 済むだろう (人のうわさも 75日) との説があるが,
     現実には SoftBank の投資ニュースがもう2件出ている。社長さんは 飽くまで従来のペースを落とすつもりは無いらしい。世界がどうなろうと,カネの欲しい企業は無くならないようだ。
      どういうことになるんだろうか。

  15. The Real World Is Getting Complicated for SoftBank
    SoftBank にとって 現実世界は ますます複雑化する
    Wall Street Journal,2018/11/01 @06:58 am ET
    By Jacky Wong
    ドル箱の通信部門を上場する日本のテック・コングロマリットの計画は,地元のライバルが携帯電話料金を爆下げすると発表したことを受けて 打撃を蒙った。
    Softbank 創業者 Masayoshi Son は未来論的概念を話したがる。
    しかし 今は,目前の問題に対処せねばならない。
    Toru Nahai | Reuters)
     Softbank 創業者 Masayoshi Son は好んで未来論的概念を口にする;それは人間よりも機械に関するものである:人工超頭脳,脳コンピュータ,自動運転車。ところが今や Son は,生身の人間のややこしい政治に向かうことを強いられている。
     日本最大の無線キャリア NTT DoCoMo (−14.71%) が携帯電話料金を来年4月から最大 40% 引き下げると発表したことを受けて,日本のテック・コングロマリットの株価は −8.2% 急落した。DoCoMo の動きは,政府高官からの最近の (日本では競争の欠如により料金が高止まりしているとの) 苦情を受けたものである。日本は DoCoMo, KDDI, Softbank 3社の寡占体制にある。
     政府は電話料金をキャリアに命令する権限を持たないが,DoCoMo の親会社の 35% の権益を所有しており, 説得する力を 事実上持つ。KDDI と Softbank は 未だ料金引き下げを発表していないが,市場の圧力が足並みを揃えさせることは確実だろう。キャリア3社は 全体として,火曜日に時価総額を $310 億失った。
     この料金引き下げは,国内通信部門を上場する計画を持つ Softbank にとって特に打撃になるだろう。この IPO により Softbank は,リスクの多いテック企業への賭けの資金手当て ならびに 借入金の返済を計画する。6月に終わった四半期に,SoftBank の営業利益の 1/3 をこのセグメントが占める。このため Softbank にとって安定なドル箱である。
     だが,最大のライバルが政治の圧力に屈したことにより,投資家は Softbank の通信部門の評価を引き下げるだろう ── したがって,IPO から得られるカネは予定より減り,あるいは 売り出す株数を増やす必要が生じる。 同社は 以前,中国の E-コマース巨人アリババが 2014 年の上場で $250 億を調達した以上の金額を調達したい意向を銀行に伝えていた。しかし,そんな高望みはもはや通用しないだろう。85% を握る Sprint と T-Mobile を合併する提案は,規制当局の認可待ちである。
     これら全ては,サウジのジャーナリスト Jamal Khashoggi が先月殺された騒ぎから Softbank がショックを受ける中で起こった ── サウジアラビア王国は,SoftBank の $1,000 億弱の Vision Fund の主たる支援者である。多くの企業は サウジアラビアとの連携を絶っており,Son は "砂漠のダボス" と呼ばれるビジネス会議への出席を取り消した。木曜日の急落の前,Khashoggi がイスタンブールのサウジ領事館内で行方不明になって以来,SoftBank は時価総額の 20% 弱を失った。
     最近の同社株価は,世界のテック銘柄と並行した4月以来の上げのほぼ 50% を掃き出した。今や,それらの成長株も人気が落ちている。Softbank の場合には,それに 投資家が当分の間 離れるべき理由が加わる。
      Write to Jacky Wong at JACKY.WONG@wsj.com

  16. SoftBank Shares Tumble as Pressure Mounts on Phone Fees
    電話料金への圧力が増大する中,SoftBank 株が急落する
    Wall Street Journal,2018/11/01 @10:19 am ET
    By Mayumi Negishi & Kosaku Narioka
    政府からの批判は,携帯事業の収益性の脅威となり,SoftBank に懸念を加える。
     SoftBank Group (−8.16%) を含む日本のトップ携帯キャリアの株価は,政府による料金引き下げ圧力が世界で最も儲かる携帯市場の1つでの収益の伸びを奪うのではないかとの惧れにより,木曜日急落した。
     SoftBank 世界投資マシーンの背後の中核エンジンをいたずらすることにより,その影響は世界で最も価値あるスタートアップ企業を含む帝国に及びかねない。
     SoftBank は,既に $1,000 億弱の SoftBank Vision Fund の主たる後援者サウジアラビアの政治的混乱から圧迫を受けている。欧米の多くのビジネス・リーダーらは,ジャーナリスト Jamal Khashoggi が王国のイスタンブール領事館で殺害されたことを受けて,Mohammed bin Salman 皇太子が率いる 10 月のサウジ投資会議から身を引いた。SoftBank の Masayoshi Son CEO は,会議での講演をキャンセルしたが,会議中に皇太子と面会した。
     SoftBank は,日本の3大携帯電話サービス・プロバイダの1社としての立場から利益を挙げながら,Uber Technologies のようなインターネット企業への投資を成長の主たる柱としてきた。SoftBank は,日本の携帯事業を東京証券取引所に上場する計画を持つと言う。これは 世界への投資の資金を調達することを助け,中東の投資家への依存を減らす動きである。
     日本最大のキャリア NTT DoCoMo が政府の圧力に屈し,今週 料金を 40% も引き下げると発表したため,SoftBank のこの通信事業の収益性は今や 危うい。No. 2 のキャリア KDDI も料金引き下げを検討すると言う。
     この料金引き下げは,日本政府からの数ヵ月に及ぶ批判に応じたものだった。菅義偉官房長官は今年8月,3社がビッグな年間利益を挙げていると酷評し,日本のトップ携帯電話キャリアは 40% ほど料金を引き下げることができると述べた。政府の調査によれば,東京の平均的月間スマートフォン料金は,ロンドンやパリより 少なくとも 50% 高い。
     木曜日,このニュースを受けて,NTT DoCoMo の株価は −15% 弱下がり,KDDI は −16% 以上下がって4年ぶりの安値をつけ,SoftBank は −8% 超下がった。
     SoftBank は,未だ料金引き下げを発表していないが,日本の飽和した携帯電話市場の 3/4 を支配するライバル2社が料金を引き下げれば,追随を迫られることは必至であろう。
     "SoftBank 通信部門の成長の見通しには,疑念を抱かざるを得ない。" … と しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長が言う。
     "我々は,競争の観点と顧客のニーズに基づき,料金を常に検討している。今後もそうするつもりだ。" … とSoftBank の日本の携帯事業のスポークスマン 村永大輔が言う。
     SoftBank は,中国 E-コマース巨人アリババ集団よりも多い額を IPO で調達したいとの意向を銀行に伝えた … と この交渉に詳しい1人が言う。アリババは,$250 億を調達した。
     債券の格付けがジャンク級の SoftBank にとって,資金手当ては慢性の頭痛となっている。Son CEO は,SoftBank が資金を得られないために投資機会を失うと 繰り返し 嘆く。彼は,これ以上の債務なしに投資を続けるために Vision Fund を作ったと言う。
     SoftBank は,アリババの権益などへの投資から得た大きな利益の上に胡坐をかいている。とは言え,これらの利益は容易に換金できるものではない。Son は 複数の後継 Vision Fund を それぞれ約 $1,000 億の規模で立ち上げたいと言う。
     今週,SoftBank と Deutsche Telekom AG は それぞれ アメリカのキャリアの合併を承認した。アメリカの独占禁止当局は $260 億超の取り引きを審査中である。その決定は 来年まで出ると予想されていない [aren’t expected to issue a decision until next year]。
      Write to Mayumi Negishi at mayumi.negishi@wsj.com and Kosaku Narioka at kosaku.narioka@wsj.com

  17. 携帯料金値下げ,来年10月までに3社寡占を改善へ=官房長官
    ロイター,2018/10/22 @11:58
    中川 泉
    菅義偉官房長官は 10月22日(月) 午前の会見で,携帯電話の料金引き下げの方針について,2019年10月までに分かりやすいサービスと納得のいく料金の実現に向けて できることを加速し, 3社の寡占状態を改善する必要があるとの考えを示した。
     同長官は,"携帯サービスは,公共の電波を利用しており,今や国民のライフラインの1つだ。3社で9割のシェアという寡占状態で,競争が全く行なわれていない" と問題をあらためて指摘した。"総務省で既に検討会が開かれていいる。スピード感をもって検討し,結果が得られたものから速やかに実施することが大事だ" … と述べ,早急な対応実施を求めた。その上で,楽天が 2019年10月にはサービスに参入することが決まっており,料金は既存3社の半額を申請しているため,"それまでの間に寡占状態を無くさなければならないと思っている" … と強い調子で述べた。
     サウジアラビアの在トルコ総領事館で同国のジャーナリストが死亡した事件については "極めて残念だ" と述べると同時に,"トルコが現在捜査中であり,事態の推移を注視している。中立・公正・透明性ある解決を期待している" … とした。
     またトランプ米大統領が,米露で 1987 年に結んだ中距離核戦力 (INF) 全廃条約を破棄する意向を示したことについて,"米露が果たしてきた役割について,地域の安全保障へ与える影響を踏まえて,注視している" … との認識を示した。
    またまた 念を押すかのような4割引き下げ問題。
     今日 TV のニュースでこれを見たが, 3社の "すさまじい" 反発を報道していた。
     民間の料金に政府が介入するのは筋違いであり,鉄道運賃も航空運賃も4割引き下げよと政府が言うのか … との反論も紹介されていた。
     3社のうちで,最も顧客数が少なく,また カネを最も掛けていないために 客数の伸び方が最低の SoftBank が3社のうちで最もコスト高であることは明らかだ。したがって,SoftBank が狙われていることは明らかだ。
     そもそも この値下げは3年前に安倍首相が言い出したものである。
      (沖縄知事選挙のために言い出したことだから,もう済んだ … などという愚かな記事もあった)
     3年後に再発したということは,孫社長が 安倍首相を完全無視した結果である。
     バカ社長が何を 無視したかは,ちょっと考えれば誰にでも分かることであるが,審議会の席などで 首相の忖度をするわけにはいかない。委員さんも苦しいことである。

  18. SoftBank's mobile unit preparing for December 19 listing - DealWatch
    SoftBank のモバイル部門が 12月19日の上場を予定する ── DealWatch
    Reuters,2018/10/03 (東京)
    By Sam Nussey
    SoftBank Group は,モバイル部門を 12月19日に上場する手配をしている。資本市場通信社 DealWatch が水曜日に伝えた。
    2兆円になりそうな上場は,東京証券取引所の認可を待っているところである。
     認可は,SoftBank の第2四半期決算が発表される 11月5日に発表される見込みである … と DealWatch が複数の匿名情報筋を引用して伝えた。
    信じがたい。
     "重大事故" を9月17日に起こして,その後の詳細な報告もない。会見してお詫びもしない。
     こんな ひどい会社が上場を許されるのか?
     東証が SoftBank の決算発表に合わせて同日に上場を発表 … ですか ・・・ 。
     よほど 東証は儲かるんだろう。

  19. Japan: SoftBank deleted 10.3 million emails in error
    日本のソフトバンクは, 1030 万通の E-メールを誤って消去した
    The DailyStar,2018/09/23 @05:21 pm, 2018/09/24 @12:59 pm
    The Japan News/ANN (Tokyo)
    SoftBank Corp. has mistakenly deleted about 10.3 million emails that were supposed to be sent to about 4.36 million users of its mobile phones, the carrier announced on Friday.
    According to SoftBank, the failure was caused by a malfunction in the company’s filtering system, which automatically sorts out spam emails and blocks their delivery.
     The Internal Affairs and Communications Ministry of Japan told SoftBank on Friday to provide its users with sufficient explanation for the failure, as the ministry regards it as a serious incident under the Regulations for Enforcement of the Telecommunications Business Law.
     The failure lasted for 22 hours and 28 minutes, from 10:48am on September 17 through to 9:16am the following day, according to SoftBank. Some emails sent from domain names that included “.co.jp” were mistakenly considered spam and automatically deleted.
     The ministry also called on the company to give a report on the cause of the incident and measures it will take to prevent a recurrence.
    "Softbank, spam" で検索すれば分かるが,読売新聞の英語サイトなど,英語による記事は少しずつ増えている。

  20. SoftBank: More than 10 million e-mails deleted
    SoftBank:1,000 万通以上の E-メールを削除した。
    NHK World,2018/09/21 @21:43
    Japan's major mobile phone carrier SoftBank says more than 10 million e-mails have been lost due to a faulty mail system.
     SoftBank says the system mistakenly deleted about 10.3 million mails that used ".co.jp" as spam between 10:50 AM on Monday and 9:15 AM on Tuesday.
     The deleted e-mails are part of SoftBank and its affiliate Ymobile e-mails.
     SoftBank's system automatically blocks mail that it judges as spam and instantly deletes them before they reach the addressee's inbox.
     The company says 4.36 million customers who use their spam filtering functions have been affected.
     SoftBank says it found the problem after it received complaints from senders that their mails weren't received.
     The company says it takes the problem seriously and will make every effort to prevent it from happening again.

  21. 利用者に対する十分な説明等の実施に関するソフトバンク株式会社に対する要請
    総務省,2018/09/21 (金)
    総務省は 本日,ソフトバンク株式会社 (代表取締役社長執行役員兼 CEO 宮内 謙) に対し,本年9月17日 (月) に発生した事故を踏まえ,利用者に対する十分な説明等の実施を図るよう文書により要請しました。
     (1) 経 緯
     ソフトバンク株式会社 (代表取締役社長執行役員兼 CEO 宮内 謙) が提供するインターネット関連サービス (電子メールサービス) について,本年9月17日 (月) に,約22時間にわたり,約436万人の利用者に影響を及ぼし得る事故が発生し,同月18日 (火) ,総務省は同社から当該事故の報告を受けました。
     総務省において報告内容を精査した結果,電気通信事業法施行規則 (昭和60年郵政省令第25号) 第58条に規定する重大な事故に該当するものであることを確認しました。
     本件事故は,同社の利用者に宛てた「.co.jp」を含むドメインのメール・アドレスからのメールについて その一部が不達となり破棄されるものであり,社会的影響が大きいものと認められます (概要は別紙 PDF1参照)。
     また 本件事故については,同社において当該障害の認知に時間を要したとともに,当該認知をした時点から詳細な状況の把握 および 当省への報告に時間を要し,その間 速やかな利用者への説明も十分に行なわれていないと認められます。
     このような状況は,利用者の利益を阻害するものであることから,本件事故に関して,利用者に対する十分な説明等を実施する必要があるものと考えられます。
     (2) 指導内容
     総務省は本日,同社に対して,[1] 利用者に対して十分な説明を行なうこと,[2] 電気通信事業法 (昭和59年法律第86号) 第28条に基づいて行なう事故発生後から 30日以内の報告においては,各報告事項について十分詳細なものとするとともに,関連システムの運用等の業務請負先も含めた社内における事故情報の連絡要領,連絡体制等についても明確にすることを実施するよう要請を行ないました (別紙 PDF2)。
     (3) 今後の予定
     総務省は 引き続き,電気通信サービスの安定的な提供を確保するため,必要な指導 および 監督に努めてまいります。
     (参考:関係条文)
     ○電気通信事業法第28条 電気通信事業者は,第8条第2項の規定により電気通信業務の一部を停止したとき, または 電気通信業務に関し通信の秘密の漏洩その他総務省令で定める重大な事故が生じたときは,その旨をその理由 または 原因とともに,遅滞なく総務大臣に報告しなければならない。
     ○電気通信事業法施行規則第58条 法第28条の総務省令で定める重大な事故は,次の通りとする。
     1 次の表の上欄に掲げる電気通信役務の区分に応じ,それぞれ同表の中欄に掲げる時間以上電気通信設備の故障により電気通信役務の全部 または 一部 (付加的な機能の提供に係るものを除く) の提供を停止 または 品質を低下させた事故 (他の電気通信事業者の電気通信設備の故障によるものを含む)であつて,当該電気通信役務の提供の停止 または 品質の低下を受けた利用者の数 (総務大臣が当該利用者の数の把握が困難であると認めるものにあつては,総務大臣が別に告示する基準に該当するもの) がそれぞれ同表の下欄に掲げる数以上のもの。
      電気通信役務の区分 時間利用者の数
    一 緊急通報を取り扱う音声伝送役務 1時間 30,000
    二 緊急通報を取り扱わない音声伝送役務 2時間 30,000
    1時間 100,000
    三 利用者から電気通信役務の提供の対価としての料金の支払を
    受けないインターネット関連サービス (音声伝送役務を除く)
    24 時間 100,000
    12 時間 1,000,000
    四 一の項から三の項までに掲げる電気通信役務以外の電気通信役務 2時間 30,000
    1時間 1,000,000
    2 電気通信事業者が設置した衛星,海底ケーブルその他これに準ずる重要な電気通信設備の故障により,当該電気通信設備を利用する全ての通信の疎通が 2時間以上不能となる事故 .
    別紙 PDF1
         ソフトバンク株式会社における本件に係る事故の概要
    ・発生日時:平成30年9月17日 (月) 10時48分から同年同月18日 (火) 9時16分まで (22時間28分)
    ・影響内容:一部のメールドメイン(.co.jp)から送られたメールが,迷惑メールフィルターにより迷惑メールと判定され,同社の利用者に不達となり破棄された
    ・影響範囲:全国(約436万人)
    ・原 因:迷惑メールフィルター機能の不具合による
    別紙 PDF 2
    総基技第 2366 号
    平成30年9月21 日
    ソフトバンク株式会社 代表取締役社長執行役員兼 CEO 宮内 謙 殿
    総務省総合通信基盤局長 谷脇 康彦
         電気通信事故に関する適切な対応 および 報告について(要請)
     貴社の提供するインターネット関連サービス(電子メール)について,本年9月17日 (月) に,約22時間にわたり,約436万人の利用者に影響を及ぼし得る事故が生じ,当該事故は,電気通信事業法施行規則 (昭和60年郵政省令第25号) 第58条に規定する重大な事故に該当するものとなった。
     本件事故は,貴社の利用者に宛てた「.co.jp」を含むドメインのメールアドレスからのメールについて,その一部が不達となり破棄されるものであり,社会的影響が大きいものと認められる。
     また,本件事故については,貴社において当該障害の認知に時間を要したとともに,当該認知をした時点から詳細な状況の把握 および 当省への報告に時間を要し,その間 速やかな利用者への説明も十分に行われていない。
     このような状況は,利用者の利益を阻害するものであることから,本件事故に関して,下記事項を確実に実施するよう要請する。
             
     1 利用者に対して十分な説明を行なうこと。
     2 電気通信事業法 (昭和59年法律第86号) 第28条に基づいて行なう事故発生後から 30 日以内の報告においては,各報告事項について十分詳細なものとするとともに,関連システムの運用等の業務請負先も含めた社内における事故情報の連絡要領,連絡体制等についても明確にすること。
    以上
     SoftBank 広報の書き方が これまた酷い (2018/09/21 広報)。
     幼稚な無責任人間しか いないらしい。
     総務省は これを "重大な事故" と断定しているのに,"何となくおかしな現象が自然発生したかのような" 無責任な書きぶりである。
     『送信元のドメインに「.co.jp」を含むメールが,誤って迷惑メールとして判定されてしまい 消失していることが判明しました』
     『弊社では今回このような事象が発生したことを重く受け止め,再発防止策の徹底を図り,サービスの安定的な運用に向けて全力で取り組んでいきます
      "事象が発生","判定されてしまい" とは,天変地異か? 自然災害か? 損害賠償を逃げたいのか?
     還暦をとっくに超えた ボケ社長 (70) の記者会見をあくまで逃げるためか (笑)
     SoftBank の担当者がバカであったために,ソフトウェアにこのような不具合が発生したのである。
     なぜ 自分がバカであることを率直に認めないのか?
     こんな幼稚な書き方は,利用者の怒りを わざと買おうとバカな社長が指示したものであろう。
     こういう "言い逃れ文化" を根本的に改めなければ,再発は間違いない。
    ──────
     根本的に理解できないのは,10 M 通程度のファイルを SoftBank はバックアップしていないのか?
     1通のファイルが 10 kB 程度とすると 合計 わずか 100 GB である。この 100 倍でも 10 TB に過ぎない。
     PC 用のハードディスクも 今では 3 TB が1万円で買える世の中である。
     ソフトウェアのミスは 必ずある (技術者ならば,誰でも知っていることだ)。
     スパムであろうがなかろうが,バックアップを取らずに削除することが 最大のバカである。
     会社の日常業務もその程度か?
     僅かなバックアップ費用 (総額 10 万円程度) を惜しんで,顧客の大量脱出を許す。
     それとも,莫大な利益は 巧みな会計操作によるものであり,実態は 火の車?(笑)
     カネが無くてほんとにホントに困っている。ハードディスクも買えない。3兆円は見せ金か?
     親会社の社長ともども,還暦と古希のボケ老人社長が2人並んで ,記者会見して丁寧に謝罪するのが良いと思う。
     間違いは誰にでもあることだ。お詫びするのが世間の常識だろう。

  22. Report claims SoftBank is leveraging IPO to secure financing for other businesses
    報道によれば SoftBank は,他事業の資金手当ての確保のために IPO を利用する
    FierceWireless,2018/09/07 @11:40 am ET
    By Kendra Chamberlain
    Bloomberg 報道によれば,SoftBank Group の Masayoshi Son CEO は 来たる SoftBank Mobile IPO の引き受け候補業者に 親会社の別の事業にカネを貸せと要求している。
    SoftBank は,モバイル事業の 1/3 を売り出すことを検討中であり,
    上場価格 $900 億となる見込みである。写真は, 東京池袋の店舗。
    (Wiki Commons)
     匿名の情報筋を引用して Bloomberg は,SoftBank が無線事業の IPO への参加の可能性を利用して (SoftBank Group の他の事業向けに) ローンを引き出すことを検討している … と報道する。これは 高度に異例と考えられる。
     今年8月,Son は SoftBank Mobile を東京証券取引所に上場する計画を発表した。これは,世界最大規模の上場になる見込みである。SoftBank は,上場価格 $900 億になるモバイル事業の 1/3 の権益を売却することを検討している。$300 億の IPO は アリババの 2014 年の $250 億 IPO を超え,史上最大の IPO となる。以前の報道は,SoftBank が 2018 年第4四半期にも上場すると伝えていた。
     SoftBank は,銀行から合計 $80 億のローンを受けるために,ARM Holdings のような外部企業の株を担保に使いたい。Bloomberg の記事によれば,SoftBank は銀行側に もしも融資をすれば IPO に参加するチャンスが増えると伝えている。この種の取り引きは IPO では珍しいことではない。証券取引所に上場する会社は 通常,過去に融資を提供した会社に IPO の取引業者をさせる。だが,親会社の別の子会社への融資を要求するとは 異例である。
     SoftBank のスポークスマン Takeaki Nukii はこの報道を否定し,Bloomberg に,"これに真実は無い。" … と述べた。
     Bloomberg は,融資が可能かどうかを金融機関が判断するし,もしも可能ならば どんなリスク評価をまずクリアーする必要があるかを判断するだろう … と書いている。

  23. SoftBank Is Seeking Loans From Banks Pitching for Big IPO
    SoftBank が,通信子会社の大規模 IPO をエサに,銀行から融資を要求している
    Bloomberg,2018/09/07 @04:15 am, @09:47 am JST
    By Alex Barinka , Ruth David & Takahiko Hyuga
      協議中の1つの選択肢は,銀行が $80 億を貸すことだという。
      SoftBank のスポークスマンは,"これには真実が無い" と言う。
    Masayoshi Son (©Kiyoshi Ota | Bloomberg)
    事情に詳しい複数の人によれば,Masayoshi Son は,ウォール街の銀行に もしも 世界最大の IPO に一口乗りたいのなら 財布を開けと要求している。
     SoftBank Group は,同社の日本無線部門のメガトン級 IPO で大きな役割を引き受けたい銀行 [アメリカでは 銀行=証券会社] に 親会社帝国の他部門に貸し出しを提供すべきだと告げた … と彼らは 本件が非公開であることを理由に身元を明かさない条件で言った。
     交渉中の選択肢の1つは,銀行団が合計 $80 億を貸すことだ … と2人が言う。SoftBank は,英国のコンピュータ・チップ設計会社 ARM Holdings Plc の株を担保に使う … と1人が言う。
     SoftBank は,SoftBank Mobile の IPO への参加をニンジン (carrot) にして,銀行を経由する追加資本へのアクセスの増加を企てている … と彼らは言う。また,傘下企業の株式を担保にする選択肢も含めた協議は行なわれてきた … と補足した。融資を提供する銀行は,IPO で有利になる見込みだと彼らは言う。
     "これには真実が無い。" … と SoftBank のスポークスマン抜井武暁が電話で言い, それ以上のコメントを拒んだ。
     SoftBank の株価は 東京の 09:46 am 現在,−0.6% 安の \9,945 である。この株は今年 +11% 上がっている (Topix は −7.6% 安)。
     ローンの構造や担保について最終決定はなされておらず,貸し付けを行なわない銀行に SoftBank が引き受けを割り当てることもあり得ると彼らは言う。協議の一部には,$1,000 億 Vision Fund に貸し付けを行なうアイデアもあると 一部の人が言う。
       《 Bloomberg 日本語訳はここまで 》
     世界最大級の銀行の間で争われているのは,世界最大の上場に参加する威信と手数料である。SoftBank は,SoftBank Mobile を $900 億に評価する上場で,その 1/3 の売却について顧問と協議している … と事情に詳しい複数の人が8月に言った。
     IPO を行なう会社とそれを支援する会社は 通常,顧客として利用したり これまでに取り引きのある銀行を優先する。Snap を例に取ると,消える写真アプリのメーカーは,引受業者の選定にあたって,どの銀行から多くカネを借りたかを重視した … と当時の事情に詳しい複数の人が言う。Bank of America は 赤字の会社への融資を拒み,結局 上場の引き受けをしなかった … と彼らは言う。
     ところが,SoftBank Mobile の事情は独特である;なぜなら,上場しようとしている会社 [SoftBank Mobile] にカネを貸せと言われているのではなく,コングロマリットの別会社にカネを貸せと要求されているからだ … と彼らは言う。
     銀行は,協議中の貸し付けが可能であるかどうかを評価している … と彼らは言う。いずれにせよ,大企業並みのリスク評価をクリアーする必要がある … と彼らは言う。
      — With assistance by Pavel Alpeyev
    "彼ら [銀行] は,親会社帝国の他部門に貸し出しを提供すべきである" (they should offer to lend to other parts of the parent company’s empire)
     いかにも "親会社帝国" と社長の "カネカネ体質" をよく表現している。
      日本語訳では "帝国" とか "エサ", "ニンジン" を遠慮しているが,広報は必死になって否定するしかない。
    "カネ欲しい,カネ欲しい,カネ欲しい" … これしか考えられない哀れな老人社長。
     『IPO の引き受け業者になりたいなら,ワシの別の子会社にカネを貸せ!』… と銀行を脅す。
     ただひたすら借金を増やし,それを世界中の赤字企業にばら撒く … これが社長の方針である。
     メディアからは "おもちゃ遊び" とか "ドン・キホーテ" と呼ばれている。
     儲かっていればまだよいのだが,報道を見る限り Nvidia 以外はすべて 赤字か?
      セクハラ・レイプ企業への出資も ちらほら。
      "売り上げがゼロ" という会社もある。創立以来 何1つ売ったことが無いのである。
     ARM は,3.2 兆円で買収して 2.8 兆円が "のれん" だし,買収以後ずっと赤字だから まともな銀行はいくら貸すのか? アリババを担保に $80 億借りたが,株価は もう 22% (~3兆円?) も下がったし,SoftBank が持っているのは NYSE で売れる ADS ではなく,売れない "登録可能証券" である (Bloomberg)。これも掛け目はかなり低いだろう。
    ──────
     そもそも なぜ そんなに "カネ" に狂うのか? この頃は "カネ" が目的で生きているように見える。
     しかし,なんとも "独特な" 構図である。
     SoftBank が持っている A 社株式を担保に連帯保証して,銀行から B 社に融資させる。上場するのは C 社である。
      2階建ての信用取引のようなもので,リスクが大きい。
      3兆円の現金があると自慢しているが,実態は手許逼迫?
     サウジアラムコの上場中止で 入金が期待できないから,SVF を自力でやるのか?
     サウジの PIF と総額 $2,000 億 (今年 $50 億) という 200 GW ソーラー計画 (笑いものにされている) を 2018/03 に契約したから,そのカネが必要なことは間違いない。
     Fortress の運用資産 $380 億を "群戦略" に利用しようとしたが,CFIUS から "経営権を認めない" 条件付きで認可された (FT) から,あてが外れたのか?
     そもそも,銀行融資は まともな事業計画が前提である。そこをすっ飛ばして 融資の話とは おかしい。
     事業計画そのものを SoftBank が説明し,自分の手元流動性が不足で困っているから銀行にお願いするのが本筋である。そこを逆転させて 融資を前に持ってくるのは異常である。
     いずれにせよ,SoftBank が出資した赤字のスタートアップ企業群に,銀行の融資審査がどうなるかは興味深い。つまり,SoftBank の "投資ごっこ" の健全性が Goldman Sachs などにより判定される。
     それに 今 通信子会社の上場は環境が悪い。4割もの料金値下げを政府から ちらつかされている現状では,高い IPO 株価を期待できない。3兆円もの手取り金は見込めないだろう。これを承知の上で なぜ焦るのか? それに,3兆円くらいのカネは,5G への投資で吹っ飛ぶ。くだらない "投資ごっこ" に使うのではなく 通信への投資に使うのが本来だろう。親が子のカネで博打を打つなど 見下げ果てた親である。通信顧客のお蔭でここまでになったことを忘れている。
     どうも 今の社長はカネに取り憑かれている (カネが最終目的の) ようにしか見えない。
     たとえば シンギュラリティに SoftBank の将来を懸けるのであれば,バーンと株式時価発行で1兆円くらい調達すればよい。シンギュラリティなら事業計画はいくらでも書けるだろう。

  24. 携帯やネット規制を見直しへ
    ロイター共同,2018/08/23 @17:00
    野田聖子総務相は 8月23日,電話やインターネットに関する規制や政策を包括的に見直すよう情報通信審議会に諮問した。
    格安スマートフォンを含めた携帯電話市場の競争を促進し,値下げや利便性向上を図る。携帯料金を巡っては菅義偉官房長官が4割程度下げる余地があると発言しており,値下げを導く政策を描けるかが焦点になる。
     審議会は 2019年12月を目処に総務相に答申する。総務省は答申を受け,電気通信事業法の改正を検討する。
     総務省はこれまで競争促進に向け,格安スマホ事業者の市場参入を後押ししてきたが,格安スマホのシェアは約1割に留まっている。
    日経が『携帯料金下げのなぜどうして政治が介入?』という記事を書いている (2018/08/27)。
     3年前に安倍首相が言い出した時にも同じような記事を書いていた。これで2度目である。
     なぜか? 日経記者が理解できないはずはない。
     でもポイントをわざと外す記事しか書けないのである (笑)
     世の中の "料金" はたくさんあるのに,なぜ 携帯料金だけに安倍首相は執念を燃やすのか?
      ここがポイントなのである。正面切って反論するのは 前回同様 無意味である。
     安倍首相が2度も仕掛けるのはなぜか? その真意を暴かなければ解決しない。
     他方,6月の株主総会で 携帯料金について質問された孫社長は,突然 声の大きさと調子を変え, 「日本の携帯料金は世界でも安い」と断言しました。あそこだけ なぜか 調子が高かった!
     ・・・ 「ウェブサイトでその根拠を詳しく説明いたします」 … くらい言い副える余裕も無かった。反論に必死だった (笑)
     その後の菅義偉官房長官の話し方は実に対照的で "噛んで含める" ような丁寧な落ち着いた大人の物言いでした。
     ここだけ比べれば,孫社長の負けは明らか (?) です。もっと大人の話し方をする必要があります。
     いずれにせよ,水面下で ソフトバンクと官邸の間に前哨戦があったような印象です。
     孫社長が声の強さと調子をあそこで急に変えた理由が これで理解できました。
     その後 複数のテレビ番組で 外国との料金比較がされていますが,物価がべらぼうに高いニューヨークを除けば, 日本の料金は高いようです。欧州に比べても4割程度引き下げるのが妥当なように見えます。
     実際,菅官房長官は "追い打ちの会見" で,欧州の2倍くらいの高さである … と補足しました。これに対して 孫社長からの反論は いまだにありません。現代社会で反論しないということは,相手の言い分をそのまま認めたことになります。すぐさま 反論して,「1週間後には詳しい根拠を示す」くらい言えないのだから,現状では完敗です。
     一般庶民はこういう報道を見るので,テレビと同じレベルで分かりやすい説明をすることが 日経にも求められます。あんな記事ではダメです。"料金" という数字の問題なのに 数字がほとんど無いし,グラフもありません。
     [ただし 上にも書いたように,どんなに説明しても,たとえば 「人気取り政策」 だとか 「行き過ぎ」 だとか3年前と同じ非難を繰り返すのは的外れ (?) であり,その程度では首相を全く説得できなかったのだから,意味はありません]。

  25. 「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」の情報通信審議会への諮問
    総務省,2018/08/23
    総務省は 本日,情報通信審議会 (会長:内山田竹志 トヨタ自動車株式会社取締役会長) に対し, 「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」について諮問しました。
    1 諮問概要・理由
     電気通信事業法等の一部を改正する法律 (平成27年法律第26号。以下「平成27年改正法」と言います) 附則第9条において,平成27年改正法の施行後3年を経過した場合において,改正後の規定の施行の状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされており,電気通信事業分野における規律等に関連して検証を行ないます。
     また 情報通信は,我が国の経済・社会活動の基盤として重要な役割を果たしており,近年の動きとして,IoT (モノのインターネット),ビッグデータ,AI (人工知能) の普及等の技術革新により,様々なサービスの実現や社会的課題の解決を通じて生活・経済の多様な分野における役割が著しく増大しています。
     移動通信については,第5世代移動通信システム (5G) の 2020 年のサービス実現を目指して研究開発,実証試験等の取り組みが進められており,大容量化,高速化に加えて多様なニーズに応えるサービスの実現が期待されています。また,固定通信については,ブロードバンド基盤整備の推進や卸売サービスを含む FTTH サービスの進展等アクセス網の光化・ブロードバンド化が進められるとともに,東日本電信電話株式会社 および 西日本電信電話株式会社 (NTT東西) が 2025 年までにメタル回線を NGN (次世代ネットワーク) に収容する計画を発表する等 中継網のフル IP 化が進められているところです。
     さらに,SDN (ソフトウェア定義ネットワーク) や NFV (ネットワーク機能の仮想化) 等,ネットワークの柔軟性・効率性を高め,多様な主体によるネットワークの制御を実現し,IoT 時代に対応したネットワーク運用を可能とする仮想化技術の実装が進められていくことが見込まれています。
     こうしたことに加え,映像コンテンツの流通拡大に伴うトラフィックの急増や,プラットフォーム事業者の成長・拡大等,データ流通環境も大きく変化しつつあり,更なるブロードバンド化への対応が求められています。
     このように,情報通信を取り巻く環境が抜本的に変化していく中で,これまでのネットワーク構造やサービスを前提とした電気通信事業分野における競争ルールや基盤整備,消費者保護等の在り方についての見直しが急務となっています。
     以上のような大きな変化に迅速かつ柔軟に対応するため,平成27年改正法の施行状況を含め,これまでの政策について包括的に検証した上で,2030年頃を見据えた新たな電気通信事業分野における競争ルール等について検討を行なうことが必要です。
     これらを踏まえ,総務省は 本日,情報通信審議会に対し「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」について諮問しました。
     答申を希望する事項は,次の通りです。
    (1)通信ネットワーク全体に関するビジョン
     技術革新や市場環境の変化等の観点から, 2030年頃に実現が見込まれる通信ネットワークの未来像について検討することにより,電気通信事業政策の在り方を包括的に検証する。その際,通信ネットワークの IP 化の進展やソフトウェア制御等の仮想化の実装により,電気通信設備と役務・機能の関係性の変化,電気通信事業者以外の主体の役割拡大等が見込まれることも見据え,新たに求められる施策の方向性を検討する。
    (2)通信基盤の整備等の在り方
     5G の普及等のモバイル化の進展,IP 網への完全移行や光化の一層の進展を視野に入れ,通信基盤の整備の在り方やユニバーサルサービスの対象・確保手段等について検討を行なう。
    (3)ネットワーク中立性の在り方
     近年のトラフィック急増やプラットフォーム事業者の拡大,ゼロ・レーティング等の新たなビジネスモデルの登場等を踏まえ,ネットワークに係る関係者間の費用負担や利用の公平性についてのルールの在り方,利用者に対する透明性の確保の在り方等について検討を行う。
    (4)プラットフォーム・サービスに関する課題への対応の在り方
     プラットフォーム事業者の市場支配力が拡大し,レイヤを超えたサービス提供が進展している中,通信の秘密の保護等の観点から,利用者情報の適切な取扱いを確保するための方策等について検討を行なう。
    (5)モバイル市場の競争環境の確保の在り方
     IoT サービスをはじめとする多様なニーズに対応する MVNO の役割の増大が見込まれていること等を踏まえ, MNO による MVNO へのネットワーク提供条件の同等性・透明性の確保に係る方策,その他モバイル市場の競争促進に向けた政策の在り方について検討を行う。
    (6)消費者保護ルールの在り方
     光回線の卸売 (サービス卸) 等により複数事業者によるコラボレーションが進展する等,電気通信サービスの提供条件や料金体系等が複雑化する中,不適切な勧誘や広告表示等の課題が指摘されていることを踏まえ, 消費者保護ルールの見直し等必要な方策についての検討を行う。
    (7)その他必要と考えられる事項
    2 答申を希望する時期
     2019 年12月 目途。
    審議会の会長は,トヨタの会長である。これでは,KDDI に悪い答申の出るはずが無い (笑)
     やはり SoftBank だけがターゲットなのだろう。
     何しろ 安倍首相のご機嫌を損ねること1度や2度ではないからね。3年越しの不満が鬱積している。

  26. 焦点:官房長官発言で携帯各社に激震,狭まる値下げ包囲網
    ロイター,2018/08/21 @18:50 JST
    志田義寧
    携帯電話会社を巡っては,総務省や公正取引委員会も現行の商慣行や料金制度を問題視しており, 値下げ包囲網は狭まりつつある。
    8月21日の東京市場で NTT Docomo は −4.0% 安,KDDI (au) が −5.22% 安,SoftBank Group が −1.63% 安で大引けを迎えた。
     きっかけは菅官房長官の発言だった。共同通信によると,菅義偉官房長官は同日行なった札幌市での講演で,大手携帯電話会社は巨額の利益を上げているとした上で「競争が働いていないと言わざるを得ない」と指摘。「携帯電話料金は,今より4割程度下げる余地がある」と述べ,通信料金の改革に意欲を示した。
     実際,2018 年3月期の営業利益を見ると,SoftBank Group が前年比 +27.1% 増の 1兆 3038 億円,Docomo が同 +3.0% 増の 9732 億円,KDDI が同 +5.5% 増の 9627億円と, 3社とも国内トップ 10 社に入る利益を稼いでいる。Docomo の親会社 NTT も含めれば,トップ 10 社のうち4社が通信会社という状況にある。
     首相官邸が携帯電話料金に注文を付けたのは,今回が2回目である。最初は 2015年9月で,安倍晋三首相が経済財政諮問会議で通信料の引き下げに向けた方策を検討するよう指示したことで,3社の株は大きく売られた。
     総務省はこの指示を受け,携帯電話市場改革を加速。通信料金高止まりの一因とされる通信と端末のセット販売を分離する政策を推し進めたほか,楽天の携帯電話参入を認めるなど,通信料の値下げにつながる競争環境を整備してきた。
     これには公正取引委員会も援護射撃し,通信と端末のセット販売は その程度により独占禁止法上問題となる恐れがあると警告している。
     総務省の家計調査によると,2010 年に 3.66% だった世帯消費に占める電話通信料の割合は 2016年に4%を突破し,2017 年には 4.18%と じわりと増加している。固定電話は減少しており,代りに増えているのが携帯電話だ。2017 年の携帯電話の通話料は年間 \100,250 と,初めて 10 万円を突破した。
     ある総務省幹部は「通信料金が 他の消費を圧迫している」と述べ,現在の通信料の水準に不満を漏らした。
     これに対して,ドコモは「これまでもさまざまな顧客還元を行なってきたが,今後もサービスの向上を目指して,顧客の要望を踏まえた料金サービスの見直しや拡充を順次検討,発表していきたい」 (広報担当者) としたほか,KDDI も「引き続き,顧客ニーズに応えられるようサービスの向上に努めていく」 (広報担当者) とコメント。SoftBank も「引き続き顧客にとって より良いサービスを検討していく」 (広報担当者) との見解を示した。
     今回は,SoftBank Group の下落率が最も小さかった。同社は通信会社というよりも,投資会社の色彩を強めていることが背景にあるが,通信子会社は年内に株式公開 (IPO) を準備中だ。料金の値下げに追い込まれれば, IPO に影響が出る可能性も否定できない。
    官房長官が北海道で話した様子は,NHK のニュースで見た。
     非常に非常にゆっくりした話し方だったのが印象的である。
     原稿通りに話しているはずなのに,言葉を選んでゆっくりと話していた。
     「決然たる」話しぶりだった。
     明日 8月23日(木),これを受けて 情報通信審議会が開かれ,携帯電話の料金体系や取引慣行などについて具体策が議論される (産経新聞)。
    『首相官邸が携帯電話料金に注文を付けたのは,今回が2回目である。最初は 2015年9月で,安倍晋三首相が経済財政諮問会議で通信料の引き下げに向けた方策を検討するよう指示した』
      ・・・ ということは,まさにその頃 "利益率" の高さを自慢する社長さんが "虎の尾" を踏んじゃって, 今でも踏みっぱなし ということ。情報通信審議会は これまでのところ 首相の意を酌んで 「SoftBank だけが大きな損を被る案」 の作成に失敗している。だから3年も続いている。今回こそは,腹心の官房長官に言い出させて 成果を期待しているだろう。

  27. Japan pushing to end smartphone bundling, cut wireless fees: source
    日本は,スマートフォンのバンドルをやめ,無線料金の引き下げを推進する:情報筋
    Reuters,2018/08/21
    By Sam Nussey and Yoshiyasu Shida (志田義寧)
    日本は,月額料金を引き下げ,同時にスマートフォン代金と無線サービス料金のバンドルをやめることを無線キャリアに強制することを目指している … 総務省の上級官僚の情報筋が火曜日に語った。これは アップルに打撃となりそうな動きである。
     日本のトップ無線キャリア NTT Docomo, KDDI, SoftBank Group は,月額料金 \10,000 程度の2年固定契約の一環として前金なしに電話を提供する。顧客は 事実上端末を月賦で買っている。
     このような契約は端末代金とサービス料金をごちゃ混ぜにしており,参入の障壁を生んでいると見る政府は,キャリア各社に 電話代金を別払いにさせたい … と総務省の上級官僚がロイターに語った。
     バンドルの取りやめは,消費者が安いデバイスを求める中,アップルの iPhone の販売に影響を与えかねない。
     MM総研の調べによれば,日本でスマートフォンが2台売れれば,そのうちの1台は (2008 年に SoftBank の Masayoshi Son が初めて導入した) iPhone である。
      Apple may have breached antitrust rules by forcing Japanese carriers to offer discounts on iPhones and charge higher monthly fees, the country's regulators said last month, giving the U.S. firm an advantage over rivals such as Samsung Electronics.
     菅義偉官房長官が 無線料金に 40% 引き下げの余地があると語ったと共同通信が伝えると,日本の無線キャリア各社の株価は,広範に堅調な市場で 最大 5% 下げた。
     日本銀行が経済をリフレーションするのに苦しむ中,日本は無線料金の家計への重荷を軽くすることにより それ以外の分野への支出を刺激できるものと期待する。
     " 無線料金は それ以外の支出を圧迫している。" … と総務省の情報源は 匿名を条件に言った。
     政府の統計データによれば,家計支出全体に占める無線料金の割合は上がり続けており,無線料金の値上がりにより 昨年は 4.2% に達した。
     KDDI のスポークスウーマンは,同社が 端末代金とサービス料金を分離するプランを作成しており,顧客の払う料金を引き下げていると語った。
     Docomo のスポークスマンは,同社が 顧客のコストを引き下げており,"今後とも 顧客の希望に基づき 料金の変更を検討する" … と言った。
     SoftBank のスポークスウーマンは,どうすれば顧客サービスを改善できるかを 引き続き調査すると言った。
     アップルは,アメリカの執務時間外のため コメントが直ちに得られなかった。
    東京発のロイターニュースである。志田さんが書いている。
     SoftBank だけは 社長が "日本の携帯電話の料金は 安い" と大きな声で断言するだけあって,広報担当者も 値下げには触れることは許可されていないのだろう。

  28. 携帯電話契約数 (2018年06月末)
    3社の決算に基づき,TCA からデータが発表されたので,携帯電話契約数をグラフにまとめました。
    電気通信事業者協会 (TCA) のサイト は,更新されています。
    上位2社に比べれば,経営努力に著しく欠けることは明らかだ。
    こんなに企業努力が甘くても (KDDI の 1/5 でも),東証は上場させてくれるのか?
     そんなに カネが欲しくてたまらないなら,本気にならなきゃダメだろ (笑)

  29. SoftBank monetises investments as telco IPO looms
    SoftBank は,通信の IPO を見据えて投資を収益化する
    Reuters,2018/08/06
    By Sam Nussey (東京)
    日本の SoftBank Group Corp は月曜日,インドの E-コマース企業 Flipkart の売却に押し上げられて,第1四半期の営業利益の +49% 増を報告した。これは,Vision Fund の初の資産売却である。
     国内通信部門の上場を計画しているテック企業は,利益の増加が チップ設計会社 ARM Holdings の中国営業の過半数を地元のコンソーシアムに売却したことにもよると言った。
     これらの売却は,SoftBank がその投資を収益化できる初期の印である。この点は,何十億ドルものカネがテック企業に注ぎ込まれ,利益が得らないのを見てきた投資家にとって重要な懸念であった。
     サウジアラビアに支援された SoftBank の Vision Fund は世界最大のテック PEF であり, 6月末の時点で 29 社に $271 億を投資している。
     Vision Fund は まだ最終クロージングを行なっていない … と SoftBank は月曜日に言った。昨年5月の初回のクロージングでは,$930 億超を調達した。
     Fund の現在の評価額は,共同作業会社 WeWork Cos のような投資の評価額の上昇により $325 億である … と SoftBank は言う。
     SoftBank と WeWork の日本でのベンチャーは,日本中にロケーションを開設し,共有作業空間を拠点にする SoftBank 従業員がますます増えている … と Masayoshi Son CEO が月曜日に言った。
     "我々は SoftBank の本社を全部 近い将来 WeWork のオフィスに移すことを検討している。" … と Son は言った。
     飽くことを知らない投資活動のエサとして,SoftBank は国内通信部門を上場することにより更に多くのカネを調達しようと準備中である。これは 日本最大の IPO になる見込みである。
     上場に先立って,アナリストらは (日本 No. 4 の無線キャリアとして参入する野心を持つ E-コマース企業 楽天のような形の新しいライバルに直面する) 通信部門の収益を厳しく調べている。
     この部門の売り上げは 6月四半期に +4.6% 増,利益は +0.7% 増であった。
     Son は 第2 Vision Fund を予定していると以前述べたが,月曜日には その時期と規模について明言を避けた。
     6月までの3ヵ月の営業利益は 7,150 億円 となり,1年前の 4,793 億円 から +49.2% 増加した。
     SoftBank は,余りにも多くに不確かな要因があるとして,通年の予想を開示しなかった。

  30. SoftBank Vision Fund への投資家の出資状況
    ソフトバンク 決算発表,2018/08/06
    今回の決算発表から,SVF への出資が 何% 履行されたかを知ることができる。
    2017/09 決算短信 p. 22 に 次の表がある。
    合計当社外部投資家
    支払い履行額$170 億$74 億$96 億
    残額$807 億$251 億$556 億
    2017/12 決算短信 p. 22 に 次の表がある。
    合計当社外部投資家
    支払い履行額$258 億$100 億$158 億
    残額$719 億$225 億$494 億
    2018/03 決算短信 p.24 では,
    合計当社外部投資家
    支払い履行額(3)$263 億 $101 億$162 億
    残額$714 億$224 億 $490 億
    履行率26.9%31.1% 24.8%
    2018/06 決算短信の p.23 では,
    合計当社外部投資家
    支払い履行額(3)$286 億 $108 億$178 億
    残額$691 億$217 億 $474 億
    履行率29.3%33.2% 27.3%
    (3)支払義務履行後に投資計画の変更等によりリミテッド・パートナーへ返還された金額を差し引いています。
     この比較から,2018/01 ~ 2018/06 の間には出資額が $258 億 → $286 億と,僅か 3,000 億円程度増えたに過ぎない。去年より買収のペースが落ちていることは間違いないが,SVF はこの半年で 3,000 億円以上買収を やったように思う。どうなっているのか?
     見やすいように,右側にグラフ化した。
     ──
       なお SVF からの投資先のリストに Boston Dynamics, Uber が無い。認可待ちの "他2件" なのか(笑)
       Sprint に関連して気が付いたのは,BrightStar の赤字が YoY で4倍増している。
       連結決算全体から見れば 小さな額であるが,BrightStar は Sprint の "隠れアキレス腱" だろう。
       今回は SVF の利益として Flipkart の "予定" 売却益を上げているが,インド報道 (Mint 2018/07/23) によれば,Walmart がインド規制当局の認可をまだ得られていない (契約は 5月初め,遅れの理由は,Walmart が既に事業を行なっているためらしい)。
     何も "予定売却対価に基づき評価益 1,643 億円を計上" なんて カネに困っていない (?) 大金持ちさんがすることは無かろう。インドの CCI から認可が下りて,現金を受け取ってから会計に計上すればよい。
       ARM のセグメント利益 1451.92 億円は,ARM China の売却益 (1613.47 億円) を含むので,結構な赤字である。しかも ARM の "のれん" は いまだに 2.78 兆円もある。のれんを償却しないで 身を売って利益を出している印象だ。も~ 何が何だかわからない。この会社の決算は,誰にも本当のところは分からないだろう。持ち分が減ったのだから,その比率 (~10%) の "のれん" を 2,800 億円程度償却するのが本来だと思うが,そうすると売却損になる。
       Sprint でもあった "売り上げ認識規準" の変更が4月1日から始まった。たとえば 営業利益の押し上げは ・・・
     営業利益 (2017 旧基準) 4792.73 億円 → (2018 新規準) 7149.93 億円 = +2357.20 億円 (+49.2%)
     ただし 新基準による影響は 267.08 億円なので,これを差し引くと +2090.12 億円 (+43.6%) となる。
       今回の決算の事前報道では,CNBC から,Son が SVF の1年目のリターンを 60% だと自慢している … との記事があった。
       Uber, GM Cruise は当局の承認待ちと書かれている。その Uber には,ニューヨークで規制が始まった。これが アメリカ中に広がれば ・・・ と Wall Street Journal が伝えている (2018/08/08)

  31. Yen Bond Investors Worry About SoftBank Without Masayoshi Son
    円建て債の投資家は,Masayoshi Son のいない SoftBank を懸念する
    Bloomberg,2018/06/15 @05:30 JST
    By Takashi Nakamichi
      Son (60) は, 60 代で引退したいが まだ続けたいと言う。
      Son が手を引けば,SoftBank は つまづくだろう:朝日生命アセット。
    Masayoshi Son, Photographer: Akio Kon/Bloomberg
    Masayoshi Son は SoftBank Group の 300 年ビジョンを話したがるが,日本の債券投資家は それよりずっと前のイベントが気懸かりだ ── 創業者のいないテック巨人はどうなるのか?
     60 歳の Son は, 1981 年にソフトウェア流通業者として創業した会社の後継者を指名していない。近いうちに最高経営責任者の地位を降りるつもりは 全く無さそうな気配であるが,60 代で引退すると表明している意図は,SoftBank が6年物債券を今月売り出したときに注目を浴びた。
     債券購入者たちは,買収の資金手当てのために Son が巨額の債務を喜んで引き受けることに 折に触れ 不満を口にするが,ついに 彼の後継者が この拡大一方の投資をどう扱うかに懸念を抱くようになった。
     Son は 2月の決算発表で,自分の引退計画を繰り返したが,同時に 人生の残りを会社に係わっているつもりだ … と言い足した。後継計画は,日本の機関投資家を心配させるものに過ぎないが,同社が 世界最大のテック投資プールの運用会社になろうとする動きは,SoftBank が何に焦点を置くかについて懸念を呼んでいる。
     "Son は,投資に関する優れた判断とバランス感覚により,SoftBank を今日の姿に導いた。" … と朝日生命資産運用会社の上級ファンド・マネージャ Takahiro Oashi が言う。"彼のリーダーシップが無ければ,ここは つまづくだろう。"
    身構える投資家
    SoftBank の5年物社債の CDS.
    青は NTT DoCoMo, 赤は KDDI.
     SoftBank のスポークスマンは,電話と E-メールで何度もコメントを求めたが,返事が無かった。
     Son が SoftBank を率いる役目から身を引く可能性は,同社が今月 円建て債を売り出したときに何人もの投資家がリスクとして引用した。SoftBank は,これまで トラブルなしに債務を返済し,日本の個人投資家に社債を販売してきたが,機関投資家向けには円建て債の引き合いが弱かった。
     Bloomberg がまとめたデータによれば,SoftBank の有利子負債は 過去5年間に6倍超に急増し, 13.7 兆円 ($1,250 億) に膨れ上がった。今月は個人投資家向けに 4,100 億円の社債を販売したが,引き受け業者によれば,機関投資家向けに発行した 400 億円の社債は,発行額に対して注文が僅か 1.2 倍の注文を集めた。
     SoftBank が発行した円建て債の 90% 超を占める 3.63 兆円は,6月20日に期限を迎える 400 億円の社債を含めて,個人投資家向けの円建て債である。Son は しばしば,中国のアリババ集団を含む投資の巨額の含み益を理由に, SoftBank の真の債務負担は無視できると言う。同社ウェブサイトによれば,その含み益は, 6月14日の時点で 17.9 兆円に達する。
     "もしも Son が引退すれば,この会社が このまま突っ走るのか あるいは 全く別の方向へ動き出すのかは,誰も知らない。" … とシンクタンク ニッセイ基礎研究所の 徳島 勝幸 投資主任アナリスト が言う。"どんな会社であれ,カリスマ指導者が率いる会社の債券は,基本的に SoftBank と同じリスクを負う。"
     株価, 債務, キャッシュフローを含む複数の指標を追跡する Bloomberg のデフォルト・リスク・モデルによれば,SoftBank が 向こう 12ヵ月以内に債務でデフォルトになるリスクは,現在 約 0.08% であり,2016 年9月 (ARM を 約 $320 億で買収したとき) の 0.4% から下がった。
     2年前,法定相続人 Nikesh Arora は,Son が会社のトップに居座ると選択したことを受けて,突如 SoftBank を去った。Son は当時 声明で "もっとクレージーなアイデアをいくつかやりたい" と言い,そのためには少なくとも 5~10 年 CEO として留まる必要があると言った。
     新たな任命
     昨年 Son は,サウジ・アラビアとアップルからの拠出を含む $900 億を超える資産を持つ Vision Fund を組成した。6月1日,SoftBank は 3人の副総裁の任命を発表した ── Marcelo Claure 最高執行責任者 (COO),Vision Fund の CEO Rajeev Misra,最高戦略責任者 (CSO) 佐護勝紀 ── の3人が 株主総会の承認を経て決定する。この人事は,Son の後継について憶測を生んだ。
     シンガポールの Asymmetric Advisors の上級ストラテジスト Amir Anvarzadeh によれば,もしも Son がいなくなったとしても,SoftBank 取締役会は Fast Retailing Co の創業者 柳井正を含む 日本の最高の経営者を何人か含んでいる。
     "会社は整理統合 (consolidate) せざるを得ないだろうし,これらのベンチャー資産を引き受ける投資マネージャを外部から見つけなければならない。" … と Anvarzadeh は言う。"SoftBank は現在よりも遙かに保守的に運営されるだろう。"
      — With assistance by Issei Hazama, and Tesun Oh
    そうですかね?(笑)
     社長がいつ引退するかが,そんなに問題なのか?
     全体として論旨が一貫していないでしょ。
     最後のアナリストの意見はその通りだと思う。
     会社が社長の思い付きで振り回されるのは上場会社としておかしい。
     社長が引退しようがしまいが,とにかく ここを改める必要がある。
     そうなれば,会社は健全になり, Anvarzadeh の言うようになる。
     ── 結局は 社長の早期引退を必要とするのかもしれないが。

  32. SoftBank removes mobile unit's guarantee from $4bn bonds
    SoftBank Group が,$40 億社債で 通信子会社の保証を外す。
    Nikkei Asian Review,2018/05/26 (土) @01:07 JST
    By Nikkei Staff Writers (東京)
    負債まみれの親会社は, IPO を控えた子会社の独立を奨励する。
     SoftBank Group は,6月に 日本の個人投資家 および 機関投資家向けに普通社債を発行することにより,約 4,500 億円の調達を目指す。
     懐の深い国内通信電話会社 SoftBank Corp は,従来とは方針を変更し,重債務の親会社の債務を保証しない。持ち株会社が 中核部門を東京証券取引所に上場する準備をする際,子会社の独立性が厳しく審査される。SoftBank Group は,既発債についても ローンについても,上場に青信号が点けば,徐々に子会社による保証を外すと言う。
     東京に拠点を置く テックと投資のパワーハウスは, 6年物 社債を個人投資家に 4,100 億円,機関投資家に 500 億円を売り出す。利率は 1.25%~1.85% を見込む。SoftBank Group は,通信子会社の保証が無くとも 高利回りに飢えた投資家の需要があるものと期待する。
     SoftBank Group の長期債は 日本格づけ研究所からは A- の格づけを得ているが,アメリカのムーディーズと S&P Global は,それよりリスクの大きい Ba1,BB+ 格付けを付与している。6月発行の社債は,2013 年6月に個人投資家向けに発行された5年物社債 4,000 億円の返済に充てられる。
     (1) 土曜日の午前1時7分という不思議な時間に出た東京発のニュースである。
     (2) 日本語では既に出ているのかもしれないが,これに対応するものは 同時には出ていない。
     (3) それにしても,"負債まみれの親会社 (debt-laden parent)","懐の深い [国内通信電話会社] (deep-pocketed)","重債務の親会社 (heavily indebted parent)" などの明解な表現は,日本語の記事でも遠慮なく使うべきである (笑)。なぜ 英文記事ではこのように客観的表現を使えるのに,日本語記事では "遠慮" するのか?
     (4) 金利が 1.25%~1.85% で消化できるのか?現在の環境では 投資家はドル建て債に向かうだろう。

  33. 携帯電話契約数 (2018年03月末)
    3社の決算に基づき,TCA からデータが発表されたので,携帯電話契約数をグラフにまとめました。
    電気通信事業者協会 (TCA) のサイト は,更新されています。
    頑張っては いるようです。
     しかし,KDDI の伸びが圧倒的である (3倍以上)。
     [SoftBank の会社発表数値は TCA から発表される数値よりかなり多い (理由は不明ですが 半年くらい前からこうなった)。
    TCA のデータに基づきグラフを作成し直しました]
     伸び率が KDDI と6倍も違う。DoCoMo と比べても 2.5 倍違う。
     これだけ違うということは,何か明確な原因があるはずだ。
     "三太郎" の方が "おとうさん" より良いというウワサが バイラルで流れているのか。
      マーケティング下手;コマーシャル下手;返金を渋る;通信障害;悪いカスタマーサービス;日本人一般から嫌われる 等々。
      ほかにもある。支付宝, 阿里雲の日本進出協力を嫌われた (特に金融関係);セクハラレイプ好きの社長に対する世界的 #MeToo キャンペーン (日米共通)。
     それを突き止めるのが社長の仕事だろう。
     これで 胸を張って 今年中に上場できるのか? このグラフ1発で即死?
     一般に上場審査では過去3年を見ると言うから,2020 年までは無理なんじゃないの?
    ARM がようやく IoT 向けのチップ設計に乗り出す (日経 2018/05/10 @16:48)。
     もう2年近く前に買収したときに 突如として 買収の言い訳のように 言い始めた IoT がようやく本格的に始まるのか。
     都内で説明会を開くのも悪くは無いが,アメリカでやるのが本来だろう。"群戦略" をアメリカで担う強い味方がアメリカにいるんだからね。そのために,第2回の交渉を "ちゃぶ台返し" したはずである。
     スマートフォンと違って,用途が広範にバラバラで,単価がとても低いから,赤字は避けられない。普及したら1個あたり1円にもならないか。でも 買収した時の旗印に挙げた以上 やるっきゃない。
     異なる用途の チップを1つに安くまとめる工夫ができるかどうかがカギだろう。でも,それにはさまざまの用途を詳しく把握する必要があり,大変か (電球に入れるチップ,冷蔵庫で使うチップ,靴に入れるチップ ・・・ )。
     もともと ARM の IoT がそんなに有望ならば,ダウニング街 10 番地が必死で引き留めたはずである。
    [2018/05/14 (月) 朝]
     ダイムラーが SVF に投資してくれるニュースは 4日前の Financial Times のみ。
     続報 ゼロ (いや 正確には,続報は 世界で 日経2報のみ)。
     常識的には,(もちろん断定はできないが) 日経が ガセネタを宣伝しまくった可能性が高い。
    ──────
     こういう場合に注目すると面白いのが,Mint のような インドのメディアである。
     あそこは,あること無いこと SoftBank の記事を書きたがる。SoftBank は インドで人気が非常に高い。
     ところが ・・・ 「ウォールマートの株式売却を契約したはずが 24 時間も経たないうち Masayoshi Son が取りやめた」という記事だけである。ダイムラー出資は見当たらない。
     FT から続報は無く,SoftBank 関係の目新しい記事としては,SoFi で何か揉め事があったらしいと FT が伝えている。まだ 全部読んでいないが,例のセクシュアルハラスメントで半値以下にディスカウントされる (?) なんて書いてあるみたい。
     ほんと,SoftBank はセクハラ企業への投資をやめたらいいんだけど。

  34. スプリントと Tモバイル合併合意の背景とは? 群戦略を加速させるソフトバンク・グループ決算説明会レポート
    ソフトバンク広報,2018/05/09
    ソフトバンク・グループの 2018年3月期 決算説明会に登壇した 代表取締役会長 兼 社長の孫 正義。「自分自身の人生とソフトバンクを切り分けることはできない。ソフトバンクは私の人生そのものである。何を目指し,何に喜び,何を成したいのかという人生観に密接に結びついている」と説明を始めました。
    スプリントとTモバイルの合併※でもたらされる効果,そしてソフトバンク株式会社の上場準備開始など,ソフトバンク・グループの目指すこれからとは ――。
    ※ 本取引は,スプリントとTモバイルの株主および規制当局の承認,その他の一般的なクロージング要件の充足を必要とします。
    通信事業からの転換
     「『ソフトバンクとは何の会社なのか』『通信会社なのか,投資会社なのか』『どこへ向かおうとしているのか』という質問をよく聞く」と語る孫。
     継続的に約 5,000億円のキャッシュフローを上げるのが,国内通信事業を担うソフトバンク株式会社です。今後も安定した事業展開と共に,ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する世界のユニコーン企業が日本に上陸する際には,その国内パートナーとしてソフトバンク株式会社およびヤフーが重要な役割を担うなど,通信事業領域を超え,さらなる成長機会を追及していくことになります。これが,孫が発明した「群戦略」であり,質問の答です。
    スプリントと Tモバイルの合併合意によるシナジー
     マルセロ・クラウレ CEO 体制となり,創業以来 119 年の歴史の中で過去最大の営業利益を出したスプリント。今回,Tモバイルとの合併が何を意味するのか。ここでもキーとなるのが「群戦略」です。
    米国においては新規参入事業者も増える激しい競争の中で,まず 5G を舞台としたネットワーク競争に勝つこと。IoT 時代に欠かすことのできない十分なキャパシティー,スピード,レスポンスタイムを持つネットワークをどこよりも早く構築することが重要となります。孫は, 「スプリントと Tモバイルが保有する周波数帯を合わせると,全米で最も強い 5G ネットワークを構築する組み合わせを持つことになる」と自信を見せました。
     この合併によりもたらせる統合シナジーは,ネットワーク,セールス,バックオフィスを合わせて 430億ドル規模に上ると見られます。また,この合併によりキャッシュフローが大幅に改善することで,固定費だけではなく,設備投資に対する経営効率も一気に改善することになります。マーケットシェアを増やし,1位を狙うための戦略として,さらにネットワークや価格で競争を仕掛けることで, 「低価格」で「高付加価値」となる消費者目線の戦略を促進することができ,米国の雇用促進,ひいては米国経済への貢献にもなる戦略的意思決定と位置づけています。
     孫は合併合意に至った背景を, 「より大きな結果を出すための戦略的な意思決定である。意思決定権では譲った形となったが,経済的な面ではプレミアムを受け取る形となった。群戦略の中の一環としてトータルで考えると,誤差の範囲内と考えている」と説明しました。
     スマホ向けチップにおける世界市場のシェアのほとんどを持ち伸び続けているアーム,大幅な増収・増益が続くアリババなど,ソフトバンクグループは世界の No. 1 企業との群戦略で,今後もさらなる成長を目指します。
    こういう記事を SoftBank のサイトに見つけたので,記念として転載する。
     この社長の「何を目指し,何に喜び,何を成したいのかという人生観」は非常にわかりやすい。「カネカネカネ,カネがすべての人生観」である。決算説明会のほとんどは カネ儲けの説明会に尽きる。1兆円を "金の卵" で表示して 得意がって見せた決算発表もあった。世界初だろう。異常という他はない。企業はどういう手段でもカネ儲けさえすればよいという「人生観」である。
     ほとんど誰も寄り付かない "スキャンダルのデパート" Uber に喜んで飛びついたのが好例である。
     またつい先日 Flipkart を ウォールマートに売却したことを正式発表の前にお漏らしして "Yabai desune" と言ったことで Fortune などから顰蹙を買い,それから 24 時間以内に "まだもっと儲かると思うから や~めた" とウォールマートと世界を仰天させた孫!(笑)。$15 億ポッチの値上がり益では 「人生観」によりご不満らしい。
     しかし,どう考えてもおかしい。
     孫は, 「スプリントと Tモバイルが保有する周波数帯を合わせると,全米で最も強い 5G ネットワークを構築する組み合わせを持つことになる」と自信を見せました。
      ・・・ これは 明らかな誤りである。こんな発言で日本の株主を騙すのは詐欺である。
     Lowell C. McAdam も Randall Stephenson も笑うだろう。
     McAdam は "Don't care" と言っている。相手にしてもらえない (笑)。反論さえしてもらえない。
     「より大きな結果を出すための戦略的な意思決定である。意思決定権では譲った形となったが,経済的な面ではプレミアムを受け取る形となった。群戦略の中の一環としてトータルで考えると,誤差の範囲内と考えている」
      ・・・ 現実には,27% 分の配当を受け取るだけである。それで全部である。経営にはタッチしない。
     昨年暮れ (2017/12/28) に CFIUS から認可の下りた Fortress もこれとほとんど同じであり,経営には一切 口出しできず,配当を受け取る権利だけである (FT 2018/04/03)。したがって,Fortress の資産 $380 億を意のままに運用するという目算は潰えた。つまり,$33 億投資の意味は無かった (Fortress は 結構な赤字だろう)。むしろ お荷物 (赤字) を抱えた結果になった。"アメリカ・ファースト" が使う秘術に 日本の会社が嵌まったようだ。
     [Chicago Tribune などの親会社 Tronc を買収する話 (日経 2018/04/17) があったが,あれは Fortress がやっているもので,それに SoftBank がどうこう言うことは CFIUS から禁止されている。 つまり,SoftBank は Fortress の経営を指図することが認められていないから,社長は 5月9日にあんな風な おかしな返事をするしか無かったのである。$33 億で全額買収したのに,Fortress を上場廃止にしたのに,資産 $380 億を運用する Fortress の経営権は得られなかった。
     これに対し, Wes Edens 他の経営陣は,望外の結果に跳ぶような大喜びだろう。何しろ 自分たちの持ち株を +39% のプレミアムで 大量に買ってもらい 大儲け (3人で $15.3 億) した上に,経営権を手放さなかったのだから ニューヨークで SoftBank とは独立して営業できる。また,上場廃止されたので,決算を公表しなくてよくなって大喜び (1年前の契約の時点から公言している)。SoftBank は神様のような有難い存在である。実質的に,見返りゼロで カネだけもらったことになる。おまけに赤字続きの経営の尻ぬぐいを今後も全額 SoftBank Group が引き受けてくれる。
     おそらく 世界 No. 1 の珍しい買収劇として歴史に残るだろう。]
     
     経営権, CEO, Chairman, President, COO, Ticker Symbol まで譲って 他に渡すものが無い状況で "群戦略" など通るはずが無い。社歴 119 年とかを この頃 Claure も Son も やけに (打ち合わせて?) 強調するが,歴史の古い企業にとって,この中の宝物は 何と言っても たった1文字の Ticker Symbol "S" である。1文字の NYSE 上場企業は,アルファベットの個数しか存在し得ない勲章である。仮に Sprint を最初に上場した時の社長がこの世に生きていれば,この勲章 "S" の消滅をどう思っただろうか? 社歴僅か 30 年の日本企業だからこそできた消滅である。
     群戦略についてであるが,社長がもしも 4月29日 (日) 午後の電話会議に出席していれば,Claure が "群戦略" に沿った SoftBank の方針を説明して,それを Legere がやんわりと だが明確に拒否したことを聞いたはずである。インドに行っていて知らなかったとしても言い訳にはならない [この重要な電話会議に欠席したようだが ── Sprint,T-Mobile のウェブサイトに掲載されている膨大な書き起こし記録に 全く発言が無い ──,そのこと自体が "スプリント無関心" の証拠となる重大問題である]。
     相手の土俵 New T-Mobile で "群戦略の構築" だなんて 本気で考えているのか?
     両社の共同発表に "群戦略" なんて もちろん書いてない。
     それに ドイツは何兆円 ($380 億) ものカネを用立てて Sprint の借金を肩代わりする。
     SoftBank は いくら出すの? "群戦略" を Legere にお願いするなら その倍の 8兆円くらい払うことを裏交渉で約束したんでしょうね。それとも タダで "群戦略" をお願いするの?
     仮に "群戦略" のようなもので何か合意があるとすれば,それは "ドイツ・テレコムの群戦略" が優先して,経営権を持たない SoftBank は,その実現に協力する立場だろう。
    ──────
     "米国への貢献" って何ができるの? 長い目で見れば人員削減による経費削減は常識である。
      合併したことにより 雇用を 200,000 − (51,000+28,000) = 121,000 増やすと Legere は言うが,2.5 倍にふやすなんて常識的には無理でしょう。他方 T-Mobile は (合併とは無関係に) ワシントン州 本社の大改修計画を進めているから,かなりの人員をふやす予定なのだろう。上の数字のうちの結構な部分は,これに相当するのかもしれない。Sprint 買収を見込んで ワシントン州本社大改修という可能性も無いではないが,50-50 と巷でウワサされる確率である。まぁ リスク覚悟でやっていることだと 信じたければ そう信じるのもよかろう (笑)。
     いずれにせよ,すべては T-Mobile の計画なのである。なぜ 合併とは無関係にそんな本社大改造をするのか? 誰でも分かるでしょ。自分が太るには他を潰すしか無い。今の通信業界でこれ以外には無い。Masa も Marcelo も 現実を見たくないから 甘い夢ばかり振り撒く。
     今の SoftBank に取れる最善の路線は,逆説的に聞こえるかもしれないが,この合併契約をなるべく早く解消し,独立してやっていくための方策を (資金計画を含めて) 真剣に考えることである。幸い 違約金なしだから,2度目の "ちゃぶ台返し" は簡単にできる。早くしないと,人材流出は進み,設備投資を控えるためネットワークの劣化が進み,悪い歯車が回り出す。そうなれば,これまでよりますます重たいお荷物になる。
     現在 何よりまずいのは,まだ 合併が実現するかどうかも分からないうちに,社長が Chairman (取締役会議長) という重職を辞め,自分だけはさっさと Sprint から撤退し,Sprint に無関心であることを世界に公言しちゃったことである。社長は Sprint の Chairman に戻って,Sprint を放棄していないことを天下に宣言すべきである。目立たないようにこれをやりたければ,$40 億ほどを投じてバイアウトすればよい。
     2度目のちゃぶ台返しと書いたが,Flipkart 売却もひっくり返したから,3度目になるだろう。
     世界は 社長の "ちゃぶ台返し" に慣れている。"またか" ・・・ と受け止めるだけだろう。
     気にすることは無い。

  35. SoftBank’s Vision Fund drives 60% quarterly profit surge
    SoftBank の Vision Fund が,四半期利益の +60% 急増を押し上げる
    Financial Times,2018/05/09
    By Kana Inagaki (東京)
    CEO は,透明性に関する懸念の中,$1,000 億基金からの増大するリターンを予想する。
     SoftBank は,1年前の同期から四半期営業利益が +60% ふえたことを報告した。日本のインターネット・グループが $1,000 億テック基金を通じた投資から得た利益により押し上げられたものである。
     Masayoshi Son CEO は,テクノロジーへの賭けからのリターンが 次の会計年にはもっと大きくなると予想すると言って,サウジが支援する Vision Fund の開示の欠如に対する投資家の懸念を 逸らそうと努めた。
     3月までの1年で,SoftBank は Vision Fund および そのアフィリエイト基金を通じて (共有オフィス・プロバイダ WeWork と チップメーカー Nvidia を含む) 30 以上の企業に $297 億を投資した … と言う。このグループは,アメリカのライドシェア・グループ Uber と その中国ライバル 滴滴出行に $129 億を投資した。これらは Vision Fund に移される予定である。
     "Vision Fund の IRR (内部リターン率) は,過去1年で私自身の記録を上回った。この結果は 実際 良すぎる。" … と Son はニュース会見で水曜日に言った。Son は 以前,自分の会社が 過去 20 年にわたって 44% の IRR を記録したと言った。
     Son は,インド最大のオンライン小売り Flipkart の権益で 60% のリターンを得た;昨年8月 $25 億を投資した株式を $40 億でウォールマートに売却することに合意した。Son は SoftBank の決算発表で,Flipkart 売却を 正式発表の前に開示した。
     今年1月から3月までの四半期に,SoftBank は Vision Fund からの寄与 650 億円のお蔭で,営業利益 1,550 億円を挙げたことを報告した (前年同期は 970 億円)。四半期売り上げは,YoY で +1.2% 増の 2.3 兆円だった。
     同社は通年予想を開示しなかったが,Son は 基金の通年の利益寄与が 2017~2018 会計年に記録した 3,030 億円を超えると予想した。この 3,030 億円は,Nvidia の株価の値上がりによるものである。
     Vision Fund が率いる投資への この集中ぶりは,SoftBank が最近 Sprint の経営権をライバル T-Mobile に売却することに合意した中で飛び出した。Son にしては急転して,Sprint の経営権を放棄することを拒否して T-Mobile との協議が壊れてから僅か6ヵ月後にこの取り引きがなされた。
     "私は,恥も外聞も捨てるべきだと思った;大きな利益を合併から得るためになら,小さな妥協をすべきだと思った。" … と Son は言い,自分の関心が Vision Fund へ既にシフトしていたことを白状した。
     アナリストらは,基金の構造と 投資のターゲットに関する開示の欠如に不満を表明した。"SoftBank Vision Fund が 大きなブラックボックスになる懸念がある。" … と Goldman Sachs のアナリスト 松橋郁夫 (Ikuo Matsuhashi) が最近のレポートに書いた。
     3月に終わった1年に,SoftBank の純利益は −27% 減となった。これは,2016 年に英国チップ設計会社を買収するための資金手当てとして,中国 E-コマース アリババ集団の株を売却した際に結んだ異例のデリバティブ取り引きによる会計上の損失 $6042 億円によるものである。SoftBank は,2019 年6月までにはデリバティブの期限が来るので,この損失が 埋め合わされると言う。
     水曜日,Son は 5~7 年後の再上場を目指して ARM に猛烈な投資を行なっていると言った。

  36. How Much Is the World’s Largest Tech Fund Worth to SoftBank?
    世界最大のテック基金は,SoftBank に対してどれだけの値打ちがあるのか?
    Wall Street Journal,2018/05/09 @07:54 am ET
    By Jacky Wong
    手数料と基金の構造の真っ暗な開示 (murky disclosure) は,投資家が SoftBank の Vision Fund の価値を評価するのを困難にする。
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     SoftBank は,世界最大のテック基金を運営する。トラブルは,これが会社にとって実際にどれだけの価値があるかを知るのが困難なことである。
     水曜日,日本のテック・コングロマリットは3月四半期に YoY で +60% の営業利益の伸びを発表した。この決算の詳細は,これだけの増益の全部が Vision Fund と Delta Fund から来ていることを示す。また,コミットされた資本の 約 1/4 が既に履行されたことを示す [注:当サイトの計算では 26.9%]
     SoftBank は,この基金に約 1/3 を出資する投資家であると同時に 運用者でもある。だが,サウジアラビアとアブダビの国営基金,アップル,クアルコムを含む外部投資家に課する手数料を開示した試しがない。
    ソフト マーケット
    アリババ株を除く SoftBank の時価総額
     さらに,Vision Fund の構造は 真っ暗 (murky) である。一部の投資家は,固定利率の配当を受け取り,基金に対するいわば "銀行" となる道を選んだ。SoftBank は これまで,Vision Fund の資本のどれだけが (事実上 債務の形をとる) ここから来るかを開示した試しが無い。資本構造に占める この債務の比率が高ければ高いほど,SoftBank にとってリスクは大きい:なぜなら 基金が1年の間にどれだけ稼ごうが稼ぐまいが,それらの投資家は 固定金利の配当を受け取るからだ。
     これらの不確定性は,SoftBank が Vision Fund に如何なる種類の収入を依存するかを分かりにくくする。しかし, 1点だけは明瞭である:基金が利益を得ているのは,これまでのところ,ほとんど ただ1件の投資からである ── Nasdaq 上場の Nvidia の 4.4% 株式である。チップ・メーカーの株価は, 1年前から2倍以上に値上がりし,Vision Fund に推定 $33 億の含み益をもたらした。とは言え,配車企業 Didi と Uber や 共有オフィス空間企業 WeWork のような大きな 非上場企業投資についての詳細はほとんど無い。
     このような透明性の欠如は,SoftBank の中核問題を悪化させるのみである ── SoftBank 投資家は,基本的に コングロマリットのきらびやかだが 予想し難い創業者 Masayoshi Son を信じるしかない。おそらく 驚くに当たらないが,同社の株価は 上場されている資産に対して 過去最大のディスカウント近くで 現在取り引きされている。透明性の向上が このギャップを埋めるのに役立つであろう。
      Write to Jacky Wong at JACKY.WONG@wsj.com
       かなりよく調べている (笑)。さすが WSJ。表面的な数字に振らされる 他社とは一線を画する。
       "株式" と "定期預金" の振り分けが出資者ごとにどうなっているかは,誰もが知りたいところである。
       配車企業 Didi と Uber や 共有オフィス空間企業 WeWork のような大きな 非上場企業は,どれも赤字であることが 各種報道でばれているのであるから,売り上げの伸びを自慢するだけでなく,赤字額についても正直に発表すべきだろう。なぜか ARM だけは赤字であることを公表している (売り上げ 2023 億円,損失 314 億円)。今のように隠せば,赤字が物凄いのではないかと 却って疑われる。
       とはいえ (笑) Axovant のように 騙されて (?) $23 → $2 以下になっちゃったことまで開示するのは, 辛かろう (笑)。やはり 隠すしかないか?
       その Axovant の株価は,何事も無かったように大商いで $1.33 (+16.67%) に戻した。引けにもニュースは無い。Axovan のサイトを見に行ったが,決算は未だ出ていない。
     なんだか 遊ばれている感じである。ニューヨークは値幅制限が無いので,かなり稼げるだろう。危険ではあるが,超低位株で しかも (SoftBank とは違って) 情報の希薄なこういう銘柄は,物凄い妙味がある。大商いで,証券会社も手数料でウハウハ。
     1/10 以下に値を下げて 取り引き妙味を増したことで,SoftBank は NYSE から感謝されている (?) かもしれない。
    ──────
    [2018/05/10]
     Axovant 反落。
    $1.17, −$0.16 (−12.03%), At close: 4:00PM EDT
    ──────
     なお,ダイムラーが新規投資家と SVF に投資 (?) という FT の記事
      Daimler leads new investors in SoftBank’s $100bn Vision Fund
     『ダイムラーが SoftBank の $1,000 億 Vision Fund への新規投資家を率いる』
     Financial Times,2018/05/10
     これを読むと,後ろの方に
     SoftBank 創業者で,Vision Fund の投資決定に最終発言権を持つ人である Son も,自ら個人的投資を行なう予定であると同時に,同社の幹部らが基金に参加することを許す構造を生み出す。
      ・・・ との記載がある。つまり,SVF が余りにも順調であるために,社長個人と SoftBank 幹部も SVF に個人的に参加して,3大銀行にカネを出させ,ガッポリ儲けられるようにする … らしい。これだと 社長個人と幹部個人が 最も儲かるように自由に運用することが可能になる。めでたし めでたし。
     いかにも カネカネ社長の考え付きそうなアイデアである。
     Mr Son, founder of SoftBank and the person who has final say on the Vision Fund ’s investment decisions, is also set to make a personal investment as well as create structures that allow the company’s executives to participate in the fund.
    ──────
    日本の銀行の名前の書き方がバラバラである:
     本来ならば,「MUFG, MHFG, SMFG」 と並べるところだろう。明らかに 日本の銀行を熟知していない人が書いている。不思議である。多少とも日本の銀行を知る FT の記者ならば,3銀行とも "見事に不揃いな" 書き方をするはずが無い。"神は細部に宿る" と言う。
     The Mercedes-Benz maker along with MUFG, Mizuho, and Sumitomo Mitsui Banking Corporation will be among the final investors in the fund, which is the largest ever created in private equity or venture capital, these people said.
     [メルセデスベンツのメーカーは MUFG, みずほ,三井住友銀行株式会社とともにこの基金の最終投資家の中ににいるだろう。]
     銀行が SVF に投資する理由として,この低金利時代に 7% の金利が魅力と書いてある。
     銀行は (SoftBank とは違って) 預金者から預かった大切なカネを運用するから,投資のリスクを非常に慎重に判断するので,この点が不思議である。7% で釣られるのか? ナントカ詐欺みたい (笑)。
     もしも日本の大銀行がこんな風に喜んで投資するのであれば,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランス, ・・・ 世界のあらゆる銀行から申し込みが殺到して,10 兆円はおろか 10,000 兆円になってもおかしくないし,日本の財務省だって,GPIF だって 100 兆円くらい申し込めば,財政がかなり楽になるだろう。アメリカの財務省だって,巨額の赤字を軽減できる。なぜ トランプ大統領から申し込みが無いのか?
     でも,現実には SVF がうまく行っていると言っても,Nvidia の値上がりだけである。Nvidia の値上がりが ゼロならば,来年の利益はゼロになる。値下がりすれば,損失を生む。シリコンサイクルがあるから, 永久に値上がりすることは無いだろう。
     実際,決算は良かったのに,株価は 値下がりに転じた [$254.53, −$5.60 (−2.15%)]。
     さすがに3年で 10 倍以上の値上がりなので,今後の株価については アナリストの意見がマチマチである。
     ARM, Uber, Sprint+Brightstar は, いずれも赤字で 損失を生んでいる。
     その他の "投資先" についても 芳しくないことはいろいろあるが,くだくだ書くのも馬鹿らしい。
     会社が全部発表すべきである。
     要するに Wall Street Journal, Financial Times が指摘するように,SoftBank Vision Fund が 余りにも不透明なのである。
     最低限 Axovant が $23 → $2 に半年で急落したこととその理由は正直に開示すべきである。怖くて開示できないというのなら,こんな事業は 初めからやるべきではない。
     2011 年3月の決算からは 監査会社とのやり取りを 決算報告書に記載することが義務付けられるという。その場合,てんでんばらばらの投資先が多い当社は,決算作業が大変になるだろう。3年後の話である。決算発表が今より最低1ヵ月くらい遅れなければ おかしいと思う。東証も 期日の規定を延長するだろう。
    なお,銀行からの発表は まだ 何も無いが,気になる人は 3つの銀行の掲示板を覗いてみてはどうか。
     あんなインチキファンドに投資するとは … と大騒ぎになっているに違いない。
    常識的に考えれば,最新報道によれば スイスの再保険会社 Suiss Re から事実上出資を断られ,Fortress の出資も経営権を CFIUS から認められなかったような SoftBank Vision Fund へ,銀行が出資なんかするわけがない。そんなことをすれば,銀行から口座解約が相次ぐ危険がある。優良メインバンクから 契約を断られる危険がある。銀行は 何より信用が第1である。
     例によって,日経よいしょ新聞の誤報だろう。
     日経は,社内に第三者委員会を設置して このような誤報の原因を徹底調査し,その結果を公表すべきである。さもないと SoftBank 投資家が被害を蒙る。もちろん 第1回,第2回の "大筋合意" 誤報についても検証すべきである。
     そもそも ロンドン発の日経第1報は,Financial Times が伝えた通り,自動車会社 ダイムラーを主役にして 3銀行を脇役にして書くべきだった。タイトルには "日本の銀行" という言葉さえ無いのである!「ダイムラーが日本の複数の投資家を率いて投資する」… と FT の通りになぜ 日経は書かなかったのか?
     また銀行名を FT 記事の通りに "MUFG, みずほ, 三井住友銀行株式会社" と凸凹をそのままに書くべきだった。3番目だけに "株式会社" がつくのは,誰が見てもおかしい。日本の記事で銀行に "株式会社" まで丁寧に表記することは ほとんど無い。
     また,孫社長と会社幹部が個人的に出資する … という部分も削らずに転載すべきだった。利益相反の疑いがあれば,誰が見ても "Yabai desune".
    ──────
     その後 "ダイムラー出資" ニュースには続報が無い。
     普通なら,Reuters, Bloomberg, TheStreet, Benzinga, Investor's Business Daily, Fortune, Forbes, etc が 『ダイムラーが SVF に出資:FT 報道』のような記事を合計5本くらいは書くのだが, それも今回はゼロである。
     当サイトは上記の理由で即座にオカシイと断定した。
     英文記事を読んで,それでも おかしいとは全く思わず,逆に舞い上がっている人がいるのは 理解しかねる。
     ともかく,FT 記事は,孤立無援のまま 単独で燦然と輝いている。
     NYSE は,SoftBank の決算をそっちのけで,ウォールマートが Flipkart を買収して株価が下がったことを騒いでいる。でもこれは 2018/05/04 に既に Bloomberg が報道済みである。
     10 日以内に発表される;SoftBank が全株を ウォールマートに売却する;$25 → $40 億で結構な稼ぎをする … まですべて的中した。
     むしろ Bloomberg 報道の有能さを賞賛する記事を書くべきだろう (笑)。自分たちはスクープできなかったのだから。
     ただし,Flipkart の正式発表の前に 当事者である孫社長がリークしてしまったのは具合悪いらしい。 この後 何かあるのかな?
     Bloomberg は,これを "Faux pas" だと報道している [F: つまづき, 失敗, 過失; wrong step]
     専門用語として何か意味があるのかどうかはわかりません。Wictionary には,特に 社交の場で使われる … とある。ダンスでステップを踏み間違える感じかな?
     Fortune も非難している。
     This isn't the way multibillion-dollar deals usually get announced.
     [これは,数十億ドルの取り引きが発表される通常のやり方ではない]
     アメリカ人にとって ウォールマートは身近な存在であるだけに反響が大きいのだろう。
      "Yabai desune," … と彼は言った。
    ──────
    [2018/05/11]
     その決まったはずの Filipkart 20% の売却に,SoftBank が待ったを掛けていると インドの Economic Times が伝えている。税金が理由らしい。いかにも カネカネ社長にふさわしい理由である。 そんなことも事前に調べてなかったのか? ほんとに Yabai 社長さん (笑)。
    ──────
     いやいや Economic Times にはもう1つ理由が書いてあるよ (笑)。
     Masayoshi Son は Flipkart を売るのが惜しくなったらしい。まだ 大幅に値上がりが見込めると考えている … と2人が言った。
     とんでもない カネカネ老人だ。これではビジネスが成り立たない。信用を落として SVF の買収だってうまく行かないだろう。ビジネスで信用を落としてまで,取り敢えず 金の卵が欲しいとは ・・・ 。
    ──────
     詳しくは分からないが,2017年8月に投資したのが 今売ると 資本所得 $15 億に掛かる税率が 40% で $6 億,非上場企業を取得から2年以後に売ると 10% で $1.5 億 … というのがインドの税法らしい。この差額の $4.5 億が惜しい!
     これまでそこまで調べなかったのだろう。
     それにしても Flipkart を売って $15 億 (税引き後 $9億) ポッチの利益しか (Nvidia を除いて) SVF が自慢できないとは情けない。全部で $263 億投入したのである。外部投資家の定期預金 (7%) には 推定 $7億を支払った。この利払いだけで $9 億が ほぼ消える。
     SVF は 7% 預金の利払い負担が重いので,ウォールマート売却程度で舞い上がっているようでは,株主が期待する巨益 (44%) は ほとんど不可能である。反対に ウォールマートの利益はゴミみたいなもの! と胸を張れるようでなければおかしいよ。来年3月期の決算に期待しましょう。
    ──────
     Wall Street Journal (2018/05/15) が孫社長自身の東京での発言としてこれを伝えている (笑)。
     同時に CFIUS の審査が一段と厳しくなる … とアメリカの中国駐在大使の発言を伝えている。
     A proposed tightening of foreign investment in the U.S. is driven by concerns about national security and American leadership in technology, the U.S. ambassador to China said.
     The administration is concerned about both traditional security risks as well as economic concerns, like the loss of U.S. technology to China through the acquisition of key intellectual property via direct investment or joint ventures.

     中国共産党とツルんでいる (とアメリカから見られる) 企業のアメリカ投資はどうなるか?
     第2ビジョン・ファンドを設立するらしいが,1月~3月は 完全に投資を控えていることが決算からバレバレなのに 一体どういう方針なのか?
     そもそも 第1ビジョンファンドだけでなく,第2,第3, ・・・ と 合計 100 兆円を 孫社長がぶち上げたという記事は「これは誤植ではありません」として Recode, TheStreet から出ている (2017/10/29)。だから,第2だけであれば,従来構想の "大幅縮小" (笑) である。そんなに減らしちゃってどうするの?
     しかし まぁ,アメリカの金利が 3% に乗せた日に,こんなことを言い出すとは ── 経営感覚が丸で無いことを自ら告白したようなもの。どうやって カネを集めるのか … は一言も言わないが,
     サウジを頼るとのウワサが半年前にはありました。
     しかし 今では アメリカ-イスラエル-サウジ・アラビア … この3者が手を組んでいる。
     日本ではほとんど報道されないが,石油が原因でサウジがイランと敵対する余り,アラブを離れて イスラエルの軍事力と連帯するようになっちゃった。あれだけ多くの人が幼児まで銃弾で狙い撃ちされては,汐留本社に過激派のテロがあってもおかしくない状況です。かなりの防備体制と身辺警護を敷いているのだろう。株主総会に出かけるのも命懸け?(笑い事ではありません)
     今月の決算発表は,還暦老人さん 頭の中がしっちゃか めっちゃか,自分でも何を言っているのか分からなくなっているらしいとお見受けする。
     あぁいう "決算独演会" は,信者さんに吹き込み・洗脳そすることが目的であり,詳しい説明が無いから意味がありません。大手銀行や外国企業 アリババもやっているように,電話会議に切り替えてはいかがかでしょうか。

  37. SoftBank Vision Fund への投資家の出資状況
    ソフトバンク 決算発表,2018/05/09
    今回の決算発表から,SVF への出資が 何% 履行されたかを知ることができる。
    2017/09 決算短信 p. 22 に 次の表がある。
    合計当社外部投資家
    支払い履行額$170 億$74 億$96 億
    残額$807 億$251 億$556 億
    2017/12 決算短信 p. 22 に 次の表がある。
    合計当社外部投資家
    支払い履行額$258 億$100 億$158 億
    残額$719 億$225 億$494 億
    2018/03 決算短信 p.24 では,これが次のようになっている。
    合計当社外部投資家
    支払い履行額(3)$263 億 $101 億$162 億
    残額$714 億$224 億 $490 億
    履行率26.9%31.1% 24.8%
    (3)支払義務履行後に投資計画の変更等によりリミテッド・パートナーへ返還された金額を差し引いています。
     この比較から,この3ヵ月のあいだ,"当社" からも "外部投資家" からも 公約された出資がほとんど止まっていることが分かる。外部投資家は 当社より 6% ほど遅れている。
     見やすいように,これを 右側にグラフ化した。
     外部投資家が "株式投資" と "定期預金" にどのように出資を振り分けているかまでは,この決算からは分からない。ただし,40-60 の割合で後者が多いと言われている。
     したがって,金額にすれば $100+60 億が高リスク,$100 億が低リスクの投資に振り分けられているらしい。
     資産の売却をせずに 7% の利息を払うので,"支払い履行額" として入金されたカネが目減りしていく。これは 投資基金にとって恐ろしい (Wall Street Journal の警告) らしい。上の注 (3) がこれに該当するようだ。マサは売るのが苦手だ … とも書かれている。
     これって 自己資本を食い潰しているから,いわゆる「タコ配」だよね。"お父さん" に確実につながる。タコ配は もちろん禁止されている。しかし,一度 これに味を占めると なかなか やめられない。麻薬のようなものだ。SVF の場合には "自己資本" ではないから なお悪い。銀行が 預金を食い潰して 預金者に 7% の利息を払うようなものだ。最悪である。預金は返ってくるのか? (第2SVF,第3SVF を作れば,たらい回しできそう。)
     Nvidia による含み益を当てにして これをやっているのだが ・・・
     「SVF の投資家はみなさん,運用の成果に "極度に満足"」… と社長は発言しているが,実態は Nvidia 頼み。 赤字でない投資先が Nvidia 以外に見あたらない。創立以来 売り上げがゼロ (利益ゼロではないよ!) なんてところもある。投資先の財務を全部公表した上で 自慢してもらいたい。ARM も Fortress も買収により 非上場で決算を発表しなくなった。
     Sprint だって いつでも (明日にでも) 非上場にできる体制を 2018/01/17 に整えている。万一 6月四半期の決算が思わしくなければ,いつでもこれを発動できる状況が設定済みである。
    確認のため,シャープの決算報告書を調べました → "シャープ" のセクション
     上記の外部投資家 $162 億出資のうち,シャープからの出資履行額は $2.31 億である。
    いろいろ考えてみたが,2018年1月~3月に SVF がピタッと投資活動を止めている。
     重要なのは,外部投資家だけでなく "当社" も出資を ほゞ停止していることだ。
     "その原因が 2017年12月に発生した" … と考えると分かりやすい。
     2017/12/28,SoftBank は遅れに遅れていた Fortress 買収完了を発表したのであるが,それには裏があることが 2018年4月にようやく判明した (Financial Times, 2018/04/03,『SoftBank は,Fortress の買収を勝ち取るために,日常の経営支配を放棄していた』)
     SoftBank は Fortress 取締役会に複数の代表者を取締役として派遣したが,会社の運営に影響を与えることを制限されていると言う。CFIUS との合意は,SoftBank が "Fortress に経済的所有権を持つだけであり,他はダメ" を意味する … と別の1人が言う。
     この協定は これまで報道されてこなかったが,アメリカ以外の企業が Trump 政権下でアメリカ企業を買収しようとするときに直面する審査の厳しさを強調する。

    [2018/05/21 追記] New York Post (May 21, 2018 | 2:05 am) も同じく,SoftBank が アメリカ規制当局の認可を得るために,Fortress を独立に経営させることに同意したと書いている。
     Japan’s SoftBank in December bought hedge fund Fortress for $3.3 billion. To win US regulatory approval, it agreed to let Fortress run independently.
     このように,Fortress の運用資産 $380 億を "群戦略" に利用しようと $33 億で全額買収したまでは良かったが,経営権を CFIUS から認められず,それどころか 赤字企業 Fortress を丸ごと引き受けるという予想外の結果に終わった [SoftBank の株主総会通知資料によれば,Fortress は売り上げ 205.25 億円,損失 152.01 億円 だった]。
     これでは,SVF の投資は すればするほど 赤字になる。だから 警戒して投資を控えている … と考えると一番わかりやすい。
     それでは,なぜ SoftBank が このように CFIUS から苛めを喰うのか?
     CFIUS は基本的に中国共産党嫌いだから,誰でも 理由は分かることだが,はっきり書いてあるものはほとんどない。大抵の人は,その理由について "口をつぐむ" らしい。この FT の記事には,
     CFIUS は SoftBank の投資の範囲と Son の事業のつながりに懸念を持っている … と一部の人が言う。ただし,詳細は口をつぐむ。
     SoftBank は アリババの筆頭株主であり,中国 E-コマース グループの創業者 馬雲と密接なつながりを持つ。

      ・・・ とある。
     ドギツク (笑) 書いているのは,これである。
      FIG/SFTBY:Fortress の通信資産と特許ポートフォリオに対する CFIUS の長引く審査の根っこで,SoftBank は 中国とつながっている (Event Driven,2017/12/20)
     昨年末に認可が下りる直前に,10ヵ月近く経っても認可が下りない状況を説明した記事である。
    [2018/05/21] この件を WSJ に問い合わせました。
    Dear WSJ editor. ・・・
    日経はソースを明示せず,懲りずに 書いている (2018/05/21 6:30)。
     さらに5月,みずほ銀行など3メガ銀や海外企業などがファンドに1兆円規模の出資をする方針が明らかになった。低金利による運用難で苦しんでいるとはいえ,メガバンクが投資先に選んだことから,金融市場でも一定の信頼を得ていることがわかる。
    「インナーサークルに入らなければ選りすぐりの投資案件の情報は回ってこない。」佐護氏は周囲に漏らした。 (日経 2018/05/21 @20:30)
      ・・・ その通りだと思う。インナーサークルに入らずに,スタートアップ企業のトップが サンカルロスやメイフェアの贅沢なタウンハウスを訪問してくる。そこでペッパーがお出迎え。東京の社長と (時差のため イライラする) ビデオ説明があり,10 分ほどで 社長が打ち切り,カネはいくらほしい? と訊いて 要求の何倍ものカネを払う (The Economist, 2018/05/10)。
     これでは ババをつかまされるために "投資" をやっているようなもの。
     佐護さんの目から見たら,赤ん坊だろう。もっとも そういう佐護さんが これからどれだけの手腕を見せるか見ものである。何しろ,日本郵政が オーストラリアの物流大手 Toll Holdings を 6,200 億円で買収して 4,000 億円の減損処理をした時期と佐護氏が ゆうちょ銀行に在職した時期が微妙に重なっているからである。救世主を招聘したのか 疫病神を背負いこんだのか? Nikesh Arora はどちらだったか?
     インナーサークルに入ることは必要条件ではあるが,十分条件ではない。
     アメリカ・ファーストの Give and Take の世界である。

  38. ソフトバンクが粉飾決算の携帯ショップを異例の子会社化した事情
    週刊ダイヤモンド編集部,2018/05/08
    村井令二 (「週刊ダイヤモンド」委嘱記者)
    ソフトバンクグループが世界の最先端分野への投資を加速する一方で,携帯子会社のソフトバンクが不可解な出資を行っていることが明らかとなった。不正会計で経営危機に陥った携帯ショップを完全子会社化したのだ。新規上場の準備に入ったソフトバンクの内部で一体何が起こっているのか?
    ソフトバンクの専業代理店,テレニシが運営するソフトバンクショップは,
    経営破綻を回避した。写真は東京都品川区のテレニシ店舗。 (©Reiji Murai)
     全国で約2400店舗を展開する「ソフトバンクショップ」。その中で第3位の規模を持つ携帯電話ショップ運営会社が経営危機に陥り,ソフトバンクを揺さぶっている。
     それは関西を中心に 82店舗を運営する携帯販売代理店,テレニシ (大阪市中央区) である。4月10日付でソフトバンクが密かに完全子会社化していたことが本誌の調べで分かった。出資金は 19.5 億円で,ソフトバンクには微々たる金額である。だが,キャリアが販売代理店を完全子会社にするのは異例だ。
     キャリアの出店リスクと運営コストを抑えるため,ドコモショップでも au ショップでも,ほとんどの携帯ショップは,外部企業が運営する代理店だ。
     ソフトバンクも,銀座店や表参道店など直営店を 10 店舗持つが,これ以上携帯ショップを直接運営する経済的メリットは見当たらない。それでも一挙に 82 店舗もの携帯ショップを抱え込むことになったのは,テレニシとの切っても切れない関係があるためだ。
     テレニシは 1990 年に京都市のマンションの一室で創業し,1995年から関西デジタルホン (後のJフォン,ボーダフォン) の携帯ショップ事業に参入した老舗代理店である。創業者の辻野秀信社長は,ソフトバンクの宮内謙社長と同世代で "個人的盟友関係にある" (業界関係者) とされる。
     2006 年にソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収したことで,テレニシはボーダフォン・ショップからソフトバンク・ショップに鞍替えした。当時 18 店舗だったショップ数は,今や 82 店舗まで急拡大し,ソフトバンクの専売代理店とし確固たる地位を築く。
     テレニシは優良ショップとして何度もソフトバンクから表彰されてきたが,両者の関係が転機を迎えたのは昨年10月であった。テレニシの主力取引銀行 りそな銀行に匿名の内部告発メールが届き,同社が 2001年から 16年間に亘って架空売り上げや費用の過少計上で不正会計を繰り返していたことが発覚した。店舗拡大で借り入れ依存の強いテレニシは,銀行取引を継続するために赤字決算を隠し続けてきたのだった。
     テレニシの売り上げ規模は 300 億円だが,これに対する直近の銀行借り入れは,取引銀行 26 行の合計で 117億円だった。取引銀行に不正会計の事実が伝わると,一部で資金回収の動きが出て,一挙に資金繰りの危機に陥った。
     10月中旬には,企業再生の専門弁護士が代理人となり,私的整理の一種である事業再生 ADR (裁判以外の紛争解決) を申請して借入金の返済を一時停止したが,ここで不正会計の累計額が 40 億円,同年7月末の債務超過額は 50億円に上ることが明らかになった。
     "もはや法的整理しか道はない" (関係者) と思われたが,土壇場でテレニシの命脈を保ったのがソフトバンクの支援だった。
     ソフトバンクは 11月の段階で早々に支援方針を固め,最終的に出資と融資を含めて 30億円超の資金拠出を決定した。キャリアから代理店に支払う販売手数料も増額し,ソフトバンク本体から経営改革推進室長の室木達哉氏や,LINE モバイルの取締役も務める高洲史弥氏などエース級人材を役員として派遣し,1代理店に過ぎないテレニシの経営再建に深く関与する。
     携帯ショップの苦境深刻,第2, 第3のテレニシも;店舗の再編・淘汰が課題に
     これによりテレニシは 倒産を回避した。今年3月末までに ADR の再生計画は,銀行団の同意を得て ソフトバンクによる完全子会社化に至った。
     不正会計で経営が傾いた代理店を丸ごと抱え込む投資に踏み切ったソフトバンクには,"テレニシは大き過ぎて潰せない" (関係者) という苦しい内情がある。
     さらに,もともとテレニシの経営危機は,ソフトバンクの販売施策に合わせて 既存店舗の大型化投資を危機に陥れたオーナー社長に対するガバナンスが問われる。
     この救済劇で浮き彫りになったのは,スマートフォンの成長で拡大してきた代理店が,スマートフォン市場の飽和を迎え,一転して経営が苦境に陥っているという実態である。キャリアが高い収益を確保する一方,携帯ショップの経営は厳しさを増しており,テレニシに続く代理店の危機の表面化が懸念される。
     ソフトバンクは,テレニシ出資の事実を適時開示していない。だが,不正会計で経営危機に陥った代理店を救済するという経営判断は,上場準備を進める会社として自ら積極的に公表し,説明責任を果たすべきだ。

  39. SoftBank plans multibillion-dollar bond sale to lock in low rates
    SoftBank が数十億ドルの債券の低金利での発行を計画する
    Nikkei Asian Review,2018/04/17 @02:10 JST
    By 須永太一朗 (Nikkei staff writer)
    この動きは,IPO の前に モバイル部門を親会社の債務から断ち切ろうとするものだ。
     SoftBank Group は 数十億ドル相当の債券を機関投資家向けに発行する;これは,日本の会社の国内通信事業を上場する準備のための動きである … と複数の情報筋が言う。
     ドル建てとユーロ建ての5年物 および 7年物の社債は,2013 年に モバイル部門による保証付きで発行された社債の期限前償還に充てる。利率が上がる情勢の中での資本調達は,借入費用を低く固定することになる。
     新規発行の規模とクーポン利率は 未決定であるが,SoftBank は 2013 年と同程度の 3,200 億円 (現在の為替では $29.8 億) を調達したいらしい。
     これまで モバイル部門は SoftBank の債務の多くを保証してきた;これは グループ全体の信用を改善するために考案された措置であるが,上場申請にあたっては,東京証券取引所がこれを厳しく審査する模様である。
     日本で 親子同時上場をやめようとする流れの中で,取引所は SoftBank からの独立性を丁寧に審査するものと見られる。
     この上場は Masayoshi Son の (テック投資持ち株会社に自己変革を試みる) グループにとって,約 2兆円を調達するものと見られる。
     SoftBank は 前回 昨年9月に社債を発行し,ドル建て および ユーロ建てで 6,600 億円を調達した。
    これと,下の Bloomberg とは,どういう関係にあるんだろうか?
       "期限前償還" は "交換" だろう。2013 発行債, 5年物, 7年物, ユーロ建て, ドル建て, €6.25 億+$25 億 ~3,200 億円 も概ね合致する。
       交換する債券はこれだけで,その他の社債は ほったらかし (つまり ゴミ扱い?) というのも同じである。
       問題は NAR が金利上昇 (市場の反応) に触れていないことだ。さすがに NAR は "よいしょ新聞" に属する。"これでは実質的にソフトバンクはオワ" … とまでは 須長さん 書けなかったのでしょう。
     記事を比べて読むのは 面白いものだ (笑)。いろんなことがよく分かります。
     ところで SoftBank の現在の株価は ・・・ −\65 安。
     ほんとにオワなら,とてもとても こんなもののはずは無いが,さて どうなりますか?
    ──────
     ところで "よいしょ新聞" の日本語での取り上げ方は? このままで問題無さそうであるが。
     あれれ,ムーディーズと S&P の格付けが載っているだけだよ。おかしいね。
     この程度の記事でも 日本の読者にバレると何か 具合が悪いのか? … と裏を読む。(笑)
    ──────
    それにしても 借入費用を低く固定することになる ってホントにそうか?(反対だよ!)
     2013 年発行で 2020/04/15 満期の社債の金利は 4.5%, 4.625% だよ (ソフトバンク広報)
     他方 今回発行の 2023, 2025 年満期の社債の金利は 5.5%, 6.125% である (2日後のソフトバンク広報)。
     満期を3年延ばして 金利を上げている! 何かがおかしい。
     しかも,2018/05/18 に発表された期限前償還価格は $1030.79, €1093.90 (それぞれ 1000 単位当たり) というべらぼうである。ユーロ建ての債券を持っていた人の利益は莫大である。
    ──────
     ついでであるが ・・・ 「自動車は交通機関という観点で言うと最早1つの部品に過ぎない。そういう時代が来る。」ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は2018年2月7日の決算発表会で,こう言ってのけた。さらに「車はコモディティーになるかもしれない」と続けた。
     これは 決定的な 誤りである。"車は 人を殺すこともある凶器である" ことを忘れている。安全の上にも安全の上にも更に安全でなければ,自動化の意味は無い。そういう時代がいつ来るかは全くわからない。Uber の最近の事故, 1年前の "鮮やかな横転衝突事故" に全く学んでいない。Uber は 技術的レベルが低く (というより人材不足。当社と同様,全てに CEO が外部対応する。任せられる人がいないのである),自動運転など手掛ける資格は無い … というのがほゞ定説になろうとしている。
     コモディティというのは,歯ブラシとか石鹸のように誰でも手軽に安く買える商品だが,安全を第一とする車がそうなることは まず無いだろう。この社長は "気が狂っている" としか言いようが無い。世界中からそう見られる。"和製 disrupter (破壊により創造を行なう者) のソフトバンク" なんて,三文役者が その場の笑いを取るために考えそうな文句である。
     一体 東京に SoftBank の技術開発研究所はあるのか? その所長は 世界に名だたる有名な研究者なのか? 研究員は何人いるのか? 予算はいくらか? 研究所で毎年 イベントを何回 開いているのか?
     全部 借金で買えると思っているのだろう (笑)。

  40. SoftBank Is Treating Its Bondholders Like Dirt
    [$$] SoftBank は,債券所有者をゴミ扱いしている
    Bloomberg Businessweek,2018/04/16 (月) @22:05 JST
    By Marcus Ashworth
    こんなに沢山の債務を背負っているのに,債権者を除け者にするのはアホである。
    こんなに沢山の債務を背負っているのに,債権者を除け者にするのは ・・・ 。
    Pau Barrena | Bloomberg)
     SoftBank Group Corp 創業家 Masayoshi Son は 頑張っているところだ。苛立つ一部の債券所有者に自分の邪魔をさせまいとしている。債権者からうまく逃れようとする彼の計画は,特定の債権者だけを贔屓扱いするリスクを冒す。こんなにも多くの債務に依存する会社にとって,これは危険な戦略である。
     Son は,会社の中核たる日本の通信事業を上場したい。だが 2013 年に親会社が発行した2本の社債は,特定の資産 ── 通信部門を含む ── を売却できる前に 無担保優先債のため投資適格級の信用格付けを持つことを要求される。大富豪の計画とは裏腹に,この債券の現在の格付けはジャンク級であり,ムーディーズ投資家サービスからは BA1, 見通し安定的の格付けを得ている。また,S&P 世界格づけからは,BB+, 見通しネガティブの格づけを得ている。
     これに対する SoftBank の計画は,新しい債券を発行して,これらの古い厄介な債券を買い戻すことだ。月曜日,同社は 5年物と7年物の債券を ユーロ建てとドル建てで それぞれ €6.25 億,$25 億 古い債券と交換し始めた。
     SoftBank は ユーロ圏投資家をハンマーで叩く
     新しい債券が 物凄いプレミアム付きで発行されると, 9月に発行された社債の利回りは飛び跳ねた。
    2025/09/19 満期の 3.125% SoftBank 社債の利回り。
     これらの新発債は,発行済みの SoftBank 社債の利回りに比べて かなりのプレミアムを含む。 ユーロ建て7年物新発債の価格協議は 4.625% と言われており,9月に発行した 2025 年満期 3.125% 債券の金曜日の引けの利回りに比べて +80 bp という 馬鹿でかい (monster) プレミアムつきである。ドル建てのトランシェも同様である。
     これらは すべて "需要に応じた" ものであろうが ── 新発債の条件がこんなに寛大ならば 既発債の利回りが巨大になるのは必然であるが ── それにしても この利回りは 大きなものである。新規投資家は,もしも割り当てを受けることができるなら,忘我の境地だろう。
     問題は,交換債の発行条件を甘くしたことが,発行済み証券の価値を 確実に引き下げることだ。2013 年債の持ち主は,この交換によって損失の一部を埋め合わせできるだろう。しかし,損失が一掃されるかどうかは不明である。
      [2013 年発行債以外を持つ] 残りの投資家は 立往生である。彼らは "3等投資家" として扱われつつある。
     なるほど,[債券交換の] 目論見書は全員が読んだはずである。この目論見書のために,債券投資家は "警告が無かった" と主張することはできない。しかし 今回の荒れ狂う反応は,Son の動きが彼らの不意を衝いたことを示す。
     出発点はここだった。今年3月,SoftBank は 2015 年に発行した社債の条件を修正する優先条件を示した。 これらの証券の所有者は, 一種のくじのようなものを手に入れた。しかし 他の投資家は 損失を蒙った。これについては Bloomberg Gadfly の仲間 Shuli Ren が書いている (Bloomberg Gadfly, 2018/04/11 @15:44 JST)。今週の借り換え提案は (債券所有者への公約を撤廃するという) 同じ目的のための異なる手段に過ぎない。
     SoftBank は,この流動性に対して高い代価を支払う覚悟があるようだ;他のすべての債券所有者に損失を負わせる意向らしい。投資家の記憶力は長い。Son の戦略は,$1,300 億の債務とビッグな野心を持つ会社にとって,借り入れコストを永久に引き上げるだろう。
      This column does not necessarily reflect the opinion of Bloomberg LP and its owners.
    この程度の利回りの違いが "忘我の境地" とは 小口の株式投資家には理解しかねる。
     しかし,そういう債券相場に釣られて 株価が動くのは事実である。
     株価に釣られて 債券相場が動くのではない。
     これは くれぐれも 心に留める必要がある。
    ──────
    [2013 年発行債以外の] 残りの投資家は 立往生である。彼らは "3等投資家" として扱われつつある。
     今回の荒れ狂う反応は,Son の動きが彼らの不意を衝いたことを示す。

     これって,"債券" 投資家だけに当て嵌まるんだろか? (笑)
     こういうことがあると,既発債の利回りがどうこうよりも,Son に対する警戒心のために,どんな社債も売れなくなるんじゃないか? 不意打ちするような会社の債券を買う それこそアホな機関投資家はいないだろう。
     ということで,物凄い高利回りでしか 債券を発行できなくなるので,債券発行無しに生きていけないこの会社は,死亡することが確実に予言できる。
     ただし,厄介なのは,余命がいくらなのか分からないことである(笑)
    余命の話は別にしても,ここで指摘されているように,なぜ特定の (債券を持つ) 債券投資家に有利は計らいをするのか? なぜ,特定の債権者だけを贔屓扱い するのか?
     これと,Wall Street Journal からの通報 (2018/03/26) を受けて,社長が "特別委員会" を設置したことの間に関係がありそうだ。
     なぜなら 2年前 (2016/01/20) に Boies Schiller から Arora を解任せよとの書簡が届き,これを受けて最大 14.2% という巨額の自社株買いを発表 (2016/02/15),その翌日には +16% のストップ高で \5,100。
     と似た感じがするからだ。現在も自社株買いでよさそうだが,株価水準が高すぎる。だから 特定の既発債に狙いを変えた。この情報がリークされていれば,特定の債権者だけを贔屓扱い することが可能である。

  41. SoftBank says mobile unit IPO will put investors ahead of parent
    モバイル部門の IPO は 投資家を親会社の上に置くつもりだと SoftBank は言う
    Nikkei Asian Review,2018/04/13@02:44 JST
    By 須永太一朗 (Nikkei staff writer)
    この部門は,成長を犠牲にしてまで配当を払うことはないと CFO が保証する。
     日本のテック投資グループ SoftBank の中核モバイル部門は,上場後 全ての株主の利益に仕え,親会社を太らせる "成長を犠牲にして配当を払う" ことは無い … と同社の CFO が 日経に語った。
     SoftBank は,同社と同名の 日本の通信を年内に上場する準備中であるが,その独立性について懸念が持ち上がっている。
     指導者 Masayoshi Son の下で,SoftBank は戦略的国際投資に注力する持ち株会社へ自己変換しようと努めてきた。この追求の旗艦は,サウジ・アラビア政府を含むパートナーと共に設立した $930 億 Vision Fund である。
     この部門が上場すれば,日本の3大モバイル企業の中にランク入りし,フリーキャッシュフローを1年につき 約 5,000 億円 ($466 億) 生成する。ここは 昨年12月までの9ヵ月で,SoftBank の営業利益 1.14 兆円に 0.6126 兆円の寄与をした。実際,このセグメントがグループの稼ぎ頭である。
     ところが,親と子の目指す方向は "必ずしも 100% 同じではない。" … と子会社の 藤原和彦 CFO は認め,上場の背後の論理を説明する。
     グループのさまざまの投資家の方向も同じではない。一部は SoftBank の成長見通しを評価するが,一部は 今では親会社を通じた危険含みの投資ルートより モバイル部門の安定性による利益を望む。
     モバイル部門の上場は,"投資家の多様な要求への対応" を強いる … と藤原は言う。
     しかし,この上場計画は 外国投資家から批判を招いた。親会社と子会社の2重上場は,日本に固有の資本構造である。国内の一部の投資家でさえ SoftBank の動きを問題視している。
     企業統治が1つの懸念である。一部の人は,支配株を握ったままの SoftBank は,自分の利益を少数株主の利益に優先させるだろうと懸念する。たとえば,SoftBank が アメリカのキャリア Sprint とアメリカでのライバル T-Mobile を再び合併しようとしているとのニュースに,国内部門 [の上場?] は その取り引きを いまいち圧迫しかねない。
     さらに,投資家を安心させることを目指した 4月1日付の 経営陣改造は,企業統治について懸念を生んだ。SoftBank の議長兼 CEO である Son は,モバイル部門の代表権を放棄して,子会社の 宮内謙 CEO は親会社の代表権を放棄した。2人は それぞれの経営に専念する。
     上場後に 子会社がその利益をどう使うかも,もう1つの問題である。SoftBank は 約2兆円を この株式発行により調達するものと見られており,その後は 子会社の権益による配当を受け取り続ける。小口投資家と少数株主は,多くの資金が 配当よりも 成長投資に注ぎ込まれることを望むだろう。
     日本のライバルの無線キャリアは,株主へのリターンにケチではない。今年3月に終わった会計年に,NTT DoCoMo は連結決算で約 50% の配当率を予想しているし,au ブランドで無線サービスを営業する KDDI は 約 40% を見込んでいる。
     藤原は,モバイル部門が成長するためには CapEx と買収が必要だと言い,同社は "成長の前に配当を置くことは,馬の前に馬車を置く [=本末転倒の] ような" ことと見る … と続けた。
    なんだか さっぱり分からん!(笑)
     とにかく "SoftBank" が何を指すのか分からないのが曖昧で困る。
     "SoftBank Group Corp" と "SoftBak Corp" を区別せよ! と言われても 無理!
      どちらも "SoftBank" と略称されている。
     特に,これから上場するなら 一目で名前が区別できるように 社名を変更し直すべきである。
     "SBG", "SBC" を正式名称にするのでもよい。
    ──────
     ところで ・・・
       なぜ これを英語の NAR だけで出すのか?
       なぜ この時期にこれを出すのか?
    ──────
     なぜ分からないかと言うと,"成長重視,配当軽視" が結論だからである。
     成長鈍化が見込まれる企業が上場するのであれば,"配当重視" でなければならない。
     実際,NTT DoCoMo,KDDI は高配当である。機関投資家の人気を取るためには 配当が重要だ。
     配当が低けりゃ,高値で上場できないだろう。それでも上場したい理由は何か?(笑)
     "配当軽視で上場しますから,皆さん ご安心ください" (笑) なんて上場する世界でも珍しい会社である。
     通常とは逆である。特に通信企業の成長なんてこれから見込めるはずが無いのに
       藤原は,モバイル部門が成長するためには CapEx と買収が必要だと言い ・・・
     ここが 決定的におかしい。そもそも この頃 どれだけモバイル部門が "成長" しているのか?
    稼ぎの絶対額が大きいことは認めるが,"成長" なんてしてないと思うよ。契約者数だって ほとんど伸びていない。恥ずかしいくらい 伸びていない。KDDI の 遥か後塵を拝している。右のようなグラフをひた隠しに隠さなければ,上場なんてできるはずが無い。
     通信子会社が 5G のために CapEx を必要とすることは明らかだが, それは あまり "成長" に寄与しない。 5G のためだから仕方なく 儲からない投資を各社がやるのである。5G の普及はかなり遅いという市場予測が出ている。
     買収に到ってはお笑いだ。そもそも 通信子会社がこれまで "儲かる買収" をどれだけやってきたのか? これから どういう "儲かる買収" を日本の中で通信会社ができるのか? アメリカだって市場が成熟して4社ともアップアップしている。東宝とか松竹とか買収するなら話は別かもしれない (当サイトは 以前から,SoftBank がなぜ このような日本の会社に投資しないのか 不思議に思っている。灯台下暗し)。
     ただし,今回の場合には "配当重視" すると親会社に その配当が回る。これが警戒されている。
     なぜ 警戒されるのか?(笑)
     親会社が手取り金 2兆円をどう使おうが,子会社からの配当金をどう使おうが,自由である。あれこれ他人から指図される謂れは無い。まぁ 本来は子会社のためになるように使ってやるのが 常識的な親だろう。あるいは,子の成長を祝って,親が自分の懐から足してやってもよい。
     ところが この親は 世間の常識に反して,子がくれた有難いカネを 博打遊びに使う。"ドンキホーテ" だと呼ばれている。だから 警戒されるのである。実際 WSJ は,「その金をどう使うかが重要だ」… とまで書いている。要するにアメリカでも日本でも カネの使い方がオカシイと警戒されているからこういうことになるのだ。つまり "No. 1 の企業に投資している" とは大ウソだからである。
     Sprint だって買収後に No. 3 から No. 4 に転落したことは誰でも知っている。
     Uber だって 赤字で (2017年 $44.66 億), しかもかなりの累積赤字 ($92.55 億 ~1兆円) を抱えている。
     インドも いずれ Amazon が No. 1 になるだろう。現在は, SoftBank, Tencent ほか何と6社 [エッ 知らんかった?] もが団子になって支援する インド No. 1 の Flipkart が抜かれそうなところ (?)。
     そう思って読めば,この記事はよく理解できるし,藤原 CFO の発言も理解しやすい。
     2兆円のカネを,社長がいつも自慢するように (アリババを除いて) 複利計算で 年率 42% で回すのであれば,2年で4兆円,4年で8兆円,6年で16兆円,8年で32兆円,10 年で64 兆円,12年後には 128兆円,これは日本の現在の国家予算を超える (複利とはオソロシイものだ)。そこから 50 兆円くらいを子会社にやれば,何の問題も無い。
     もちろん,その時点では,SoftBank の株価は \100,000 (1単位で \10,000,000) を軽く超えているだろう。
     特別配当を 1株当たり \10,000 も可能だろう。
     投資家の警戒心に対しては,"12 年後に2兆円を 現在の国家予算を上回る 128 兆円にして見せます" と還暦社長が 一言 請け合えば,何の問題も無い。藤原 CFO が "馬車の前に馬を置く" とか ややこしい発言を日経にする必要は全く無い。
    ──────
     グループのさまざまの投資家の方向も同じではない。一部は SoftBank の成長見通しを評価するが,一部は 今では親会社を通じた危険含みの投資ルート (the potentially risky route of investing through the parent) より モバイル部門の安定性による利益を望む。
     日経も婉曲ながら断っているネ。"親会社の投資が危険含み" … であると。
     投資にリスクはつきものだから,これだけでは何とも言えないが,投資信託,生保,損保 など大口の安定株主をここでは想定しているのだろう。
     こういう部分があるから,"よいしょ新聞" としては 日本語で掲載できないのかもしれない。
     通信子会社の一番良い上場方法は,
     上場する前に 通信子会社のほとんど全株式を 現在の株主に割り当てて,サッパリしてから上場することである。こうすれば,独立性が完全に保たれる。何の問題も起こらない。
     ところが この親は 子離れが悪く,親が子の財産を当てにするので問題が発生する。
     上場による手取り金は 通信子会社が好きなように使えばよい。
     配当を高くして 安定株主を増やせばよい。高成長の必要は無い。
     安定株主としては,資金の性格を考えれば,親会社の株を処分して 低成長でも安定配当で安心できる通信会社の方に魅力を感じるだろう。
     下記は,この記事を引用した Seeking Alpha である。
    NAR: SoftBank mobile unit responds to concerns ahead of going public
    NAR:SoftBank モバイル部門が上場の前に懸念に対応する。
    Seeking Alpha,2018/04/12 @02:20 pm ET (=2018/04/13 @03:20 am JST, 素早いネ!)
    By Brandy Betz (Seeking Alpha News Editor)
    • The CFO of SoftBank’s mobile unit says the company will serve shareholder interests after going public and won’t “sacrifice growth to pay dividends” for the sake of SoftBank.
    • The comments were made to Nikkei Asian Review as the unit prepares to go public this year and in response to concerns that the unit won’t be independent of SoftBank.
    • The mobile unit generates FCF of around $4.7B a year and is SoftBank’s top-earning segment.
  42. SoftBank Probes Who Was Behind Smear Campaign Against Top Executives
    SoftBank は,トップ経営陣への組織的中傷の背後に誰がいたかを精査する
    Wall Street Journal,2018/03/26 @05:30 am ET
    取締役会への一連の書簡は,Nikesh Arora と Alok Sama の排除を要求していた。
    "妨害行為" の努力は,メディアへのリークと SEC への訴えも含んでいた。
    かつて SoftBank の Masayoshi Son CEO の法定推定相続人だった
    Nikesh Arora は,Son がさらに 5~10 年間 CEO に留まると発表した
    ことを受けて 2016 年6月に辞職した。
    Toru Hanai | Reuters)
    日本のテック巨人 SoftBank Group Corp の取締役会は,幹部2名の追放を求めた株主キャンペーンの背後に誰がいたか ── さらにその努力が現在の社内関係者とつながりがあるか 調査を開始した … と事情に詳しい複数の人が言う。
     2015 年から 2017 年まで続いた このキャンペーンは,かつては SoftBank の Masayoshi Son CEO の法廷相続人であった Nikesh Arora と 現在 同社の最高戦略責任者を務める Alok Sama の2人を狙い撃ちするものであり,2人の排除を要求する 株主からの公開書簡,個人的金融に関するメディアへのリーク ならびに アメリカ証券取引委員会 (SEC) に提出された訴状が絡んでいた。
     当時,(SoftBank の言い分によれば 不正行為との誤った容疑に基づく,後に1人の取締役が "妨害行為" と呼んだ) このキャンペーンの背後に誰がいるかを,SoftBank は特定することができなかった。両名は いかなる不正行為も否定し,自分たちは犠牲者であると言った。
     この件を知る複数の人は,イタリア人の未公開株投資家 Alessandro Benedetti が このキャンペーンの中心人物だったと言う。彼らは,Benedetti が1つには SoftBank 内部関係者の利益のために動いているのだと仲間に告げたと言う。 [訳注: Alessandro Benedetti という名前は, 初めてここで登場する。2年前の記事には全く登場しなかった。]
     先月,Wall Street Journal が このキャンペーンに関連する諸事項 ならびに Benedetti に関して SoftBank に質問をしたことを受けて,SoftBank 取締役会は特別委員会を設置し,このキャンペーンの調査を主導するよう 法務会社 Shearman & Sterling LLP に指示した … とスポークスマンは言った。
     Benedetti 側の弁護士は,クライエントが "如何なるキャンペーンも命令したことは無く,加わったことも無い" … と主張したと言う。Benedetti は,別の E-メールで,Wall Street Journal の質問が "SoftBank ないし SoftBank 経営陣として名前を挙げられている個人とは無関係" の事実 および 出来事を結びつけようとしていると言った。
     Arora は 2016 年6月,Son が Arora に禅譲するのではなく,さらに続けて 5 年 または 10 年 CEO に留まる意向を発表したことを受けて,SoftBank を去った。Sama は,世界最大のテック基金 $930 億 Vision Fund への参加を予定されていたが,このキャンペーンの結果,外された … と この件を知る複数の人が言う。
     基金の CEO Rajeev Misra は,Arora が去った後の取締役会に席を獲得することにより,SoftBank 内部でも最も権力の大きな人物の1人となった。Misra は SoftBank の直接投資を助ける。これには, ライドシェア巨人 Uber Technologies,共有作業空間企業 WeWork Cos の権益が含まれる。
     Benedetti (56) は,欧州で大型の取り引きをいくつも組成するのを助けた。その中には,2005 年の "イタリア風力通信 SpA" の買収が含まれる。オンライン上の或る経歴書は,彼を "世界 (とくに欧州) の M&A アリーナにおける 20 年を超える 大型プレイヤー" と記述し, "さまざまの国における 政府/企業/バンキング/金融セクターの最高階級の人々にまたがる" 関係を持つ … と言う。
     彼は,10 年以上前に Misra と知り合ったと言う ── 当時,Misra は ドイツ銀行の上席銀行家だった。両者は出会い,多年にわたって何度も 取り引きの可能性を議論した (2006 年にフランスのエネルギー資産を買収する数十億ドルの提案を含む。この件を知る複数の人によれば,また Wall Street Journal 閲覧した文書によれば,これは 結局 実を結ばなかった)。
     "私は確かに Misra と知り合い,彼がドイツ銀行の頃から知っている。2004/2005 年に私がやっていたいくつかの取り引きで 金融の面で互いに協力した。" … と Benedetti は E-メールで言った。
     Misra は,コメントを拒んだ。
     Benedetti は,Arora とつながりがあった。2014 年 Benedetti は,複数の PEF と Arora を (ギリシャの通信会社 TIM Hellas への酸っぱくなった投資で) ニューヨーク南地区破産裁判所に提訴したグループの一員だった。裁判の記録は,Arora が和議に応じ,2015 年3月に被告の座を逃れたことを示している。和議の条件は, 開示されていない。
     Arora と Sama 両氏に対するキャンペーンは,2015 年初頭に始まった。このとき Benedetti は,K2 Intelligence LLC のロンドン支店を雇い,Arora を調査し,その結果をばら撒いた … と この件に詳しい複数の人が言う。Benedetti は また,以前 仕事で雇ったことのある スイスの個人投資家 Nicolas Giannkopoulos に協力を依頼した … と彼らは言う。
     Benedetti の弁護士は,"当社のクライエントから そのような指示はありませんでした。" … と書いている。K2 のスポークスウーマンは,コメントを拒んだ。Giannakopoulos は コメントを拒んだ。彼は 被害を受けた SoftBank 株主のために動いていると 以前 言った。
     2015 年6月 Giannakopoulos は,ロンドンの記者団に E-メールを送り始めた;そこには Arora の E-メールと Sama の E-メールのスクリーンショット ならびに 個人的財務諸表のコピーが添えられており,これらの E-メールを Wall Street Journal は閲覧した。
     2016 年,法務会社2社 Boies, Schiller & Flexner LLP と Mintz & Gold LLP が それぞれ SoftBank 取締役会に (SoftBank および 関連会社の株主グループを代表すると称して) 一連の書簡を送った。Giannakopoulos は,これらの書簡に名前が載っている唯一の個人だった。両社は,それぞれが代表する株主の名前を明かすことを拒み,書簡以上のコメントを拒んだ。
     最初の書簡は Arora に集中しており,インドのスタートアップ企業に対する彼の投資を疑問視し,利益相反容疑に対する調査を要求した。Arora の "過去の行動もまた,自らの個人的利益 ── および そのパートナーの利益 ── を 上級幹部として採用してくれた会社の利益に優先する性向を証明する。" … と 2016 年に Boies Schiller が送り,Wall Street Journal が確認した書簡に書かれている
     書簡のうちの1通は,証券取引委員会 (SEC) に行ったが,その後 法的執行 (enforcement) は生じなかった。 同じ問題を訴える匿名の訴状が インドの規制当局に提出されたが,インド当局は この問題を追求しなかった。
     SoftBank 取締役会は 外部法務会社を雇い,調査を行なったが,不正行為の証拠を発見しなかった。ところが Arora と Son は戦略で ── 特に SoftBank が英国チップ・メーカー ARM Holdings を買収するのに $300 億以上を払うことについて ── 意見が対立し始めた … と両者の関係をよく知る複数の人が言う。
     この調査は,Arora の疑いを晴らした。しかし その過程で,取締役らは (一部の人たちが Arora の時には逆なでするような) 経営スタイルに気づき始めた … と 取締役会の審議に詳しい1人が言う。一部の取締役は,Arora に会社を渡さないように Son に訴えた … と同じ人が言う。Son は CEO に留まることを決意し,Arora は辞職した。
     それを受けて すぐ,Sama が浮上した。彼は ARM 買収の完了を助け,昇格を得た。すると 株主キャンペーンは Sama に向かった。
     2016 年10月,Giannakopoulos は,── 株主グループを代表して行動すると称して ── 新しい書簡を取締役会に書き,Sama の不適切行為を訴えた。Wall Street Journal が閲覧したコピーによれば,"疑わしい" オフショア法人を利用して コンサルタント料を受け取った … などと書かれている。Giannakopoulos は,この資料を Misra のドイツ銀行時代の元の同僚ら数人が経営する会社に送った。この会社は,サウジ・アラビアの PIF とアブダビの Mubadala Investment に Vision Fund への投資で協業している … と この件に詳しい複数の人が言う。
     この2つの基金は,2017 年の春に Sama について SoftBank に疑問の声を挙げた … と これらの連絡に詳しい複数の人が言う。その後 Sama は,上の懸念のために Vision Fund での仕事から外された … と彼らは言う。Misra は,最初から 基金を率いている。
     "Alok は,悪意の風評攻撃の犠牲者だ。" … と Sama の弁護士は声明で言った。"我々は,SoftBank 取締役会が 特別調査委員会を設置したことを喜び,この邪悪なスキームに係わった人たちに フルに責任を取らせることを望む。"
     SoftBank は,Sama の不正行為をクリアーした。
     Misra は この数週間 経営陣に,Sama が (Misra と Benedetti の関係について問題を言い立てることにより) 自分に妨害行為を働こうとしていると告げた … と この件に詳しい複数の人が言う。
    Game of Intrigue
     或る株主のキャンペーンが,SoftBank の幹部2名の追放を求めていた。
     2014/07/18 (勝手に挿入)
    ソフトバンク広報:ニケシュ・アローラ氏のソフトバンクへの参画について
     2015
    この件に詳しい複数の人によれば,イタリア人の投資家 Alessandro Bebedetti が K2 Intelligence を雇い,SoftBank の Nikesh Arora 総裁を調査した (Beneditti は いかなる役割も否定する)。K2 の調査結果がメディアにばらまかれる。
     2016/01/20
    法務会社 Boies Schiller を代表者とする株主グループが SoftBank 取締役会に書簡を送り,Arora の事業取り引きを調査するよう要求する [書簡全文の当サイトによる日本語訳はこちら]
     2016/02/15 [勝手に挿入]
    最大 5,000 億円,14.2% の自社株買いを発表。
     2016/02/16 [勝手に挿入]
    株価が +16% のストップ高。\5,100 で引ける。
     2016/04/21 [勝手に挿入]
    Bloomberg『ソフトバンクの複数の株主が, No. 2 アローラの内部審査を要求』← 最初の報道。
     2016/06/20
    SoftBank 取締役会の調査は Arora の嫌疑を晴らすが,Arora は その翌日 辞職する;創業家 Masayoshi Son が Arora に指揮権を渡さずに 5~10 年 CEO に 留まると発表したことを受けたものである。
     2016/10/14
    SoftBank が Vision Fund を発表する。
     2016/10
    10, 11 月に 株主グループから SoftBank 幹部 Alok Sama について懸念を説明する書簡が SoftBank 取締役会と Vision Fund 顧問に届く。
     2017/03/10
    Sama と Arora に対する匿名の訴状が ニューデリーのインド規制当局に提出された。当局はこの案件を追求しなかった。
     2017/04/30
    サウジアラビアの PIF が Sama の "不正行為の容疑" についてソフトバンク取締役会に書簡を送った。 Sama は後に Vision Fund の作業から外された。SoftBank は Sama の不正行為をクリアーした。
     Source: company documents, staff reports
    ──────
     巨額の自社株買いが この事件の合間を縫って実施されているので,勝手に割り込ませました。
    この英文記事はまだ ざっと読んだだけであるが,"日経よいしょ新聞" が書いている「ソフトバンクが調査委立ち上げ 元副社長の退任巡り」(2018/03/27 @18:11) では SoftBank にとって悪材料のようなニュアンスであるが,この評価は 外しているような気がする。2年前に特別委員会を編成して "問題無かった" のに "再調査" なんてあり得ないだろう。自社株買いに 5,000 億円も はたいて,必死の対策を打ったのだから (笑)
     いずれ翻訳の予定である。
     しかし,冒頭の写真が何と言っても笑わせる。
     どういう写真を使うかは,記事の中身以上に重要な場合がある。
     写真の凄さは 圧倒的である (笑)。よいしょ新聞では伝わらない。
    一応,全部翻訳しましたが,何のことだか 分からない (笑)
     少なくとも日経が "深堀り" していないことだけは分かる。
     今回の発端は,2年前の出来事について,WSJ から SoftBank に問い合わせが行き,そこで 社長が 慌てて (?) 特別委員会を設置した。
     その特別委員会が何を調べるかと言うと ・・・ タイトルに書いてある ・・・ 「トップ経営陣への組織的中傷の背後に誰がいたかを精査する」
     ここまでは 誰でも この WSJ を読めばよく分かる。
     皆目分からないのは その先である。以下,当サイトの独善的コメントを並べる。
     (0) Alessandro Benedetti と言う名前が唐突に出てくるのに 違和感を覚える。
      スイスの個人投資家 Nicolas Giannkopoulos は,前回 Bloomberg に登場した。Arora が不正の種に利用したと言う ギリシャのなんたら企業の名前も前回登場した。
     (1) 2年前に一応 特別委員会を設置した件をなぜ 今になって蒸し返すのか? これ ヤバイよ。
     (2) 2年前は,特別委員会の名簿も公表しなければ,報告書も公表しない。委員長の会見も無かった。結論だけで社長が突っぱねた。
     改めてやると,こういうものまで全部公表せよ! となると 困るんじゃないか?(笑) "勧進帳" という可能性もあるからね (笑)
     (3) 2年前は (当サイトの独善的判断によれば) 疑惑の 大型自社株買いを行なった。あれは 何のためだったのか ? という疑惑を巻き起こしかねない。つまり,"寝た子" を起こすだろう。実際,あの自社株買い発表によって,"世の中" が魔法を掛けたように 不思議と鎮まったんだからね (笑)
     (4) いまさら「組織的中傷」を行なった人物を特定して 何になるか?
     (5) というわけで,この先を注視するしかない。
     (6) 今になって,なぜ WSJ から注文がついたのか?
     最悪の可能性としては (笑)WSJ がこのところ SoftBank に厳しい記事を書いていることが背景にあるかもしれない。SoftBank の無鉄砲な "投資" を Swiss Re の場合だったと思うが "ドンキホーテのように" と酷評している。そういうこともあって SoftBank が WSJ に嫌われていることは間違いない。
     もともと SoftBank の怒涛のような外国投資は, 2014 年10月に Arora を副社長として迎えて以後 "科学的な投資" という触れ込みで始まった (それ以前は,社長の "勘" に頼る投資だった)。
    ソフトバンクが調査委,Arora 退任巡り疑惑 株主要求,社内に協力者?
    日本経済新聞 朝刊,2018/03/28
    SoftBank Group の元副社長 Nikesh Arora が2016年に退任したことを巡り,同社の取締役会が特別調査委員会を立ち上げたことが 3月27日分かった。株主による Arora らの退任要求に絡んで社内に協力者がいた疑惑が持ち上がり,同氏が退任するに至る経緯を改めて検証するとみられる。
     Wall Street Journal は 3月26日,2016年ごろに Arora ら2人の取締役 [注:Alok Sama は取締役ではない] の解任を求めた株主らについて,誰が関係していたかを SoftBank Group が調査し始めたと報じた。社内に関わりのある人物がいるかどうかなども調べているとした。
     インド出身の Arora は,グーグルなどを経て孫正義会長兼社長から「将来の後継候補」として迎えられた。海外企業投資を牽引し,2014年度は 入社に伴う契約金を含めて165億円と巨額の報酬が話題になった。
     2016年1月,アメリカの法務会社 Boies, Schiller & Flexner LLP [注:と Mintz & Gold LLP の2社] は,Arora の適性を疑問視する書簡を SoftBank に送った。同氏は SoftBank に加わってからもアメリカ投資会社の幹部を兼任しており,利益相反行為やインサイダー取引に関与した可能性があると指摘した模様だ。
     これを受けて SoftBank は取締役会による特別調査委を設立したが,書簡の指摘については問題が無いとの結論を出していた。だが孫社長が禅譲を撤回したことで Arora は退任していた。
     孫社長は,シリコンバレーなどの人脈を生かして成長企業への投資を次々と主導した Arora をグーグルから後継候補として引き抜いた。その孫社長がたった2年で "社長を続けたい" としただけに,退任に至る経緯には謎が多いとされる。
     カリスマ経営者として知られる孫社長の後任問題は世界の関心を集めている。Arora 退任を巡るいざこざが明るみに出れば,社長の後継指名レースに影響しかねない。
     今回の調査について SoftBank Group の広報室は「取締役会の特別調査委員会は,これらの件について調査をしている。結論を出すに至っておらず,調査が完了するまでコメントを出す予定はない」として詳細の言及を避けた。WSJ によると,調査委は2月に設立されたが,同社は時期を明らかにしていない。
     Arora の退任に不透明な部分があるのか,カリスマの変心だけが理由なのか。SoftBank Group には説明責任が求められそうだ。
    Arora 退任を巡るいざこざが明るみに出れば,社長の後継指名レースに影響しかねない。
      ・・・ これって,"いざこざ" の内容を よいしょ新聞が掴んでるってことか。
     いざこざが何も無いという認識ならば,こうは書かない。
     "取締役会の特別調査委員会" の中身が前回とは様変わりしているのが 要注意点である。
     現在の取締役会は,2017 年の株主総会により 子会社のトップなど 事実上社長に任命されたイエスマンばかりになっており,独立した意見を持つ取締役は皆無である。実態としては 孫社長の完全独裁である。気に入らない取締役はいつでも 子会社のトップの座を解任できる。この権限を握られている以上,取締役さんたちは社長の考えを忖度して発言せざるを得ない。たとえば,Sprint の CEO を解任される危険を冒してまで Marcelo Claure が "SoftBank 株主のために" 正しい意見を堂々と述べるなどあり得ない (笑)
     だから,特別調査委員会の結論も分かっている。
     ただし,Wall Street Journal が どういう情報を握っているのか分からない … という点は不気味である。新しい特別調査委員会の設置は,Wall Street Journal からの問い合わせにより始まったのだが,よいしょ新聞はそのことを敢えて無視している。ここが気にかかる。

  43. ソフトバンク CDS 急上昇,子会社上場前進は国内債にネガティブ
    Bloomberg Japan,2018/03/26 @12:24 JST
    By 呉太淳
      5年物が 2016年4月以来の高水準,外債条件の変更提案で上昇基調
      子会社の連帯保証なくなる上,キャッシュフローが減る懸念も
    SoftBank Group (SBG) の社債保証コスト (CDS) が急上昇している。携帯子会社上場への財務整備が国内債のクレジットに悪影響を与えると受け止められた。
     SBG の5年物債券の CDS は3月23日,199.7 bp と2016年4月以来の高水準を付けた。一部外債の条件変更を3月7日に提案したことを受けて CDS が上昇, 3月22日には同意を得たと発表した。Bloomberg のデータによると,SBG 債のうち $336.68 億相当に対して,携帯子会社 SoftBank が連帯保証を付与している。SoftBank 上場には親会社 SBG からの独立性が問われたため,この同意で SoftBank の上場が一歩進んだ。
     同時に SBG 債に対して,SoftBank による連帯保証が無くなった。従来 SoftBank の連帯保証を外すには,SBG 債が投資適格級の格付けを取得することが必要だった。今回の同意により,この格付け取得なしに連帯保証が外れた。さらに,上場する SoftBank は独立性が高まり,SBG に入る資金が減るリスクもあり,CDS 急上昇に現れた。
     朝日生命アセット・マネジメントの中谷吉宏シニア・ファンドマネジャーは,今回の条件変更で「子会社上場の確度がより高くなる」と指摘する。同時に,子会社上場ならが 親会社が受け取れるキャッシュフローが減る懸念があることから「クレジット的に特に国内債券にはネガティブだ」との見方を示した。

  44. SoftBank's Plan Raises Doubts on $33-Billion Bond Guarantees
    SoftBank の通信子会社上場計画は,$330 億 債務保証への疑念を招く
    Bloomberg,2018/02/19 @17:36 JST
    By Takashi Nakamichi & Tesun Oh
      会社は,その部門を上場するためには 債務保証をやめる必要がある:日本格づけ研究所。
      SoftBank の債券デフォルト・リスクは,日本の企業の中でも最高である。
     ドル箱の日本の通信事業を上場する大富豪 Masayoshi Son の計画は,親会社 SoftBank Group Corp の債務保証をやめ,親会社の信用の質を悪化するのではないかとの懸念をオブザーバーの間に呼んでいる。
     モバイル部門 SoftBank Corp は,親会社の (ムーディーズでも S&P Global でも) ジャンク級の債券について,$334 億を投資家に払うことを保証する。しかし,子会社が東京証券取引所に上場させてもらうためには,その独立性を証明する必要がある;つまり,日本格づけ研究所 (JCR) および 朝日生命アセット・マネージメントによれば,上場審査を通るためには おそらく この保証をやめなければならない。
     "キャッシュフローを生成しているのは,モバイル企業である。したがって,債券投資家にとって,子会社による保証は 非常に強力な保証の源泉である。" … と朝日生命アセットの 上席ファンド・マネージャ 中谷 吉宏が言う。もしも 投資家との交渉なしに保証をやめるのであれば,"倫理的に問題であろう。" … と彼は言う。
     SoftBank 債券の保証への注目は,SoftBank が世界中に投資するために溜め込んだ巨大な債務を 市場が如何に懸念しているかを物語る。SoftBank の全債務はこの2年で +28% 増えて,昨年末には 15.8 兆円 ($1,490 億) に達した;しかもその債券のデフォルト・リスクは,日本で最高である。Nomura Holdings によれば,もしも保証をなくせば,SoftBank の利回りのプレミアムは 確実に上がるだろう。
     記者会見とアナリスト向け会合で,SoftBank は保証の計画を明言しなかった。SoftBank の倉野充裕広報室長は,コメントを拒んだ。
    危険な社債
    ソフトバンクの社債のリスクは 現在 日本の中で最高である。
    白線=ソフトバンク社債のリスク,青線= シャープ社債のリスク,紫線=川崎汽船社債のリスク
     Bloomberg がまとめたデータによれば,SoftBank の 6% ドル建て無期限債の利回りプレミアムは,Son が2月7日に IPO 計画を公表後 27 bp 上がって 398 bp となった。会社による債務の不払いに対する CDS 保護コストも CMA のデータによれば, 8 bp 上がって 168 bp となった。
     子会社の上場計画が発表された頃の CDS の上昇は,国内市場全般の動きに沿うものであり,SoftBank を責めるのは誤りである … とソフトバンク広報室の小寺裕恵が E-メールで言った。
     SoftBank の決算書類によれば,2017 年12月31日に終わった9ヵ月の SoftBank の営業利益 1.15 兆円のうち,国内通信営業は 53% を占める。同社の時価総額は その資産の評価に後れを取っている。モバイル電話部門のスピンオフは,このギャップを縮め,資本を調達するのに資するだろう。
     野村證券のチーフ・クレジット・ストラテジスト 魚本敏宏によれば,SoftBank の債券発行目論見書は,債券所有者の明示的了承を得ずに 子会社が保証をやめる可能性を示唆する。例えば,もしも モバイル部門が保証をやめることを 同社に対するシンジケート・ローンに加わっている銀行が認めれば,円建て債に対する保証もやめになるだろうと同氏は言う。
     それでも もしも保証が無くなれば,SoftBank が所有する 17 兆円を超える基金の株式投資を債券所有者は あてにすることもできるので,利回りプレミアムの上昇は限定的だろう … と魚本は言う。
     理論上は,そのような保証が無くても 新しい債券を発行することにより十分にカネを調達できるならば,これらすべての社債を償還することは可能なはずである … と 日本格づけ研究所 (JCR) のアナリスト 元西明久が言う。それでも,保証が重要だと考える投資家は,新しい証券に対する高いクーポンのような "プレミアムの追加" を要求するだろう … と同氏は言う。
     たとえ 保証をやめても,JCR は SoftBank の債券の格付けをジャンク級から4レベル上にある A− から引き下げる意向は無い … と元西は言う。格づけは 通信部門の株のどれだけを Son が売るかにも;また グループの営業と利益にどんな影響を及ぼすかにもよる … と彼は言う。JCR による SoftBank Group の発行体格付けも A− である。
    利回りの急上昇
    SoftBank のドル建て債の利回りは,全体市場と共に急上昇した。
    SoftBank 6% 無期限債の利回り
     もしも,SoftBank が 債券投資家の同意を得るために協議を始めることを選択すれば,焦点は リターンをいくらにするかに移るだろう。
     会社は,発行済み証券へのクーポンの支払いを引き上げることもあるだろう … と JCR の元西は言う。
     その代りに,保証とは異なる (債務返済を保証する) 枠組みを導入することもあり得る … と朝日生命アセットの 中谷が言う。しかし,SoftBank の証券所有者の多くは,(限られた数の) 機関投資家というよりは個人投資家であり,したがって交渉により承認を求めることは SoftBank に取って難事であろう … と中谷は言う。
    こういう記事で 一番困るのは,"SoftBank Group Corp" と "SoftBank Corp" の区別が曖昧になることだ。
     この両者の区別を明瞭にすることが,社長が一番にすべきことである。
     社名をこんなに分かりにくくしているのは どういう魂胆か?
    ──────
     2月7日の決算発表に合わせて あれほど自信たっぷりに 子会社上場を表明するからには,それなりの調査も東証への打診も JCR への打診も済んだはずだと思っていた。それなのに これでは ・・・ 。
     「検討を始める」と言って,株価の吊り上げを狙う。もう ほんとに 社長の資格が無い。
    そうなんだよね (笑)
     親の寿命を 300 年持たせる … というところが根本的に間違っている。
     富士電機 → 富士通 → ファナック。
      このように,子会社に行けば行くほど 親不孝になる実例を見るがよい。
     親 (孫社長) は,死んで子を大きく育てればよい。
      子会社の持ち株は,気前よく 親会社の株主にくれてやればよい。喜ばれるよ!
      親は,信頼できる後継者を育てて,子会社の経営を委ねればよい。親の命は 30 年もあれば十分。
     「1粒の麦 もし死なずば ただ1つにてあらん。死なば多くの実を結ぶべし」
     そこを逆転させて,子の利益を親が かっぱらい,くだらない「投資ごっこ」に散財する。
     その言い訳が "情報革命", "群戦略", "同志的結合" などなど 毎回手を変え品を変える(笑)。5月の決算発表では どういう "新語" を編み出すか?
     株主もバカじゃない。もうそろそろバレてきたんじゃないか?
     けど,まぁ そんなにカッカすることもなさそうだ。
     "重大な事故" のままで 円滑に上場が進むはずが無い。
    「その日のうちに復旧の連絡があったんですけれども,やはり長時間にわたって通信手段に障害が発生したということは大変残念」(野田聖子総務相)
     野田総務大臣は閣議後の会見でこのように述べ,今回の障害について,電気通信事業法で定める「重大な事故」に該当する可能性があると述べました。そのうえで,ソフトバンクに対して,障害の発生した原因や影響が及んだ利用者数などの詳細な確認を求めたうえで,再発防止に向けた取り組みの徹底を指示する考えを示しました。
     当然,首相からの指示もあっただろう。人気を取りたい人だからね。
     それに当サイトの独断的見解 (?) では,当社は 首相に厳しく目をつけられている (理由は各自お考え下さい) から,通信子会社の上場がすんなり行くはずがありません。政治献金をしますか?
     トランプさんには5兆円と言って喜ばせたから,日本ではいくら?

  45. 携帯電話契約数 (2017年12月末)
    3社の決算が発表されたので,携帯電話契約数をグラフにまとめました。
    電気通信事業者協会 (TCA) のサイト は,更新されています。
    漸く2四半期連続で プラス圏に浮上した。
     「かなり増えたはずだ」… と自信ありげだったが,KDDI の数字を見てなかったことがバレバレ (笑)。気楽な社長業です。
     KDDI は,遙かその上を行く。倍以上の違い!
     こんな通信会社を上場して 2兆円をガッポリとは 虫が良すぎるんじゃないか?
     これまで 2年も 契約を減らしてきた実績があるんだから,機関投資家は安心して買えないだろう。
     それに通信子会社が分離されれば,今までは親の陰に隠れて問題にされなかったようなことが
    KDDI と直接に比べられるようになる。
    ──────
    別件ですが,SoftBank が $11 億を昨年8月に投資して,その直ちに1ヵ月後と 5ヵ月後に2度臨床試験を失敗して
    株価が 7% くらいに (−93%) 暴落し,その都度 WSJ に叩かれた Axovant Sciences の決算が2月9日 (金)に発表されました。
     さすが 社長が「群戦略」で No. 1 に推奨するバイオだけあって,見事な決算です。
     「赤字企業群」を寄せ集める「群戦略」が着々と実現されている。素晴らしいと言うほかはありません。
     URL=http://investors.axovant.com/investors/sec-filings

  46. Masa Is Blinded by His Own Vision
    Masa は,自分自身のビジョンのために,目が見えなくなっている
    Bloomberg,2018/02/07 @18:42 JST
    By Tim Culpan
    SoftBank は,今少し 短期で考える必要がある。
    Kiyoshi Ota | Bloomberg)
    SoftBank Group Corp の経営陣は,株価のディスカウントに不満である。日本の会社が 国内通信をスピンオフすることに決めた大きな理由がこれだろう。
     水曜日の ── 営業利益が予想を外した ── 決算は,株式投資家が 東京に上場された Masayoshi Son の旗艦企業を 部分の総和より遙かに低い価値を持つと考える理由を示す。同社の無数の持ち株は ── その中には 中国インターネット巨人アリババ集団,アメリカの電話会社 Sprint Corp,Yahoo Japan Corp が含まれる ── は合計で少なくとも $1,800 億に達する。しかるに同社の株はその半値で取り引きされている … と Bloomberg の Pavel Alpeyev が慧眼にも書いた。
     SoftBank の経営陣は,毎週 このディスカウントの大きさを追跡している … と Alpeyev は書いている。
    過小評価されている
    SoftBank の持ち株は,アリババ, Yaho Japan などを含めて, 2月7日の時点で
    18 兆円を超える (SoftBank 自身の評価による)。
    株価は この時価総額より遙かに下で取り引きされている。
     支持者たちは,遙か昔にアリババを賢明にも支援した Masa を称賛する。しかしながら,彼が実際に経営する事業の実績は,よく言って ムラがある。他方,彼の投資に対する洞察力 (acumen) は,多くの人が考えるほど輝かしいものではない。これは 先月の Bloomberg News の巻頭記事に書かれたことである。最近では,Sprint が赤字を出すのは 例外ではなく,決まりになっており,スマートフォン再販は またもや赤字になった [Brightstar の 501 億 減損償却を指すか?]
     ただし,"Masa Discount" の最も適切な理由づけは,おそらく ARM Holdings の運命の反転から来ているのだろう。彼は 2016 年に偉大なファンファーレと共にこれを買収した。SoftBank に買収されるまで 20 年間途切れることなく年間利益を黒字にしていたのが,3四半期連続で赤字を計上した。
    さほど強くない
    英国のチップ技術開発会社 ARM は,SoftBank が買収してから 赤字に転落した。
     チアリーダーらは,買収後 英国企業が従業員を増やしたという事実を指摘するだろう。つまり,新しいオーナーが研究一辺倒の事業の未来に投資した証拠であると。しかしながら,ARM の前経営陣も人員を増やし それによって 世界で最も影響力の大きな企業を生み出したのである … 通年で赤字になることなしに(1)
     Masa は,SoftBank が 300 年計画を持つと考えたがる。そして それを実現するため,他人のカネ $650 億以上を持っていると言う(2)。しかし,株式市場は ミリ秒単位で動いており,ファンドのマネージャは四半期ごとに評価を受ける。
     一番実入りの多い事業をスピンオフして上場することにより,彼は少なくとも 我々が生きている間にいつか価値を生み出す必要を認めている。もしも Masa がこの大幅なディスカウントを狭めたければ,彼は もう少し短期のことを考え始める必要があろう。
    ──────
    This column does not necessarily reflect the opinion of Bloomberg LP and its owners.
     (1) ARM は 2013年第4四半期に1回だけ赤字になった。
     (2) SoftBank Vision Fund と Delta Fund は,第三者投資家がコミットした資本 $652 億を持つ。これまでに拠出されたのは,その 1/4 未満である。

  47. Japan's SoftBank aims to list domestic telecoms unit this year
    日本の SoftBank は,国内通信部門の年内 上場を目指す
    Reuters,2018/02/07
    By Sam Nussey (東京)
    SoftBank Group Corp は 水曜日,Masayoshi Son CEO が 自ら創立した国内通信アップスタート企業から世界最大のテック投資家へと変革の完了に動く中,日本の通信部門を上場させたいと言った。
     SoftBank Group Corp は,その中核たる日本の通信部門 SoftBank Corp の株式を今年上場したい … と Son は記者団に言った。そして その手取り金は "当社グループの成長のため および 当社の財務バランスの強化に使う" … と言った。
     同社は 先月,上場を検討中であり,報道によれば $180 億の調達を目指していると 観測気球を上げた。
     SoftBank は 長い間 (グループ全体の売り上げの 1/3, 利益の 2/3 を占める) 国内無線事業を 世界中への増え続ける投資に振り向けるための現金の安定した源として依存してきた。
     相互接続された機器と人工知能がもたらす未来のビジョンの追求から,Son は世界最大の PEF Vision Fund を設立した。トムソンロイターのデータによれば,2016 年の開始以来 スタートアップ企業に $90 億以上を投入した。
     今年発表された投資の中には,プレハブ建設のスタートアップ Katerra への $8.65 億投資,犬の散歩アプリ Wag への $3 億投資,Uber Technologies の大株主となる取り引きの完了が含まれる。
     SoftBank は,中国 E-コマース アリババ集団のような初期段階の投資 ── たった $0.20 億の投資が見事な成果を生み,Son の評判を確立するのに役立った ── から,最近では 後期段階のスタートアップ企業に 数億 あるいは 数十億を投資するように方針を変えた。これは,スタートアップ企業の評価を 跳ね上げるのに寄与したと広く見られている。
     これとは別に水曜日,同社は 第3四半期の営業利益が 主として経費増のために,−2.8% の減益だったと発表した。同社は,余りにも多くの不確かな要因があるとして, 通年の業績予想を公表しなかった。
    これでも 決算報道。

  48. SoftBank Group Plans to List Telecom Cash Cow
    SoftBank Group は,通信のドル箱の上場を計画する
    Wall Street Journal,2018/02/07 @01:55 am ET (@15:55 JST)
    By Mayumi Negishi & PhredDvorak
    会社は,モバイル・キャリア部門の上場が 財務を強化してくれることを望む。
     SoftBank Group Corp (9984, +3.81%) は,財務を強化し,成長のためのカネをさらに多く得るために,日本のモバイル・キャリア部門を上場することを計画中であると言う。
     Masayoshi Son CEO は,日本で第3位のモバイル電話会社を営業する部門が 1年以内に上場することを望むと言った。IPO からのカネは,(近年の一連の巨額の買収により圧迫されている) テック+投資コングロマリットの財務を強化するために使われる。これは "グループの更なる成長" を促進する … と彼は言った。
     Son は,上場により調達する金額については 発言を拒んだ。しかし,アナリストらは 時価総額が 6~6.6 兆円であろうと言う。したがって,少数株式の売却は $200 億程度を調達することになろう。彼は,IPO からの資金が主として投資に使われるか あるいは バランスシートの強化に使われるかを言うことを拒んだ。
     SoftBank は,世界最大のテック投資基金を運営する。サウジ・アラビアが支援する $920 億の SoftBank Vision Fund と $60 億のアフィリエイト基金 [アブダビ用のデルタ基金] である。さらにアメリカの電話会社 Sprint Corp も支配する。
     SoftBank は,日本の通信営業と 中国の E-コマース巨人アリババ集団に広範な買収の資金を頼ってきた。しかし,本国での市場が飽和し,アリババの株式を手放したくない状況で,Son は 他の資金源を探している。
     水曜日に発表された決算によれば,同社の 10~12 月の営業利益は −3% 減となり,市場の予想を外した。
    ──────
    Write to Mayumi Negishi at mayumi.negishi@wsj.com and Phred Dvorak at phred.dvorak@wsj.com
    WSJ にしては,荒っぽい書き方ですね。
     しかし ・・・ ReutersBloomberg も同様。
     決算はそっちのけ。

    Company hopes listing Japanese mobile-carrier unit will strengthen finances
  49. 携帯電話契約数 (2017年9月末)
    3社の決算が発表されたので,携帯電話契約数をグラフにまとめました。
    電気通信事業者協会 (TCA) のサイト は,更新されています。
     ソフトバンクだけは,会社発表の数字が TCL 発表の数字より 10.6 万ほど多いのですが,TCL 発表の数字に従って グラフを更新しました。
    漸く 正常に戻った。
    漸く 2年半前の水準に戻った。
    [2017/11/08 @23:30] 何度も何度もドイツの Bild と Frankfurter Allgemeine を読みに行っていますが,Sprint と T-Mobile の合併中止に関する記事は 全く見つからない。1つも見つからない。
     見つかるのは
    ,10月2日の 2.10.2017, 11:24 Uhr, 『Kartell-Bedenken gegen Fusion von T-Mobile US und Sprint 』(合併に対する独占禁止の懸念) だけである。 [2017/11/11] やはり無い。
    今回の決算に気になったこと:
       海外メディアがこの「決算」の中身を報道していない。合併の行方だけに気を取られている。ソフトバンクの決算なんてどうでもよい;吟味する価値が無い;社長の大ぼらを伝えれば受ける … そう受け取られているらしい。社長は これを深刻に受け止めるべきであろう。せっかく準備した決算発表がこれでは。
       いまさら「グループに必要だ」なんて笑わせる (笑)。4年前に合併してから今まで Sprint は 何やってたんだろ。「グループ」は何 やってきたんだろ。T-モービル (日本人は社長を含めて T-モバイルと読む) に比べたら,眠っていたようなもの。
       「グループとして」というのも笑わせる (笑)。買収した時には "Sprint has come" と シナジーがあるような口ぶりだった。現実に買収したあとは, 「無線用の機器もアメリカと日本では共同にできないらしい」とか仰ってシナジーが ぜんぜん無い (その程度も無い) ことを自ら認めた。「グループとして」と言うからには,4年のあいだに物凄いシナジーがあったはずだが,1番目,2番目 ・・・ と数え上げることもできない。
       いまさら「経営権が大事だ」なんて笑わせる(笑)。何ヵ月も前から交渉をやっていたと自分で言っているんだから,交渉を始めた直後に「経営権」で互いに了解を取らずに 何を交渉していたんだろ? ドイツさんも 呆れているだろ。こんな "ちゃぶ台返し" をするような人間は,今後 世界中から不信の目で見られるだろう。しかも ドイツから呼び出して 自分がちゃぶ台返し。ここは どんなに忙しくても「私 自家用ジェット機で いつでもどこへでも飛んでいけますから」 ・・・ と自分からフランクフルトに行くべき。 … と考えると この話はでっち上げか? なぜなら ドイツ・テレコム CEO の動静を伝えるドイツ語ニュースは無い (↑)。
     [その後 判明したことであるが,Timotheus Höttges, John Legere が東京に駆けつけてきたのはホントらしい。なぜかというと,この交渉は『T-Mobile が Sprint を買収する』という了解で進めてきたらしい。つまり,経営統合ではなく,一方的な売却である。これを社長が ちゃぶ台返ししたので,確認のために 両首脳が東京に短時間滞在した … というのが真相らしい。こういう経過であれば,大筋合意から始まって 全体を無理なく理解できる。"買収" を最後にちゃぶ台返しするような愚かな日本の社長をドイツ側が ニュースにしないでくれるのはありがたい。社長は感謝しているだろう。]
       営業利益 8,748 億円は確かに +35% なんだけど,Nvidia の値上がり益 1,862 億円 (これ,株の投資の含み益なんだから,ほんとは一時利益でしょ) を除くと,ホントの営業利益は 6,886 億円で,+6.4 % の増益である (決算短信 p.5) とは 日経も指摘を怠っている?
     前の四半期からであるが,「SVF 事業」という名目を建てて 普通なら一時利益 (ご自身も一時利益だと あの場で認めた) なのに SoftBank は投資も事業にする会社であるから,営業利益に繰り込んでいる … 苦しいことが 逆に読み取れる。たったの +6.4% 真水の営業利益増では,大口たたきの社長としては,ホントにほんとに恥ずかしくてたまらない (?).
      ・・・ ということは,Nvidia 株がもしも下がれば,営業減益となる。おかしな SoftBank の会計だ。
     今後,ソフトバンク株主は 毎日,ニューヨークの (SoftBank の株価ではなしに) Nvidia の株価に一憂一喜する通信会社となり果てた。これ,どう考えても おかしいよ。純粋な投資会社だと思って 株主になっている人は別だけど。
     折しも WSJ の新着ニュース:インテル+AMD が互いに協力して Nvidia を攻略 … とか
       「アリババを除く利益が 複利計算で いつもいつも いつもいつも 44%」で変わらないというのも 笑わせる (笑)。同じウソをつくなら,45% とか 43% とか 四半期ごとに ちょっとは変えたら?
       ARM は, 1Q (69.35 億), 2Q (78.59 億) と赤字が定着? ← 飛ばした(笑)
    ARM は,この四半期も赤字だった。社長は 個数,売り上げが順調に伸びているグラフを示したが,益については,赤字であるとさえ言わなかった。相当気にしていることが 逆に分かる (笑)
     [普通なら,ARM が2四半期連続の赤字だと 鬼の首を取ったように外国メディアが報道してもおかしくない … んだけど,そういう報道は全く見つからない。全株買い取って 上場廃止した効果が 1,000 % 現れた。もはや,ARM について関心を持つメディアは存在しないらしい。社長さんの ARM 隠し大作戦が見事に成功したようである。大金懸けて,自慢の ARM (10 年前から買いたかった) を なぜ隠したかったのだろう?]
     これについて,赤字の理由を訊ねる質問さえなかった。低調な「決算独演会」であった。この頃は メディアが注目しなくなったらしい。以前は 外国人の記者が 分かりやすい日本語で質問していた。
     決算短信を読まずに ただ 拝聴するために出席する記者さんが多いらしい。批判精神を失ったメディアは死んでいる。結果として 独演会となる。こんな会社も珍しい。
       最後に「晴れやか」と強がる心境が笑わせる (笑)。この日本語表現の通常の使い方は
     ① 猛練習の甲斐あって, オリンピックで金メダルを取ることができた。 晴れやかな気持ちだ。
     ② 猛練習の甲斐なく, オリンピックでメダルに届かなかった。 でも自分としては 精一杯 できる限りのことをやった。だから 晴れやかな気持ちだ。
     社長さんは このどちらなの? 何もしなくて晴れやか,No.3 → No. 4 転落しちゃって晴れやか?
     インドでも 減損償却計上して晴れやか。ARM でも赤転して晴れやか。Fortress も赤転して晴れやか。今後の「晴れやか予定」は サウジアラビアへの数兆円投資 (何年か後になって,このとき「社長が (後戻り不可能な) ルビコン河を渡った」とソフトバンク株主が気づくことになりそう … かなり先の話)。Uber 1兆円投入の晴れやか。Misra などインド人の (投資経験に乏しいと報道されている) デリバティブ愛好グループに丸投げしている 10 兆円 SVF で晴れやか。
     晴れやかでないのは,スーパーセルと アリババ?
     ソフトバンク傘下の米携帯4位スプリントをドイツテレコム子会社のTモバイルUSと統合させる構想は,10月半ばには統合で大筋合意に達するが,孫は統合新会社の経営権にこだわり,取締役会で交渉打ち切りを決めた。[2017/11/08]
     杉本さん,あくまで「大筋合意」があったことにしたいらしい。
     3年前とは違って,今回は The Wall Street Journal を騙せなかった あの匿名記事で「大筋合意」と日経が主張できる根拠を挙げてもらいたい。経営権が決まったなど書いてない。違約金がどう決まったかも書いてない。デューディリは 双方? 片方? いつ始まって何ヵ月掛けるの?
     これだと 孫は,最後の最後でちゃぶ台返しをするような (交渉の基本を知らない) バカな経営者。今後 世界中から相手にされない。だって,ソフトバンクと何かで「大筋合意」しても,いつ ちゃぶ台返しされるか分からないんでしょ?
    ──────
     なお,すぐ下のロイター記事は2017年6月期の決算報道であるが,今でもかなりよく当て嵌まるように思う。
     9月期の決算についても,このような批判的を書いてもらえるとありがたいのだが,検索しても見つからない。Reuter BreakingNews は (事実を伝える Reuter 報道とは違って),批判精神にもとづく。

  50. コラム:ソフトバンク,業績の解読が一段と困難に
    Reuters,2017/08/08 12:04 JST (香港)
    By Quentin Webb
    ソフトバンクグループが8月7日発表した 2017年4~6月期連結決算は,取得した半導体 Nvidia 株の評価益が利益を大きく押し上げた。今回はテクノロジー分野に投資する Vision Fund を含んだ初の決算であり,グループが一層複雑化し,業績の解読がますます難しくなったことを浮き彫りにした。
    ソフトバンクは, 5月にファンドの初回出資 $930 億を完了し,この際 Nvidia 株を取得した。同株の急上昇による 1,070 億円の評価益が寄与し,グループの営業利益は予想を上回る 4,790 億円に達した。
     もちろん,紙の上の利益も素晴らしいことには違いない。Nvidia 株の急上昇は,孫正義社長が投資について鋭い嗅覚の持ち主であることを証明した。
     しかし,ソフトバンクの実態把握が難しさを増したことも明らかになった。利益が予想と懸け離れた数字になったことは,ファンドの設立によって収益が大きく振れやすくなった証拠だ。
     しかも,ソフトバンクは Sprint の不振を修復するため,猛烈な勢いで大型買収を検討している。今年は既に Fortress Investment を $33 億で買収したほか,中国の配車サービス大手,滴滴出行に $50 億を出資。他にも数多くのスタートアップ企業に出資している。
     これほど目まぐるしく買収する投資家が,規律を保ち続けるのは珍しい。孫社長はソフトバンクの中核事業に注力する時間をほとんど持てなかったはずだ。
     ソフトバンクは今や,大型の PEF にしてベンチャー資本投資家であり,同時に通信,電子商取引,ハイテクなど既存の出資先の運営にも関与する企業になった。株主は,こうした企業と取っ組み合うことになる。Vision Fund は大きなリターンをもたらす可能性があるが,それは何年も先かもしれない。多くを左右するのは投資の量ではなく質だ。ファンドの利益分配,手数料,税金,マネジャーのインセンティブなども重要になってくる。
     ソフトバンク株が,個々の事業の合計から推計される値に比べて大幅に割安な水準に留まっているのは,この複雑さが理由かもしれない。株価は昨年 51 %上昇したが,ソフトバンクが筆頭株主である中国の電子商取引大手アリババ集団が 81 %も上昇したのに比べれば,パッとしない。一部の投資家は,ソフトバンクの実態を把握しきれないのだろう。
    ──────
    背景となるニュース
      ソフトバンクグループが8月7日発表した7─9月期 [sic] 決算は,Vision Fund の評価益に支えられて営業利益が予想外の伸びを示した。今回は,同ファンドを連結した初の決算である。
      営業利益は 50%強増えて 4,790 億円($43億),売上高は 2.2 兆円。トムソン・ロイターがまとめたアナリストの予想平均は,営業利益が 3,260億円,売上高が 2.2 兆円だった。
      Nvidia 株の評価益により,ファンドは営業利益に 1,050 億円分寄与した。
      ソフトバンクは5月にファンドの初回出資を完了した際,Nvidia 株を取得したことを明らかにした。ブルームバーグによると,ソフトバンクの取得分は $40 億ドル相当で,出資比率は 4.9% となる。
    これほど目まぐるしく買収する投資家が,規律を保ち続けるのは珍しい。孫社長はソフトバンクの中核事業に注力する時間をほとんど持てなかったはずだ。
     つまり,いい加減な投資があるんじゃないの?
     … あるいは,誰かに丸投げして 踊らされているだけなんじゃないの?
     国内事業はほったらかしでしょ?

  51. SoftBank: cargoed cult
    SoftBank :カーゴ・カルト
    Financial Times,2017/08/07
    By Lex
    日本のグループへの投資は,創業家への信頼を必要とする。
    牛さんたちは,Masayoshi Son 自身を取り巻く個人崇拝を受容せねばならない。
    なにがしかの信頼は,世事を放り出す時期を迎えた熟年に懸かる。Masayoshi Son の教書もまた然りである。
     今週 60 歳を迎える SoftBank のボスは,向こう 10 年のいつの日にか辞職を計画する。もしも 絶頂期の投資が失望に終われば,称賛の声は掻き消えるだろう。たとえば,ライドシェア企業 Uber, Lyft が 最近彼の関心を惹いた。このどちらにも,未発見の価値は 潜んでいないだろう。
     日本のテック・グループが直面している それより広範な問題は,成功を納める破壊者 (disrupter) である。それは,エスタブリッシュメントの中に 反逆の道を進んできた。Mr. Son が 企業家や石油シェイク [首長] らから掻き集めた $932 億の軍資金である Vision Fund は,初めて SoftBank の四半期決算に姿を現した。これは,すでに雲の掛かった描像を 泥で搔き乱すだけである。
     グループの利益は,SoftBank お好みの指標である 調整 EBITDA によれば,手堅い 3% 増の \7,000 億になった。この結果は,アメリカの通信グループ Sprint の強い業績を反映したものである。しかし,税引き前の利益は,\3,560 億から \77 億に急減した。その一因は,SoftBank が (Mr. Son の名を賢い投資家として知らしめた) E-コマース・グループ アリババの株で \2,600 億のデリバティブ損失を計上したためである。
     Vision Fund の利益と損失は,これと似たような渦を巻き起こす。ありがたいことに,SoftBank は,Fund の動きが分かりやすいように,これらの利益を別建てに分離している。しかし,少なくとも1つの投資 ARM は,この分割をまたいでおり,どっちつかずである。SoftBank は,昨年 £234 億もの高値で買収した 英国チップ設計会社の 25% を新設の基金に拠出する計画である。
     Mr. Son の負債を好む傾向も,解明を要する。彼は,有利子負債と EBITDA の比率を 2.9 倍に抑えると アップビートな プレゼンテーションで述べた。だが,これは 日本の通信営業についてのものである。SoftBank の投資に関連する重い債務が 利益に対してではなく,うれしいことに 時価総額に対して計算されている。従来の計算方法によれば,グループの 有利子負債/EBITDA は 4.2 倍の大きさである。
     ベンチャー資本家か? ファンド運用業者か? PEF か? SoftBank は,この全てであり かつ このどれでもない。予想 PER 15.4 倍というような 慣用的な指標は,無関係に見える。その代りに,牛さんたちは,Mr. Son 自身を取り巻く個人崇拝 (personality cult) を 必然的に受容せねばならない。こんなに高く上がったテック銘柄では,この賭けはリスクを負う。
      Is Masayoshi Son still an investor with a canny ability to spot value? Is SoftBank a good investment? Please tell us what you think in the comments section below.
    カーゴ・カルト:(cargoed cult)
     直訳すると「積み荷信仰」である。
     主としてメラネシアなどに存在する招神信仰である。いつの日か 先祖の霊 または 神が 天国から船や飛行機に文明の利器を搭載して自分達のもとに現れる … という現世利益的な信仰である。

  52. SoftBank Chief Says He Wants Stake in Uber or Lyft
    SoftBank CEO は,Uber または Lyft の株が欲しいと言う。
    Wall Street Journal,2017/08/07 @08:33 am ET
    By Mayumi Negishi (東京)
    Masayoshi Son は,配車市場への投資がどういう形を取るのがよいか分からない。
     SoftBank Group Corp の Masayoshi Son CEO は月曜日,アジアの配車企業にいくつも投資した後で,アメリカ市場へのアクセスを得るために,Uber Technologies または Lyft Inc への投資に熱意を表明した。
     "当社は,Uber との交渉に関心がある。当社は Lyft との交渉にも関心がある。" … と SoftBank の CEO はニュース会見で言い,どういう形の投資が良いかは分からない … と続けた。"アメリカは 非常に大きな市場である。最も重要な市場である。したがって 当社は もちろん非常に強い関心を持っている。"
     日本のテクノロジー+通信グループの創業家兼トップの Mr. Son は,今週末に 60 歳の誕生日が近づくにつれ,これまでにも既に熱狂的なディールメーキングのペースを 最近では更に上げている。
     彼は,SoftBank が支配するアメリカの無線営業会社 Sprint Corp がアメリカ通信業界の再編の引き金となる取り引きが近いと言った。
     SoftBank と Sprint は "複数の可能性" をブローカーしているところだと彼は言ったが,T-Mobile との合併がテーブル上にあるのかどうかについては,コメントを拒んだ。
     彼の軍資金は,日本の通信事業の手堅い売り上げ,中国の E-コマース巨人アリババ集団への投資の成果,ならびに SoftBank Vision Fund の $930 億の予約資本から生まれる。
     SoftBank は,既に アジアの3大 配車企業に多額を投資している:シンガポールの GrabTaxi Holdings,インドの Ola,中国の滴滴出行科技である。このほか,半導体,ロボットから自動運転関連の分野にまで投資している。
     Uber または Lyft にリーチを伸ばすことにより,SoftBank は 自動運転技術の採用で業界の方向を決めるのを助けることができると Mr. Son は言う。この技術は "もちろんやって来る。その時には,ライドシェア事業が ますます重要になる。" … と彼は言う。
     日本の Uber のスポークスウーマンは,Mr. Son の発言について,コメントを拒んだ。Lyft には すぐには連絡が取れなかった。
     Wall Street Journal は,サンフランシスコに拠点を置く Uber に SoftBank が 最近近づいて,数十億ドルの株式取得の交渉を行なったと 伝えた。ただし,この交渉は予備的なものであり,Uber が新しい CEO を迎えるまで 保留状態にあるらしい。
     Vision Fund が5月にスタートして以来,SoftBank は 共有オフィス空間のプロバイダ WeWork Cos,インドの携帯決済企業 Paytm,ロボット会社 Boston Dynamics,自動運転技術の会社 Nauro, Brain Corp のような会社 および その他多くの会社に新規投資を発表した。
     ドル建ての最大の取り引きは ── もしも何かあるとすれば ── おそらく Sprint に絡むものだろう。2013 年に Sprint の支配株を買った後,CapEx の増大に直面する業界において,Sprint と T-Mobile を一緒にすることが アメリカ無線巨人 Verizon, AT&T を攻略する唯一の道だと Mr. Son は言った。オバマ政権の規制当局の反対は,この取り引きを棚上げにさせたが,今年4月,彼は その T-Mobile との取り引きを 一番の選択であると繰り返した。
     SoftBank は,アメリカ No. 2 のケーブル会社 Charter Communications に買収の正式オファーをすることを検討中である … と先月 Wall Street Journal が伝えた。先週,Charter は,Sprint を買収することに関心が無いと言った。
     どの取り引きであろうと Sprint と SoftBank がどれだけ力を振るえるかは,相手が (Mr. Son が 5G に不可欠であると自慢する) Sprint の電波をいくらに評価するかに依存する。Sprint の時価総額は Charter のざっと 1/3 であり,T-Mobile より少ない。
     "世界が 5G に移行すれば,Sprint の電波は極めて価値が出る。" … と Mr. Son は言う。"通信業界はその価値をこれまでフルに認識していなかったが,今では認識しているものと思う。"
     複数の取り引きをもてあそぶことは,てんてこ舞いの旅行スケジュールに Mr. Son を追い込んだ。”睡眠さえも 時間の無駄のように思える。" … と彼は SoftBank の或る集まりで言った。6月の株主総会では,風で熱を出して,株主から健康状態について質問をされた。
     月曜日のニュース会見では,喉の痛みのために 声が出しにくいことをお詫びして,60 年の実績を振り返った。
     "振り返ると,残念に思うことが沢山ある。私は 自分自身の欠点に まことに不満である。" … と彼は言った。100 点満点の 28 点を自分につける。"だが,これが終わりではない" … と彼は言った。
      Write to Mayumi Negishi at mayumi.negishi@wsj.com

  53. SoftBank CEO: Deal on Sprint Consolidation to Come in Near Future
    SoftBank CEO:Sprint 再編取り引きは,近い将来に来る
    Wall Street Journal,2017/08/07 @04:03 am ET
    By Negishi Mayumi (東京)
    第1四半期の純利益は −98% 急減する。
     SoftBank Group Corp の Masayoshi Son CEO は アメリカの無線キャリア Sprint Corp を取り巻く再編協議は進行中であり,近い将来の取り引きを期待する … と語った。
     "Sprint は,自力で成長できるが,Sprint の価値を真に最大化するために,我々は 再編に向けて複数のオプションを追求している。" … と Mr. Son は月曜日のニュース会見で言った。彼は,交渉についてのコメントを拒んだ
     SoftBank は,アメリカ No. 2 のケーブル会社 Charter Communications を買収する正式のオファーをすることを検討中である … と Wall Street Journal が先月伝えた。
     検討中のオファーの1つは,新しい上場会社を設立して,そこが SoftBank の金を使って Sprint, Charter 両社の株主からプレミアム付きでバイアウトし,合併された会社の支配を SoftBank が握るというものである … と Wall Street Journal は言う。
     先週 Charter は,Sprint を買収することに関心は無いと言った。
     2013 年に Sprint の支配を買って以来,Mr. Son は,T-Mobile との取り引きを追いかけた。これは Verizon および AT&T と競争しやすくすることを目指した取り組みであった。その協議は,アメリカ規制当局の強い反対に遭って潰えた。しかし 今年4月に,Mr. Son は Sprint と T-Mobile の合併が最良のオプションだと言った。
     この交渉は Sprint が後払い契約を流出している中で行なわれる。ただし,第1四半期の決算では コスト削減により3年ぶりに黒字となった。
     月曜日,SoftBank は 純利益が −98% 減の 55 億円に急減したと報告した。1年前のこの四半期に,同社はアリババ集団の持ち株の一部を売却したことにより利益が急騰したことを報告した。この売却の影響を除けば,同社の純利益は +61% 増であると言う。
     どんな取り引きにせよ 鍵を握るのは,相手が Sprint の (Mr. Son が 5G ネットワークを配備するのに欠かせないと自慢する) 電波をいくらに評価するかである。
     "世界が 5G に移行すれば,Sprint の電波は極めて値打ちがある。" … と Mr. Son は言った。"通信業界は これまで その値打ちをフルに認識してこなかったが,今では認識しているものと私は信じる。"
      Write to Mayumi Negishi at mayumi.negishi@wsj.com

  54. 携帯電話契約数 (2017年6月末)
    3社の決算が発表されたので,携帯電話契約数をグラフにまとめました。
    電気通信事業者協会 (TCA) のサイト は,更新されました。確認できます。
    ソフトバンクの4~6月期は,堂々のマイ転を果たし,−420,800 という社長さんが「国内通信堅調!」と胸を張れる数字となりました。
     ただし,KDDI との差は開き, 1,022 万となりました。
    −420,800 という数字がウェブで見られるようになったのは8月10日です。
    もしも影響があるとすれば,週明け以降でしょう。
     ソフトバンクだけが,理由は分からないが 1% 以上の減。
     これで決まりだね! 社長がホンマもんのアホだということが。
     
     このデータは8月8日の午後から入手可能になったが,ドコモと KDDI の店舗は大喜びだろう。
     このデータを客に見せれば一発。
     そこからさらにクチコミ。SNS でバイラル。
     買収ごっこに熱を出し「個人崇拝」をいくら煽っても,対象は株主だけ。
     お客さんは,このデータを見れば逃げていく。原因不明でもこわいよ。データが独り歩きする。

    これだけ 国内通信営業に利益をおんぶしているんだけど。
     
     Nvidia は,さすが $10 とウワサの安値でだいぶん前に 4.9% 仕込んでおいただけに 1,052.29 億の利益を挙げたのは見事でした。
    あと 次の四半期に備えて,隠し玉がどれだけあるか?(笑)

     ARM が 69.35 億円の損失というのは意外だった。
     買収前はこれだけ (→,WSJ) 堅調な業績を続けてきたのが,赤字とは!
     売り上げは匙加減次第である。数は +28%増。
     チップの個数は増えても,チップの単価が下がる → 利益は下がる … これの典型と見る。
     いや,これだけ急激な「赤転」は,明確な理由があるはずだ。
      少なくとも現状では,ARM は SoftBank のお荷物となった。
     いつ「お荷物」から脱却できるか?
     右のグラフから見ても, 1年の利益がせいぜい £4億程度だから,その2倍の利益を挙げて「脱 お荷物」となるには 何年かかるか?
     
     新しい概念の同士的結合として戦略的シナジー集団 …
       でも Flipkart は「金だけの結合」と言ってるよ (笑)
     こりゃ,May 首相は鼻が高いだろう (笑)
     何たって ARM 買収を認めたのは,May 首相。もしも とめる気になれば あらゆる手を使って止めたはず。
      実際「刺客」を放って 英国政府が大型買収を止めた例もある。
     首相に就任早々に棚から牡丹餅で £243 億 (英国予算 £8,000 億の何と 3%) が転がり込んで国際収支の好転に寄与した (笑)
     おまけに ARM が,予想より早く 赤字に転落。
     これでは,称賛されこそすれ 非難されることは無い。ARM はもはや 日本の企業。どうぞお好きなように。
     買収前の ARM は 四半期利益が £1 億 (~\140 億) くらいだった。見返すにはどのくらい必要か?
     それに,3.3 兆円の利息として1年に +1,000 億円くらいは稼ぐのがベースラインでしょ。
    以下は,ARM の 1/4 を SoftBank が売却したことを伝える BBC のニュースである。
    ARM chip designer stake 'to be sold by Softbank'
    ARM チップ設計会社の株を「ソフトバンクが売却の予定」
    BBC,2017/03/08
    ARM Holdings を買った日本の会社が,1年も経たないうちに 英国テック企業の株を サウジが支援する投資グループに大量に売り飛ばす (sell off) と報道されている。
     Financial Times によれば,Softbank は 25% の株 (£65 億相当) を サウジアラビアと共同で創設するテック基金に売却する。
     Softbank も ARM も この報道にコメントを拒んだ。
     Softbank は昨年7月,英国最大のテック企業 ARM に £240 億を払った。
     当時,Theresa May は,この取り引きが我が国の国益に係わると言った。
     Softbank は この取り引きの一環として,ARM の本社をケンブリッジに残し,向こう5年間にスタッフの数を少なくとも倍増するとコミットした。
     ケンブリッジに拠点を置く会社は,ほとんどのスマートフォンで使われるマイクロチップを設計し,英国の技術の最も貴重な王冠宝石と見られている。
     Softbank の買収後 こんなに早く起こる株式売却は,英国へのコミットメントに懸念を生みかねないが,Financial Times によれば,ダウニング街はこの取り引きを通知されており,懸念の声を挙げなかった。
     ARM の 25 % を売却する決定は,Mr. Son がアブダビの国営投資グループ Mubadala の Vision Fund への投資を確実にしたいとの希望によると伝えられている。

  55. ソフトバンクが 2017/06/02 までの半年間に EDINET へ提出した ヤフー株変更報告書
    久しぶりに EDINET を見に行ったところ,下記7件の変更報告書がありました。
     いずれも ソフトバンクグループ株式会社から ヤフー株式に関する変更の申告です。
     EDINET の URL はこちら
    (1) 提出日:2016/12/15,提出者:ソフトバンクグループ株式会社
    【変更報告書提出事由】当該株券等に関する重要な契約の変更
    【当該株券等に関する担保契約等重要な契約】
    提出者,ヤフーインク および SBBM 株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM 株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数 2,071,926,400 株のうち,合計 1,278,311,700 株について 契約期限を 2017年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    (2) 提出日:2017/01/18,提出者:ソフトバンクグループ株式会社
    提出者,ヤフーインク および SBBM 株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM 株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数 2,071,926,400 株のうち,合計 1,220,423,900 株について契約期限を 2017年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    (3) 提出日:2017/02/17,提出者:ソフトバンクグループ株式会社
    提出者,ヤフーインク および SBBM 株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM 株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数 2,071,926,400 株のうち,合計 1,067,524,600 株について契約期限を 2017年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    (4) 提出日:2017/05/09,提出者:ソフトバンクグループ株式会社
    提出者,ヤフーインク および SBBM 株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM 株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数 2,071,926,400 株のうち,合計 1,138,491,300株 について契約期限を 2017年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社)が保有しております。
    (5) 提出日:2017/05/12,提出者:ソフトバンクグループ株式会社
    提出者,ヤフーインク および SBBM 株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM 株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数 2,071,926,400株のうち,合計 1,216,624,300株について契約期限を 2017年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    (6) 提出日:2017/05/31,提出者:ソフトバンクグループ株式会社
    提出者,ヤフーインク および SBBM 株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM 株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数 2,071,926,400株のうち,合計 1,140,576,100株について契約期限を 2017年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    (7) 提出日:2017/06/02,提出者:ソフトバンクグループ株式会社
     【変更報告書提出事由】 共同保有者3の追加,保有目的の変更,共同保有者間での株券等保有割合の1%以上の増減,当該株券等に関する重要な契約の変更
     【共同保有者 / 3】 氏名 または 名称 ソフトバンクグループインターナショナル合同会社
    住所 または 本店所在地 東京都港区東新橋一丁目9番1号
     ソフトバンクグループ株式会社
    【当該株券等の発行者の発行する株券等に関する最近60日間の取得又は処分の状況】
    年月日 株券等の種類 数量 割合 市場内/市場外 取得/処分 単価
    平成29年6月1日 普通株式 2,071,926,400 36.38 市場外 処分 現物出資
    平成29年6月1日 普通株式 1,630,000,000 28.62 市場外 取得 貸借
    【当該株券等に関する担保契約等重要な契約】
    1.提出者,ヤフーインク,ソフトバンクグループインターナショナル合同会社 および SBBM株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク,ソフトバンクグループインターナショナル合同会社 および SBBM 株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式 2,071,926,400 株のうち,1,181,871,800 株について契約期限を 2017年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等 (以下,ソフトバンクグループ-スレンダー間株式貸借契約) に基づき一般社団法人スレンダーに貸出しておりましたが,2017年6月1日に一般社団法人スレンダーより当該貸出株数全株の返却を受けております。
    2.2017年6月1日に保有株式数 2,071,926,400 株を対価としたソフトバンクグループインターナショナル合同会社に対する現物出資契約を締結いたしました。
    3.ソフトバンクグループインターナショナル合同会社との間で,契約期限を 2020年6月1日までとするの「株式等貸借取引に関する基本契約書」等を締結し,ソフトバンクグループインターナショナル合同会社が保有する 2,071,926,400 株のうち 1,630,000,000 株について,2017年6月1日にソフトバンクグループインターナショナル合同会社より借入れています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,ソフトバンクグループインターナショナル合同会社が保有しております。
    4.保有株式数 1,630,000,000 株のうち,合計 1,140,576,100 株について契約期限を 2017年11月28日までとするソフトバンクグループ-スレンダー間株式貸借契約に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しております。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,ソフトバンクグループインターナショナル合同会社が保有しております。
    【共同保有における株券等保有割合の内訳】
    提出者 および 共同保有者名 保有株券等の数 (総数) (株・口) 株券等保有割合 (%)
    ソフトバンクグループ株式会社 1,630,000,000 28.62
    SBBM 株式会社 373,560,900 6.56
    ヤフー インク 2,025,923,000 35.57
    ソフトバンクグループインターナショナル合同会社 441,926,400 7.76
    合計 4,471,410,300 78.51
    なかなか複雑で 理解しきれる人 いますか?
     当サイトも素人であるから,よぅわからん。
     基本的には 6月1日の広報にあったように ヤフーの株式を子会社であるソフトバンクグループインターナショナル合同会社 (SBGI) に移管するということ。 ・・・ なんだけど
     (1) 親会社の SBG が,ヤフーの株式の持ち株の半分程度 1,181,871,800 株 (時価にして ~5,900 億円) を 一般社団法人スレンダーという正体不明のところに貸している。
     (2) その貸し株を 6月1日に全株返却してもらった。
     (3) SBG が持っているヤフーの全株 36.38% を SBGI に現物出資する。… ここで終われば分かりやすい (笑)
     (4) SBGI が受け取ったヤフー株から 7.76% を手元に残して,親会社 SBG に 28.62% を貸し付ける。
     (5) SBG が借り受けた 28.62% から 1,140,576,100 株 (20.76 %) を再びスレンダーに貸し付ける。
    以上で間違いありませんか?(笑)
     問題は,SBGI を設立して ヤフー株を移管するところにではなく,なぜ こうまでして ヤフー株 5,700 億円相当の貸し付けを維持しなければならないか? ここから先は憶測しかありません。
    ウェブで検索すると スレンダーは,やはりソフトバンクの金繰りのための レポ取り引きに使われているらしい。 8掛けの8掛けで 3,650 億円ほどになる。社長は 2兆円の「現金+現金同等物」を自慢するが「同等物 (有価証券)」の方が遥かに多いのだろう。この程度の金にも 定常的に困るとは,如何なる理由によるものか?
     昨年2月にも6月にもこういうのがある。昨年2月は,特殊事情発生によるもの [と断定]。
     スレンダーは当然 貸し株をしているでしょう (DDS のマイルストーンへの貸し株では,「売らない」特約をつけていました。特約がついていなければ,株を貸して品貸料を稼ぐでしょう)。6月1日までに手仕舞いした売り方さんは,再び借りて ・・・ 。ヤフー株はどういうことになるか。子会社の株主はいい迷惑だ。これじゃ ヤフー株は怖くて手が出せない (株数が多すぎ!)。哀れ ヤフー株 −5円安の弱含み。引けでは −8 円安。
     売り直しが入ったのか! そもそも ヤフーの投資家は この件を知っているんだろうか?
     やるなら 昨年2月のように もっとド派手にソフトバンク株でやれ (↓)!
    ──────
      『犬のお父さんもビックリ,謎の大株主の正体』(ZAKZAK, 2009/04/15)
      『孫正義が 2016/02/19 に EDINET へ提出した変更報告書』 (EDINET,2016/02/19)

  56. 携帯電話契約数 (2017年3月末)
    3社の決算が発表されたので,携帯電話契約数をグラフにまとめました。
    電気通信事業者協会 (TCA) のサイト も更新されています。
    ソフトバンクの 1~3月期は,堂々のプラ転を果たし,+21,000 という社長さんが「国内通信堅調!」と胸を張れる数字となりました。
     ただし,KDDI との差は開き, 923 万となりました。
    いったい,どうやれば,こういう低空飛行を見事に続けられるのか?
     携帯電話業界の七不思議の1つ
     
     Watson にも分からないの?
     ペッパーもダメ?

    これだけ 国内通信営業に利益をおんぶしているんだけど

  57. SoftBank profit climbs, keen to talk about a deal for Sprint
    SoftBank は増益;Sprint の取り引きの交渉を切望。
    Reuters,2017/05/10 @03:20 am ET
    By Makiko Yamazaki
      営業利益は +13% 増で1兆円になる。
      CEO Son は,Sprint の取り引きにオープンであると言う。
      Vision Fund はまもまく決着する見込みであると言う。
     日本の SoftBank Group Corp は 通年の営業利益が +13% 増加したことを報告した。これは,アメリカの無線部門 Sprint Corp における契約増と経費削減によるものである。
     ただし,アメリカ No. 4 の無線キャリア Sprint は,いまだに赤字であり,ライバルの Sprint と合併するのではないかとの希望に頼る投資家の注目の的になっている。
     ロイターは 今年2月,SoftBank が 取り引きを結ぶために Sprint のコントロールを T-Mobile に渡す用意があるとお伝えした。
     "我々は ,アメリカの通信業界を真の自由競争に変えるため,さまざまの可能性について心を開いて交渉に入る用意がある。" … と SoftBank CEO Masayshi Son は 水曜日,記者団に語った。
     "現在のアメリカ政権の通信業界に対するスタンスは,前政権より規制緩和に対して遥かにオープンである。"
     Son はまた,T-Mobile が取り引きを結ぶ可能性のある最良の候補の1つであると言った。ただし,それ以外の可能性もあると補足した。
     インターネット+通信の巨人は Sprint の 83% を所有しており,今年3月に終わった通年の利益は 1.026 兆円 ($90 億) に増えたと言った。
     この決算発表は,通信サービス市場が成熟する中,SoftBank を "テック業界のバークシャ・ハザウェイ" にすることを目指す $1,000 億基金の立ち上げの前になされた。
     SoftBank は,中国 E-コマース巨人アリババの株 ならびに 広汎な企業の株を持っており,向こう5年間に少なくとも $250 億をこの (世界最大の非公開株投資会社の1つになると思われる) 基金に投資する予定である。
     "我々は この基金を仕上げているところである。" … と Son は言った。
     SoftBank は次年度の予想を発表せず,不確定要因が余りにも多いと言った。

  58. SoftBank’s Fantastical Future Still Rooted in the Now
    ソフトバンクの空想的な未来は,今に根っこを持つ。
    Wall Street Journal,2017/02/08, 09:02 am ET
    By Jacky Wong
    Masayoshi Son は何世紀もの未来を語りたがる。だが SoftBank は,現在 対応すべき複数の問題を抱えている。
    2月8日の決算報告会議で話す SoftBank CEO Masayoshi Son.
    Rodrigo Reyes Marin | Zuma Press)
     SoftBank の創立者 Masayoshi Son は 決算のブリーフィングで,向こう 300 年間の会社の準備について話し,"シンギュラリティ", "モノのインターネット", ”スーパーインテリジェンス" のような未来論の専門用語を使った。だが短期では,それよりも日常的な問題が 日本のコングロマリットに影響を及ぼすだろう。
     先ずは,Donald Trump のアメリカにおける規制緩和への態度である。SoftBank が 83% の権益を握る アメリカのキャリア Sprint の方向転換は,この四半期のSoftBank の伸びの半分に寄与した。
     SoftBank の営業利益は 前年から +71% 増加したと水曜日に発表した ── これは市場の予想を僅かに超えた。ライバルの T-Mobile と合併させる自分の計画が 2014 年に当局により阻止されたときに,苦戦するキャリアを買収したことを 一度は後悔した … と プレゼンテーションのあいだ 語った Mr. Son にとって,これはうれしい展開である。
     T-Mobile との合併の望みは,日本 最大の富豪が 12月に Trump 大統領に面会した後で再点火された。Mr. Son は "あらゆるオプションにオープン" であると述べ,Trump 大統領の下での規制緩和の見通しに触れた。合併は,Verizon,AT&T との競争を助けることになろう。あるいは,負債まみれのSoftBank のために現金を稼ぐことがあるかもしれない。
     SoftBank のゲームを変える別のイニシアティブ ── 例の $1,000 億 SoftBank Vision Fund ── も間もなく実現する。Mr. Son はこの基金について 詳細は ほとんど述べず,今は 基金の立ち上げが近いので "沈黙期間" であると言った。アップル,クアルコム,オラクル創立者 Larry Ellison などが,これに投資する。SoftBank は,この基金に $250 億を投資すると言った。運用手数料が 1% だとしても,$7.50 億の年間収入が見込める ── ありがたい景気づけである。何人の投資家が この事業に金を出すか,基金の構成がどうなるか … は同社にとって重大な意味合いを持つだろう。
     Mr. Son は,情報革命に投資するという自分の目的は,すべての人を幸せにすることであると言う。Sprint および 投資基金の短期的進歩が,投資家を先ず幸せにすることになろう。

  59. SoftBank's Son says Trump's promised deregulation will help his business
    ソフトバンクの Son が,トランプの規制緩和の約束が自分の事業を助けると言う。
    Reuters - Nikkei Asian Review,2017/02/08, 03:57 JST (東京)
    Donald Trump 大統領の アメリカ経済を規制緩和するとの約束は,SoftBank Group Corp にとってプラスであろう … と 日本の通信会社の大富豪創立者が言った。
     "トランプ大統領は 様々の規制を緩和すると約束したし,事業がそれによりやりやすくなるはずだ。" … と Son は 12月31日に終わる四半期の決算を発表後に東京のプレス・ブリーフィングで述べた。
     Trump が約束したどんな規制緩和が アメリカの通信企業 Sprint Corp を支配する同社の利益になるかまでは言わなかった。

  60. SoftBank Profit Soars in Third Quarter
    ソフトバンクの利益は第3四半期に急増する
    Wall Street Journal,2017/02/08, 02:02 am ET (東京) 05:02 pm JST
    By Alexander Martin
    日本の通信巨人は,アメリカの無線キャリア Sprint Corp の赤字の減少のお蔭を被った。
    SoftBank の人型ロボットが Pepper World 2017 でスピーチをする。
    2017年2月7日,東京。(©Zuma Press)
    SoftBank Group Corp は 水曜日,Sprint での方向転換が確固たるものとなる中,F3Q の営業利益が 71% ジャンプしたことを報告した。
     東京に拠点を置く企業は,10~12 月期の営業利益として 前年同期の \1,720 億に対し,\2,950 億を計上した。純利益は 前年の \22.9 億に対し \912 億であった。
     日本の通信&インターネット巨人は, 1年前の \2.38 兆よりわずかに少ない売り上げ \2.30 兆を計上した。
     この決算発表は,Sprint の方向転換の努力が 実を結びつつあるように見える中でなされた。SoftBank が 2013 年に $220 億で買収した アメリカのモバイル・キャリアは,F3Q に赤字幅を縮め,顧客基盤を伸ばした。
     F3Q は,英国の儲かるチップ・メーカー ARM Holdings PLC の $320 億 買収がフルに反映する最初の四半期でもあった。SoftBank は ARM を買収後9月に連結した。SoftBank によると,4~10 月期 [12月まで?] の ARM の売り上げは \1,381 億で,前年比 +8% 増加した。
     SoftBank の株価は,創立者 兼 CEO Masayoshi Son が昨年12月に Donald Trump 次期大統領に面会して, アメリカに $500 億の投資と 50,000 の新規雇用を約束してから急騰した。SoftBank は,衛星インターネットのスタートアップ企業 OneWeb に投資して 3,000 の雇用を創出し,Sprint の雇用を海外から 5,000 アメリカに戻すと言った。
     この面会は,新政権下で Mr. Son が Sprint と T-Mobile を合併する計画を復活させる希望を呼んだ。彼は 以前,反トラスト規制当局の反対のせいで諦めた。
     Mr. Son は,この合併を再度追求する関心があるかどうかを答えなかったが,"すべてのオプションにオープン" であると答えた。
     SoftBank は また,計画中の $1,000 億テック投資基金を今月中に完了するものと見られている。Vision Fund は,現ナマに餓えるテック企業から大いに期待されているテーマであり,多くの企業は 上場を引き延ばすために懐の深い投資家を頼りにする。
     何百ものテック企業に投資してきた SoftBank は,昨年秋に $1,000 億の基金を運用し,自らは $250 億を拠出すると言った。サウジのソブリン基金が $450 億をここへ投資,残りは アップル, クアルコム, 富士康, ならびに オラクル議長 Larry Ellison のファミリー・オフィス から来る。
     Mr. Son は,さまざまの取り引きが行列待ちをしており,それらがもしも実現すれば,さらに多くの雇用をアメリカに生むだろうと言った。

  61. SoftBank Expected to Book Surging Profit Growth on ARM Purchase, Sprint Turnaround
    ソフトバンクは,ARM の買収と Sprint の方向転換により利益が急増の見込みである。
      TheStreet,2017/02/06, 07:02 am ET
      By Mariko Iwasaki
    SoftBank は,水曜日に利益の急増を報告するに違いない。
    日本の 通信からインターネットまでのグループは,新たに買収したチップ部門 ならびに アメリカの無線部門の方向転換からの押上げを謳歌する。
     東京に拠点を置く SoftBank は,F3Q の決算を日本市場が2月8日に引けたあと発表する予定である。FactSet がまとめた 18 人のアナリストのコンセンサスは,12 月に終わる3ヵ月の純利益が \22.9 億から \1,322 億に急増すると予想する。ただし,売り上げは \2.39 兆から \2.31 兆に落ちる。営業利益は \1,896 億から \2,717 億にジャンプする見込みである。
     この四半期のハイライトは,新たに買収した 英国に拠点を置くチップ設計会社 ARM Holdings から SoftBank がどれだけの寄与を受けるかにある。昨年9月5日に上場を停止して以来,CEO Masayoshi Son が "IoT の波に乗ることを目指す" と言った £24.3 億の買収をフルに反映するのは, 今回の四半期が初めてである。 ARM の高度な技術は,世界中のスマートフォンの 95%, ならびに ネットワーク・インフラ,自動車,家電製品でも採用されている。
     SoftBank は,さらに アメリカの無線キャリアからの寄与も謳歌するに違いない。カンザス州オーバーランド・パークに拠点を置く子会社は,2013 年に SoftBank に買収されて以来,程度の違いはあっても 赤字のままであったが,先週の決算発表では,営業利益が1年前より黒字に転じたと発表した。純損失は ほぼ半分に縮まった。
     Son は 昨年 12 月に Donald Trump アメリカ大統領を訪問し,アメリカ企業に $500 億を投資,50,000 の新規雇用を創出すると約束した。この訪問は,Trump が 11 月に大統領選挙で勝利した僅か数週間後に行なわれ,(T-Mobile を合併しようとする Sprint の努力がオバマ政権の抵抗により邪魔された) アメリカに生まれた新政権に対するご機嫌取りの動きと一般に認識された。
     SoftBank の債務には,注目が依然として集まるだろう。ここ数年の活発な投資により 有利子負債 / EBITDA 比は,昨年9月の時点で 4.0 倍である。2006 年の Vodafone 日本部門買収後の 6.2 倍よりは下がっているものの,2016 年3月の 3.8 倍より上がった。
     債務を減らす努力の一環として,SoftBank は 昨年 10 月,サウジ・アラビアの公共投資基金と提携して $1,000 億のテック基金を発表した。これは SoftBank 内の債務を抑制する狙いがある。Son は,SoftBank をテック・セクターの バークシャー・ハザウェイにしたいと言っている。
     SoftBank は,Yahoo Japan, ライドシェアの 滴滴出行, Grab, Ola, ならびに 電子商取引のアリババ, Oyo,さらに人工知能企業 CloudMinds にも投資している。
    素朴な疑問:3.3 兆円を投じて ARM を買収したんだから,売り上げは増えるのが当然と思うが,なぜ 減るんだろ?
    下の WSJ 記事は ARM の最後 (2016/6) の決算報道である。
     初めて見る人は こんなに売り上げが少ない企業に 3.3 兆円も投じたのかと驚くかもしれない。
     さらに,その緑色のグラフを見れば,ほとんど「頭打ち」であることにびっくりするかもしれない。
     記事からわかるように 2016/6 月期の3ヵ月間の売り上げは 前年比 (たったの) +9% 増の $3.9 億であった。だから この程度を加えてもソフトバンクの売り上げには ほとんど響かないことは 理解できる (理解してくださいね(笑))。けれども,売り上げが減るというのは,やはり株主の気持ちとしては割り切れないだろう。どういう説明があるんだろうか?
      『ARM 決算は増益であるが,予想には届かない』 (Wall Street Journal,2016/07/27)
    ──────
    結局,予想通りに売り上げは僅かに減りました。
    その原因は 為替らしい。スプリントの売り上げが 円建てでは減るので,それが全体の売り上げを減らしたと言う。
     はい。わかりました。
     しかし … ですね。ということは,国内の売り上げでもそれをカバーできなかったということです。
     決算短信を仔細に読むと,国内の通信事業はかなりの頭打ちです。これは,アメリカにも共通している。
     要するに,通信会社は 世界的に儲からなくなっているのである。だから 社長は 必死に投資に走る。
     これは非常によく分かりました。あれだけ 投資に熱を入れて (今回のは長かった!) 話すのは,その危機感の表れである。
     ここまでは,良く分かるのだが … だとすれば,Sprint がどうこうは筋違いであろう。
     自分でも通信業は世界的に峠を越したと分かっているのなら,スタンドプレイで Sprint にこだわるのは意味が無い。Sprint が稼ぎ手になどなるはずが無い (2強でさえ苦しんで多角化をしようとしている) … ことは承知の上で話しているのである。。
     考えられるのは,何とか Sprint をどこかに片づけることである。そのためには,お化粧をする必要がある。 ここ1年ほど "ネットワーク最高責任者" を急に始めたのは,そのためであろう。なるべく早く放り出したい,というのが本音と思われる (そうでなければ,もっと早くから CNO の仕事をしていたはずである)。これがうまく行けば,株主も大喜びだろう。
    ──────
    今日は 日経の 証券部 竹内弘文さんが 珍しく厳し目の記事を書いている。そのせいか,株価が思わしくない。
    確かに,ソフトバンクのドル箱は国内の携帯電話事業である。
     それは正しいと思うが,当サイトの独特の見立ては,阿里雲が昨年暮れに始めた日本営業が重要であると考える。
     阿里雲営業開始に伴うセキュリティ懸念から (とくに) 企業顧客の解約がどの程度発生しているかが重要である。まだ営業開始から間もないが,これは大きな爆弾となる可能性を秘めている。
     なお,阿里雲のセキュリティ懸念を日経は当然理解しているはずだが,現実化していない以上 メディアとして記事に書けるはずが無い。
    ──────
    日経の記事を読む前に あれこれ書いたんだけど …
     同社の国内移動通信サービスの主要回線契約者数は 2016年12月末時点で 3,223万件。同年9月末時点に比べ,7万1000件(0.2%)減った。減少したのは 2015年4~6月に同データを開示して以降 初めてだ。
     これ,全く気がつきませんでした。日経は MVNO に流れてる … という説だけど。
     上の原因もあり得るよ。
     関係ないけど,Sprint も 9月期から12月期で6万7800 件減りました。こちらは,日本でもアメリカでも誰も指摘しない (決算書を見れば明らかなのに)。親子とも全く同じ期間にほゞ同数減りました。

  62. SoftBank Earnings: What to Watch
    ソフトバンクの業績:何に注目するか
    Wall Street Journal,2017/02/05, 10:36 pm ET
    By Alexander Martin
    投資家は Vision Fund についての手掛かりに関心を寄せる
    Donald Trump 大統領と SoftBank の CEO Masayoshi Son は,
    昨年ニューヨークで面談した。ワシントンの新しい規制環境を
    Mr. Son が どのように見ているかに投資家は関心を寄せる。(©Reuters)
     通信とインターネットのコングロマリット SoftBank Group Corp は,水曜日に日本市場の引け後に第3四半期の業績を発表する予定である。
     業績予想:
     データ提供業者 Quick がまとめたコンセンサス予想によれば,SoftBank は 営業利益 \2,610 億を F3Q に挙げる見込みである (前年は \1,890 億)。同社は 業績予想を開示しない。
     売り上げ予想:
     売り上げは,1年前の \2.38 兆に対し,\2.34 兆と予想されている。
     注目点
     Vision Fund
     SoftBank は計画中の $1,000 億テック投資基金を今月中に完了する予定であり,投資家はこの投資対象についてヒントを求めている。計画中の基金は Vision Fund と呼ばれ,現ナマに餓えたテック企業が大いに期待する話題となっている。先週,Wall Street Journal は,SoftBank が $10 億超の投資を 共有オフィス空間企業 WeWork Cos に検討中であるとお伝えした。これが この基金の最初の取り引きになるのかもしれない。昨年,SoftBank は 衛星インターネットのスタートアップ企業 OneWeb Ltd に $10 億を投資すると発表した。事情に詳しい複数の人によれば,この投資は Vision Fund に移されるものと見られる。
     何百ものテック企業に投資してきた SoftBank は,昨年秋に $1,000 億の基金を運用し,自らは $250 億を拠出すると言った。サウジのソブリン基金が $450 億をここへ投資,残りは アップル, クアルコム, 富士康, ならびに オラクル議長 Larry Ellison のファミリー・オフィス から来る。
     ARM:
     F3Q は,昨年夏に $320 億で買収した英国チップ・メーカー ARM Holdings PLC をフルに反映する決算期である。SoftBank は,世界のスマートフォンの 95% を牛耳る 儲かる会社 ARM を9月に連結した。投資家は,ARM が SoftBank の全体業績にどのようなインパクトを与えるかについて 明瞭な描像を得るだろうし,SoftBank CEO Masayoshi Son がチップ設計会社をどう考えているかを聴けるだろう。
     Sprint:
     Sprint Corp での方向転換の努力は,根づき始めたらしい。SoftBank が 2013 年に $220 億で買収したアメリカのモバイル・キャリアは F3Q に前年比で赤字幅を縮め,顧客基盤を増やし続けた。Mr. Son と Donald Trump の 12 月のサプライズ会談は,Mr. Son が Sprint / T-Mobile の (反トラスト規制当局の反対のせいで諦めざるを得なかった) 合併計画を復活するのではないかとの期待を呼んだ。トランプ政権とその規制環境について Mr. Son が何を言うかと投資家は期待するだろう。

  63. ソフトバンクが 2016/09/16 に EDINET へ提出した変更報告書
    【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役社長 孫正義
    【住所又は本店所在地】東京都港区東新橋1丁目9番1号
    【報告義務発生日】平成28年9月12日
    【提出日】平成28年9月16日
    【提出者 および 共同保有者の総数】4名
    【提出形態】連名
    【変更報告書提出事由】 当該株券等に関する重要な契約の変更
    【発行者に関する事項】
     発行者の名称 ヤフー株式会社,証券コード 4689
      (6) 【当該株券等に関する担保契約等重要な契約】
     提出者,ヤフーインク および SBBM株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数2,071,926,400株のうち,合計1,386,314,000株について契約期限を2016年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    久しぶりに EDINET に行ったところ,9月16日づけで上のような報告書が出ていました。
     『 ・・・ 合意がある。 ・・・ 』のところは,つながってるんでしょうね。
     内容は,6月2日の届け出とほゞ同じであり,株数が 570,368,100 → 1,386,314,000 に増えたことです。
     要するに ソフトバンクが持っている Yahoo Japan 株 20.7 億株のうち 13.9 億株を「スレンダー」とかいう訳の分からない会社に2ヵ月半 貸し出した … ってことですね。Yahoo Japan の株価は \410 くらいだから時価 \5,680 億円になる。これで,短期資金 ~\3,600 億円を用意した。
     決算の締めを前に慌ただしいお化粧のご用意でございます。はい。
     期限が 11月末なので,あと2ヵ月半しかありません。その間の資金需要としては,どんなことが考えられるでしょうか? 分かりませんね。

  64. India tech: Reality call
    インドのテック:現実を直視する。
    Financial Times,2016/08/10
    By Simon Mundy (Financial Times ムンバイ特派員)
    資金調達熱は冷めた。しかし 12 億人市場の利用者集めの戦いは まだまだ続く。
    Deepinder Goyal は,昨年 企業家らしき人から資金調達を求める E-メールを受け取ったとき,一瞬 ゾッとした。
     "そのアイデアと言うのは,「Uber for water」 [配車の Uber ではなしに 配水のUber ??] でした。つまり 水を1ビン欲しい人がいれば,私のアプリに連絡してもらって私が 10 分以内に届けます … というものでした。" … と Goyal は言う。"水1ビンで,マージンは2ルピー (~\3) … 全然儲けになりません。その人は 850 万ドルの評価で 100 万ドルの種資金を探していました。我々インド人が生んだ IT とはこんなものです。"
     Mr. Goyal のインド・レストラン検索プラットフォーム Zomato は,昨年 外国投資家から $10 億の評価を受けて資金調達をした。過去3年にわたり急成長するインドのインターネット・セクターへの潤沢な投資ラッシュの最前線にいたお蔭である。
     中国 E-コマースで金鉱を掘り当てた 日本の SoftBank と ニューヨークに拠点を置く Tiger Global Management のような外国投資家は,今度は インドに目を向け,巨大な人口とインターネットの急上昇する普及率,それに強い経済成長に博打を打って,何十億ドルもの金を注ぎ込んだ。
     昨年までは,インドに "ユニコーン ($10 億ドル以上に評価される未上場企業)" が8つもあった。この数は,アメリカと中国に次ぐものであった。インドに押し寄せる資金の波は,世界でも最急成長を遂げるインド経済への信任投票の確かな表れであった。インドは ハイパーマーケットのような 20 世紀の概念を飛び越えて技術を利用する能力を持ち,高い生活水準を目指す国であった。
     "インドには,近代的な小売りが全く無かった。そのため,蛙跳びが起こることは 十分理解できる。" … とインドのベンチャー資本グループ Helion Ventuer Partners の共同創立者 Sanjee Agarwal が語る。"インドの消費がディジタル化する初日なのです。"
     だが,投資家も企業も,今では 明白な冷却感を口にする。そして,資金調達ラッシュが 過大な評価を広げたと不安がる。いくつかの企業では 大規模な赤字幅,外国のライバルとの厳しい競争,テック投資の減損償却の市場への波及効果が懸念される。潤沢な外国投資家を もはや頼りにできず,損失を限りなく償却できなくなった業界では,解雇や 雇用調整も行なわれている。
     "あのときに ── 資金調達を受けた時に ── もしも「お前は ほんとに $10 億の値打ちがあるのか?」と訊かれたならば, 「その値打ちは絶対に無い」と答えたでしょう。" … と Mr. Goyal は言う。"けれども,とにもかくにも 評価は誰もが しがみつくものです。あれから市場は変わりました。突然,誰もが全ての評価を疑うようになりました。"
     中国のように
     影響力の大きいベンチャー投資家 メアリー・ミーカーが 6月にインターネットのトレンドの年次報告を発表したとき,2015 年のインターネット利用の成長予想率を2つ示した:そのうちの片方は,インドを除外した。なぜなら 余りにインドの成長が急なので,世界全体の趨勢をゆがめてしまうからである。
     「インド・インターネット & モバイル協会」のデータを引用した Ms. ミーカー によれば,インドのインターネット利用者は,昨年 10 月に 3.17 億人に達した;前年比 +49% の伸びである。この伸びは,スマートフォンによるところが大きい。今年の第1四半期のスマートフォン販売は,世界的に停滞気味であるが,インドは +12% 増えている。
     スマートフォンのブームは,テック業界のリーダーたちの注目を引いた。たとえば,アップルの最高経営責任者 Tim Cook は,今年5月に初めてインドを訪問したし,インドの E-コマースの成長見通しについても アナリストの間で興奮を呼んでいる。牛さんの最右翼は モルガンスタンレーであり, E-コマースの売り上げが 2020 年には,昨年の $160 億から $1,190 億に増加すると予想する。
     このような楽観論を支えるのは,騰訊控股,京東商城,そしてとりわけ昨年史上最大の IPO を行なったアリババのような 中国 E-コマース・グループの劇的な急伸である。
    インドの E-コマースと GDP の比率 (%)
     けれども,インド国内の投資家と企業家は,インドを中国と並行に考えるのは 極めて注意を要すると警告する。"これら全てのファンドが インドを単純に中国と同一視することに,私は非常に驚いた。" … と 一連のテック企業家で,インドのインターネット・グループの「hyperfunding (超資金調達)」に関する著書もある Kashyap Deorah が言う。
     インドの方が開発レベルが低い ── 国際通貨基金によれば,1人当たりの GDP は,昨年 インドが $1,617,中国が $7,990 である ── ことは,1つの明らかな違いである。それと同様に重要なのは,Mr. Deorah によれば,アメリカのインターネット企業が中国で [中国政府の規制により] なかなか売り込めずにいるという事実である。
     グーグル, フェイスブック, ツイッターは,どれも ほとんどの中国インターネット利用者が使えないが,インドでは 威勢を張っており,地元のプレイヤーを圧迫している。インドのスタートアップ企業が アメリカのライバルを仮に出し抜いたとしても,すぐさま やられてしまうことは,これまでにも見てきた。
     アメリカのライバル
    アマゾン創立者 Jeff Bezos が 同社のインド部門
    副総裁 Amit Agarwal に $20 億の小切手を渡す
    AFP)
    2014 年9月,アマゾン創立者 Jeff Bezos は,バンガロールで 派手にペンキを塗り立てたトラックに乗り,ホワイト・インディアンの結婚衣装に身を包み,大型の $20 億小切手を ── インドへの投資計画の象徴として ── インド営業を委ねた Amit Agarwal に渡した。
    ホワイトインディアンとは,先住民と共に暮らすうちに彼らの生活に溶け込んでしまった白人が,白人社会に戻る機会があっても インディアン社会に残ることを選んだ人を指す。
     このパントマイム-スタイルの陽気なパフォーマンスは,Mr. Bezos の かつての従業員であり今では アマゾンと接近戦を行なう羽目になった Flipkart の共同設立者 Sachin Bansal と Binny Bansal では,失われてしまった。
     この2人の Bansal は ── 姓が同じであるが 親戚関係には無い ── は,アマゾンのバンガロール・キャンパスで働いている時に知り合い,当時は バック・オフィス [=事務・経理・人事など] の作業をしていた。2007 年,アマゾンがインドでの販売を立ち上げそうにないのを見るや,この2人はアマゾンの教則本を実地に移すことを決意した。
     アマゾンと同様に,Flipkart は 投資家の注目を徐々に集め始めると,とにかく先ず本の販売からサービスを始め,次いで 他の商品に枝分かれする作戦を取った。2009 年,評価額 $0.04 億で資金調達を行なった;2010 年,評価額 $0.50 億;2012 年 評価額 $10 億;そして昨年7月には $150 億 [sic] の評価で インドで最も評価の高いインターネット企業となった。"シェア,資金調達,そしてブランドの点で,我々は 非常な短時間のうちに会社をビルドアップすることができた。" … と 今年 Sachin Bansal は Financial Times に語った。
     けれども,赤字の増大も凄まじかった。Flipkart が 本社を置くシンガポールの証券取引所に提出した最新のファイリングによれば,2015 年3月に終わった会計年の売り上げが 1,020 億ルピー ($15 億),税引き前の赤字が −298 億ルピー であり,それぞれ1年前の 294 億ルピー,−103 億ルピーから増大した。
     しかも,Flipkart に対する投資家の熱い情熱は,アマゾンの参入後も続いていたのであるが,最近になって Amazon India の急成長を見ては,それも薄らぐ兆候を見せている。Amazon India には,6月に Mr. Bezos から $30 億追加の約束があった。
     モルガンスタンレーが運用する或るファンドは,Flipkart の資産を今年2回 マークダウン [減損償却?] し,評価額 [$150 億から?] を $94 億に大幅に切り下げた。他の株主も同様の措置を取った。
    インドの未上場テック企業が調達した資金 (四半期ごと,10 億ドル)
     資金調達のトレンドは,投資家の心理に幅広い変化があったことを示す。今年6月までの9ヵ月に,インドのテック企業は $31 億を調達したが,リサーチ会社 Tracxn によれば,その前の9ヵ月間の $67 億から減少した。
     投資家と経営者は,この減速の引き金を引いたのは,1つには 昨年8月のアメリカと中国でのテック銘柄の急落であると言う。 そして 多くの人が,インドのうまく行っているテック企業は 依然として資本を調達できるだろう;干上がるなどということは無かろうと言う。E-コマース・プラットフォーム ShopClues は,今年1月,シンガポールのソブリン・ファンド GIC が率いる資金調達ラウンドにより,インドで9番目のユニコーンになった。
     しかし,ShopClues の共同創立者 Sandeep Aggarwal さえもが 冷え冷えした資金調達環境を認識している。"投資家は,チャンスを逃がすのをとても恐がる。そのため 神頼みの投資をするのです。" … と彼は言う。 "そして,市場が落ち着けば,現実が彼らの顔面を直撃します。"
     元グーグル幹部で,2014 年に SoftBank にリクルートされた後 インドのテック・セクタの 最も著名な投資家の1人となった Nikesh Arora にとって,この打撃は とくに強烈であった。SoftBank の総裁に就任してから僅か数週間後,Mr. Arora は Flipkart のライバル Snapdeal と 配車サービス Uber の競争相手 Ola に $8 億を超える投資を率いた。その他にも インドのテック企業に大規模な資本注入を行なった。
     だが,Snapdeal が売り上げで Flipkart と Amazon にどんどん水を開けられると,株主は いたたまれなくなった。Ola は Uber からの猛烈な攻撃から身を守るために,料金引き下げに追い込まれた。Uber は先週 中国営業部門を滴滴出行に売却したことにより,インドへの集中をリダブル [なお一層強める] できる態勢にある。
     Mr. Arora は,匿名の投資家により不正行為を告発された 内部調査で潔白の身になった直後,今年6月に SoftBank を辞職した。これらの不正行為は,インドへの投資に関連したものである。Mr. Arora と SoftBank は,彼の辞職がこれらの告発と関係していることを否定するが,SoftBank での彼の短いキャリアを インドの投資家は 過去2年にわたる彼のローラーコースター遊びの締めとして よい教訓だろうと受け止めている。
     最近数ヵ月 投資市場が静かになったことを 企業家の中には救いと見る向きもある。
     "我々は,あの [投資過多の] 局面が終わったことを喜んでいる,長期的に見れば,Snapdeal にとってもインドにとっても良いことだ。" … と Snapdeal の共同創立者 Rohit Bansal は言う。"投資家から金を集めるだけで存在し得る会社なんてあり得ないのだから。"
     世界の戦場
     中国は 世界にその地位を確立したにも拘わらず,中国の先導的 E-コマース企業の外国への展開は遅い。インド進出について言えば,彼らの展開は ポートフォリオ投資のために制約されているのである。滴滴出行は Ola の株式を取得し,アリババは Snapdeal と 決済+ E-コマース事業の PayTM に投資した。
     ところが アリババは今年3月,インドで営業を早くも今年開始することを計画していると発表した。結局,インドは アメリカ,中国,地元企業の3者が覇権を求めて全面戦争する 最初の大規模市場になりそうである … と IT サービス・グループ Infosys の共同創立者 Nandan Nilekani が言う。いまは ベンチャー資本投資家をしている Mr. Nilekaniは,資源の豊かな外国投資家との係わりがなるべく少なく,しかもニッチな市場を押さえている企業が最も成功しやすいと言う。
     その候補の中には,初めてオンラインに触れる何億ものインド人を考えると,低価格のスマートフォンがある。そうした会社としては,英語ではなく地元の言葉 [ヒンズー語] でコンテンツを提供するニュース・アグリゲータ DailyHunt が浮かぶ。
     製品を見せて欲しいと言われて,DailyHunt の最高経営責任者 Virendra Gupta は,中国製の流行遅れの中級品のスマートフォンに手を延ばす;2G のデータ接続が ダウンロードに手間取るのを辛抱強く待つ。Mr. Gupta にとっては,こんな不便は,ターゲットの客層を理解する努力の一環に過ぎない。"次なる4億人" のインドのウェブ利用者を視野に,彼は,$10 億ドルの評価に値する企業がいくつあるか? … なんていう質問には,我慢がならない。
     "何か成功しそうなモデルがどこかにあると,人は 狂ったように殺到し,その周りを何倍にも増幅する。" … と彼は言う。"企業に投資する人は良く心得ておく必要がある:成長はあるだろう,だが インドの場合には もう少し時間が掛かる。金をぶっこむだけで問題は解決しない。"
    しかし,ShopClues の共同創立者 Sandeep Aggarwal さえもが 冷え冷えした資金調達環境を認識している。"投資家は,チャンスを逃がすのをとても恐がる。そのため 神頼みの投資をするのです。" … と彼は言う。 "そして,市場が落ち着けば,現実が彼らの顔面を直撃します。"
      ・・・ 心に残る言葉!
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     "我々は,あの [投資過多の] 局面が終わったことを喜んでいる,長期的に見れば,Snapdeal にとってもインドにとっても良いことだ。" … と Snapdeal の共同創立者 Rohit Bansal は言う。"投資家から金を集めるだけで存在し得る会社なんてあり得ないのだから。"
      ・・・ 例の法務会社からの書簡によれば,Snapdeal の CEO は,「金は十分にある。もう要らない」と言っているのに Arora さんは Snapdeal に投資した。… というのは正しかったことが分かる。
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    この記事を読むと,どうも せっかちな日本人はインド人に馬鹿にされるような気がする。
     住んでいる国土の広さが違い, 文化がまるで違う。相手の文化を理解しなければ, 投資は成功しない。

  65. SoftBank: Waiting for the next ‘big idea’
    ソフトバンク:次なる "ビッグ・アイデア" を待機中。
    Financial Times,2016/07/13, 11:02 pm
    Leo Lewis, Kana Inagaki & Simon Mundy
    投資を回収して 後継者を失った Masayoshi Son は ── 日本のグループは いまや いずこへ?
    SoftBank の創立者 兼 議長 Masayoshi Son は,ビッグ・アイデアを持っている。ビッグで クレージーなアイデアだと彼は言う。今や,同社の 非日本人の前総裁による拘束の手から解放されて,$400 億の軍資金をバックに,そして 自ら公言した熱情に後押しされて,彼は それらのビッグ・アイデアを意のままに具体化できる。
     同社の株主 および 63,300 人のグループ従業員にとって 思いもかけぬ障害は,これらのビッグ・アイデアが何なのかを誰1人として知らず,日本の最も冒険好きな会社が ビッグ・アイデアを実行できる体制にあるかどうかも知らないことである。
     株主が本当に知りたいのは,重い債務を負ったグループが 近年 失った栄光を Mr. Son の計画が回復できるかどうかである。彼らは,過去に Mr. Son が みごとにやり遂げたような ── たとえば Vodafone の赤字の日本部門を $150 億で買収したときのような ── 大転換買収を期待する。
     このような期待は,SoftBank が 単なる 時価総額 $680 億の日本第3位の通信会社以上のものであるという考えに基づく:SoftBank は,リスクを依然として愛する日本株式会社の残り火の1つなのである。いま大きな取り引きをすれば,SoftBank は,グーグルのような世界的テック企業と競争できる立場に身を置くこともできよう。だが,一方で 批評家は 警告する:東芝からシャープまで 数多くの日本企業を グローバルとは無縁なものにしたのと 同じ罠に このグループを 嵌めるのではないかと。
    アナリストは Masayoshi Son の次の手を読んで,
    彼がロボティクスと "シンギュラリティ" に取りつかれていると見る。
     SoftBank は,Mr. Son がその生涯を "捧げる" つもりの分野である 人工知能とロボティクスに意味のある賭けを行なっており,モノのインターネットの時代に栄える好位置につけている … とアナリストらは言う。ほかのオブザーバーらは,モバイル・コンテンツに動きを進め,アメリカで 2013 年に買収した第4位の通信事業会社 Sprint を赤字から脱却させる他に,もう1つ取り引きをするのではないかと山を張る。
     "我々は Mr. Son が何を考えているかを,彼の言い回しを観察しながら 絶えず推量する。" … と 大和証券の大橋利康 金融市場調査部長が言う。"しかし,現在 大型買収は [金融市場にとって] 途方もなくマイナスである。"
     大ぼら吹きは,Mr. Son の常套手段である。"私は いつも ビッグ・アイデアを持っている。2年から3年ごとに生まれる。" … と 彼は Financial Times に語る。だが,彼の最後の大ぼらは ── Nikesh Arora をグーグルからリクルートして 会社の総裁 兼 後継者にするというのは ── 失敗した。Mr. Arora の先月の突然の辞任は, 彼が この会社を「日本のソフトバンク」から世界のパワーハウス [=発電所] に生まれ変わらせるという任務を始めた まさにその時に起こった。
     "Mr. Son の次回の投資は,Mr. Arora が離任した理由の答を与えるでしょう。" … と 東京の BNP パリバ SA の投資調査本部長 中空麻奈が言う。"たぶん,この2人の考え方の違いがはっきりするでしょう。"
     退任した総裁は,若い企業家を見つけて起業を約束することにより,ウォーレン・バフェットのバークシャ・ハザウェイ投資法人のアジア版の創生に専心していた … と彼は [彼女でしょ!] 言う。Mr. Son は いまだに このビジョンを支持しているが,AI とスマート・マシンの破壊的時代には,SoftBank の転換に関する彼の青写真は さらに大きなものかもしれない。
     そうは言っても,創立者の野心は,SoftBank が大量の資産を買う火力があるかどうかにより縮小させられる。このグループは $1,150 億の債務を抱えている。これには,Sprint を AT&T,Verizon に対抗する世界のライバルと位置付けるために払った $220 億が含まれる。
     昨年,Mr. Son は 苦戦中のアメリカ部門の売却を試みたが,買い手が見つからなかった。それ以後,大幅の経費削減,ネットワーク改善,高価値の顧客の増加 があったにも拘わらず,Sprint の回復は 相変わらず遅い。3月までの3ヵ月で,営業利益は この9年で初めて黒転したが,Sprint の純損失は 1年前の −$2.24 億から −$5.54 億に拡大した。
     "SoftBank のグループ全体としての最大の優先事項は,Sprint の利益を改善し, 競争力を取り戻し,貸借対照表をお掃除することである。" … と 東京のモルガン・スタンレーMUFG証券のアナリスト津坂徹郎が言う。 "SoftBank にとって,今は大型投資をする時期ではない。"
     ブレーキのパワー
     Mr. Arora のリクルートは,Mr. Son の帝国が成長して彼ひとりでは操縦しきれないほど巨大化する中で,帝国の発展の自然な過程と見なされた。1981 年にちっぽけなソフトウェア配給業者として従業員2名で創立された SoftBank は,今や 複数の通信会社,中国とインドの E-コマース市場,さらにはハリウッドの大株主である。
     それでも,年間営業利益 $97 億の 2/3 以上を 依然 国内通信部門から挙げており,これが Mr. Son の投資資金のための 安定したキャッシュフローを提供している。
     初期の頃の取り引きは ── 中国の E-コマース巨人アリババ,インターネット・ポータル Yahoo Japan, および フィンランドのゲーム開発会社 Supercell のような場合には ── Mr. Son の第六感 (gut feeling) と縁故関係によりなされていた。それらの勘は,結果として当たった。2000 年には アリババ株に $0.20 億を支払った; 今年これまでにその株の一部を売ったとき,それが $650 億相当にまでなっていた。
     大和証券の大橋利康 [前出] によれば,"これまでは,私が全ての取り引きを仕切り,自分一人でやってきた。しかし,ニケシュを取締役会に迎えて,私は アクセル役に回り,彼がブレーキ役となる。したがって,2人の協力関係は 非常にバランスの取れたものである。" … と Mr. Son は 2014 年にアナリストらに語った。
     この2人の取引形成の手法は,これ以上 違いようが無いほど相容れないものだった。Mr. Arora の参入から僅か 数週間後,インドの Snapdeal へ $6.27 億を投資することを2人が決めたとき,このコントラストが明るみに出た。
    "Mr. Arora がブレーキ役として いなければ,
     Son の投資のコントロールがどうなるのか心配だ"
     … アナリストが 前ソフトバンク総裁 兼 COO を語る。
     "『ニケシュ,今すぐ投資に行こう』と私は言った。ニケシュの最初の反応は, 『ドイツ銀行 または 他の銀行に徹底審査してもらう必要があります。』そこで私は応じた, 『銀行なんて分かっちゃいない。だから 2人の直感に任せよう』" … と Mr. Son は 昨年 このエピソードを繰り返し言った。
     Mr. Arora の配下の或る1人によれば,SoftBank に赴任した Mr. Arora は,ボスから主導権を奪うのではなく,このグループの投資部門がこれまでに扱った ほとんどすべての国際取引を吟味し始めた。その中には,Mr. Son がこれまでに許可を与えたものも含まれていた。Mr. Arora の法科学的 (forensic) 手法は,Mr. Son のみに許可を求めることに慣れている一部の人の怒りを買った。
     辞任後に Mr. Arora は E-メールで言った:"私は SoftBank 2.0 への変革に2年を要した。この変革は,個人を越えて長続きする クリーンな構造,良い統治,それに 何がしかの light processes [軽い? 明るい?プロセス] を意味する。"  そして,彼の努力は,日本の SoftBank チームと Mr. Son により "歓迎された (well received)" … と続けた。
     Mr. Arora は SoftBank の顧問として残るとは言え,彼の総裁退任は,投資家とアナリストの間に,再び 自由奔放な投資の時代の引き金を引くのではないかとの懸念を呼んだ。
     "Mr. Arora がブレーキ役として いなければ,Mr. Son の投資のコントロールがどうなるのか心配だ" … と大橋利康が言う。
      株主グループの不満
     Mr. Arora の辞任は,18ヵ月に及ぶインド生まれの幹部とそのボスの間の大っぴらな相思相愛を終わらせたが,同時に,匿名の株主からの書簡が発覚したことを受けたものである。この書簡は,Mr. Arora が工作した [SoftBank の] 国際取引と SoftBank 外での役割に利益相反の可能性ありと訴えていた。
    ソフトバンクの大株主 (%)
    * = 孫正義が支配。出典:トムソンロイターによる。
     書簡は,Mr. Arora の報酬 ── この2年間で 250 億円 ($2.40 億),日本の幹部の最高給 ── にも疑問を投げかけ,調査を要求した。
     この訴えの会社による独立調査は,回答すべき理由を見出さなかった。しかし その後 アメリカ証券取引委員会 (SEC) が匿名の株主グループを代表する弁護士に接触して 更なる情報を要請したとのニュースが浮上した。
     Mr. Arora は株主書簡の訴えを これまで否定している。SEC の精査を知る複数の人によれば,SoftBank も Mr. Arora も SEC から接触を受けたことは無いと言う。
     Mr. Son は Mr. Arora に交代すると言質を与えていたにも拘わらず,交代が難しいと見るや,来年引退する用意ができていない … と言い出した。投資家らは,後継のタイミングより,2人の間の緊張が強まったことが事態を複雑にしたと思うと語る。
     この会社のかなりの株を所有する 或るファンド・マネージャは,SoftBank は,不和を生じる人物を除去したが, 同時に そうすることにより 粉砕された (splintered) と語る。Mr. Son は,誰の目にも分かるように 実権を掌握しているが,かつてはダイナミックで破壊的な力を持っていた このグループが, ますます 日本の他の会社 ── 政治的な官僚的な ── のようになり始めている … と続けた。
     あるベテラン従業員は,"この会社は 大企業症候群に罹っている。" … と言う。"Mr. Son は ものごとのやり方を変えたかったが 現状維持を望む従来の派閥と戦ってきた。"
     会社内部のこの緊張は,グループの将来のカギを握るかもしれない。
    最近は 中国の配車サービス滴滴出行に $45 億を投資した。
     Mr. Arora の辞職は,彼が この 18ヵ月の間 見てきた 40 件を超える取り引きの将来に疑問を投げかける。だが,東京に拠点を置くシンクタンク 「情報通信総合研究所」 の岸田重行 上席主任研究員は,経営陣のこの変更による短期の影響は 小さいだろうと言う。
     スタートアップ企業への投資 ── たとえば,インドの Snapdeal,中国最大の配車アプリ 滴滴出行,サンフランシスコに拠点を置くオンライン貸金業 SoFi ── の多くは,すでに完了している。
     最高経営責任者の配下の或る人によると,Mr. Son は,Mr. Arora を雇ったことを後悔しないことでは,絶対に譲らない。今年 Mr. Son の投資を現金化するよう説得したのは,Mr. Arora だった。その結果,アリババと Supercell の株 $186 億相当を売却した。この売り上げに加えて,SoftBank は $250 億を現金で持っている。
     付け焼き刃の入れ込みよう
     今回の資産売却は,移り気な (mercurial) 最高経営責任者による新たなギャンブルの目標が何であるかについて 当てっこゲーム (guessing game) の騒ぎを大きくした。売却による手取り金が 債務の返済に使われるという会社の主張を信じるアナリストは ほとんどおらず,Mr. Son が次に何をするかという根拠の無い憶測の引き金を引いた。
     何人ものアナリストが,ロボティクスと "シンギュラリティ" への Mr. Son の入れ込みようを指摘する ── 機械が人間よりスマートに [=賢く] なる時代の話である。SoftBank は 既に Pepper と呼ばれるコンパニオン・ロボットを販売しており,このロボットは 人の感情に応じて話しかけ,楽しませる。
     "次回の大型投資は 人工知能とロボティクスの分野かもしれない。" … と 岸田重行 [既出] は言う。"  人工知能は,あらゆる産業に浸透すると見込まれており,Mr. Son は それらの産業を支える基板プラットフォームをこしらえることを望んでいる。"
     だが,Mr. Son がビッグでクレージーなアイデアで 投資家を長いこと愚弄すればするほど,彼の胸中に何があるのかを早く知りたいと投資家は思うだろう。もしも そのアイデアが 実は 大してビッグでもクレージーでないことが分かれば,投資家の失望は それだけ大きいだろう。
     Mr. Son は 先月の株主総会で言った:"人類とスーパー知能が共存して,これまでより 豊かで幸福な暮らしを生み出す時がいつか来るだろう。私は,自分の生涯をそこに捧げたい。情報革命は,真の意味で 今始まったばかりであると私は思う。私の仕事は,まだ終わっていない。"
     スーパー・スマートな機械の到来は,Mr. Son が抱える別の問題を解くだろう:後継問題である。"我々の平均余命が 200 歳に達する時代がいずれは来るだろう。" … と Mr. Son は言う;引退の必要は無いという意味であろう。
      2000 年以降の SoftBank の主な買収
     (記載の無いものは 100%)
    2000 年 アリババ (中国) $0.20 億 (現在 28%)
    2012 年 福岡ドーム (野球場,日本) $11 億
    2012 年 eAccess (日本) $44 億
    2013 年 Sprint Nextel (アメリカ) $220 億 (77 %)
    2013 年 Brightstar (アメリカ) $11 億 (57 %*)
    2013 年 Supercell (フィンランド) $15 億 (51 %?)
    2014 年 Snapdeal (インド) $6.27 億 (非開示)
    2015 年 Coupang (韓国) $10 億 (非開示)
    2016 年 滴滴出行 (中国) $45 億 (18%)
    (*) その後の出資により Brightstar は 100% になった。
    (?) Supercell が "現在 0%" でないのは審査待ちのためか?
    以下に続く FT ムンバイ特派員氏の現地報告の方がメインなのか?
    だったら,上の記事を翻訳する必要は無いのだが ・・・ 。
    矛盾する内容は 無いのか? Simon さん! ブレーキ役をグーグルから雇ったの? 孫さんが ?? (笑)
    「"ダーツ遊び":Arora のインド戦略が審査に直面する」
     Nikesh Arora の SoftBank での短期間の在職は,2014, 2015 年にインドの若いインターネット企業に融資の波を推進するのに役立ち,このセクタの投資家と企業家によれば,そのうちのいくつかは,理屈で説明できる水準の評価を超えて水膨れした。
     この華やかさは,多くのスタートアップ企業に見られる 泡立つ評価への懸念と利益の上げ方への不透明さの中で,この数ヵ月でしぼんだ。このことが,前総裁兼最高執行責任者 (COO) への圧力を増した。
     2014 年10月,Mr. Arora の着任から何週間も経たないうちに,SoftBank は オンライン市場 Snapdeal に $6.27 億,タクシー配車会社 Ola Cabs に $2.10 億の投資を発表した。それから1ヵ月も経たないうちに,不動産ポータル Housing.com に $0.75 億を投資した。SoftBank は 過去1年に さらに大掛かりな投資をこれら3社すべてに行ない,その上さらに 食料雑貨の Grofers および ホテル予約サービス OYO Rooms にも投資した。
     ところがその後,Ola は かなり大きなシェアを Uber に奪われた。Snapdeal は (インド第2位であったのが) 3位に落ち,しかも Flipcart と アマゾンに大きく引き離されている。Housing com は,26 歳の最高経営責任者が投資家との論争の末,追放された。
     これらの投資は,株主から会社への1月の書簡で強調された。Mr. Arora の投資戦略を "ダーツ遊び" と形容する この書簡は Mr. Arora の内部調査を促すのに成功を納めた。書簡はまた,SoftBank の Snapdeal への初期投資の際に,Mr. Arora が Snapdeal の株を個人として取得していた問題も指摘した。そのため,SoftBank が追加で資本注入を昨年行った際に これを取り仕切る動機をMr. Arora に与え,Snapdeal に実際よりも高い評価を与えた … と書簡は言う。
     "Mr. Arora は,それまでインドで事業を行なった経験も無く,投資のプロとして仕事をしたことも無い。インドは初めての投資家だった。彼は,自分が理解していないマーケットに $10 億を投じる競争をした。" … とインド人の企業家で物書きの Kashyap Deorah が言う。"それが失敗しないことが あるだろうか?”
     ── Simon Mundy
    Simon Mundy,
    Financial Times. ムンバイ特派員.
     結局,今の社長は人を見る目がない。 ・・・ これが結論。分かりやす過ぎる!
     本来なら 直ちに辞任すべきなのであるが ・・・ 。「分かりやす過ぎる」御託を並べて,居座る(笑)
     たぶん あの日経産業新聞紙上座談会の出席者も分かり過ぎるくらい分かっているのでしょう。
     それにしても 7月28日の決算発表で,この件にまともな質問を喰らったときの答は,とうぜん用意しているでしょうが … 。どういう答になるのか? そういう質問は出ないように 手回しが ・・・ 。
    ──────
     たぶん あったんでしょうね?(笑) 日経が FT.com の記事を知らないはずがない!見事な連係プレイでした [パチパチ]
    ──────
    振り返ってみると,中空さんの発言
      "Mr. Son の次回の投資は,Mr. Arora が離任した理由の答を与えるでしょう。" … と 東京の BNP パリバ SA の投資調査本部長 中空麻奈が言う。"たぶん,この2人の考え方の違いがはっきりするでしょう。"
     これは実に興味深い。敏腕でその名も高い中空麻奈アナリストは,ARM についてどのような見解をお持ちなのか伺いたい。ARM 買収から Arora 離任の理由が どう分かるのでしょうか?
     なお,これに関する当サイトの見解は一貫している。
     アリババ売却,スーパーセル売却,ガンホー売却,ARM 買収は,すべて 孫さんが直接には関与しておらず,最後の最後の最後の段階で「俺が主役だよ」と 割り込んで 顔を見せただけであり,全ては 代表権を持つ Arora 副社長が Alok Sama などの "Arora チーム" により手配してまとめたものである。離任した理由は不明であるが,代表権を持たせてここまで勝手に動かれたことに 孫社長が「手柄を横取りされた」と腹を立てたからと考えるのが合理的である。実際に,あのまま 社長の座を Arora に渡せば,"Arora 社長は IoT まで考えて,ここまで一連の取り引きをまとめたのか! ソフトバンクの社長としてスバラシイ!" となり,結果として 孫 "元社長" の影は 薄くなってしまっただろう。だから「そうはさせないよ」と最後に乗り出す必要があったのだ。
     3.3 兆円の ARM の買収を2週間でまとめたなど 誰が信じるか(笑)。これ1つでウソがばれる。たとえば,デューディリに 関わったソフトバンク本社の担当者の名前は? 買収発表の広報に出てくる担当者名に 日本人は無く,Alok Sama なんだけど ・・・ 。
    ──────
     中空さんがおっしゃる意味での 孫さんの次の投資は まだ行なわれていない。
     と言うか,自分の投資は「趣味と勘」であるとご自身で 言っているから,そんなに頻繁にはできない。
     近年活発に行われていた「投資」は "Nikesh チーム" によるものである。Nikesh 就任以後は "SoftBank 独自の投資" と言えるようなものはほとんど無く,"Nikesh チームの投資" だけが存在していたのである。

  66. ソフトバンク,ブチ切れ内紛劇か … 報酬 200億円・後継者に疑惑噴出で米当局が調査!
    ビジネスジャーナル,2016/07/06, 06:00
      ソフトバンクで起きたアローラ氏と孫正義氏の内紛劇をまとめている。
      社長になりたいアローラ氏の要求に,孫氏があと 5~10年は やると宣言したこと。
      将来性が無いと「Yahoo!JAPAN」を切ろうとし,孫氏が激怒したなど。
     ソフトバンクグループ (G) で起きた内紛劇。孫正義社長と,後継者とされていたニケシュ・アローラ前副社長の間に何があったのだろうか? これについては,3つの説がある。
     (1) アローラ氏が「今年中に社長にしてほしい」と要求し,これに対して孫氏は当初「もう少し待って」と答えたが,後から「あと5~10年は やる」と宣言したため,アローラ氏が切れた … というものだ。
     (2) アローラ氏が「コストカッター」の面目を躍如し,不採算事業をバッサバッサと切り始めたが,その中には孫氏が存続を希望しているものが含まれており,2人の間に亀裂が走った … というものだ。最も揉めたのは, 「Yahoo!JAPAN」だと言われている。アローラ氏は「ヤフーは米国では全然ダメだ。日本だけのビジネスに将来性は無い」と主張し,Yahoo!JAPANを運営するヤフーの宮坂学社長のクビを切ろうとした。これに孫氏が激怒した … と言われている。
     6月20日に開催されたヤフーの株主総会をアローラ氏は欠席している。同氏はヤフーの会長に再任されたが, 1日で辞表を叩きつけた。
     (3) 次のような流れだ:アローラ氏は,数百億円単位でソフトバンク G 株を保有していると伝えられていた。 自分で買ったことになっているが,孫氏に持たされたという説もある。2015年6月にソフトバンク G 代表取締役副社長就任直後に「個人でソフトバンク G 株,600億円分を買い付ける」と発表,大きく報道された。
     しかし,株価は買った時の半値まで下落した。含み損が膨らみ,これ以上抱え切れない。アローラ氏は「売却させてくれ」と言い出した。副社長をしていては持ち株を売れないので,退任を希望し,退任発表と同時に,孫社長がアローラ氏の持ち株を引き取った … との情報が流れたが,未確認である。
     ●アローラ氏辞任の予兆はあった
     ヤフーの株主総会は,他社より一足早かった。米ヤフーのインターネット事業を買収する可能性に関する質問が出たが,宮坂氏は「現時点では決定事項はない」と微妙な受け答えをしていた。「米ヤフーは最も重要なパートナー。 (経営の) アドバイスも頂いている」とも語っていたが,これは建て前だ。ヤフーにはソフトバンク G が43%,米ヤフーが35%出資しており,米ヤフーは2人の社外取締役をヤフーに派遣している。ヤフーは本家とは好対照で絶好調の業績を続けており,16年3月期の連結営業利益は前期比 14%増の 2249億円で,19 期連続で増収増益を達成した。
     ヤフーの取締役として株主総会に出席した孫氏は「 (ビジネスが) マンネリ化しないよう挑戦してほしい」と注文をつけた。唯一のハプニングは,株主総会で取締役に再任され,その後の取締役会で会長の続投が決まったアローラ氏が即刻辞任したことだろう。アローラ氏はヤフーの売却を主張していたのだから,株主総会を欠席したのも当然と言える。この時,すでに孫氏とは別の道を歩き始めていた … ということなのだろう。
     孫氏は「あと5~10年社長をやる」とコメントしたが,生涯現役で社長を続けることになると見る向きが多い。 「当面,後継者は要らない。邪魔だ」ということだったのではないか。ソフトバンク G 社外取締役の永守重信・日本電産社長は「69歳になったら,もう10年やると言い出すに違いない」と言い切った。
     実は以前から, 「アローラ氏が辞めるのではないか」との噂が米シリコンバレーで流れていたのだ。シリコンバレーには,アローラ氏がソフトバンク入りする時にスカウトしたグーグルやモルガン・スタンレー出身の傭兵部隊, 「チーム・ニケシュ」がある。ここが噂の発信元だろうと言われている。
     電撃退任の前兆が,はっきりと表に出たのは6月20日だった。1月に匿名の投資家グループから届いていた「アローラ副社長の実績や適性に疑問」との書簡に関して,ソフトバンク G は「調査を終了した」と発表した。取締役会の独立役員で構成する特別調査委員会が調査し,書簡で指摘されたような問題は無かったと判断。申し立ての内容について「評価に値しない」と結論づけた。この発表についても, 「なぜ,今なのか」という戸惑いが社内にあったという。
     アローラ氏の疑惑を否定したソフトバンク G のニュース・リリースは,申し立てをした人を「株主と見られる方」,代理人については「株主の利益を代表していると自称している米国の法律事務所」としたが,荒唐無稽な告発なら,特別調査委員会を設置する必要など無かったのではないのか。
     この疑惑の火を消すのに,ソフトバンク G は,かなりのエネルギーを注いだと見られる。
     ●米証券取引委員会が調査を開始
     米メディアによると,書簡では「アローラ氏が IT 企業への投資を手掛ける投資ファンドの上級顧問として報酬を得ており,新興企業に投資するソフトバンク G との間で『利益の相反がある』」と指摘していた。ソフトバンク G 内でのアローラ氏の仕事ぶりについても「実績に乏しく,疑問の余地がある取引がある」と批判していた。
     「孫氏を手助けし,グループ変革の種蒔きができたことは大きな経験だった」とアローラ氏は友好・円満退社であることを強調したが,突然の退任の理由は,現在まで株式市場にも投資家 (株主) にも明確に説明されていない。
     アローラ氏は,兼任していたヤフー会長や米提携電話大手,スプリントの取締役からも即座に退いている。顧問という名前が残るだけで,アローラ氏が「新しい道を行く」わけだ。
     アローラ氏には次の新しいポストが用意されており,早ければ3ヵ月後に発表されるという情報がシリコンバレーでは流布している。アローラ氏の退任で,ソフトバンク G の投資先の選定は,孫氏一流の "勘" に頼る 以前のスタイルに逆戻りする。ロナルド・フィッシャー取締役や副社長に復帰した宮内謙氏では荷が重く,アローラ氏の代役は務まらないとの声が多い。
     米証券取引委員会 (SEC) が,アローラ氏のソフトバンクG副社長在任中の行為に関して調査に乗り出した … と複数の米メディアが6月30日までに報じた。
     アローラ氏を巡っては,米法律事務所が利益相反行為やインサイダー取引に関与した可能性があると指摘していた。調査は予備的なもので,もし本格的な調査が始まればソフトバンク G も調査への協力や積極的な情報開示を求められることになる。
     問題になりそうなのは,アローラ氏がソフトバンク G に加わった後も,幹部を兼務していた米投資会社との関わり方だ。この投資会社は多くのネットベンチャーに投資しており,ソフトバンク G の投資部門を統括していたアローラ氏に利益相反の疑いがあるというわけだ。
      (文=編集部)
    無理してこんな (誰が見ても) おかしな写真を撮る必要が無くなって,孫さん 安心でしょうね (笑)
    しかし,3つだか 4つだか 理由を詮索する必要はもう無いと思うんですよ。
    業界の人が注目しているのは ただ1つのことだけでしょう。アメリカの SEC とか 日本の金融庁からソフトバンクに調べが入ってどうこうということはあるでしょうが。
    ── SEC 以外で ただ1つって どういうただ1つ? スプリントとかですか?
    辞める辞めないで騒ぎを起こした社長が,これまでどういう運命を辿ったか。
    まぁ この会社は上場会社とはいえ,巨大な非上場会社同様ですから,その点で状況が違います。そういう意味でも関心を集めるでしょう。
    ・・・ と書いたのですが,同じ日の日経電子版に ・・・
     創業者の乱,引責……「乱気流」上半期トップ交代 (2016/7/7 6:30)
     というのが 載っていた。その中の末尾部分を採録させていただきましょう。
    ──────
      会計の不正やデータ改竄など事情は異なるが,不祥事や都合の悪いことを隠蔽しきれなくなっている。これも企業経営の透明性を上げる流れの影響だろう。
     デスク 続投を宣言した企業もあった。
      伊藤忠商事とソフトバンクグループ。事情は違うが,続けることを宣言すること自体は人事を明瞭にした。「もっとやりたくなった」という孫正義氏の理由は分かりやす過ぎるが。
      ソフトバンクは,会社の後継者育成 (サクセッション) プランに首尾一貫性が無いことを露呈した。創業者が取締役会のメンバーにいると,如何に社外の役員が外部の視点から意見したところで,最後は創業者の意向が尊重されやすいことが明るみになった。創業者の振る舞いをプラスと考えるかマイナスと考えるかは,意見が分かれるところではないか。
     同社の人事は,上場して会社が「公器」となったことを理解しなければならない経営の理性と, 「俺の会社だ」との本音がぶつかり合うオーナー企業共通の現象ではないかと感じる。組織の持続性の観点からサラリーマン社長には無い創業者のパッション (情熱) を社外取締役主導のガバナンスとどう整合させていくか。一朝一夕では答の出ない問題だ。
     [日経産業新聞 2016年7月7日付]

  67. 「孫社長の後継者 アローラ電撃退任」を追う
    東洋経済 オンライン,2016/07/05
    山田 雄一郎 東洋経済 記者
    匿名投資家による疑惑の指摘は,主に7項目
    昨年10月,まさに相思相愛だった二人。
    このときニケシュ・アローラ氏の退任は想像すらできなかった (撮影:梅谷秀司)
     孫正義社長の「最も有力な後継候補」だったソフトバンク・グループ (以下ソフトバンク) のニケシュ・アローラ副社長が,株主総会前夜の6月21日午後7時59分に 突如退任を発表した。 翌日の株主総会の決議事項から,アローラ氏再任の項目が削除され,任期満了で総会後に自動的に退任となった。
     孫正義社長は,あくまでも円満退社であることを強調し, 退任理由は自分にあると説明した。 「あと5年,10年と社長をやりたくなった。あくまでも,私の我がままでこうなった。一番の被害者はニケシュだ」(孫社長)。
     一度も売らなかったアリババ株を売却
     しかし,これが真相なのだろうか。グループ会社の幹部は「孫社長の説明は子供じみている。少し恥ずかしいことを言ってでも,人に言えない事情を隠そうとしているのではないか」と訝る。
     電撃退任の予兆はいくつかあった。1つ目は怒涛の株式売却である。6月に入ってから,ソフトバンクは一気に保有株売却を実行。2兆円近いキャッシュを手に入れることになった。
     「2000年に投資して以来,1株も売ったことがない」。孫社長が自慢していたアリババ株を初めて一部放出したのを皮切りに,好業績で親孝行の子会社スーパーセル,持ち分法適用会社のガンホー・オンライン・エンターテイメント株の売却を決めた。
     特にスーパーセルは,2013年に出資したばかりである。バイ&ホールド (長期保有) の投資家として知られる孫社長は,スーパーセルのイルッカ・パーナネン CEO に「長期的な関係」であることを明言していた。2兆円近い怒涛の売却は,これまでの孫社長からは想像もつかないことだった。
     2つ目は,3月の新会社設立である。ソフトバンクは持ち株会社だが,その下に2つの中間持ち株会社を新たに配置した。国内事業統括会社と海外事業統括会社の2つである。海外統括のトップには アローラ氏を据えた。
     これは,孫社長からアローラ氏への数年先を見据えた禅譲の下地作りと見るのが自然だ。つまり,こうした人事の数ヵ月後に,さらにその上の持ち株会社の社長にアローラ氏を据えることは 通常無い。数年間様子を見て,中間持ち株会社トップとしての実績に応じて昇格させるものだからだ。
    株主総会の冒頭「ミスター孫は若返った。
    これからもサポートしていく」などと
    挨拶したアローラ氏 (撮影:今井康一)

     3月の退任なら理解できるが ・・・
     会社側はアローラ氏の退任理由について「(孫社長とアローラ氏) 両者の時間軸のずれを踏まえ,次のステップに進むことになった」と説明している。
     もしそれが理由だとすれば「ずれ」が浮き彫りになったのは,この新会社設立構想が伝えられた段階だろう。つまり,アローラ氏が3月のタイミングで辞任していれば, 「時間軸のずれが決定的だった」という解説には説得力がある。だが実際には,3月には辞任していない。
     一方で,この中間持株会社体制は発表後に あまり進展が見られない。どの子会社をどちらの傘下にするかは 孫社長に一任され,年末までに決めることになっているが,海外統括の傘下に1社 (3月20日),国内統括に数社 (4月1日) … と発表されてから,その後は発表がない。
     3つ目は,特別調査委員会である。ソフトバンクは,1月に届いた匿名投資家からの書簡を受けて,2月に社外取締役ら独立役員で構成される特別調査委員会を設置していた。調査対象はアローラ氏である。
     書簡が指摘した主な疑惑は以下の通りである。
     (1) Silver Lake Partners という (ハイテク銘柄に特化した) 投資ファンドのシニア・アドバイザーをアローラ氏が兼任していることは,ソフトバンクに対して利益相反に当たる。
     (2) 2015年1月に,アリババの内部情報を得て,Silver Lake が保有アリババ株の 45%を売却していたのはインサイダー取引に当たる。
     (3) 動画配信の DramaFever や インドの 不動産ポータル Housing.com への投資は,成果が出ていない。アローラ氏がデューディリ (事前調査) を怠ったのではないか。
     (4) インドの E-コマース大手 Snapdeal に2度の出資をしているが,2回目は資金需要が無いと Snapdeal の CEO が明言しているにも関わらず,強行した。
     (5) インド企業への投資で助言していた Alok Sama 氏に,半年間で 600万ドルの報酬をアローラ氏は払っているが,払いすぎでないか。
     (6) 実績の無いアローラ氏に 2014年度に 165億円もの報酬を支払ったのは,ソフトバンク株主に説明がつかない。
     (7) 高額報酬が明るみになると,アローラ氏は 600億円のソフトバンク株を購入すると公表したが,アローラ氏に自腹で買うだけの資金力は無かった。ソフトバンクが債務保証をし,その融資でアローラ氏は購入したに違いないが,その点についてのソフトバンクの情報開示は十分でない。
     孫社長は質問を無視
     調査委員会は6月20日に「評価に値しないものだった」と結論のみを発表した。どんな調査が行なわれたかなどの具体的内容は明らかにしていない。アローラ氏の退任発表は,この翌日だった。会社側は「退任と調査は関係無い」としている。
    株主総会の孫社長。
    調査報告書に関する質問に,正面から
    答えることは無かった (撮影:今井康一)
    退任発表の当夜,アローラ氏は SNS「ツイッター」へ大量に投稿した。この夜は,3時間に 117件も書き込んだ。その中で「マサとは 今でも互いに愛し合っている」と仲の良さを強調していた。
     翌日の株主総会で「調査結果を公表すべきではないか」と株主に問われた孫社長は,この質問に答えず,無視した。また,株主に聞かれていないにも拘らず,高額報酬への批判に対して先手を打つ形で「グーグルにいたら同じくらいもらっていた。ストックオプション分を支払ったのだ」と必死に弁明していた。
     アローラ氏のツイートによれば,転職先は決まっておらず,余裕を持って次の職を探すという。つまり,急いで辞める理由は無かった。7月には ソフトバンクの顧問に就任したが,これはインドの或る投資先の面倒を見るためだけだ。
     孫社長は「ニケシュほどの人物を待たせるわけにはいかない」と主張したが,転職先が決まっていないのであれば,顧問より責任のある職に就ける選択肢も十分にあったはずだ。
    これで「一件落着」とは行かない?
     アローラ氏は「clean chit をもらった。次に行く時だ」ともツイートしている。ということは,社長就任が数年先に遠のいたことが判明した3月の新会社設立時点で辞意は固まっていたが,特別調査委員会の調査が完了するまで待ったのだろうか。さらに, 「お粗末な投資成績」「実績が無いのに報酬が高額すぎる」という書簡の批判を気にしていて,6月に保有株売却を行なったのかもしれない。
     このうち,アリババ株は9ヵ月前から計画していたというから当てはまらなさそうだが,退任当日のスーパーセル株売却は,まさに投資成績の高さを示したものだった。
     6月30日には米証券取引委員会 (SEC) がアローラ氏を調査している … との米メディアの報道がなされている。この調査のきっかけも,上記の書簡だという。どうやらアローラ氏の退任で一件落着というわけにはいかなさそうだ。
     今回,孫社長やアローラ氏が株主総会で言ったこと・言わなかったこと,退任発表当夜のアローラ氏のツイッター,匿名投資家からの書簡の全訳など「週刊東洋経済7月9日号」(7月4日発売) では,さまざまな資料を読み解き,電撃退任の真相に迫っている。
    というわけで,書簡全訳を納めた7月9日号の宣伝でした。売れるでしょうね(笑)
    当サイトでは,英語も日本語も無料で 読めるんだけど。

  68. SEC Investigating SoftBank Group, Former Executive Nikesh Arora
    SEC が,SoftBank Group と 前幹部 Nikesh Arora を調査中である。
    Wall Street Journal,2016/07/01, 01:03 pm
    By Aruna Viswanatha
    SEC の審査は,シリコンバレーの ディール・メーカーが 先週 会社を去った後になされる。
     会社に不満を抱く投資家らの弁護士によれば,アメリカ証券取引委員会 (SEC) は,日本のインターネット+通信巨人 SoftBank Group とその前幹部 Nikesh Arora を調査中である。
     "SEC が SoftBank と Arora に関する ある種のことを 審査中であることを,我々は 知っていますよ (we do know)。" … と Ira Sorkin 弁護士は言った。
     Arora は,グーグルから招聘されて 会社の法定相続人として浮上してから2年後,突如として 先週 会社を去った。彼は,SoftBank Group の総裁 兼 最高執行責任者であった。
     シリコンバレーの ディール・メーカーを 自分の後継者として自ら厳選した SoftBank CEO Masayoshi Son は,この退職を,自分が創立した会社の舵取りの座に留まりたいという自分の決断によるものだと 先週説明した。
     Arora の退職は 同時に,メガトン級の投資に対する投資家からの一斉非難攻撃に彼が直面したことを受けたものでもある;何人かの投資家は,彼を追放せよとキャンペーンを張った。彼らは,Arora の記録を疑問視し,PEF Silver Lake での顧問の職務が利益相反を構成すると言った。
     会社は 声明で,規制当局の審査に関するプレス報道については,コメントしないと言った。取締役会の委員会が株主の訴えを審査し,根拠の無いものであると結論したと言った。
     Arora は,過去2年間に SoftBank から $2.08 億の報酬を受け取り,世界一の高給取り幹部の1人になっているが,投資家の主張は根拠が無いと主張する。
     SEC のスポークスウーマンは コメントを拒んだ。
     この調査は,Bloomberg News が これまでに伝えた。

  69. SEC launches probe into Silicon Valley executive Nikesh Arora
    SEC が,シリコンバレーの幹部ニケシュ・アローラに精査を立ち上げる。
    Financial Times, 2016/07/01, 02:03 pm
    By Leo Lewis (東京), David J Lynch (ワシントン) & Kana Inagaki (東京)
    アメリカ規制当局は,世界最大のテック企業2社を経営したことのある シリコンバレーの幹部 Nikesh Arora につながる範囲の取り引きを精査中である。
    SoftBank 総裁を辞任した Nikesh Arora. (©Reuters)
     証券取引委員会 (SEC) による審査は,予備的段階にあるものと理解されるが,Arora が 日本の通信+インターネット コングロマリット SoftBank の総裁を突如辞任してから1週間後に光が当てられた。
     SEC の審査を直接に知る複数の人が言った:匿名の SoftBank 株主グループを代表する弁護士 (複数) に 規制当局の方から近づき,情報の非公式な提供を要請した。
     この要請は,Arora を取り巻く訴えを調査せよと株主らが SoftBank 取締役会に 今年初めに送った 書簡に関連するらしい。ただし,Arora はそのすべてを否定した。
     投資家らの申し立ては,日本の最高給幹部としての Arora の報酬,SoftBank 以外の役職に絡む利益相反の可能 ならびに 国際的な取り引きに関して投資家に開示を要求するものであり,SoftBank 創立者 Masayoshi Son の後継者として これらを意のままに操ったとしている。
     SoftBank は 先月,これらの申し立てを独立委員会の審査に委ね,Arora に対する申し立てを "根拠が無い" と言った。
     金曜日,Arora に対する申し立てへのスタンスを会社は維持しつつ,SEC の精査に関するコメントを拒否した。ただし,SoftBank に近い1人は,SEC は 日本のグループにこれまで接触していないと付け加えた。
     SEC はコメントを拒んだ。Arora は つかまらなかった。
     規制当局は 当初,Boies Schiller & Flexner に接触した。氏名不詳の株主からの書簡は,この法務会社から送られたからである。しかし,この法務会社は 利益相反を理由に 株主代表の座を降りていた。
     SEC は そこで 無名の株主グループを いま代表する Ira Sorkin の許へ向かった。この弁護士は,SEC の元幹部であり,バーナード・メイドフを弁護したことで名高い。
     Son は 2014 年,Arora をグーグルから盗み出し,自分の右腕として (アメリカの無線キャリア Sprint,中国 E-コマース巨人アリババ,ハリウッドとインドのスタートアップ企業などの株を持ち,四方八方に手を伸ばすテック・グループ) SoftBank の法定相続人とした。
     ところが この2人は,つい最近まで 互いに "愛し合って" いると公言していたのに,意外にも 社長引継ぎのタイミングで衝突を起こして袂を分かった。
     Son は,来年 60 歳になったときに引退しようと決めていた考えを変えたと言う。Arora は,Financial Times にこれ以上待つつもりは無いと語った。Arora は未公開株投資グループ Silver Lake で 上席顧問の職にあり,SoftBank では 顧問の役割を務めてきた。
     SoftBank は,Arora の辞職が株主の訴えとは関係無いと言う。
     けれども 会社に近い複数の人は,2人の間の緊張が,後継問題を巡る衝突よりも深く進んでいた … と言う。
     Arora は,自分独自の投資専門家チームを抱えており,独自の経営スタイルで日本の古手の従業員を遠ざけ, $130 億の世界買収騒ぎを統括していた … と何人もの (several) 従業員が Financial Times に語った。
     彼の 21ヵ月の在職のあいだに,SoftBank は,韓国オンライン小売り Coupang に $10 億を注入し,インドでいくつもの投資を実行した (通販の Snapdeal,不動産ポータル Housing.com,呼び出しタクシーの Ola Cabs など)。
     SoftBank の株価は,Arora の辞職後 僅かに上がったが,それ以後は 今週 5.7% 下げている。
    昨日までの報道は,Bloomberg の第1報を引用して 伝えるだけであった。
    ──────
    なお ここでは,probe → 精査,inquiry → 審査,investigation など → 調査
    president → 総裁 と機械的に翻訳しています。
    ウェブで調べると,"President" は,日本で言う取締役社長に相当する重要なポストらしい。
    その上が 最高経営責任者 (CEO) です。

  70. SoftBank Said to Face Inquiry Over Alleged Arora Conflicts
    アローラの利益相反容疑で ソフトバンクが審査に直面するとのウワサ
    Bloomberg,2016/06/30, 11:20, 11:38 am JST
    By Matt Robinson & Peter Elstron
      アメリカ証券取引委員会は,目下 訴えをチェック中である。
      SoftBank と Arora は,如何なる不正も利益相反も否定してきた。
    Tomohiro Ohsumi | Bloomberg)
     この件に詳しい複数の人によれば,アメリカ規制当局は 現在,先週 総裁を辞任する前の Nikesh Arora の活動に関する訴えについて SoftBank Group Corp を調査中である。
     証券取引委員会 (SEC) のロサンゼルス・オフィスは,Arora が利益相反 もしくは 疑わしい行動 ならびに 投資家への SoftBank の開示に携わっていたかどうかを調べている … と上記の人たちが匿名を条件に語った。SEC の尋問の開始は,通常 予備的なステップであり,SoftBank と Arora のどちらかが法的執行に直面することを意味しない。実際 この2人はこれまで不正の廉で訴えられたことはない。
     SoftBank の株価は 午前の取り引きでは上がっていたが,取り調べのニュースを受けて反転した。東京の昼休み前には 3% も下げている。
     48 歳の Arora は,SoftBank の投資家グループが 同社取締役会に 彼の幹部としての資質,報酬,それに PEF での顧問の役割による利益相反の可能性を調査せよと要求したことを受けて,6月21日に辞職を表明した。投資家の訴状を受けて,SoftBank の独立取締役の委員会は,辞職の1日前に Arora が如何なる不正も行なっていないと結論した。同社は,彼の退社が投資家の批判と無関係であると言う。
     SEC のスポークスウーマン Judy Burns は,コメントを拒んだ。Arora は,質問は会社へどうぞと言った。
     "SoftBank Group は,規制当局の取り調べの報道にコメントしません。" … と 東京に本社を置く会社は声明で言った。"ただし,これだけは指摘しておく。取締役会の独立メンバーによる特別委員会は,独立顧問の助けを得て,株主と称する方々の要求にあった 前総裁兼最高執行責任者の行為に関する訴えを調査した。特別委員会は,これらの主張が根拠の無いものであると結論した。"
     先週のインタビューで Arora は,SoftBank 創立者 Masayoshi Son から (それまで2人で話し合っていた) 来年 SoftBank CEO への昇格は無いと言われたので辞職を決意した … と語った。58 歳の Son は,禅譲を考えていたが,SoftBank の支配を手放すには 余りにも心が逸り,エネルギーがあり過ぎると感じていると判断した。
     "私は永遠に若い。そう考え続けたい。" … と Son は,Arora と何人かの記者を前に東京で語った。"私は,自分の体力に自信を失うまで やり続けたい。引退の日が近づくにつれ,ますます 舵にしがみつきたくなる。Nikesh に迷惑を掛けるのは,実に申し訳ないと思う。しかし,私のこの感情を抑制したまま進むのは良くないだろう。"
     投資家グループは,1月20 日付の 11 ページの書簡で Arora への懸念を述べ立てた。利益相関に加えて,投資家らは Arora 幹部の投資成績,$1 億を超える報酬 ならびに "疑わしい取り引き" なるものを批判した。或る投資家から SoftBank が支配する Sprint 取締役会に宛てた別の書簡は,同様の理由で Arora の取締役辞任を要求した。
     書簡が 初めておおやけになった4月,SoftBank と Son は Arora を擁護して,彼が何かの不正を行なったことを否定した。同社は,Arora の投資判断での利益相反の可能性を審査しており,彼のマネージメントに信頼を置いていると言った。"私は Nikesh を完全に信頼している。1,000 % 信頼している。彼が SoftBank のために将来偉大なことを成し続けることを知っている。" … と Son は当時 声明で言った。
     そのとき Arora は,自分が常に会社の利益を最優先に考え,利益相反の可能性のある情報は すべて共有するよう注意を払ってきた … と述べた。"私の実績がすべてを物語る。" … と彼は言った。"SoftBank にきて この 18ヵ月間,私は常に会社第1で努力してきた。これらのコメントはどれも 結局のところ 実質的な意味を持たない。"
     彼の先週の退任は SoftBank にとってサプライズだった。Son は,2014 年に Arora を グーグルからリクルートし,1年前には総裁に昇格させ,公然と自分の法定相続人と呼んだ。SoftBank は また,Arora を世界最高の高給取り幹部の1人にした;2016 会計年の報酬は 80.4 億円,2015 会計年は 166 億円であった。
    アイラ・ソーキン
     SoftBank へのそもそもの書簡は,アメリカの法務会社 Boies Schiller & Flexner から 氏名不詳の投資家を代表する形で届き,この法務会社のパートナー Matthew Schwartz がサインしていた。その後 Boies Schiller が 利益相反を理由に顧問を降りた。投資家らは その後継として ニューヨークの弁護士 Ira Lee Sorkin を選んだ。 この弁護士は,アメリカ史上最大の投資詐欺を犯した バーナード・メイドフ (Bernard Madoff) を弁護したことで名高い。
     以前アメリカ司法省と ニューヨークの SEC に勤務した経験のある Sorkin は,投資家の訴状を現在調査しているところであり,Arora の辞職がどう影響するかを決めるには 早すぎると述べた。
    バーナード・ローレンス・メイドフ (Bernard Lawrence Madoff 1938年4月29日-)
     アメリカ合衆国の実業家,元 NASDAQ 会長。史上最大級の巨額詐欺事件の犯人として知られる。
     2008年12月11日に,詐欺の罪で FBI により逮捕された。証券取引委員会は,メイドフの会社の資産を凍結し,その調査に着手した。証券取引委員会による調査の結果,メイドフが自ら運営する投資ファンドについて, 「 (運用によって) 10%を上回る高利回り」などと虚偽の内容を謳い,投資家たちから多額の資金を集めたという事実が明らかになった。また,メイドフは集めた資金を金融市場などで運用することをせず,既存の顧客たちへ支払わなければならない配当に自転車操業的に回し,それによって巨額の損失を隠していた。
    ──────
     SEC の「調査」は,資産凍結までするんか!
    ──────
     こんな悪人の弁護を Ira Lee Sorkin が引き受けた理由は,巨額詐欺事件が起こる遥か以前に Sorkin の両親がメイドフの年金ファンドに投資しており,両親の死後 それが かなりの成果を挙げていたためであるらしい。 (Wiki)
    Bloomberg から日本語訳が出ている。全体に影響は無いが,微妙な改竄が行なわれている。
     調査対象は Arora さんではなく,いちおう SoftBank なんですね。
     SEC が調査すれば,ソフトバンクは特別委員会の報告書を提出せざるを得ない。
     その報告書の内容によって,おのずと決着する。
    ブルームバーグの改訂版は,
     エース経済研究所の安田秀樹アナリストは「ニュースを見て株を売った人がいたので株価は下がったが,嫌疑が掛かっているのはアローラ氏であるため,長期的なソフトバンクの価値は損なわれない」と話した。
      ・・・ となっているが,そういうもんだろか?
     これは,代表権を持つ取締役の背任容疑である。
     代表権を与えるのは取締役会だから,取締役会 (実質的には 孫社長) が株主に対して責任を果たしているか?
     問われているのは 企業統治 (corporate governance) である。株主からの訴えに対して,取締役会が 直ちに対応して 1月に特別委員会を組織,そのことを直ちに発表,特別委員会の名簿も公表,結果が出たら直ちに報告書を発表,委員長が記者会見 … と進んでいれば,こんなことにはならなかった。
     つまり「嫌疑が懸かっている」のは,ソフトバンク (取締役会) の対応のまずさである。
     いまだに報告書を公表しておらず,客観的根拠も無しに結論だけを広報が鸚鵡返ししている。
     舛添要一前都知事より 状況は悪い。
     さっさと 報告書を公表して,特別委員会が記者会見できないのはなぜか? 勧進帳なのか?(笑)

  71. 孫社長が主導権再び;後継候補は突然の退任;ソフトバンク
    朝日新聞デジタル,2016/06/23, 05:00
    大鹿 靖明,福田 直之
    ソフトバンク・グループ (SBG) の孫正義社長 (58) は,6月22日(水) の株主総会で,「もう少し社長を続けたくなった」と述べ,後継者候補のニケシュ・アローラ副社長 (48) への禅譲を先送りにしたことが,アローラ氏の突然の退任理由と説明した。とはいえ,株主総会前日の後継者候補の退任発表は,異例の事態である。突然現れた外国人幹部に対する社内の困惑や,孫氏が主導権を取り戻そうとしたことも,背景にありそうだ。
    株主総会で退任について説明するニケシュ・アローラ副社長
    (モニター画面を撮影). 6月22日,東京都千代田区。
    孫正義社長
     孫氏は この日,「60歳の誕生日で潔く代ろうと思った」が,「あと1年となって欲が出てきた」と説明した。「少なくとも5年,おそらくは 10 年近く社長でいたい」と続投宣言し,「ニケシュは,今回の件で一番の被害者」と庇って見せた。当のアローラ氏は「投資先の若い創業者と会う中で孫社長も若返った」と皮肉っぽくあいさつした。
     ■古参幹部ら困惑も
     こんな説明を「とてもその通りには受け止められない」と SBG 幹部の1人は言う。アローラ氏は SBG に単身乗り込んだわけではない。グーグルやモルガン・スタンレー出身の外国人数十人をスカウトし,この「ニケシュ・チーム」が,シリコンバレーのオフィスを拠点として,世界中の投資案件を物色している。彼らは,本社の海外移転検討や投資物件の売却,社債発行による資金調達など経営中枢にも影響力を及ぼし始めた。
     こうした外国人幹部の存在は,「譜代大名」のような幹部には 煙たく映った。古参幹部ほど「孫さんの喜ぶ顔が見たい」という心理が働く。孫氏との個人的なつながりの深さが,社内の地位を安定させ,仕事のモチベーションも高める。それだけに「私を飛び越えて,アローラ氏は私の部下から直接ヒアリングする」(子会社社長) … と やりにくさをこぼす声があった。
     ■「人事で板挟みに」
     アローラ氏は,社内の会議で孫氏と対等に発言し,議論になることがしばしばあった。「人事を巡って,孫さんが外国人幹部と日本人幹部の板挟みになっていた」と複数の元幹部は言う。孫氏は3月に訪中し,日中韓ロの送電網をつなぐ事業化調査に合意した。実現性はともかく,こうした気宇壮大な構想力が孫氏の持ち味である。この構想にアローラ氏は関与せず,「久しぶりに孫さんらしい仕事だった」と担当社員は打ち明ける。
     SBG は 6月22日,アローラ氏の副社長起用時に 副社長から取締役に降格していた古参幹部の宮内謙氏を再び副社長に起用する人事を決めた。昨年から掲げる経営目標「ソフトバンク 2.0」以前の体制に戻る人事だ。
     関心領域が変わると,側近をガラリと入れ替えるのが孫氏の常である。アローラ氏が僅か1年しか後継者候補でいられなかったことに,かつて孫氏の側近だった北尾吉孝氏 (SBI ホールディングス社長) は「想定通りですね」と言う。SBG の社外取締役を務める永守重信日本電産会長兼社長は「69歳になったら,もう 10 年やると言い出すに違いない」と冗談めかして言及した。(大鹿靖明)
     ■アローラ氏,ヤフー会長も辞任
     アローラ氏の突然の退任は,企業統治上の問題も残した。同氏の退任発表は株主総会の前日であった。SBG は,総会当日になって招集通知にあった同氏の選任案を取り下げた。事前に議決権を行使していた株主は,無視された格好になった。
     SBG の連結子会社ヤフーの株主も翻弄された。同社会長を兼ねるアローラ氏は,6月21日のヤフー株主総会を欠席したが,総会で取締役に再任され,取締役会で会長の続投が決まった。だが,ヤフー幹部の間では,同氏が一転して会長を退くという話が広まっていたという。6月22日にアローラ氏は辞表を提出した。再任決定から僅か1日後だった。 (福田直之)
      ■アローラ氏の下で行われた主な海外投資など
    2014/09アローラ氏がソフトバンクに入社
    2014/10Snapdeal (インド,通販) に出資
    2014/10Ola (インド,配車アプリ) に出資
    2014/10Tokopedia (インドネシア,通販) に出資
    2014/12GrabTaxi (シンガポール,配車アプリ) に出資
    2015/05Banjo (アメリカ,データ分析) に出資
    2015/06Coupang (韓国,通販) に出資
    2015/06アローラ氏,代表取締役副社長に就任
    2015/10Social Finance (アメリカ,金融) に出資
    2016/03グループを国内統括会社と海外統括会社に再編
    2016/06Alibaba (中国,通販) 株の一部を売却
    2016/06Supercell (フィンランド,ゲーム) 株を売却
    2016/06Gungho (日本,ゲーム) 株の大半を売却
    (注) 実は,このリストは かなり不完全である。
    すぐに思いつくだけでも,Trikomsel, Housing.com, DramaFever, WME-IMG が抜けている。
     ソフトバンクとニケシュ・アローラの投資の失敗 (?) は,以下の記事に詳しい:
      ソフトバンクとニケシュ・アローラを祝うには まだ早い?』 (Quartz India,2016/02/01)
      『スプリントの親会社は,世界のスタートアップ企業への投資に景気づく』(Kansas City Business Journal,2015/12/22)
       『ソフトバンクの 2015 年は繁忙だった。今年の世界のスタートアップ企業への投資をご覧あれ』(Tech in Asia, 2015/12/19)
    ──────
     Arora さんが退社して,これらの投資がどうなるのか … というのが1つの大きな問題である。
     先日の株主総会で 孫さんは「左側の箱」の責任者として 宮内謙氏の代表取締役副社長への返り咲きを発表した。「右側の箱」(20 人の外国人による Nikesh チーム) の責任者は,Arora さんの後任として誰になるのかな … と思っていたが,その話は無く,Singularity へと逃げて (?) しまった。
     これについては Wall Street Journal [下記] が伝えており,今後 海外統括部門 (Nikesh チーム) の面倒を見るのは,Ronald D. Fisher (ソフトバンク,スプリント,ブライトスター3社の取締役) + Alok Sama (ブライトスター CFO,Baer Capital Partners 総裁 = Nikesh の腹心として "ソフトバンクが雇った" ことになっており,Boies 書簡では過大な報酬を受け取ったと非難されている) この2名であると孫さんが言った … と書かれている。
     この2人が率いる 20 人の在米チームに,ソフトバンクがこれまで注入した巨額の資金の管理が任されるわけである。目減りしなければ 上出来か?
    ──────
    SoftBank President Nikesh Arora Leaves Company Abruptly; Former Google executive has been under pressure from investors (Wall Street Journal,2016/06/22, 01:35 am)
     『ソフトバンク Nikesh Arora 総裁が突然会社を去る;前グーグル幹部は投資家からこれまで圧力を受けていた。』
     内容は 今となっては既知のことばかりですが,その中に
     SoftBank Director Ron Fisher and Baer Capital Partners founder Alok Sama will fill Mr. Arora’s role in directing overseas investments, Mr. Son said.
     という記述がある。
     Ron Fisher さんは当然として,「アラブ首長国連邦ドバイに本社を置く 2006年創業 Baer Capital Partners の創業者/総裁/取締役 Alok Sama」に ソフトバンクの巨額の投資金を委ねるってのは … 皆さん どう思いますか? かなりの違和感があります。
     しかも Alok Sama は,ソフトバンクの子会社であるブライトスターの CFO に納まっており,ブライトスターは 多額の減損償却をこのほど行なった。
     Bloomberg によると,Baer Capital Partners は,中小型投資 (500~2,500 万ドル) が得意である。オフィスは,ロンドン, チューリッヒ, ムンバイ, ニューデリー にある。これで,普段の連絡は?
     東京にもアメリカにも オフィスを持っていないらしい。
     こちらがそのウェブサイトです。
     「我々は 常に強気である」 ・・・ こんな会社に ソフトバンクの (たぶん1兆円を超える) 資産を預けてホントにいいの? 孫さん。
     それとも,余りにも沢山の買収をして,わけが分からなくなっている。全体を把握できているのは Arora さんと Alok Sama だけで,細かいことは SoftBank 側からは (孫さんも) 詳細を全く掴んでいないから,Fisher さんに少しづつ理解させようという作戦か?
    ──────
    蛇足:上の Wall Street Journal 記事の読者コメントにこんなのがある。
     Horrible job allowing this bank to buy Sprint. (こんな銀行に Sprint を買わせるなんて恐ろしいことだ)
     Wall Street Journal の有料購読会員でないとコメントは 書けません。… ということは,SoftBank は,通信会社ではなく,まだまだ「銀行」だと信じられている。この頃 孫さんは これについて苦情を言わなくなりました。銀行と誤解されている方が都合が良いこともあるのでしょう。

  72. Arora Exits SoftBank: Pay Attention to the Deals, Not the Dealmaker
    Arora はソフトバンクを退社する:大切なのは,ディールメーカーではなしに ディールに注目することだ。
    Wall Street Journal,2016/06/22, 09:48 pm
    By Jacky Wong
    SoftBank は,資産売却により債務の重荷を減らし,投資家を呼び戻しているように見える。
    星を撃つ
    2014年10月に Nikesh Arora が総裁兼 COO に就任後のソフトバンク株価。
     SoftBank は,未来の最高経営責任者を含む 大規模資産放出騒ぎに走っている。その結果,痩せた,つまらない会社になるだろう。
     前グーグラーで 日本のインターネット+通信巨人の法定相続人であった Nikesh Arora は,火曜日に 総裁 兼 最高執行責任者 (COO) の職を辞すると発表して投資家に衝撃を与えた。表向きの理由は,SoftBank 創立者 Masayoshi Son が手綱を渡す用意が まるでできていないということである。
     それは おそらく 筋書きの全部ではない。この辞任は,Arora が係わっていた PEF と並行して SoftBank が行なった取り引きでの Arora の行為について [SoftBank が実施した] 内部調査の結論と同時に発生した。SoftBank 取締役会は,不正行為は無かったと認定した。しかし その結論と同時に Arora が退任することは,彼のマネージメントのスタイルが 引き起こした摩擦 (複数) をハイライトする。
    Nikesh Arora は,SoftBank の総裁兼 COO の職を辞任した。
    Bloomberg News)
     企業戦略の観点から見れば,彼の突然の辞任は,たぶん さほど突然ではなかろう。SoftBank は,最近 これまでとは違う方針を採用したらしい;債務の重荷を減らす目的で資産を放出している。
     同じ日に,SoftBank は フィンランドのゲーム・メーカー Supercell の過半数株式を 中国の騰訊控股に売却すると発表した。評価額は $102 億であり,結構な利益が得られる。報道によれば,SoftBank は 昨年 "Clash of Clans" を開発した Supercell の持ち株を $52.5 億の評価で 73% に増やした。SoftBank は また その前に,中国 E-コマース巨人アリババ集団の株式 約 100 億ドルを売却すると発表した。さらに,日本のゲーム・メーカー ガンホー・オンライン・エンターテインメントの株の大半も処分する。
     これらの処分は,Arora が過去2年に拍車をかけた投資騒ぎから SoftBank は 反転しようとしていることを示唆する。その代りに,資産売却から得た $200 億弱を 赤字まみれの Sprint の貸借対照表の是正に投入するのだろう。アメリカの通信会社は 火曜日に 8% 弱 跳ねた。
     SoftBank 自身の株価は,2014 年に Arora がグーグルから入社以後 24% 下がった。苦戦中の Sprint は,Arora の着任前に買収したものであるが,大きな重石であった。しかし,スタートアップ企業への彼の投資は,投資家から手厳しい批判を受けた。SoftBank は これまでに Arora の故国インドへ $20 億を既に投資した。今後 10 年の間に $100 億超を投資する予定である。SoftBank 投資家のグループが 書簡で "適切なデューディリ無しの軽率な投資" に係わっているとして SoftBank を非難したのは,まさに このような取り引きの中の1つ (たとえば,不動産ポータル Housing.com) である。もっとも,SoftBank はこれに反駁する。
     Arora の退任は,SoftBank で いま起こっている もっと重要なこと (複数) から見れば,大したことではなかろう。会社の株価は 水曜日に上がったが,これは おそらく 予想を $10 億上回る稼ぎを生んだ Supercell の売却を囃したものである。会社が処分すればするほど,ますます SoftBank は 投資家から愛顧を得る。
    メディアによって 主張が異なるので,読むのに苦労する。
    もうしばらく経たないと「定説」は確立しないのだろう。

  73. SoftBank President Nikesh Arora Plans to Step Down
    ソフトバンク総裁 Nikesh Arora は辞任を計画する
    New York Times,2016/06/21 (6月22日,ニューヨーク版 B5 面に掲載)
    By Jonathan Soble & Michael J. de la Merced
    前グーグル幹部でシリコンバレーの星は,世界で最も有名なテクノロジー・コングロマリットの1つである 日本の SoftBank の次の最高経営責任者への路線上にいた。いまや 彼は 会社を去る。SoftBank の世界への野心に ひび割れの存在を示す突然の振るい落としで。
    SoftBank の最高経営責任者 Masayoshi Son がスクリーンの前に立ち,
    Nikesh Arora を紹介する。両者の不和が Arora の退社につながった。
    Yuya Chino | Reuters)
     2年前に グーグル幹部 Nikesh Arora が グーグルの事業部門のトップとして人気の高いポストから横取りされたとき,これは SoftBank のクーデターだと広く考えられた。大富豪の創立者 兼 最高経営責任者 Masayoshi Son は,Arora に法定相続人の王冠を与えた。
     Arora は,取り引きを結ぶ優れた能力が自慢であり,SoftBank を投資の吹雪により変換させる力のある国際的人材と見なされていた。Son が強く心に秘めた野心の1つは,(アメリカのキャリア Sprint のような外国に名前の知れた名前をいくつか持つ日本の事業会社) SoftBank を真に世界的な企業に変換することであった。
     ハネムーンは続かなかった。
     何人かの投資家は,SoftBank の海外取り引きの記録について,Arora を 最近 批判した。DramaFever や Housing.com のようなスタートアップ企業への投資は,業績が停滞したために,酸っぱくなったようだとこれらの投資家は言った。
     こうして,注意深く組み立てられた ── あるいは 一見そのように見えた ── 後継計画は破綻した。Son は すぐに手綱を譲るべきではないと決断した。
     58 歳の Son は声明で,まだ "いくつかのクレージーなアイデアを SoftBank でやってみたい" と言った。Son は,Arora が最高経営責任者をいつ引き継ぐかについての違いを,辞任に合意した理由に挙げた。インド生まれの Arora は,総裁と最高執行責任者 (COO) の称号を持っている。
     "私は,あと 5~10 年 CEO でなければならない。これは,Nikesh にトップのポストを待たせる時間軸ではない。" … と Son は言った。
     48 歳の Arora もこの別れを友好的なものにした。"Masa と私は まだ 互いに愛し合っている。" … とかれはツイッターに投稿した。"私は,投資した全ての人をサポートする。彼らは それを知っている。"
     Arora が遺したものは ── 良いものであれ悪いものであれ ── 最終的には 彼の投資成績で決まるだろう。
     SoftBank の戦略は,確立した事業から ちっぽけなスタートアップ企業まで,他社を買収することを中心とする。Arora が来るちょっと前,SoftBank は Sprint を $216 億で買収した。これは Son 帝国の大掛かりな海外展開であった。日本のコングロマリットは,中国 E-コマース企業アリババへの初期投資が ゆっくりと数十億ドルに膨れ上がったことにより財を成した。
     SoftBank に入ると Arora は,世界中から買収のターゲットを選別する仕事を任された。彼に与えられた指令は,Sprint などを買収したとは言え,営業利益の約 70 % を国内市場から上げている SoftBank を多様化することだった。
     Arora は 1ダースを超える取り引きを結んだ。その多くは,インド,インドネシア,シンガポールの 技術,通信,メディア企業だった。SoftBank は,韓国 E-コマース Coupang の権益に $10 億を払った。アメリカの メディア+スポーツ代理店 WME-IMG には $2.50 億を投下した。インドは特にお気に入りで,Arora が Snapdeal, OYO Rooms のような事業への投資を率いた。この2社は それぞれ Amazon と Airbnb を目指している。
     SoftBank は 最近,資産を売却し,現金を回収している;これは,従来ならば,大型の戦略的取り引きを開始する序曲である。火曜日には,"Clash of Clans" および その他のモバイル・ゲームを開発した Supercell の過半数株式を 中国の騰訊控股に 約 $86 億で売却する合意に調印した。このほかに,アリババの株も最近 約 $100 億売却した。
     Arora への期待は高かった。グーグルの血統に加えて,異常なほどの高給を得ていた。
     SoftBank での最初の6ヵ月で,Arora は,契約ボーナスを含めて,166 億円を稼いだ。その結果,彼は当時 世界最大の高給取りの1人になった。同時に,ランクの高い人でも比較的報酬が低いことで知られる国 日本で, 最高給を取る幹部の1人になった。
     昨年 彼は 約 80 億円を稼いだ。Arora は 2015 年に SoftBank の株 600 億円相当を買い,SoftBank に対する巨額の個人的な金銭的関与を表明した。
     しかし,賭けのうちのいくつかは失敗した。韓国ビデオ・サイト DramaFever は,SoftBank が投資した数ヵ月後にトラフィックが激減し,SoftBank は買い手を探す羽目になった。
     今年 SoftBank は,匿名の外国株主グループからの批判に対して,Arora を庇った。彼らは,Arora が支援した数多くのスタートアップ企業が竜頭蛇尾に終わったと述べた。彼らは また,SoftBank と取り引きが競合しかねない アメリカの投資会社 Silver Lake に Arora が顧問として在職していることを問題視した。
    "SIMI (SoftBank Internet Media Inc) の CEO としての Arora の投資戦略は,ダーツボードにダーツを投げるのと ほとんど違わないと思われる。" … と 投資家を代表する弁護士が書簡に書いた。"一体,取締役会が 何かせねばならないと 身に沁みて理解するまでに,これ以上 何百万ドルの株主価値が浪費されるのか?"
     Silver Lake の広報担当者は コメントを拒んだ。Arora のような顧問は,一般に PEF の審議への参加は限られており,1ヵ月に Silver Lake で数時間を過ごすだけである。
     SoftBank は 月曜日,投資家の要求を調査するために組織された内部委員会が 利益相反 ないし その他の不正行為を発見しなかったと発表した。とは言え,このエピソードは Arora に対する Son の信頼を揺さぶり,同時に Arora の SoftBank に対する反感を抱かせたであろう。
     "徹底的な審査の後で,取締役会から clean chit が出た。今は 移る時だ。" … と Arora は火曜日 別のツイートで言った。
     Son が支配を放棄するか否かは 常に 未解決の問題であった。
     Arora は,日本人以外の人が,日本の大企業でトップ経営陣の地位に座った数少ない例外の1人であった。SoftBank の権力構造が単純であったために,彼は 官僚主義や文化の障害をあまり受けずに済んだ。SoftBank は,この会社を 1980 年代に創立し 疑いの無い権威を以って回す Mr. Son に始まり Mr. Son に終わる。
     "私の仕事が終わったとは感じていない。" … と Mr. Son は火曜日の声明で言った。
    SoftBank starts and ends with Mr. Son, ・・・
    英語は 字面 (じづら) を読むのではなく,音で読むから,これは
    SoftBanks starts and ends with Mr. Sun, ・・・ ソフトバンクは,ミスター太陽により始まりミスター太陽により終わる ・・・

  74. SoftBank shake up points to tensions
    ソフトバンクの大改造は,緊張を示唆する
    Financial Times,2016/06/21, 07:46 pm
    Leo Lewis & Kana Inagaki (東京)
    日本のテック・グループの総裁の辞任は,社内の摩擦が原因だった。
    SoftBank president Nikesh Arora, left,
    and Masayoshi Son, chairman and chief executive
    今年1月,SoftBank 取締役会は,匿名の投資家グループを代表すると称する (調査で知られた) アメリカの法務会社から 1通の書簡を受け取った。
     その文書は,SoftBank 総裁 Nikesh Arora が率いた過去 18ヵ月の突然の辞任に到るまでの "一連の疑わしい取り引き" を槍玉に挙げ,とくに 国外買収のバカ騒ぎ $130 億に的を絞っていた。
     この書簡に対する SoftBank の公式の反応は冷静であり,この要求を "根拠の無いもの" と呼び,Arora は全ての訴えを否認した。
     しかし,会社に近い人たちによれば,内部の雰囲気は,困った 困った … であった。
     Son は,アメリカの投資家 Warren Buffett の真似をしようとしてきたし,Arora は 日本のテック+通信グループを "テックの バークシャ・ハサウェイ" に転換させるのを助けるのだと自慢していた。
     書簡が来る前から 既に敵意が生まれていたと彼らは言う:Arora は,"離れた" マネージメントのスタイルで知られる;その記録破りの報酬 ── 彼は日本で 過去2年間の最高給の幹部である;2015 年5月,入社僅か1年足らずで後継指名された。
     今年4月,SoftBank 創立者は,Arora に "1000% の信頼" を宣言し,前グーグル幹部が会社のために偉大なことを成し続けることを確信すると言った。
     SoftBank のスポークスマンは,Arora の 18ヵ月の成績は,その投資戦略の成功を評価するのに短すぎると言った。そして月曜日,法務会社の Arora に対する非難は調査に値しないと会社は発表した。
     しかし,何人かの投資家は,これが Arora の社内の立場にダメージを与えたと言う。
     "書簡に書かれた非難は,限定的なものだった。" … と SoftBank にかなりのポジションを1年以上持つ或る投資家は語る。 "しかし,既に厳しくなっていた気候に,書簡がさらに厳しさを加えた。"
     別の投資家は,外国人であることが日本の会社では いつも問題を起こすと言い,日産自動車の カルロス・ゴーンとソニーの前議長 ハワード・ストリンガーを例に挙げた。"会社のトップが日本人でないことは 厳しい。" … と彼は言う。"有名な例はいくつでも挙げられる。重要な日本人幹部から 買われることはとても難しい。"
     Arora の場合には,2重の意味で難しかった:最終的な支配を創立者が握る会社の総裁という立場だったからである。
     Arora は Financial Times に,トラブルの最初の兆候が 浮上したのは 4~6週間前のことだったと言った。カリフォルニア州に拠点を置いている Arora は,そのとき,サンフランシスコの南 [シリコンバレー] のアザートン (Atherton) にある Son の家でディナーをとっていた。
     Son は,それまで 60 になったら手綱を渡すと約束していたが,Arora によると,何回も話を重ねるうちに,SoftBank 創立者が別の考えを持ち始めた。Arora は,いつ引継ぎが始まると用意すべきか,あるいは 辞任の後どうすべきかについて 次第に不安を感じるようになった。
     "所詮は彼の会社である。" … と Arora は言う。"あちらは創業家である。ここは 40 年の間,彼の赤ん坊だった。"
     アナリストらは,2人の関係が 余りにも心地よいものだったために,他の幹部を遠ざけたのだと言う。2015 年にアローラが総裁に昇格した時,Son は2人の関係を "ちょっとクレージーなほど親密" だと形容した。このペアは別れがたくなり,Son と以前 密接に仕事をしていた日本人幹部2名は,翌月 実質的に降格された。
     BNP パリバ証券の主任クレジットアナリスト中空麻奈は,Arora の辞任が発表される前に Financial Times に語った:"Son は,自分が最も信頼できる人として Arora を 紹介しました。それも,日本で活発に働いてきた実業界の人たちを前にしてです。私は そのとき これは緊張を生むのではないかと思いました。"
     日本の SoftBank 従業員は,Arora が賞賛すべき かつ 恐るべき人だと言い,彼の率いる世界チームが,会社の他のどの事業からも完全に切断されているという事実を批判する。"Nikesh が何をやっているのか,我々には全然分からない。" … と1人が言い,Arora は,国内営業に携わっている仲間と関わりを持とうとする 目に見える努力を何もしない … と付け加えた。
     Son と Arora の投資戦略の違いが浮上すると,社内の緊張は高まった。
     Arora の手引きにより,SoftBank は $130 億の買収騒ぎを行なった。その中には,韓国オンライン小売り Coupang への $10 億投資と インドのオンライン・マーケットプレイス Snapdeal への $6.27 億注入がある。
     さらに最近には,中国の配車サービス滴滴出行 (Didi Chuxing) へも,アップル,騰訊控股,アリババと並行して $45 億の投資ラウンドに参加した。
     フィンテク・セクタへも大きな賭けを行なった (従来の多くの銀行より低利で知られるオンライン貸金業のスタートアップ SoFi へ $10 億)
     けれども,これまで支援してきた会社に長期の賭けをするという Son の戦略から外れて,Arora は 日本の大富豪が飛び切り自慢にしてきた複数の投資を売り払った。この中には,アリババ $100 億 とスーパーセル $86 億が含まれる。
     "こんな決断は 従来は絶対にありませんでした。あれは 意見の衝突です。" … と Son と長年働いてきた1人が言う。
     結局,日本の大富豪は 支配を手放すつもりは無かった ── 少なくとも Arora にだけは。
    というわけで,アリババ売却も,スーパーセル売却も 孫さんの本意ではなかった。
    任せられていた アローラさんが勝手にやったことらしい。
     "代表権" を与えたから仕方ない。
     でもまぁ,そういう人をグーグルから連れてきたのが孫さんなんだからね。

  75. SoftBank’s Arora Steps Down as Son Chooses to Stay in Charge
    ソフトバンクの Arora は,Son が続投を選択したため 退任する。
    Bloomberg,2016/06/21, 08:50 pm JST
    By Pavel Alpeyev, Yuji Nakamura & Takashi Amano
      総裁は,Supercell の契約が完了後に退任する。
      何人かの株主は,Arora の実績を問題にした。
     SoftBank の法定相続人と見られていた Nikesh Arora は,近い将来トップの座を得ることは無い … と創業者 Masayoshi Son が明言したことを受けて,サプライズ辞任して日本の会社を退社する。
     前グーグル幹部にして世界最高給取りの幹部の1人は,顧問として残る。Arora は数年後に引継ぎを受けることを望んでいたが,異なる時間軸が火曜日の辞任に到り,Son 議長は 引き続き会社を率いる計画である … と会社は発表した。
    Masayoshi Son and Nikesh Arora, left.
    Kiyoshi Ota |Bloomberg)
     Arora を自分の 後継者と呼んでいた Son は,自分がコンピュータ・ソフトウェア配給会社から日本の大手通信会社 兼 投資持ち株会社に育てた 自らの会社の支配を保持することを望んだ。Arora の退任は,株主による彼の実績と資質に対する批判 ── これを SoftBank は 今週 根拠の無いものであると呼んだ ── とは無関係であると 彼は言う。
     "これには,砂糖をまぶすことなんかできない。これは,不統一 (disunity) を示す。" … と BGC Partners Inc の日本株販売マネージャ Amir Anvarzadeh が言った。"Son が その事業を回す責任をどれだけ彼 [A.] の手に置いていたかを考えれば,彼がそこにいなければ,株価が騰がるなんて誰にも言えるとは思わない。"
     Son は,$102 億に評価された Clash of Clans の開発会社 Supercell Oy の過半数株を売却する 火曜日の取り引きで中心的役割を果たすよう Arora 総裁に任せていた。
     Arora の退任は,SoftBank の世界展開に打撃となろう。彼は グーグルに 10 年いた後,2014 年に SoftBank に雇われ,昨年6月に総裁に昇格した。以来,彼は SoftBank 内で独自の作戦本部 ── 世界中のテック企業の株を買収する投資部門 ── を打ち建てた。
     "私は永久に若いつもりだ。いつもそう考え続けたいと思っている。体力に自信が無くなるまでやり続けたい。 そして,定年の日が近づけば近づくほど 舵取りにしがみつき続けたくなる。" … と,Arora が笑みを浮かべる中で Son は言う。"Nikesh が 当惑しているのはどうにも困ったことではあるが,自分の感情を抑制したままにするのは良くないだろう。"
     SoftBank は何十年ものあいだ,ドットコム破産時代の無秩序な進出も含めて,スタートアップ企業に金を注ぎ込んできたが,この努力が近年では,Son 自らが 無線とブロードバンドに続く "趣味" と呼ぶものに矮小化した。Arora は,ベンチャー精神を復活させ,大きな野心をこれに注ぎ込んだ。
     Arora は 次なる (2014 年に世界最大の株式公開を行なった) アリババ集団の探索を率いた。SoftBank は,アリババの筆頭株主である。
     Arora は 先頭に立って,インドの E-コマース・プロバイダ Snapdeal,配車サービス Ola Cabs,不動産ウェブサイト Housing.com,ホテル予約アプリ Oyo Rooms に投資した。昨年 10 月には アメリカに拠点を置くオンライン貸金業 Social Finance Inc への $10 資金調達ラウンドを率いた。
     しかし,SoftBank の株価は下がった;1つの理由は,まずい助言に基づく投資と,赤字続きの Sprint Corp にあった。今年,アメリカの投資家グループが SoftBank 取締役会に Arora の調査と 場合によっては解任を 鋭く厳しい 11 ページの書簡により要求した。彼らは,Arora が PEF Silver Lake の上級顧問の職にあるので,SoftBank と利益相反状態にあるのではないかと問うた。
     SoftBank が支配する Sprint 取締役会への別の書簡は,同様の理由により取締役の解任を要求した。この訴えを調べるために招集された特別委員会は,彼らの主張が根拠の無いものであると結論した … と SoftBank が月曜日に発表した。
     "自分の気持ちに整理をつけずに バトンを渡せば,あとでひどいことになる。だから,正直に Nikesh と話すのが一番良いと考えました。" … と Son は東京の記者団に語った。2人は この数週間 よく ハドルを組んだとも言った。
     Arora は自分の金を SoftBank のために賭けている:彼は,SoftBank 株 600 億円相当を買うために,かなりの借金をした。彼が買った株は,損が少し出るが Son が買ってくれる … と Arora は言った。
     Arora がどこへ向かうかは不明である。

  76. SoftBank gives clean chit to Nikesh Arora following allegations of questionable performance
    ソフトバンクは,業績が疑わしいとの非難を受けたニケシュ・アローラに「clean chit」を 与える。
    EconomicTimes,2016/06/20, 07:55 pm IST (インド標準時)
    By Biswarup Gooptu & Aditi Shrivastava
    SoftBank が言った,"特別委員会は,Arora の SBG 在職中の行為に関する主張を根拠無しと結論した。"
     SoftBank は,独立 [=社外] 取締役により構成された特別委員会が 前グーグル幹部に対する訴えの調査を完了し,訴えが根拠なしと認めたことを受けて,総裁兼 最高執行責任者 (COO) Nikesh Arora に clean chit を与えた。
     月曜日の声明で,東京に本社を置く通信, メディア, インターネットのコングロマリットは,"特別委員会は,SBG 在職中の Arora の行為に関する主張を根拠なしと結論した。" … と発表した。
     発表によれば,特別委員会は今年2月に発足し,Shearman & Sterling LLP および アンダーソン・毛利・友常法律事務所の顧問団の助けを得て審査を実行した。
     "これらの訴えが最初に公表されたときに申し上げた通り,私は Nikesh に完全な信頼を置いており,特別委員会が これらの主張を徹底的に調べ,根拠無しと結論したことを 私はうれしく思う。" … と SoftBank CEO Masayoshi Son が言ったと 声明は引用している。
     この展開は,5ヵ月前に ニューヨークに拠点を置く法務会社 Boies Schiller & Flexner が名前を明かさない SoftBank 株主を代表して,Arora の任命にしかるべき注意を払わなかったと SoftBank を非難した時に始まった。Arora は,"一連の疑わしい取り引き,お粗末な投資成績 および 利益相反" により有罪であると彼らは非難した。
     この書簡の内容は 今年4月になって初めて公表され,Arora が昨年 $4.83 億相当の SoftBank 株式を購入した決断にも疑問を投げ掛け,彼の業績に関する懸念を宥めるために会社がやっている仕業だと呼んだ。
     Son の法定相続人と広く見られている Arora は,世界最大の高給幹部の1人である;2014~2015 年には,約 $1.35 億の報酬を受け取った。彼は 2014 年にグーグルから SoftBank に加わった。グーグルでは,最高事業責任者だった。
     SoftBank 取締役会への書簡は,インドのスタートアップ企業である オンライン市場 Snapdeal と不動産ポータル・サイト Housing.com への SoftBank の投資にも疑問を投げかけていた。Arora が SoftBank に加わって以来,SoftBank は インドのテック関連ベンチャーの最大の擁護者になった。その投資には,配車アプリ Ola と オンデマンドの食料雑貨配達会社 Grofers が含まれる。
     "Nikesh に関する疑問が根拠なしという結論で完了したことに 我々は全く驚かない。" … と Housing.com の Jason Kothari は EconomicTimes に語った。"Nikesh とそのチームは,Housing.com にとって,計り知れないほど貴重な師でありサポーターであり,偉大な時も困難な時も うしろから 我々を成功へと導いてくれる。"
     匿名の投資家を代表して書かれた書簡は,オンライン市場 Snapdeal に投資することが賢明であったかどうかを問題にした。
     今年4月,Snapdeal の CEO Kural Bahl は,Arora への非難に答えて ツイートした。"この世界で @nikesharora を投資家として迎える企業家は幸運である。"
    clean chit = (India) A (usually verbal) certificate of exoneration given by law enforcement agencies to suspects in a crime.
     インドの英語で使われるらしい:犯罪容疑者に対して警察などが容疑が晴れたことを伝える (通常は 口頭による) 証明 … とか。

  77. SoftBank Board Finds No Merit to Investor Questions About Arora
    ソフトバンク取締役会は,アローラに関する投資家の質問に根拠を認めず。
    Bloomberg,2016/06/20, 09:43 pm JST
    By Peter Elstron
      特別委員会は,外部顧問による調査を実施した。
      投資家の書簡は,Arora の資質を問題にしていた。
     SoftBank Group Corp の取締役会は,Nikesh Arora 総裁に関する株主訴状の審査を完了し,要求が根拠の無いものであると結論した。
     取締役会の特別委員会は,Shearman & Sterling LLP および アンダーソン・毛利・友常法律事務所の顧問団の助けを得て,数多くの書簡で取り上げられた非難を調査した … と同社が月曜日に声明で言った。SoftBank は, これらの書簡が "氏名不特定の SBG および Sprint Corp 株主の利益を代表すると称する" 法務会社から来たと言った。
     この投資家グループは,取締役会に Arora の調査と 場合によっては解雇を要求し,11 ページに渡る書簡で彼の経歴と資質を問題にしていた。この非難は,Arora が,PEF Silver Lake の上席顧問の役職にあったので,SoftBank と利益相関関係にあるのではないかと問うていた。
     この書簡が4月に初めて公表されたとき,SoftBank は Arora を擁護した。最高経営責任者 Masayoshi Son は,Arora に "1,000 % の信頼を置いている" … と言った。
     会社から突然の広報が出ました。
     これで ようやく始まった … ということでしょうかね。
     Boies が諦めない限り,何年掛かるか分からない。この2つの法務会社は,さぞかし大喜び。
     もちろん,裏で手打ちが済んだので,これが出た … という可能性もあります。
     Boies のサイトは無反応。
    念のために ソフトバンク発表の英文の声明を収録しました。 SPECIAL COMMITTEE OF SOFTBANK BOARD OF DIRECTORS COMPLETES REVIEW OF PURPORTED SHAREHOLDER CLAIMS
     June 20, 2016 (TOKYO, JAPAN) – SoftBank Group Corp. (“SBG”) today announced that a Special Committee of independent members of its Board of Directors (“Special Committee”) has completed its review of allegations regarding SBG President and Chief Operating Officer Nikesh Arora in a purported shareholder demand. The Special Committee has concluded that the claims concerning the conduct of Mr. Arora during his tenure at SBG are without merit. The allegations had been raised in a number of letters from a law firm which claimed to represent the interests of certain unidentified SBG and Sprint Corporation shareholders.
     The Special Committee was formed in February of this year. It conducted its review with the assistance of independent counsel at Shearman & Sterling LLP and Anderson Mori & Tomotsune.
     About the SoftBank Group
     The SoftBank Group is a global technology player that aspires to drive the Information Revolution by supporting disruptive entrepreneurs. The SoftBank Group is comprised of the holding company SoftBank Group Corp. (TOKYO:9984) and its global portfolio of companies, which includes advanced telecommunications, media and Internet services, robotics and clean energy technology providers. To learn more, please visit softbank.com.
    こちらは,日本語による声明。
      当社取締役会の特別調査委員会 株主と見られる方からの申し立て内容に関する調査を完了
     本日,当社の取締役会の独立役員で構成される特別調査委員会が,当社代表取締役副社長であるニケシュ・アローラに関する株主と見られる方からの申し立てについて,要請に基づき調査を行ない完了しましたのでお知らせします。特別調査委員会は,当社の在任期間におけるニケシュ・アローラの行為に係わる本申し立てについて,評価するに値しないとの結論に至りました。本申し立ては,当社と米国スプリント・コーポレーションの特定株主の利益を代表していると自称している米国の法律事務所からの複数の書簡で提示されたものです。
     特別調査委員会は,今年2月に組成され,独立した法務顧問としてシャーマン・アンド・スターリング法律事務所とアンダーソン・毛利・友常法律事務所の協力を得て,調査を実施しました。
    ──────
    ほとんど同じですが,
     (1)「要請に基づき」は,英文に無い。
     (2) 書簡の数が,日本語では「複数の書簡」となっているが,英語では「a number of letters」(数多くの書簡) と書かれている。
    ──────
     ところで,こういう場合,これだけでは ぜ~んぜん不十分だという声が挙がらないのが おかしい。
     [1] 特別委員会の報告書を全文公表する (これにより特別委員会の名簿が判明する)。
     [2] 特別委員会が会見を行ない,委員長が記者団の質問に答える。インドやアメリカまで委員が行って調べたのか … なども。
     つまり,こんな紙切れ一枚では疑惑は晴れない。何をどこまで調査して結論したのかが不明である。
     舛添要一前都知事と同じことをやらなくちゃ(笑) 疑惑は晴れない。いゃ 舛添さんは,やっても晴れなかったんだからね。
     コーポレート・ガバナンスがどうのこうの … なんて文書をいくら出しても,やってることがこれでは,言行不一致の見本のようなものだから無意味である … というか逆効果,笑いものになる。こういう点は,特に外国から厳しい目が向けられて当然である。もちろん,ソフトバンクだけの問題としてではなく,日本の企業一般の透明度が低いという観点からです。

  78. Robots are getting more and more capable, but the novelty is wearing thin
    ロボットは,ますます有能になるが,物珍しさは薄れる。
    Nikkei Asian Review,2016/06/02, 12:00 pm JST
    By Narimi Kisimoto, Nikkei staff writer (東京)
    "お時間ある? おしゃべりしようよ!" … ペッパーは,派遣会社ネオキャリアの東京のオフィスで従業員に話し掛ける。だが,職員はコンピュータ・スクリーンに目を向けたままである。"お話をしてあげようか? そぅ,どうでもいい ・・・ 。" … ペッパーは 懲りずに続ける。
    東京新宿の派遣会社 ネオキャリアのほとんどの従業員は,
    ヒューマノイドの仲間ペッパーと話すのも 相手をするのもやめてしまった。
    Photo: Hiroshi Endo)
     孤立したロボット
     日本の通信 & 情報技術コングロマリット SoftBank Group が開発したヒューマノイド・ロボットは,昨年10月に ネオキャリアに "入社" して,広報部門の田村エリナと仲良くなった。ペッパーがクイズを出したりゲームをしようと言うと,エリナは 仕事中でも 優しく応答した。"たぶん,ペッパーは彼女の笑顔を認識したので,オフィス中で彼女を追い掛けていたのでしょう。" … と PR 部門のマネージャ竹内洋子が言った。
     そして 3月,エリナが産休に入った。"ペッパーは,オフィスの片隅で ひとりぼっちで歌を歌っていました。" … と武田は言う。"ペッパーが最初に来たとき,誰もが とても注目しました。けれど 最近では,そんなことはありません。" … このロボットは 本来,会社の従業員の仕事を助けるために導入されたのである。
    マツコドロイド。日本の TV パーソナリティ マツコ・デラックスを
    モデルにした等身大のヒューマノイド・ロボットが札幌市の PR 大使になった。
    マツコドロイド・プロジェクト 提供)

     マツコドロイド
     ペッパーとは違って,マツコドロイドは,休みを取る必要がある。実際 彼女は いつかは休もうとする。日本の 人気テレビ・パーソナリティ マツコ・デラックスの等身大のロボットは,本物のマツコと共演して日本テレビ放送網で放映された トークショーの共同司会者だった。この番組が昨年9月に終わって以来,マツコドロイドは,芸能事務所ナチュラルエイトの "従業員" として多忙を極めた。
     "彼女は,札幌市の広報大使を務め,プロクター&ギャンブルの TV コマーシャルに出た" … と 日本の大手広告代理店 電通の マツコドロイド担当プロモーター 岸 英輔が語る。
     旅行と戸外のイベントが 彼女の "肌" を痛めた。これが 彼女の周りの人たちを いささか驚かせた。なぜなら, ロボットに 肌の問題が生じるなどと考えた人は ほとんどいなかったからである。彼女は いま,東京の北の埼玉で休んでおり,インタビューも断られた。なぜなら 彼女は いま "メーキャップしていないから" … と岸が説明した。
     それでも,申し込みは途切れない。マツコドロイドは,早くも秋には復帰するかもしれない … と彼は言う。
     外国でも可愛がられるアイボ
     日本のロボットは,海外でも可愛がられている。53 歳のアメリカ人 Robert Wagoner は,ソニーが開発した犬ロボット アイボの大のファンである。彼は,ソニーが販売した 1999 年の初代モデル以来,全てのモデルのアイボを持っている。
     今では 息子の Andrew と一緒に,ソニーがサポートをやめている初期のアイボも保存しようとしている。彼らは,互換性のある電池がもう入手できない古いアイボを充電できるバッテリー・パックを開発するプロジェクトを立ち上げた。"時が経てば経つほど,たくさんのアイボが手当てを必要とするようになる。" … と Andrew は語る。"我々は,全ての人に アイボで人生をやり直すチャンスを与える人間になりたい。"
     親子は,アイボ・バッテリー・プロジェクトのためにクラウド・ファンディングを計画している。
    アイボ修理会社 ア・ファン社長 乗松伸幸が,犬ロボット アイボと遊ぶ

     アイボを修理する
     日本に話を戻すと,乗松伸幸は,アイボと遊ぶのを楽しむ。"お手!" 61 歳になる 東京に本社を置くエレクトロニクス修理会社 ア・ファンの社長は,電子ペットを しつける。しかし,このロボットは その技を学んだことがないらしく,電子音を発しながら,オフィスの中をうろつき回るだけである。
     それでも,乗松は喜んでいる。"この気楽に振る舞うライフスタイルがたまらない。" … と彼は ほほえみながら言う。
     乗松は,ソニーの元従業員である。彼の今の会社は,アイボの所有者から修理の依頼を 数多く受けてきた。今でも 修理待ちのアイボが 500 もある。"持ち主がアイボをどんなに好きかよく分かります。" … と1人の修理工が言った。
     2015年1月以来,乗松は 亡くなったアイボの集団葬儀を主催してきた。葬儀では,健康なアイボが追悼の辞を述べ,僧侶がお経を読む。今年の夏には,第4回の葬儀が行なわれる。
     日本は これまで 多様なロボットを作ってきた。それらは世界中の多くの人に愛されている。しかし,初期の熱意は 竜頭蛇尾に終わろうとしているように見える。
     運よく,ネオキャリアのペッパーは新しい友人 吉田千恵を見つけた。ペッパーは千恵との話にワクワクするらしい。"チエ-チエとの今日の話は とっても楽しい!" … とペッパーは,絵日記に書いた。このロボットは,いま 受付係として訓練を受けている。
    千葉の興福寺で 僧侶がアイボの集団葬儀を行なう。
      こういう見事な記事を 日経は英語だけで出す。
      ここに書かれているペッパーの様子は,私の実体験と完全に一致する。すなわち, 「遊んでくれ」とせがむしか能が無い。業務の手伝いには全くなっていない。
      正確に言えば,業務を妨害するロボットである。
      「月給 55,000 円で働きます」と宣伝しているが,仕事の邪魔になるものに,どういう会社が金を払うんだろ?
      孫さんは,なぜこんなもの (ロボットなんて呼べない代物) を売り出したのか,不思議である。ソフトバンクの AI とはこの程度 ・・・ という宣伝をしている。この記事もその宣伝になっている。

  79. ソフトバンクが 2016/06/02 に EDINET へ提出した変更報告書
    【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役社長 孫正義
    【住所又は本店所在地】東京都港区東新橋1丁目9番1号
    【報告義務発生日】平成28年5月26日
    【提出日】平成28年6月2日
    【提出者 および 共同保有者の総数】4名
    【提出形態】連名
    【変更報告書提出事由】 当該株券等に関する重要な契約の変更
    【発行者に関する事項】
     発行者の名称 ヤフー株式会社,証券コード 4689
      (6) 【当該株券等に関する担保契約等重要な契約】
     提出者,ヤフーインク および SBBM株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数2,071,926,400株のうち,合計570,368,100株について契約期限を2016年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    久しぶりに EDINET に行ったところ,6月2日づけで上のような報告書が出ていました。
     『 ・・・ 合意がある。 ・・・ 』のところは,つながってるんでしょうね。
     要するに ソフトバンクが持っている Yahoo Japan 株 20.7 億株のうち 5.7 億株を「スレンダー」とかいう名前の訳の分からない会社に 半年間 貸し出した … ってことですね。Yahoo Japan の株価は \500 くらいだから時価 \2,850 億円になる。これで,半年の短期資金 ~\2,000 億円を用意した。
     株主総会を前に慌ただしいお化粧のご用意でございます。はい。
    ──────
    ・・・ と思ったら,5月9日にも同様の報告があったのを見落としていました。こちらは 4.3 億株です。
     合計すると 5.7 + 4.3 = 10 億株 ピッタリ,期限も同じ。しめて 概算 5,000 億でした。
     掛け目を考えると 8掛けの8掛けが相場らしいので,ざっと \3,000 億を用意なさったようです。
     株主総会を前に慌ただしいお化粧のご用意でございます。はい。
    ──────
     2月に孫さんが ご自分の SoftBank 株を貸したときは,名前の知られた金融機関が相手でした。
     今回 Yahoo Japan について 同じことができないのは なぜか?
     「一般社団法人 スレンダー」とは何者か?
     知らない人は,ウェブで検索しましょう「一般社団法人 スレンダー」ですよ。
     それにしても,なぜ 普通の金融機関を使って レポ取り引きをしないのか? 分かりません。
     一般投資家は,何も こんな銘柄に手を出さなくても,まともな銘柄は いくらもあります。
     日経は今回も報道しない。1兆円の行き先を騒いでいる。おかしいよ,日経。
     金額がね。時価にして 5,000 億円超だよ。何に使うのかね?
     まぁ,1兆円も金が余ってどうのこうのと日経が騒いでいるのは表の顔で,現実には,ソフトバンクは金回りで相当困っているのでしょう。でなきゃ,こんな大金を必要とするはずが無い。
    ──────
     1つ当てずっぽうを言えば,スプリント買収で借りた 1.98 兆円の繰上げ返済でしょうか。
     あの融資は かなりヤバイから,なるべく早く返済したい。でも,この低金利の世の中で交渉が難航しているのか。
    ──────
     【5月9日届け出】
     提出者,ヤフーインク および SBBM株式会社間で全保有株式につき,提出者を一方当事者とし,ヤフーインク および SBBM株式会社を他方当事者として相互に相手方に先買権を付与する合意がある。保有株式数2,071,926,400株のうち,合計429,717,700株について契約期限を2016年11月28日までとする「株式等貸借取引に関する基本契約書」等に基づき,一般社団法人スレンダーに貸出しています。なお,当該貸借株式の名義 および 議決権は,提出者 (ソフトバンクグループ株式会社) が保有しております。
    ──────
    [2016/06/06] なになに,今度は「ソフトバンク系,AI で稼げる農業指南 青果の値動きなど予測」
     ほんとにまぁ。確か この前は 教材作り … ってのがありました。
     これができるんだったら,キャベツ,白菜の農家は どんだけ喜ぶか!
     AI がそんなにすばらしいんだったら, 「最高の助言」を伝授いたしましょう。
     孫さん以下 脳無しで赤字を出す役員は 即刻全員解雇!代りに ペッパーくんを社長にします。
     社員全員は,ペッパーの命令に背いた場合には,直ちに解雇します。
     これで どうだ! (笑) スプリントの挽回は明日から順調に始まり,プロモーションは全て大当たり,ヘボ社長の宣言する2年なんか掛からない。あれよあれよと言う間に 黒字転換だ!
     要するに人工知能なんてものは,囲碁とか将棋のように ルールがきめ細かく決まっていれば判断できる。けど,灌漑とか天候とか地質・土壌改良とか農薬とか産品とか温室用石油の相場の見通しとか市場の嗜好変化とか道路状況とかトラック業界の事情とか野菜の種類によっては韓国・台湾の輸入もあるからそちらまで … ドローンを使って調査しても,何ヵ月も先まで AI くんが読めるのかね? ルールで決まっているわけではないよ。農業指南なんてアホらしい。外れた場合のリスクは,ソフトバンクがどれだけ被るのか? 契約書にきちんと細かく書いてあるんでしょ? なにしろ AI くんは,リスクの計算も得意なはずだから。
     反対だよね。地元で何十年も農業をやっている人から AI くんがご指南いただいて,そういうことが可能かどうかを 時間を掛けて 何年も地道に調査させていただくものでしょう。そうやって AI くんの実績を数字で出して,これなら確実に利益が保証できる … と (できるわけなんだけどね,地震もエルニーニョもあるから) そこまで やったの?
     ホントにダメな会社だね。推測すると,AI の専門家を自称する孫社長が旗を振っているので,社員はやらざるを得ない。下の人たちは困っているでしょう。ソフトバンクの面汚しの原因を増やすだけです。つまり,AI の エセ専門家であることを (もう十分広まっているとは思うが) さらに拡大させるだけ。やらない方がマシ。しかたないよね。ホントの専門家ではないんだから 分からない。ひょっとして 単なるソフトウェアを AI だと誤解してるんじゃないの? 農家としては,ノーハウをソフトバンクに渡すより,他の農家に売る方がよほど儲かるでしょう。
     「皇帝の新しい服」 ・・・ 日本語よりも原題の方がぴったりだね。アンデルセンさん。AI という新しい服にほれ込んじゃった皇帝さんだ。
     こうまで 社長がおかしい会社の運命は ・・・.。
     みなさま,良いおとうしを。

  80. SoftBank Investors Call for Internal Probe of No. 2 Arora
    ソフトバンクの複数の株主が,ナンバー2 アローラの内部審査を要求。
    Bloomberg, 2016/04/21, 16:01 JST;改訂版 2016/04/22, 06:44 am JST
    Peter Elstrom & Pavel Alpeyev
      複数の株主が,ソフトバンク取締役会に書簡 (複数) を送った。
      ソフトバンクは,アローラが何も不正を行なっていない,新しい情報は無いと言う。
     SoftBank Group 投資家のグループが,同社の2番目の支配者 Nikesh Arora を調査し,場合によっては解任することを取締役会に求めた。鋭い批判を述べた 11 ページの書簡は,彼の実績と総裁 ならびに 大富豪創立者 Masayoshi Son の後継者としての資質を問題にしている。
     この要求は,SoftBank 取締役会宛に アメリカの法務会社 Boies Schiller & Flexner から 1月20日づけで送られた書簡の形を取っており,ニューヨークのエリート法務会社のパートナーである Mathhew Schwartz がサインしている。ただし,株主の名前は特定されておらず,株数も不明である。
     Arora に対する批判は,これまで公表されていなかったが,Silver Lake PEF の上席顧問の役を務めていることにより利益相反状態に Arora 幹部があるのではないかと疑問視している。このほか,彼が過去に不正 (wrongdoing) に係わり,かつ 一般にお粗末なビジネス判断をしたと指摘している。これとは別の書簡が 1人の投資家から Sprint 取締役会宛に送られ,こちらの方は 同じ理由により Sprint の取締役の解任を要求している。
     これらの非難に加えて 投資家らは,"報道によれば お粗末な投資成績と一連の問題ありの取り引き" を批判する。"これらの問題にも拘わらず,SoftBank 取締役会は,会社に如何なる達成実績も持たない Mr. Arora を世界第3位の報酬を得るにふさわしい幹部と考えた。" … と Schwartz は書いた。
     これらの投資家は,SoftBank と Sprint の両取締役会が,独立会社により "内部調査を実施する" ことを要求している。"独立な調査を実施すれば,SoftBank と Sprint の取締役会は,Mr. Arora を幹部 および 取締役の地位から解任する (誰もが認めざるを得ない) 根拠を確立するだろう。"
     SoftBank は,Arora が何か不正を行なったことを否定し,この書簡を "未確認の株主" から送られた "根拠の無い非難" と呼んだ。東京に本社を置く会社は,Arora の投資判断に 利益相反の可能性があれば調査を行なっており,彼の業務を完全に信頼していると言った。さらにまた,取締役会は この書簡をレビューしているところであると言う。"私は Nikesh を完全に信頼している。1000 % 信頼しており,将来 SoftBank のために偉大なことをやり続けてくれることを知っている。"… と Son は声明で言った。Sprint は コメントを拒否した。
     Arora は,グーグルから SoftBank に来て以来,SoftBank を助けるのに頑張っており,利益相反を招きそうな情報は 注意深く共有してきたと言う。"私の実績がすべてを物語ると思う。" … と彼は言う。"SoftBank に来てから この 18 ヵ月,私は いつも SoftBank 第1に考えるよう努めてきた。書簡のコメントは,いずれも 事実の裏付けを欠くものである。"  さらに彼は,Silver Lake での顧問の役目は,今の契約が切れれば 終わりにすると言う。
     投資家らは,シリコンバレーで 大きな成功を納めた1人の幹部を目標にしている。48 歳の幹部は,SoftBank のスターと見なされている。検索の巨人グーグルで Arora は 10 年働き,販売担当の幹部にまで上り, 後に最高ビジネス責任者になった。そして 2014 年にソフトバンクに入り,約1年後に総裁に昇格した。58 歳の Son は Arora を,彼を継ぐ可能性が最も高い候補者と呼んだ。
     Arora は,SoftBank の将来について 物凄い個人的な賭けをした:昨年8月,彼は SoftBank の株 \600 億を買うと発表した。当時の為替レートで $4.83 億である。これは,少なくとも過去 12 年で 日本の経営幹部が行なった最大のインサイダー取引である。
     "Nikesh の投資成績の粗探しは,まったく恣意的に見える。" … と Jefferies Group のアナリスト Atul Goyal が言う。"私は Masa の判断を信じたい気持ちがする (inclined to trust)。Nikesh は株を買うことにより,SoftBank へのコミットメントを既に示している。"
     SoftBank 株は 昨年,2つの大切な持ち株 Sprint とアリババ集団のためにやられたが,株価は \5,000 億の自社株買いを発表した 2月15日以来 ほぼ 40% 戻った。Arora が SoftBank に入社して以来では 約 20% 下がっている。
     この書簡が木曜日に 公表されてから 株価は 5% ほど下がったが,引けにかけては 4% 高の \6,088 をつけた。
     スイスの投資家 Nicolas Giannakopoulos
     Arora に挑戦している投資家の1人が,46 歳のスイス人 Nicolas Giannakopoulos (ニコラ・ジャンナコプーロス,[長い名前は面倒なので,以下 ニコラとする] ) である。彼が言うには,自分の会社は SoftBank と Sprint の株を $100,000 よりちょっと多く持っている。ニコラは,Arora の倫理性が腹立たしいと言い,取り引き形成のこれまでの経過を私利的であると評する。"これは, この世に居所が無い類の人間であり, マネージャである。" … と二コラは言う。
     二コラは,自分以外の投資家の名前や,投資家グループの大きさ,持っている株数 については何も言おうとしなかった。彼は,Boies Scheller のサービスに 持ち分相当の手数料を払っていると言う。この法務会社のパートナー David Boies は,アメリカ司法省のマイクロソフトに対する訴訟を率いた。また, 2000 年の大統領選挙の結果に対する Al Gore 候補の最高裁判所訴訟も率いた。他の投資家も その株数に応じて 法定の手数料を払っている … と二コラは言う。
     Boies Schiller の弁護士 Schwartz
     Boies Schiller の弁護士 Schwartz は,自分が送った書簡に SoftBank から返信が無いという。"我々は 次のステップを 積極的に検討中である。" … と彼は言う。送付した書簡には,もしも 両社の取締役会が 調査すると 60 日以内に発表しなければ,投資家らは (法的アクション ならびに 政府規制当局にこの情報を伝えるなどを含む) 他の救済手段を追求するつもりである … と記載されている。その 60 日の期間は 先月 終わった。
     この書簡は,3つの幅広い分野について懸念を挙げて非難している:
     (1) Arora が SoftBank の利益に自分の個人的利益を優先させているという利益相反。
     (2) SoftBank のための投資の成果が お粗末である。
     (3) 会社が十分な開示無しに払っている過大な報酬。
     利益相反の非難は,Silver Lake での上席顧問としての Arora の役割に集中する。これは,Arora がグーグルに勤めていた 2007 年以来 就いている地位である。書簡は,Arora が,SoftBank のために行なうと想定される投資と似たようなテック企業投資で Silver Lake を助けることにより,Silver Lake から報酬を得ていると強く主張する。"この一人二役は,SoftBank の損害の下に Silver Lake に利する可能性がある。" … と Schwartz は書いた。
     Silver Lake
     SoftBank は,Arora と Silver Lake との係わりを承知していると言い,利益相反の可能性を徹底的に調査すると言う。もしも 投資が問題を含む可能性があれば,それは Son を含むトップ経営陣が吟味する。SoftBank は,Arora の Silver Lake 顧問としての地位に 安心しており,SoftBank は その係わりから利益を得ていると言う。Silver Lake のスポークスウーマンは,コメントを拒否した。
     Arora は,Silver Lake との係わりは,SoftBank に来て以来,ほんの僅かなものであり,Silver Lake から得る情報は,特定の投資の可能性について知る必要があるものに限られると言う。彼は,昨年 この地位で過ごした時間が 合計 10~20 時間であると言う。
     投資家のこの書簡は,Arora の投資実績が ずっと 正当なデューディリ無しで行なわれてきた "パッとしない" ものであると強く主張し,具体例を2つ挙げる:SoftBank のオンライン・ビデオ・サイト DramaFever への投資と,インドの Housing.com という名前の不動産ポータルへの投資である。書簡によると,どちらの場合にも,投資先のスタートアップ企業は SoftBank が金を入れると まもなく トラブルに陥った。
     SoftBank は,Arora が SoftBank を率いて支援するスタートアップ企業の事業は その性質上 リスクが高く, 失敗を予想すべきものである。トラブった2つの例を取り上げて,全体の成功率について何も言っていない … とSoftBank は言う。SoftBank は,Arora の戦略に満足しており,彼が支援した他のスタートアップ企業は,インドの Snapdeal を含めて,成功したと言う。
     "18ヵ月で投資実績を評価するのは 全く早過ぎる;SoftBank は,長期投資家である。" … と SoftBank のスポークスマン Paul Kranhold は言う。
     Arora 自身も,彼のチームの投資ポートフォリオがどうこうと判断するには早すぎると言う。スタートアップ企業が困難に陥れば,自分は 素早く行動を起こして対処し,前進させてきた … と彼は言う。
     書簡に取り上げられている懸念の3番目は,Arora の報酬である。昨年6月 SoftBank は,彼が働いた前会計年7ヵ月分として,\166 億を支払うと発表した。これは 当時の日本では 最高給であった。書簡は,この報酬を,彼が SoftBank に来て以来 株主が何の利益も得ていないことを考えれば,"驚くべきものであり,許されるべきではない" と呼んだ。
     SoftBank は,Arora のスキルと経験を考慮すれば,この報酬が理に適ったものであると言う。さらに,この支払の一部は,契約ボーナスであるとも言う。幹部が会社を移る時には,前の会社から株式オプションを支払われるのが普通である。グーグルを離任する前の最後のプロキシ・ステートメント (株主総会資料) によれば,Arora は,権利未行使の グーグル株の ストック・オプション および その他の有価証券 $0.76 億超を 2013 年末に所有していた。
     "動かぬ証拠が無ければ,アナリストのコミュニティも投資家のコミュニティも おそらく これを却下するだろう。" … と Goyal はこの書簡のことを言う。"陪審は まだ いない。だが おそらく Masa Son は Arora について正しい判断をした。"
    [2016/04/27] 今朝の新聞にパナマ文書関連として数社が挙がっており,その中にソフトバンクの名前が見える。
     そこで,改めて Boies からの書簡を読み直した。すると,p. 8 に 次のような記述が見られた。
     『報道は,Mr. Arora が インドでの Snapdeal のような投資に コンサルタントとして Baer Capital の共同創立者 Alok Sama の助力に頼ったことを伝えている。Mr. Sama の手数料は,Kensington Capital International という名前の会社を通じて支払われたとのことである。これは,英領バージン諸島 (BVI,例のパナマ文書関連?) を拠点とする会社であろう。BVI に本社を置く法人を利用してインドでの取り引きを取り決めることは,懸念を呼ぶ。』
       ・・・ となっており,Arora さんが インドでの取り引きに 英領バージン諸島に設立された会社を利用して税金回避行動を取った可能性が高い。
    ──────
    [2016/05/10] 予告通り パナマ文書関連の発表があった。
     時事通信 (2016/05/10, 05:23) によると,
       ソフトバンクは取材に「中国企業の要請で出資したが,撤退した」と答え ・・・
     と書かれているので,インドは別件らしい。
    [2016/05/10+] ソフトバンク社長「私も驚いた」← 白々しいね。
     隅から隅まで この書簡を英語で読んだはずでしょう!
     それに Goldman Sachs などの顧問は,虱潰しに書簡を調べる。
     嘘をついてはいけない。こういうふうに1回嘘をつくと,次にもっと大きな嘘をつかざるを得ない。
     以後これを繰り返すと,ますます大きな嘘をつくことになる。結果として,身動きが取れなくなる。
     Boies 書簡を読めば,誰でも分かることです。
     さては,たくさん集まった記者さんの中に 書簡原文を読んだ人は1人もいないのか?
     全員 Bloomberg の英語版/日本語訳で済ませたのか? ひどいもんだ。
     もっとも,あの書簡原文は,ちょっと見つけにくい所にあって,Bloomberg もリンクを貼っていない。 当ウェブサイトもちょっとした努力と ちょっとした偶然で見つけた次第です。
     でもね,メディアのプロなら1次資料が大事ってことは 知ってるはずなのにね。メディアがこうまで腐っていれば,どうしようもない。
    ──────
    あと,こういうニュースでなぜ ソフトバンクの孫さんが決まってトップに出るか なんだけど … なぜなんでしょ?(笑)
    内容としては,大したことではなさそうだ。
     ただし,相手が悪い。
     日本語訳 (2016年4月21日 14:27 JST)では省略されているが,アローラさんがスイスの投資家二コラさんから徹底的に嫌われている。まぁ「こんなの 投資家なんてお笑い種」みたいな感じです。だから, 1つ潰してもまた何か出してくる。理屈の勝負で済めばいいんだけど,相手の感情が絡んでいるとややこしい。
     おまけに,この法律事務所は,司法省とマイクロソフトの訴訟とか,2000 年の大統領選挙で Al Gore が最高裁まで George Bush と得票について争ったのだとか ・・・ 。万一 喰いつかれた場合,何年も長引く可能性がある。相手も名誉が掛かっているからね。その場合,どうなるか。
     米国有数の法律事務所 (第3位だとか) が ナンバーツーを撃墜したって 何がおもろいか?
    「射人先射馬 擒敵先擒王」という言葉があるでしょ。唐の詩人 杜甫 が言ったらしい。
    考えれば,SoftBank は 日本の一般投資家が考えるより 遥かに遥かに 大金持ちなのでしょう。 だから狙われる。株主集団訴訟をチラつかせてくるでしょう。解任だけでは金にならない。(笑)
    ──────
    最後に (笑)
    この日本語訳は,Bloomberg 訳を参照せずに進めているが,お分かりのように,Bloomberg 訳では バッサリ「映倫カット」されている部分がある。真ん中の一部分をこのように綺麗に鋏でカットするのは,それなりの判断に基づくのであろう。「映倫カット」した人 あるいは その依頼人は,カット部分が何らかの意味で特に重要と考えたのか,あるいは,特に無意味であると考えたのか?
    ──────
    [2016/04/23] 11 ページの英文書簡全部を読むことができました (↓)。
     ひとつ分からないのは,アルゼンチンの 295 億円 (日経電子版,2016/02/25, 23:38) とインドネシアの 394.9 億円 (会社発表 減損償却済み) の失敗に 全く触れていないことである。
     隠し球 (笑) (このほかにも) あるんでしょうね。株主集団訴訟まで行けば 何年掛かるか分からない。 1通の書簡で手の内を全部見せることはあり得ない。
     幹部が訴えられる集団訴訟にどのくらいの時間が掛かるのか? その目安 (笑) として,Sprint 経営陣に対する前回の株主集団訴訟は,1年前に和議により解決を見ました。
     これは,Sprint と 元 CEO Gary Forsee が,Nextel 買収の直後に発生した困難を覆い隠すために,2006 年 10 月から 2008 年2月までの間に,Sprint 株価 および 債券価格を 吊り上げた廉で訴えられていた株主集団訴訟です。
     原告の主張によれば,Sprint は,プレス・リリース,記者会見 および 当局への書類提出で,合併から 数十億ドルの利益を どうやって受け取るかを 吹聴したという。現実には,文化や技術の違いが無線ネットワークの統合を妨げ,何千人もの顧客を失う結果になったという。
     2008年1月,Forsee の後任 CEO として Dan Hesse が指名された翌月,Sprint は,3ヵ月で 683,000 人の顧客を失ったことを開示し,株価は,たった1日で 25% 下落した。・・・ と原告たちは言う。さらに その後の開示も株価を傷つけた と彼らは付け加えた。
     この訴訟は,2015年3月30日,Sprint が $1.31 億を支払うことで 和解が成立しました (ロイター, 2015/03/31)。このときには,7年掛かったんですね。
    Boies Schiller & Flexner とはどんな会社か? (Wikipedia)
     所在地:ニューヨーク市,事務所数:10,弁護士数 240
     得意分野:訴訟 (注:たぶん,訴訟までは やらない弁護士の方が割合はずっと多いでしょう)
     重要人物:David Boies (議長),Jonathan D. Schiller,Donald L. Flexner
     設立:1997 年5月。
     起こした裁判には,法律学生,一般市民によく知られたものが多い。
     Wall Street Journal の評価:national litigation powerhouse (全国的訴訟発電所)
     WSJ のこの評価を,この法務会社は 自分の宣伝文句として利用している。(笑)
     ウェブサイト は,訴訟で勝ち取った金額を掲げて自慢している。その自慢の最高額は,Amex 相手に $40 億という。SoftBank を相手に選んだのは,"勲章" の記録更新を狙ってか (笑)。何しろ 2兆円の現金がダブダブであることを自慢にする会社だからね。
    ちなみに,どの法務会社のウェブサイトも,このように 訴訟で獲得した金額を 勲章として競い合う。アメリカでは当たり前のこと。
     ここから先 何が起こるかを予想すると … いきなり 訴訟にはならない。SoftBank との交渉も当分は無い。Boies は,広告を出して (たとえば,10 万ドル以上の) 株主を集める … これがまず第一に必要。集団訴訟に持ち込むためには,株数を集める必要がある。SoftBank にいろんな意味で不満 (たとえば 配当が低すぎる,株価が低すぎる) を持つ株主を集められれば,交渉の大きな力になる。それを背景にして,SoftBank から金を分捕ろうとする。Boies としては,その勲章が欲しい。ナンバー2の解任は まぁ どうでもよいことでしょう。単なる取っ掛かり (口実) に過ぎない。孫さんにとっては 重大問題ですが … 。孫さんの鼎の軽重が問われている。
     今までで 一番喜んでいるのは … Goldman Sachs でしょう。こういう場合に備えて SoftBank は Goldman Sachs を頼りにしているわけですが,たぶん もう かなりの相談料をもらって,しかも まだ この先 何年続くか分からないので ウハウハ (笑)。こういう「事件」は とにかく弁護士とか銀行の飯の種。Goldman は (陰で) Boies 様さまに頭が上がらない。なるべく長く続けて欲しい?(笑)
    書簡の全文 (PDF) は,ここから読めます。 日本語訳はこちら。
     以下は,Bloomberg の記事に脱落している点である。
       Arora が 個人的に $483 億でソフトバンク株を買ったことが,彼の[不]成績に関する懸念を埋め合わせているが,その資金手当てが 一切公表されていない。銀行ローンと報道されているが,個人にこれだけ融資するには,SoftBank の保証がなければ無理だろう。 [つまり 単なるSBG の自社株買い?]
      「これらのイベントの連鎖は,SoftBank 取締役会が Mr. Arora の株式買い付けの真の性格を株主の目から隠匿せんとする努力を反映するものである」
       両社の取締役会が調査するつもりがあれば,当方は追加情報を提供する用意がある。
       利益相反では,Silver Lake Partners の他に ギリシャの通信企業 TIM Hellas というのが挙がっているよ。こちらは,SoftBank に来る前のことだが,相当あくどいことをやって しこたま個人的に儲けたらしい。つまり,倫理性に欠ける人物として批判している。
       Sprint のウェブサイトで Arora は,TIM Hellas の取締役であったことを経歴として書いていたが,TIM Hellas の記事がメディアに載るようになった 2015 年からは 書き換えて,経歴から消した。いずれ裁判になるらしい。アメリカだけでなくルクセンブルクでも。それでも両社取締役会はいいのか … みたいに脅している。
       インドの Snapdeal への投資では (面白いよ(笑)),SoftBank が既に多額の投資をしており,Snapdeal の CEO Kunal Bahl さんが「もう金は要らない。前回ソフトバンクからもらった金を 今 使い始めたばかり。 ここ数年は要らない。」と公言しているのに,さらに金を注ぎ込んで,Snapdeal の評価額を2倍にした。理由は下記。このとき Arora は コンサルタント Alok Sama に巨額の手数料を払った。その Alok Sama は 今では SIMI で Arora の下にいる。 [だから,Sama も調査せよと要求]
       なお,SoftBank が投資した時点で,Arora は 個人で Snapdeal の株を持っていた (Wall Street Journal) のだそうだ。Arora のこの投資資金がどこから出たのかも 疑問視している。SoftBank が金を出して 儲けさせたのか? と。
       以下は,最後尾部分の全訳である。
     『Mr. Arora の利益相反の結果,SoftBank と Sprint の利益を 自分の金銭的利益より優先しようとする能力と意欲を懸念させる重大な疑問が生じている。Mr. Arora の利益相反は,SIMI の CEO としての疑わしい事業判断により 判別しにくい状況になっている。Mr. Arora の採用を認可し,巨額の報酬を与えることを認可した時,株主は SoftBank 取締役会の心の片隅にしかなかったであろう。Sprint の取締役会も同様に,Mr. Arora を取締役にする前に 彼に関する最低限のデューディリさえも実施しなかったと思われる。このような状況では,SoftBank と Sprint の取締役会が 今ただちに Mr. Arora ならびに 彼の事業チームの Mr. Sama のようなメンバーの行為を調査する独立組織に権限を付与することが 緊急に必要であると我々は考える。もしも SoftBank と Sprint の取締役会がそのような独立調査の用意と発表を 60 日以内に行なわなければ,我々は あらゆる可能な救済措置を追求するつもりである。これには,日本 および アメリカ・デラウェア州での法的アクション ならびに 政府規制当局への情報提供が含まれる。我々は,止むを得ずに そのような措置に訴えることは どちらかと言えば望んでおらず,調査が開始されれば,あなたがた [=両社の取締役会] および その法律顧問が 我々の顧客と懸念を直接に共有する機会をお持ちになると確信する。そのような機会があれば,これらの懸念を裏付ける追加情報をご提供することが可能になるでしょう。』
     SoftBank Group および Sprint Corp 取締役 各位
     2016年1月20日
     敬具
     Matthew L. Schwartz

  81. ソフトバンク,米スプリント再建は長期戦
    日経電子版,2016/03/31, 22:22
    篠崎健太
    ソフトバンクグループの株価が冴えない。2015年度末の株価は,5,366円と1年間で 23%下げ,時価総額を2兆円近く失った。背景にあるのが,米携帯電話子会社スプリントの苦戦だ。採算の改善に向けた合理化効果が出始めたものの,立て直しに手間取れば減損のリスクが表面化しかねない。目先は減損を避けられそうだが,長期戦に入った米事業再建の進捗度合いを見極める状況が続きそうだ。
    ソフトバンクの株価チャートは,スプリントと相似形を描いている。自社株買いを表明した2月に急上昇したが, 一時4ドル台に戻したスプリントが下げに転じると,連れて売りが優勢となった。「稼ぎ頭になる。伸びしろが大きくワクワクしている」。孫正義社長が自信を深める米事業再建に投資家はなお疑心暗鬼だ。
     2013年の買収時に5ドルを超えていたスプリント株は,今年に入って半分以下にまで下げた。
     スプリントが 2014年10~12月期に商標権など一部資産で 21億ドル (当時のレートで 約 2,500億円) の減損処理をした際,ソフトバンクは 連結決算に反映しなかった。国際会計基準に基づけば,スプリント全体の企業価値は なお簿価を上回ると判断したためだ。
     連結の減損は,
     (1) 株価に基づく回収可能額
     (2) 予想キャッシュフローの割引現在価値から負債を引いた額
     ―― の2つをはじき,両方で簿価を下回れば処理が必要になる。
     2014年末時点では問題なしとされたが,この2つの条件のうち 株価については,足元の3ドル台前半の水準では減損基準に抵触していると見られる。
     一方で明るい兆しも出ている。スプリントは1月,16年3月期の調整後 EBITDA (償却前の営業利益) 予想を68億~71億ドルから77億~80億ドルに上げた。固定費削減など合理化で17年3月期は 95億~100億ドルを見込む。減損判定のカギを握る収益状況は「1年前より上を向いている」(君和田和子執行役員)。
     スプリントは 2015年10~12月期に6四半期連続で最終赤字となったが,携帯解約率が最低水準になるなど営業指標は改善をみせている。通信品質の改善策などが効いてきた模様。野村証券の増野大作氏は「再建は着実に前進しており,フリーキャッシュフローの黒字化を探る局面に入る」と指摘する。
     ただ懸念払拭には時間がかかるとの見方が多い。米通信大手4社の10~12月期では携帯4位のスプリントのみが減収だった。他社からの顧客奪取へ割安な料金プランを積極展開していることが一因だ。SMBC 日興証券の菊池悟氏は「合理化後に競争力がついてくるか予断を許さない」とし,減損リスクは当面くすぶり続けると見る。
     構造改革や料金面のテコ入れで止血は進むが,増収が牽引する反転攻勢の展望はまだ描きにくい。孫社長は昨年,スプリントについて「2年をメドに大幅に改善する」と話した。親子での株価低迷は投資家がそれを信じていない表れだ。仮に多少の減損を計上しても 経営基盤は揺るがないが,後から結果で市場を納得させてきた「有言実行」の実績に泥を塗らないためにも,2017年3月期は勝負の1年となる。
    日経さん,分かり切ったことを なんで今さら (?)
    いつもなら,決算発表後に辛口の評価記事を掲載するのに,2月の決算発表ではそれが無かった。
    ──────
      EBITDA 予想を引き上げたのが明るい兆しだとあるが,これは,単に iPhone 6s で 月額 $1 のような 「シェークスピアもビックリのリース」を昨年9月から始めた … というだけのことである。リース資産の減価償却で EBITDA を増やしても,純利益が増えるわけではない。
      文中に「合理化効果が出始めた」とあるが,私見では ホントの意味での合理化は,まだ やっていない。それどころか 悪化していると思われる。2015 年度の店舗増設数 (RadioShack +1,750, Dixons Carphone +500) は非常に多いし,直にお届け 自動車 5,000 台+フルタイム従業員 5,000 人サービスも,Claure さんの肝いりで 2015 年に始まったばかりである。だから「止血」は 止まっていないのである。4 エリア19 (17 いくつに減ったの?) 地域体制も 大きな出血要因である (これは 11月に発表されて,いまだに実行されているのかどうか不明である … そういう経営体制である)。
       経営者のタイプとして,Claure さんは 兎に角 手を広げることが好きであり,何を削るべきかを考えられないようである。だから 節約となると,紙の節約,ゴミ捨てを各自せよ,従業員への軽食を取りやめ … などということになる。大きくバッサリ何かを削るということができない。
      稼ぎ頭になるとか,伸びしろ,ワクワクとは,全くの誇張であり,内心は 減損 (による自分の評価の低落) の恐怖でビクビクしているだろう(笑)
      株価水準による判断基準としては,野村證券による $3.84 という数字がある。3月31日のスプリント株価は $3.48 (+0.87%) で引けた。$3.84 を下回ったので,野村證券の判定によれば,親会社のソフトバンクの3月期の減損償却は決定 … ということになる。それにしても4月1日のソフトバンク株価は逆行高しているね。もう手遅れなんだけど (笑)
      減損判定のカギを握る収益状況は「1年前より上を向いている」(君和田和子執行役員) … は,別の理由で おそらく正しい。その大きな理由は (なぜかここに書かれていないが) 電波の価格がアメリカでは 2014-2015 年のオークションにより大暴騰したからである。Sprint はこのオークションに入札しなかったが, 「漁夫の利」で,大量に所有する電波の評価額を 帳簿の上で上げることができた。Sprint が 2014年12月期に減損償却して,2015年12月期に減損償却を免れたのは,これが大きかったのかもしれない。
     これから始まる 600 MHz オークションにもスプリントは入札しないが,ここでも もしも電波価格が上がれば,資産が水膨れするので,ソフトバンクの減損償却の可能性は減る。つまり,減損償却が回避できる理由は「収益状況」ではなく,資産の水膨れである (仮に Sprint を売却する場合にも 高く売れる)。
       携帯解約率 (チャーン) が最低になったのは 事実であるが,それは前年比での話 (前年までが余りにも悪かった) のである (2.30 % ⇒ 1.62%)。しかも,四半期で見ると,1つ前の四半期より悪化した (1.54 % ⇒ 1.62%)。
       通信品質は改善したかもしれないが,つい最近 アメリカ全土にわたる通信障害 (outage) を発生した。この状況についての会社発表は全く無い。通信障害の苦情に対して,Sprint 技師からのツイッター応答には "近くに同じような人がいるか教えてくれ","Best Buy で買ったのなら そっちへ言ってくれ" なんてのがあるよ。
       2017 年3月期が勝負の1年というのは,その通り。なぜかというと, 「泥」は顔にもうベタベタについているから (笑),そういう「顔に泥」の問題じゃなくて,スプリント買収で銀行団から借りた巨額融資の借り換えが 2018 年9月に迫っているからね。この交渉を始めるためには,2017年3月の決算がキレイでなくちゃいけない。
     今から1年でそんなに (銀行を納得させるほど) 劇的に改善できるものか ? ワクワク? ビクビク? (笑)。だって,孫さんが スプリントを掌握したのは 2013 年の夏です。それから今まで 2年半経っている。2年半の間 こんな状況で 1年でできるのか?
     「できる」と言い張っているようだが,実際に「する」のは,海の向こう。それも幹部は アメリカ以外の外国から来た外人部隊が多い。指揮系統はこんなふう ↓
        孫さん (毎日電話) ⇒ Claure CEO ⇒ 経験浅い外人部隊の幹部 ⇒ 米国人従業員
     孫さんが 毎日夜中に掛ける電話が,上の指揮系統で 従業員をどれだけ動かせるか?
     … しかも,今年の2月1日から従業員の退職金を半分にした。半分!ですよ (笑)
     たとえば,1,000 万円 ⇒ 500 万円に減額!
     人員整理で退職金を割り増しすることは あるけれど,これはその反対です。
     こんな状況で 孫さんに忠誠を尽くそうなんていう奇特な人は いるはずが無い。能力のある人ほど バカバカしくなって もう辞めてしまったでしょう。前にも書いたが,従業員の質がもともと低い会社が,ますます ・・・ 。
    ──────
     なお,スプリントのようなジャンク債発行企業にとって,この4月 (の中頃) が厳しいと言われている。日経が言うように両社の株価に強い相関があるというのが事実なら,ソフトバンクにとっても この4月は厳しい月になるだろう。

  82. SBG 孫社長「海外事業さらに拡大」;シャープ出資改めて否定
    日経電子版,2016/03/31 00:00 (中国総局)
    ソフトバンク・グループの孫正義社長は,3月30日に中国・北京で日本経済新聞の取材に応じ,海外事業のさらなる拡大に向けて運営体制を一段と強化する考えを示した。同社と関係の深い台湾の鴻海精密工業がシャープの買収を決めたことに関しては「(3社の) 関係性は深まるかもしれない」と連携拡大に期待を示した。
    ソフトバンクは,海外事業と国内事業をそれぞれ統括する中間持ち株会社を3月に設けた。狙いとして孫氏は,海外事業を拡大する必要性を強調した上で「海外の投資や運営をしっかりマネージできる組織と体制をつくりたい」と続けた。
     海外統括会社は,自らの後継者に指名したニケシュ・アローラ副社長に最高責任者を任せる。孫氏はアローラ氏にソフトバンク・グループ社長のバトンを渡すタイミングについて「もうちょっと先だ」と話し,当面は自身が社長を務める考えを明らかにした。
     海外事業の強化に伴い 本社を海外に移す可能性については「今は具体的な計画は無い」と断った上で,「将来的に海外の方が遥かに事業の比率が大きくなったら,実態に合わせていく議論が出てくるかもしれない」と述べた。
     鴻海はソフトバンクのヒト型ロボット「ペッパー」の受託生産を手掛けており,ソフトバンクはシャープのスマートフォンを販売するなど3社は親しい関係にある。ソフトバンク・グループがシャープに出資する可能性については「具体的に検討していることは無い」と改めて否定した。
    こういう機会に,なぜ 日経は 2月19日 EDINET に孫社長自身が届け出た件を訊かないんだろうね?
    その件は 訊かれても 記事にはしない ・・・ とか口止めされているんだろか (笑)
    けど,投資家が一番知りたいことを記事にしない … ってのは どう考えてもおかしい。

  83. 孫正義が 2016/02/19 に EDINET へ提出した変更報告書
    【氏名又は名称】孫 正義
    【住所又は本店所在地】東京都港区麻布台1丁目4番2号
    【報告義務発生日】平成28年2月15日
    【提出日】平成28年月19日
    【提出者 および 共同保有者の総数】5名
    【提出形態】連名
    【変更報告書提出事由】 担保契約等重要な契約の変更
    (6) 【当該株券等に関する担保契約等重要な契約】
     孫 正義 所有株式数 231,414,632株のうち,以下の (1) から (17) に担保提供しています。
     (1) 7,250,000株を みずほ銀行大手町営業部
     (2) 2,300,000株を新生銀行
     (3) 2,500,000株を大和証券㈱
     (4) 2,000,000株を SMBC信託銀行
     (5) 900,000株を㈱だいこう証券ビジネス
     (6) 7,700,000株をクレディ・スイス銀行東京支店
     (7) 1,600,000株を UBS 銀行東京支店
     (8) 4,000,000株を LGT Bank in Liechtenstein Ltd.
     (9) 3,000,000株を Bank J.safra Sarasin Ltd
     (10) 13,000,000株を Bank Julius Bear & Co.Ltd.
     (11) 1,600,000株を東京スター銀行
     (12) 1,000,000株を Credit Agricole(Suisse)SA
     (13) 1,800,000株をドイツ銀行東京支店
     (14) 2,000,000株を Bank Lombard Ordier & Co Ltd
     (15) 1,000,000株を Picte & Cie (Europe) S.A.
     (16) 11,000,000株を みずほ銀行 および みずほ信託銀行
     (17) 2,000,000株を三井住友銀行。また,
     (18) 10,000株を Trust Deed に基づき Lombard Ordier Darier hentsch Trust (Bermuda) Limited に信託しています。
     (19) 13,500,000株を株式貸借取引に基づき,孫アセットマネージメント合同会社に貸出し後,当会社から野村証券㈱に担保提供しています。
     (20) 1,400,000株を株式貸借取引に基づき,孫アセットマネージメント合同会社に貸出し後,当会社から SMBC 日興証券㈱に貸出しています。
     (21) 4,000,000株を株式貸借取引に基づき,孫アセットマネージメント合同会社に貸出し後,当会社から みずほ証券㈱に貸出しています。
     なお,上記 (19) から (21) に係る当該貸借株式の名義 および 議決権は,私 (孫正義) が保有しています。
     【提出者 および 共同保有者】 【共同保有における株券等保有割合の内訳】
    提出者 および 共同保有者名 保有株数 保有割合
    孫正義 231,414,632 19.27 %
    有限会社孫ホールディングス 1,041,266 0.09 %
    孫アセットマネージメント合同会社 9,277,210 0.77 %
    孫企画合同会社 0 0.00 %
    孫エステート合同会社 30,000,000 2.50 %
    合 計 271,733,108 22.63 %
    こんな情報は,板の人は全員ご存じなのかと思っていました。
     貸している株数がいくらになるのかな?ちょっと電卓で計算してみると (笑) ・・・ 64,660,000.
     今日 (2016/03/16) の出来高は,7,956,500 株。ざっと 8日分に相当する。
     これを 発行済み株式数 12 億株で割ると ・・・ 5.39 % です (時価にして 3,700 億円)
     孫さんの持ち株 231,414,632 で割ると … 27.9 % です。
     かなり大量の株を貸していることが分かる。
     ソフトバンクの配当利回りは低い (0.64% かな)。Verizon の 5% の 1/8 なのが,株主としてご不満で,貸し株して品貸料を取った方が遥かに儲かる (笑)。でしょ?
     それとも「担保」と言うから 孫さんが 金を借りているのか? 何のために?
     実際に借りられるのは 8掛けで,担保価値が 8割だそうだから,3,700 × 0.8 × 0.8 = 2,360 億円。こんなに巨額を 個人で 何のために借りたのか? しかも これは 短期資金である。短期で返済する。
     さらに,これらの金融機関が,孫さんから借りたソフトバンク株でどんな利益を挙げるか ・・・ ですね。
     常識的に考えれば,これらの株は (一時的に) 売られるでしょう。「売らない」という特約はついていません。全然別の話ですが,DDS のマイルストーンへの貸し株では,「売らない」特約をつけていました。でも,契約の前に (貸してもらうことを当て込んで)「つなぎ売り」をしておくことができるので,あれは ほとんど意味がありませんでした。
     さて,どうなりますか ・・・ 。
     あと,何とも不思議なのは,外国の金融機関も含めて このように 21 件の小口に分けるのは,何故なのでしょうか? な~んか 必死になって募金活動しているように見える (笑)
    なぜ
     (1) 孫さん個人が (会社としてではなく)
     (2) 2,360 億円もの巨額の資金を 証券会社に貸し株までして
     (3) ソフトバンク株が売り込まれ,株主に迷惑が掛かるのを覚悟で
     (4) 今年の2月半ばに
     (5) 短期資金として
    必要としたか?
     条件が上のように沢山ついているので,なかなか難しい!
     1つの可能性を,ここにアナグラムとして書き留めておきます。
     "A Cab Coincidence Huffing Kit Tom"
    ──────
     [後日談] このアナグラムは「スプリントのためにインセンティブ・オークションに参加する」だったのですが,外れでした。情報が不十分だったから致し方ない。
     今から考えれば,Boies 書簡の口封じに緊急に金が必要だった。でも 会社の金をすぐには使えない。 とりあえず自分で用立てた。ほんとに緊急に金が必要だった … ことが上の様子から非常によく分かります (笑)。自分の持ち株を掻き集めて借りることのできるところから 片っ端から集めた … という感じでした。
     そして結局は … 大金持ち 孫正義個人が負担するのは馬鹿らしい。会社 (=株主) に負担させようってんで ・・・ 考えたのが「自社株買い」。つまり自社株の買取を利用して,この費用を会社に負担させた … というのが当サイトの推測です (こんなに巨額を落とす方法は他にあるでしょうか?)。
     ちょうどこのときに世界をビックリさせた 5,000 億円という前例のない自社株買いがあり,孫さんにしてはエラく気前が良い … と話題になったものでした。同時に,Boies 書簡騒ぎは ピタッと納まった。
     貸し株による緊急資金調達と 世界を驚かせる自社株買いを組み合わせた見事な作戦でございました。
    ──────
      『ソフトバンクが,$44 億の自社株買いを発表』 (Wall Street Journal,2016/02/15)
      『ソフトバンクの複数の株主が,ナンバー2 アローラの内部審査を要求』 (Bloomberg,2016/04/21)

  84. 鴻海トップが孫正義氏を訪ねた「本当の理由」
    東洋経済 オンライン,2016/02/20
    杉本 りうこ :東洋経済 記者
    目的はシャープでない?約24時間の瞬間来日
    ソフトバンクのヒト型ロボット「ペッパー」の一般販売に先駆けたイベントで
    親しさを見せつけた 孫正義氏 (左) とテリー・ゴウ氏 (右), 2015年6月撮影。
    経営再建中のシャープに巨額の買収提案をしている 台湾・鴻海精密工業のテリー・ゴウ (郭台銘) 董事長。2月18日夕方に来日したが,19日夜には早くも成田国際空港から帰国の途についた。
     来日したゴウ氏が直行したのが,港区・汐留のソフトバンク本社だ。早ければ来週にも,シャープが鴻海か産業革新機構の買収案を選ぶというタイミングの中,ゴウ氏がソフトバンクの孫正義社長と長時間にわたり会談したことから, 「シャープ買収への支援を孫氏に求めた」と伝える報道も 少なくない。
     が,実のところ,2人が共有する最大の関心事は,シャープではない。
     2人が見ているのは 「インド」
     そもそも,ゴウ氏はおよそ1~2ヵ月に1度来日しているが,少なくともここ1年は,ほぼ来日のたびに孫氏と面会している。会話の中で,シャープに触れることも もちろんあるだろうが,シャープの件があるから会っていると理解するのは,本末転倒。2人がこれほどの頻度で意見を交わしている最大のアジェンダは,今後10年にわたる「インド戦略」だ。
     ソフトバンクは 2014年10月,インドのインターネット通販大手 Snapdeal に約677億円を出資した。一方の鴻海は,ソフトバンクが筆頭株主である同社に,2015年8月,約250億円を出資している (出資比率 4.27%)。また両社は 2015年6月,現地企業を含む3社合弁で,太陽光発電など再生可能エネルギー事業を進める計画を発表。今後10年間で 2.5兆円弱を投じ,インド国内に複数のメガソーラー (大規模太陽光発電所) を建設する方針なのだ。
     このメガソーラーを作るうえで,シャープの太陽光事業の持つ発電システムの設計・エンジニアリング力は,大いに役に立つ。この部分のみ,買収後に鴻海がソフトバンクに売却したり,両社で合弁化したりする余地は,多いにある。しかし,シャープ本体にソフトバンクが少額出資するという観測は,おそらく観測止まりに終わるだろう。
     ゴウ氏は鴻海単独でも,今後5年以内でインドに自社工場 10ヵ所を建設し,100万人を雇用する方針だ。鴻海の生産能力は,インド1国で少なくとも倍増する見通し。ゴウ氏は 2015年8月上旬,インドでモディ首相と会談した直後の会見で,「インド計画は 10年の計だ。単なる組み立て工程だけでなく,部品生産から技術開発まで,サプライチェーン全体を移転させる」と表明している。
     ここまでインドにゴウ氏が前のめりになるのは,モディ政権の政策のゆえである。鴻海が中国で巨大工場を数多く建設できたのは,中央・地方政府による外資工場の誘致政策が背景だった。
     ゴウ氏にとって,政府の提供する土地や補助金は大きな旨みだったし,同時に政府にとっても,1工場で数万人を雇用する鴻海の工場は,周辺の都市開発と不動産相場を一変させる錬金術だった。中国の労務費が高騰する一方,2022年には世界最大の人口を抱える見通しのインドで,モディ政権が製造業や IT 産業,クリーン・エネルギー産業の振興策を打ち出したことに,ゴウ氏は注目したのだ。
     ソフトバンクは1兆円超の投資額
     ゴウ氏は,技術や産業の展望を見通し,フロンティアを開拓するビジョナリー型の経営者ではない。「相手に野望を実現させることで,自身も利益を得る」という,ウィンウィン型だ。かつてのスティーブ・ジョブズ氏 (米アップルの iPhone は 鴻海が製造) や,久夛良木健氏 (ソニーのプレイステーションも鴻海が製造) のように,強い野望を持ったパートナーがあって 初めて,鴻海は成長する。この意味で,孫氏とモディ首相という2人の野心家がいる限り,インドはゴウ氏にとっての次なる成長市場なのである。
     孫氏は1月16日,ニューデリーで開かれたベンチャー投資関連のイベントで,「インドでの投資を100億ドル (約 1.1兆円) に拡大する」との考えを明らかにした。2月18日夜のゴウ氏との会談では,1.2兆円の使途が共有されたのではないだろうか。
    なんか違和感を覚えます ・・・ この「見せつけた」,「おそらく」,「だろうか」記事 (笑)。
    どうして,微妙な時期に来日した ご本人と面会相手の孫社長の2人に週刊誌並みの徹底取材をして,裏付けを取らないんでしょうか?
    あと,この記事から鮮明に浮かび上がるのは,シャープ買収にソフトバンクが係わっているというウワサが根強いことです。そうでなけりゃ,こんな記事が日の目を見るはずがありません (笑)
     それに,≪ しかし,シャープ本体にソフトバンクが少額出資するという観測は,おそらく観測止まりに終わるだろう。 ≫ と書いているが,昨年10月29日に少額出資してるんだけど (だから 必然的にウワサが発生する) … まぁ,シャープ本体ではないけれど,似たようなものでしょ。
     察するに,ソフトバンクから資料提供を受けて書き上げたんでしょ (笑)。
     120年のユニークな言論活動を行なってきた出版社のなさることにしては,裏付け取材をサボって「本当の理由」ってのは,ちょっとばかし恥ずかしいんじゃないの?
     石橋湛山は,泉下で どう思っているでしょうか?(ほんとに偉かった人には「氏」なんてつけない)
     確かに 「支援を求めた」なんてことは絶対にあり得ない。そもそもそんな風に書くのがおかしい!
     この時期にいまさら「支援を求める」筈が無い。ウワサの内容を想像すれば (笑)「支援してくれるという段取りに従ってうまくやってくれるよう,最終確認を取りに わざわざトンボ返り」でしょ? ・・・ これならよく理解できる(笑)。
    こんな記事もある。郭台銘さんのやり方を生き生きと描いている。
    孫さん,こういう人を相手にするのは,大変そうだ。内容が面白いので転載させていただく。
    当然,ソフトバンクも何かを狙われているんだろうね。シャープより狙い甲斐がある。
    その第1段階として,上の リーク記事 (笑) によれば,
      ≪ シャープの太陽光事業の持つ発電システムの設計・エンジニアリング力 ≫
    を鴻海から買わされるか, あるいは 合弁会社に出資することに 孫さん 事前同意を与えちゃった (?) みたいですね。… だったら,ソフトバンクが 部分的にシャープ買収してんのと同じことじゃないの? 表題とは裏腹に それを天下に知らしめるためにこの記事を書いたのか? 杉本 りうこ記者さん!(笑)
     さらに (笑) 重大なのは,これが2月20日の記事であることだ。あの時点では,革新機構の方がむしろ有力だった。だから 書くとすれば「もしも鴻海がシャープを買収した場合には 買収後に鴻海がソフトバンクに売却したり ・・・ 」とするのが普通でしょう。もしも革新機構が買収に成功していれば, 「本当の理由」なんて 必要なかったんだし,杉本さんはこういうアホな記事を書いたことで笑いものになっていたんですよ。
     そう考えると,東洋経済オンラインは,鴻海が買収に成功するという何か確実な情報を掴んでいた!
     どこから そういう情報を掴んだのか?そっちの方が「本当の理由」を必要とする!
    ──────
    なになに?(笑) 政府系ファンド,もともとシャープ救済には乗り気ではなかった!? (ニュースイッチ 2月26日(金)7時30分配信 ・・・ そぅなんですよね。業界や報道には 事前にチャーンと分かっていたんですよ。
    鴻海に踊らされたシャープの命運
    時事通信 2012 年頃か? 日付なし
    新田賢吾 (Nitta Kengo),ジャーナリスト
    1年前,シャープがこれほどの経営危機に陥ると誰が予想できただろうか?
    シャープとの提携交渉のため来日した
    鴻海精密工業の郭台銘会長=2012年8月29日
    東京駅【時事通信社】
     主力の液晶パネル,液晶テレビの価格急落,販売低迷という厳しい状況があったにせよ,シャープの経営悪化,とりわけ6月以降の転落のスピードは速かった。その直接的な原因は明らかだ。台湾の鴻海精密工業 および その創業者,郭台銘氏との連携に救いを求めたことである。
     鴻海が出資を遅延させたことが,シャープに対する市場の不安を煽り,株価下落,資金繰りの悪化につながった。もちろん鴻海との連携という支えが無ければ,今以上に深刻な事態に陥っていた可能性はあるが,他の選択肢も浮上していたはずだ。高い研究開発力を持ちながら,台湾の EMS (エレクトロニクス機器の受託製造メーカー) に踊らされたシャープの姿は,他の日本の製造業への強い警告と言ってよい。
     鴻海が狙っていたもの
     鴻海は,シャープの何を求めていたのか?
     答は当たり前だが, 液晶パネル生産に関する技術とパネルの生産工場であり, シャープという企業ではない。 シャープの持つ太陽光発電パネルや携帯電話の技術,商品開発力にも多少は興味があったかもしれないが,両分野とも鴻海がこれから握って,グローバル・ナンバーワンを目指すことのできる事業ではない。一方,「シャープ」というブランドも,鴻海にとっては 全く魅力が無かっただろう。「シャープ」ブランドがグローバル・マーケットに浸透できず,通用しなかったからこそ,シャープは液晶パネルの先駆者でありながら,サムスンや LG 電子に大差をつけられ,「負け組」となったからだ。
     こう見れば,今年3月に結ばれた両社の資本・業務提携が何であったかよく分かる。提携には,2つの柱があった:第1は,鴻海がシャープから第三者割当増資によって 9.9% の株式を取得し,筆頭株主となること。 第2は,鴻海の創業者・会長である郭台銘氏個人が 単一工場としては世界最大で,最新鋭の第10世代の液晶パネル工場である堺工場 (大阪府堺市) を保有・運営するシャープ・ディスプレイ・プロダクトの 46.48%の株式を 660億円で買い取ること。以上の2点だった。一目瞭然だったが,シャープ - 鴻海,液晶工場 - 郭氏個人 … という資本提携は異常だ。鴻海に キャッシュや借り入れ能力が無いわけはない。鴻海が シャープ本体とともに堺工場にも出資するのが自然の流れだ。
     なぜ会社と個人に分けて出資したのか
    堺工場のある「シャープグリーンフロント堺」
    =2009年10月撮影【時事通信社】
     シャープへの出資は,当初1株あたり 550円の株価で合意し,シャープの経営陣は胸を撫で下ろした。だが,鴻海側は当然,"市場で株価が下がれば買収金額も下げるべきだ" … という論理を腹に持っていた。そして自らが出資を遅らせれば遅らせるほど,市場ではシャープへの不安が高まり,株価が下がると見て,狡猾な戦術に出たのだ。
     重要なのは,上場企業である鴻海が買収主体であれば,自社の株主利益や株主からの訴訟リスクを盾に市場価格と乖離した高値での買収には応じられない … という論理を展開できることだ。もし郭氏個人がシャープの増資引き受け手だったら,個人ゆえに当初約束通りの株価での引き受けを余儀なくされただろう。郭氏がその約束を違えれば,郭氏自身の信用が失墜する。
     一方,堺の液晶工場は非上場であるため,買収金額が変動することはない。しかも鴻海が一番欲しかったものである以上,別の買い手が現れるまでになんとしても買収を完了しなければならなかった。シャープに本体の増資引き受けという信用補完の飴を与えて,抱き合わせで堺の工場を買い叩く狙いもあり,底値と思われた価格が提示されるとともに,即断即決で郭氏個人が出資者となり,早々に払い込みも済ませた。出資比率と買い取り価格から逆算すれば,堺工場全体の価値はこの取引では 1,420億円にしか認定されていない。 言い換えれば,総投資額 4,300億円の液晶工場は,簿価の 1/3 の価格で投げ売りされたことになる。
     鴻海と郭氏は一心同体であり,どちらが買収主体となっても鴻海側には変わりはないが,シャープ側には天地ほどの差があった。全体で言えば,鴻海のシャープ本体への出資は,鴻海側に「延期」, 「中止」という選択肢の与えられたリアル・オプションであり,鴻海側が一方的に投資の最適化を図れる不平等なものだった。そんなことにも気づかず,合意契約書をつくったのがシャープの経営陣であり,その責任は限りなく重い。
     次の狙いは 中小型液晶を生産する亀山工場
    シャープ亀山工場全景。左が第1, 右が第2工場
    [同社提供]=三重県亀山市【時事通信社】
     今,鴻海は,シャープが将来のために育て上げつつあった亀山工場 (三重県亀山市) の中小型液晶パネル事業の買収という第2段階に突き進んでいる。シャープの経営危機がさらに進めば,シャープは事業の切り離し売却をさらに進めざるを得なくなるからだ。鴻海は,亀山工場を本体から切り離して別会社とした上で買収する希望をすでに示している。
     亀山の中小型液晶は,タッチパネルで高解像・高精細の商品であり,スマートフォンやタブレット PC 向けに需要が急膨張している。亀山第1工場では既にかつてのテレビ向けのパネル生産ラインを中国メーカーに売却・移設し,今はアップル向けの中小型パネルを生産している。そこを鴻海が手に入れれば,今は組み立て工程だけを請け負っているアップルとのビジネスで 基幹デバイスを握り,付加価値を高めることができる。言い換えれば,バリューチェーンを伸ばせるわけだ。鴻海は,何としても亀山工場をシャープから取り上げるよう動くだろう。そのためにはシャープを瀬戸際まで追い込む可能性も十分にある。
     日本企業への教訓
    シャープの堺工場を視察する鴻海精密工業の
    郭台銘会長ら=2012年8月30日
    堺市 [SIO提供]【時事通信社】
     だが,今のシャープの状況は,他の日本メーカーにも起こり得る話だ。そこから得られる教訓は何なのか。
     最初に指摘すべきは,鴻海や郭氏の行動は ビジネスの世界では当然であり,非難されるものではない … ということだ。こうした逞しさ,狡猾さこそグローバル市場で勝ち抜くために日本企業が身につけるべきものなのだ。次に指摘すべきは,シャープの経営陣が もっと早い時点で適切な対応を取っていれば,危機は起きなかったということだ。後付けの理屈ではない。
     液晶におけるシャープの技術は やはり世界トップであり,シャープは液晶や有機 EL も含むディスプレイに経営資源を集中させるべきだった。だが,ある時は携帯電話が好調で国内トップに立ったり,白物家電でオーブンレンジの「ヘルシオ」が売れたり,太陽光発電パネルで好業績をあげたために,事業の整理ができなかった。たかだか3兆円の売り上げで 総花経営を続ければ,最も強いはずの液晶パネルでも,体力にモノを言わせて追いかけてくるサムスン,LG に追いつかれ・追い抜かれるのは自明だった。もっと早く,余裕を持って白物家電や携帯電話,事務機器などのビジネスを売却し, 得た資金で液晶パネル事業の強化を進めていれば,結果は違っていただろう。
     白物家電や携帯電話などの事業を売却して得た資金を堺工場の建設に注ぎ込めば,金融機関からの借り入れをその分だけ少なくすることができ,シャープの負債総額は ここまで膨らまなかっただろう。いまごろになって慌てて様々な事業を安値で叩き売りして,債務圧縮を進めるよりも遥かに有利だったはずだ。何より, 液晶パネル事業でスケールメリットを発揮し,価格競争を勝ち抜くこともできたはずだ。そもそも液晶パネルは設備産業であり,人件費コストは競争力にほとんど影響しない。円高や高い法人税という不利はあったにせよ,シャープの生産技術による高い歩留まり率など韓国,台湾勢との競争に勝てるチャンスは十分にあった。
     コア事業に経営資源を集中せよ
    家電量販店のテレビ売り場=2012年7月9日
    東京都新宿区のビックカメラ新宿東口新店【PANA】
     コア事業ではない携帯電話や白物,競争力を失った太陽光発電パネルなどをぐずぐずと持ち続けたことに,シャープの敗因があったのだ。同じように今,厳しい経営状況にあるパナソニックは,話が違うだろう。パナソニックは売上高でシャープの約3倍の規模があり,複数の事業で投資を続けていける体力と事業間のシナジーが働いているからだ。パナソニック電工を吸収したことで,シナジーはさらに高まっている。
     多くの日本の製造業は,シャープと同じように高い競争力のある事業を持ちながら,それ以外の事業を惰性で続け,競争力を毀損している。経営トップが非コア事業の部門からの反発,抵抗を恐れ,整理や売却に踏み切れないからだ。日本の製造業はシャープの今の姿を目に焼き付けておくべきだろう。

  85. In next 10 years, India will be the world's best opportunity: Masayoshi Son, Softbank
    これから 10 年後には,インドは 世界で最高の機会になるだろう:ソフトバンク,Masayoshi Son
    The Economic Times (インド), 2016/01/17, 11:20 IST
    By Samidha Sharma
    日本の通信&インターネット巨人 SoftBank の創立者 Masayoshi Son が 創立後 35 年の会社を新たに作り直す中で,インドは,その計画の主役の座にいる。58 歳の Masa は,30 年超のキャリアの中で これまで 幾多の高みと 低み中の低み (lowest lows) を何度も経験したことで知られるが,SoftBank を真の世界企業にしようとする中で,若い 地元の企業家に賭けている。
    "ソフトバンクのロゴはみっともないから,俺と一緒に事業をやりたいなら
    あれをやめろ" と スティーブ・ジョブズに言われた。だから,
    彼の気に入られるように,今のソフトバンクのロゴに変えた。(©BCCL 2016)
     Son は,副官である SoftBank 副総裁兼 COO Nikesh Arora とともに 1月17日,Sunday Times と対談し,インドがなぜ彼を興奮させるのか,国内市場の莫大な可能性,そしてなぜ地元の企業家が世界のライバルに対して優位にあるかを語った。
     インドのスタートアップ企業は,政府からきわめて小さな あるいは 全くゼロの支援を得て開花しました。今では政府も支援しようとしています。我々インド人は,喜ぶべきでしょうか 心配すべきでしょうか? Best thing for a government to do is to eliminate obstacles like filing registrations, getting licences and so on... tedious steps slow everything down. I was amazed that the government arranged a meet where nine secretaries were on stage willing to be asked questions by startup people on how they can change the process. It was a very good move. Money is available from investors as long as you have a great business model and a talented leader. Digital India is going to help these startups with lots of opportunities.
     インドのスタートアップ企業について 一番不満を感じたことは何ですか? それは,政府とどんな関わりがありましたか?
     Snapdeal が 多くの商人を呼び込むのに,登録しなければならないことが沢山ありました。
     [Nikesh Arora が補足して答える]:全国的事業を立ち上げようとすると,規制も処理も州ごとに異なる。これが厄介です。合理化する必要があります。今の処理のやり方は,テクノロジーが無かったときのままであり, [時代に合わせて] 変える必要があります。たとえば,ディジタル署名を容認すれば,かなりの書類作業を省けます。
     2014 年以来,ニュースの見出しは,投資に対する警告に道を譲りました。それでも スタートアップ企業の数は増えています。起業家たちは,金を稼いでも さらわれていきます。あなたは,こういうサイクルを何度も見てこられました。過去1年半のあいだに何が変わったでしょうか?
     There's been a degree of rationalization. Now is the question of smart investing. It's important they do it intelligently , create long-term value and a sustainable business model. That's the phase we're getting into.
     あなたは Nikesh を SoftBank 総裁に聖別 (anoint)し,Softbank 2.0 について語ってこられましたね? これが インドへの投資にどんな影響を持つのでしょうか?
     Nikesh を発見したことで,私は ラッキー かつ ハッピーである ・・・ 私は 大っぴらにそう言っている。Nikesh が私の後継だと これまで言っている。Softbank 2.0 は,Softbank のグローバル化を意味する。Nikesh の前は,私の趣味のように投資をやっていた。私はラッキーだった。だが,組織とシステムなしには,そんなものは繰り返さない。我々が入っていこうという舞台は,まさにそこだ。過去 10 年は,中国が大きな機会だった。次の 10 年は,インドの世界最大の機会になるだろう。Nikesh は たまたま インド人である。それはほんとの偶然だ。私は,インド人を後継として探していたわけではない。しかし,今は 神が私を助けていると思う;時間の点でも方向の点でも。これからは 前進あるのみ,投資には これまで以上に積極的になるつもりだ。昨年の成果が我々に自信を与えてくれる。我々は [Nikesh を迎えて,投資の] 組織を持った。我々は 互いに助け合う企業のポートフォリオを持っている。これは,偉大なるスタートである。
     Nikesh は,Softbank を変えましたか?
     彼は,国際的な人材を連れて来た。Softbank は それまで 日本国内の非常に内向きの企業だった。我々は Sprint を買収したが,あれは たった1つの核しか持たない通信企業に過ぎない。我々には,外国のプロが1人もいなかった。 ・・・
     Nikesh は,これまでに もう 非常にスマートな [=切れ者の] 幹部 (複数) を雇った。我々は,チームを持っている。チームを持ったことは,この1年の偉大な進歩である。
     [Nikesh が補足して答える]:
     私が とてもうれしくて 良いことだと思うのは,我々2人の議論が,確信を深めることです。もしも2人の 意見が一致すれば,2人とも牛さんになる。片方が反対すれば,2人で調べる。これまで 何かを ほとんど し始めたのに,片方が確信を持てないことがありました。そこで,その案件は,大物ではないということになりました。彼の方が上だから,私がいつでも従うということでは ありません。彼が同意しなければやらないということでも ありません。時には私が反対して,やらないこともある。
     [Son が答える]:
     そぅそぅ。全くその通り。Nikesh の前は,こんなに深いレベルまで考えることは全然ありませんでした。私が直感で判断していました。
      Nikesh が Softbank に参画してから 何人もの反対者が増えているという感じのようです。
    Softbank の投資家は 株価を下げています。その原因は,あなたが なさっている賭けのためでは ありませんか?
     [Nikesh が答える]:
     SoftBank 株価の活動性を見てみましょう:3つのことが進行しています。
     (1) 世界全体の状況です。年初から Nasdaq は 10% 下げている。
     (2) 中国と Sprint が SoftBank の重石になっている。わが社の時価評価のうち $600 億超はアリババにある。 だから 中国が風邪を引けば,我々も くしゃみをする。しかし, それは我々にとって大した問題ではありません。 我々はアリババについて非常に長期の牛さんであり,長期的には これがリアルな事業であり,もっともっと大きくなると考えています。
     (3) 3番目は,Sprint を挽回できるかどうかということです。
     以上が 要因です。いずれにせよ,$1,500 億の企業価値の会社に $20 億とか $40 億とかが影響を与える話ではありません。
     それでは,SoftBank は どういう方向を向いているのですか?
     [Nikesh が答える]:
     方向としては,Snapdeal への投資を見て下さい。彼らは 資金調達をして その後 評価を 2~3倍にしました。Ola は 我々が投資した時の8倍になりました。これらの会社のいくつかは,かなりうまくやっています。
     あなたがたが強いと信じていることを 世界が信じない場合には,どうなさいますか?
     世界が我々をどう見ているかを,私は大して気にしません。むしろ 私が気にするのは 実体 (substance) です。我々は ソリューションであるような変化を起こそうとしている。問題があれば いつでも 私は 深く掘り下げたい。Sprint は,私の目から見れば ほとんどスタートアップ企業のようなものです。毎日 夜に私は 会社のエンジニアたちと電話会議 (conference call) をする。この頃では,Sprint のエンジニアも加わって,深夜の2時,3時まで。Sprint のやつらは,クリスマス休暇の間まで働くのは これが初めてだと言う。私が強制しているわけではありませんよ。楽しんでやっている。喧嘩になると いつでも 非常に興奮し,集中します。8ヵ月前には,とても大きな意見の不一致がありました。大論争になり,テーブルを叩き,叫び合う。今では一緒にやっている。私はとてもハッピーです。戦仲間のようなものです。戦に行けば,結びつきは強くなる。
     あなたは これ以上 初期段階の投資をなさらないというニュースがありました。あなた最高の賭けのいくつかは,そういう投資から生まれたものなので,驚いています。
     小さかろうが何だろうが,意味のあるものならば,我々は投資を続けるつもりです。
     [Nikesh が補足する]:
     Son が 馬雲に投資したとき,さっき言われたように,あれは趣味でした:彼は たったの $0.2 億を投資した。それが いまでは $450 億の値打ちになっている。
      [しかし,あの時よりも] 我々は 今では遥かに大きい。いま もしも $0.1~0.2 億 級の投資を我々がすれば,沢山 [の案件に] 投資する必要に迫られる。次の馬雲を探すためには,趣味の段階から組織化 (institutionalizing) する点にまで引き上げる必要がある。いまの世界に,このような長期投資を好んでしようという投資家の数は多くはない。この点で,我々は有利な立ち位置にいる。さらに,我々の ベンチャー・キャピタル活動の強さを減らすことにより,世界中の多くのベンチャー・キャピタルと連携することが可能になる。Masa はとても多くの友人を持っており,そういう人たちが彼や私のところに来て,これこれの会社に投資しないかと言ってくる。
     2014 年に,10 年でインドに $100 億を投資するとおっしゃいました。これまでに いくら投資なさいましたか?
     10 年で $100 億と確かに申し上げました。この1年では,$20 億を投資しました。ですから,予定を超えて投資していますし,これをさらに加速するつもりです。わが社のソーラー投資は,大きなものになります。もしも 10 GW の発電をすれば,それだけで $200 億です。ですから,合計すれば,10 年で $100 を超えるでしょう。
      ソーラー投資の背景には,どんな投資基準をお持ちでしょうか?
     私は 電気については何も知らないし,興味も無い。私は,インターネット革命で忙しかった。
     しかし 4年前の地震の後で,私は大声を挙げるようになった。なぜなら,モバイル・ネットワークのクラッシュに責任を感じたからだ。わが社の競争相手のネットワークも 同様にクラッシュした。だが,向こうは政府お抱えの会社なので,我々よりも多くの電源 (power) を供給してもらえた。わが社のネットワークの方が,接続が悪かった。もしもわが社のネットワークがもっと良ければ,死ぬ人の数は少なかっただろうと私は想像する。私は,自分自身に かなり腹を立てた。自分は かなり罪深いと感じた。
     日本は,エネルギーの 30% を核エネルギーに頼っている。これは,減らさねばならないと思った。また,環境汚染の問題があるので,石炭に依存しすぎるのもよくない。答は,再生可能エネルギーだ。我々は 現在,日本で再生可能エネルギーを提供しているナンバー・ワンである。インドでは,電力が十分でない。だから 私はインドの需要をサポートできると思う。以上が,ソーラーを増やそうと決断するに至った過程である。神は優しい;インドに沢山の日光を与えてくれる。インドは,日光が日本や欧州の2倍ある。
     インドで追いかけておられるテーマは 他にありますか?
     風力エネルギーにベンチャーするかもしれません。日本では風力をいくつか始めましたが,電力のコストが極端に下がるのは,何といってもソーラーです。ソーラーならば,立地条件がかなり緩いので いろんなところに建設できますが,風力は 場所が限られる。風力とソーラーのミックスが 実際には うまい組み合わせです。
     馬雲については,どんな違いがある人だとお考えですか?
     彼自身は,"自分は数字に強くないし,プログラミングもできない。PC も大して使っていない。会計も理解していない。" … と言っている。高校時代には 数学の成績が 1/5 だったと大ぴらに言っている。しかしこんなことを言う奴は,自信家だ。彼は リーダーシップ [リーダーになる素質?] を持っている。真のリーダーシップだ。水に飛び込めと彼が言えば,100 人が飛び込むだろう。彼は ビジョンを持っている;哲学と言ってもいいかな。いちいちの細かいことは知らないとしても,よく知っている人を見つけて,頭数をそろえることができる。中国では,そういった能力は 非常に強力だ。
     地元の企業家の長期的な力をあなたは信じておられますが,アマゾンと Uber は,インドでは 巨大な存在感を示しています。それでも,地元からチャンピオンが浮上するとお考えですか?
     向こう 10~20 年に,地元のチャンピオンより有利な立場にあるグローバルな存在は 大して無いだろう。実際,地元は,地元文化を知っているという強みがある。グローバルな方は,いちいちのマーケットに合わせて 簡単にプラットフォームを変えることができない。彼らは規模の利益を持っているが,それが裏目に出る。
     地元の企業家は 成功できるでしょうか?
     非常にスマートな人たちなので,できます。地元の企業家は,グローバルな企業の副総裁なんかより 大きな情熱を持っている。たとえば,これまでどんな実業家が経験したこともないような失敗を あなたがやらかしたとする。でも,そこから なおさら大きな成功を得られます。失敗したと気づいたとき,あなたは 自分に何と言いますか? あなたが失敗したと思っている周りの人に何と 言いますか? 私なら 言い訳はしません。困難が大きくても,私は自分で解決すると言います。ところが もしもあなたが言い訳をするとか 他の人のせいにすれば,あなたの頭は考えることをやめてしまう。私なら 自分自身に言い訳は許しません。理由が何であれ,私の責任です。
     中国とインドで企業家にどんな大きな違いがあるでしょうか?
     企業家は,国籍が違っていても その結びつきは強い。インド人,中国人,アメリカ人,日本人,どんな国籍であれ 企業家は 目に強い輝きを持っている。
     企業家として,Bill Gates と Steve Jobs を超える人は いないだろう。
     この2人は どちらも天才であり,超スマートである。Gates が事業に忙しかった頃,彼は 企業家のなかで最もスマートな存在だった;彼の集中力はものすごく,マイクロソフトを世界一の会社にした。しかし,Steve の場合には ── 私は彼を知っているのだが ── 彼が アップルを挽回しようと苦戦しているときに知り合った。彼は 当時 インターネットに関心があったが,それほど集中しなかった。そのとき,まだ iPhone を作っていなかった。しかし,彼は 私が 絶対に高く買っている1人である。私は ほぼ毎月 彼と会うようになった;そのとき彼は既に癌に罹っており その命は限られていた。だから,何をするにしても,時間の無駄になることはしたくなかった。人々のライフスタイルを変えるかもしれないような ただ1つのことだけに集中していた。彼の集中力は ── 目の強さは,非常に違っていた。
     Jobs と話したことの中で,何か頭に残っていることは?
     私は,彼にアイデアを 沢山やった。そのほとんどに 彼は No と言った。彼は,沢山のことを自分で言って,自分で決める。彼は 最小限主義者 (minimalist) だった。1つのソリューション,1つの答。ノイズはすべてカットして最善を求める。妥協は全くしない。
     "ソフトバンクのロゴはみっともないから,俺と一緒に事業をやりたいなら あれをやめろ" と スティーブ・ジョブズに言われた。だから,彼の気に入られるように,今のソフトバンクのロゴに変えた。
    こんな記事を インドの報道に 偶然 見つけたので,翻訳しました。
     途中でちょん切れていたと思ったのは,とんだ間違い。ブラウザを変えて見ると,3倍の長さでした。
     その後に,まだまだ目を見張るようなことが書かれていた!
    ──────
     日本では ほとんど語ることの無いようなことを 孫さんがインドでは赤裸々に語っています。
     ちょうど,旅行に出た人が,気が緩んで 知らない人にベラベラしゃべるような印象を受けます。
     でも とにかく面白いですね。Nikesh が来る前の投資判断は,孫さんの1人の直感で趣味でやっていた。
     それではダメなことも分かっている。だから Sprint がダメなことも分かっているのでしょう。
     アリババは 5分で即決だったという WSJ の報道がよく理解できました。まぐれ当たりということも分かっているのでしょう。
     ソーラーを始めた理由も丁寧に述べている。
     「言い訳論」も実に面白い。
     けど … NISA でソフトバンク株を買った人がこれを読んだら,どう思うだろうね?

  86. 「ペッパーの夢を見て号泣して目が覚めた」ソフトバンク・孫正義社長に聞く
    日経ビジネス,2016/01/21(木)
     By 大西 孝弘
     ソフトバンクグループのロボット「ペッパー」が順調に販売を伸ばしている。2015年6月から毎月1000台を完売している状態だ。2015年末までに累計7000台を販売し,ヒト型のロボットでは世界最大の販売台数と見られる。生産能力が増えたため,1月末から店舗やホームページでいつでも購入申し込みができるようになる。
     一方,まだ期待ほどの性能に達していないとの声もある。会話を特定のパターンに誘導することが多く,現状では人間ほどの当意即妙の会話は成り立ちにくい。
     そのペッパーは今後,どのような方向に向かうのか。孫正義社長に聞いた。
    インタビューに答えるソフトバンクグループの孫正義社長, 右側は 先週土曜日 WSJ に掲載された。
     記事そのものは,上のリンクからお読みいただくとして,この写真に自然と目が行きませんか?
     な~んか,町工場の社長さんが資金繰りに くたびれ果てて (笑) … という感じ。とても大会社の社長さんには見えませんよね。かなりの心労が蓄積されているとお見受けしました。
     比較のために,先週土曜日の WSJ 記事で採用された写真を右側に張り付けました。インド投資を増やすぞ! という記事です。2015 年11月の決算説明会での写真だとのことです。
    ──────
     ところで,この記事の中で,孫さんは 人工知能 (AI) について かなり沢山の専門用語を持ち出して,蘊蓄を傾けておられるのですよ。ここで浮かび上がる自然な疑問は, 「それほどまでに 人工知能やロボットに昔から関心がおありなら,なぜ 10 年くらい前から 社内に『ソフトバンク人工知能研究所』を設立して,内外から大物研究者を集め,大々的な研究をして,これをソフトバンクの将来の重要な核として育てなかったのか?」という疑問です。スプリント買収よりも 自然に浮かび上がるはずの発想だと思います。
    ──────
    ペッパー (故障くん (?) とは,孫さん,うまい命名だ (笑) ) が失敗している理由は,人の心を非常に良く読む能力が高いのに反比例するかのように,自分の感情を表情に表せないことである。人間同士の会話は,その 90% が言語以外の手段により情報を伝え合うことによるという。故障くんが 眉を1㎜ 上げるとか,頬っぺたの膨らまし方を調節するとかいう芸当ができて (そういうロボットは,いくつも生まれている) ,胸の前のおかしなカンバンを外すことができれば,大きく変わるだろう。要するに,人間であるこちらが伝えるのと同じやり方で 故障くんがその気持ちを表現してこなければ,人間は気味が悪くて,相手にできない。
    ──────
    [2016/03/22] 行きつけの駅前の歯科医院に定期健診に言ったら,なんとペッパーくんが立っていた。 受付の仕事でも少しくらい任されたのか (?) と思ったが,そうではない。ただ 単に立っているだけだった。
     面白いので,待ち時間の間に相手をしてみた。
     こちらから 「こんにちは,ペッパーくん」 と呼びかけたが,びっくりしたような目つきで応答無し。 固まっている (笑)。見知らぬ人から声を掛けられた子供が怖がっている時のような反応を示す (そういう意味では,確かにヒューマノイドである)。フランスの Aldebaran から技術導入してこしらえた「本格的な人型 (humanoid) ロボット」で,フランス語ができるという触れ込みを思い出して,"Tu parle français ?" と話し掛けてみたが,これにも応答無し。せめて「僕,わかりません。 もう一度」くらいは 言ってくれなくちゃ 困るよね。英語もダメ。
     ところが,しばらくすると,向こうから話しかけてきた:「主婦の労働は時給 いくらになると思いますか?」これに受け答えすると,会話は続いた。結局,ロボットが自分から話題を振ってきた場合には意思疎通できるのだか,こちらから話しかけるのではダメらしい。人間がロボットのご機嫌取り … というのは おかしい。
     これ1台から結論を引き出すのは乱暴かもしれないが,しかし こんな風に「展示」されていれば,世間の人は「ソフトバンクのロボットって よく報道されるけど,こんな程度のものなの」… これは,一緒に行った家内の感想でした。
     最後に分からないのは,なぜペッパーが小さな歯科医院に置いてあったのか?
     保守料金も含めて3年で \1,080,000 という高価な, しかも何の役にも立っていない 場所ふさぎの ロボットを 喜んで買うはずがありません。… ということで,ここから先は全くの想像ですが,毎月 1,000 台売り切れと言うのは,事実ではあろうが,押し込み販売なんでしょうね。買わされたところは,仕方ないので,無料で (あるいは金を払って) 歯科医院などに置かせてもらって宣伝する。費用の一切は ソフトバンクが負担しているんでしょう。
     ペッパーで不思議なのは,導入されたという報道は いくつかあるけれど,それが非常に成功したという報道が全く無い。同様に 大失敗でやめたという報道も無い。
     ロボット学会とか 人工知能研究者からの評価も無い。困っているんではないかな (笑)。ひどいものだから貶したいのはやまやま。なれど ロボットへの世間の関心を盛り上げてくれたと言う功績だけは ありがたいからね (研究費が取りやすい)。

  87. Is It Time to Look at Developing Economies for Growth?
    今こそは,新興国の成長を見据える時か?
    Market Realist, 2016/01/19, 09:14 am
    By David Ashworth
    世界銀行が半年に1回まとめる 世界経済見通し報告は,2016 年1月に,新興国経済が (2014 年 +4.5% であったが) 2015 年には +3.7% 成長を予想した。2016 年については,世界銀行は +4.2% を予想する。その後 2017 年は +4.8%, 2018 年は 4.9% となっている。
     < 以下,中略。仰天した部分だけを翻訳します (笑)
     保守的な投資家 および 短期, 中期のゴールを目指す投資家に取って,新興国そのものに投資すべきではない。これらの投資家は,American Funds EuroPacific Growth Fund - Class A のようなミューチュアル・ファンドを使って,アメリカ以外の世界中の株式を含むように多様化させることができる。このようなミューチュアル・ファンドは,290 以上の株式に投資しており,たとえば,SoftBank Group, Prudential, Baidu, Ryanair Holdings のような株にエクスポージャを入れている。
     要するに,新興国に投資したいが よく分からないアメリカの投資家が,そのための ミューチュアル・ファンドに向かう。ミューチュアル・ファンドは,SoftBank のような 290 銘柄に投資する。
     なぜか? SoftBank が新興国日本の代表銘柄だから? SoftBank が新興国に投資している会社だから?

  88. Indonesian court approves suspension of Trikomsel's debt payment
    インドネシアの裁判所が,Trikomsel の債務返済の延滞を認める
    United News of India,2016/01/04, 05:40 pm
    By Eveline Danubrata (Reuters) (ジャカルタ)
    インドネシアのモバイル電話小売業者 PT Trikomsel Oke Tbk は 本日,ジャカルタの商業裁判所が, 債権者の中の1人の要請により 債務返済義務の延滞を承認したと発表した。
     2.15 億ドル相当の債券をシンガポールで発行した Trikomsel は,世界金融危機以来 初のデフォルトを 都市国家 [=シンガポール] の債券市場で行なうことになっていた。
      なお Nikkei Asian Review で Trikomsel を検索するといくつかの記事が見つかる。
      その中には, 「Sugiono に 日経がインタビュー」とか,「Brightstar と提携」というのもある。
      デフォルトとか延滞する会社なのに,株式は上場されたままで,高値に張り付いている。
      上場されており,しかも高値をつけている株を 減損償却したソフトバンクの不思議。
      一体,誰がどう説明してくれるのか。ソフトバンクは裁判を起こす気があるのか?
      日経さん,インドネシアに詳しいようだから お願い!

  89. インドネシアの Trikomsel Oke 株が,12月30日に 25% 暴騰した。
    FT.com 2015/12/30
     これは,インドネシア証券取引所での株価情報を FT が伝えているもので,記事ではありません。
     しかし,この数字には驚かされる。
       ソフトバンクは (隠しているが) 2015年3月27日に Trikomsel の株式 19.9 % を買った (株数不明,金額不明)
       その後のロイターの報道によれば,Trikomsel の現金+現金同等物が僅か9ヵ月の間に 6,124 億ルピアから たったの 277 億ルピアに減少した (つまり,ほとんど全額が 神隠しに遭った!)
       ソフトバンクは,11月4日 394.9 億円の減損処理を発表した。
     分かっているのは,ここまで。これに,上の株価暴騰が加わった ・・・ というわけです。
     何故 このような愚かな (他に言いようがない) 投資ごっこを 社長と総裁がしたのかは,話がややこしくなるので ここでは 棚上げにして ・・・ 。 何が起こったのか ・・・ 常識的に考えられるのは,お父さんが 計画的に 嵌められたのでしょう。
     ともかく,ソフトバンクが上場会社である以上,これらを合理的に説明する義務がある。この義務を回避する社長は 解任されても文句は言えない。ともかく 今のソフトバンクは逃げている。株主をナメている。
     と言って息巻いても (笑),個人株主には手が出ない。半年後の株主総会で誰かが質問する可能性はあるが,例の 「1問だけ,短く短く」と急かされたら何も言えないね。株主総会というのは 本来 何時間掛けても 株主に説明する場の筈だけれど,孫さんは「オレの会社」と思っているから,そんなつもりは 全然無い。
     では,報道に期待できるか ・・・ と言うと,すべて ソフトバンクの息が掛かっている。とくに日経は「大筋合意」なんてまるで無いことがはっきりしているのに なぜか 「大筋合意」というタイトルの記事を書いて,積極的に日本の株主を騙した。その後,世紀の大誤報への反省・検証記事も お詫びの記事も無かった。
     外電はどうかというと,その日本語訳は,これまた全部 息がかかっていて,適当に部分削除 または 全く翻訳されない [例:B, R 両社の Trikomsel 記事] から 頼りにならない。ほんと Wall Street Journal まで骨抜きなのだから呆れる。
     残りは週刊誌だが,経済問題まできちんと伝える力は無いでしょう。訴訟の危険があるからね。
     というわけで,株主として 頼リにできるところは無さそう。泣き寝入りしかありませんね。
    ──────
     上の FT.com のサイトに行って,"Summary" をクリックすると,株価推移を見ることができる。
     案の定,SoftBank の買いが 株価を吊り上げた。4月に跳ねている。
     不思議なのは,デフォルトを発表した9月頃に株価が下がっていないことである。
     このチャートを見る限り,この株価なら ソフトバンクには利益が出ているから,減損償却の必要は無いように見える。なぜ 11月4日に 気前よく減損償却をしたのか? 何か理由があって,Trikomsel の株を $0 で手放したのか? ますます 分からない (笑)
     結局 ・・・ ソフトバンク (の株主) が損した 400 億円は,誰かの懐におさまり,その人はほくそ笑んでいるのだろう。ほくそ笑んでいるのは,一体 誰なのか ? Trikomsel は ホントに倒産したのか?

  90. JT の素人集団が買収のプロになるまで
    日経ビジネス,2015/12/21 (月)
    日本たばこ産業 新貝康司 (しんがい・やすし) 代表取締役副社長
     慶応義塾大学大学院経営管理研究科 (慶応ビジネス・スクール) が開設したエグゼクティブ向けプログラム「Executive MBA」。
     大型海外 M&A の計画, 交渉, 統合などを成功に導いてきた新貝康司・日本たばこ産業 (JT) 代表取締役副社長の授業の後には,受講者との間で質疑応答が繰り広げられた。
     買収先の国民性や文化によって起きる問題の乗り越え方, M&A 能力向上の方法,買収が完了し統合した後のフォローの仕方,トップの決裁の範囲などの実務に関する質問に対し,新貝氏は自らの経験や実例を基に具体的かつ詳細な回答を示した。(取材・構成:小林佳代)
    【 M&A 全体について】
     ── M&A は買収先の国民性,文化等によっても予想外の出来事が起きることと思います。JTはどのように乗り越えてきたのでしょうか?
     新貝:英ギャラハー買収を例に説明しましょう。
     ギャラハー買収直前の JTインターナショナルは,米国企業でもないし, ヨーロッパ企業でもないし, 日本企業でもないということを社員が みなある種,誇りに思っていた企業でした。パーフェクトに達成できていたわけではありませんが,欧米企業の経営,日本企業の経営の良いところを学んで,自分たちの血肉にしていこうという志を持っていました。
     「アイリッシュだけを大事にするわけではない」
     一方のギャラハーはどうだったかというと,執行取締役5人全員がアイルランド系イギリス人でした。ギャラハーは北アイルランド発祥の企業です。アイルランド系の人でなくては トップに上り詰めることができないという不文律があったようです。
     我々は,まず執行取締役と彼らから推薦してもらった次世代の役員候補合計 50 人ほどの社員と直接面接を行ないました。我々の志にかなう人を役員で残していきたいという思いからです。統合作業で本当に大変な時期でしたけれど,当時の CEO と私が別々に,1人ひとりと面談しました。
     そして,誰を役員に残すか,誰を部長クラスに付けるかということをトップダウンで決めていきました。そして,実際にアイリッシュ系イギリス人以外の人物も重用していきました。人事そのものが「我々は もはやアイリッシュ系イギリス人だけを大事にする企業ではない」というメッセージになったと思います。
     グローバル企業として,こういう変革を世界に発信できたのは,その後の経営にとってもプラスだったと思います。
     大規模買収は,究極の経験者採用
     「大規模買収は,究極の経験者採用である」。私は こう思っています。この買収前,事業拡大に伴って人材が逼迫していました。特にミドル・マネジメントの良い人材をできるだけ辞めさせずに統合を進めることは,非常に重要な課題でした。ギャラハーの場合,トップに近い人たちの面談をフェアにしたことが 口コミで伝わり,ミドルの引き留めに非常に大きな効果があったと思います。こうして,ギャラハー買収後も JT インターナショナルは,日米欧企業のいいところ取りをする経営を実現していきました。
     日本企業の多くは,オペレーションのベストプラクティス [最善の慣行] を海外に持ち込み,共有し,自分たちのオペレーションの卓越性を高めながらグローバル化していくというスタイルを採ります。
     ただし,そのベストプラクティスは,例えば,日本における「教育レベルのばらつきが少ない」という背景がある中で作られています。中には国民の多くが文字を読めないという国もありますから,日本でのベストプラクティスをそのまま現地に持ち込んでも,うまくいかない場合も出てきます。
     対して,欧米企業は,本社が決めたミッション,ビジョン,戦略,戦略の進捗を測定する KPI (重要業績評価指標) といった戦略フレームワークを持ち,この戦略フレームワークを守らせることで,各国のグローバル化を進めるというスタイルを採っています。戦略フレームワークの範囲内であれば,個々の国のオペレーションの方法論を現場に委ねるケースが多いです。
     日本企業は,オペレーションを統制しようとする。欧米企業はストラテジックフレームワーク [戦略の枠組み] で統制しようとする。この差はすごく大きいですね。どちらがいいという二元論ではなく,いいとこ取り,アウフヘーベン [止揚] すれば いいわけです。それが我々の経営の根幹にある考え方です。
     現地の経営陣が「これならいける」,「こうやった方が自分たちの生産性が上がる」と確信できたら,自分たちでやるはずです。押しつけるのではなく,現地の人間が 自分たちで決めたと思えるようなアプローチを工夫することが大事です。
     ── 海外で M&A を仕掛ける際には民間企業だけではなく,国営企業や軍関係などやや特殊な組織を相手にするケースも出てきます。どういう点に気をつけるべきですか。
     新貝:一言で言うと,制裁に抵触しないことですね。
     今,米国は経済制裁を一種の武器として使っています。自分たちが買収しようとしている組織や企業, あるいは その主要人物が制裁の対象になっていないかを見極めることは重要です。
     JT は,今年 イランのたばこ会社を買収しましたが,例えばイランでは特定の組織や人物と取り引きを禁じる制裁が発動されています。イランのたばこ市場でナンバーワン企業である我々は,常にそのリストを見ながら取り引きする相手を見極めていました。
     スーダンでも同じです。買収先が制裁に抵触していないことに最大限の注意を払ってきました。これは must です。
     制裁対象の組織や人と取り引きすると,金融機関は制裁を恐れ決済を停止します。その国の中で商売ができなくなります。甚大な被害を受けます。評判も落ちる。禍根を残すことになりますから注意が必要です。それに尽きますね。
     ── ご本には,JT が M&A を検討し始めた段階では M&A の部隊も素人集団だったと書いてありました。その素人集団の能力をどうやって高めていったのか,何がポイントになったのかを教えて下さい。
     新貝:やはり M&A の実務を通じて徐々に人が育っていったのだと思います。JT 最初の大型 M&A は, 1999年, 米 RJR ナビスコの米国外たばこ事業会社 RJRI の買収ですが,その前の 1992年には 英マンチェスター・タバコを,1998年には鳥居薬品を買収しています。
     「買収し,運営してみる」経験が重要
     小規模買収で買収自体の経験を積むことも重要です。が, それ以上に買収後,そこを経営していくことを通じて,バリューチェーン全部を持ったら何が起きるかを想定する機会を持つことに大きな意味があります。買収後の経営の青写真を作るためには,買収後にどんなことが起きるか,何が大事になるのかを知っておくことが必要ですから。
     ギャラハー買収前には,世界中でギャラハーと JT インターナショナルが競争している状態でした。主要マーケットをどう統合するのか;マーケットごとに,どのブランドを優先するのか;どれぐらいの営業部員を置くのか;工場をどう再編するのか;国ごとの本社所在地をどちらにするのか ・・・ 。こういう問題が持ち上がることは,実際に統合後の経営をしてみないと分かりません。
     最近では,投資銀行を採用して買収チームを作っている企業が多いと思いますが,それだけでは不十分です。銀行の仕事はクロージング [買収契約完了] で終りです。 [銀行が] 実際に経営をするわけではないので,統合後に起きることを洞察し,買収後経営の青写真を描き,それに基づいて事業の評価をするとか,デューデリジェンス [資産評価] 上の課題を発見するといったことまでは できません。また,実際には買収後経営の青写真を描けてこそ,適正な買収価格を割り出すこともできるのです。
       M&A 能力向上のためには,どの国でも構わないのでバリューチェーン全体を1回持って運営してみるということが必要だと思います。JT の場合も,マンチェスター・タバコ買収という最初の小さな経験があったからこそ RJRI がうまく行ったし,そこで色々な国での経営経験をしたからこそ ギャラハーとの統合を乗り越えることができたのです。
     【買収後の統合について】
      ──「統合の現場では規程外のことが起きる,それはトップが判断しなくてはいけない」というお話がありました。しかし日常的な業務の範囲内として現場が判断すべきものもあるはずです。どこまでを現場に委任し,どこからをトップが決裁していたのか,教えてください。
     新貝:「有事は集中」,「平時は分散」という原則がある,そして M&A は有事である … とお話ししました。しかし,おっしゃる通り 当然ながら統合作業途上においても,現場が判断すべきものも多々あります。
     そこで我々は平時に向け,オペレーティング・ガイドラインと呼んでいる「責任権限規程」を策定していました。これは日々の仕事を行う上で絶対に必要ですから,クロージングの瞬間に発効するように準備をしておきました。
     責任権限規程は 40 ページほどあります。ある案件について,誰が,どれぐらいの金額まで決裁する権限を持っているかということを詳細に定めています。JT 本社が承認すべき事項も明記しています。
     JTインターナショナルは,電子意思決定システムを使っていますので,旧ギャラハーの従業員に使い方を習得してもらうために,クロージング前に講習会を開きました。
     資金の流れという意味で言えば,基本的に例えば小切手を振り出すような場合に,誰がサインできるのかということも 世界中の銀行と契約を更新しなくてはいけません。そういうことも事前準備として行っていました。
     この責任権限規程が効果を発揮するのは,あくまで平時のことです。これでは足りない局面は,しばしば出てきます。問題はそれをどうするかです。
     責任権限規程の改廃を司っていたのは,JT インターナショナルの CFO でした。想定外のことが起きた時には,すべてそこに一度判断を振り向けるようにしていました。既存の責任権限規程を活用して意思決定できるものもあれば,規程に盛り込まれていない類のものもあります。
     後者のケースは責任権限規程を書き換えなくてはいけません。場合によっては,東京の JT に話を持ちかけて決めてもらうということもやっていました。
     ガラス張りで「見られている」緊張感をつくり出す
    ── 買収する際には統合を見据えておかないといけないということはよく分かりました。実際に統合後,たとえば1年後,2年後にはどのようなフォローをしてきましたか。
     新貝:統合後のフォローで一番大事なのは,思ったようにシナジーが出ているかどうかを確認することです。
     すべての意思決定は,責任権限規程に基づいて電子意思決定システムの中で行われます。そのシステムの中から,シナジー計算に含めている項目を抜き出して,プランに描いたような利益やフリーキャッシュフローにつながったかどうかをフォローしています。
     JT と JTインターナショナルとの親子関係は,しばしば「任せる経営」と表現されます。よく誤解を受けるのですが,決して放任しているわけではありません。「適切なガバナンスを前提とした任せる経営」だと自負しています。
     責任権限規程を精緻に作り,それに則らなければ何も決められないようにしていますし,さらに重要なことには,電子意思決定システムでの最終意思決定者の決定は上席の役職者が見ることができるようになっています。
     例えば,JT でたばこ事業全体を統括している副社長は,電子意思決定システム上で行われた JTインターナショナルの役員たちが最終意思決定者になっている意思決定をすべて閲覧できる。ガラス張りで,「見られている」緊張感を生み出し,自らを律して意思決定を行う効果が期待できるシステムになっています。これは非常に大きなポイントだと思います。
     実は初めから緊張感をつくり出す効果を狙って電子意思決定システムを導入したわけではありません。役員が世界中を飛び回っているため,電子意思決定システムを活用したのであって,ガラス張りになったのは,ある種偶然の産物です。しかし,それにすぐに気が付き偶然の所産を生かしたことは,我々にとっては大変に幸いだったと思います。
     ガラス張りなのは JT と JTインターナショナルの関係だけではありません。JTインターナショナル内でも同じです。JTインターナショナルの役員も,最終意思決定者になっている自分の部下の意思決定をすべて見ることができます。トップはそういう安心感があり,部下は見られている緊張感を味わっているわけです。
     構造改革が今の JT のカルチャーを作った
    【経営全体について・その他】
     ── JTがグローバル企業として成長を果たした要因の1つに,国内での厳しい構造改革の徹底で何千人もの従業員を削減したことも挙げられると思います。改革を行った経緯と,それがうまくいった要因を教えてください。
     新貝:JT は,2003年に「JT PLAN-V」という中期経営計画を発表しました。
     この計画策定には,背景があります。
     1999年,我々は RJRI を買収しました。以後,世界中で米フィリップ・モリスが持つトップ・ブランドの「マールボロ」と熾烈な競争を展開するようになります。
     ところが 当時,日本での「マールボロ」の製造販売は,我々がライセンスを受けていました。世界で戦っているブランドを 日本では自分たちが育てる――。こういう矛盾した状態になっていたのです。
     当時,「マールボロ」は JT のたばこ販売数量のほぼ 12% を占め,500億円の限界利益を得ていました。このブランドがなくなれば,約 500億円の営業利益を失うことになるのです。
     契約を更新するか終了するか ・・・ これは 難しい選択でした。しかし,捩れた状況を続けることはできないと判断。2005年4月に訪れる契約更新のタイミングで,日本での製造販売をやめようということにしました。
     こうした背景があって,2002年,2003年ごろには「大きな合理化をしないと,国内たばこ事業自体の利益が出なくなる」ということを肌身で感じるようになりました。RJRI 買収直後ですから,大きな買収はできません。むしろ我々が買収される側に回るかもしれないという危機感もありました。
     当時は増益下でしたが,あえて合理化を検討するプロジェクトを立ち上げます。今,我々の置かれているビジネス環境はどういう状態であるかということをプラン検討最中に現場を回りながらディスカッションして情報を共有しました。
     プランが出来上がり,発表した直後には社長, 副社長, 部長, 事務局が全国を回り, 27回にわたってフェース・トゥ・フェース・ミーティングを行ないました。管理職とは全員,一般社員も参加を希望した全員の 4000人と直接対話をし,質問が出なくなるまで議論を重ねました。
     英語が苦手だったことが幸いした
     この結果,17,000人の社員のうち,3分の1の 6,000人が希望退職に応じて会社を去りました。「合理化の後,JT はさらに本格的に海外に出て行く。このバスに乗りますか,乗りませんか?」と問いかけ,残ったのが今の社員たちです。
     「JT PLAN-V」が無ければ,JT は 今のカルチャーになりきれていなかった。グローバル企業としての JT は存在し得なかっただろうと思います。
     ── 社員が「やらされている」感覚を持たないようにする,当事者意識を持つようにするためにはどうすれば良いのでしょうか。
     新貝:これは大変難しいことですが,我々はオペレーションをする人に,一緒に戦略構築をしてもらうようにしています。戦略構築をした人が,オペレーションをする人に「これに決まったから,やっておいて」というようなプロセスにならないよう,気を付けているのです。これは「言い訳の構造をつくらない」ためです。
     JT が大型買収の発表をすると,その直後から ありとあらゆるコンサルティング会社の知り合いから,「統合計画を一緒に作りましょう」というオファーが舞い込みます。
     全部断ります。
     なぜかというと,紙の上では素晴らしい統合計画が出来上がるに違いないけれど,それがうまくいかなかった時,「初めから無理だと思っていたよ」という言い訳が出かねないからです。
     とても大変でしたけれども,オペレーションのカギを握る人と一緒に統合計画をつくることを徹底してきました。ギャラハー買収では,統合計画をつくる際には 50 ほどのプロジェクトが動きました。そのヘッドには,ファンクションを担当する役員やマーケットを統括する役員に就いてもらいました。こうしてオーナーシップ,当事者意識を持ってもらう工夫をしました。
     ── 新貝さんは M&A の仕事を通して,世界中の企業の様々な職位の社員と接点を持つようになっています。 ご自分の中で,「これがあるから周囲の人が協力してくれた」,「ついてきてくれた」と思うポイントは何ですか。
     新貝:1つ良かったのは,日本語だとベラベラしゃべる,すぐ口を挟みたくなるけれど,英語だと控えられるということ(笑)。語彙も少なくてパッと言葉が出てきませんから,要らないことを言わずに済みました。
     役職の「役」は,配役の「役」
     私はもともと英語が大変苦手で,「この会社なら英語を使わなくて済む」などというある種 後ろ向きな動機もあって,当時の専売公社に入りました。それがまさか,自分の好奇心にドライブされて,12年間も海外に身を押し出すことになるとは思いませんでした。
     最初に米国に赴任して以来,日本語でも一言言われたらすぐに二言,三言返すのではなく,ちょっと一呼吸置いて返せるようになりました。苦手だった英語のおかげだと感じています。
     「役職」の役は「配役」の役だと思います。その会社で仕事をしている時は仮の姿。自分のパーソナリティーを全部出しているわけではない。時には役を全うするために「演じる」こともあります。それが,仲間と一緒に仕事をする上では重要なことなのではないでしょうか。

  91. SoftBank's Arora promises progress at Sprint: 'I'm here for at least the next 10 years'
    ソフトバンクのアローラが,スプリントの前進を約束する:"私は少なくともこれから 10 年はここにいる"
    FierceWireless, 2015/11/25
    By Mike Dano
    前グーグル幹部で現在は SoftBank の総裁である Nikesh Arora が言った:将来の Sprint についての相次ぐ懸念に心配していない。"私は,非常にリラックスしている。" … と Arora は ブルームバーグに語った。"私は 少なくとも これから 10 年は ここにいる。"
     長文のプロフィールで ブルームバーグは,Arora が 子ども (child) のとき 僅か $200 を懐にインドを離れたことを伝える。今日 彼は,リスクを取ることを恐れない 革新的投資企業に SoftBank を 転換すべく働いている。"自分の家族を守ってやれる限り,リスクを取ることに問題は無い。" … と Arora は説明した。
      Bloomberg によれば,Arora は 現在,Google や LinkedIn の同類から 最大 20 人のチームを雇い,毎年 約30億ドルをスタートアップ企業に投資する。彼は,1年に 1億~10億ドルの投資を 5~10 件行なう計画である。Arora によれば,その目的は SoftBank を,これまでチマチマした投資記録の 日本の通信会社から 革新的なパワーハウス [=発電所,英語では良い意味に使う] に転換することである。
    以上が,FierceWireless による「一問一答」ではない方の Bloomberg 報道のまとめです。省略はしていません。

  92. 'Money To Be Made' at Every Investment Stage, Arora Says
    投資のどんな段階でも金儲けをする … と アローラは言う
    Bloomberg, 2015/11/25, 07:34 am JST
    By Pavel Alpeyev & Takashi Amano
    Nikesh Arora は,SoftBank Group に昨年雇われ,以後 総裁に昇格し,創立者 Masayoshi Son の後継者と目されている。
    この写真はキャプション無しだが,もう1つの記事のキャプションは ・・・
    「東京の SoftBank 本社で写真撮影にポーズを決める
    総裁兼最高執行責任者 (COO) ニケシュ-アローラ」。
    Kiyoshi Ota/Bloomberg )
     SoftBank では,前グーグル幹部が 世界中にベンチャー投資を行なうチームを形成しつつある。彼らは,証明済みの商品を持ち,今まさに成長せんとする成熟したスタートアップ企業に投資を狙う。
     Arora は,Bloomberg の東京ニュース記者室に腰を下ろし,彼の戦略, SoftBank の課題, SoftBank の株を $50 億弱買った決断を語る。以下は,その抜粋を編集したものである。
     (1) SoftBank は なぜ成熟したスタートアップ企業に的を絞るのか?
     時価総額 $10 億超に評価される会社は 150 余ある。これを $5 億超にすれば,そぅ 1,000 社ある。この 1,000 社が我々の (ソフトバンクの) 宇宙 (universe) である。我々は この 1,000 社の宇宙を解釈することができると思うし,限られた資源で理解することも出来ると思う。我々は 有限の範囲の会社に集中し,それらを理解し,超長期に亘って注目していくつもりである。
     (2) SoftBank の投資リスク
     適切な会社を特定する限り,如何なるステージでも金儲けはできる。投資に遅すぎるということは 絶対に無い。小切手が高額であればあるほど,評価のピラミッドで高いところまで行けるし,的確さは増す。だから ベンチャー資本会社が 10 回のうち2~3回 当てねばならないのならば,我々は 10 回のうち4~5回 当てなければならない。宇宙全体を知っていれば,10 回のうち4~5回 当てるのは,遥かに易しい。
     (3) Arora の投資チームは,スタートアップ企業に何を提供するのか?
     企業というものは,或る規模に達すれば,投資戦略を必要としない。資金集めの必要も無い。必要なのは 営業の洞察力である。 [これがあれば] 同じ間違いを繰り返すことはない。
     You are a $500 million company; you have 500 to 1,000 people. For the first time, you are doing things which you haven’t done. It’s usually not a product thing — they know their customer better than we do. It’s kind of like table stakes — all the good companies have gotten them right. All we are doing is reducing the risk of getting them wrong.
     (4) グーグルから得た教訓
     スタートアップ企業が いま 下す決断が,成長するに連れて巨大なインパクトを持つ [ということだ] [グーグルについて言えば] 創立者の Larry Page が重大な決断を下した:それは,広告を定額で売っていたのを,オークションで値決めして売るように変えたことだ。これは 唯一の最も重要な決断だった;そしてこの決断をグーグルの初期の段階に行なった。私は確信しているが,これらの [スタートアップ] 企業も 同様の決断に直面するだろう。
     (5) SoftBank の株価が資産の割りに割安なのはなぜか?
     SoftBank の株を見れば,心配される3つのことがある。
     ① 1つは,スプリントでこれから何が起こるか,
     ② 次に中国で何が起こるか,
     ③ そして 3番目に Masa が Sprint の二の舞をしないこと … そうならないよう願っている。
     取り引きというものは,人が将来をどう思い描くかに基づいてなされる。我々の実行と我々の行動により証明するに連れて,そして この3つの要素について予言可能性を導入するならば [つまり,投資家が予想しやすくなれば] ,割安は消えるはずだ。
     (6) SoftBank は Sprint を挽回できるか?
     Masa は 容赦のない性格だ。彼は,Sprint のマネージャたちに ほとんど毎晩 数時間 (a few hours) 夜の 10 時とか朝まで電話を掛けている。もしも彼が成功すれば,世界の異なる2つの地域で 通信事業をリストラした最初の人になるだろう。
     (7) Masayoshi Son と時間を過ごす
     I try to spend about 10 days a month with Masa. Ten out of 30 is not bad. Same amount I spend with my wife [laughter].
     SoftBank は,Yahoo が持っているアリババ株に関心があるか?
     アリババ株は,もう十分持っていると言うのが正しいと思う。
     (8) SoftBank 株についての Arora の計画
     もしも株価が2倍,3倍になれば,借金を返済して,チャリティに寄付したい。私の長期的なインスピレーションは,インドの教育システムを自分で変えたいということだ。願わくは,官僚機構に嵌まるとか摩擦を起こすこと無しにそれができればよいと思っている。
    こちらの記事は ブルームバーグから日本語訳が出ていますが,気づくのが遅く,一応,独立に翻訳しています。
     ちょっとケチを付けさせていただくと (笑),10 億ドル超の会社が 150 余 … というのは,どういうことかな。 ・・・ と思ったけれど,そこは飛ばして ・・・ 。
     本来であれば,この方針で投資したところ赫々の成果を挙げ,失敗は極く些少 … と続くべきなのに,実績の裏づけがまるで無い。社長は自慢していたはずですが,なぜ,具体例をここで挙げて胸を張らないのか?成功例は1つもないの?
    ──────
    蛇足を加えると,Sprint の挽回のところで,Claure の名前が全く出てこないのは いだたけない。
     いくら朝まで電話しているか知らないが,現地で陣頭指揮を執り頑張っているのは,Claure である。 こういう機会には,その努力を認める発言をすべきである。もしも Sprint が挽回すれば,Claure は, アメリカの大企業を立て直した最初のボリビア人になるだろう … くらいは言うべきだ。こんなところで Son に胡麻を擂るとは けしからん(笑)。自分も Sprint の取締役をしているのだから,カンザスで汗を流してはどうかな。
    ──────
    さらに言うと(笑),二の舞のところが どうにも引っかかる。ご本人が分かっているのかな? 「孫さんに Sprint の二の舞をしないでくれ」と言うことは,孫さんの アメリカ進出が失敗であったと公認することなんですよ。これを副会長さんが 公言したということは,Bloomberg の大きな収穫でした。アメリカの通信業界は,そう受け取ったでしょうね。
    ──────
    副会長発言が不用意であることは,電話の件からも分かる。曰く:
     『Son は,Sprint のマネージャたちに ほとんど毎晩 数時間 (a few hours) 夜の 10 時とか朝まで電話を掛けている』
     もしもこれがホントなら (多分 嘘は言っていないだろうが),SoftBank は いずれ潰れる。そんな会社は 潰れるに決まっている。遠く離れた2人の幹部が話をするときには,大筋合意を取れば十分である。あとは任せる。任せることのできない社長は,無能である。任せられる部下を育てて,その部下に任せる ・・・ これが 社長の最大の責務である。
     任せられない典型は,留学している子どもに 母親が毎晩 長電話を掛ける例が分かりやすい。いい大人だと思って 自分で判断させればよいものを,心配だから,あぁせい,こぅせいと電話する。そのため 長電話になる。うまく行っている同士に,しかも忙しい経営者であれば,長電話の必要は全く無い。 「ほとんど毎日 数時間の電話」というのは,ママの異常な心理状態と言うしか無い。
     孫さんは時間がたっぷりあるから長電話できるのだろうが,海の向こうの Sprint で現場業務を行なっている幹部は 昼間に電話がかかってきて大迷惑,仕事が滞り,不平タラタラではなかろうか。しかも, 日本の国土の 25.5 倍のアメリカの事情に疎い孫さん (WSJ) が電話しても,向こうは多分,アメリカと日本の違いも説明する必要があるでしょう。
     とにかく,「長電話」と「任せられない」は 危険の兆候である。こういう初歩的なことに気づかず,得意になって話す副会長は,経営者の資格なし。そういう人を後継候補に指名しちゃった人も ・・・ 。
     長電話の話は,副会長が浅はかにも でっち上げたのものだと祈ります(笑)

    ブルームバーグからは,Arora 会見に基づく記事がもう1つ出ています。
     Why Nikesh Arora Bet $483 Million on SoftBank's Future
    全て込み:ニケシュ-アローラは なぜ ソフトバンクの将来に $4.83 億を賭けたのか
    Bloomberg, 2015/11/26, 05:04 pm
     非常に長文の記事です。生い立ち,私生活のようなことから書いています。その中に
    Though it hasn’t been publicly announced, Arora’s SoftBank stock purchase is complete. He set up an agreement with two banks that began buying shares within a predetermined price range 45 days after the announcement. More than 25 percent of the money is his own equity, with the rest borrowed. He said there could be a capital call if a market crash wipes out his wealth.
     公表されていないが,Arora の SoftBank 株買い付けは完了している。彼は2つの銀行と契約を交わした。銀行は,発表の 45日後に 予め決めた価格範囲で買い始めた。25% 超は自己資金であり,残りは 借り入れによる。もしも市場のクラッシュが彼の財産を拭い去れば,キャピタル・コール (払い込み要求) もあるだろうと彼は言う。
     45日後ということは ・・・ 10 月に入ってから買い始めたのか。毎日欠かさず続いていた Sprint の買い支えがパッタリ終ったのが 10月5日です。でも 買い終わったのが いつかは分からない。
       こんなくだりもある。
    Son has had strong lieutenants in the past who faded from view. Yoshitaka Kitao, Son’s right-hand man during the dot-com era, left the company after the bubble burst. He wrote a blog post this May saying, "Nikesh Arora is not necessarily secure" and "it’s too early to appoint his successor." Kitao declined to comment for this story.
     Son は強力な部下 (複数) を過去に持っていたが 今は視界から消え去った。北尾吉孝は,ドットコム時代を通じて,Son の右腕だったが,バブルが破裂して会社を去った。彼は今年の5月にブログにこう書いた:"Nikesh Arora は,必ずしも安全ではない。後継者を指名するのは早過ぎる。"  北尾はこの話についてコメントを拒否した。

    まぁ,アリババの場合には, 淘宝を始めるから一口乗らないかと … "ただし,乗っても乗らなくても こっちはやるぜ" … なんて言われたら,孫さんでなくても乗っちゃうでしょうね。5分でみずてん (不見転契約) して (WSJ ),たまたま大当たりだったのが運のツキ (?) 誰しも 博打に1度当たれば, 2度, 3度と当たりが続くと思っちゃう。
     で,アメリカ進出したけれど,見事に失敗。頼りの北尾さんがいればいいんだけど喧嘩別れ (?) しちゃった。その役目を 実績不明のグーグラーさんに丸投げした:ソフトバンクは 通信だけでは大きくできない。お前なら2倍, 3倍, いや 5倍にできるか? はい, お引き受けしましょう (Bloomberg)。 ・・・ てなところでしょうか。
     で,この2人の投資の実力が (淘宝のマグレを除いて) しっかりしていれば 問題無いのですが,昨年からのソフトバンクの投資は,私が外国報道を読む限り 明らかに変調です。北尾さんも これを5月の時点で見抜いていた。実際に,8月のインドネシアの件は,素人級のまことにお恥ずかしい限り。
     ここで どうするのがよいか? 孫さんは,通信だけでは 2倍, 3倍, 5倍と大きくならないから ベンチャー路線で行くという方針らしい。つまり,ソフトバンク・ベンチャー大帝国を樹立する。投資は 10 年が目安と言うから,インドネシアのような失敗は物の数ではなく,投資家は 10 年先を見よ! 配当も我慢せよ!
     1つ疑問なのは,アメリカの (株主を大切にする高配当の) 2強がどう考え,どういう長期政策を立てて動いているかを調査したのでしょうか? 2強は,アメリカの外への (たとえば日本への) 大進出を考えているのでしょうか? 通信だけでは儲からないから,ベンチャーをやろうと考えているのでしょうか?
     たとえば,AT&T は,長年の努力が実り始めて,今では テレマティクスで アメリカの首位です。ソフトバンクが日本の自動車会社と提携したという話は聞いたことがありません。グーグルと提携して プロトコルから協力するのもアリだと思う。結局は OS のようなものを握る企業が勝つ。
     Verizon のマッカダム CEO は,ときどき面白い発言をする。たとえば,"2008 年に 我々が オープンなネットワークを配備したとき,普及率 400 % とか 500 % という話をしました。しかし,間違いは 率直に認めましょう。モノのインターネットを見据えれば,普及率は,おそらく 1,000 % とか 1,200 % になるはずです。"
     こんな発言が孫さんの口から飛び出すようになれば,ソフトバンクの将来は明るい。
    ──────
    [追記] :いくら 慣習に逆らうのが 孫さんの特徴 (WSJ) だと言っても,アメリカ企業に学習することは あるでしょう。FierceWirelessTech の記事を読めば,Verizon の IoT 戦略は順調に進んでいることがよく分かります。SoftBank の日本での IoT は,これに比べて どうなってるの? ニュースを見た記憶がありません。

  93. ソフトバンク4~9月,営業増益受け米事業反攻
    日経電子版,2015/11/04, 21:36
     ソフトバンクグループが4日発表した2015年4~9月期の連結決算 (国際会計基準) は,営業利益が前年同期比21%増の 6857億円だった。経営課題である傘下の米携帯大手スプリントの再建について孫正義社長は「ここから反転していく」と強調。年間20億ドル (約2400億円) 超のコストを削減し,約2年後をメドに「全米一の通信網を作る」と述べた。
     「スプリントを反転させる設計図が見えた」。孫氏はこう強調した。顧客流出に歯止めがかからなかった今年初めごろは「自信をなくしていた」と振り返ったが,反撃の道筋が見えたという。
     孫氏の自信を見せる第一の理由は守備固めが進んでいることだ。コスト削減が可能な項目を洗い直した結果,470点が浮上した。固定費削減が柱で数千人規模の人員削減も含む。「最低でも年20億ドルは削減する」と強調。最終的には年3000億円程度の圧縮を目指す。
     課題だった新規顧客の獲得にも見通しが立ち始めた。帯域の違う電波を束ねて通信を高速化する技術を導入し「つながりにくい」との評判を改善。7~9月期は 米携帯大手4社で唯一,契約数 (プリペイド除く) の伸び率がプラスとなった。
     顧客の「質」も改善した。信用力に問題のあるサブプライムと呼ばれる顧客層への審査基準を改めた結果,契約の解約率が1.54%にまで下がった。スプリントでは「過去20年で最も低い水準」(孫氏) で,顧客流出に歯止めをかけた。
     孫氏は今後も米通信網の強化を進める考えを強調した。「スプリントの通信網が全米一にならなかったら孫正義のせいだと言っていただいて結構だ」と言い切った。
     ただ,競合他社は販促キャンペーンに力を入れており,スプリントの顧客が流れる可能性もある。孫氏の思惑通りに再建が進む保証はない。
    「スプリントの通信網が全米一にならなかったら孫正義のせいだと言っていただいて結構だ」
     これ,いかにもイサマシイ発言ですね。
     でも,この公約はとっくに果たされている。それをわざわざ言って見えを切っています。
     実は同様の発言を Claure さんがした。言い方はちょっと違っていて,"全米の全てのマーケットで1位または2位を取る" と言っちゃった。さすがにそのときは 記者さんが聞きとがめて "ほんとにアメリカの全てのマーケットで?” と後から訊き返した。で,Claure さんは "アメリカの主要なマーケットで" と言い直しました。
     孫さんの発言にはこういう修飾語がついていないので,アメリカに 3,000 あるというどれか1つののマーケットで,他社に比べて,最新の iPhone 6S (iPhone 6 ではダメ,電波が非対応) を持っている人が最速ならば,一番速い ・・・ と言い逃れすることができます。
     そして,Tarek さんは,Sprint が 100 Mbps だと1月7日の会議で言いました。だから,孫さんの発言は既に達成されているのですよ。
     ただし,数千人規模の人員削減とか,470 点のコスト削減項目という話は,(紙の節約とかスナックの取りやめも含むのでしょうが,大口は) CFO の3回の発表にも出てこない。
     そもそも反転とか設計図というのであれば,それを箇条書きにして,文書で示すべき。2ヵ月たってもそれが出てきません。日経は,完全にナメられています。

  94. Indonesia’s Trikomsel warns it will likely default on Singapore-issued bonds
    インドネシアの Trikomsel が警告する。同社は シンガポール発行の債券をデフォルトする見込み。
    DealStreetAsia, 2015/10/27
    By Vincencia NLS
    インドネシアのモバイル電話小売業者 PT Trikomsel Oke Tbk は,その一部をシンガポール上場の Polaris と 日本の SoftBank Group が所有しているが,社債所有者に シンガポール-ドル建て債券の利息を払えないと通知した。これらの債券の利払いの期日は 11月と12月であり,払えない理由は ルピアがドルに対して下落したための財務の赤字による。
     このデフォルトは,シンガポール-ドル建て社債の 2009 年以来 初めてのものであり,インドネシア企業の社債発行の意欲を減殺しかねない。
     Trikomsel は さらに,売り上げの伸びが悪く,インドネシア国内経済が弱くなっており,そのために消費者の購買力が落ちていることも,社債デフォルトの理由として挙げた。
     先週,PT Trikomsel Oke Tbk は 約 $1.55 億の債務を再編するために 貸し手側と会う手順を踏んだにも拘わらず,S&P は インドネシア企業 (複数) のデフォルトの可能性を警告していた。
     Polaris は Trikomsel の株の 44.9%,SoftBank Group は 19.9% を所有する [注:Bloomberg 報道によれば,ソフトバンクは この株を今年はじめに取得した ── 正確には,下のように,2015年3月27日と判明した]
     ジャカルタに本社を置く企業 Trikomsel は,2016 年償還,表面利率 5.25% の債券 $1.15 億と 2017 年償還 表面利率 7.875% の債券 $1 億を発行している。
     Trikomsel が 10月26日(月) にシンガポール証券取引所に提出した文書によると,同社の全債務 約 $4.6 億のうち 80% 超が2年以内に償還を迎える。"キャッシュフローが減り続ける現状では,当社は,利息を払うことも 満期が来ても償還する立場にある見込みは無いものと見込む。" … と書かれている。
     同社は "extremely serious (ほとんど生死の境目にある)" 現下の状況で,同社の取締役会は,経験の深いプロのアドバイザを雇い,同社グループの財務状況を調査し,長期的営業を維持するためのアドバイスをもらうことにしたと発表した。
     この目的のために,同社は,財務アドバイザとして FTI Consulting を,法務アドバイザとして Ashurst LLP を指名した。
    悪化する業績
     Trickomsel は 2012-2013 会計年には 平均年率 +8.25% の売り上げであったが,その後 売り上げが伸び悩み,2015年6月30日に終わる1年には Rp10.8 兆 → Rp8.9 兆に落ち込んだ。2015年前半の純利益は,前年同期比 −32.1% の減益だった。
     2015 年前半には,営業キャッシュフロー $Rp535 億を記録した。他方,債務は 1年前に比べて Rp34 兆 → Rp36 兆に増えた。
     同社は,今後2~3週間以内にすべての債権者に債務再編の要請状を送り,2016年1月31日までにすべての関係者と債務再編の条件交渉に入り,2016年2月29日までには,すべての文書作業を実行する計画であると発表した。
     上の記事を検索した理由は,もちろん,11月4日の決算発表に合わせて,SIMI "(ソフトバンク投資係の A さんが社長をしている;このことを広報は なぜか言わない(笑) 社長任命の時には大々的に発表したのにね。責任を問わないためですか?) などの減損処理 394.9 億円を発表したからです。
    インドネシアの Trikomsel への投資 なんて SoftBank は これまで,発表していませんよね。
    投資を発表してこなくて,いきなり 損をしました ・・・ そんなことってありなの? 変だな?
    そこで,念のために,SoftBank の買収係の何が甘かったのかを知るために,どんな投資だったのかを検索してみました。
     こんな記事を読めば誰しもビックリ。もちろん,減損の金額の大きさもさることながら,その内容が問題です。もしもソフトバンク投資家の全員がこれを日本語で読めば,どんなことが発生するのか?
     利率のちょっと高そうな債券に 応募しようと考えている債券投資家はどうするでしょうか? (証券会社は インドネシアの件を顧客にきちんと断って売ったのか?)
     かく言う筆者(訳者)も,読み始めは 半信半疑,ウッソー,まさか 孫さんが?
     念のため 原文で確認したい方はトップのリンクから英文の元記事をお読み下さい。
     記事の読み方は人によりいろいろですが,私の読み方では,SoftBank とアリババは 「インド,東南アジアへの投資が非常に有望だ」とよく言うけれど,実際には かなり危ないのが実態だと感じられるます。とくにインドネシアに投資するのは,危険である。世界の金利の動きを見ても分かること。新興国からドルが引き上げ傾向にある ・・・ 。そんな中でソフトバンクだけが金を放出し続けたらどうなるのか。
     グーグルから来たソフトバンク買収係さんが,日経電子版 (「金の卵」記事) の写真で 思いなしか 投資の失敗で 面目なさそうに 項垂れていた理由が分かりました (左側の2名もキビシイ顔です)。当然の心理です。悪くすると,この会社は この人と共倒れになる危険がある。だって,会社が発表した失敗は これだけですが ・・・ 。
     関連記事として,グーグルがインドネシアで "プロジェクト ルーン" が面白いでしょう。携帯電話がとても 売れにくい 国であることが分かります (素人が考えても分かる)。グーグルがそういう認識であるのに,ソフトバンクのグーグラーさんは,インドネシアでの携帯電話の小売業者に望みを託した ・・・ というお粗末の一席 (笑)
     こんな感覚の人に 会社経営は無理。
     なお 「当社副社長による当社株式の買い付け」(2015/08/19) の2ヵ月後に上の報道が (ブルームバーグからも 2015/10/19) 出たことを考えると,8月19日の時点で損失があることは分かっていたはずであり,そうすると,「人格的にも優れている」などという (いい大人をおちょくるような) 前代未聞の形容詞がついた 600 億円相当の株式買い付けは,「ソフトバンクグループの将来性に賭ける決断」という理由とは全く別の色彩を帯びる。すなわち,社長命令「お前が全部かぶれ!」 ・・・ これなら誰にでも 100% 理解できる (笑) ・・・ でしょ。394.9 億円は十分にカバーしているから,あと 200 億円くらいの損を 他にもやっちゃったのかしら (笑)
     天下のグーグルから着任して1年後くらいの社長就任が当然なのに (同じようにインドから来た Pichai さんは,既に グーグルの CEO に昇格したのに) 遅れに遅れている。怖くて禅譲できないというのが 孫さんの気持ちでしょう。でも,どういう事情からか分からないが,グーグルからこういう人を受け入れちゃった 孫さんの責任は重い。
     ついでに言うと,インドネシアでの携帯販売に一口乗った 孫さんも筋が悪い (通信会社の社長でありながら,インドネシアの通信事情を理解せずに投資したと言う意味で)。しかも,1年も経たないうちに倒産する会社に出資。ヘンですよ。「出資された金」は,何に使われたのか?
     だって,デフォルトした Trikomsel は 完全お手上げ状態で,財務と法務でそれぞれ1社を頼まなければ,自分では何もできない。そんなひどい 赤ん坊のような会社です。ソフトバンクが投資した金だって,多分,どうすれば効率良く使えるかなんて言う頭は,丸っきりないでしょう。投資した後に ソフトバンクは何も面倒見なかったのか? 金を放り込んだだけなのか? そんな「投資」って 投資と言えるのか? 他の「投資」も全部そうなのか? お目付けの役員を派遣していないのか?
     常識的に考えれば,「出資」からデフォルトまで半年 [7ヵ月] 程度の短さというのは,お父さんが計画した可能性が高いと誰しも思う。取り込み詐欺に遭ったようなもの。ソフトバンクが詐欺に遭ったなんて恥ずかしいでしょうが,でもそうでないと言うのなら,「出資」の経緯と,金の流れをきちんと説明するのが,株主への義務である。
    ──────
    その後,ロイターも報道している (2015/11/15)。
     個人の債券投資家が,リストラに参加させろと頑張っている ・・・ という記事です。
     残念ながら,ソフトバンクがどの程度回収できるか (あるいは 頑張って損を少なくしようとしているか) は一切書かれていません。
     この記事の末尾には ・・・
     The company's unaudited financial results as of September 30 showed that cash and cash equivalents amounted to 27.7 billion rupiah, a mere $2 million, down from 612.4 billion rupiah at the end of 2014.
     Trikomsel の9月30日の監査前決算では,現金+現金同等物が たったの 277 億ルピア (200 万ドル)になり,2014 年末の 6,124 億ルピアから減少した。
     (笑) つまり,僅か9ヵ月のあいだに,現金が 95.5% 減少して たったの 4.5% になった。こんなことが 投資先に発生していて,全然 気がつかなかったのか? これ,上場会社のトップに説明責任ありますよね?
     逃げてはいけない。孫さん,アローラさん。非上場会社のつもりなの?
     複利で 44% だかなんだか知らないけれど,こういう恥ずかしい事件を隠してはいけない。いずれバレたら「世界のソン」なんていう看板は ガタ落ちになる
     こういうニュースは,もちろん,既に世界に知れ渡っている。外国から日本に投資している人も。
     では,知らないのは誰か? あなた?(笑) 知らないのは 強い!
     この点は,何度強調しても強調し足りることは無い。ソフトバンクがいくら隠しても,英語圏には情報が筒抜けである。だから,英語圏の投資家は それなりに対応できる。哀れなのは,英語ニュースを読まずに,ソフトバンクを信頼して,日本語のニュースだけに頼っている投資家である。なぜ,こんな仕掛けにしているのか 全く理解できないが,少々 ドギツイ 言い方をここでさせて頂けば,ソフトバンクは,日本の投資家 (特に個人投資家だけ ── 英語情報に直接アクセスする日本の機関投資家は,外国投資家と同様に笑っているだろうから問題無い) に敢えて損をさせて,ぬくぬくと投資ごっこをしている ・・・ ということである。どうして,日本の個人投資家だけの目を塞ぐのか? とにかく まことに異例な会社であるだけに,そういう意味では観察対象として非常に面白い。こんなに持続的に面白い (都合の悪いことを隠したがる 天然的幼児性の顕著な) 上場会社は,ザラには無い。しかし,まともに被害を受けている投資家は たまったものではない。自分では 気がついていないだろうから 幸せと言うべきか。
    ──────
     筋悪のもう1つは,サンカルロスでの情報集めがどうなっているのか … ということです。スプリントを買収した後,ソフトバンクは サンカルロスに土地・建物を借りた。その1つの目的を,シリコンバレーでの情報収集と言っていました。シリコンバレーのサンカルロスから 同じくシリコンバレーのマウンテンビューにあるグーグルまでどれだけの距離があるかは知りませんが,車で行けば ごく近いはず。ならば,サンカルロスがまともに情報収集していたならば,グーグルがインドネシアで風船を打ち上げるという楽しいニュースは,自然にサンカルロスに届いたはず。これが孫さんまで伝わらなかった! これでは,何のためのサンカルロス基地なのか? いったい,ソフトバンクは,サンカルロスで何をやっているのか? 一部は又貸しするという報道もあったけど。
     インターネット企業にとって,情報がすべて。アップルとは違い,目ぼしい商品がまるで無いソフトバンクなのだから。
    ──────
     SoftBank が Trikomsel に投資したのは,2015年3月27日であったことを突き止めました。
     社長がご自慢のペッパーくんも写っている こんなに大きな画面だよ (↓)。
     なぜ隠すかね?(笑)。 ジャカルタで報道されたって堂々と発表すればいいものを。今年の3月に。
     因みに,3月27日には『阪神電気鉄道 阪神なんば線のトンネル内で携帯電話が利用可能に』… こんなニュースを発表している。どっちが株主に取って重要なんだろうね。どう思いますか? あなた。
     ソフトバンクは通信だけでは 儲からない。だから ベンチャー資本に切り替えたんですよね?
     結局,この Sugiono って人に一杯喰わされたんだろうね。
     恥ずかしいだろうけど,でも 上場している以上は 株主に損をさせたんだから,経過をきちんと説明する義務がある。どうしても嫌なら,有り金を はたいて MBO しかありません。いくらで買い取ることになるか知らないが,それなら,好き放題 買収ごっこができる。(大変親しい間柄の馬雲さんも協力してくれるかもしれない。)
     上には「一杯喰わされた」って書いたけど,逆の見方もできるんですよ。
     なぜって,僅か 9ヵ月間の間に 95.5 % の現金が神隠しに遭う ・・・ こんなに手際のよい作業はなぜ可能だったのか? 孫さんみたいな人が,なぜ,こんな幼稚な詐欺に引っかかったのか? 詐欺であれば,なぜ インドネシアで訴訟を起こさないのか? アメリカならば,当然 訴訟沙汰になるでしょう。訴訟というのは,損害を取り戻す意味であるが, 「自分が正しい」ことを世界に示すためにするものでもある。
     ちなみに ソフトバンクの 2016 年12月期の決算短信 (02/08) には,次にように書かれている。
    インドネシアのPT Trikomsel Oke Tbk.の株式や同社への投資に関連する融資などを減損処理したことによる損失が,有価証券減損損失と貸倒引当金繰入額に合計38,185 百万円計上されています。現在,PT Trikomsel Oke Tbk.は,インドネシアの倒産法に定める支払猶予手続 (PKPU) に基づき,再建に向けて,債務支払を一時的に停止した上で債務整理計画を策定しております。
     また6月22日に行なわれた株主総会資料には,次のように書かれている。
    (注2) 2016年3月31日に終了した1年間において,インドネシアの PT Trikomsel Oke Tok. の株式や同社への同紙に関連する融資などについては,投資額や融資額の回収を見込めないため,減損しました。その結果,有価証券減損損失と貸倒引当金繰入額を合計 381.85 億円計上しました。


  95. Softbank Buys Minority 20% Stake in Trikomsel
    ソフトバンクが トリコムセルの少数株式 20% を買う
     JakartaGlobe,2015/03/27
    日本の大富豪 Masayoshi Son が支配する 無線キャリア Softbank は,インドネシアの 主導的モバイル電話配給業者 Trikomsel Oke の株 19.9% を取得した。これは,Trikomsel が東南アジアに拡大する努力の一環である。 [上の絵は,原寸大のまま。キャプションはありません。]
     シンガポールに拠点を置く (Trikomsel の総裁兼取締役 Sugiono Wiyono が支配する) 情報テクノロジー会社 Polaris によると,Softbank は この取り引きを 2015年3月27日に完了した。Polaris は,Softbank の買収後 44.88% の株式を所有し,Trikomsel の支配を握り続ける。
     Sugiono は,SoftBank が 東南アジアで Trikomsel に更なるシナジーの機会を開くだろうと言った。
     "私は,Trikomsel 経営陣を代表して,SoftBank を Trikomsel の株主として歓迎する。" … と Sugiono は声明で言った。
     Softbank は,子会社 ── Chateau Montague, Enterprise Holdings, Sommerset Palace Holdings ── を通じて Trikomsel の株式を所有する。

  96. SoftBank Studied London Base for Investment Empire to Slash Taxes;
    Proposal to untether venture capital from telecom shows a company at a crossroads

    ソフトバンクは,投資帝国の節税のために ロンドンに本店を置く会社を設立することを検討した。
    通信からベンチャー資本への脱皮提案は,ソフトバンクが十字路にいることを示す

    [$$] Wall Street Journal, 2015/10/21, 08:21 am
    By Eric Phanner & Alexander Martin (東京)
    日本の SoftBank Group は,バラバラに広がる投資部門を統括するため,ロンドンに新会社を設立する計画を検討し,拒絶した。これは,モバイル・キャリア Sprint と中国 E-コマース巨人アリババイ集団の株を含む 多様な資産を持つ会社の 増大する苦しみを反映した動きである。
    ソフトバンク・グループの孫正義は,同社をテック・スタートアップ企業への
    大きな賭けで仕切ってきた。(©Bloomberg News)
     この文書そのものと,状況に詳しい複数の人によれば,Wall Street Journal見ることのできた 14 ページから成る SoftBank プレゼンテーション資料に要約された提案は,(1) SoftBank の税金を削減すること, (2) 急成長するがリスクの大きい海外投資部門を 成長が遅いが堅実に利益を挙げる国内通信事業から切り離すことを狙いとしていた。
     "我々は 世界の投資運用会社になることを目指す。" … と 2015年3月づけの文書は言う。
     SoftBank のスポークスマン Matthew Nicholson は言う:"SoftBank の転換の一環として,我々は今年はじめ さまざまの選択肢を評価した。"  7月1日の SoftBank Group への名称変更は,"それらの考察の結果であった。" … と彼は言う。"ただし,個々の提案については コメントできません。"
     この提案は,1981 年に CEO Masayoshi Son によりソフトウェア取次業者として設立された SoftBank が,どんな十字路にいるかを示す。Mr. Son の下で SoftBank は,その主たる営業が通信に移行したにも拘わらず, 何千ものテック・スタートアップ企業に金を注ぎ込んだ。その最大の成功は,Yahoo とアリババへの初期投資であり,そこから SoftBank は 紙の上ではあるが $500 億を超える稼ぎを得た。
    今年 Mr. Son は グーグルの前幹部 Nikesh Arora を後継者として指名し,インターネット企業と テック事業への投資が SoftBank の営業にとって 中心になっているとの合図を送った。この両名は,SoftBank のポートフォリオから価値を引き出す方法を考えているが,投資先は 赤字続きの Sprint から 配車アプリ,ロボット会社まで 実にさまざまであり, [SoftBank の] 投資家には,その見通しをつけることが難しい。
     法人税が 35% の日本やアメリカに比べて 20% の英国への移転を検討することにより,SoftBank も (税法の緩い国に本社を置こうとする) 多国籍企業の最近の動きに加わることになる。
     数多くのアメリカ企業が,税金反転 (tax inversion) という名で知られる戦術を採用し,税率の低い地域に本社を置く小さな会社を買収して,本部をそこへ移転している。例えば,医療機器メーカーの Medtronic PLC と バーガー・キングがその例である。ロンドンに拠点を置く HSBC Holding に到っては,香港の方が英国より銀行の税率が低くなったからのいうので,香港にある以前の本社に戻ることを検討している。
     状況に詳しい複数の人によると,Mr. Son は,ロンドンへの移転が,あまりにも多くの物流の複雑を招き,規制当局の不確かさもあると決断した。その代りに,SoftBank は 本社を東京のままとし,カリフォルニア州サンカルロスのテック投資チームを増強することとした。
     SoftBank の文書は,日本の営業部門が 英国に拠点を置く持ち株会社の子会社になるという 税金反転の選択肢を議論している。この場合,持ち株会社は 東京とロンドンの両方に上場することがあり得る。
     プレゼンテーションは,結論として上とは少し異なるアイデアが好ましいとしている:英国に拠点を置く別会社を設立して これを英国で上場し,SoftBank の海外投資ポートフォリオをそこに任せるというものである。
     状況に詳しい1人の話によると,Mr. Son は,これ以外のリストラの可能性も考えていた:MBO により SoftBank を東京証券取引所から非上場にするという考えである。

     この件を知る何人もの人によれば,Mr. Son は 後にこれらの提案を拒絶し,Sprint の問題を是正することに注意を向けるように決断した。2013 年にこのアメリカのキャリアを買収して以来,Sprint はアメリカのモバイル・キャリアの中で契約数第3位の座から第4位に滑り落ちた。
     この件に詳しい1人によれば,英国に拠点を置く SoftBank の新しい投資法人を設立するという提案は,SoftBank 経営陣の中でも下層部 (ranks) から強力な反対を引き起こした。これらの人たちは,日本人の幹部が主流であり,自分たちが懸命に築いた会社への影響力が失われることを恐れた。
     税金を削減する計画にしても,日本,英国, および その他の法域で 税務当局から 好意的な裁定が得られるかどうかに依存する話である。当局は,そのような配慮に 次第に 眉をしかめるようになっている。
     OECD は 今月,多国籍企業による 税回避を取り締まるよう勧告を発行し,税率の低い法域へ企業が利益を移すことを許すような抜け穴を塞ぐよう 各国政府に強く要請した。
     SoftBank の海外資産には,Sprint の株の 80%,アリババの 32%,それに その他いくつものテック企業への投資が含まれる。これには,ビデオゲームのガンホー・オンライン・エンターテインメント および スーパーセル,中国配車アプリの 滴滴快的 (Didi Kuaidi),インドの E-コマース Snapdeal, ハリウッドの映画スタジオ Legendary Pictures が含まれる。
     14 ページの文書は,英国は "何人もの (several) 上級マネージャと強いつながりを持っている" と書いている。グーグルでの1つの役目として,Mr. Arora は,グーグルの欧州営業をロンドンから動かしていた。
     日本は 依然として SoftBank のドル箱 (cash cow) であり,国内第3位のモバイル・ネットワークを持ち,ブロードバンド・サービスを行なう国内通信部門は,最新の四半期に SoftBank の EBITDA の 約半分を稼ぎ出した。
     とは言え,数年前に 日本で主力のスマートフォンである アップルの iPhone を独占提供する地位が失われて以来,SoftBank の成長は鈍化したままである。
     日本の縮小する人口のため,契約増の見込みは限られる。他方,電話料金引き下げを求める 首相の鶴の一声は,モバイル各社の株価にセルオフを招いた。SoftBank の株価は,年初来 約 8% 下げている。
     SoftBank は 今年,国内の通信子会社を再編成して1つの子会社にまとめた。
     政府が旗を振って法人税を下げ始めた中で,節税のためロンドンに本社移転などは,絶対にあり得ない話である。そんな勝手なことをすれば,財界からも厳しく非難されるだろう。
     この関連で興味深いのは,最近になって首相から突如として 携帯電話料金引き下げの話が出たことである。その理由が不明だとして報道で騒がれているが,1つの可能性としては,この 14 ページの文書が 政府筋に最近 漏洩したためと考えると,合理的に理解できる。政府としては,ロンドン本社が実現すれば赤っ恥を掻かされるし,追随する企業が出ては,法人税の引き下げも無意味になる。「ソフトバンクに 税金の心配をするほど 利益が出てお困りなら,料金を引き下げてもらいましょう」… ということになったのではないか(笑)。こういうメッセージ (脅し) を伝えるには,総務相のレベルでは,単純な料金問題と 「誤解」される恐れがある。それ以上の「含み」を持たせるには,その上のレベルの発言が必要であった。とすれば,これは ちょっとやそっとのことでは収まりそうもない。最悪の場合には,狙い撃ちされているソフトバンクが 3社の中でも貧乏くじを引かされる可能性がある。
     いずれにせよ この話は総裁筋の指令で内部検討を開始したものでアローガ(笑),日本の国情に不案内のため,足を踏み外したのではないか? さすれば,後継に擬することは不適当であろう。
    ────
    [2015/11/04 記] やはり,「料金値下げせよ」 と政府筋から言われれば,「大人にならざる」を得ない(笑)。当然のことです。おまけに,スプリント買収のために2兆円を借りた 19 の銀行の中には,政府が 100% 出資した銀行が2行 (合計 3,000 億円) ある (もちろん,ソフトバンクは隠している)。現在のソフトバンクは完全に牙を抜かれているから,政府に言われたことには, 100% 逆らえない。引き下げ案が決まれば,(税金反転計画という悪巧みを懲らしめる意味で) ソフトバンクに特に不利な案が出る可能性があるが,無抵抗でしょう。
     現在のソフトバンクのそもそもの間違いは,政府出資を得なければ不可能な Sprint 買収に ドン・キホーテのように突入 (そして失敗) したことである。これが成功/失敗どちらになるにせよ,政府の容喙を許す会社となった。 世の中では上位2社が国策会社であり,ソフトバンクを純粋の民間会社と考えてきたが,アメリカ進出により,それが崩れた。今やソフトバンクは 政府の言うことを 100% 受け入れる立場の会社に変身している。そう考えると,ソフトバンクから出る広報は よく理解できる。
    ────
     案の定と言うか,日経電子版 2015/12/17 6:30 に "ジャーナリスト" 石川 温 なる人物が, 『木を見て森を見ず,目先に終始した携帯値下げ会議』という表題で寄稿して,『わずか2カ月というスピード議論で方針案がまとめられた。だが,その細部を検証していくと,短期的な視点から目立ちやすい部分のみに対処した「木を見て森を見ず」の内容となっており,矛盾に満ちたとりまとめとなってしまっている。』 とお書きになっている。
     失礼ながら,この人は物事の本質を見極める目をお持ちでない。木を見て森を見ないのは誰なんだろ?何でもかんでも合理的に,論理的に決まると考えておられるようだ。ちょっと考えてみればわかることでしょ。誰が言い出したのか。なぜ言い出したのか? 普通なら高市総務相が言い出せば済む話。ここは,言い出したお方の意向通りに決めねばならぬ。だから,2ヵ月もあれば十分なのだ。内容がどうかは全く問題ではなく,全ては,最終的に 言い出しっぺさんの意向に沿うように決めることが大切なのである。
    ──────
    [2015/12/20 記] やはり,3社の先頭を切って
       『ソフトバンク,月額5000円以下の割安プラン導入へ』
     ということですね。料金引き下げの先頭を切れ ・・・ との命令が出て,これに逆らえない。この程度で済めば御の字だ ・・・ というのがソフトバンク関係者の正直な気持ちでしょう。ただし,この程度で済むかどうかは,最後の最後まで分からない。言い出しっぺさんがどこで納得するか ・・・ という問題です。「まぁ そのくらいで今回は良いだろう」とおっしゃっていただければよいのですが。
    ──────
    [2016/01/08] やはり (笑) というか,月額 \4,900 のプランを携帯大手他社に先駆けて発表! しましたね。
     こんなことで 先駆け なんてどこもやりたくない。なぜって,これで終わるのならいいけど,普通は 料金引き下げ競争の口火を切ることになるから。
     だから,世間は,政府の息の掛かった会社がまず口火を切るだろうと思っていた ・・・ でしょう。
     常識的には,政府の息が掛かっているのは,ソフトバンクではない。
     でもその常識は,今では間違いなのです。今,政府の息が最も掛かっているのはソフトバンク。
     いま ソフトバンクに官邸筋が一押しすれば,スネに傷持つ身は断れません。
     これから先のことは分かりませんが,もしも他社が \4,900 を下回るプランを打ち出せば,ソフトバンクは,さらに下げざるを得ない。料金競争の始まりです。
    ──────
    [2016/01/14] やはり,月額 \4,900 では済まない。若者料金にまで拡がってきました。
     冷静に見れば よく分かりますね。「料金引き下げ競争の先鞭をオマエがつけよ」と命令されてやっているのです。こういう競争が いったん 始まれば,どこで終わるかは分からない。アメリカの例からも分かります。
     最初の「鶴の一声」の意味を理解していない 石川 温さん,もうお分かりになったでしょうか?
    ────
    「逆らえない」 もう1つの例は,シャープを救済するような印象の新会社設立である。
     (2015/10/29) 日系電子版,「ソフトバンク,太陽光設備を共同施工,シャープと新会社」
     赤字のシャープを 経済産業省は何とか救済しようとしています。でも出資してくれるところがなかなか見つかりません。SoftBank は,上の事情により,政府の言うことを丸呑みせざるを得ない。そういう国策会社に SoftBank は変身しつつある? というのも注目ポイントでしょう。出資金は,シャープにくれてやった (戻ってこない) つもりでしょう。
     太陽光は 一時はもてはやされましたが,今では 不安定な電源として 電力会社 (とくに九電) に嫌われるようになった。ソーラー投資家は,採算の目処が立たず,とまどっている状況です。もとはと言えば,経済産業省が原子力発電を優先し,自然エネルギーの比率を上げるのを忌避しているためなので,SoftBank も 日本ではソーラーに力を入れる理由が無くなった。日本全体としてソーラーへの需要は見込めない ・・・ それが今の国策である。それなのに,それとは矛盾する (シャープを救済せよという) 別の国策で SoftBank の尻を叩いてシャープを救済させる。矛盾もいいところだけれど,それに SoftBank が抵抗できない ・・・ という矛盾の上塗り現象です。
     つまり,このような国策協力が 今後も相次ぐか? が 1つの注目ポイントでしょう。
     不思議なのは,このニュースをソフトバンクが 自社の広報に掲載しないことである。例によって,これは具合の悪い,隠したいニュースなのだろうか … と勘ぐられる。上場会社である以上,自社発表すべきでしょう。
    ──────
     [11月29日] 本日の報道によれば,官邸は 法人の実効税率を 29.97% [コマカイね] に引き下げる方針を明確化した。
     一方,海の向こうでは 「もはや M&Aが "生業" とも言えるファイザー (日経産業新聞の表現) 」が,税率 12.5% のアイルランドでアラガンを買収,そこに本社を移すことにより税金反転を計画,これが 税金逃れとの批判を浴び,28% に引き下げようとしているホワイトハウスのバラク・オバマ大統領を困惑させているとのこと。
     ソフトバンクの場合には,社長が取りやめたことだからか 全く何も発表していない。しかし,官邸の首相を「困惑させている」ことは間違いない。その困惑から「お尻ペンペン」が発生したと見られる件が複数ある。果たしてお尻ペンペンはこれで終わりか? ひょっとして どこかの報道が「アメリカではファイザー,日本では もはや M&Aが "生業" とも言えるソフトバンク」 ・・・ と書く可能性も無いとは言えない。
     一方,全くの別件ではあるが,東芝の室町社長は,「積極的な情報開示をすべきだったと大いに反省している。開示が不十分だったことを改めて深くおわび申し上げる」と述べている。
     とにかくお詫びが大嫌いな ソフトバンクには,こういう姿勢が欠けている。会社にとって マイナスと思われる情報を積極的に開示することが,株主の信頼を得て,株価を上げる道に繋がる。隠す一方では,疑心暗鬼を招き,実態は もっと悪いのかと誤解される (ホントにそうなら,何も言うことは無い)
    ────
    [2015/12/26 記] 今度は,朝日新聞にリークされた。ほんとによくまぁ後を引くもんだ(笑)
    誰が朝日にリークしたんでしょうか?
     (1) ソフトバンク社内から。グーグルなどから 20 人の部下を集めてチームを編成して上のようなことをやっているアローラさんに対する強烈な反発か? Wall Street Journal にリークしたけれど,効き目が無かったので,朝日新聞に持ち込んだ。
     (2) 官邸の元気の良い補佐官さんか? ここまで法人税を下げたのは,誰のお蔭だと思っているのか? このままでは,オレたちはナメらっぱなしだ。示しがつかない。ソフトバンク懲らしめるべし。
     (3) 財界筋か? 折角 財界から政府にお願いして法人税を下げていただいているのに,その努力を破壊するような企業には,明確に合図を送る必要がある。税金反転を企てる企業の再発防止のためにも,財界として ここで何かしなければいけない。
    この記事と関連して,ソフトバンク・アカデミアの2時間講演が Bloomberg から短い記事として報道されました。
      『Softbank Expects to Invest `Several Billion' Dollars a Year: Son』(Bloomberg, 2015/10/22, 8:57 pm JST)
     「ソフトバンクは 1年に 数十億ドルを投資する見込みである:孫 正義」
    内容は,
       ソフトバンクは次世代のリーダーを [投資先として?] 探し求めている。
       アローラが 展開の先頭に立っている。
     となっています。
    ソフトバンク,英移転を一時検討 節税・投資にメリット
    朝日新聞デジタル,2015/12/26, 07:07
    大鹿靖明
    ソフトバンク・グループ (SBG) が,今年に入って一時,英国への本社移転を検討していたことが分かった。法人実効税率の低さや国際的な投資環境の良さが理由だ。ただ,移転したとしても 投資先から収益を得るのが かなり先になりそうで,ひとまず時期尚早として断念した。
     英国が候補に浮上したのは,節税メリットが大きいためだ。国と地方を合わせた法人実効税率は,日本の 32.1% (2016年度から 29.97%) に対し,英国は 20% と低い。
     さらに SBG は 近年,インドの新興ネット企業に相次いで投資したほか,インドでの大規模な太陽光発電事業への参入も決定。旧宗主国の英国の方が,インドへの投資がしやすいことも利点と考えた。
     SBG は7月,グループ全体を統括する持ち株会社として誕生した。旧ソフトバンクが前身で,日本国内の通信事業を担う旧ソフトバンクモバイルがソフトバンクになった。この組織再編の過程で「さまざまな選択肢を検討した」(広報担当者) 中で,本社移転も浮上していた。
     孫正義社長は,米グーグル出身のニケシュ・アローラ氏を後継候補に指名し,世界展開を進めると宣言している。ある幹部は「グローバル企業になるなら,組織のあり方,社員の居住のあり方も変わる」と,本社移転の可能性についても示唆していた。
     ただ,インド投資から利益が上がるまでには時間がかかると予想され,「現時点で英国移転を急ぐメリットは無い」(関係者) と判断し,本社移転案は退けられたという。
     同社は過去にも本社の海外移転を検討している。旧ソフトバンク時代の数年前にもシンガポールへの移転を考えたが,社内に「日本で公共性の高い通信事業で収益を上げているのに,海外に拠点を移すのは好ましくない」との反対論が根強く,断念した。
     日本企業による本社の海外移転は,歯磨き用品大手のサンスターがグループ本社をスイスに移転した例があるが,まだ極めて異例だ。SBG 級の大企業が移転すれば,他企業に与える衝撃度は大きい。
    こういう場合には,生首を1つ差し出して解決を図るというのが 1つのやり方ですが ・・・ 果たしてどうなるか?
    [2016/06/30] 半年前に「生首を1つ差し出して ・・・ 」と書いたのが,その通りになっちゃった!
     「ホントの生首は,こっちじゃないんだけど まぁいいっか」… って思っていただけたでしょうかね?(笑)
    [2016/02/08] まだまだ尾を引きそうです ・・・ 。
      日経電子版 『そしてドコモが「実」を取った 迷走スマホ値下げ』2016/2/8 3:30
     この記事には, 急回復した株価 という節があって,料金引き下げ問題は ひとまず決着したように書かれている。ところが そこには,ご丁寧に右のグラフが載っていて,急回復したのは ドコモ,KDDI の2社だけである。
     おぃおぃ,ソフトバンクは下がったままなんですけどね。言い出しっぺ首相の意図は,これで見事に実現されたのか。
     と思いきや,言い出しっぺさんの真意は 謎だと書いている。
     ■官邸の巻き返し
     携帯料金を下げるという首相要請はそもそもが唐突だった。その真意はいまだに謎だが,関係者はこう解説する。
     「消費増税を国民に受け入れさせるために,安倍官邸は経団連に賃上げを呑ませ, 『収入』の部分では国民負担を軽減する見通しを示すことができた。一方『支出』の項目には,電力料金や医療費, 食費などさまざまあるが,どれも一筋縄ではいかない。だが,通信費なら。官房長官の菅義偉は元総務大臣でもある」
     今回 官邸が出した「値下げ要請」は,業界の議論に揉まれることで角が取れ, 「過当競争の緩和」に着地した感がある。だが, 「官邸は黙っては いないだろう」と関係者は指摘する。 「7月の参院選の人気取りのために,もう一段の値下げ要請を出してくるのでは」。そのとき,通信業界や総務省に「弾」は残っているだろうか。
    ──────
     総務省のデータ を見れば分かるように,家計に占める通信費はさほど増えていない。移動電話通信料だけ槍玉に上げるのは,ほとんど言い掛かりに近い (ということを承知の上でやっている)。
     日本で一番エライ人が これに 執念を燃やすというのは,ハッキリした狙いがあるからだと考えられる。
     「真意は謎だ」ってのも 馬鹿にした書き方だよね。でも 他に書きようが無い。日経としては (笑)
    [2016/02/22] やはり まだまだ続いてる。よく当たるね (笑)。本日の日経電子版
     ソフトバンクは,3月4日から格安スマートフォン・ブランドの「ワイモバイル」店で,米アップルの「iPhone」を発売する。通信料と端末代の合計で月3,980円 (税別) と従来の半額程度 ・・・ 。
     物凄い執念だということを ソフトバンク投資家は肝に銘じるべきである。この分では,本家の ソフトバンクも大幅値引きの旗を またまた振らされるかもしれないよ。
     とにかく決定権は 畏れ多くも畏くも 上御一人にあるようなものだから。先は全く読めない。
     それにしても,社長と副社長は どうして全く先が読めないんだろうね。当ウェブサイトよりも読めない。読めずに虎の尾を踏んじゃった。えっ トラノオって何のことかって?(笑)
     解決策はあるの? 常套的な解決策は 生首を差し出すことなんだが ・・・ 。
     それができなければ,代りになるものを何か ・・・ 。
    もう終わったのかと思っていましたが,まだまだ続く気配ですね。
    『誰が言い出したんだ;攻防 携帯値下げ (ルポ迫真)』
    日本経済新聞 電子版,2016/03/02,03:30
    昨年9月11日夕,首相官邸4階の大会議室。経済財政諮問会議の最終盤,企業の賃上げや投資拡大に触れていた首相の安倍晋三 (61) の話が突然変わった。「携帯料金の家計負担の軽減は大きな課題だ。高市総務相は方策をしっかり検討して欲しい」。異例の「官製値下げ」の幕が開いた。
     「まさに青天の霹靂だ」。最大手,NTT ドコモ社長の加藤薫 (64) は,安倍発言に衝撃を受けたが 立ち直るのも早かった。「震源地はどこだ」。競合他社への顧客流出が漸く止まり反転攻勢に出る矢先に,収益源のスマートフォンを掻き回されるわけにはいかない。
    値下げの議論は骨抜きに
    (2015年12月18日,高市総務相から
    「値下げ」要請書を受け取る
    ドコモの加藤社長)
     NTT には,電電公社時代から政官界に太いパイプがある。携帯が狙われたのはなぜか / 挽回は可能か? ロビー活動をするにも 的を絞るのが先決だった。グループを挙げた調査で辿り着いたのが,総務相の経験を持つ官房長官の菅義偉 (67) 周辺だった。
     安倍発言の少し前,菅官房長官は,各府省の事務次官らにこう指示を飛ばしていた。「ビザ緩和は (訪日外国人の消費拡大に) 効果があった。そういう成長戦略につながる新しい政策のタマを探せ!」
     企業には雇用増や賃上げを働き掛けてきたが,個人消費は思うように拡大しない。教育や通信など家計に占める固定費の高止まりが 国民の財布のひもを固くしているのではないか。じれる菅に「携帯料金の引き下げはどうでしょうか」と打ち返してきたのが総務事務次官の桜井俊 (62) だった。
     そう言えば,元財務事務次官 (現 JT 会長) の丹呉泰健 (64) が内閣官房参与だったとき,「携帯代が高すぎて消費に回らない。低所得者でも 1~2万円を払わなくちゃいけないのは,是正すべきですよ」と説いていた。「もっと安くしないと いけない」との思いがあった菅は,桜井に賛意を伝えた。
     経済財政諮問会議の3日後,総務相の高市早苗 (54) は,総合通信基盤局長の福岡徹 (59) に値下げ策を年内にまとめるように指示した。方向づけをするタスクフォース (作業部会) が10月半ばに始まる日程も見えてきた。それまでに筋書きを固めておきたい。NTT の巻き返しが始まった。
     「日本の携帯料金は,世界的に見て決して高くありません」。ドコモ副社長の寺崎明 (64) は菅に訴えた。総務審議官を務めた寺崎は菅と旧知の仲である。携帯大手が大幅値下げすると,総務省が旗振り役になって育ててきた格安スマホを潰しかねないとも指摘したようだ。
     NTT 社長の鵜浦博夫 (67) は,搦手から攻めた。総務省内を仕切る福岡に告げた。「協力はします。我々としては,慣行を見直すきっかけにしたい」。他社からスマホ契約を切り替えるよう促すためキャッシュバック (現金還元) などに頼る携帯販売を是正するという意味だ。同省は,かねて携帯端末の過度の値引き販売を問題視していた。
     販売店がキャッシュバックなど値引きする際の原資になる奨励金が減れば,携帯大手の収益にはプラスに働く。端末が実質値上げになる分は,携帯をあまり使わない高齢者など「ライトユーザー」向けに割高だった利用料金を引き下げる。これが落としどころだ。
     □    □
     迎えた10月19日の作業部会第1回会合。高市の代理として大臣補佐官の太田直樹 (48) が切り出した:「(携帯料金が) 高くなったから安くする … という単純な話ではない。高くても価値があれば,当然,出費は増える」
     太田は透明性と公平性をポイントに挙げ,販売店の値引きの恩恵は,頻繁に携帯会社を乗り換える人が主に受けていると指摘した。議論のスタート時点で,力点が値下げそのものでなく不公平感の解消に変わっていた。
     今年1月初めにソフトバンクがデータ通信容量が少ないプランを月 4,900円で提供すると発表したのを皮切りに,ドコモと KDDI (au) も低料金プランで追随した。だが動画視聴など通信量は増加傾向で,どれだけニーズがあるか疑問符がつく。3社は端末の「実質ゼロ円販売」廃止でも足並みをそろえた。
     「収支 [収入?] への影響は最小にしたい」。1月29日,2015年4~12月期決算を発表したドコモの加藤は,新施策の影響を問われ余裕を見せた。それが,骨抜きになった値下げ劇の結末だった。 (敬称略)
             ◇
     スマホの国内普及率は5割を超す。暮らしに溶け込み,料金への関心も高い。値下げ論議は何を巻き起こし,誰が得をするのか。実相に迫る。
    どのように実相に迫るのか? 乞う ご期待!
    続編が出ました。
    (迫真) 攻防 携帯値下げ (2)  ゼロ円封じ「松か竹か」
    日経電子版,2016/03/03, 3:30
     「うちは家族割引の拡充で行こうと思います。」1月,NTT ドコモ料金制度室長の田畑智也 (44) が総務省幹部に低料金プランの説明を始めると,思いのほか反応が鈍かった。「ふーん,そうですか ・・・ 」
    「実質ゼロ円」撤廃前のキャン
    ペーン。1月末,
    千葉県内のソフトバンク店
     同省が執念を燃やしていたものは 別にあった。実質ゼロ円販売や 多額のキャッシュバック (現金還元) である。端末販売の「ゆがんだ競争」として,2007年以来 携帯大手に改善を求めてきたが,一向に無くならない。
     販売店の大半は,大手直営でなく代理店だ。売り方に注文をつけるのも 限界がある。田畑が「総務省がミクロ (店頭) のチェックもやらないと変わりませんよ」と水を向けると,幹部は切り返した。「ドコモさんは 大丈夫なんでしょうね。」ゼロ円販売撤廃への覚悟を迫った。
     携帯大手は,値引き原資として販売店に奨励金を渡してきた。それを減らして通信料金引き下げに回させたい総務省と,販売経費を減らしつつ値下げは限定的にしたい携帯大手:思惑は違うが, 安売り競争の是正では一致する。昨年10月に始まった同省の携帯値下げ策の作業部会でまさにそれが槍玉に挙がった。
     販売の最前線は 敏感に反応した。規制される前に顧客を取り込んでしまおう。「家族4人で (他の携帯大手から) iPhonw6 に乗り換えれば,最大 54万円還元。」11月,兵庫県内のあるソフトバンク店は超大型キャンペーンを打ち出した。
     総務省内には「料金自由化の流れに逆行するのでは」との慎重論もあった。販売競争が消費者に恩恵をもたらしてきたのは確かだ。だが,総務相の高市早苗 (54) は苛立った。「松と竹,どちらでもいいから 実効性があるものにして下さい。」
     松は法規制,竹はガイドライン。いずれも公正取引委員会との調整が必要だが,高市は既に法制化した韓国を例に事務方に迫った。携帯大手の自主性を尊重し, 「竹」 で落ち着いた。
     「携帯販売の変革期ですから。」KDDI 社長の田中孝司 (59) は昨年末,携帯販売最大手ティーガイア会長の竹岡哲朗 (65) に理解を求めた。1ヵ月後,同社に届いた書類にはこうあった。「(顧客の) 実質負担1万円以上で販売してほしい。」だが競合店が安売りすれば,身銭を切って応戦せざるを得ない。
     総務省は3月から店頭の販売実態を抜き打ち調査する要員を全国に派遣する。人呼んで「携帯Gメン」。誰の味方なのか。まだ正体は不明だ。
    誰が値下げを言い出したんだ? … まだまだ ぜ~~ん ぜん「迫真」していませんね。
    だって,値下げのはずが,ゼロ円封じに摩り替っている。当然 続きがあるのでしょう。期待しています(笑)
    しかし まぁ,初めての方は,最初に遡ってお読みになれば,この「金魚の糞」みたいにダラダラ続いていく話は,スジが通っていて実に分かりやすいと思います。早く「兎の糞」のようになれば いいのにね。
    (迫真) 攻防 携帯値下げ (3) アップル「大臣に物申す」 日経電子版,2016/03/04,3:30
     福岡市にある大型商業施設「キャナルシティ博多」。その4階は携帯大手3社のショップが並ぶ日本一の激戦地だが,過激なキャンペーンで顧客を奪い合ってきた光景が一変した。
    (迫真) 攻防 携帯値下げ (4) なぜギプスを嵌めるのか? 日経電子版,2016/03/05, 3:30
     「どうして大リーガーと戦う我々,少年がギプスをはめられているのでしょうか?」
    「迫真 携帯値下げ」シリーズが第4弾まで出ましたが,完全に腰砕け。
     だって,このシリーズは,『誰が言い出したんだ;攻防 携帯値下げ (ルポ迫真)』で始まりました。ならば,言い出した J (最強の札 ジョーカー) の意図の意にるのが趣旨の筈です。ぜんぜん迫真していない。ホントに情けない記事です。
     実質ゼロ円,ゼロ円封じ ・・・ な こまいこと J から指令が出るはず無いよ (笑)
     NTT もまた J の真意に迫らずに 藪を叩きまわっている。それでは結論が出るはずがない。
     全体を見れば,明らかなように,J の真意らしきものは,ソフトバンクには明瞭に伝わっている。こういう素人にも分かることが,日経記者さんにも NTT にも分からないとは不思議である。
     (1) かつては 気に入らないことがあると ガソリンをぶっかけるとまで (2回) 幼稚な発言をした 孫社長が,11月4日,まるで借りてきた猫のように「大人になりました」と発言した。料金値下げに抵抗せず,受け入れる発言をしました。J の真意は,別段 日経が迫真しなくても,当人には正確に伝わったのです。まぁ J に対する了解の合図でした。
     (2) 12月26日,例の記事が朝日新聞にリーク。
     (3) どこが最初に値下げの口火を切るか … と思っていましたが,やはり (笑) というか,ソフトバンクが 月額 \4,900 のプランを携帯大手他社に先駆けて発表!(2016年1月8日)
     その後の経過は覚えていませんが,ソフトバンクが以後も値下げを先導していたような感じです。
     こんなことは 各社ともやりたくない。しかし,ジョーカーは最強の札だから断れない。このことが如実に顕われた 料金引き下げ先陣乗りでした。
     (4) 問題は,どこでこれが終わるか … ですが,すべては言い出した J の腹の中。推測すれば,「恥を掻かされた」という思いがどこで消えるか ・・・ でしょう。選挙目当て説が有力なようですが。
     (5) 料金引き下げ競争では,最終的に横並びになるので 片がつきません。それでも,料金引き下げの旗振り役みごと果たしたにつき,これにてお役御免! となるか (笑)。あるいは オリンピック関連の通信事業で特別の不利を被るか,あるいは 2018 年9月13日に控える (あと2年半だよ) 1.1 兆円のリファイナンスで嫌がらせをされるか ・・・ といったことが考えられる。何しろ この融資団には,政府が 100% 出資する国策銀行2行が入っているからね。2018 年9月というのは,総裁の任期でもある。つまり,このリファイナンスの運命は J の腹の中で決まる。… これも ソフトバンクにとっては 好ましくない。それにつけても,孫さんは どうしてこうまでして (嫌いな官邸に頭を下げてまで) スプリントなんか買収したのか, あるいは 買収させられたのか?

  97. SoftBank Chairman Considered Taking Company Private
    ソフトバンク議長は,会社を非上場にすることを考えた
    Bloomberg, 2015/09/11, 11:29 am KST; 2015/09/12, 12:44 改訂
    By Takashi Amano (天野 高志)
    大富豪 孫正義は,今年はじめ,日本のソフトバンク・グループの MBO (経営陣によるバイアウト) を考えた。そして外国のパートナーと協議に入った。 ・・・ この計画を直接に知る複数の人による。
    Son は,この計画を少なくとも今から3ヶ月前に反故にするまでに,少なくとも1人の貸し手と協議したが,海外のパートナーと融資条件が折り合わなかった ・・・ と この件について話すことを認められていないので,匿名を条件として 複数の人が語った。この件は,実現すれば 今年初めの トップの取り引きとなるはずであったが,Son は,もはや このパートナーを使うことを考えていない ・・・ と 複数の人が 詳細に触れずに語った。
     SoftBank の抱える債務 ならびに 苦戦する米国部門 Sprint への懸念が,SoftBank の時価総額を 約 $640 億にまで縮めていた。この額は,アリババ集団と日本のヤフーを含めた持ち株の時価総額合計より少ない。Son の 持ち株 19.3% を除いた取り引きは,Bloomberg がまとめたデータによると,史上最大の MBO である。
     岩井コスモ証券の川崎朝映 (ともあき) アナリストは,Son が上場を継続すると判断をしたことは「将来の業績へ自信を取り戻したことを意味する」と話した。また「少し時間が掛かるだろうが,投資家は スプリントの改善を待っている」と述べた。
     株価は 0.6% 安の \6,513 に下がった。これで,今年に入ってからの下げは,9.7% になる。
     最大のバイアウト
     Son は,SoftBank より大きな会社を含む 極端な取り引きを手がけることで名高い。仮に Son がこれを進める決断をしたとしても,取り引きが完了する可能性は 全く無かっただろうと 別の1人が言う。
     Son は SoftBank の筆頭株主である。SoftBank の上場して流通されている株式は,これを除いて 約 $520 億である。
     日本企業をターゲットにする取り引きの 平均プレミアムが 昨年 約 30% であったことを考慮すると,SoftBank の残りの株をバイアウトするには, [520×1.3=] 約 $680 億を要する。これは,1999 年以来 日本でのバイアウト合計金額の2倍を超える。世界で見ても,過去2年間に発表された上場会社のバイアウトの合計額を超える。
     この計画を反故にして以後,SoftBank は,\1,200 億の自社株買いを発表し,Sprint を 82% に買い増した。
     スプリントの株価は,金曜日のニューヨークで 午前 11:40 現在 1.2% 高の $4.88 である。株価は 今年7月末までに 25% も下がり,そこからリバウンドして,木曜日までに 16% 上がった。
     東京の SoftBank の小寺裕恵は,コメントを拒絶した。
     増え続ける負債
     Son が バイアウトの考えを個人的に膨らませたのは,(自分が持っている会社に経営の自由度を得たいという思いの中で) 沈んでいく SoftBank 株価への反応であったと 複数の人が語る。5月に総裁に指名された Nikesh Arora は,バイアウト計画を知っていた と1人が語る。
     慣習に逆らうのは,Son の経歴の特徴である。彼は,苦戦する第3位のキャリアを 日本でもアメリカでも買収し,有利な陣地を占める大きなライバルと戦い,1,000 を超える会社に投資した。その一方で 次なるアリババ級のヒットを狙っている。
     2006 年 Son は,$160 億で ボーダフォン・グループの日本部門を買収する アジア最大の LBO の支払いのために,11行の銀行から1年ローンを取り付けた。SoftBank の信用格づけは 当時 すでに投資適格級より下であった。Son は,当時 アジア最大のセキュリタイゼーションで 一部 資産担保証券を売ることによりブリッジ・ローンを完済した。
     Son は,2012 年に Sprint Nextel の支配を買収する取り引きにより,日本最大の海外買収を発表した。その資金は 現金と借り入れにより手当てした。SoftBank は 翌年 $220 億でこの取り引きを完了した。
     Son のレバレッジ愛好癖は,会社に \9.15 兆の純負債を残した。非金融会社としては,トヨタ自動車に次ぎ,日本で2番目に大きな負債であり,SoftBank の時価総額の 約3倍に及ぶ。
    ──────
    Bloomberg の元記事が改訂されました。
    例によって 日本語訳では 削除されているところがあります。
    関心のあるかたは,比較をどうぞ (笑)
    ──────
     こんなところに何を書いてもしょうがないが (笑),どうにも理解できないのは,なぜ MBO を考えたのかという理由である。上に示した Bloomberg 元記事の翻訳では
     Son が バイアウトの考えを個人的に膨らませたのは,自分が持っている会社に経営の自由度を得たいという思いの中で 沈んでいく SoftBank 株価への反応であったと 複数の人が語る。
     あるいは,Bloomberg さんの日本語訳では,
     複数の関係者が匿名を条件に語ったところによれば,孫社長は同社の株価は将来の成長性を十分に織り込んでいないと考えており,自社買収により非上場となることで機動的に事業戦略を進める狙いがあった。
    と 理由らしきものが書かれている。
     しかし,孫社長が よく言われるように 優れた経営能力をお持ちと考えられているならば,報道がこんなことを書くのは 自己矛盾である。この部分は,大誤報であろう!
     確かに,経営者は株価を気にする。しかし,その先は 人によって違う。
     ボンクラ社長は くよくよして,姑息な手段を考える。
     優れた経営者は,「そんなら 俺の手で株価を挙げて見せよう。それなら問題ないだろう」 と考えるのである。仮にも この四半期に 2.8 倍の増益が見込めることくらいは ご承知の筈だったから,それで全く問題はない。
     ところが 問題なのは 2.8 倍の増益があったのに株価は上がらず,むしろ 下がった。 ・・・ これに失望したというのなら十分理解できる。
     しかし,市場というのは厳しいものである。これだけの増益にも拘わらず 上がらないということは,会社とその決算が,投資家から不信の目で見られていると言うことだ。したがって,いま 緊急に必要なのは バイアウトとか自社株買いなどではなく,会社と決算の透明性を高めて,投資家の信頼を回復すること ── これ以外にはない。
     具体的には,日本では報道されない英文報道を見る限り,買収屋としてのアローラさんの実績には,目覚ましいものが 全くと言ってよいほど 無い (したがって,後継社長としては,まことに不適格な方である ・・・ 少なくとも この1年の実績を見る限り) 。むしろ,おかしなものを掴まされて,失敗したと思われるものがある。それでも,決算発表では,買収により かなりの利益が上がったように喧伝されている。決算報告書を読んでも,2週間に3件行なっているというアローラさんの買収の1件ごとに何円の利益が (とくに配当可能な利益が) 挙がったのかは,全く分からない。
     そう言えば,ボーイングとの提携は どうなったのかな?[ボーイング社広報 (2015-03-09)]。ソフトバンクがいずれは 衛星を打ち上げるというニュースが日経にも掲載されました。日本でこのところ頻繁に起こる災害と密接に関連するのですが ・・・ 。
     "ハリケーン,津波,地震で経験しているように,通信基盤の存在は,生と死の差を意味することがある。" ・・・ と BSSI の総裁 Mark Spiwak は語る。
     こういう計画が順調に進んでいれば,企業利益よりも社会の利益を重視するいうイメージを高めるのに役立つ筈であり,発展途上国にチマチマ金を注ぎ込んで チマチマ巻き上げるなんてセコイことをやるより 遙かにマシである。

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